説明

フマル酸クエチアピンを調製するための改良法

クエチアピンおよび医薬として許容される塩の改善された合成が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての相互参照
本出願は、本明細書で援用する2007年3月29日に出願された米国特許仮出願番号第60/920,936号、および2007年3月に出願された米国特許仮出願番号第60/920,963号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、クエチアピンおよび医薬として許容される塩の合成の改良に関する。
【背景技術】
【0003】
クエチアピンは、以下の化学構造:
【化1】

を有する2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールである。クエチアピンは、脳で複数の神経伝達物質レセプターについての拮抗薬として作用し、特に、報告によれば統合失調症を治療するのに有用な抗精神病薬として作用する向精神有機化合物である。Merck Index、13版、8130頁(2001年)。CAS番号:111974−69−7号を示すこの薬剤は、米国食品医薬品局により商標セロクエル(Seroquel(登録商標))の下に認可されたが、開発者アストラゼネカ・ピー・エル・シー(AstraZeneca PLC)から入手可能である。たとえば、クエチアピンは、本明細書でその全体が援用される米国特許第4,879,288号(以降、「’288号特許」とする)で教示されるとおりに製造され得る。
【0004】
’288号特許は、式:
【化2】

で表される化合物をハロゲン化して、式:
【化3】

(式中、Yは、ハロゲンを含むことができる)
で表される化合物を得ることによって、クエチアピンを調製することを開示する。’288号特許の実施例1では、式:
【化4】

で表される化合物を得るために塩素化を行う。式:
【化5】

で表される化合物を、オキシ塩化リンおよびN,N−ジメチルアラニンと混合して、懸濁物を得ることによって、この塩素化反応を行う。その後、その懸濁物を還流温度まで加熱する。加熱の6時間後、得られた溶液を冷却させる。その後、回転式エバポレーターを使用して、過剰のオキシ塩化リンを除去する。その後、得られた生成物をピペラジンと反応させる。
【0005】
’288号特許は、さらに、「ハロゲン化剤は、好ましくは五ハロゲン化リンまたはオキシハライド(POHal3)である。上記ハライドは、たとえば、塩素または臭素、特に塩素から選択される。[塩素化]を所望の場合、好ましいハロゲン化剤は、オキシ塩化リン(POCl3)である。[臭素化]を所望の場合、好ましいハロゲン化剤は、五臭化リンである。N,N−二置換アニリン、好ましくはN,N−ジ[1−6C]アルキル置換アニリン、さらに好ましくはN,N−ジメチルアニリンの存在下で、反応を有利に行い得る。その反応は、高温で、好ましくはその反応混合物の還流温度で、3から15時間まで、好ましくは4から10時間まで、さらに好ましくは6時間まで、都合良く有利に達成される。」ことを開示する。
【0006】
’288号特許の実施例1で提供される反応のスキームは以下のとおりである。
【化6】

【0007】
PCT特許公報WO2006/135544号(以降、WO’544号とする)は、異なる試薬を用いるが同じ一般反応スキームを行う。WO’544号の要約は、「11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(クエチアピン)を合成し、かつ僅かなモル過剰量のオキシ塩化リンを使用してジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11(10H)オンをトリアルキルアミン塩基の存在下で塩素化して、11−クロロ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを生成し、その後ピペラジンで11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンにアルキル化し、そして最終的に2−(2−クロロエトキシ)エタノールでアルキル化されるそのフマル酸塩としてクエチアピンを回収する方法」を提供する。
【0008】
WO’544号の実施例1では、式(III)で表される化合物を、トリエチルアミンおよびオキシ塩化リンで混合することにより塩素化をトルエン中で行う。その後、110℃の還流温度で、2時間、反応を行う。
【0009】
WO’544号は、式(III)で表される化合物をピペラジンと反応させることによって化合物IVを調製する。WO’544号は、その反応が、下記の構造:
【化7】

のジアルキル化不純物を生じることを報告している。WO’544号は、この不純物を含有するトルエン溶液を、塩酸水溶液と混合して、水相で3のpHを得ることによって、この不純物を除去することを報告している。この酸の添加は、化合物IVの塩の形成を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
’288号特許およびWO’544号の方法は、幾つかの欠点を有する。実施例1で行われるとおり、’288号特許の方法は、塩基および最適な試薬の両方としてN,N−ジ[1−6C]アルキル置換アニリンを使用する。この化合物は毒性がある。実施例1で行われるとおり、’288号特許の方法は、多量のオキシ塩化リンも使用し、オキシ塩化リンは毒性があり、そして環境的に有害でもある。さらに、面倒な方法での蒸留を介して、オキシ塩化リンを典型的に除去する。
【0011】
WO’544号の方法は、’288号特許のN,N−ジ[1−6C]アルキル置換アニリンをトリエチルアミンおよびトルエンに置換する。本出願人らは、この方法が、別の不純物の形成を生じることを見出した。さらに、トリエチルアミンは極度に可燃性である。それは、腐食性であり、かつ燃焼を引起す可能性がある。トリエチルアミンに対する慢性暴露は、肝臓障害を引起す可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、工業規模で、高純度のクエチアピンを調製するのに適切な方法を提供する。
【0013】
本発明の概要
1つの実施形態では、本発明は、式(III)で表される化合物、11−ハロ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを調製する方法であって、式(II)で表される化合物、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン11−(10H)オンを、僅かに過剰量のハロゲン化剤と反応させることを含み、塩基の不在下で行われる方法を提供する。好ましくは、ハロゲン化剤は、五ハロゲン化リン(phosphorus pentahalide)、オキシハライド(POHal3)、塩化チオニルまたは塩化オキサリルである。反応は、低温でジクロロメタン(MDC)、二塩化エチレン(EDC)等のような脂肪族ハロゲン化炭化水素の存在下で有利に行われ得る。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、式[III]で表される11−ハロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンから式[IV]で表される11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよびそれの医薬として許容される塩を調製する方法であって、式[III]で表される11−ハロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを、ピペラジンと合わせることと、有機酸を添加して、式[IV]で表される11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを得ることと、および得られた反応混合物から式[IV]で表される11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの化合物を回収することと、を含む方法、に関する。好ましくは、有機酸は、蟻酸、酢酸およびアジピン酸から選択される脂肪族有機酸である。
【0015】
さらに別の実施形態では、本発明は、式[III]で表される11−ハロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンから、式[IV]で表される11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよびそれの医薬として許容される塩の調製の改良方法であって、式[III]で表される11−ハロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンをピペラジンと混合して、残渣を形成することと、C1−C5アルコールから残渣を結晶化および/またはスラリー化させて、式[IV]で表される化合物11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを得ることと、および回収することと、を含む方法、を提供する。
【0016】
さらに別の実施形態では、本発明は、11−クロロ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン[III]からの11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン[IV]の調製の改良方法であって、(a)11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの芳香族溶液をピペラジンと反応させることと、(b)当該溶液を加熱することと、(c)当該溶液を冷却して、水層および有機層を有する混合物を形成することと、(d)有機層を分離することと、(e)有機層を水で洗浄することと、および(f)有機層から式[IV]で表される化合物11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを回収することと、を含む方法、を提供する。
【0017】
1つの実施形態では、本発明は、上に示されるとおりの式[IV]で表される化合物を調製し、それをクエチアピンおよびその医薬として許容される塩に変換することによって、フマル酸クエチアピンを調製する新規方法を包含する。
【0018】
1つの実施形態では、本発明は、式[IV]で表される11−ピエラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンから式[I]で表される2−(2−(4−ジベンゾ[b,f]−[1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールの調製の改良方法であって、塩基、溶媒および相間移動触媒の存在下で、式[IV]で表される化合物の溶液を、2−(2−クロロエトキシ)エタノールと反応させること、加熱することと、冷却することと、鉱酸または脂肪族有機酸を添加して、式[I]で表される化合物2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールを得ることと、および回収することと、を含む方法、を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、下記の構造:
【化8】

を有する単離化合物、化合物AおよびBを提供し、それらの化合物は、トルエン関連不純物であり、式IIで表される化合物から式IIIで表される化合物の調製の間に単離される。
【0020】
さらに別の実施形態では、本発明は、上に示されるとおり式[I]で表される化合物(クエチアピン)を調製し、その化合物をその医薬として許容される塩に変換することによって、フマル酸クエチアピンを調製する新規方法を提供する。
【0021】
1つの実施形態では、本発明は、下記の構造:
【化9】

で表される単離化合物を提供する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、式[IV]で表される11−ピペラジニルジベンゾ[b,f]チアゼピンから下記の構造:
【化10】

で表される不純物を除去する方法であって、11−ピペラジニルジベンゾ[b,f]チアゼピンを有機酸で洗浄することを含む方法、を提供する。
【0023】
さらに別の実施形態では、本発明は、a)式
【化11】

(式中、Aは、塩素、ヨウ素または臭素である)
で表される化合物IIIを、ピペラジンと反応させて、式:
【化12】

で表される化合物IVおよび下記の構造:
【化13】

で表される不純物の混合物を得ることと、
b)有機酸で洗浄することによって、式IVで表される化合物からその不純物を分離することと、
c)IVで表される化合物をクエチアピンまたは医薬として許容される塩に変換することと、を含む、クエチアピンを調製する方法を提供する。
【0024】
1つの実施形態では、本発明は、下記の構造:
【化14】

(式中、Aは塩素、ヨウ素または臭素である)の化合物IIIを調製する方法であって、塩基の不在下で下記の構造:
【化15】

の化合物IIを、ハロゲン化剤および脂肪族ハロゲン化炭化水素と混合して、化合物IIIを得ることを含む方法、を提供する。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、クエチアピンを調製する方法であって、
a)式:
【化16】

で表される化合物IIを、脂肪族ハロゲン化炭化水素およびハロゲン化剤と混合して、塩基の不在下でハロゲン化することで、式:
【化17】

(式中、Aは、塩素、ヨウ素または臭素である)
で表される化合物IIIを得るステップと、
b)化合物IIIをピペラジンと反応させて、式:
【化18】

で表される化合物IVを、下記の構造:
【化19】

を示す不純物との混合物で得るステップと、
c)混合物を有機酸と混合すること、あるいはC1−C5アルコール中で混合物をスラリー化/結晶化することとの少なくとも一方によって、化合物IVを分離するステップと、
d)化合物IVを構造:
【化20】

(式中、Aは塩素、ヨウ素または臭素である)
を有する化合物と反応させて、下記の構造:
【化21】

で表されるクエチアピンを得るステップと、
の各ステップを含む方法、を提供する。
【0026】
11−ハロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン[III]からの式[IV]で表される11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよびその医薬として許容される塩の調製の改善された方法に関連した本発明の別の態様では、11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを、ピペラジンと混合して残渣を形成することと、C1−C5アルコールから残渣を結晶化および/またはスラリー化して、式[IV]で表される化合物11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを得ることと、および場合により式[IV]で表される化合物の芳香族溶液を、鉱ハロ酸と反応させ、それをクエチアピンおよびその医薬として許容される塩に変換することによって、式[IV]で表される化合物11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを回収することと、を含む。好ましくは、無機ハロ酸がHClである。
【0027】
別の態様では、本発明は、11−クロロ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン[III]から式[IV]で表される11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの調製の改善された方法であって、
a)11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの芳香族溶液をピペラジンと反応させることと、
b)その残渣をアルコール性溶液で処理することと、
c)式[IV]で表される化合物11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを回収することと、を含む方法、に関する。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、11−ハロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン[III]から11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン2HClの調製の改良方法であって、
a)式[III]で表される11−ハロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの芳香族溶液を、ピペラジンと反応させて、反応混合物を得ることと、
b)ステップ(a)の反応混合物を、脂肪族有機酸で酸性化して、反応混合物を形成することと、
c)式(b)の反応混合物から、式(IV)で表される化合物11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを回収し、そして式(IV)で表される化合物の芳香族溶液を、無機塩酸と反応させて、11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン2HClを得ることと、を含む方法、に関する。
【0029】
好ましくは、有機酸は、蟻酸、酢酸およびアジピン酸から選択される脂肪族有機酸である。
【0030】
ステップ(a)で、11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの芳香族溶液を、その方法のステップ(b)でピペラジンと混合させる。
【0031】
溶液を、約50℃から約100℃まで、好ましくは約60℃から約80℃までの間で適切に加熱し、そして約1から約6時間、好ましくは約2から約4時間維持する。
【0032】
反応混合物を、約20から約30℃に冷却し、そして濾過して、ピペラジニルヒドロクロリドを単離する。
【0033】
ステップ(b)では、母液を、水で洗浄し、そして蟻酸、酢酸およびアジピン酸から選択される脂肪族有機酸を使用して酸性化する。当該溶液のpHを、約5から約1まで、好ましくは約4から約2まで、最も好ましくは約3.0から約2.0までの間に調節する。
【0034】
それにより分離された相および水相を、トルエンのような有機溶媒で抽出する。その後、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、トルエン、エーテル、エステル、塩素化溶媒等のような有機溶媒の存在下で炭酸アルカリ金属、アルカリ金属水酸化物および重炭酸アルカリ金属から選択される適切な塩基を使用することによって、約7.5から約11.0まで、好ましくは約8から約10までの間にpHを調節することによって、11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン化合物を、水相から抽出した。
【0035】
ステップ(c)での式(IV)で表される化合物を回収し、かつHClで処理して、式[IV]で表される化合物の2HCl塩の化合物を得ることができる。
【0036】
さらに別の態様では、本発明は、11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン[III]からの11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン2HClの調製の改良方法であって、
a)11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの芳香族溶液を、ピペラジンと反応させることと、
b)その残渣をアルコール性溶液で処理することと、
c)式(IV)で表される化合物11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを回収することと、
d)式(IV)で表される化合物の芳香族溶液を、塩酸と反応させることと、を含む方法、に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(発明の詳細な説明)
本明細書において、用語「室温」は、約20℃から約30℃までの温度を表す。
【0038】
本発明者は、還流条件下で、トルエン、およびPOCl3のような塩素化剤を使用することによる式[III]で表されるイミノハライドの調製についてのWO’544号の方法が、式[III]で表される所望のイミノハライドと一緒に、トルエン関連不純物の形成をもたらすことを知見した。トルエン関連不純物は、主に、式[A]および[B]で表される化合物である。
【化22】

【0039】
本発明者は、塩基を排除し、かつ溶媒としてハロゲン化炭化水素を使用することによって、高純度を示す化合物IIIを調製する新たな方法を開発した。WO’544号のトリエチルアミンの使用は、そのような塩基がハロゲン化炭化水素に不適合であるので、本発明の方法と適合性がない。本発明の方法は、WO’544号の塩基を全体的に排除し、かつWO’544号の方法と不適合である溶媒を使用することによって、高純度を示す生成物を調製する。
【0040】
本発明は、高純度の式[III]で表される11−ハロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン中間体の調製をもたらす。有機塩基を避け、したがって規模拡大のための全体的手段、特にトルエン関連不純物の除去を簡素化するので、それは経済的にいっそう適切である。
【0041】
本発明は、式[I]で表される2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールを調製する方法であって、以下のスキーム:
【化23】

(式中、Aは塩素、ヨウ素または臭素である)
で示されるとおり、式[II]で表されるジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン11−(10H)オンで出発する方法、を提供する。
【0042】
本発明によって、式[II]で表される化合物をハロゲン化剤と反応させることによって、式[III]で表される化合物11−ハロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを調製できる。塩素化については、ハロゲン化剤の例は、五ハロゲン化リン(PCl5)、オキシハライド(POHal3)、塩化チオニルおよび塩化オキサリルを含む。臭素化剤の例は、三臭化リン、塩化臭素、および三臭化アルミニウムを含む。好ましくは、塩素化を行う。好ましくは、約1.2から約1.6までのような僅かなモル過剰量のハロゲン化剤を使用する。ハロゲン化C1−C8炭化水素のような脂肪族ハロゲン化炭化水素溶媒の存在下で、反応を行ってもよい。このような炭化水素の例は、ジクロロメタン(DCM)および二塩化エチレン(EDC)を含む。反応中の温度は、好ましくは、約−5℃から約−25℃まで、さらに好ましくは約−15℃から約−20℃までである。
【0043】
例示されるとおり、式[II]で表されるジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11(10H)オンと、ジクロロメタンのような適切な溶媒とを合わせることによって、この反応を行うことができる。その後、五塩化リンのようなハロゲン化剤を添加する。ハロゲン化剤の添加は、約−25℃から約−5℃まで、好ましくは約−20℃から−15℃までのような、およそ室温未満で行われるのが好ましい。ハロゲン化剤の添加の後、反応混合物を得る。好ましくは、反応混合物を、約120から約240分間、好ましくは約120から約180分間維持する。反応混合物を、例えば約20℃から約25℃まで、さらに加温してもよい。その後、蒸留のような蒸散によって、反応溶媒を除去できる。トルエンを添加し、そしてさらなる蒸留を行って、さらなるジクロロメタンを除去し得る。その後、反応混合物を水と混合して、2層を得ることができる。蒸散により有機層から生成物を回収できる。
【0044】
前記ハロゲン化反応は、毒性かつ潜在的に発癌性のアミン、特にN,N−ジメチルアニリンのようなN,N−二置換アニリンの不在下で行うことができる。塩基不在下で、当該ハロゲン化反応を行うこともできる。
【0045】
その合成法でのハロゲン化炭化水素溶媒の使用は、高純度の、好ましくは面積百分率HPLCとして95%より高い純度、さらに好ましくは約99%HPLC純度を示す生成物を得ることを可能にする。その代わりに、還流条件下でトルエンを使用を使用する場合、生成物は不純であり、HPLCにより87%の純度レベルを示す。トルエンの使用は、式[III]で表される所望の化合物と一緒にトルエン関連不純物の形成をもたらす。トルエン関連不純物は、以下の一般構造:
【化24】

と、および下記の構造:
【化25】

で表される特定の化合物を有する。
【0046】
さらに式III(Aは塩素であるものを含む)を実質的に含まない、単離形態でのこれらのトルエン関連不純物が提供される。クロマトグラフィーによって、単離を行うことができる。化合物AおよびBは、別個の区分されたピークとして形成し得る。本明細書において、その用語は、これらの化合物が、1:1より少ないモル比の化合物・式[III]を含有することを実質的に妨げられずに意味する。
【0047】
ハロゲン化炭化水素溶媒の代わりにトルエンを使用すること以外は上で示され反応を行うことによって、上の化合物AおよびBを調製できる。理想的な条件は、加熱、好ましくは還流温度下である。2つの相反応混合物が上に示されるとおりに得られた後、n−ヘキサンのようなC5−C12炭化水素を添加して、蒸留により微量のトルエンを除去できる。不純物AおよびBを、溶媒の除去によって残渣として回収できる。不純物Aおよび不純物Bを、分取TLCまたはクロマトトロンを使用して、残渣から単離できる。クロマトトロンは、分取、遠心分離、加速、放射、または薄層クロマトグラフィーであり得る。
【0048】
本発明は、さらに、ピペラジンを用いることによって、式[III]の化合物を式[IV]の化合物に変換する方法を提供する。トルエンまたはキシレンのようなC6−C12芳香族炭化水素中にある式[III]で表される11−ハロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(好ましくは、11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン)をピペラジンと合わせることによって、反応を行うことができる。反応混合物を、おおよそ、約50℃から約110℃の間で、好ましくは約60℃から約80℃までの間で加熱できる。反応混合物を、約1から約6時間、好ましくは約2から約4時間維持できる。
【0049】
ピペラジン対式[III]で表される化合物(好ましくは、11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン)のモル比は、約3から約6までであり得る。好ましくは、モル比は、約4から約5までの範囲にある。ピペラジンのHCl塩を形成して、その反応中に形成されるHClを中和するように、このような過剰モル比が好ましい。この塩は、可溶性固形物として形成され、そしてそれは、最終的に溶解される。
【0050】
式[IV]で表される化合物を回収するために、その後、反応混合物を、約20℃から約30℃までの温度までのように冷却できる。冷却は、塩酸ピペラジニルを沈殿させ、濾過によって回収し得る。その後、水を、反応混合物に添加して、2層を得ることができる。有機層を、水で洗浄し、そして有機酸、好ましくはC1−C8脂肪族有機酸、好ましくは蟻酸、酢酸またはアジピン酸である有機酸を使用して酸性化する。酸性化は、式[IV]で表される化合物を沈殿させる。蟻酸、酢酸およびアジピン酸を用いて、酸性化を行うことができる。pHを、約5から約1まで、好ましくは約4から約2まで、最も好ましくは約3から約2までの間に調節する。最も好ましくは、約3.0のpHで酸性化を行う。その後、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、トルエン、エーテル、エステル、塩素化溶媒等のような有機溶媒の存在下で、炭酸アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、および重炭酸アルカリ金属から選択される適切な塩基を使用することによりpHを約7.5から約11.0までの間、好ましくは約8から約10までの間に調節することによって、式[IV]化合物の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを、水相から抽出し得る。
【0051】
反応混合物を水で洗浄し、そして有機および水相を分離することができる。有機相を蒸留し、そしてメタノール、エタノールおよびn−ブタノールのようなC1−C5アルコールを添加することによって、トルエンを除去し、そしてメタノール、エタノールおよびn−ブタノールのようなC1−C5アルコールを用いた結晶化および/またはスラリー化で、式[IV]で表される化合物を得ることができる。
【0052】
反応を修正して、式[IV]で表される化合物の塩酸塩(2HCl塩のような)または他の塩を得ることができる。トルエンでの反応の後、HClまたは別の酸を、例えば室温で、反応混合物に添加できる。反応混合物を、例えばおよそ105〜110℃まで加熱し、そして共沸蒸留のような蒸散によって水を除去できる。その後、HClまたは別の塩を、例えば濾過によって固形物として回収できる。結果として得られる生成物を、無水アルコールのようなC1−C5アルコール中でスラリー化/結晶化させ得る。その生成物を、例えば1気圧未満の圧力下、および約45〜50℃の温度で乾燥させ得る。
【0053】
ピペラジンとの式[III]で表される化合物(好ましくは、11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン)の反応では、ピペラジンは、式[III]で表される化合物の2つの分子と反応することが可能であり、したがって下記の構造:
【化26】

の不純物(ジアルキル化ピペリジニル)を提供する。
【0054】
この不純物は、水による洗浄で除去されず、そして式[IV]で表される11−ピペラジニルジベンゾ[b,f]チアゼピンの溶液に残ると考えられる。蟻酸、酢酸およびアジピン酸のような脂肪酸を含めた有機酸を用いた洗浄で不純物を除去できる。脂肪酸は、C1−C8酸である。洗浄は、約20℃から約30℃までのような低温で、上述の脂肪族C1−C8酸の存在下で行うことができる。脂肪酸を用いたこの不純物の除去は、酸水溶液を用いた除去より有益である。鉱酸を用いると、pHは広範であり、そして急速に低下する可能性があるが、しかし蟻酸、酢酸のような有機酸の場合には、酸量が高い側にある場合でさえ、pH範囲は劇的には変化しない。鉱酸の場合には、pHは、低下し、そして不安定になる可能性がある一方で、酸量が高い側にある場合でさえ、蟻酸、酢酸のような有機酸の使用で、pH範囲は劇的には変化しない。これは、約2〜5の範囲内にあるpHを生じ、そしてそれは、順に、生成物と不純物との間の優れた分離を生じ、最終的に優れた収率を得る。さらに好ましくは、pHは、約2〜4の範囲にある。式[IV]で表される生成物は、水相で得られる一方で、有機相は、ジアルキル化ピペリジニル不純物を含有する。他方では、式[III]で表される化合物から式[IV]で表される化合物の変換で、鉱酸がWO2006/135544号でのように使用される場合、ジアルキル化ピペリジニル化合物それ自身は、酸塩を形成し、それを除去することは困難である。
【0055】
その後、化合物IVを化合物Iに変換することができる。この変換は、式(IV)で表される化合物の溶液を、2−(2−クロロエトキシ)エタノール(または一般には2−(2−ハロエトキシ)エタノール)と反応させることによって行うことができる。このような反応は、これらの化合物を塩基、有機溶媒および場合により相間移動触媒と合わせることによって行われ得る。その反応を加速するために、反応混合物を加熱し、そして続いて冷却して回収を促進することができる。反応の後、水を添加して、2相を得ることができる。酸を水相に添加して、pHを酸性にすることができる。いったん酸性pHが達成されると、塩形態にある水溶液中の化合物IVを得て、それを塩基化することによって回収される。その後、例えば共沸蒸留によって任意の溶媒を蒸散させることによって、化合物IVを回収し得る。
【0056】
適切な相間移動触媒は、塩化トリカプリリルメチルアンモニウム(アリカートRTM 336)、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム(「TBAB」)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(「TEBA」)、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム、塩化N−ベンジルキニニウム、塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化テトラ−エチルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリエチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、および塩化オクチルトリメチルアンモニウムのようなアンモニウム塩であり得る。さらに好ましい相間移動触媒は、アリカートRTM.336、TBAB、TEBAおよびそれらの混合物であり、最も好ましいのは、アリカートRTM.336である。
【0057】
適切な塩基は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属炭酸塩または水酸化物、たとえば、重/炭酸カリウム、重/炭酸ナトリウム、または水酸化ナトリウム、炭酸/水酸化セシウムを含む。金属炭酸塩は、本発明の実施で使用するために好ましい無機塩基である。
【0058】
反応混合物を、約60℃から約150℃まで、好ましくは約80℃から約120℃までの間の温度で加熱できる。
【0059】
冷却は、約15℃から約30℃まで、好ましくは約25℃から約30℃までの温度で行うことができる。
【0060】
その酸は、HClまたはH2SO4のような鉱酸、または蟻酸、酢酸またはアジピン酸のような有機酸であり得る。
【0061】
有機溶媒は、芳香族および脂肪族溶媒から選択され得る。芳香族溶媒は、トルエンおよびキシレンの群から選択される。脂肪族溶媒は、脂肪族アルコールの群から選択される。脂肪族アルコールの例は、メタノール、エタノール、n−ブタノールのようなC1−C8アルコールである。
【0062】
化合物Iを、フマル酸塩のような医薬として許容される塩に変換できる。上に示されるとおりに得られた化合物Iを、C1−C4アルコール、好ましくは無水エタノールと合わせることができる。その後、フマル酸を、好ましくは約40℃から約60℃までの温度で添加して、フマレートを得ることができる。その後、例えばおよそ室温までの冷却、そして濾過によってフマレートを回収できる。湿潤材料は、1気圧未満の圧力下および/または約40℃から約60℃までの高温で乾燥され、フマル酸クエチアピンを得ることができる。
【0063】
単離トルエン関連不純物を、参照マーカー/標準として使用し得る。比較的純粋な状態にある化合物を、未知混合物中で化合物の量を定量する「参照標準」として使用し得る(「参照マーカー」は、参照標準に類似するが、しかしそれは、定性分析たのめに使用される)。化合物が、「外部標準」として使用されるとき、既知濃度の化合物の溶液は、未知混合物と同じ技術によって解析される。(Strobel 924頁、Snyder 549頁)(Snyder,L.R.;Kirkland、J.J.Introduction to Modern Liquid Chromatography,2版(John Wiley & Sons:ニューヨーク1979年))。混合物中の化合物の量は、検出器応答の規模を比較することによって決定され得る。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,333,198号も参照のこと。
【0064】
参照標準化合物は、2つの化合物に対する検出器の感度での差を補う「応答因子」が予め決定された場合に、混合物中の別の化合物の量を定量するためにも使用され得る(Strobel、894頁)。この目的のために、参照標準化合物を、その混合物に直接添加でき、その場合には、「内部標準」と称される。(Strobel 925頁、Snyder 552頁)。
【0065】
既知かつ異なる量の内部標準を添加することによって少なくとも2つのサンプルを調製する「標準添加」と称される技術を使用することによって、未知混合物がある程度の参照標準化合物を含有するとき、参照標準化合物は、内部標準としてさえも使用することができる。(Strobel 391−393頁、Snyder 571−572頁)。当初から混合物中にある参照標準化合物に起因する検出器応答の比率を、検出器応答のプロット対、サンプルの各々にゼロまで加えられた参照標準化合物の量の外挿によって決定できる。(たとえば、Strobel、図11.4、392頁)。
【0066】
「参照マーカー」は、たとえば、クロマトグラムで、または薄相クロマトグラフィー(TLC)プレートでのそれらの位置に基づいて混合物の成分を同定する定性分析で使用される(Strobel 921頁、922頁、953頁)。この目的のために、化合物が混合物中に存在する場合、化合物を、その混合物に添加しなければならない必然性はない。「参照マーカー」は、定性分析のためにのみ使用される一方で、参照標準は、定量または定性分析、または両方に使用され得る。それゆえ、参照マーカーは、参照標準のサブセットであり、そして参照標準の定義内に含まれる。
【0067】
参照標準に関する技術にあるものの知識のなかには、この点まで一般用語で説明されたものがあったが、当業者は、検出器応答が、例えばHPLCシステムの溶出液からのUVまたは屈折率検出により、または例えばガスクロマトグラフィーの溶出液からの水素炎イオン化検出あるいは熱伝導性検出により得られるクロマトグラムのピーク高または統合ピーク面積、あるいは、例えば蛍光TLCプレート上のスポットの他の検出器応答、例えばUV収光度である可能性があることも分かる。参照標準の位置は、ロスバスタチンおよび他の不純物についての相対的滞留時間を計算するために使用され得る。
【0068】
本発明の上の説明は、本発明をより良く、かついずれの態様にも本発明を決して限定しないように理解するために記載される有効な実施例の形態で示される。
【0069】
装置:
1)pH測定装置;トシニワール・リサーチ(Toshiniwal Research)、pH/mV測定装置、モデル:pH100
2)HPLC条件:式IIで表されるジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの不純物測定のためのクロマトグラフィー条件
クロマトグラフィー条件:
【表1】

【0070】
緩衝剤:
0.04M酢酸アンモニウム水溶液、および1000mlの緩衝剤溶液当たり2.0mlの25%水酸化アンモニウム。緩衝剤pHは、9.2より低くあるべきでない。
溶出液A:緩衝剤
溶出液B:アセトニトリル
希釈剤:メタノール
分析を開始する前に、30分間、溶出液A−20%:溶出液B−80%を用いてカラムを洗浄した。
【0071】
システム適合性溶液の調製
メタノール中で約1.0mg/mlのDBTおよび0.5mg/mlのフマル酸クエチアピンを調製した。
【0072】
サンプル溶液の調製
サンプルの約0.5mg/ml溶液を正確に調製した。
【0073】
3)HPLC条件:式IIIで表される11−クロロ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの不純物測定のためのクロマトグラフィー条件
クロマトグラフィー条件
【表2】

【0074】
分析を開始する前に、30分間、溶出液A−20%:溶出液B−80%を用いてカラムを洗浄した。
【0075】
システム適合性溶液の調製
緩衝剤:ACN(65:35v/v)中での約1.0mg/mlのフマル酸クエチアピン(溶液A)の調製
メタノール中での0.2mg/mlのDBT(溶液B)を調製した。
希釈剤中での0.2mg/mlのCDBT(溶液C)を調製した。
10ml容積フラスコ中で約5mlの溶液Aおよび各々2mlの溶液Bおよび溶液Cを混合する。希釈剤で体積を補充。
【0076】
サンプル溶液の調製
希釈剤中の約0.5mg/mlのサンプルを調製した。
【0077】
4)HPLC条件:式IVで表されるフマル酸クエチアピンの不純物測定のためのクロマトグラフィー条件
クロマトグラフィー条件
【表3】

【0078】
溶出液A:酢酸またはアンモニア溶液のいずれかでpH6.7に調節された70%の酢酸アンモニウム水溶液0.04M、および30%のアセトニトリル。
【0079】
溶出液B:アセトニトリル(勾配グレード)
【0080】
勾配プログラミング
【表4】

【0081】
システム適合性調製:100mlのDMSO中での2.5mgの各DBTP−チアゼピン、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−(10H)−オンおよびDBTP−エチル、そしてアセトニトリルで希釈する。得られた濃度は、0.0125mg/mlのものである。10ml容積フラスコ中に5mgのDBTPを秤量し、そして1mlの溶液a)を添加する。希釈剤で溶解させ、そして希釈剤で10mlにする。
【0082】
5)HPLC条件:式Iで表されるフマル酸クエチアピンの不純物測定のためのクロマトグラフィー条件
【表5】

【0083】
緩衝剤の調製
0.04M酢酸アンモニウム水溶液を調製し、そして1000mlの緩衝剤溶液当たり2.0mlの25%水酸化アンモニウムを添加する。緩衝剤のpHは、9.2より下であってはならない。緩衝剤を毎日交換する。
溶出液A:緩衝剤
溶出液B:アセトニトリル(勾配グレード)
【0084】
希釈剤の調製
溶出液A:溶出液B(65:35)v/v
【0085】
勾配プログラミング
【表6】

平衡時間:8分
分析を開始する前に、以下の溶出液を用いて30分間カラムを洗浄する:溶出液A20%:溶出液B80%。可動相組成および流速は、要求されるシステム適合性を達成するために変動され得る。
【0086】
システム適合性溶液の調製
希釈剤中の約1.0mg/mlのフマル酸クエチアピン標準と0.002mg/mlのDBTP標準との混合物を調製する。
【実施例】
【0087】
実施例1.11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
攪拌棒、サーモポケット、窒素注入口を具備した1リットルの丸底フラスコに、50グラム(0.22モル)のジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−(10H)オン、300ccのジクロロメタンを注入し、その混合物を、室温で15分の間撹拌した。
【0088】
結果として生じる溶液を、−20℃まで冷却した。70グラム(0.33モル)五塩化リンを、−20℃から−15℃までで、90分間かけて、5回の等量で添加した。その反応混合物を、−20℃から−15℃までで、120〜180分間維持させた。HPLCによって反応混合物を分析した。分析は、2%未満のジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(10H)オンが存在することを示した。反応混合物を、240分間、20℃から25℃までに上昇させ、反応溶媒(ジクロロメタン)を、40℃より下で真空下で蒸留除去し、そして生成物と共に50ccのジクロロメタンを放出した。結果として生じる反応物に、250ccのトルエンを添加し、反応溶媒混合物(ジクロロメタン/トルエン)を、55℃より下で真空下で蒸留除去して、生成物と共に150ccのトルエンを放出した。150ccトルエンを添加し、反応溶媒を55℃より下で真空下で蒸留除去し、生成物と共に150ccのトルエンを放出した。別の250ccのトルエンを添加し、そして混合物を室温に冷却した。反応混合物を、10〜15℃で600ccの予め冷却されたDM水に注ぎ、結果として得られる反応混合物を、25〜30℃で30分間攪拌した。その層を分離し、そして有機層を飽和生理食塩水で洗浄した。有機層を、55℃より下で真空下で蒸留除去して、生成物と共に350ccトルエンを放出した。トルエン中の11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]−チアゼピンの純度は、99%(HPLCによる面積率(%))であった。
【0089】
実施例2.11−クロロベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
攪拌棒、サーモポケット、窒素注入口を具備した1リットルの丸底フラスコに、50グラム(0.22モル)のジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−(10H)オン、300ccのジクロロメタンを注入し、その混合物を、室温で15分の間撹拌した。結果として生じる溶液を、−20℃まで冷却した。70グラム(0.33モル)五塩化リンを、−20℃から−15℃までで、90分間かけて、5回の等量で添加した。その反応混合物を、−20℃から−15℃までで、120〜180分間維持させた。HPLCによって反応混合物を分析した。分析は、2%未満のジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(10H)オンが存在することを示した。反応混合物を、30分間、20℃から25℃までに上昇させた。反応混合物を、10〜15℃で600ccの予め冷却されたDM水に注ぎ、結果として得られる反応混合物を25〜30℃で30分間攪拌した。その層を分離し、そして有機層を、飽和生理食塩水で洗浄した。有機層を、50℃より下で真空下で蒸留除去して、生成物と共に50ccのジクロロメタンを放出した。150ccのトルエンを添加し、反応溶媒混合物(ジクロロメタン/トルエン)を、55℃より下で真空の下で蒸留除去して、生成物と共に100ccのトルエンを放出し、それに、150ccトルエンを添加し、反応溶媒を55℃より下で真空下で蒸留除去して、生成物と共に100ccのトルエンを放出した。結果として得られる反応物に250ccのトルエンを添加し、そして次のステップのために回した。トルエン中の11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの純度は、99%(HPLCによる面積率(%))であった。
【0090】
実施例3.11−クロロベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
攪拌棒、サーモポケット、窒素注入口、および水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、50グラム(0.22モル)のジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−(10H)オン、500ccのトルエンを注入し、その混合物を、室温で15分の間撹拌した。結果として生じる溶液に、70グラム(0.33モル)五塩化リンを、25℃から30℃までで、90分で、5回の等量で添加した。その反応混合物を、110℃で6時間還流させた。HPLCによって反応混合物を分析した。分析結果は、2%未満のジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(10H)オンが存在することを示した。反応混合物を、30分間、20℃から25℃までに冷却した。反応混合物を、10〜15℃で予め冷却されたDM水(500cc)に注ぎ、そして25〜30℃で30分間攪拌した。その層を分離し、そして非水性の層を飽和食塩水で洗浄した。非水性の層を、50℃より下で真空下で蒸留除去して、生成物と共に400ccのトルエンを放出し、そして結果として得られる反応物を次のステップに回した。トルエン中の11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの純度は、87%(HPLCによる面積率(%))であった。
【0091】
実施例4.11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、トルエン350cc中の11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液[52グラム(0.22モル)]を注入し、そして45〜50℃で73.0グラム(0.84モル)のピペラジンを添加した。反応混合物を70〜80℃まで加熱した。反応混合物を、120〜180分間、70℃から80℃までで維持した。HPLCによって反応混合物を分析した。反応混合物を20℃から25℃までに冷却し、そして250ccDM水を添加し、そして30分間、25〜30℃で攪拌した。層を分離し、そして有機層を、250ccのDM水で洗浄した。有機層を次のステップに回した。トルエン中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの純度は、97%(HPLCによる面積率(%))より大きかった。
【0092】
実施例5.11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、トルエン中の11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液[52グラム(0.22モル)]を注入し、そして45〜50℃で73.0グラム(0.84モル)のピペラジンを添加した。反応混合物を70〜80℃まで加熱した。反応混合物を、120〜180分間、70℃から80℃までで維持した。HPLCによって(式IIIで表される化合物の不在について調査するために)反応混合物を分析した。反応混合物を20℃から25℃までで冷却し、250ccDM水を添加し、そして30分間、25〜30℃で攪拌した。層を分離し、そして有機層を、250ccのDM水で洗浄した。有機層に、250cc水を添加し、そして蟻酸で酸性化させて、2〜3のpHを得た。内容物を15分間攪拌し、その層を分離した。水層を150ccトルエンで洗浄し、そして水層を、炭酸ナトリウムで8から10までのpHに塩基性にし、そして3×250ccのトルエンで抽出した。有機層を合せ、そしてDM水130ccで二回洗浄した。トルエン中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの純度は、99%(HPLCによる面積率(%))より大きかった。
【0093】
実施例6.11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、トルエン中の11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液[52グラム(0.22モル)]を注入し、その混合物を45〜50℃で15分間攪拌した。結果として得られる溶液に、45〜50℃でピペラジン73.0グラム(0.84モル)を添加した。反応混合物を70〜80℃まで加熱した。反応混合物を、120〜180分間、70℃から80℃までで維持した。HPLCによって(式IIIで表される化合物の不在について調査するために)反応混合物を分析した。反応混合物を20℃から25℃までに冷却し、それに、250ccDM水を添加し、そして30分間、25〜30℃で攪拌した。層を分離し、そして有機層を、250ccのDM水で洗浄した。有機層に、250cc水を添加し、それを酢酸で酸性化させて、2〜3のpHを得た。内容物を15分間攪拌し、その層を分離した。水層を150ccトルエンで洗浄し、そして水層を、炭酸ナトリウムで8から10までのpHに塩基性にし、そして3×250ccのトルエンで抽出した。有機層を合せ、そしてDM水130ccで二回洗浄した。トルエン中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの純度は、99%(HPLCによる面積率(%))より大きかった。
【0094】
実施例7.11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン・ジヒドロクリロド
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、700ccのトルエン中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液[63グラム(0.22モル)]を注入し、その混合物を25〜30℃で15分間攪拌した。結果として得られる溶液に、25〜30℃で濃縮HCl 54グラム(0.53モル)を添加し、その混合物を、25〜30℃で15分間攪拌した。反応混合物を105〜110℃まで加熱し、そして水を共沸混合して除去した。結果として得られた反応物を、25〜30℃に冷却し、そして25〜30℃で2時間維持した。塩酸塩を、窒素雰囲気下で濾過し、そして50ccのトルエンで洗浄した。湿潤塩酸塩を、無水エタノールを用いてスラリー洗浄した。吸収乾燥された湿潤ケークを、10時間、45〜50℃で真空下で乾燥させた。塩酸塩の乾燥重量は、70〜75グラムであった。11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン・ジヒドロクロリドの純度は、99.0%(HPLCによる面積率(%))より大きかった。
【0095】
実施例8.11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、トルエン中の11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液[52グラム(0.22モル)]を注入し、その混合物を45〜50℃で15分間攪拌した。結果として得られる溶液に、45〜50℃でピペラジン73.0(0.84モル)を添加した。反応混合物を70〜80℃に加熱した。反応混合物を、120〜180分間、70℃から80℃までに維持した。HPLCによって(式IIIで表される化合物の不在について調査するために)反応混合物を分析し、そして20℃から25℃までに冷却した。反応混合物に、250ccのDM水を添加し、そして25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして有機層を250ccのDM水で洗浄した。有機相を70℃より下で真空下で蒸留除去した。n−ブタノールを添加することによって、微量のトルエンを除去した。得られた油状マスに、150ccのn−ブタノールを添加した。混合物を、24時間攪拌し、そして0〜5℃に冷却した。反応物を、11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを含有する濾液(母液)で濾過した。トルエン中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの純度は、98.0%(HPLCによる面積率(%))より大きかった。
【0096】
実施例9.11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、トルエン中の11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液[52グラム(0.22モル)]を注入し、その混合物を45〜50℃で15分間攪拌した。結果として得られる溶液に、45〜50℃でピペラジン73.0(0.84モル)を添加した。反応混合物を70〜80℃に加熱した。反応混合物を、120〜180分間、70℃から80℃までに維持した。HPLCによって反応混合物を分析し、そして20℃から25℃までに冷却した。反応混合物に、250ccのDM水を添加し、そして25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして有機層を250ccのDM水で洗浄した。有機層を70℃より下で真空下で蒸留除去した。無水エタノールを添加することによって、微量のトルエンを除去した。得られた油状マスに、150ccの無水エタノールを添加した。混合物を、24時間攪拌し、そして0〜5℃に冷却した。反応物を、11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを含有する濾液ML(母液)で濾過した。トルエン中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの純度は、98.0%(HPLCによる面積率(%))より大きかった。
【0097】
実施例10.2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールまたは11−[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)]−1−ピペラジニル]ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、トルエン350cc中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液[63.0g(0.22モル)]を注入し、その混合物を25〜30℃で15分間攪拌し、それに、室温で炭酸ナトリウム[41.0グラム(0.39モル)]、臭化テトラブチルアンモニウム[16.0グラム(0.05モル)]および2−(2−クロロエトキシ)エタノール[32.0グラム(0.257モル)]を添加した。反応混合物を、110〜112℃で還流するまで加熱した。反応混合物を、10〜12時間還流で維持した。HPLCによって(式IVで表される化合物の不在について調査するために)反応混合物を分析し、そして25℃から30℃までに冷却した。それに、150ccDM水を添加した。その後、反応混合物を25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を50ccのトルエンで抽出した。抽出物および有機層を合せ、そしてpHを、DM(脱塩化された)中の1N HCl溶液を使用して2〜3に調節し、その後、反応混合物を、25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を、100ccのトルエンで二回洗浄した。その水層に、250ccのトルエンを添加し、そして炭酸ナトリウムを使用してpHを、8〜10に調節し、その反応混合物を、25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を、125ccのトルエンで抽出した。抽出物および有機酸を合せ、そしてDM(脱塩化した)水300ccで二回洗浄した。有機層を、70℃より下で真空下で蒸留除去して、2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールを得た。2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールの純度は、99.0%(HPLCによる面積率(%))であった。
【0098】
実施例11.2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールまたは11−[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)]−1−ピペラジニル]ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、トルエン350cc中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液[63g(0.22モル)]を注入し、その混合物を25〜30℃で15分間攪拌した。室温で炭酸ナトリウム[41.0グラム(0.39モル)]、臭化テトラブチルアンモニウム[16.0グラム(0.05モル)]および2−(2−クロロエトキシ)エタノール[32.0グラム(0.257モル)]を添加した。反応混合物を、110〜112℃で還流するまで加熱した。反応混合物を、10〜12時間還流で維持した。HPLCによって(式IVで表される化合物の不在について調査するために)反応混合物を分析し、そして25℃から30℃までに冷却し、そして150ccDM水を添加した。その後、反応混合物を25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を50ccのトルエンで抽出した。抽出物および有機層を合せ、それに250ccの水を添加し、そして酢酸で酸性化して、2〜3のpHを得た。反応混合物を、25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を、100ccのトルエンで二回洗浄した。その水層に、250ccのトルエンを添加し、そして炭酸ナトリウムを使用してpHを、8〜10に調節した。結果として得られる反応混合物を、25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を、125ccのトルエンで抽出した。有機酸を合せ、そしてDM水300ccで二回洗浄した。有機層を、70℃より下で真空下で蒸留除去して、2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールを得た。2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールの純度は、99.0%(HPLCによる面積率(%))であった。
【0099】
実施例12.2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールまたは11−[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)]−1−ピペラジニル]ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、トルエン350cc中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液[63.0g(0.22モル)]を注入し、その混合物を25〜30℃で15分間攪拌し、そして室温で炭酸ナトリウム[41.0グラム(0.39モル)]、臭化テトラブチルアンモニウム[16.0グラム(0.05モル)]および2−(2−クロロエトキシ)エタノール[32.0グラム(0.257モル)]を添加した。反応混合物を、110〜112℃で還流するまで加熱した。反応混合物を、10〜12時間還流で維持した。HPLCによって(式IVで表される化合物の不在について調査するために)反応混合物を分析し、そして25℃から30℃までに冷却した。それに150ccDM水を添加し、その後、反応混合物を25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を50ccのトルエンで抽出した。抽出物および有機層を合せ、それに250ccの水を添加し、そして蟻酸で酸性化して、2〜3のpHを得た。反応混合物を、25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を、100ccのトルエンで二回洗浄した。その水層に、250ccのトルエンを添加し、そして炭酸ナトリウムを使用してpHを、8〜10に調節し、反応混合物を、25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を、125ccのトルエンで抽出した。抽出物および有機層を合せ、それにDM(脱塩化)水300ccで二回洗浄した。有機層を、70℃より下で真空下で蒸留除去して、2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールを得た。2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールの純度は、99.0%(HPLCによる面積率(%))であった。
【0100】
実施例13.フマル酸の2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノール塩または11−[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)]−1−ピペラジニル]ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン・フマレート
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、トルエン350cc中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液[63.0g(0.22モル)]を注入し、その混合物を25〜30℃で15分間攪拌し、それに室温で炭酸ナトリウム[41.0グラム(0.39モル)]、臭化テトラブチルアンモニウム[16.0グラム(0.05モル)]および2−(2−クロロエトキシ)エタノール[32.0グラム(0.257モル)]を添加した。反応混合物を、110〜112℃で還流するまで加熱した。反応混合物を、10〜12時間還流で維持した。HPLCによって(式IVで表される化合物の不在について調査するために)反応混合物を分析し、そして25℃から30℃までに冷却し、そして150ccDM水を添加し、反応混合物を25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を50ccのトルエンで抽出した。抽出物および有機層を合せ、そしてDM水中の1N HCl溶液を使用してpHを2〜3に調節し、反応混合物を、25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を、100ccのトルエンで二回洗浄した。その水層に、250ccのトルエンを添加し、そして炭酸ナトリウムを使用してpHを、8〜10に調節し、反応混合物を、25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして水層を、125ccのトルエンで抽出した。抽出物および有機層を合せ、そしてDM水300ccで二回洗浄した。有機層を、50℃より下で真空下で蒸留除去して、生成物と共に50〜60ccのトルエンを放出した。トルエン中の2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールの純度は、99.0%(HPLCによる面積率(%))であった。この溶液に、1000cc無水エタノールを、活性炭5.0グラムと一緒に添加し、そして90分間還流するまで加熱した。結果として得られる溶液を、50〜55℃に冷却し、そして濾過した。結果として得られる溶液に50℃で12.5グラム(0.5モル)フマル酸を添加した。反応混合物を2時間還流するまで加熱し、そして室温までゆっくりと冷却し、そして室温で2時間維持した。反応物を濾過し、そして200cc無水エタノールで洗浄した。得られた湿潤材料を、50〜55℃で真空下で乾燥させて、フマル酸クエチアピンを得た。フマル酸クエチアピンの乾燥重量は60〜65グラムである。フマル酸クエチアピンの純度は、99.5%(HPLCによる面積率(%))であった。
【0101】
実施例14.フマル酸の2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノール塩または11−[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)]−1−ピペラジニル]ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン・フマレート
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、75グラム(0.2モル)の2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノールを注入し、300ccのn−ブタノールを添加した。混合物を透明溶液になるまで加熱し、そして活性炭7.5グラムを添加し、そして60〜70℃に加熱した。反応物を、60〜70℃で90分間維持させた。反応物を濾過し、そして75mlのn−ブタノールで洗浄した。濾液ML(母液)に50〜60℃でフマル酸溶液[80〜85℃で300ccのn−ブタノール中に溶解された11.5グラム(0.1モル)フマル酸]を添加した。反応物を、30〜60分間50〜60℃で維持させ、そして室温までゆっくりと冷却し、そして2時間室温で維持させた。反応物を濾過し、そして75ccのn−ブタノールで洗浄し、そして再結晶化が1275ccの無水エタノールで形成した。得られた湿潤材料を、50〜55℃で真空下で乾燥させて、フマル酸クエチアピンを得た。フマル酸クエチアピンの乾燥重量は、60〜65グラムである。フマル酸クエチアピンの純度は、99.5%(HPLCによる面積率(%))より大きかった。
【0102】
実施例15.フマル酸の2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノール塩または11−[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)]−1−ピペラジニル]ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン・フマレート
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、n−ブタノール450cc中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン・ジヒドロクロリド[81.0グラム(0.22モル)]の溶液を注入し、その混合物を、25〜30℃で15分間攪拌した。結果として得られる溶液に、室温で炭酸ナトリウム[46.0グラム(0.44モル)]、臭化テトラブチルアンモニウム [16.0グラム(0.05モル)]および2−(2−クロロエトキシ)エタノール[32.0グラム(0.257モル)]を添加した。反応混合物を、110〜118℃で還流するまで加熱した。反応混合物を、18〜20時間還流で維持し、HPLCによって(式IVで表される化合物の不在について調査するために)反応混合物を分析した。反応混合物を25℃から30℃までに冷却し、濾過し、そしてn−ブタノールで洗浄し、そして母液を、13グラムのフマル酸(0.51モル)で処理して、フマル酸の2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノール塩を得て、1430ccエタノールから再結晶させた。収量60〜65グラム。フマル酸の2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノール塩の純度は、99.5%(HPLCによる面積率(%))であった。
【0103】
実施例16.フマル酸の2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノール塩または11−[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)]−1−ピペラジニル]ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン・フマレート
攪拌棒、サーモポケット、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、n−ブタノール450cc中の11−ピペラジニルジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン[63グラム(0.22モル)]の溶液を注入し、その混合物を、25〜30℃で15分間攪拌した。結果として得られる溶液に、室温で炭酸ナトリウム[41.0グラム(0.39モル)]、臭化テトラブチルアンモニウム [16.0グラム(0.05モル)]および2−(2−クロロエトキシ)エタノール[32.0グラム(0.257モル)]を添加した。反応混合物を、110〜118℃で還流するまで加熱した。反応混合物を、6〜7時間還流で維持し、そしてHPLCによって(式IVで表される化合物の不在について調査するために)反応混合物を分析した。反応混合物を25℃から30℃までに冷却し、濾過し、そしてn−ブタノールで洗浄し、そして母液を、13グラムのフマル酸(0.51モル)で処理して、フマル酸の2−(2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ)エタノール塩を得て、1275ccエタノールから再結晶させた。得た湿潤材料を、50〜55℃で真空下で乾燥させて、フマル酸クエチアピンを得た。フマル酸クエチアピンの乾燥重量は、60〜65グラムである。フマル酸クエチアピンの純度は、99.5%(HPLCによる面積率(%))より大きかった。
【0104】
実施例17.例:不純物Aおよび不純物Bの単離
攪拌棒、サーモポケット、窒素注入口、水冷却器を具備した1リットルの丸底フラスコに、50グラム(0.22モル)のジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11(10H)オンおよび500ccのトルエンを注入し、その混合物を、室温で15分間攪拌した。結果として得られる溶液に、90分かけて25から30℃で5回の等量で五塩化リン70グラム(0.33モル)を添加した。反応混合物を、110℃で6時間還流させた。HPLCによって反応混合物を分析した。分析は、2%未満のジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(10)オンが存在することを示した。反応混合物を、30分間20〜25℃に冷却した。反応混合物を、10〜15℃で予め冷却されたDM水(500cc)に浸漬し、そして25〜30℃で30分間攪拌した。層を分離し、そして有機層を、飽和食塩水で洗浄した。有機層を50℃より下で真空下で蒸留除去した。残渣にn−ヘキサンを添加し、そして微量のトルエンを除去した。得られた油状物に250mlのn−ヘキサンを添加し、そして55〜60℃まで加熱した。反応混合物を、20〜25℃まで冷却し、そして45〜60分間攪拌した。混合物を濾過し、そしてn−ヘキサン(50ml)で洗浄した。得られた母液を真空下で50℃より下で蒸留除去した。この混合物に、50℃でn−ヘキサンを添加し、そして20〜25℃まで冷却した。混合物を、45〜60分間攪拌し、そして濾過した。湿潤ケークを、n−ヘキサンで洗浄した。得られた母液を、50℃より下で真空下で蒸留除去した。
【0105】
得られた残渣は、豊富量の不純物AおよびBを含有する。分取TLC(可動相:トルエン中の0.50%酢酸エチル)を使用するか、またはクロマトトロン(可動相:n−ヘキサン)を使用して不純物Aおよび不純物Bを、残渣から単離した。
【0106】
不純物A
7.57−7.60(d、2H)、7.40−7.43(d、1H)、7.32−7.34(d、1H)、7.04−7.25(m、7H)、6.90−6.95(t、1H)、1.16(s、3H)。
M/Z=302[M+H]
不純物B
7.52−7.54(d、1H)、7.35−7.40(t、2H)、7.25−7.28(t、1H)、7.20−7.21(m、4H)、6.97−7.09(m、3H)、6.85−6.88(d、1H)、1.16(s、3H)。
M/Z=302[M+H]
【0107】
特に好ましい実施形態および例示の実施例を参照して本発明をこのように記載し、当業者は、記述および例示されるように本発明に対する修正が、明細書に開示されるように本発明の精神および範囲から逸脱しないことを理解されたい。実施例は、本発明を理解する上で助けになるように記載されるが、いずれの場合にもその範囲を限定することは意図されず、またそのようにみなされるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造:
【化1】

で表される単離化合物。
【請求項2】
前記化合物が下記の構造:
【化2】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が下記の構造:
【化3】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が下記の構造:
【化4】

(式中、Aは塩素、臭素またはヨウ素である)
を有する化合物を実質的に含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
ハロゲンが塩素である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
下記の構造:
【化5】

を有する化合物の塩素化の結果として形成する不純物の量を測定するか、またはそのような不純物を同定する方法であって、当該方法が塩素化反応の生成物におけるクロマトグラフィーを行うことを含み、請求項1〜5のいずれか一項の化合物が、不純物を同定または定量するための参照標準として使用される、方法。
【請求項7】
式[IV]で表される11−ピペラジニルジベンゾ[b,f]チアゼピンから、下記の構造:
【化6】

で表される不純物を除去する方法であって、11−ピペラジニルジベンゾ[b,f]チアゼピンを、有機酸で洗浄すること、またはC1−C5アルコールからスラリー化または結晶化を行うことを含む方法。
【請求項8】
有機酸がC1−C8酸脂肪酸である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記脂肪酸が蟻酸、酢酸またはアジピン酸である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
スラリー化が行われる、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
結晶化が行われる、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルコールがエタノールである、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
クエチアピンを調製する方法であって、
a)式
【化7】

(式中、Aは、塩素、ヨウ素または臭素である)
で表される化合物IIIをピペラジンと反応させて、式:
【化8】

で表される化合物IVと下記の構造:
【化9】

で表される不純物との混合物を得ること、
b)有機酸で洗浄することによって、式IVで表される化合物から不純物を分離すること、
c)IVで表される化合物をクエチアピンまたは医薬として許容される塩に変換すること、を含む方法。
【請求項14】
下記の構造:
【化10】

で表される化合物IIを、塩基の不在下でハロゲン化剤および脂肪族ハロゲン化炭化水素と混合して、化合物IIIを得ることを含む、下記の構造:
【化11】

(式中、Aは、塩素、ヨウ素または臭素である)
で表される化合物IIIを調製する方法。
【請求項15】
前記ハロゲン化炭化水素がC1−C8炭化水素である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ハロゲン化炭化水素がジクロロメタン(DCM)または二塩化エチレン(EDC)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ハロゲン化炭化水素がジクロロメタンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ハロゲン化炭化水素が二塩化エチレン(EDC)である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
Aが塩素である請求項14〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ハロゲン化剤が五塩化リン(PCl5)、オキシ塩化リン、塩化チオニルまたは塩化オキサリルである、請求項14〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ハロゲン化剤が五塩化リン(PCl5)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ハロゲン化剤対化合物IIのモル比が約1.2〜約1.6である、請求項14〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
反応中の温度が約−5℃〜約−25℃である、請求項14〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
得られた化合物IIIがHPLC面積(%)として約95%の純度を有する、請求項14〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
得られた化合物IIIが約99%のHPLC純度を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
クエチアピンまたはその医薬として許容される塩を調製する方法であって、請求項14〜25のいずれか一項の方法によって調製される化合物をクエチアピンまたはその医薬として許容される塩に変換することを含む方法。
【請求項27】
a)式:
【化12】

で表される化合物IIを、塩基の不在下で脂肪族ハロゲン化炭化水素およびハロゲン化剤と混合することでハロゲン化して、式:
【化13】

(式中、Aは、塩素、ヨウ素または臭素である)
で表される化合物IIIを得るステップと、
b)化合物IIIをピペラジンと反応させて、式:
【化14】

で表される化合物IVを、
下記の構造:
【化15】

を有する不純物との混合物で得るステップと、
c)有機酸と混合物を合わせること、またはC1−C5アルコール中で混合物をスラリー化することとの少なくとも一方によって、化合物IVを分離するステップと、
d)化合物IVを構造:
【化16】

(式中、Aは、塩素、ヨウ素または臭素である)
を有する化合物と反応させて、下記の構造:
【化17】

で表されるクエチアピンを得るステップとを含む、クエチアピンを調製する方法。
【請求項28】
ハロゲンが塩素である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
式:
【化18】

で表される化合物IV中に存在する不純物を減少させる方法であって、前記化合物をHClと反応させて、化合物IVのHCl塩を得ることを含む方法。
【請求項30】
HCl塩が2HCl塩である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
式:
【化19】

で表される化合物I中に存在する不純物を減少させる方法であって、前記化合物をHClと反応させて、化合物IのHCl塩を得ることを含む方法。

【公表番号】特表2009−529062(P2009−529062A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508018(P2009−508018)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/004244
【国際公開番号】WO2008/121415
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】