フラックスゲート電流センサ用ループコア、及びフラックスゲート電流センサ
【課題】地磁気の影響を受けにくいフラックスゲート電流センサ用ループコアを提供すること。
【解決手段】この課題を解決するフラックスゲート電流センサ用ループコアは、略コの字形状に曲折された2つの板形状を一体に連ねた、略3の字状のコアを一対有する。一対のコアは、互いの第1外脚部同士の少なくとも一部が接触するとともに、互いの第2外脚部同士の少なくとも一部が第2外脚部の板厚方向に重ね合わせられた状態で接触しつつ、2つの略コの字形状の互いの連結部分の間に所定のギャップが保たれて、中途が括れた環状ループが形成されるように、対向配置されている。環状ループは、ギャップ部分を境に、第1外脚部側に、測定対象の電線が挿入され通されるスペースを規定する第1環部を有し、第2外脚部側に、電線に流れる電流により誘導される磁界を検出するための磁気プローブを配置するスペースを規定する第2環部を有する。
【解決手段】この課題を解決するフラックスゲート電流センサ用ループコアは、略コの字形状に曲折された2つの板形状を一体に連ねた、略3の字状のコアを一対有する。一対のコアは、互いの第1外脚部同士の少なくとも一部が接触するとともに、互いの第2外脚部同士の少なくとも一部が第2外脚部の板厚方向に重ね合わせられた状態で接触しつつ、2つの略コの字形状の互いの連結部分の間に所定のギャップが保たれて、中途が括れた環状ループが形成されるように、対向配置されている。環状ループは、ギャップ部分を境に、第1外脚部側に、測定対象の電線が挿入され通されるスペースを規定する第1環部を有し、第2外脚部側に、電線に流れる電流により誘導される磁界を検出するための磁気プローブを配置するスペースを規定する第2環部を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象に流れる電流を測定するためのフラックスゲート電流センサ、及びフラックスゲート電流センサ用のループコアに関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象に流れる電流を測定するためのセンサとして、フラックスゲート電流センサが知られており、実用に供されている。この種のフラックスゲート電流センサの具体的構成は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のフラックスゲート電流センサは、フラックスゲートコア(18)を有し、その周囲にフラックスゲートコイル(20)が巻回された磁界センサ(8)を備えている。また、二つのコア部分(28a、28b)により形成される磁気コア(4)を有している。コア部分(28a、28b)の枝部部分(32a、32b)は、側壁部(46a、46b、46a’、46b’)によって結合された内壁部(40a、40b)と外壁部(42a、42b)を有している。コア部分(28a)の枝部部分(32a)の壁部(40a、42a、46a、46a’)と、コア部分(28b)の枝部部分(32b)の壁部(40b、42b、46b、46b’)は、互いの自由端縁部(53a、53b)間に所定のエアギャップ(54)を空けつつ、空洞部(44)を部分的に囲うように形成されている。空洞部(44)には、磁界センサ(8)が収容され支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−510318公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のフラックスゲート電流センサでは、磁界センサ(8)が地磁気の影響を受けることにより、測定対象の電流を精度良く検出できないことがある。特許文献1に記載のフラックスゲート電流センサにおいては、例えば地磁気の向きが枝部部分(32a、32b)の長軸方向の場合、エアギャップ(54)にて、空気よりも磁気抵抗の低い磁界センサ(8)を介して地磁気が流れる。また、例えば地磁気の向きがコア部分(28a、28b)の側方枝部(36、34)の長軸方向の場合、地磁気は、側方枝部(36、34)から枝部部分(32a、32b)に流れ、エアギャップ(54)にて、空気よりも磁気抵抗の低い磁界センサ(8)を介して流れる。
【0006】
このように、従来のフラックスゲート電流センサは、地磁気の影響を受けやすいため、測定対象の電流を精度良く検出できないという問題を抱えていた。本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地磁気の影響を受けにくいフラックスゲート電流センサ、及び、このようなフラックスゲート電流センサに適したフラックスゲート電流センサ用ループコアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係るフラックスゲート電流センサ用ループコアは、略コの字形状に曲折された2つの板形状を一体に連ねた、略3の字状のコアを一対有している。一対のコアは、互いの第1外脚部同士の少なくとも一部が接触するとともに、互いの第2外脚部同士の少なくとも一部が第2外脚部の板厚方向に重ね合わせられた状態で接触しつつ、2つの略コの字形状の互いの連結部分の間に所定のギャップが保たれて、中途が括れた環状ループが形成されるように、対向配置されている。環状ループは、ギャップ部分を境に、第1外脚部側に、測定対象の電線が挿入され通されるスペースを規定する第1環部を有し、第2外脚部側に、電線に流れる電流により誘導される磁界を検出するための磁気プローブを配置するスペースを規定する第2環部を有している。
【0008】
本発明によれば、磁気プローブを囲う第2環部を構成する一対の第2外脚部が、重ね合わせられたうえで接触しているため、一対の第2外脚部間の接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられる。そのため、この接触部分に達した地磁気は、磁気プローブを経由することなく、磁気抵抗のより小さい接触部分を経由して流れていく。すなわち、本発明に係るフラックスゲート電流センサ用ループコアは、磁気プローブに対する地磁気の影響を抑えるのに好適に構成されている。
【0009】
本発明に係るフラックスゲート電流センサ用ループコアは、第2外脚部同士の少なくとも一部を板厚方向に重ね合わせた状態で密着させる密着手段を有した構成としてもよい。
【0010】
密着手段は、爪部、溶接部、接着部、狭持部、嵌合部の少なくとも一つを含む構成としてもよい。なお、爪部は、例えば、一方の第2外脚部の先端に形成されたものであり、一対の第2外脚部を対向配置したときに、他方の第2外脚部に係合することにより、第2外脚部同士を固定するものである。また、溶接部は、例えば、対向配置された状態のコア同士の少なくとも一部を溶接したものである。また、接着部は、例えば、対向配置された一対の第2外脚部の間に塗布されたものである。また、狭持部は、例えば、一方の第2外脚部の先端に形成されたものであり、一対の第2外脚部を対向配置したときに、他方の第2外脚部を狭持することにより、第2外脚部同士を固定するものである。また、嵌合部は、例えば、一対の第2外脚部を対向配置したときに嵌合する、第2外脚部の一方に形成された凸部と、第2外脚部の他方に形成された凹部からなるものである。
【0011】
本発明に係るフラックスゲート電流センサ用ループコアは、第1外脚部同士の少なくとも一部がその板厚方向に重ね合わせられた状態で接触している構成としてもよい。
【0012】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係るフラックスゲート電流センサは、上記フラックスゲート電流センサ用ループコアと、その第2環部によって囲われるスペースに配置される磁気プローブと、フラックスゲート電流センサ用ループコアに絶縁体を介して巻回されたコイルとを有することを特徴としたものである。
【0013】
上記絶縁体は、例えば、第1外脚部の板厚方向に重ね合わせられた一対の第1外脚部の側面、第2外脚部の板厚方向に重ね合わせられた一対の第2外脚部の側面、の少なくとも一部を囲うボビンである。この場合、第1外脚部同士、第2外脚部同士の少なくとも一方は、ボビンによる圧接狭持により、互いに接触し固定されている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地磁気の影響を受けにくいフラックスゲート電流センサ、及び、このようなフラックスゲート電流センサに適したフラックスゲート電流センサ用ループコアが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るフラックスゲート電流センサの回路図を示す。
【図2】本発明の実施形態に係るフラックスゲート電流センサの断面図を示す。
【図3】本発明の実施形態(本実施例1)に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の斜視図を示す。
【図4】本発明の実施例1のフラックスゲート電流センサの組立を説明する図である。
【図5】本発明の実施例2に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図6】本発明の実施例3に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図7】本発明の実施例4に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図8】本発明の実施例5に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図9】本発明の実施例6に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図10】本発明の実施例7に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図11】本発明の実施例8に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るフラックスゲート電流センサについて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るフラックスゲート電流センサ1の回路図を示す。本実施形態のフラックスゲート電流センサ1は、フィードバックコア30に、プローブ10及びフィードバックコイル20を取り付けた構造を有している。フィードバックコア30は、例えば、透磁率の高い、軟磁性合金の一つであるPCパーマロイによって形成されている。フィードバックコア30には、測定対象となる電流が流れるケーブルCLが近接して配置されている。フラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流によってフィードバックコア30内に発生する磁界の大きさを検出することにより、ケーブルCLを流れる電流の大きさを測定する。
【0018】
図2(a)は、プローブ10、フィードバックコイル20、及びフィードバックコア30を備えるフラックスゲート電流センサ1の主要部の断面図を示す。図2(b)は、図2(a)のA−A断面を示し、図2(c)は、図2(a)のB−B断面を示す。図3は、フィードバックコア30単体の斜視図を示す。図2又は図3に示されるように、フィードバックコア30は、第1コア部31と第2コア部32とを組み合わせることにより、ループを形成している。第1コア部31、第2コア部32は、それぞれ、フィードバックコア30のループの内側に向かって大きく屈曲する屈曲部31a、32aを持ち、略コの字形状に曲折された2つの幅広の板材を一体に連ねた、略3の字形状を有している。図2に示されるように、フィードバックコア30のループ形状は、2つの略コの字形状を連結する連結部分を含む屈曲部31a及び32aによって、第1環部33と第2環部34からなる、中途で括れた環状(略8の字状)となっている。
【0019】
プローブ10は、フラックスゲートコア11の周囲に巻線12が巻回された磁気プローブである。フラックスゲートコア11は、例えば、透磁率の高い、軟磁性合金の一つであるアモルファスによって形成されている。フラックスゲートコア11と巻線12は、図示省略された絶縁体によって絶縁されている。図2に示されるように、プローブ10は、第2環部34内の、フィードバックコア30によって囲われたスペースに配置されている。巻線12に電流が流されると、フラックスゲートコア11内に磁界が発生する。
【0020】
フィードバックコイル20は、第1巻線21及び第2巻線22を有している。第1巻線21は、第1環部33の一部(第1コア部31の第1外脚部31c、及び第2コア部32の第1外脚部32c)を囲うよう配置された、絶縁性を有する第1ボビン41に巻回されている。第2巻線22は、第2環部34及び屈曲部31a、32a全体を囲うように配置された、絶縁性を有する第2ボビン42に巻回されている。第1巻線21と第2巻線22は、電気的に直列となるよう互いに接続されている。
【0021】
フラックスゲート電流センサ1の動作について、以下に説明する。なお、測定対象となる電流が流れるケーブルCLは、第1環部33内の、第1巻線21と第2巻線22との間のスペースに挿入され通されている。
【0022】
図1に示されるように、プローブ10の巻線12には、パルス電源51が接続されている。パルス電源51から巻線12には、パルス状の高周波の矩形波電流が供給される。高周波矩形波電流が巻線12に供給されると、フラックスゲートコア11内の磁束密度が周期的に飽和する。そのため、ケーブルCLを流れる電流によってフィードバックコア30内に磁界が発生すると、巻線12に印加される電圧の波形には、外部磁界(フィードバックコア30内に発生した磁界)によって歪みが生じるようになる。
【0023】
巻線12は、インターフェース回路52に接続されている。インターフェース回路52は、巻線12間の電圧をPWM信号に変換する。インターフェース回路52から出力されるPWM信号は、フラックスゲートコア11に外部磁界が加えられていない状態(すなわち、ケーブルCLに電流が流れていない状態)ではデューティ比50%の信号となる。PWM信号のデューティ比は、フラックスゲートコア11に加えられる外部磁界に応じて変化する。
【0024】
インターフェース回路52から出力されたPWM信号は、ローパスフィルタ53に入力する。ローパスフィルタ53は、PWM信号をアナログ信号(デューティ比に応じた出力電圧)に変換し、変換した出力電圧をドライバ54に出力する。
【0025】
ドライバ54は、エラーアンプとフィードバック回路を備えている。ドライバ54の出力段には、フィードバックコイル20が接続されている。エラーアンプは、ローパスフィルタ53からの出力電圧と所定の基準電圧Vrefとの差分を検出する。フィードバック回路は、検出された差分に基づく大きさの電流をフィードバックコイル20に流す。フィードバックコイル20を流れる電流によってフィードバック磁界が発生することにより、ケーブルCLを流れる電流によって誘導されたフィードバックコア30内の磁界が打ち消される。すなわち、フィードバックコイル20には、フラックスゲートコア11に加わる外部磁界がゼロになるように負帰還電流が流れるようになる。
【0026】
フラックスゲート電流センサ1は、フィードバックコイル20に流れる電流(言い換えると、出力電圧VOUT)をシャント抵抗Rsで測定することにより、ケーブルCLを流れる電流の大きさを測定する。なお、フィードバックコイル20に流れる電流は、上記の負帰還によって高速で周期的に変化する。しかし、差分増幅回路55は、ドライバ54に対して応答速度が数桁低い。そのため、出力電圧VOUTの波形は測定対象の電流波形と一致し、実質的に、ケーブルCLに流れる電流の大きさと相関する値となる。
【0027】
本実施形態のフラックスゲート電流センサ1は、地磁気に基づく電流測定誤差を有効に抑えるため、フィードバックコア30の磁気抵抗が小さくなるように、第1コア部31と第2コア部32とを効果的に密着等させている。以下、フラックスゲート電流センサ1の具体的実施例を複数例説明する。
【実施例1】
【0028】
図2は、本実施例1のフラックスゲート電流センサ1の断面図を兼ね、図3は、本実施例1のフィードバックコア30単体の斜視図を兼ねている。図4(a)〜図4(c)は、本実施例1のフラックスゲート電流センサ1の組立を説明する図である。
【0029】
図2(a)、図2(b)及び図3に示されるように、フィードバックコア30は、中途の括れ位置側から見て、第1コア部31の第2外脚部31b、第2コア部32の第2外脚部32bの順に配置されており、第2外脚部31bの上面31bUと、第2外脚部32bの下面32bDとが互いに重ね合わせられている。また、図2(a)、図2(c)、及び図3に示されるように、フィードバックコア30は、中途の括れ位置側から見て、第1コア部31の第1外脚部31c、第2コア部32の第1外脚部32cの順に配置されており、第1外脚部31cの下面31cDと、第1外脚部32cの上面32cUとが互いに重ね合わせられている。
【0030】
図4に示されるフラックスゲート電流センサ1の組立工程に沿って説明すると、第1コア部31の第2外脚部31bが第2ボビン42の内側に挿入され通されるとともに、第1コア部31の第1外脚部31cが第1ボビン41の内側に挿入され通される(図4(a)参照)。第2環部34内の、フィードバックコア30によって囲われたスペース内に、プローブ10が組み付けられると(図4(b)参照)、第2コア部32の第2外脚部32bが第2ボビン42内の残りのスペースに挿入され通されるとともに、第2コア部32の第1外脚部32cが第1ボビン41内の残りのスペースに挿入され通される(図4(c)参照)。なお、第1ボビン41、第2ボビン42はそれぞれ、第1巻線21、第2巻線22とフィードバックコア30との絶縁が担保されるように、第1巻線21、第2巻線22とフィードバックコア30との間の少なくとも一部を囲うように形成されている。本実施例1では、図2(b)、図2(c)に示されるように、第1ボビン41、第2ボビン42はともに、長軸方向と直交する断面が略ロの字状となっている。
【0031】
図2(a)又は図2(b)に示されるように、第2コア部32の第2外脚部32bの上面32bUから屈曲部31a(又は32a)の下面31aD(又は32aD)までの幅w1は、第2ボビン42の、対向する内壁面間の距離d1と略等しい。また、第1コア部31の第2外脚部31bの上面31bUから下面31aD(又は32aD)までの幅w2と、第2コア部32の第2外脚部32bの板厚tとの和も、距離d1と略等しい。幅w1(及び幅w2と板厚tとの和)と距離d1は、例えばはめあい公差(中間ばめ又はしまりばめ)で規定されている。そのため、第2ボビン42をフィードバックコア30に取り付けると(図2(a)又は図4(c)参照)、第2環部34、屈曲部31a、及び32aの全体が第2ボビン42の内壁面間に挟み込まれて、適度な締め付け力を受ける。これにより、第2外脚部31bの上面31bUと、第2外脚部32bの下面32bDとが互いに密着し、固定状態となる。
【0032】
また、第1ボビン41の、対向する内壁面間の距離d2は、第1コア部31の第1外脚部31cと、第2コア部32の第1外脚部32cの板厚の合計と略等しい。この板厚の合計と距離d2は、例えばはめあい公差(中間ばめ又はしまりばめ)で規定されている。そのため、第1ボビン41をフィードバックコア30に取り付けると(図2(a)又は図4(c)参照)、第1外脚部31c及び32cが第1ボビン41の内壁面間に挟み込まれて、適度な締め付け力を受ける。これにより、第1外脚部31cの下面31cDと、第1外脚部32cの上面32cUとが互いに密着し、固定状態となる。
【0033】
本実施例1においては、第2ボビン42による圧接狭持という簡易な工法により、第1コア部31の第2外脚部31bの上面31bUと、第2コア部32の第2外脚部32bの下面32bDとが面接触して固定される。上面31bUと下面32bDとの密着により、第1コア部31と第2コア部32との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられる。例えば地磁気の向きがプローブ10の長軸方向の場合を考える。この場合において、第1コア部31と第2コア部32との接触部分に達した地磁気は、フラックスゲートコア11を経由することなく、磁気抵抗のより小さい接触部分を経由して流れていく。また、地磁気の向きがプローブ10の長軸方向と直交する場合を考える。例えば図2(a)の紙面と直交する向きの場合、地磁気は、フラックスゲートコア11を経由することなく、磁気抵抗のより小さいフィードバックコア30内に引き寄せられて流れていく。図2(a)の紙面と平行(図面上下方向)な場合、地磁気は、フラックスゲートコア11を経由することなく、磁気抵抗のより小さいフィードバックコア30内を略3の字形状に沿って流れていく。このように、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、フラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。また、フィードバックコア30は2ピース構成であり、部品点数が少ない。
【実施例2】
【0034】
本実施例2以降の各実施例のフラックスゲート電流センサ1は、フィードバックコア以外の構成が本実施例1と共通である。そのため、以降においては、各実施例のフィードバックコア単体についてだけ説明する。また、本実施例2以降の各実施例において、本実施例1と同様の構成には同様の名称及び符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0035】
図5は、本実施例2のフィードバックコア130単体の断面図を示す。図5に示されるように、本実施例2のフィードバックコア130は、第1コア部131と第2コア部132からなる。第2コア部132の第2外脚部132bの先端には、爪部132eが形成されている。組立時において、第2コア部132の第2外脚部132bの下面132bDを第1コア部131の第2外脚部131bの上面131bUに重ね合わせるように、第2コア部132を第1コア部131に対して矢印C方向に動かすと、爪部132eが上面131bUに当たって、第2外脚部132bが変形する。この状態で、第2コア部132を第1コア部131に対して矢印C方向に更に動かすと、爪部132eが第2外脚部131bの根元位置(図5に示される位置)に落ち込む。これにより、第2外脚部131bの上面131bUと、第2外脚部132bの下面132bDとが互いに密着した状態で、第1コア部131と第2コア部132とが連結し、固定状態となる。
【0036】
本実施例2においては、爪部132eによる係合という簡易な工法により、第1コア部131の第2外脚部131bの上面131bUと、第2コア部132の第2外脚部132bの下面132bDとが面接触した状態で固定される。上面131bUと下面132bDとの密着により、第1コア部131と第2コア部132との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例2のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。
【実施例3】
【0037】
図6は、本実施例3のフィードバックコア230単体の断面図を示す。図6に示されるように、本実施例3のフィードバックコア230は、第1コア部231と第2コア部232からなる。本実施例3においては、第1コア部231の第2外脚部231bの上面231bUと、第2コア部232の第2外脚部232bの下面232bDとを面接触させつつ、第2外脚部231bの先端を第2外脚部232bの根元付近に形成された孔部(不図示)に挿し込んだうえで、溶接Wにより固定している。
【0038】
本実施例3においては、第1コア部231の第2外脚部231bの上面231bUと、第2コア部232の第2外脚部232bの下面232bDとの密着により、第1コア部231と第2コア部232との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例3のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。なお、本実施例3においては、第2ボビン42による圧接狭持を併用して、上面131bUと下面132bDとを密着させると尚よい。
【実施例4】
【0039】
図7は、本実施例4のフィードバックコア330単体の断面図を示す。図7に示されるように、本実施例4のフィードバックコア330は、第1コア部331と第2コア部332からなる。本実施例4において、第1コア部331と第2コア部332は、第1コア部331の第2外脚部331bの下面331bDと、第2コア部332の第2外脚部332bの上面332bUとの間に塗布された磁性接着剤Aを介して接触し、固定されている。なお、図7では、磁性接着剤Aを示す便宜上、下面331bDと上面332bUとが離れるように図示されているが、磁性接着剤Aの塗布量は極めて薄いため、これらの面は実質的に密着状態にある。
【0040】
本実施例4においては、第1コア部331の第2外脚部331bの下面331bDと、第2コア部332の第2外脚部332bの上面332bUとの密着により、第1コア部331と第2コア部332との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例4のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。なお、本実施例4においては、第2ボビン42による圧接狭持を併用して、下面331bDと上面332bUとを密着させると尚よい。
【実施例5】
【0041】
図8は、本実施例5のフィードバックコア430単体の断面図を示す。図8に示されるように、本実施例5のフィードバックコア430は、第1コア部431と第2コア部432からなる。第2コア部432の第2外脚部の先端は、クリップ状に形成されている。クリップ形状は、クリップ上部432fとクリップ下部432gからなる。本実施例5においては、クリップ上部432fとクリップ下部432gとが弾性変形しつつ、第1コア部431の第2外脚部431bの先端を狭持する。これにより、第2外脚部431bの下面431bDと、クリップ下部432gとが互いに密着し、固定状態となる。
【0042】
本実施例5においては、第2コア部432の先端で第1コア部431の先端を狭持するという簡易な工法により、第1コア部431の第2外脚部431bの下面431bDと、クリップ下部432gとが面接触した状態で固定される。これにより、第1コア部431と第2コア部432との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例5のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。
【実施例6】
【0043】
図9は、本実施例6のフィードバックコア530単体の断面図を示す。図9に示されるように、本実施例6のフィードバックコア530は、第1コア部531と第2コア部532からなる。第1コア部531の第2外脚部531bの上面531bUには凸部531hが形成されており、第2コア部532の第2外脚部532bの下面532bDには凹部532hが形成されている。組立時において、下面532bDを上面531bUに重ね合わせた状態で、第2コア部532を第1コア部531に対して矢印C方向に動かすと、第2外脚部532bの先端が凸部531hに乗り上げて変形し、図9に示される位置に達すると、凸部531hと凹部532hが嵌合する。これにより、上面531bUと下面532bDとが互いに密着した状態で、第1コア部531と第2コア部532とが連結し、固定状態となる。
【0044】
本実施例6においては、凸部531hと凹部532hとの嵌合という簡易な工法により、第1コア部531の第2外脚部531bの上面531bUと、第2コア部532の第2外脚部532bの下面532bDとが面接触した状態で固定される。上面531bUと下面532bDとの密着により、第1コア部531と第2コア部532との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例6のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。なお、凸部531hと凹部532hのセットは、少なくとも一つあれば、本発明の目的は好適に達成される。
【実施例7】
【0045】
図10は、本実施例7のフィードバックコア630単体の断面図を示す。図10に示されるように、本実施例7のフィードバックコア630は、第1コア部631と第2コア部632からなる。第2コア部632の第2外脚部は、第2外脚部632fと第2外脚部632gからなる二叉形状に形成されている。第2外脚部632fと第2外脚部632gとの隙間と、第1コア部631の第2外脚部631bの板厚は、例えばはめあい公差(中間ばめ又はしまりばめ)で規定されている。そのため、組立時において、第2コア部632を第1コア部631に対して矢印C方向に動かすと、第2外脚部631bが第2外脚部632fと第2外脚部632gとの間に挿し込まれて、適度な締め付け力を受ける。これにより、第2外脚部631bの上面631bUと第2外脚部632fとが互いに密着するとともに、第2外脚部631bの下面631bDと第2外脚部632gとが互いに密着した状態で、第1コア部631と第2コア部632とが連結し、固定状態となる。
【0046】
本実施例7においては、上記の二面での密着により、第1コア部631と第2コア部632との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例7のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。なお、本実施例7においては、第2ボビン42による圧接狭持を併用して、上記の二面を密着させると尚よい。
【実施例8】
【0047】
図11は、本実施例8のフィードバックコア730単体の断面図を示す。図11に示されるように、本実施例8のフィードバックコア730は、第1コア部731と第2コア部732からなる。第2コア部732の第2外脚部732bには、略半球状のエンボス部732iが形成されている。第2外脚部732bの根元の屈曲部Dは、やや鋭角に屈曲されている。そのため、エンボス部732iは、第1コア部731の第2外脚部731bの上面731bUに、適度な付勢力で接触する。これにより、上面731bUとエンボス部732iとが互いに密着した状態で、第1コア部731と第2コア部732とが連結し、固定状態となる。なお、エンボス部732iの頂点付近は、上面731bUとの接触面積を増加させるため、平面状に形成されてもよい。
【0048】
本実施例8においては、第1コア部731の第2外脚部731bの上面731bUと、エンボス部732iとの密着により、第1コア部731と第2コア部732との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例8のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。なお、本実施例8においては、第2ボビン42による圧接狭持を併用して、上面731bUとエンボス部732iとを密着させると尚よい。また、エンボス部732iは、少なくとも一つあれば、本発明の目的は好適に達成される。
【0049】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施の形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。例えば、各実施例に示した密着手段(第2ボビン42による圧接狭持、爪部132eによる係合、溶接Wによる溶接、磁性接着剤Aによる接着、クリップ形状による狭持、凸部531hと凹部532hとの嵌合、二叉形状による狭持、エンボス部732iによる付勢)を適宜組み合わせて、第1コア部と第2コア部とを連結固定してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 フラックスゲート電流センサ
10 プローブ
20 フィードバックコイル
30、130、230、330、430、530、630、730 フィードバックコア
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象に流れる電流を測定するためのフラックスゲート電流センサ、及びフラックスゲート電流センサ用のループコアに関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象に流れる電流を測定するためのセンサとして、フラックスゲート電流センサが知られており、実用に供されている。この種のフラックスゲート電流センサの具体的構成は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のフラックスゲート電流センサは、フラックスゲートコア(18)を有し、その周囲にフラックスゲートコイル(20)が巻回された磁界センサ(8)を備えている。また、二つのコア部分(28a、28b)により形成される磁気コア(4)を有している。コア部分(28a、28b)の枝部部分(32a、32b)は、側壁部(46a、46b、46a’、46b’)によって結合された内壁部(40a、40b)と外壁部(42a、42b)を有している。コア部分(28a)の枝部部分(32a)の壁部(40a、42a、46a、46a’)と、コア部分(28b)の枝部部分(32b)の壁部(40b、42b、46b、46b’)は、互いの自由端縁部(53a、53b)間に所定のエアギャップ(54)を空けつつ、空洞部(44)を部分的に囲うように形成されている。空洞部(44)には、磁界センサ(8)が収容され支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−510318公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のフラックスゲート電流センサでは、磁界センサ(8)が地磁気の影響を受けることにより、測定対象の電流を精度良く検出できないことがある。特許文献1に記載のフラックスゲート電流センサにおいては、例えば地磁気の向きが枝部部分(32a、32b)の長軸方向の場合、エアギャップ(54)にて、空気よりも磁気抵抗の低い磁界センサ(8)を介して地磁気が流れる。また、例えば地磁気の向きがコア部分(28a、28b)の側方枝部(36、34)の長軸方向の場合、地磁気は、側方枝部(36、34)から枝部部分(32a、32b)に流れ、エアギャップ(54)にて、空気よりも磁気抵抗の低い磁界センサ(8)を介して流れる。
【0006】
このように、従来のフラックスゲート電流センサは、地磁気の影響を受けやすいため、測定対象の電流を精度良く検出できないという問題を抱えていた。本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地磁気の影響を受けにくいフラックスゲート電流センサ、及び、このようなフラックスゲート電流センサに適したフラックスゲート電流センサ用ループコアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係るフラックスゲート電流センサ用ループコアは、略コの字形状に曲折された2つの板形状を一体に連ねた、略3の字状のコアを一対有している。一対のコアは、互いの第1外脚部同士の少なくとも一部が接触するとともに、互いの第2外脚部同士の少なくとも一部が第2外脚部の板厚方向に重ね合わせられた状態で接触しつつ、2つの略コの字形状の互いの連結部分の間に所定のギャップが保たれて、中途が括れた環状ループが形成されるように、対向配置されている。環状ループは、ギャップ部分を境に、第1外脚部側に、測定対象の電線が挿入され通されるスペースを規定する第1環部を有し、第2外脚部側に、電線に流れる電流により誘導される磁界を検出するための磁気プローブを配置するスペースを規定する第2環部を有している。
【0008】
本発明によれば、磁気プローブを囲う第2環部を構成する一対の第2外脚部が、重ね合わせられたうえで接触しているため、一対の第2外脚部間の接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられる。そのため、この接触部分に達した地磁気は、磁気プローブを経由することなく、磁気抵抗のより小さい接触部分を経由して流れていく。すなわち、本発明に係るフラックスゲート電流センサ用ループコアは、磁気プローブに対する地磁気の影響を抑えるのに好適に構成されている。
【0009】
本発明に係るフラックスゲート電流センサ用ループコアは、第2外脚部同士の少なくとも一部を板厚方向に重ね合わせた状態で密着させる密着手段を有した構成としてもよい。
【0010】
密着手段は、爪部、溶接部、接着部、狭持部、嵌合部の少なくとも一つを含む構成としてもよい。なお、爪部は、例えば、一方の第2外脚部の先端に形成されたものであり、一対の第2外脚部を対向配置したときに、他方の第2外脚部に係合することにより、第2外脚部同士を固定するものである。また、溶接部は、例えば、対向配置された状態のコア同士の少なくとも一部を溶接したものである。また、接着部は、例えば、対向配置された一対の第2外脚部の間に塗布されたものである。また、狭持部は、例えば、一方の第2外脚部の先端に形成されたものであり、一対の第2外脚部を対向配置したときに、他方の第2外脚部を狭持することにより、第2外脚部同士を固定するものである。また、嵌合部は、例えば、一対の第2外脚部を対向配置したときに嵌合する、第2外脚部の一方に形成された凸部と、第2外脚部の他方に形成された凹部からなるものである。
【0011】
本発明に係るフラックスゲート電流センサ用ループコアは、第1外脚部同士の少なくとも一部がその板厚方向に重ね合わせられた状態で接触している構成としてもよい。
【0012】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係るフラックスゲート電流センサは、上記フラックスゲート電流センサ用ループコアと、その第2環部によって囲われるスペースに配置される磁気プローブと、フラックスゲート電流センサ用ループコアに絶縁体を介して巻回されたコイルとを有することを特徴としたものである。
【0013】
上記絶縁体は、例えば、第1外脚部の板厚方向に重ね合わせられた一対の第1外脚部の側面、第2外脚部の板厚方向に重ね合わせられた一対の第2外脚部の側面、の少なくとも一部を囲うボビンである。この場合、第1外脚部同士、第2外脚部同士の少なくとも一方は、ボビンによる圧接狭持により、互いに接触し固定されている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地磁気の影響を受けにくいフラックスゲート電流センサ、及び、このようなフラックスゲート電流センサに適したフラックスゲート電流センサ用ループコアが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るフラックスゲート電流センサの回路図を示す。
【図2】本発明の実施形態に係るフラックスゲート電流センサの断面図を示す。
【図3】本発明の実施形態(本実施例1)に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の斜視図を示す。
【図4】本発明の実施例1のフラックスゲート電流センサの組立を説明する図である。
【図5】本発明の実施例2に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図6】本発明の実施例3に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図7】本発明の実施例4に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図8】本発明の実施例5に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図9】本発明の実施例6に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図10】本発明の実施例7に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【図11】本発明の実施例8に係るフラックスゲート電流センサが備えるフィードバックコア単体の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るフラックスゲート電流センサについて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るフラックスゲート電流センサ1の回路図を示す。本実施形態のフラックスゲート電流センサ1は、フィードバックコア30に、プローブ10及びフィードバックコイル20を取り付けた構造を有している。フィードバックコア30は、例えば、透磁率の高い、軟磁性合金の一つであるPCパーマロイによって形成されている。フィードバックコア30には、測定対象となる電流が流れるケーブルCLが近接して配置されている。フラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流によってフィードバックコア30内に発生する磁界の大きさを検出することにより、ケーブルCLを流れる電流の大きさを測定する。
【0018】
図2(a)は、プローブ10、フィードバックコイル20、及びフィードバックコア30を備えるフラックスゲート電流センサ1の主要部の断面図を示す。図2(b)は、図2(a)のA−A断面を示し、図2(c)は、図2(a)のB−B断面を示す。図3は、フィードバックコア30単体の斜視図を示す。図2又は図3に示されるように、フィードバックコア30は、第1コア部31と第2コア部32とを組み合わせることにより、ループを形成している。第1コア部31、第2コア部32は、それぞれ、フィードバックコア30のループの内側に向かって大きく屈曲する屈曲部31a、32aを持ち、略コの字形状に曲折された2つの幅広の板材を一体に連ねた、略3の字形状を有している。図2に示されるように、フィードバックコア30のループ形状は、2つの略コの字形状を連結する連結部分を含む屈曲部31a及び32aによって、第1環部33と第2環部34からなる、中途で括れた環状(略8の字状)となっている。
【0019】
プローブ10は、フラックスゲートコア11の周囲に巻線12が巻回された磁気プローブである。フラックスゲートコア11は、例えば、透磁率の高い、軟磁性合金の一つであるアモルファスによって形成されている。フラックスゲートコア11と巻線12は、図示省略された絶縁体によって絶縁されている。図2に示されるように、プローブ10は、第2環部34内の、フィードバックコア30によって囲われたスペースに配置されている。巻線12に電流が流されると、フラックスゲートコア11内に磁界が発生する。
【0020】
フィードバックコイル20は、第1巻線21及び第2巻線22を有している。第1巻線21は、第1環部33の一部(第1コア部31の第1外脚部31c、及び第2コア部32の第1外脚部32c)を囲うよう配置された、絶縁性を有する第1ボビン41に巻回されている。第2巻線22は、第2環部34及び屈曲部31a、32a全体を囲うように配置された、絶縁性を有する第2ボビン42に巻回されている。第1巻線21と第2巻線22は、電気的に直列となるよう互いに接続されている。
【0021】
フラックスゲート電流センサ1の動作について、以下に説明する。なお、測定対象となる電流が流れるケーブルCLは、第1環部33内の、第1巻線21と第2巻線22との間のスペースに挿入され通されている。
【0022】
図1に示されるように、プローブ10の巻線12には、パルス電源51が接続されている。パルス電源51から巻線12には、パルス状の高周波の矩形波電流が供給される。高周波矩形波電流が巻線12に供給されると、フラックスゲートコア11内の磁束密度が周期的に飽和する。そのため、ケーブルCLを流れる電流によってフィードバックコア30内に磁界が発生すると、巻線12に印加される電圧の波形には、外部磁界(フィードバックコア30内に発生した磁界)によって歪みが生じるようになる。
【0023】
巻線12は、インターフェース回路52に接続されている。インターフェース回路52は、巻線12間の電圧をPWM信号に変換する。インターフェース回路52から出力されるPWM信号は、フラックスゲートコア11に外部磁界が加えられていない状態(すなわち、ケーブルCLに電流が流れていない状態)ではデューティ比50%の信号となる。PWM信号のデューティ比は、フラックスゲートコア11に加えられる外部磁界に応じて変化する。
【0024】
インターフェース回路52から出力されたPWM信号は、ローパスフィルタ53に入力する。ローパスフィルタ53は、PWM信号をアナログ信号(デューティ比に応じた出力電圧)に変換し、変換した出力電圧をドライバ54に出力する。
【0025】
ドライバ54は、エラーアンプとフィードバック回路を備えている。ドライバ54の出力段には、フィードバックコイル20が接続されている。エラーアンプは、ローパスフィルタ53からの出力電圧と所定の基準電圧Vrefとの差分を検出する。フィードバック回路は、検出された差分に基づく大きさの電流をフィードバックコイル20に流す。フィードバックコイル20を流れる電流によってフィードバック磁界が発生することにより、ケーブルCLを流れる電流によって誘導されたフィードバックコア30内の磁界が打ち消される。すなわち、フィードバックコイル20には、フラックスゲートコア11に加わる外部磁界がゼロになるように負帰還電流が流れるようになる。
【0026】
フラックスゲート電流センサ1は、フィードバックコイル20に流れる電流(言い換えると、出力電圧VOUT)をシャント抵抗Rsで測定することにより、ケーブルCLを流れる電流の大きさを測定する。なお、フィードバックコイル20に流れる電流は、上記の負帰還によって高速で周期的に変化する。しかし、差分増幅回路55は、ドライバ54に対して応答速度が数桁低い。そのため、出力電圧VOUTの波形は測定対象の電流波形と一致し、実質的に、ケーブルCLに流れる電流の大きさと相関する値となる。
【0027】
本実施形態のフラックスゲート電流センサ1は、地磁気に基づく電流測定誤差を有効に抑えるため、フィードバックコア30の磁気抵抗が小さくなるように、第1コア部31と第2コア部32とを効果的に密着等させている。以下、フラックスゲート電流センサ1の具体的実施例を複数例説明する。
【実施例1】
【0028】
図2は、本実施例1のフラックスゲート電流センサ1の断面図を兼ね、図3は、本実施例1のフィードバックコア30単体の斜視図を兼ねている。図4(a)〜図4(c)は、本実施例1のフラックスゲート電流センサ1の組立を説明する図である。
【0029】
図2(a)、図2(b)及び図3に示されるように、フィードバックコア30は、中途の括れ位置側から見て、第1コア部31の第2外脚部31b、第2コア部32の第2外脚部32bの順に配置されており、第2外脚部31bの上面31bUと、第2外脚部32bの下面32bDとが互いに重ね合わせられている。また、図2(a)、図2(c)、及び図3に示されるように、フィードバックコア30は、中途の括れ位置側から見て、第1コア部31の第1外脚部31c、第2コア部32の第1外脚部32cの順に配置されており、第1外脚部31cの下面31cDと、第1外脚部32cの上面32cUとが互いに重ね合わせられている。
【0030】
図4に示されるフラックスゲート電流センサ1の組立工程に沿って説明すると、第1コア部31の第2外脚部31bが第2ボビン42の内側に挿入され通されるとともに、第1コア部31の第1外脚部31cが第1ボビン41の内側に挿入され通される(図4(a)参照)。第2環部34内の、フィードバックコア30によって囲われたスペース内に、プローブ10が組み付けられると(図4(b)参照)、第2コア部32の第2外脚部32bが第2ボビン42内の残りのスペースに挿入され通されるとともに、第2コア部32の第1外脚部32cが第1ボビン41内の残りのスペースに挿入され通される(図4(c)参照)。なお、第1ボビン41、第2ボビン42はそれぞれ、第1巻線21、第2巻線22とフィードバックコア30との絶縁が担保されるように、第1巻線21、第2巻線22とフィードバックコア30との間の少なくとも一部を囲うように形成されている。本実施例1では、図2(b)、図2(c)に示されるように、第1ボビン41、第2ボビン42はともに、長軸方向と直交する断面が略ロの字状となっている。
【0031】
図2(a)又は図2(b)に示されるように、第2コア部32の第2外脚部32bの上面32bUから屈曲部31a(又は32a)の下面31aD(又は32aD)までの幅w1は、第2ボビン42の、対向する内壁面間の距離d1と略等しい。また、第1コア部31の第2外脚部31bの上面31bUから下面31aD(又は32aD)までの幅w2と、第2コア部32の第2外脚部32bの板厚tとの和も、距離d1と略等しい。幅w1(及び幅w2と板厚tとの和)と距離d1は、例えばはめあい公差(中間ばめ又はしまりばめ)で規定されている。そのため、第2ボビン42をフィードバックコア30に取り付けると(図2(a)又は図4(c)参照)、第2環部34、屈曲部31a、及び32aの全体が第2ボビン42の内壁面間に挟み込まれて、適度な締め付け力を受ける。これにより、第2外脚部31bの上面31bUと、第2外脚部32bの下面32bDとが互いに密着し、固定状態となる。
【0032】
また、第1ボビン41の、対向する内壁面間の距離d2は、第1コア部31の第1外脚部31cと、第2コア部32の第1外脚部32cの板厚の合計と略等しい。この板厚の合計と距離d2は、例えばはめあい公差(中間ばめ又はしまりばめ)で規定されている。そのため、第1ボビン41をフィードバックコア30に取り付けると(図2(a)又は図4(c)参照)、第1外脚部31c及び32cが第1ボビン41の内壁面間に挟み込まれて、適度な締め付け力を受ける。これにより、第1外脚部31cの下面31cDと、第1外脚部32cの上面32cUとが互いに密着し、固定状態となる。
【0033】
本実施例1においては、第2ボビン42による圧接狭持という簡易な工法により、第1コア部31の第2外脚部31bの上面31bUと、第2コア部32の第2外脚部32bの下面32bDとが面接触して固定される。上面31bUと下面32bDとの密着により、第1コア部31と第2コア部32との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられる。例えば地磁気の向きがプローブ10の長軸方向の場合を考える。この場合において、第1コア部31と第2コア部32との接触部分に達した地磁気は、フラックスゲートコア11を経由することなく、磁気抵抗のより小さい接触部分を経由して流れていく。また、地磁気の向きがプローブ10の長軸方向と直交する場合を考える。例えば図2(a)の紙面と直交する向きの場合、地磁気は、フラックスゲートコア11を経由することなく、磁気抵抗のより小さいフィードバックコア30内に引き寄せられて流れていく。図2(a)の紙面と平行(図面上下方向)な場合、地磁気は、フラックスゲートコア11を経由することなく、磁気抵抗のより小さいフィードバックコア30内を略3の字形状に沿って流れていく。このように、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、フラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。また、フィードバックコア30は2ピース構成であり、部品点数が少ない。
【実施例2】
【0034】
本実施例2以降の各実施例のフラックスゲート電流センサ1は、フィードバックコア以外の構成が本実施例1と共通である。そのため、以降においては、各実施例のフィードバックコア単体についてだけ説明する。また、本実施例2以降の各実施例において、本実施例1と同様の構成には同様の名称及び符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0035】
図5は、本実施例2のフィードバックコア130単体の断面図を示す。図5に示されるように、本実施例2のフィードバックコア130は、第1コア部131と第2コア部132からなる。第2コア部132の第2外脚部132bの先端には、爪部132eが形成されている。組立時において、第2コア部132の第2外脚部132bの下面132bDを第1コア部131の第2外脚部131bの上面131bUに重ね合わせるように、第2コア部132を第1コア部131に対して矢印C方向に動かすと、爪部132eが上面131bUに当たって、第2外脚部132bが変形する。この状態で、第2コア部132を第1コア部131に対して矢印C方向に更に動かすと、爪部132eが第2外脚部131bの根元位置(図5に示される位置)に落ち込む。これにより、第2外脚部131bの上面131bUと、第2外脚部132bの下面132bDとが互いに密着した状態で、第1コア部131と第2コア部132とが連結し、固定状態となる。
【0036】
本実施例2においては、爪部132eによる係合という簡易な工法により、第1コア部131の第2外脚部131bの上面131bUと、第2コア部132の第2外脚部132bの下面132bDとが面接触した状態で固定される。上面131bUと下面132bDとの密着により、第1コア部131と第2コア部132との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例2のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。
【実施例3】
【0037】
図6は、本実施例3のフィードバックコア230単体の断面図を示す。図6に示されるように、本実施例3のフィードバックコア230は、第1コア部231と第2コア部232からなる。本実施例3においては、第1コア部231の第2外脚部231bの上面231bUと、第2コア部232の第2外脚部232bの下面232bDとを面接触させつつ、第2外脚部231bの先端を第2外脚部232bの根元付近に形成された孔部(不図示)に挿し込んだうえで、溶接Wにより固定している。
【0038】
本実施例3においては、第1コア部231の第2外脚部231bの上面231bUと、第2コア部232の第2外脚部232bの下面232bDとの密着により、第1コア部231と第2コア部232との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例3のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。なお、本実施例3においては、第2ボビン42による圧接狭持を併用して、上面131bUと下面132bDとを密着させると尚よい。
【実施例4】
【0039】
図7は、本実施例4のフィードバックコア330単体の断面図を示す。図7に示されるように、本実施例4のフィードバックコア330は、第1コア部331と第2コア部332からなる。本実施例4において、第1コア部331と第2コア部332は、第1コア部331の第2外脚部331bの下面331bDと、第2コア部332の第2外脚部332bの上面332bUとの間に塗布された磁性接着剤Aを介して接触し、固定されている。なお、図7では、磁性接着剤Aを示す便宜上、下面331bDと上面332bUとが離れるように図示されているが、磁性接着剤Aの塗布量は極めて薄いため、これらの面は実質的に密着状態にある。
【0040】
本実施例4においては、第1コア部331の第2外脚部331bの下面331bDと、第2コア部332の第2外脚部332bの上面332bUとの密着により、第1コア部331と第2コア部332との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例4のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。なお、本実施例4においては、第2ボビン42による圧接狭持を併用して、下面331bDと上面332bUとを密着させると尚よい。
【実施例5】
【0041】
図8は、本実施例5のフィードバックコア430単体の断面図を示す。図8に示されるように、本実施例5のフィードバックコア430は、第1コア部431と第2コア部432からなる。第2コア部432の第2外脚部の先端は、クリップ状に形成されている。クリップ形状は、クリップ上部432fとクリップ下部432gからなる。本実施例5においては、クリップ上部432fとクリップ下部432gとが弾性変形しつつ、第1コア部431の第2外脚部431bの先端を狭持する。これにより、第2外脚部431bの下面431bDと、クリップ下部432gとが互いに密着し、固定状態となる。
【0042】
本実施例5においては、第2コア部432の先端で第1コア部431の先端を狭持するという簡易な工法により、第1コア部431の第2外脚部431bの下面431bDと、クリップ下部432gとが面接触した状態で固定される。これにより、第1コア部431と第2コア部432との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例5のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。
【実施例6】
【0043】
図9は、本実施例6のフィードバックコア530単体の断面図を示す。図9に示されるように、本実施例6のフィードバックコア530は、第1コア部531と第2コア部532からなる。第1コア部531の第2外脚部531bの上面531bUには凸部531hが形成されており、第2コア部532の第2外脚部532bの下面532bDには凹部532hが形成されている。組立時において、下面532bDを上面531bUに重ね合わせた状態で、第2コア部532を第1コア部531に対して矢印C方向に動かすと、第2外脚部532bの先端が凸部531hに乗り上げて変形し、図9に示される位置に達すると、凸部531hと凹部532hが嵌合する。これにより、上面531bUと下面532bDとが互いに密着した状態で、第1コア部531と第2コア部532とが連結し、固定状態となる。
【0044】
本実施例6においては、凸部531hと凹部532hとの嵌合という簡易な工法により、第1コア部531の第2外脚部531bの上面531bUと、第2コア部532の第2外脚部532bの下面532bDとが面接触した状態で固定される。上面531bUと下面532bDとの密着により、第1コア部531と第2コア部532との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例6のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。なお、凸部531hと凹部532hのセットは、少なくとも一つあれば、本発明の目的は好適に達成される。
【実施例7】
【0045】
図10は、本実施例7のフィードバックコア630単体の断面図を示す。図10に示されるように、本実施例7のフィードバックコア630は、第1コア部631と第2コア部632からなる。第2コア部632の第2外脚部は、第2外脚部632fと第2外脚部632gからなる二叉形状に形成されている。第2外脚部632fと第2外脚部632gとの隙間と、第1コア部631の第2外脚部631bの板厚は、例えばはめあい公差(中間ばめ又はしまりばめ)で規定されている。そのため、組立時において、第2コア部632を第1コア部631に対して矢印C方向に動かすと、第2外脚部631bが第2外脚部632fと第2外脚部632gとの間に挿し込まれて、適度な締め付け力を受ける。これにより、第2外脚部631bの上面631bUと第2外脚部632fとが互いに密着するとともに、第2外脚部631bの下面631bDと第2外脚部632gとが互いに密着した状態で、第1コア部631と第2コア部632とが連結し、固定状態となる。
【0046】
本実施例7においては、上記の二面での密着により、第1コア部631と第2コア部632との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例7のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。なお、本実施例7においては、第2ボビン42による圧接狭持を併用して、上記の二面を密着させると尚よい。
【実施例8】
【0047】
図11は、本実施例8のフィードバックコア730単体の断面図を示す。図11に示されるように、本実施例8のフィードバックコア730は、第1コア部731と第2コア部732からなる。第2コア部732の第2外脚部732bには、略半球状のエンボス部732iが形成されている。第2外脚部732bの根元の屈曲部Dは、やや鋭角に屈曲されている。そのため、エンボス部732iは、第1コア部731の第2外脚部731bの上面731bUに、適度な付勢力で接触する。これにより、上面731bUとエンボス部732iとが互いに密着した状態で、第1コア部731と第2コア部732とが連結し、固定状態となる。なお、エンボス部732iの頂点付近は、上面731bUとの接触面積を増加させるため、平面状に形成されてもよい。
【0048】
本実施例8においては、第1コア部731の第2外脚部731bの上面731bUと、エンボス部732iとの密着により、第1コア部731と第2コア部732との接触部分における磁気抵抗が小さい値に抑えられるため、フラックスゲートコア11は、地磁気の影響を実質的に受けない、若しくは非常に受け難くなる。そのため、本実施例8のフラックスゲート電流センサ1は、ケーブルCLを流れる電流を精度良く検出することができる。なお、本実施例8においては、第2ボビン42による圧接狭持を併用して、上面731bUとエンボス部732iとを密着させると尚よい。また、エンボス部732iは、少なくとも一つあれば、本発明の目的は好適に達成される。
【0049】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施の形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。例えば、各実施例に示した密着手段(第2ボビン42による圧接狭持、爪部132eによる係合、溶接Wによる溶接、磁性接着剤Aによる接着、クリップ形状による狭持、凸部531hと凹部532hとの嵌合、二叉形状による狭持、エンボス部732iによる付勢)を適宜組み合わせて、第1コア部と第2コア部とを連結固定してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 フラックスゲート電流センサ
10 プローブ
20 フィードバックコイル
30、130、230、330、430、530、630、730 フィードバックコア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略コの字形状に曲折された2つの板形状を一体に連ねた、略3の字状のコアを一対有し、
前記一対のコアは、
互いの第1外脚部同士の少なくとも一部が接触するとともに、互いの第2外脚部同士の少なくとも一部が該第2外脚部の板厚方向に重ね合わせられた状態で接触しつつ、前記2つの略コの字形状の互いの連結部分の間に所定のギャップが保たれて、中途が括れた環状ループが形成されるように、対向配置され、
前記環状ループは、前記ギャップ部分を境に、前記第1外脚部側に、測定対象の電線が挿入され通されるスペースを規定する第1環部を有し、前記第2外脚部側に、該電線に流れる電流により誘導される磁界を検出するための磁気プローブを配置するスペースを規定する第2環部を有することを特徴とする、フラックスゲート電流センサ用ループコア。
【請求項2】
前記第2外脚部同士の少なくとも一部を前記板厚方向に重ね合わせた状態で密着させる密着手段を有することを特徴とする、請求項1に記載のフラックスゲート電流センサ用ループコア。
【請求項3】
前記密着手段は、
一方の前記第2外脚部の先端に形成され、前記対向配置時に、他方の該第2外脚部に係合することにより、該第2外脚部同士を固定する爪部、
前記対向配置された状態のコア同士の少なくとも一部を溶接した溶接部、
前記対向配置された一対の前記第2外脚部の間に塗布された接着部、
一方の前記第2外脚部の先端に形成され、前記対向配置時に、他方の該第2外脚部を狭持することにより、該第2外脚部同士を固定する狭持部、
前記対向配置時に嵌合する、前記第2外脚部の一方に形成された凸部と、該第2外脚部の他方に形成された凹部からなる嵌合部、
の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項2に記載のフラックスゲート電流センサ用ループコア。
【請求項4】
前記第1外脚部同士の少なくとも一部は、該第1外脚部の板厚方向に重ね合わせられた状態で接触していることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のフラックスゲート電流センサ用ループコア。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のフラックスゲート電流センサ用ループコアと、
前記第2環部によって囲われるスペースに配置される磁気プローブと、
前記フラックスゲート電流センサ用ループコアに絶縁体を介して巻回されたコイルと、
を有することを特徴とする、フラックスゲート電流センサ。
【請求項6】
前記絶縁体は、前記第1外脚部の板厚方向に重ね合わせられた一対の該第1外脚部の側面、前記第2外脚部の板厚方向に重ね合わせられた一対の該第2外脚部の側面、の少なくとも一部を囲うボビンであり、
前記第1外脚部同士、前記第2外脚部同士の少なくとも一方は、前記ボビンによる圧接狭持により、互いに接触し固定されていることを特徴とする、請求項4を引用する請求項5に記載のフラックスゲート電流センサ。
【請求項1】
略コの字形状に曲折された2つの板形状を一体に連ねた、略3の字状のコアを一対有し、
前記一対のコアは、
互いの第1外脚部同士の少なくとも一部が接触するとともに、互いの第2外脚部同士の少なくとも一部が該第2外脚部の板厚方向に重ね合わせられた状態で接触しつつ、前記2つの略コの字形状の互いの連結部分の間に所定のギャップが保たれて、中途が括れた環状ループが形成されるように、対向配置され、
前記環状ループは、前記ギャップ部分を境に、前記第1外脚部側に、測定対象の電線が挿入され通されるスペースを規定する第1環部を有し、前記第2外脚部側に、該電線に流れる電流により誘導される磁界を検出するための磁気プローブを配置するスペースを規定する第2環部を有することを特徴とする、フラックスゲート電流センサ用ループコア。
【請求項2】
前記第2外脚部同士の少なくとも一部を前記板厚方向に重ね合わせた状態で密着させる密着手段を有することを特徴とする、請求項1に記載のフラックスゲート電流センサ用ループコア。
【請求項3】
前記密着手段は、
一方の前記第2外脚部の先端に形成され、前記対向配置時に、他方の該第2外脚部に係合することにより、該第2外脚部同士を固定する爪部、
前記対向配置された状態のコア同士の少なくとも一部を溶接した溶接部、
前記対向配置された一対の前記第2外脚部の間に塗布された接着部、
一方の前記第2外脚部の先端に形成され、前記対向配置時に、他方の該第2外脚部を狭持することにより、該第2外脚部同士を固定する狭持部、
前記対向配置時に嵌合する、前記第2外脚部の一方に形成された凸部と、該第2外脚部の他方に形成された凹部からなる嵌合部、
の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項2に記載のフラックスゲート電流センサ用ループコア。
【請求項4】
前記第1外脚部同士の少なくとも一部は、該第1外脚部の板厚方向に重ね合わせられた状態で接触していることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のフラックスゲート電流センサ用ループコア。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のフラックスゲート電流センサ用ループコアと、
前記第2環部によって囲われるスペースに配置される磁気プローブと、
前記フラックスゲート電流センサ用ループコアに絶縁体を介して巻回されたコイルと、
を有することを特徴とする、フラックスゲート電流センサ。
【請求項6】
前記絶縁体は、前記第1外脚部の板厚方向に重ね合わせられた一対の該第1外脚部の側面、前記第2外脚部の板厚方向に重ね合わせられた一対の該第2外脚部の側面、の少なくとも一部を囲うボビンであり、
前記第1外脚部同士、前記第2外脚部同士の少なくとも一方は、前記ボビンによる圧接狭持により、互いに接触し固定されていることを特徴とする、請求項4を引用する請求項5に記載のフラックスゲート電流センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−64608(P2013−64608A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201977(P2011−201977)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】
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