説明

フッ素樹脂製部材の洗浄方法

【課題】1回の洗浄で金属不純物を十分に除去することができるフッ素樹脂製部材の洗浄方法を提供することを目的とする。
【解決手段】フッ素樹脂製部材の金属不純物を除去するフッ素樹脂製部材の洗浄方法であって、フッ素樹脂製部材と酸溶液とを耐圧限界が1MPa以上の耐圧密閉容器内に封入し、耐圧密閉容器内に入れた酸溶液を加熱することによって酸蒸気を発生させて耐圧密閉容器内を1MPa以上に加圧し、該圧力下で酸蒸気によりフッ素樹脂製部材を洗浄することを特徴とするフッ素樹脂製部材の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂製の部材を洗浄する方法に係わり、特にフッ素樹脂製部材の金属不純物を除去するフッ素樹脂製部材の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体部品の製造工程で行われる、例えば半導体ウェーハ等の金属不純物の分析において、ウェーハ試料から短冊状のチップを切り出し、容器の中でフッ硝酸蒸気等の酸蒸気によってチップを溶解して金属不純物を抽出し、例えばICP−MS、ICP−OES等の分析装置を用いてその抽出液中に含まれる金属不純物を測定するという方法が用いられている。ここでチップを入れるために使用される容器は、耐薬品性、耐熱性に優れ、内部からの内在物質の溶出量が少ないフッ素樹脂製の部材によるものが用いられている。
【0003】
このようなフッ素樹脂製の容器は、ウェーハの金属不純物分析を行う前にこの容器自体に含まれる金属不純物を除去するための洗浄が行われる。
この容器の洗浄は、例えば、容器を混酸に浸漬して100℃前後で10時間から24時間加熱して金属不純物を除去することによって行われている。
【0004】
しかし、このような洗浄を行った後の容器を用いて、半導体ウェーハの金属不純物の分析工程を行う場合において、このフッ素樹脂製容器が高温、高圧の酸蒸気にさらされるとその内部から浮き上がったと思われる金属不純物が表面に溶出してしまい、分析精度を低減させてしまうという問題があった。
【0005】
一般に、フッ素樹脂製部材、特にPTFE等の射出成形の出来ないものの表面は、セラミックのようにレジンパウダを焼結して無垢材料が形成される。そして、切削加工により成型された各種部材表面は微視的には多孔質となっており、このような多数の微細孔の中に金属不純物が含まれている。そして、洗浄液を直接接触させてもこの微細孔の中には洗浄液が届かないため内部の金属不純物を除去することができず、上述したような洗浄液に浸漬することによる洗浄では洗浄効果が不十分と言える。
【0006】
このような問題を解決するために、缶体からなる洗浄容器内に水蒸気を送り込み、洗浄容器内を所定時間、高圧、高温、高湿度に維持し、その後洗浄装置内を大気圧に下げ、シャワー放水によって急速冷却することによりフッ素樹脂製品を洗浄する方法が開示されている(特許文献1参照)。
しかし、水では反応により重金属をイオン化することが困難であるため、フッ素樹脂製品の内部にある特に重金属不純物の洗浄としては効果が高いとはいえない。
【0007】
また、フッ素樹脂製部材を加圧された酸蒸気にさらすことで酸蒸気を内部に拡散させて、内部の金属不純物を溶出させ、その後希酸に浸漬することによってその溶出された金属不純物を除去することができるとされた洗浄方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】特許第2541560号
【特許文献2】特開2002−200463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このように酸蒸気にさらしてフッ素樹脂製部材を洗浄しても、金属不純物が十分に除去されずに洗浄後のウェーハの金属不純物分析においてフッ素樹脂製容器の内部から金属不純物が溶出してしまったり、十分に洗浄するために洗浄を繰り返し行う必要があったりする場合があった。
【0010】
そこで、本発明者はこれらの原因を調査するために実験を行った。その結果、特許文献2には酸蒸気が加圧された状態である記載はあるものの、具体的な圧力条件については開示されておらず、この圧力条件によっては金属不純物の洗浄を十分に行うことができないことが判明した。
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、1回の洗浄で金属不純物を十分に除去することができるフッ素樹脂製部材の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、フッ素樹脂製部材の金属不純物を除去するフッ素樹脂製部材の洗浄方法であって、前記フッ素樹脂製部材と酸溶液とを耐圧限界が1MPa以上の耐圧密閉容器内に封入し、前記耐圧密閉容器内に入れた前記酸溶液を加熱することによって酸蒸気を発生させて前記耐圧密閉容器内を1MPa以上に加圧し、該圧力下で前記酸蒸気により前記フッ素樹脂製部材を洗浄することを特徴とするフッ素樹脂製部材の洗浄方法を提供する(請求項1)。
【0012】
このように、前記フッ素樹脂製部材と酸溶液とを耐圧限界が1MPa以上の耐圧密閉容器内に封入し、前記耐圧密閉容器内に入れた前記酸溶液を加熱することによって酸蒸気を発生させて前記耐圧密閉容器内を1MPa以上に加圧し、該圧力下で前記酸蒸気により前記フッ素樹脂製部材を洗浄すれば、フッ素樹脂製部材の微細孔内部まで酸蒸気が入り込んで金属不純物を表面に溶出させる効果を向上することができ、1回の洗浄で十分に金属不純物を溶出させることができる。そして、溶出させた金属不純物は洗浄の後工程で容易に除去することができる。
【0013】
このとき、前記酸蒸気による洗浄を行った後、前記フッ素樹脂製部材を前記耐圧密閉容器から取り出し、前記フッ素樹脂製部材を希酸に浸漬させて該フッ素樹脂製部材の金属不純物を除去することが好ましい(請求項2)。
このように、前記酸蒸気による洗浄を行った後、前記フッ素樹脂製部材を前記耐圧密閉容器から取り出し、前記フッ素樹脂製部材を希酸に浸漬させて該フッ素樹脂製部材の金属不純物を除去することで、酸蒸気による洗浄でフッ素樹脂製部材の内部から表面に溶出された金属不純物を容易に効果的に除去することができる。
【0014】
またこのとき、前記耐圧密閉容器内に入れる酸溶液として、塩酸又は硝酸とフッ酸の混酸を用いることができる(請求項3)。
このように、前記耐圧密閉容器内に入れる酸溶液として硝酸とフッ酸の混酸を用いれば、酸蒸気がフッ素樹脂製部材の微細孔内部に入り込んで金属不純物をイオン化して溶出させるのを効果的に行うことができる。また、強酸でかつ分子が小さい塩酸を用いれば、同様の効果をより効果的に奏することができる。
【0015】
またこのとき、前記酸蒸気による洗浄工程を10〜24時間行うことが好ましい(請求項4)。
このように、前記酸蒸気による洗浄工程を10〜24時間行うことで、酸蒸気によりフッ素樹脂製部材内部の金属不純物を表面に十分に溶出させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、フッ素樹脂製部材と酸溶液とを耐圧限界が1MPa以上の耐圧密閉容器内に封入し、前記耐圧密閉容器内に入れた前記酸溶液を加熱することによって酸蒸気を発生させて前記耐圧密閉容器内を1MPa以上に加圧し、該圧力下で前記酸蒸気により前記フッ素樹脂製部材を洗浄するので、フッ素樹脂製部材の微細孔内部まで酸蒸気が入り込んで金属不純物を表面に溶出させる効果を向上することができ、1回の洗浄で十分に金属不純物を溶出させることができる。そして、溶出させた金属不純物は洗浄の後工程で容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来のフッ素樹脂製部材の洗浄として、フッ素樹脂製部材を加圧された酸蒸気にさらすことで酸蒸気を内部に拡散させて金属不純物を表面に溶出させ、その後希酸に浸漬することによってその溶出された金属不純物を除去する洗浄方法が開示されている。
【0018】
この方法では、酸蒸気を用いることで液相洗浄液ではその表面張力のためフッ素樹脂製部材の表面に形成された微細孔に入り込んで除去することが困難である金属不純物も、酸蒸気が微細孔に入り込んで表面に溶出させることができ、その後希酸に浸漬することによって容易に除去することができるとされている。
【0019】
しかしながら、このような酸蒸気にさらしてフッ素樹脂製部材を洗浄しても、金属不純物が十分に除去されずに、洗浄後のフッ素樹脂製部材を用いたウェーハの金属不純物分析においてこのフッ素樹脂製容器の内部から金属不純物が溶出してしまったり、金属不純物を十分に除去するために洗浄を繰り返し行う必要があったりする場合があった。
【0020】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、酸蒸気によって洗浄する際の圧力条件が重要であり、圧力が必要条件を満たしていなければ例え加圧された酸蒸気にさらして洗浄を行ったとしても十分に金属不純物を除去することができないことを見出した。そして、鋭意実験を重ね、耐圧密閉容器を用いて、圧力を1MPa以上とした状態で酸蒸気により洗浄すれば、洗浄力を十分に向上することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
図1は本発明に係るフッ素樹脂製部材の洗浄方法のフロー図である。
本発明では、洗浄対象であるフッ素樹脂製部材3を洗浄する際に使用する耐圧密閉容器1として、耐圧限界が1MPa以上であるものを使用する。
ここで、耐圧密閉容器1は、例えば金属のような耐熱性、耐圧性の優れたものとすることができる。また、大きさや形状は、図1に示すように、耐圧密閉容器1内に複数のフッ素樹脂製部材3を入れて洗浄することができるようなものであっても良いし、例えば図2に示すような、1つのフッ素樹脂製部材3を入れて洗浄するようなものであっても良い。
【0022】
本発明の洗浄方法では、まず、耐圧密閉容器1内にフッ素樹脂製部材3と酸溶液2を入れて封をする(図1A)。この際、図1Aに示すように、酸溶液2を耐圧密閉容器1の底部に入れ、フッ素樹脂製部材3を酸溶液2と接触させずに耐圧密閉容器1の底部から少し浮かせた状態で保持することができる。
【0023】
次に、フッ素樹脂製部材3と酸溶液2を封入した耐圧密閉容器1ごと加熱し、酸蒸気4を発生させる。このとき、この酸蒸気4が耐圧密閉容器1内で満たされ加圧される。そして、耐圧密閉容器1内が1MPa以上に加圧されるようにする。
ここで、耐圧密閉容器1内を1MPa以上の所望の圧力にするには、例えば、耐圧密閉容器1の内容積に対する酸溶液2の量を調整することによって行うことができる。
【0024】
このようにして耐圧密閉容器1内を加熱して酸蒸気4を発生させ、1MPa以上の圧力に加圧した状態で、フッ素樹脂製部材3を酸蒸気4に所定時間さらすことで洗浄を行う(図1B)。
このように洗浄することによって、フッ素樹脂製部材3の微細孔の内部まで酸蒸気4が入り込んで、特に重金属であるFe等のような金属不純物を表面に溶出させる効果を向上することができる。そして、1回の洗浄で十分に内部の金属不純物を表面に溶出させることができる。このように、微細孔の内部の金属不純物が表面に溶出されるので後の洗浄工程で容易に除去することができる。
【0025】
このとき、酸蒸気4により洗浄を行う所定時間を10〜24時間とすることが好ましい。
このように、酸蒸気4により洗浄を行う所定時間を10時間以上とすれば、加熱開始から耐圧密閉容器1全体が温まり、酸溶液2が蒸発して蒸気圧力が上昇して耐圧密閉容器1内が1MP以上となってから、フッ素樹脂製部材3の微細孔の内部に酸蒸気4が入り込んで金属不純物を表面に十分に溶出させることができる。また、24時間以下としても洗浄効果を十分に奏することができるのでコストの面から24時間以下とするのが好ましい。
【0026】
またこのとき、耐圧密閉容器1内に入れる酸溶液2として、塩酸又は硝酸とフッ酸の混酸を用いることができる。
このように、強酸でかつ分子が小さい塩酸を用いれば、フッ素樹脂製部材3の微細孔の内部に入り込んで金属不純物をイオン化して溶出させる効果を一層高めることができるのでより好ましいが、硝酸とフッ酸の混酸を用いても金属不純物を効果的にイオン化して溶出させる効果を奏することができる。
【0027】
その後、例えば、この酸蒸気による洗浄後、フッ素樹脂製部材3が十分冷却するまで耐圧密閉容器1内に保持しておくことができる(図1C)。
【0028】
そして、このようにして耐圧密閉容器1の表面に溶出させた金属不純物は例えば次のようにすることで容易に除去することができる。
すなわち、上述のようにして酸蒸気4による洗浄を行った後、フッ素樹脂製部材3を耐圧密閉容器1から取り出し、フッ素樹脂製部材3を希酸5に浸漬させて該フッ素樹脂製部材3の表面に溶出した金属不純物を除去する(図1D)。
このようにすれば、表面に溶出された金属不純物を容易に効果的に除去することができる。
【0029】
以上説明したように、本発明では、フッ素樹脂製部材と酸溶液とを耐圧限界が1MPa以上の耐圧密閉容器内に封入し、耐圧密閉容器内に入れた酸溶液を加熱することによって酸蒸気を発生させて耐圧密閉容器内を1MPa以上に加圧し、該圧力下で酸蒸気によりフッ素樹脂製部材を洗浄するので、フッ素樹脂製部材の微細孔内部まで酸蒸気が入り込んで金属不純物を表面に溶出させる効果を向上することができ、1回の洗浄で十分に金属不純物を溶出させることができる。そして、溶出させた金属不純物は洗浄の後工程で容易に除去することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
図1に示すような、本発明に係るフッ素樹脂製部材の洗浄方法を用いて、カップ型のPTFE製の部材を洗浄し、洗浄後のPTFE製部材に含まれるFeの濃度を測定した。洗浄したPTFE製の部材は8つとし、2つの耐圧性密閉容器内にそれぞれ4つの部材と、塩酸水溶液を封入した。ここで、温度を150℃、耐圧密閉容器内の圧力を4MPaとし、洗浄時間は12時間とした。その後、PTFE製部材を耐圧性密閉容器から取り出し、10%硝酸水溶液中に12時間浸漬させて表面に溶出した金属不純物を除去した。
【0032】
ここで、Feの濃度の測定は、洗浄前と洗浄後に行い、以下のような方法により行った。
まず、PTFE製の部材を炉内で150℃の温度で15時間の熱処理を行い、PTFE製部材内の液相を完全に蒸発させて蒸発乾固させた。
次に、PTFE製の部材を炉内から取り出し、室温まで冷却させた後、濃度1%の硝酸5molをPTFE製部材内に注入し、金属不純物を抽出した。そして、その抽出液を分析装置(ICP−MS)により分析した。
なお、この分析装置の検出限界は0.001ppbwであった。
【0033】
その結果を図3に示す。図3に示すように、1つのPTFE製部材以外、Feは検出されず、検出されたFeの濃度の平均は0.001ppbwと非常に低いものであった。
さらに、上記洗浄後のPTFE製部材を従来の半導体ウェーハの金属不純物分析時に使用している密閉容器に硝酸とフッ酸の混酸と共に入れて密閉し、その密閉容器ごと加熱して発生する酸蒸気に12時間さらし、PTFE製部材の内部から金属不純物が溶出するか調査するためにFeの濃度を測定した。このときの温度を100℃とし、圧力を0.5MPaとした。そしてこの処理を6回連続して行った。
【0034】
その結果を図4に示す。図4に示すように、本発明の洗浄方法で洗浄した後のPTFE製部材に上記のようにして酸蒸気をさらしても、6回の処理の内いずれの場合においてもFeは1つのPTFE製部材以外からは検出されていないことが分かった。
このように、本発明に係るフッ素樹脂製部材の洗浄方法は、1回の洗浄で金属不純物を十分に除去することができることが確認できた。
【0035】
(実施例2)
耐圧密閉容器内の圧力を1MPaとした以外、実施例1と同様な条件でPTFE製部材を洗浄し、実施例1と同様な方法でFeの濃度を測定した。
その結果を図3に示す。図3に示すように、2つのPTFE製部材においてのみ、Feが検出され、検出されたFeの濃度の平均は0.003ppbwと非常に低いものであった。
このように、本発明に係るフッ素樹脂製部材の洗浄方法は、1回の洗浄で金属不純物を十分に除去することができることが確認できた。
【0036】
(比較例1)
酸溶液として硝酸とフッ酸の混酸を用い、温度を100℃、圧力を0.4MPaとして洗浄を行った以外、実施例1と同様な条件でPTFE製部材を洗浄し、実施例1と同様な方法でFeの濃度を測定した。そして、実施例1と同様に、従来の半導体ウェーハの金属不純物分析時に使用している容器にPTFE製部材と硝酸とフッ酸の混酸と共に入れて密閉し、その容器ごと加熱して発生する酸蒸気に12時間さらし、その後のFeの濃度を測定した。
【0037】
その結果を図5に示す。図5に示すように、1回の洗浄では金属不純物が十分に除去されていないことが分かった。また、洗浄後に検出されたFeの濃度の平均は0.117ppbwと、実施例1、実施例2と比べ悪化していることが確認できた。
さらに、洗浄後のPTFE製部材を高温の酸蒸気にさらすことにより、内部から溶出されたと思われるFeが検出されていることが分かった。
【0038】
(比較例2)
圧力を0.5MPaとした以外、比較例1と同様の条件でPTFE製部材を洗浄し、比較例1と同様な方法でFeの濃度を測定した。
その結果を図3に示す。図3に示すように、洗浄後において全てのPTFE製部材からFeが検出され、金属不純物が十分に除去できていないことが分かった。また、検出されたFeの濃度の平均は0.037ppbwと、比較例1と比べ圧力を大きくしたことにより改善されているものの、実施例1、実施例2と比べ悪化していることが確認できた。
【0039】
(比較例3)
耐圧密閉容器内に超純水(イオン交換水)とカップ型のPTFE製部材を4つ封入し、その超純水を加熱して発生する水蒸気によってPTFE製部材を洗浄した。ここで、耐圧密閉容器内の圧力を4MPaとし、洗浄時間を12時間とした。そして、実施例1と同様の方法で、洗浄後のFeの濃度を測定した。
その結果を図3に示す。図3に示すように、洗浄後において全てのPTFE製部材からFeが検出され、金属不純物が十分に除去できていないことが分かった。また、検出されたFeの濃度の平均は0.064ppbwと、実施例1、実施例2と比べ悪化していることが分かった。
【0040】
(比較例4)
カップ型のPTFE製部材8つを硝酸とフッ酸の混酸に浸漬して100℃の温度で12時間加熱することにより洗浄を行い、実施例1と同様の方法で、洗浄後のFeの濃度を測定した。
その結果を図3に示す。図3に示すように、洗浄後において全てのPTFE製部材からFeが検出され、金属不純物が十分に除去できていないことが分かった。
【0041】
表1に、実施例1−2、比較例1−3における実施結果をまとめたもの示す。
【0042】
【表1】

【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るフッ素樹脂製部材の洗浄方法のフロー図である。
【図2】本発明に係るフッ素樹脂製部材の洗浄方法で用いることができる耐圧密閉容器の一例を示す断面概略図である。
【図3】実施例1―2、比較例2−4の結果を示すグラフである。
【図4】実施例1の洗浄後のPTFE製部材を酸蒸気にさらした場合のFe濃度の結果を示すグラフである。
【図5】比較例1の洗浄後のPTFE製部材を酸蒸気にさらした場合のFe濃度の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0045】
1…耐圧密閉容器、2…酸溶液、3…フッ素樹脂製部材、
4…酸蒸気、5…希酸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂製部材の金属不純物を除去するフッ素樹脂製部材の洗浄方法であって、前記フッ素樹脂製部材と酸溶液とを耐圧限界が1MPa以上の耐圧密閉容器内に封入し、前記耐圧密閉容器内に入れた前記酸溶液を加熱することによって酸蒸気を発生させて前記耐圧密閉容器内を1MPa以上に加圧し、該圧力下で前記酸蒸気により前記フッ素樹脂製部材を洗浄することを特徴とするフッ素樹脂製部材の洗浄方法。
【請求項2】
前記酸蒸気による洗浄を行った後、前記フッ素樹脂製部材を前記耐圧密閉容器から取り出し、前記フッ素樹脂製部材を希酸に浸漬させて該フッ素樹脂製部材の金属不純物を除去することを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂製部材の洗浄方法。
【請求項3】
前記耐圧密閉容器内に入れる酸溶液として、塩酸又は硝酸とフッ酸の混酸を用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフッ素樹脂製部材の洗浄方法。
【請求項4】
前記酸蒸気による洗浄工程を10〜24時間行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂製部材の洗浄方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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