説明

フラックス残渣除去方法およびフラックス残渣除去装置

【課題】フラックス残渣を短時間で充分に除去できる、フラックス残渣除去方法およびフラックス残渣除去装置を提供する。
【解決手段】まず、フラックス残渣20の表面を加熱できるように、かつフラックス残渣20に向けて気体を噴出するように加熱部13を配置する。そして、加熱部13を用いて、フラックス残渣20の表面が250℃を超えるように加熱することでフラックス残渣20を溶融し、気体により溶融したフラックス残渣20を流動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス残渣除去方法およびフラックス残渣除去装置に関し、たとえばフラックスを用いて半田付けを行なう際に発生するフラックス残渣を除去するフラックス残渣除去方法およびフラックス残渣除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半田付けプロセスでは、半田付けを行なう基板表面の酸化皮膜を除去するためにフラックスが用いられている。半田を溶融させるために加熱を行なうと、このフラックス内の固形成分(たとえばロジンなど)が気化する。雰囲気の温度が下がると、気化したフラックスが固化し、白色のフラックス残渣となって、たとえば半田付けを行なう台座、基板などに付着する。この付着したフラックス残渣は、粘着性を有している。このため、基板が接触する台座および基板の少なくとも一方にフラックス残渣が付着すると、このフラックス残渣は基板と台座とを固着する。
【0003】
フラックス残渣が基板および台座の少なくとも一方に付着すると、以下の3つの問題が生じる。1つ目として、基板が脆弱な場合、半田付け後の基板の搬送時に、基板が破損するという問題があった。2つ目として、台座からフラックス残渣が異物として基板に転写されることにより、基板の外観不良を発生させるという問題があった。3つ目として、台座に付着したフラックス残渣を定期的に手作業で除去する必要があるので、基板の生産性が低下する要因になるという問題があった。
【0004】
フラックス残渣が基板に付着することによる外観不良の低下を抑制するための技術が、たとえば特開平6−326444号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1には、熱風吹出器を用いて、プリント基板上に残留する白濁残渣を加熱して溶融し、白濁残渣から白濁状態を除去する方法が開示されている。
【0005】
また、台座に付着したフラックス残渣を除去するための技術が、たとえば特開平10−173333号公報(特許文献2)に開示されている。この特許文献2には、リフロー炉の温度が低い冷却ゾーンや出入口に電熱ヒータを設置し、半田付け終了後に該電熱ヒータに通電して付着したフラックスを150〜250℃に加熱し溶融して下方のフラックス溜めに受ける方法が開示されている。
【特許文献1】特開平6−326444号公報
【特許文献2】特開平10−173333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1で白濁残渣を加熱して溶融しているのは、フラックス残渣の表面の平滑化と内包気泡の滅却とを目的としている。このため、フラックス残渣自体をプリント基板上から充分に除去できないという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2では、電熱ヒータで加熱して溶融したフラックスが自重にてフラックス溜めへ移動する。このため、水平に設置した台座の上面(基板を載置する面)からフラックス残渣を充分に除去することができないという問題があった。
【0008】
また、付着したフラックスを再度溶融したフラックス残渣は、一般的に粘度が1000cP以上と高い。このため、溶融したフラックス残渣を自重を利用して下方へ滴下させる方法では、フラックス残渣を除去するために長時間要するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、フラックス残渣を短時間で充分に除去できる、フラックス残渣除去方法およびフラックス残渣除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフラックス残渣除去方法は、フラックスを用いて半田付けを行なう際に発生するフラックス残渣を除去する方法であって、以下の工程を備えている。まず、フラックス残渣の表面を加熱できるように、かつフラックス残渣に向けて気体を噴出するように加熱部が配置される。そして、加熱部を用いて、フラックス残渣の表面が250℃を超えるように加熱することでフラックス残渣を溶融し、気体により溶融したフラックス残渣が流動される。
【0011】
本発明のフラックス残渣除去装置は、フラックスを用いて基板に半田付けを行なう際に発生するフラックス残渣を除去するための装置であり、台座と、加熱部とを備えている。台座は、半田付けを行なう基板を載置するための載置面を有している。加熱部は、台座の載置面および基板の少なくとも一方上に付着したフラックス残渣の表面の温度が250℃を超えるように加熱し、かつ溶融したフラックス残渣を台座の下方に向けて流動するように気体を噴出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフラックス残渣除去方法およびフラックス残渣除去装置によれば、フラックス残渣の表面を250℃を超える温度に加熱している。フラックス残渣が250℃を超えると、炭化水素および二酸化炭素への分解が始まる。フラックス残渣において、炭化水素および二酸化炭素へ分解されなかった炭素は固着成分となる。フラックス残渣がこの固着成分を生成する前であれば、フラックス残渣の表面が250℃を超える温度に加熱されることにより、フラックス残渣の粘度を下げることができる。フラックス残渣の粘度が低い程、フラックス残渣は流動しやすくなる。このため、粘度の下がった状態のフラックス残渣に気体を噴出することにより、フラックス残渣が固着成分を生成する前に、溶融したフラックス残渣を台座の下方などの所定の位置に一気に移動することができる。したがって、フラックス残渣を短時間で充分に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態におけるフラックス残渣除去装置を概略的に示す側面図である。最初に、図1を参照して、本実施の形態におけるフラックス残渣除去装置について説明する。本実施の形態におけるフラックス残渣除去装置10aは、図1に示すように、フラックスを用いて基板に半田付けを行なう際に発生するフラックス残渣を除去するための装置である。
【0014】
フラックス残渣除去装置10aは、台座11と、加熱部13とを備えている。加熱部13は、台座11の載置面11aに向けて気体を噴出することができるように台座11の上方に配置されている。
【0015】
台座11は、半田付けを行なう基板を載置するための載置面11aを有している。載置面11aは、半田付けを行なう際に基板を保持するように、または、半田付けを行なう前後の基板を搬送する際に基板を保持するように構成されている。
【0016】
この台座11の上方に配置された加熱部13は、台座11の載置面11aおよび基板の少なくとも一方上に付着したフラックス残渣20の表面の温度が250℃を超えるように加熱し、かつ溶融したフラックス残渣を台座11の下方に向けて流動するように気体を噴出するように構成されている。つまり、加熱部13は、フラックス残渣20を加熱する機能と、噴出する気体の圧力または風量にてフラックス残渣20を流動させる機能とを有している。
【0017】
本実施の形態の加熱部13は、フラックス残渣20を加熱する機能と、気体の圧力にてフラックス残渣を流動させる機能とを兼ね備えた1つの部材で構成されている。加熱部13は、たとえばエアヒータなどを用いることができる。なお、加熱部13から台座11の載置面11aに向けて噴出する気体は空気に限定されず、たとえば窒素などの不活性ガスであってもよい。
【0018】
加熱部13は、気体を噴出するための噴出口13aを有している。この噴出口13aは、台座11の載置面11aおよび基板の少なくとも一方に向けて気体を噴出するように構成されている。フラックス残渣20の表面20aが250℃を超えるように加熱できる温度の気体をこの噴出口13aから噴出する。気体の温度は、噴出口13aの形状、噴出口13aとフラックス残渣20の表面までの距離などに応じて決められる。このような気体の温度は、たとえば250℃を超え、700℃以下である。
【0019】
加熱部13は、フラックス残渣を台座11の載置面11aよりも下方(本実施の形態では台座11の側面)に向けて短時間で流動させるような風量および風圧の気体を噴出できるような構成であることが好ましい。このような加熱部13の構成として、たとえば0.3MPa程度の風圧で、15L/分程度の風量の気体を噴出できるような構成が挙げられる。
【0020】
フラックス残渣除去装置10aは、フラックス残渣20の表面の温度を測定するための測定部(図示せず)をさらに備えていることが好ましい。測定部は、熱電対、赤外線サーモグラフィなどを用いることができ、赤外線サーモグラフィが好適に用いられる。赤外線サーモグラフィは、フラックス残渣と非接触で測定できる。このため、フラックス残渣20の表面の温度を正確に測定できる。
【0021】
なお、本実施の形態の加熱部13は、フラックス残渣20を加熱する機能と、気体の圧力にてフラックス残渣を流動させる機能とを有している1つの部材で構成されているが、特にこれに限定されない。このように加熱部13が1つの部材で構成されている場合には、フラックス残渣除去装置10aの構成を簡略化でき、設置に必要なスペースを削減することができる。加熱部13は、たとえば、フラックス残渣を加熱する機能を有する部材と、溶融したフラックス残渣を気体の圧力にて流動させる機能を有する部材とを別部材として有していてもよい。
【0022】
図2は、本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法を説明するための図である。続いて、図2を参照して、本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法を説明する。本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法は、フラックスを用いて半田付けを行なう際に発生するフラックス残渣を除去する方法である。本実施の形態では、台座11の載置面11aに付着しているフラックス残渣20を除去している。
【0023】
まず、フラックス残渣20の表面を加熱できるように、かつフラックス残渣20に向けて気体を噴出するように加熱部13を配置する(ステップS1)。本実施の形態では、たとえば図1に示すフラックス残渣除去装置10aを用いる。
【0024】
次に、加熱部13を用いて、フラックス残渣20の表面が250℃を超えるように加熱することでフラックス残渣を溶融し、気体により溶融したフラックス残渣20を流動させる(ステップS2)。このステップS2では、フラックス残渣20を、台座11の載置面11aと同一平面よりも下方に移動させる。
【0025】
具体的には、加熱部13において、加熱部13から噴出される気体をフラックス残渣20の表面20aが250℃を超える温度になるように、かつフラックス残渣20が流動するように調整する。次いで、フラックス残渣20が付着した台座11における基板の載置面11aに加熱部13の噴出口13aを近づける。
【0026】
その後、加熱部13の噴出口13aをフラックス残渣20の表面20aに向けて、噴出口13aからフラックス残渣20の表面20aに向けて気体を噴出させる。この気体は、フラックス残渣20の表面20aの温度が250℃を超えるように加熱できる温度で、かつフラックス残渣20を流動させる風圧または風量である。このため、フラックス残渣20が加熱されることで、溶融する。250℃を超える温度で溶融したフラックス残渣20の粘度は低いため、流動しやすい状態である。流動しやすい状態のフラックス残渣20に気体を台座11の下方に向けて噴出しているので、フラックス残渣20は容易に下方に移動する。以上より、台座11の載置面11aに付着しているフラックス残渣20を載置面11aから除去することができる。
【0027】
なお、フラックス残渣20の表面20aとは、台座11の載置面11a、基板などと接触せず、露出した面である。このフラックス残渣20の表面20aの温度は、たとえば赤外線サーモグラフィにより測定される温度である。
【0028】
このステップS2では、フラックス残渣20が250℃を超えるように加熱できる温度の気体を噴出する。気体の温度は、たとえば250℃を超え、700℃以下である。
【0029】
また、フラックス残渣を台座11の側面に向けて短時間で流動させるような風量および風圧の気体を噴出することが好ましい。たとえば0.3MPa程度の風圧で、15L/分程度の風量の気体をフラックス残渣20の表面20aに向けて噴出する。
【0030】
以上説明したように、本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法は、フラックスを用いて半田付けを行なう際に発生するフラックス残渣を除去する方法であって、以下の工程を備えている。まず、フラックス残渣20の表面20aを加熱できるように、かつフラックス残渣20に向けて気体を噴出するように加熱部13を配置する(ステップS1)。そして、加熱部13を用いて、フラックス残渣20の表面20aが250℃を超えるように加熱することでフラックス残渣20を溶融し、気体により溶融したフラックス残渣20を流動させる(ステップS2)。
【0031】
また、本実施の形態におけるフラックス残渣除去装置10aは、フラックスを用いて基板に半田付けを行なう際に発生するフラックス残渣20を除去するための装置であって、台座11と、加熱部13とを備えている。台座11は、半田付けを行なう基板を載置するための載置面11aを有している。加熱部13は、台座11の載置面11aおよび基板の少なくとも一方上に付着したフラックス残渣20の表面20aの温度が250℃を超えるように加熱し、かつ溶融したフラックス残渣20を台座11の下方に向けて流動するように気体を発生する。
【0032】
一般的にフラックスは、ロジンおよび合成樹脂の一方、活性剤などの固形成分を、主溶剤であるアルコール系有機溶剤等に溶解したものである。半田付け時の加熱で、アルコール系有機溶剤は揮発し、固形成分は気化した後、温度の低い周辺部材に触れるとフラックス残渣として固化して付着する。このフラックス残渣として付着した固形成分は、一般的に150〜250℃以下に加熱することで、流動できる状態となる(たとえば上記特許文献2の段落0016参照)。たとえばロジン系フラックスに含まれるロジンは、一般的に80℃前後で軟化し、100℃を超えると溶解する。また、ロジンを250℃以上に加熱すると、炭化水素(CHx:xは任意の正数)、二酸化炭素(CO2)へと分解されるが、炭化水素および二酸化酸素に分解されなかった炭素が炭化し始める。そして、この炭素は、最後には固着し流動しなくなる。このため、従来は、フラックス残渣を250℃を超える温度で加熱できなかった。
【0033】
しかし、本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法およびフラックス残渣除去装置10aによれば、従来のフラックス残渣の加熱温度(150〜250℃)と異なり、フラックス残渣20の表面を250℃を超える温度に加熱している。上述したように、フラックス残渣20の温度が250℃を超えると、フラックス残渣20の分解が始まり、炭化水素および二酸化炭素へ分解されなかった炭素は固着成分となる。フラックス残渣20がこの固着成分を生成する前であれば、フラックス残渣20の表面が250℃を超える温度に加熱されることにより、フラックス残渣20の粘度を下げることができる。フラックス残渣20の粘度が低い程、フラックス残渣20は流動しやすくなる。このため、粘度の下がった状態のフラックス残渣20に気体を噴出することにより、フラックス残渣20が固着成分を生成する前に、溶融したフラックス残渣20を台座11の下方(本実施の形態では側面)に一気に移動することができる。すなわち、フラックス残渣20が固着される前の流動しやすい状態のときに、フラックス残渣20を流動させることにより、フラックス残渣20を除去している。したがって、基板および台座11の載置面11aからフラックス残渣20を短時間で充分に除去することができる。
【0034】
仮に、フラックス残渣20の表面20aに高温の気体を接触させることで、フラックス残渣20の表面20aの固化が始まった場合であっても、台座11の載置面11aとフラックス残渣20との界面に存在するフラックス残渣20は、軟化または溶融している。このため、この界面のフラックス残渣20は、流動するために充分な溶融状態である。したがって、所定の風圧または風量の気体をフラックス残渣20を吹きかけることにより、フラックス残渣20は台座11の下方に移動する。また、フラックス残渣20の表面20aのみが炭化を始めている場合には、フラックス残渣20をある程度の大きさの塊りで台座11の下方に移動することができる。このため、フラックス残渣20が広範囲に飛び散ることを防止できる。
【0035】
このように、フラックス残渣20を台座11の載置面11aから除去することにより、台座11に基板を載置したときに、基板と台座11との固着を抑制することができる。このため、基板の破損を抑制することができる。また、台座11からフラックス残渣20が基板に転写されることを抑制することができる。さらに、従来の手作業で行っていたフラックス残渣の除去に比べて、フラックス残渣20を短時間で確実に除去できる。このため、フラックス残渣20の除去に要する時間を削減して、基板の半田付けを行なうことができるので、基板の生産性を向上させることができる。さらには、フラックス残渣20が基板に付着することを防止できるので、基板の外観を良好に維持することができる。
【0036】
(実施の形態2)
本実施の形態におけるフラックス残渣除去装置は、上述した図1に示す実施の形態1のフラックス残渣除去装置10aと同様である。
【0037】
図3は、本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法を説明するための図である。本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法は、基本的には実施の形態1におけるフラックス残渣除去方法と同様の構成を備えているが、基板30に付着したフラックス残渣20を除去する点において異なる。
【0038】
まず、実施の形態1と同様に、フラックス残渣20の表面20aを加熱できるように、かつフラックス残渣20に向けて気体を噴出する加熱部13を配置する(ステップS1)。
【0039】
次に、加熱部13を用いて、フラックス残渣20の表面20aが250℃を超えるように加熱することでフラックス残渣20を溶融し、気体により溶融したフラックス残渣20を流動させる(ステップS2)。図3に示すように、基板30の表面にフラックス残渣20が付着している場合には、たとえば以下のようにしてフラックス残渣20を除去する。
【0040】
具体的には、フラックス残渣20が付着した基板30の表面に加熱部13の噴出口13aを近づける。この加熱部13の噴出口13aをフラックス残渣20の表面20aに向けて、噴出口13aからフラックス残渣20の表面20aに向けて気体を噴出させる。この気体は、フラックス残渣20の表面20aの温度が250℃を超えるように加熱できる温度で、かつフラックス残渣20を流動させる風圧または風量である。これにより、フラックス残渣20が加熱されることで、溶融する。また、流動しやすい状態まで溶融したフラックス残渣20に気体を台座11の下方に向けて噴出しているので、フラックス残渣20は基板30の側面および台座11の載置面11aを通って、容易に台座11の側面に移動する。
【0041】
なお、フラックス残渣20を基板30の側面および台座11の載置面11aに移動する際には、加熱部13の噴出口13aから気体を噴出させる方向、風圧、風量などを適宜変更してもよい。
【0042】
以上より、基板30の表面に付着しているフラックス残渣20を基板30の表面から除去することができる。
【0043】
なお、これ以外の構成については上述した実施の形態1の構成とほぼ同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法によれば、フラックス残渣20が基板30に付着している場合であっても、基板30および台座11の載置面11aからフラックス残渣20を短時間で充分に除去することができる。
【0045】
(実施の形態3)
図4は、本発明の一実施の形態におけるフラックス残渣除去装置を概略的に示す側面図である。最初に、図4を参照して、本実施の形態におけるフラックス残渣除去装置について説明する。
【0046】
本実施の形態におけるフラックス残渣除去装置10bは、図4に示すように、基本的には実施の形態1と同様の構成を備えているが、加熱部13がレーザ発振部14と気体噴出部15とを含んでいる点において異なる。
【0047】
レーザ発振部14は、フラックス残渣20の表面20aの温度が250℃を超えるように加熱するレーザ光を発振するように構成されている。レーザ発振部14は、フラックス残渣20の表面20aにレーザ発振部14からレーザを発振できるように、台座11の上方に配置されている。
【0048】
気体噴出部15は、気体を噴出するように構成されている。この気体噴出部15は、溶融したフラックス残渣20を容易に流動させることができる風量および風圧の気体を噴出するように構成されている。気体噴出部15は、気体噴出部15からフラックス残渣20の表面20aに向けて気体を噴出できるように、台座11の上方に配置されている。気体噴出部15から噴出する気体は、実施の形態1と同様に、空気、窒素などの不活性ガスなどを用いることができる。
【0049】
フラックス残渣除去装置10bは、レーザ発振部14がレーザを発振するときに、気体噴出部15が気体を噴出するように制御する制御部(図示せず)をさらに備えていてもよい。
【0050】
続いて、本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法について説明する。本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法は、基本的には実施の形態1のフラックス残渣除去方法と同様の構成を備えているが、レーザ発振部14によりフラックス残渣20の表面20aを加熱し、気体噴出部15によりフラックス残渣20を台座11の下方に流動させる点において異なる。
【0051】
まず、フラックス残渣20の表面の温度が250℃を超えるように加熱し、かつ気体を噴出する加熱部13を配置する(ステップS1)。本実施の形態では、たとえば図4に示すフラックス残渣除去装置10bを用いる。
【0052】
次に、加熱部13を用いて、フラックス残渣20の表面が250℃を超えるように加熱することでフラックス残渣20を溶融し、気体により溶融したフラックス残渣20を流動させる(ステップS2)。図4に示すように、台座11の載置面11aにフラックス残渣20が付着している場合には、たとえば以下のようにしてフラックス残渣20を除去する。
【0053】
具体的には、レーザ発振部14をフラックス残渣20の表面20aが250℃を超える温度になるようにレーザパワーを調整する。気体噴出部15を溶融したフラックス残渣20が流動するように風量および風圧を調整する。次いで、フラックス残渣20が付着した台座11における基板の載置面11aに加熱部13を構成するレーザ発振部14および気体噴出部15を近づける。
【0054】
その後、レーザ発振部14からフラックス残渣20の表面20aにレーザを発振して、フラックス残渣20の表面20aが250℃を超える温度になるように加熱する。これにより、フラックス残渣20は溶融する。また、気体噴出部15からフラックス残渣20の表面20aに向けて気体を噴出する。これにより、溶融したフラックス残渣20が台座11の下方に向けて流動する。
【0055】
以上より、台座11の載置面11aに付着しているフラックス残渣20を載置面11aから除去することができる。
【0056】
なお、これ以外の構成については上述した実施の形態1の構成とほぼ同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0057】
また、本実施の形態のフラックス残渣除去方法およびフラックス残渣除去装置10bは、実施の形態1だけでなく実施の形態2にも適用することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法およびフラックス残渣除去装置10bは、加熱部13は、フラックス残渣20の表面20aの温度が250℃を超えるように加熱するレーザ光を発振するためのレーザ発振部14と、気体を噴出するための気体噴出部15とを含んでいる。
【0059】
本実施の形態におけるフラックス残渣除去方法およびフラックス残渣除去装置10bによれば、加熱部13は、フラックス残渣20を加熱する機能を有するレーザ発振部14と、溶融したフラックス残渣20を噴出する気体の圧力または風量にて流動させる機能を有する気体噴出部15とを別部材として有している。このため、フラックス残渣20の表面20aの温度およびフラックス残渣20を流動させるための気体の圧力または風量を調整しやすい部材をそれぞれ用いることができる。したがって、フラックス残渣20の流動状態を容易に制御できる。よって、基板および台座11の載置面11aからフラックス残渣20を短時間で充分に除去することができる。
【実施例】
【0060】
本実施例では、フラックス残渣の表面が250℃を超えるように加熱してフラックス残渣を溶融し、溶融したフラックス残渣に向けて気体を噴出することによりフラックス残渣を流動させることの効果について調べた。
【0061】
具体的には、ロジンを主成分とするロジン系フラックスを用いて基板に半田付けをした。半田付け終了後には、図3に示すように基板30の表面に、ロジンを主成分とするフラックス残渣20が付着した。基板30において付着したフラックス残渣20は、長辺が15mmで短辺が8mmの長方形の平面形状を有していた。
【0062】
そこで、フラックス残渣20の表面20aを加熱できるように、かつフラックス残渣20に向けて気体を噴出する加熱部を配置した(ステップS1)。ステップS1では、実施の形態1および2における図1に示すフラックス残渣除去装置10aを用いた。加熱部13の噴出口13aの口径を4mmとした。
【0063】
次に、加熱部13を用いて、フラックス残渣20の表面20aが250℃を超えるように加熱することでフラックス残渣20を溶融し、気体により溶融したフラックス残渣20を流動させた(ステップS2)。
【0064】
ステップS2では、フラックス残渣20が付着した基板30の表面に加熱部13の噴出口13aを近づけた。このとき、フラックス残渣20の表面20aと加熱部13の噴出口13aとの距離は5mmであった。この加熱部13の噴出口13aをフラックス残渣20の表面20aに向けた。加熱部13の噴出口13aにおいて700℃の温度と、0.3MPaの圧力と、15L/分の風量を有する気体を、噴出口13aからフラックス残渣20の表面20aに向けて噴出した。
【0065】
なお、加熱部13の噴出口13aとフラックス残渣20との距離と、加熱部13から噴出される気体の温度、圧力および風量とから、フラックス残渣20の表面20aの温度は250℃を超えていたことは明らかである。
【0066】
この結果、フラックス残渣20を台座11の側面に移動させることができ、基板30および台座11の載置面11aには、フラックス残渣が残らなかった。なお、加熱部によりフラックス残渣が溶融したときの粘度は、1000cPであった。また、フラックス残渣を台座11の側面に流動するために要した時間は3秒であった。
【0067】
以上より、本実施例によれば、フラックス残渣20の表面20aが250℃を超えるように加熱することでフラックス残渣20を流動しやすい状態にまで溶融し、噴出した気体により溶融したフラックス残渣20を流動させることにより、基板30および台座11の載置面11aからフラックス残渣20を短時間で充分に除去することができることが確認できた。
【0068】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態1におけるフラックス残渣除去装置を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるフラックス残渣除去方法を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態2におけるフラックス残渣除去方法を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態3におけるフラックス残渣除去装置を概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0070】
10a,10b フラックス残渣除去装置、11 台座、11a 載置面、13 加熱部、13a 噴出口、14 レーザ発振部、15 気体噴出部、20 フラックス残渣、20a 表面、30 基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスを用いて半田付けを行なう際に発生するフラックス残渣を除去する方法であって、
前記フラックス残渣の表面を加熱できるように、かつ前記フラックス残渣に向けて気体を噴出するように加熱部を配置する工程と、
前記加熱部を用いて、前記フラックス残渣の前記表面が250℃を超えるように加熱することで前記フラックス残渣を溶融し、前記気体により溶融した前記フラックス残渣を流動させる工程とを備えた、フラックス残渣除去方法。
【請求項2】
前記加熱部は、前記フラックス残渣の表面の温度が250℃を超えるように加熱するレーザ光を発振するためのレーザ発振部と、前記気体を噴出するための気体噴出部とを含む、請求項1に記載のフラックス残渣除去方法。
【請求項3】
フラックスを用いて基板に半田付けを行なう際に発生するフラックス残渣を除去するための装置であって、
半田付けを行なう基板を載置するための載置面を有する台座と、
前記台座の前記載置面および前記基板の少なくとも一方上に付着した前記フラックス残渣の表面の温度が250℃を超えるように加熱し、かつ溶融した前記フラックス残渣を前記台座の下方に向けて流動するように気体を噴出する加熱部とを備えた、フラックス残渣除去装置。
【請求項4】
前記加熱部は、前記フラックス残渣の表面の温度が250℃を超えるように加熱するレーザ光を発振するためのレーザ発振部と、前記気体を噴出するための気体噴出部とを含む、請求項3に記載のフラックス残渣除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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