フラクチャリング用注入材料及び改良地盤
【課題】自己分解性の粘性流体と支持材とからなり、土砂地盤を汚染せずに水みちを形成できるフラクチャリング用注入材料を提供する。
【解決手段】細粒子である土砂地盤に注入するためのフラクチャリング用注入材料であって、自己分解性の粘性流体と、粒径が0.1〜2.8mmの粗粒子である支持材とからなる。このフラクチャリング用注入材料は、土砂地盤の裂け目を生じさせるために粘性流体の粘度を1000cp以上としている。さらにこのフラクチャリング用注入材料は、上記粘性流体をグアーガム溶液とし、その溶液の濃度を1〜2重量%とすることができる。
【解決手段】細粒子である土砂地盤に注入するためのフラクチャリング用注入材料であって、自己分解性の粘性流体と、粒径が0.1〜2.8mmの粗粒子である支持材とからなる。このフラクチャリング用注入材料は、土砂地盤の裂け目を生じさせるために粘性流体の粘度を1000cp以上としている。さらにこのフラクチャリング用注入材料は、上記粘性流体をグアーガム溶液とし、その溶液の濃度を1〜2重量%とすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラクチャリング用注入材料及び改良地盤に関する。
【背景技術】
【0002】
井戸の構造として、井戸穴から周囲の地盤へ水を圧入して、地盤を割裂することで水みちをつくることが行われている(特許文献1)。
【0003】
また水に代えて、カルボキメチルセルローズなどの高分子化合物の粘性流体を地盤に注入すること、当該流体に1〜1.5mm程度の粒径の支持材を混入させて、形成した水みちが塞がらないようにすることも行われている(非特許文献1)。
【0004】
なお、フラクチャリング流体として粘性流体を用いる理由は、流体と支持材とが分離しないようにするためである。
【0005】
これに対して、粘性流体が圧送装置(ポンプ)の内部を通過する際の摩擦抵抗を低減するために、水とゲル化剤と交差結合剤と支持材とからなる組成物であって、地層内で組成物が交差結合して大きな粘性が得られるものが知られている(特許文献2の請求項1)。
【0006】
交差結合した破砕ゲルは凝集性を有するので、これは長期間に亘って半固体状態に維持され、かつ大量の支持材を支持する(同文献の第10コラム第13〜17行目)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−269861
【特許文献2】特公昭54−21311
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「ハイドロフラクチャー法を応用したVOCs汚染土壌の原位置浄化工法」 中間哲志 土木学会年次学術講演会概要集 発行日:2004年9月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1の注入材料は、自己分解性のないカルボキシメチルセルロースなどの高分子化合物を用いている。注入後の流体除去のためには、分解酵素が用いられる。この場合に、高分子化合物と分解酵素とを同時に注入する必要があり、非接触材料が支持材内に残留することで、地盤の透水性を阻害することがある。
【0010】
特許文献2の注入材料の場合には、ゲル化剤として、グアーガムやいなごまめガムなどの水和性多糖類を、交差結合化合物として、鉛(II)、ヒ素(III)、錫(II)などの金属イオンを有する化合物を用いてゲルが凝集するものであり、土壌を汚染する可能性がある。
【0011】
また従来のフラクチャリング技術は、主として固い地盤を割裂又は破砕することを対象としており、柔軟な土砂地盤を対象とする場合の問題点をあまり検討していない。例えば岩盤を割って水みちを形成する場合と異なり、土砂地盤では水みちの境界が強固ではなく、水みちに隣接する土砂が水みちの空間内へ崩れてくる可能性が高い。こうした水みちを支えるためには、周囲の土砂よりも粒径が大きな材料を用いることが必要である。他方、支持材の粒径を大きくすると、流体と支持材との分離が問題となり、分離が生じないように粒径を選択する必要がある。
【0012】
また一般に土砂地盤の透水係数(10−4〜10−2cm/s)は岩盤の透水係数(10−5〜10−8cm/s)よりも大きい。故に水みちを支える支持材として粒径の大きな材料を用いても、フラクチャリング用の流体の粘性が低すぎると、当該流体は水みちと無関係に土壌地盤に浸透してしまう。水みち以外の土砂への流体の浸透を低減するためには、土砂地盤に適した高粘性流体を用いる必要がある。
【0013】
本発明の第1の目的は、自己分解性の粘性流体と支持材とからなり、土砂地盤を汚染せずに水みちを形成できるフラクチャリング用注入材料を提供することである。
【0014】
本発明の第2の目的は、上記注入材料を使用して透水性を向上した改良地盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の手段は、
土砂地盤に注入するためのフラクチャリング用注入材料であって、
自己分解性の粘性流体と、粒径が0.1〜2.8mmの支持材とからなり、
土砂地盤の裂け目を生じさせるために粘性流体の粘度を1000cp以上としている。
【0016】
本手段は、土砂地盤をフラクチャリングするための注入材料であって、自己分解性の粘性流体と支持材とからなるものを提案する。自己分解性の粘性材料の例は、グアーガムなどの天然多糖類である。グアーガムの場合には本願図1に示すように注入から一定時間を経過した後に急速に分解が進行する。これに関しては後述する。岩盤ではなく土砂地盤に注入するから、分解した成分が水とともに土壌側へ徐々に拡散して水みちには支持材が残る。また先行技術のようにグアーガムを金属系の酸化物と交差結合させるのではなく、天然の素材として用いるので土壌を汚すことがない。
【0017】
「自己分解性」という用語は、分解剤を添加しなくても分解するという意味であり、主として微生物などの作用で分解する。これについては後述する。
【0018】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記粘性流体をグアーガム溶液とし、その溶液の濃度を1〜2重量%としている。
【0019】
本手段は、好適な自己分解性流体としてグアーガム溶液を提案する。図1は1重量%の濃度のグアーガム溶液の粘度の経時的変化を表しており、その粘度は、注入後のある時期(3000分)までは徐々に増加し、ピークを迎えた後に分解反応の進行により急激に低下する。これを注入材料に適用した場合には、グアーガムは水みちを形成する工事の途中では支持材をしっかりと支え、その後は速やかに分解するので、合理的な期間内に工事を終了することを可能とする。
【0020】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ粘性流体の粘度を9000〜70000cpとしている。
【0021】
本手段は注入材料の流体の粘性の好適な範囲を提案している。粘性が9000cp未満であると、粘性流体と支持材の分離率が大きくなり、ポンプ圧送による配管内で材料分離を生じ、粗粒剤の粒径によっては地盤中への注入が困難となる可能性がある。粘性が70000cpよりも大きいと、ポンプ圧送が困難となり、地盤中への注入が不可能となる。
【0022】
第4の手段は、第2の手段又は第3の手段に記載のフラクチャリング用注入材料を土砂地盤に注入して透水性を改善した改良地盤であって、上記土砂地盤に形成された水みちと水みち内に充填された支持材とを含み、かつ注入材料の20%粒径が上記土砂地盤の20%粒径の2倍から10倍の範囲にあることを特徴とする。
【0023】
本手段は、土砂地盤の20%粒径に比べて注入材料の20%粒径の2〜10倍とすることを提案している。「20%粒径」とは、粒体の集団の全体積を100%としたときに、その粒子分布を小さい方から積算して20%になる点の粒子径をいう。
【発明の効果】
【0024】
第1の手段に係る発明によれば、フラクチャリング用注入材料は自己分解性の粘性流体を含むから、分解剤を必要とせずに土砂地盤の透水性を効果的に向上できる。
第2の手段に係る発明によれば、粘性流体を濃度1〜2重量%のグアーガムの溶液としたから、自己分解性を十分に発揮できる。
第3の手段に係る発明によれば、粘性流体の粘度を9000〜70000cpとしたから、支持材と粘性流体とが分離しにくい。
第4の手段に係る発明によれば、土砂地盤の20%粒径よりも支持材の20%粒径を大きくしたから、岩盤に比べて透水性の大きい土砂地盤の通水性をさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る注入材料の成分であるグアーガムの粘度と経過時間との関係を表すグラフである。
【図2】上記注入材料の分離率試験に用いる計量用の容器の正面図である。
【図3】上記注入材料のグアーガム濃度と分離率との関係を表すグラフである。
【図4】図3の注入材料の粒径分布を表す図である。
【図5】上記注入材料の回転式粘度計による粘度と支持材の配合比との関係を表すグラフである。
【図6】上記注入材料のロート式粘度計による粘度と支持材の配合比との関係を表すグラフである。
【図7】上記注入材料を注入して水みちを形成する手順を示す説明図である。
【図8】図7の要部の拡大図である。
【図9】図7の手順による実施例の効果を示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る改良地盤の一実施例を示す図である。
【図11】同実施形態の他の実施例を示す図である。
【図12】同実施形態のさらに他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下本願の実施形態に係るフラクチャリング用注入材料を説明する。この注入材料は、粘性流体Fと支持材Sとからなる。
【0027】
粘性流体Fは、自己分解性を有する素材、好ましくは生分解性材料、さらに好ましくは天然多糖類の溶液(水溶液など)とする。天然由来の素材であるから、分解により生じた成分が土壌に拡散しても土壌を汚染することがない。なお、「生分解性」とは、物質が微生物によって分解される性質であることをいう。
【0028】
多糖類のうちで特に好適であるのは、グアーガムである。自己分解性が顕著に表れるからである。グアーガムの濃度は1〜2重量%とすることが好適である。濃度の下限を1.0重量%とした理由の一つは、流体と支持材との分離率を0.1以下とするためである。1.0重量%の濃度は回転式粘度計で1000cpに相当する。
【0029】
図1は、グアーガムの1重量%濃度溶液の時間経過と粘性の変化との関係を示している。同図中のプロット(○)は、回転粘度計の回転数が5rpmの場合の粘度を表わしている。このグアーガムの粘性は、図1の如く徐々に増大し、3000分を経過した時点でピーク(10000cp〜15000cp)を迎えた後に分解反応の進行により急激に低下し、約4000分(約67時間)強程度で水と同レベルにまで低下する。しかる後に水みちに注水して通水性試験などを行うことができる。
【0030】
上記粘性流体の粘性は、1000〜70000cp(容積500cm3、出口径10mmのロート式粘度計で4〜20秒)、好ましくは9000cp〜70000cp(同9〜20秒)の範囲で土砂地盤の透水係数との関係で選択する。
【0031】
一般に地盤の透水係数K[L/T]は次の式で表わされる。この式を粘性液体に拡張して適用できるとすれば、液体の透過し易さ(透液係数)は、動粘性係数に反比例する。
【0032】
[数式1]K=(ρg/μ)×k
(但しρ[M/L3]は密度、μ[M/LT]は動粘性係数、kは透過係数[L2])
【0033】
以上のことを考慮して、圧力を0.5MPa(水頭で50m)をかけても粘性流体が浸透しづらいように土砂地盤の透液係数を粘性流体の透水係数の1/1000とする意味合いで1000cpとしている。
【0034】
支持材Sは、0.1〜2.8mmの範囲の粒子とする。支持材は、土砂地盤の土質に比べて粒径が大きい材料(以下「粗粒材」という)とすることが好適である。なお、粒径の大小は20%粒径(D20)で比較することが好ましい。粗粒材の素材は硅砂などとすることができる。この範囲内でさらに好適な範囲として0.1〜0.6mm、0.2〜1.2mm、0.8〜2.8mmの範囲を挙げることができる(図3参照)。支持材の重量は、粘性流体に支持材を混合した混合流体全体の比重が1.07g/cm3〜1.8g/cm3としている。
【0035】
グアーガムと水と支持材用の粗粒材SRとは、図2に示す混合容器C内で混合し、攪拌して5分間経過した後の分離率が0.1以下になるように配合する。
【0036】
上記混合容器Cは、有底直筒形の透明容器であり、その底部を基準レベルとして、まず一定量の支持材を投入したときの高さ(粗粒材配合レベル)と、さらに水及びグアーガムを投入したときの流体全体の液面と粗粒材配合レベルとの高低差をaとする。さらに攪拌して5分間経過した後に容器内の上澄み液体Lと粗粒材SRを含む混合液体との境界面から液面までのレベルをbとし、b/aを分離率と定義する。
【0037】
図3は、3つのタイプの粗粒材に関して、粘性と分離率との関係を実験した結果を示している。同図(A)は3号珪砂(0.8〜2.8mm)について、同図(B)は4号珪砂(0.2〜1.2mm)について、同図(C)は5号珪砂(0.1〜0.6mm)について各号珪砂の配合比を変えて粘性と分離率との関係を示した。また図4はこれらの珪砂の粒度分布である。
【0038】
全体的な傾向としてグアーガム濃度が1.0重量%以上で分離率は急に低下しており、濃度1.5重量%以上でほぼ全部のタイプの粗粒材に関して分離率が0.1以下になっている。
【0039】
個別の試料を分析すると次の通りである。まず最も細かい5号珪砂に関しては、5号珪砂の配合比30%の試料(□)では各データを結ぶ折れ線はグアーガム濃度が1.0〜1.5重量%の範囲で分離率が0.1以下となった。また5号珪砂の配合比20%の試料(△)及び5号珪砂の配合比10%の試料(○)に関しては、各データを結ぶ折れ線はグアーガム濃度が1.3重量%〜1.5重量%の範囲で分離率が0.1以下となっている。1.5重量%以上の範囲ではデータがないが全体として右下がりのグラフになっていることから、この範囲でも分離率が0.1以下であることが導かれる。
【0040】
4号珪砂に関しては、グアーガム濃度が1.5重量%のときに4号珪砂の配合比が30%、20%、10%の全ての試料に関して分離率が0.1以下となった。3号珪砂に関しては、グアーガム濃度が1.5重量%のときに3号珪砂の配合比が30%、20%の試料に関して分離率が0.1以下となった。
【0041】
図5及び図6は、粗粒材配合比率と粘性との関係を回転式粘度計(図5)及びロート式粘度計(図6)でそれぞれ表わした実験結果である。
【0042】
ロート式粘度計で測定した粘性が9秒よりも小さいと、粘性流体と粗粒材の分離率が大きくなり、ポンプ圧送による配管内で、材料分離を生じ、地盤中への注入が不可能となる。粘性が20 秒よりも大きいと、ポンプ圧送が困難となり、地盤中への注入が不可能となる。また分離率が0.1よりも大きい場合には、支持材の粒径次第ではポンプ圧送途中の配管内で材料分離を生じ、地盤中への注入ができなくなる可能性がある。
【0043】
図7は、上記注入材料を、井戸の周囲の地盤に注入する手順を示している。
【0044】
まず図7(A)に示すように注入孔を有する注入管4を土砂地盤2に建て込む。好適な図示例では、リチャージ井戸用の井戸穴10内に、下部に透水部を有するケーシング12を挿入し、ケーシング12と井戸穴10との間に上記注入管4を挿入し、この挿入後にケーシングと井戸穴との間に充填材を投入している。注入管は井戸穴内面に接するように配置することが望ましい。しかしこれらの構成は適宜変更することができる。
【0045】
次に図7(B)に矢示するように、注入材料として、支持材を含む粘性流体Fが注入管4を介して、注入材料を土砂地盤中に注入する。注入材料の粘性流体の粘度を1000cpとすることで、注入孔付近で動水勾配が大きくなり、土壌地盤に裂け目を生じ、注入管4の注入孔から側方へ延びる水みち8ができる。水みち8内には、図8(A)に示すように粘性流体Fと支持材Sとが連続して残る。
【0046】
なお、グアーガムを主体とする注入材料の注入作業は、数回に亘って支持材の配合量を増やしながら行うことができる。注入作業をスムーズに行うことができるからである。グアーガム溶液を用いたときには注入後の一定の時間は粘性が保持されるので、複数回の注入作業を行う場合に好適である。
【0047】
その後に粘性流体は、分解剤を添加しなくても、水中又は地盤中の微生物により分解し、水と同程度の粘性を有する分解生成物と支持材とが残る。粘性流体としてグアーガムを使用したときには、その分解反応は一連の工事日程に支障を生じない程度の短日数で完了する。しかるのちに分解生成物を井戸の揚水作用により地上に吸上げ、除去すると、図8(B)に示すように水みち8には支持材のみが残る。
【0048】
図7(C)に示すように、上記水みちを利用してリチャージ井戸の揚水管14或いは注水管(図示せず)を介して揚水及び注水が可能となる。
【0049】
図9は、原位置の細砂地盤における実施例を示す。4m3の注入材料を細砂地盤に注入したところ、透水係数は3倍に向上した(単孔式透水試験により計測)。またこれによりリチャージ流量は1.7倍に増加した(段階注水試験により計測)。
【0050】
本発明の第2実施形態として、上記注入材料を地盤中に注入して構築された改良地盤について説明する。この改良地盤は、土砂地盤に形成された水みちと水みち内に充填された支持材とを含んでいる。
【0051】
さらに上記注入材料の支持材の20%粒径は、上記土砂地盤の20%粒径の2倍から10倍の範囲にある。これにより、改良地盤の透水係数を原地盤の2〜10倍(水みち部は5〜200倍程度)程度とする。また水みちと土砂地盤との境界が明確となり、さらに水みちの透水性が高まる。前述の井戸の周りの改良地盤の他に次の実施例を示す。
【0052】
[実施例]
図10〜図12に本願の改良地盤の図示例を示している。
【0053】
図10は、本願の注入材料を汚染土壌・地下水の浄化工法へ適用した例を示す。注入装置から注水管16を、揚水装置からそれぞれ揚水管14をそれぞれ垂下するとともに、これら注入管及び揚水管にそれぞれ穿設した注入材料用注入口から、土砂地盤内へほぼ水平方向に延びる水みちを形成している。符号20は帯水層である。
【0054】
本実施例によれば、浄化剤や生物活性のための栄養塩などを注入する浄化工法において、注入管回りの地盤へ本願注入材を注入し、透水性を向上させることで、浄化剤や栄養塩の注入効率が向上する。これにより汚染土壌や地下水の浄化効率が高まる。
【0055】
図11は、本願注入材料を地下貯水層に適用した例を示す。この場合にも地下貯水層の注入管側及び揚水管側から、土砂地盤である帯水層20内へほぼ水平方向に水みちが延びている。
【0056】
本実施例によれば、井戸を介して冷水や温水を地盤内に蓄熱して空調や給湯に利用する技術において、井戸周りの地盤に本願の注入材を注入し、地盤の透水性を向上させることで、蓄熱・熱回収の効率が高まり、省エネ効果が向上する。
【0057】
図12は、本願注入材料を液状化対策工法に適用した例を示す。地上から液状化層内へ垂直又は斜め下方へ空気注入管を兼ねる注入管18を挿入する。この注入管の周りの地盤へ本願の注入材を注入する。そうすると注入管から主として水平方向へ水みち8が形成されている。この構成により、気泡Bの注入効率が向上し、液状化対策の効果が向上する。
【0058】
なお、上記各実施形態及び実施例は、好適な一例であり、本発明の技術的意義に反しない限り本願の特許請求の範囲から導かれる他の実施態様を除外するものではない。
【符号の説明】
【0059】
B…気泡 C…混合容器 F…粘性流体 L…上澄み液体
S…支持材 SR…粗粒材
2…土壌地盤 4…注入管 6…注出口 8…水みち
10…井戸穴 12…ケーシング 14…揚水管 16…注水管 18…注入管
20…帯水層
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラクチャリング用注入材料及び改良地盤に関する。
【背景技術】
【0002】
井戸の構造として、井戸穴から周囲の地盤へ水を圧入して、地盤を割裂することで水みちをつくることが行われている(特許文献1)。
【0003】
また水に代えて、カルボキメチルセルローズなどの高分子化合物の粘性流体を地盤に注入すること、当該流体に1〜1.5mm程度の粒径の支持材を混入させて、形成した水みちが塞がらないようにすることも行われている(非特許文献1)。
【0004】
なお、フラクチャリング流体として粘性流体を用いる理由は、流体と支持材とが分離しないようにするためである。
【0005】
これに対して、粘性流体が圧送装置(ポンプ)の内部を通過する際の摩擦抵抗を低減するために、水とゲル化剤と交差結合剤と支持材とからなる組成物であって、地層内で組成物が交差結合して大きな粘性が得られるものが知られている(特許文献2の請求項1)。
【0006】
交差結合した破砕ゲルは凝集性を有するので、これは長期間に亘って半固体状態に維持され、かつ大量の支持材を支持する(同文献の第10コラム第13〜17行目)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−269861
【特許文献2】特公昭54−21311
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「ハイドロフラクチャー法を応用したVOCs汚染土壌の原位置浄化工法」 中間哲志 土木学会年次学術講演会概要集 発行日:2004年9月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1の注入材料は、自己分解性のないカルボキシメチルセルロースなどの高分子化合物を用いている。注入後の流体除去のためには、分解酵素が用いられる。この場合に、高分子化合物と分解酵素とを同時に注入する必要があり、非接触材料が支持材内に残留することで、地盤の透水性を阻害することがある。
【0010】
特許文献2の注入材料の場合には、ゲル化剤として、グアーガムやいなごまめガムなどの水和性多糖類を、交差結合化合物として、鉛(II)、ヒ素(III)、錫(II)などの金属イオンを有する化合物を用いてゲルが凝集するものであり、土壌を汚染する可能性がある。
【0011】
また従来のフラクチャリング技術は、主として固い地盤を割裂又は破砕することを対象としており、柔軟な土砂地盤を対象とする場合の問題点をあまり検討していない。例えば岩盤を割って水みちを形成する場合と異なり、土砂地盤では水みちの境界が強固ではなく、水みちに隣接する土砂が水みちの空間内へ崩れてくる可能性が高い。こうした水みちを支えるためには、周囲の土砂よりも粒径が大きな材料を用いることが必要である。他方、支持材の粒径を大きくすると、流体と支持材との分離が問題となり、分離が生じないように粒径を選択する必要がある。
【0012】
また一般に土砂地盤の透水係数(10−4〜10−2cm/s)は岩盤の透水係数(10−5〜10−8cm/s)よりも大きい。故に水みちを支える支持材として粒径の大きな材料を用いても、フラクチャリング用の流体の粘性が低すぎると、当該流体は水みちと無関係に土壌地盤に浸透してしまう。水みち以外の土砂への流体の浸透を低減するためには、土砂地盤に適した高粘性流体を用いる必要がある。
【0013】
本発明の第1の目的は、自己分解性の粘性流体と支持材とからなり、土砂地盤を汚染せずに水みちを形成できるフラクチャリング用注入材料を提供することである。
【0014】
本発明の第2の目的は、上記注入材料を使用して透水性を向上した改良地盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の手段は、
土砂地盤に注入するためのフラクチャリング用注入材料であって、
自己分解性の粘性流体と、粒径が0.1〜2.8mmの支持材とからなり、
土砂地盤の裂け目を生じさせるために粘性流体の粘度を1000cp以上としている。
【0016】
本手段は、土砂地盤をフラクチャリングするための注入材料であって、自己分解性の粘性流体と支持材とからなるものを提案する。自己分解性の粘性材料の例は、グアーガムなどの天然多糖類である。グアーガムの場合には本願図1に示すように注入から一定時間を経過した後に急速に分解が進行する。これに関しては後述する。岩盤ではなく土砂地盤に注入するから、分解した成分が水とともに土壌側へ徐々に拡散して水みちには支持材が残る。また先行技術のようにグアーガムを金属系の酸化物と交差結合させるのではなく、天然の素材として用いるので土壌を汚すことがない。
【0017】
「自己分解性」という用語は、分解剤を添加しなくても分解するという意味であり、主として微生物などの作用で分解する。これについては後述する。
【0018】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記粘性流体をグアーガム溶液とし、その溶液の濃度を1〜2重量%としている。
【0019】
本手段は、好適な自己分解性流体としてグアーガム溶液を提案する。図1は1重量%の濃度のグアーガム溶液の粘度の経時的変化を表しており、その粘度は、注入後のある時期(3000分)までは徐々に増加し、ピークを迎えた後に分解反応の進行により急激に低下する。これを注入材料に適用した場合には、グアーガムは水みちを形成する工事の途中では支持材をしっかりと支え、その後は速やかに分解するので、合理的な期間内に工事を終了することを可能とする。
【0020】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ粘性流体の粘度を9000〜70000cpとしている。
【0021】
本手段は注入材料の流体の粘性の好適な範囲を提案している。粘性が9000cp未満であると、粘性流体と支持材の分離率が大きくなり、ポンプ圧送による配管内で材料分離を生じ、粗粒剤の粒径によっては地盤中への注入が困難となる可能性がある。粘性が70000cpよりも大きいと、ポンプ圧送が困難となり、地盤中への注入が不可能となる。
【0022】
第4の手段は、第2の手段又は第3の手段に記載のフラクチャリング用注入材料を土砂地盤に注入して透水性を改善した改良地盤であって、上記土砂地盤に形成された水みちと水みち内に充填された支持材とを含み、かつ注入材料の20%粒径が上記土砂地盤の20%粒径の2倍から10倍の範囲にあることを特徴とする。
【0023】
本手段は、土砂地盤の20%粒径に比べて注入材料の20%粒径の2〜10倍とすることを提案している。「20%粒径」とは、粒体の集団の全体積を100%としたときに、その粒子分布を小さい方から積算して20%になる点の粒子径をいう。
【発明の効果】
【0024】
第1の手段に係る発明によれば、フラクチャリング用注入材料は自己分解性の粘性流体を含むから、分解剤を必要とせずに土砂地盤の透水性を効果的に向上できる。
第2の手段に係る発明によれば、粘性流体を濃度1〜2重量%のグアーガムの溶液としたから、自己分解性を十分に発揮できる。
第3の手段に係る発明によれば、粘性流体の粘度を9000〜70000cpとしたから、支持材と粘性流体とが分離しにくい。
第4の手段に係る発明によれば、土砂地盤の20%粒径よりも支持材の20%粒径を大きくしたから、岩盤に比べて透水性の大きい土砂地盤の通水性をさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る注入材料の成分であるグアーガムの粘度と経過時間との関係を表すグラフである。
【図2】上記注入材料の分離率試験に用いる計量用の容器の正面図である。
【図3】上記注入材料のグアーガム濃度と分離率との関係を表すグラフである。
【図4】図3の注入材料の粒径分布を表す図である。
【図5】上記注入材料の回転式粘度計による粘度と支持材の配合比との関係を表すグラフである。
【図6】上記注入材料のロート式粘度計による粘度と支持材の配合比との関係を表すグラフである。
【図7】上記注入材料を注入して水みちを形成する手順を示す説明図である。
【図8】図7の要部の拡大図である。
【図9】図7の手順による実施例の効果を示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る改良地盤の一実施例を示す図である。
【図11】同実施形態の他の実施例を示す図である。
【図12】同実施形態のさらに他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下本願の実施形態に係るフラクチャリング用注入材料を説明する。この注入材料は、粘性流体Fと支持材Sとからなる。
【0027】
粘性流体Fは、自己分解性を有する素材、好ましくは生分解性材料、さらに好ましくは天然多糖類の溶液(水溶液など)とする。天然由来の素材であるから、分解により生じた成分が土壌に拡散しても土壌を汚染することがない。なお、「生分解性」とは、物質が微生物によって分解される性質であることをいう。
【0028】
多糖類のうちで特に好適であるのは、グアーガムである。自己分解性が顕著に表れるからである。グアーガムの濃度は1〜2重量%とすることが好適である。濃度の下限を1.0重量%とした理由の一つは、流体と支持材との分離率を0.1以下とするためである。1.0重量%の濃度は回転式粘度計で1000cpに相当する。
【0029】
図1は、グアーガムの1重量%濃度溶液の時間経過と粘性の変化との関係を示している。同図中のプロット(○)は、回転粘度計の回転数が5rpmの場合の粘度を表わしている。このグアーガムの粘性は、図1の如く徐々に増大し、3000分を経過した時点でピーク(10000cp〜15000cp)を迎えた後に分解反応の進行により急激に低下し、約4000分(約67時間)強程度で水と同レベルにまで低下する。しかる後に水みちに注水して通水性試験などを行うことができる。
【0030】
上記粘性流体の粘性は、1000〜70000cp(容積500cm3、出口径10mmのロート式粘度計で4〜20秒)、好ましくは9000cp〜70000cp(同9〜20秒)の範囲で土砂地盤の透水係数との関係で選択する。
【0031】
一般に地盤の透水係数K[L/T]は次の式で表わされる。この式を粘性液体に拡張して適用できるとすれば、液体の透過し易さ(透液係数)は、動粘性係数に反比例する。
【0032】
[数式1]K=(ρg/μ)×k
(但しρ[M/L3]は密度、μ[M/LT]は動粘性係数、kは透過係数[L2])
【0033】
以上のことを考慮して、圧力を0.5MPa(水頭で50m)をかけても粘性流体が浸透しづらいように土砂地盤の透液係数を粘性流体の透水係数の1/1000とする意味合いで1000cpとしている。
【0034】
支持材Sは、0.1〜2.8mmの範囲の粒子とする。支持材は、土砂地盤の土質に比べて粒径が大きい材料(以下「粗粒材」という)とすることが好適である。なお、粒径の大小は20%粒径(D20)で比較することが好ましい。粗粒材の素材は硅砂などとすることができる。この範囲内でさらに好適な範囲として0.1〜0.6mm、0.2〜1.2mm、0.8〜2.8mmの範囲を挙げることができる(図3参照)。支持材の重量は、粘性流体に支持材を混合した混合流体全体の比重が1.07g/cm3〜1.8g/cm3としている。
【0035】
グアーガムと水と支持材用の粗粒材SRとは、図2に示す混合容器C内で混合し、攪拌して5分間経過した後の分離率が0.1以下になるように配合する。
【0036】
上記混合容器Cは、有底直筒形の透明容器であり、その底部を基準レベルとして、まず一定量の支持材を投入したときの高さ(粗粒材配合レベル)と、さらに水及びグアーガムを投入したときの流体全体の液面と粗粒材配合レベルとの高低差をaとする。さらに攪拌して5分間経過した後に容器内の上澄み液体Lと粗粒材SRを含む混合液体との境界面から液面までのレベルをbとし、b/aを分離率と定義する。
【0037】
図3は、3つのタイプの粗粒材に関して、粘性と分離率との関係を実験した結果を示している。同図(A)は3号珪砂(0.8〜2.8mm)について、同図(B)は4号珪砂(0.2〜1.2mm)について、同図(C)は5号珪砂(0.1〜0.6mm)について各号珪砂の配合比を変えて粘性と分離率との関係を示した。また図4はこれらの珪砂の粒度分布である。
【0038】
全体的な傾向としてグアーガム濃度が1.0重量%以上で分離率は急に低下しており、濃度1.5重量%以上でほぼ全部のタイプの粗粒材に関して分離率が0.1以下になっている。
【0039】
個別の試料を分析すると次の通りである。まず最も細かい5号珪砂に関しては、5号珪砂の配合比30%の試料(□)では各データを結ぶ折れ線はグアーガム濃度が1.0〜1.5重量%の範囲で分離率が0.1以下となった。また5号珪砂の配合比20%の試料(△)及び5号珪砂の配合比10%の試料(○)に関しては、各データを結ぶ折れ線はグアーガム濃度が1.3重量%〜1.5重量%の範囲で分離率が0.1以下となっている。1.5重量%以上の範囲ではデータがないが全体として右下がりのグラフになっていることから、この範囲でも分離率が0.1以下であることが導かれる。
【0040】
4号珪砂に関しては、グアーガム濃度が1.5重量%のときに4号珪砂の配合比が30%、20%、10%の全ての試料に関して分離率が0.1以下となった。3号珪砂に関しては、グアーガム濃度が1.5重量%のときに3号珪砂の配合比が30%、20%の試料に関して分離率が0.1以下となった。
【0041】
図5及び図6は、粗粒材配合比率と粘性との関係を回転式粘度計(図5)及びロート式粘度計(図6)でそれぞれ表わした実験結果である。
【0042】
ロート式粘度計で測定した粘性が9秒よりも小さいと、粘性流体と粗粒材の分離率が大きくなり、ポンプ圧送による配管内で、材料分離を生じ、地盤中への注入が不可能となる。粘性が20 秒よりも大きいと、ポンプ圧送が困難となり、地盤中への注入が不可能となる。また分離率が0.1よりも大きい場合には、支持材の粒径次第ではポンプ圧送途中の配管内で材料分離を生じ、地盤中への注入ができなくなる可能性がある。
【0043】
図7は、上記注入材料を、井戸の周囲の地盤に注入する手順を示している。
【0044】
まず図7(A)に示すように注入孔を有する注入管4を土砂地盤2に建て込む。好適な図示例では、リチャージ井戸用の井戸穴10内に、下部に透水部を有するケーシング12を挿入し、ケーシング12と井戸穴10との間に上記注入管4を挿入し、この挿入後にケーシングと井戸穴との間に充填材を投入している。注入管は井戸穴内面に接するように配置することが望ましい。しかしこれらの構成は適宜変更することができる。
【0045】
次に図7(B)に矢示するように、注入材料として、支持材を含む粘性流体Fが注入管4を介して、注入材料を土砂地盤中に注入する。注入材料の粘性流体の粘度を1000cpとすることで、注入孔付近で動水勾配が大きくなり、土壌地盤に裂け目を生じ、注入管4の注入孔から側方へ延びる水みち8ができる。水みち8内には、図8(A)に示すように粘性流体Fと支持材Sとが連続して残る。
【0046】
なお、グアーガムを主体とする注入材料の注入作業は、数回に亘って支持材の配合量を増やしながら行うことができる。注入作業をスムーズに行うことができるからである。グアーガム溶液を用いたときには注入後の一定の時間は粘性が保持されるので、複数回の注入作業を行う場合に好適である。
【0047】
その後に粘性流体は、分解剤を添加しなくても、水中又は地盤中の微生物により分解し、水と同程度の粘性を有する分解生成物と支持材とが残る。粘性流体としてグアーガムを使用したときには、その分解反応は一連の工事日程に支障を生じない程度の短日数で完了する。しかるのちに分解生成物を井戸の揚水作用により地上に吸上げ、除去すると、図8(B)に示すように水みち8には支持材のみが残る。
【0048】
図7(C)に示すように、上記水みちを利用してリチャージ井戸の揚水管14或いは注水管(図示せず)を介して揚水及び注水が可能となる。
【0049】
図9は、原位置の細砂地盤における実施例を示す。4m3の注入材料を細砂地盤に注入したところ、透水係数は3倍に向上した(単孔式透水試験により計測)。またこれによりリチャージ流量は1.7倍に増加した(段階注水試験により計測)。
【0050】
本発明の第2実施形態として、上記注入材料を地盤中に注入して構築された改良地盤について説明する。この改良地盤は、土砂地盤に形成された水みちと水みち内に充填された支持材とを含んでいる。
【0051】
さらに上記注入材料の支持材の20%粒径は、上記土砂地盤の20%粒径の2倍から10倍の範囲にある。これにより、改良地盤の透水係数を原地盤の2〜10倍(水みち部は5〜200倍程度)程度とする。また水みちと土砂地盤との境界が明確となり、さらに水みちの透水性が高まる。前述の井戸の周りの改良地盤の他に次の実施例を示す。
【0052】
[実施例]
図10〜図12に本願の改良地盤の図示例を示している。
【0053】
図10は、本願の注入材料を汚染土壌・地下水の浄化工法へ適用した例を示す。注入装置から注水管16を、揚水装置からそれぞれ揚水管14をそれぞれ垂下するとともに、これら注入管及び揚水管にそれぞれ穿設した注入材料用注入口から、土砂地盤内へほぼ水平方向に延びる水みちを形成している。符号20は帯水層である。
【0054】
本実施例によれば、浄化剤や生物活性のための栄養塩などを注入する浄化工法において、注入管回りの地盤へ本願注入材を注入し、透水性を向上させることで、浄化剤や栄養塩の注入効率が向上する。これにより汚染土壌や地下水の浄化効率が高まる。
【0055】
図11は、本願注入材料を地下貯水層に適用した例を示す。この場合にも地下貯水層の注入管側及び揚水管側から、土砂地盤である帯水層20内へほぼ水平方向に水みちが延びている。
【0056】
本実施例によれば、井戸を介して冷水や温水を地盤内に蓄熱して空調や給湯に利用する技術において、井戸周りの地盤に本願の注入材を注入し、地盤の透水性を向上させることで、蓄熱・熱回収の効率が高まり、省エネ効果が向上する。
【0057】
図12は、本願注入材料を液状化対策工法に適用した例を示す。地上から液状化層内へ垂直又は斜め下方へ空気注入管を兼ねる注入管18を挿入する。この注入管の周りの地盤へ本願の注入材を注入する。そうすると注入管から主として水平方向へ水みち8が形成されている。この構成により、気泡Bの注入効率が向上し、液状化対策の効果が向上する。
【0058】
なお、上記各実施形態及び実施例は、好適な一例であり、本発明の技術的意義に反しない限り本願の特許請求の範囲から導かれる他の実施態様を除外するものではない。
【符号の説明】
【0059】
B…気泡 C…混合容器 F…粘性流体 L…上澄み液体
S…支持材 SR…粗粒材
2…土壌地盤 4…注入管 6…注出口 8…水みち
10…井戸穴 12…ケーシング 14…揚水管 16…注水管 18…注入管
20…帯水層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂地盤に注入するためのフラクチャリング用注入材料であって、
自己分解性の粘性流体と、粒径が0.1〜2.8mmの支持材とからなり、
土砂地盤の裂け目を生じさせるために粘性流体の粘度を1000cp以上としたことを特徴とする、フラクチャリング用注入材料。
【請求項2】
上記粘性流体をグアーガム溶液とし、その溶液の濃度を1〜2重量%としたことを特徴とする、請求項1に記載のフラクチャリング用注入材料。
【請求項3】
上記粘性流体の粘度を9000〜70000cpとしたことを特徴とする、請求項1に記載のフラクチャリング用注入材料。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のフラクチャリング用注入材料を土砂地盤に注入して透水性を改善した改良地盤であって、上記土砂地盤に形成された水みちと水みち内に充填された支持材とを含み、かつ注入材料の20%粒径が上記土砂地盤の20%粒径の2倍から10倍の範囲にあることを特徴とする、フラクチャリング流体を用いて水みちを形成した改良地盤。
【請求項1】
土砂地盤に注入するためのフラクチャリング用注入材料であって、
自己分解性の粘性流体と、粒径が0.1〜2.8mmの支持材とからなり、
土砂地盤の裂け目を生じさせるために粘性流体の粘度を1000cp以上としたことを特徴とする、フラクチャリング用注入材料。
【請求項2】
上記粘性流体をグアーガム溶液とし、その溶液の濃度を1〜2重量%としたことを特徴とする、請求項1に記載のフラクチャリング用注入材料。
【請求項3】
上記粘性流体の粘度を9000〜70000cpとしたことを特徴とする、請求項1に記載のフラクチャリング用注入材料。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のフラクチャリング用注入材料を土砂地盤に注入して透水性を改善した改良地盤であって、上記土砂地盤に形成された水みちと水みち内に充填された支持材とを含み、かつ注入材料の20%粒径が上記土砂地盤の20%粒径の2倍から10倍の範囲にあることを特徴とする、フラクチャリング流体を用いて水みちを形成した改良地盤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−162919(P2012−162919A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24360(P2011−24360)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
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