説明

フラットパネルディスプレイ及び引き出し配線の設計方法

【課題】表示品位に優れ、塗布ムラによる不良発生が少ないフラットパネルディスプレイ及びその製造方法並びに引き出し配線の設計方法の提供。
【解決手段】表示領域から複数の引き出し配線が引き回されるアクティブマトリクス基板を含むフラットパネルディスプレイにおいて、各々の前記引き出し配線は、直線と曲線とが滑らかに接続された形状、例えば、前記表示領域の所定の辺から第1の方向に延在する第1の直線と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2の直線と、が、双方の直線に内接する円弧、楕円弧又は特定の関数で規定される曲線によって滑らかに接続された形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置を構成するアクティブマトリクス型液晶パネルをはじめとするフラットパネルディスプレイ及びその製造方法並びにフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法に関し、特に、配線等に起因する段差を有する面上に、液体をスピン塗布してなる構造を均一にするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、2枚のガラス基板間に液晶を挟持した液晶パネルにおいて、液晶に印加する電圧を変化することで、その光学特性を制御し、透過・反射光量を電気的に制御して表示を行う装置であり、低消費電力、薄型軽量、高精細等といった特徴を生かして、幅広く用いられている。近年、最も多く用いられる構成は、アクティブマトリクス型の液晶パネルで、片方の基板(TFT(Thin Film Transistor)基板)に格子状の金属配線とその交点にスイッチング用薄膜トランジスタ(TFT)および液晶を駆動するための画素電極が形成されており、もう一方の基板(CF基板)にはカラー表示をおこなうためのカラーフィルター(CF)が形成され、両基板の間に液晶が挟持された構造を備えている。
【0003】
TFT基板は、前述の表示に寄与する領域以外の非表示領域に、表示を制御するためのドライバIC(Integrated Circuit)チップ、ドライバICチップの端子と表示領域の金属配線とを電気的に接続するように配置された引き出し配線等が形成された構成を有している(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−338191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
TFT基板を製造する際には、金属配線形成、絶縁膜へのコンタクトホール形成などのパターニングおよび金属配線の段差の緩和および反射光を利用する場合の反射膜形状加工等のような、基板に流動体を塗布する工程が必要となる。
【0006】
その塗布方法は流動体材料を基板に滴下して回転させ遠心力で膜を薄く引き延ばすスピンコータ方式が一般的である。スピンコータ方式では、基板中央に盛られた流動体を基板外周に塗り広げるため、基板内の凹凸によって膜厚差が生じムラとなる場合がある。
【0007】
この塗布ムラは金属配線等による凹凸が局所的に変化している部分、またはミクロ的な凹凸形状が規則的に配置されマクロ的なパターンを形づくる部分などで最も顕著に発生する。
【0008】
図15は1パネル分のTFT基板の構造を模式的に示したものである。前述の引き出し配線310は、表示領域301の金属配線または、ドライバICチップ320の出力端子の数だけ並走するが、途中で屈曲して引き回されることがあり、この屈曲部313は規則的に並んだ形で設計されていた。この引き出し配線310の屈曲部313の配列は前述のマクロ的パターンを形成しており、この部分での塗布ムラ325は液晶パネル300の品質を著しく低下させ問題となっていた。
【0009】
上記特許文献1では、このような引き出し配線屈曲部を起点としたムラは、スピンコートで液が塗り広げられる方向と、屈曲点の配列方向が一致したときに塗布ムラが生じ、その改善のため、配線間にダミーパターンを配置する方法を開示しているが、本願発明者らの実験の結果では、塗布ムラ発生の条件に相違があること、および特許文献1の方法が必ずしも有効でないことがわかった。
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、スピンコートの塗布ムラを抑制することにより、表示品位に優れ、ムラによる不良発生が少ない液晶パネル等のフラットパネルディスプレイ及びその製造方法並びにフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、表示領域から複数の引き出し配線が引き回されるアクティブマトリクス基板を含むフラットパネルディスプレイにおいて、各々の前記引き出し配線は、直線と曲線とが滑らかに接続された形状、例えば、前記表示領域の所定の辺から第1の方向に延在する第1の直線と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2の直線と、が、双方の直線に内接する円弧、楕円弧又は特定の関数で規定される曲線によって滑らかに接続された形状であるものである。
【0012】
また、本発明は、表示領域から複数の引き出し配線が引き回されるアクティブマトリクス基板を含むフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法であって、
各々の前記引き出し配線を、直線と曲線とが滑らかに接続された形状、例えば、前記表示領域の所定の辺から第1の方向に延在する第1の直線と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2の直線と、が、双方の直線に内接する円弧、楕円弧又は特定の関数で規定される曲線によって滑らかに接続される形状となるように設計するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフラットパネルディスプレイ及びその製造方法並びにフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法によれば、表示領域の周囲に複数の引き出し配線が屈曲して引き回されているアクティブマトリスク基板の作成に際し、アクティブマトリスク基板を複数配列した絶縁基板上に流動体を塗布し、スピンコータ方式を用いて絶縁基板を回転させて塗り広げる際に、引き出し配線の屈曲部のマクロ的なパターンに起因して生じる塗布ムラを抑制し、表示品位を向上させることができる。
【0014】
その理由は、各々のアクティブマトリスク基板において、引き出し配線の屈曲部が配列する方向であって表示領域に向かう方向と、絶縁基板の回転中心から表示領域に最も近い屈曲部に向かう方向と、がなす角度が、塗布ムラが生じる限界角度よりも大きくなるように、屈曲部の配列方向やアクティブマトリスク基板の向きが規定されているからである。また、各々のアクティブマトリスク基板の引き出し配線が、直線と曲線とが滑らかに接続された形状となっているからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
背景技術で示したように、周縁部に多数の引き出し配線が屈曲して引き回されている基板上に流動体を塗布し、スピンコータ方式で塗り広げる際に、引き出し配線の屈曲部のマクロ的なパターンに起因して塗布ムラが生じ、液晶パネル等のフラットパネルディスプレイの品質を著しく低下させるという問題があった。この問題を図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
一般的なアクティブマトリクス駆動の液晶パネルの構成をソースドライバ側の信号系にのみ簡略化して模式的に図示すると図1のようになる。もちろん実際の液晶パネルには、ゲートドライバ側の信号系がCOG(Chip on glass)またはSOG(System on Glass)技術等により実装されているが、ここでは簡略化して、後の説明に必要な構成要素のみを記載している。実際のパネルはTFT基板とCF基板で構成されるが、ここでは説明の便宜上、1パネル分に相当するTFT基板側のみを記載する。
【0017】
図1において、ソースドライバ入力配線130から入った画像信号は、ソースドライバIC120により個々の画素を駆動する信号に変換され、表示領域101の個々の画素に繋がる配線へソースドライバ配線110で伝達される。ソースドライバ配線110はソースドライバIC120の出力端子ピッチと、表示領域101の画素ピッチの差を吸収すべく、液晶パネル100上を引き回され、ソースドライバ配線ドライバ側112とソースドライバ配線画素側111は屈曲部113で折り曲げられて配置されている。個々の屈曲部113は線幅が数10μm程度なので非常に小さな幾何学形状でしかないが、複数の配線が並走しているため、屈曲部113の配列はマクロ的(数mm規模)な幾何学形状(図1では斜めの直線状)を形成している。
【0018】
実際の製造工程においては、ガラス基板上に図1に示すようなパネルが複数、縦横に配置され、さらにプロセスに必要なマーク類やチェックのための素子(総称してTEG(Test Element Group)類と称す。)など、実際のパネル動作には必要ないパターンも配置された状態になっている。
【0019】
ソースドライバ配線は低抵抗の金属薄膜で構成されるのが一般的で、他の配線、電極や後の工程で必要なマーク類などと同時に形成される。また、この工程はTFT基板の最終工程となるとは限らず、さらに成膜、レジストプロセス、エッチングなどが引き続き施されることが多い。
【0020】
屈曲部の配列が塗布ムラを起こす代表的な工程として、画素電極形成前に表示領域の配線段差を軽減するための、有機膜を塗布〜焼成する平坦化工程がある。
【0021】
図1に示すようなパネルを縦横に格子状に配置したTFT基板で、ソースドライバ配線が形成されたあとの基板中央に有機塗布液を滴下し、スピンコータで塗り広げた後の様子を図2に模式的に示す。TFT基板150内に複数のパネルが配置されているが、そのうちの特定の位置のパネル(図2ではパネルA,パネルB)に塗布ムラ155が見られる。この発生位置は、パネルの品種、すなわちパネルのサイズや配線の引き回し形状によって異なっていた。
【0022】
本願発明者らは、塗布ムラ155の発生の法則性について調査した結果、スピンコータの回転軸からの放射方向、すなわち塗布液が遠心力で塗り広げられる方向と、ソースドライバ配線の屈曲部の配列方向(図2の矢印βA、βBで示す。)が一致または、その角度差がおおよそ15?未満の範囲にある場合に発生することを見出した。具体的には、一致した場合が最も明確に塗布ムラが発生し、角度差が増えるにしたがって薄くなってゆき、おおよそ8?以上で許容限界以下となり、さらにおおよそ15?以上ではムラとして認識できないレベルに低減することを見出した。
【0023】
すなわち、前述の特許文献1では液の塗り広げられる方向と、屈曲部の配列の方向が一致した場合に発生するとされているが、角度差があっても、その程度によって塗布ムラが発生する点が明確になった。そこで、本発明では、特許文献1のように、配線そのものには手を加えず、配線として機能しないダミー配線を付加するのではなく、配線そのものの配置、形状に工夫を加えることでムラ発生条件を回避するという、特許文献1とは全く異なる考え方で上記問題を解決する。
【0024】
さらに図3により説明を付け加えると、屈曲部113の屈曲角の内側(図3左半分では左下)から屈曲角の外側(同、中央寄り)へ向けた方向、すなわち、屈曲部113の配列方向であって表示領域101に向かう方向(矢印αで示す。)が基準線となす角θ1を屈曲部配列の方向と定義している。塗布ムラ155は屈曲部配列の延長上に現れ、表示領域101にかかった場合に表示に異常をもたらす。図2においてはスピン塗布の放射方向、すなわち、スピン塗布の回転中心から表示領域101に最も近い屈曲部113に向かう方向が屈曲部配列の方向と一致または近づき得るのは、TFT基板150の上半分の領域に限られる。図面ではパネルの構造、基板内のパネルの配置に左右の線対称性を持たせた例を用いており、左右の線対称の場所(例えば、図2のパネルA、パネルB)では同様の現象がおこる。厳密にはスピン塗布の回転方向の要素がかかわるが、実質的には対称と考えて差し支えない。もし特殊な条件下で回転方向による非対称性が現れるならば、回転方向起因の要素を含めた実質的な塗布液の流動方向をもとに、同様の考え方を適用することで、同じモデルでの現象が説明できる。
【0025】
以下、パネル内の配線配置および、基板内のパネル配置は左右線対称として説明を簡略化するが、配線の配置、形状、分割位置などは非対称に設定することも可能で、基板内のパネル配置も非対称に設定することもできる。そのような場合にも個々の屈曲部配列について条件を満たせば、同様モデルが適用できる。
【0026】
すなわち、本発明が解決しようとする問題が発生する条件としては、複数の配線等段差のもとになる形状が並走した形状を持ち、かつ、それらの配線等が屈曲部を有し、屈曲部がマクロ的な配列形状を形成している状態で、かつ基板に垂直な軸での回転とそれによって生じる遠心力により、液状の物質を塗り広げるプロセスを行ったときに、液状の物質が塗り広げられる方向(回転中心から放射方向)と屈曲部の配列のなす角度差がおおよそ15?未満の範囲にあるということである。また、15?未満であっても、おおよそ8?以上であれば実質的には許容可能である。
【0027】
従って、その解決の手段としての本発明は、上記の塗布ムラ発生条件のいずれかを解消または軽減することで、発生条件を解消することを特徴とする。
【0028】
更に詳しくは、本発明は、TFT基板内の個々のパネルの位置、配置、向きを適正にすることで、上記の角度差を発生条件の範囲外にすることを特徴とする。または、TFT基板内の個々のパネルの中の配線等を引き回す幾何学形状を工夫し、屈曲部配列の方向を、上記の角度差を発生条件の範囲外にすることを特徴とする。
【0029】
または、TFT基板内の個々のパネルの中の配線等を、屈曲部を持たせずに曲線状に引き回すことで、屈曲部自体をなくして屈曲部および配線形状の特異点の配列を解消することを特徴とする。
【0030】
ここでは、平坦化工程での有機膜塗布を例にとって塗布ムラ発生条件を説明したが、本発明は、そのほかのスピンコートを使用するあらゆる工程で有効であり、たとえばパターニングのためのフォトレジスト塗布では、パターンの線幅精度の均一化に、反射板を有する液晶パネルにおいては、反射板の凹凸形状の均一化に、またTFT基板にカラーフィルターを有するCOT(Color Filter on TFT)の場合にはカラーフィルター色層の色むら解消に効果を発揮する。以下に本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0031】
まず、本発明の第1の実施例に係るフラットパネルディスプレイ及びその製造方法について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0032】
現在、もっとも広く用いられている液晶パネルは、図1のようなアクティブマトリクス駆動のカラー液晶パネルであり、片側の薄膜トランジスタが形成されたアクティブマトリクス基板(以下、TFT基板と呼ぶ。)と、それに対向し、共通の対向電極とカラーフィルターが形成されたCF基板とで構成されることが一般的である。TFT基板では、各パネルの表示領域101内に画像信号を伝えるデータ配線と、画素を選択するゲート配線(いずれも図示しないが、模式的に格子状のハッチングで表現している。)が縦、横に張り巡らされており、その交点に形成した画素スイッチング用の薄膜トランジスタ(TFT)で画素への信号の書き込みを制御する構成となっている。
【0033】
データ配線、ゲート配線はいずれも低抵抗化のために、Al、Cr、Mo、Nbや他の金属、またはそれらを成分とする合金薄膜で形成され、膜厚はおよそ200〜500nm程度である。TFT、各配線の層間は光透過性の絶縁膜(SiO、SiNなど)で絶縁されている。これらの配線で碁盤目に区切られた領域に対して、画素電極は絶縁膜を介して、その端部が両配線の上に乗り上げるような位置に配置される。
【0034】
絶縁層は上下層を接続するコンタクト以外では全面に残っており、配線など導体層は部分的に残っている。そのため、TFT基板表面は、配線の交差などの影響も考慮すると、およそ1μm弱程度の高低差を持っている。導体層がすべて除去された画素の開口部は表示領域101で最も低い場所となる。
【0035】
液晶分子を一定方向に配列(配向)させるためには、TFT、CF両ガラス基板の電極表面には一般的にはポリイミドからなる配向膜とよばれる膜が付着されており、これを布で一方向に擦るラビングという処理を経て、液晶分子が一定方向に配向する状態が作られる。
【0036】
平面上の配向膜をラビング処理すれば、液晶分子の配向を規制する作用は基板面内に均一にもたらすことが可能であるが、アクティブマトリクス駆動タイプなどの場合、前述のように縦横に走る配線や画素スイッチとしてのTFTがその下層に形成されているために、画素電極表面は1画素分の領域内でも段差が生じてしまう。
【0037】
段差がある表面をラビング処理すると、配向膜と布の当たり具合は位置によって異なり、その結果、配向を規制する作用に画素面内の不均一が生じてしまう。配線、TFTなどの構造物は、各画素の外周部に配置されているのが一般的なので、このような不均一は画素の周辺部に生じることが多い。この領域では液晶分子は画素の中央とは異なった振る舞いをするため、光学的な不均一を起こし、黒表示をしたときの光漏れによるコントラストの低下などをもたらす。
【0038】
また、液晶分子を制御する電界は両基板の電極間の電位差によって生じるが、理想的には両電極は平行平板であることが望ましい。上記のような段差が画素内にあると、電極表面近傍の電気力線は平行ではなくなり、それに伴い、液晶分子の向きは位置によって異なるという状態が発生する。この場合も先の例と同様に表示品位の低下につながる。
【0039】
このような画素周辺部の表示異常部は、表示に寄与させないように光を透過しない層(ブラックマトリクス)で囲って隠す方法もあるが、表示に寄与する面積の比率が低下するために、透過光量の低下など、その程度によっては好ましくない結果をもたらす。
【0040】
そこで、下部の構造物に起因する段差が画素電極の段差に繋がらないように、TFT、配線などの構造が作られた後、その表面にアクリルなどの光透過性の良好な有機膜原料の液体をスピンコートなどの方法で塗布し、焼成固化させることで、表面を平坦化してその上に画素電極を形成するという方法を採ることができる。この場合、画素電極に下層の配線から給電するためには、接続部となるコンタクトホールが必要となるが、平坦化の塗布材料に感光性を持たせて、露光〜現像という手順を採る。あるいは、焼成固化した平坦化層の上にフォトレジストを塗布、露光、現像、エッチング、レジスト剥離という手順も可能である。
【0041】
配線等と画素電極の間の絶縁には、この平坦化層をそのまま用いても良いし、窒化シリコンSiNや酸化シリコンSiOなどの薄膜を介してその上に平坦化層を形成する選択も可能である。
【0042】
一方で、表示領域の外側には、表示領域を駆動するための機能が搭載されている。アクティブマトリクス型液晶パネルの駆動は、ゲート配線の1本に、画素スイッチをONさせる電圧を加えておき、それに直交するデータ配線には、画素スイッチがON状態の画素それぞれに与えるべき画像信号に対応した電圧を与え、その後、画素スイッチをOFFにして信号を保持させる。この動作を順次繰り返して、すべての画素に信号を書き込むという動作を電子回路の機能により実現させている。画素スイッチをON/OFFする側の駆動回路をゲートドライバ、画像信号に対応した電圧を与える側をソースドライバと呼ぶ。
【0043】
各ドライバは、シリコンチップによりIC(Integrated Circuit)として製造されたものを液晶パネルに接続する場合が一般的である。
【0044】
最近ではSOG(System On Glass)と称する技術により、ガラス基板上に薄膜トランジスタでドライバICを直接作りこんでしまう場合もあるが、すべての回路をSOGで構成する場合もあれば、一部の機能(例えばソースドライバ)はICチップを用いる場合などもある。
【0045】
ICを液晶パネルに接続する、いわゆる実装の方法には、フレキシブル・テープにドライバICを搭載したTCP(Tape Carrier Package)をガラス基板に実装するTAB(Tape Automated Bonding)方式や、ICのシリコンチップを直接ガラス基板に実装するCOG(Chip On Glass)方式がある。
【0046】
画像信号はさまざまな方法で伝送可能であるが、最終的に液晶パネルを駆動する段階では、ソースドライバ側、ゲートドライバ側いずれにおいても、液晶パネルの個々の配線1本1本に対応した信号線を設ける必要がある。この多数の配線は画素の配列の端部とドライバICの出力端子の間に存在する。液晶パネルの画素ピッチおよびドライバICの端子ピッチはそれぞれの事情により同じでない場合がほとんどである。
【0047】
液晶パネルの精細度は1インチあたりの画素数でppi(pixels per inch)という単位で表現される。直視型の場合、200ppi(画素ピッチとして約130μm)で印刷物相当の高精細度であり、また、人間の目が区別できる精細度は300ppi(画素ピッチとして約85μm)程度とも言われている。高精細といわれる200ppiクラスの配線ピッチはRGBに分割されたとしても、50μm程度が最小である。
【0048】
上記SOGで一部の駆動回路をTFT基板上に作り込む場合、ドライバICを併用して、1本のソースドライバ出力をスイッチングで複数の信号線(1画素分のRGBであってもよいし、複数画素にまたがってもよい。)へ時分割で書き込むという構成も可能である。このような構成の場合、表示領域側が受ける信号線のピッチはスイッチングで分岐した本数分広がる。
【0049】
一方、ドライバICはシリコンウエハ上で形成され、高性能化、低コスト化のために集積密度が高められており1μmを下回るサブミクロンルールで製造されるものも少なくない。同じ機能のICを端子だけのために大きなチップサイズにすることは、ICの製造面およびコストの面から不利であり、チップサイズは小さいほうが望ましい。ただし、IC内部の配線ピッチで接続端子を取り出しても、外部と接続する手段がないので、端子ピッチは実装手段によって制限を受ける。COG方式のICの場合40〜50μm程度の端子ピッチまでは実用化されており、端子を千鳥配列にするなどを併用すれば、ICから取り出せる配線ピッチは20〜30μmまで狭ピッチ化が可能となる。
【0050】
このように、一般的には、ドライバICの端子ピッチが小さく、画素側のピッチが大きいという関係がある。従って、それらの間を結ぶ配線のレイアウトには、ピッチの差異を吸収する何らかの工夫が必要となる。
【0051】
図1は、ソースドライバをCOG実装した液晶パネル100(ゲートドライバ側は省略)を模式的に表したものである。もちろん実際の液晶パネルには、ゲートドライバ側の信号系がCOGまたはSOG技術により実装されているがここでは簡略化して、後の説明に必要な構成要素のみを記載している。実際のパネルはTFT基板とCF基板で構成されるが、ここでは説明の便宜上、1パネル分に相当するTFT基板側のみを記載する。
【0052】
図1において、ソースドライバ入力配線130から入った画像信号は、ソースドライバIC120により個々の画素を駆動する信号に変換され、表示領域101の個々の画素に繋がる配線へソースドライバ配線110で伝達される。ソースドライバ配線110はソースドライバIC120の出力端子ピッチと、表示領域101の画素ピッチの差を吸収すべく、液晶パネル100上を引き回され、ソースドライバ配線ドライバ側112とソースドライバ配線画素側111は屈曲部113で折り曲げられている。個々の屈曲部113は線幅が数10μm程度なので非常に小さな幾何学形状でしかないが、複数の配線が並走しているため、屈曲部113の配列はマクロ的(数mm規模)な幾何学形状(図1では斜めの直線状)を形成している。
【0053】
実際の製造工程においては、ガラス基板等の絶縁基板上に図1に示すようなパネル(アクティブマトリクス基板)が複数、縦横に配置され、さらにプロセスに必要なマーク類やチェックのための素子(総称してTEG(Test Element Group)類と称す。)など、実際のパネル動作には必要ないパターンも配置された状態になっている。
【0054】
厚さ方向の構成を製造工程を追って説明すると、画素スイッチ等となるTFTを形成した後、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等で形成したSiOを主成分とする400nm程度の厚さの第1層間絶縁膜を形成し、TFTとの接続のためのコンタクトホールを、レジスト塗布、露光、現像、エッチングにより開口する。第1層間絶縁膜としてはSiOのほかにSiNなど絶縁性、光透過性の材料を用いることが出来る。その後、配線層として、Siを約1wt%含有したAl−Si合金を400nm程度、続いてTiを50nm程度、スパッタ等で形成する。配線層は下層のTFTのソース、ドレイン、ゲートとの接続のため、特にソース、ドレインのSi層との良好なコンタクト特性を得るためにSiを含有し、上層では画素電極となるITO(Indium Tin Oxide)との接続のため、良好なコンタクト特性を持たせるため、バリア層としてTiを積層している。ここでは、配線層の材料構成の一例を上げたが、このほかにも、バリア層としてはMo、Ni、Crなどが使用可能であり、Alを主成分として、さらに第3元素、第4元素を添加した合金を単層で用いることも可能である。また、膜厚設定も一例に過ぎず、本実施例の材料、厚さの組み合わせ以外についても本発明は有効である。
【0055】
続いて、配線層に対し、レジスト塗布、露光、現像、エッチングを施すことで、前述の各配線パターンが形成される。ソースドライバ配線の部分は、厚さ450nm、幅10nm前後の金属配線パターンが数10μmの間隔を置いて並んだ状態ができる。
【0056】
次に、第2層間絶縁膜としてSiN膜をプラズマCVD等で400nm程度成膜する。配線層の段部は、第2層間絶縁膜によってわずかに形状がなだらかになるが、高低差自体はほとんど変わらない。ここでは第2層間絶縁膜としてはSiNを選択したが、SiOや、この後述べる有機平坦化膜を絶縁層として用いることも可能である。
【0057】
次に、画素形成部を平坦にするために、アクリル樹脂をスピン塗布、焼成する。塗布膜厚は画素領域の最大の高低差(1μm弱)を考慮し、凹凸のない平坦な基板上に塗布したときの膜厚で1〜2μmとなるように設定する。このとき、配線屈曲部の配列とスピン塗布の流動方向すなわち、回転中心からの放射方向が一致またはおおよそ15?未満の範囲にあると塗布ムラを生じ、特におおよそ8?未満の時には、表示上問題となるムラとなってしまう。
【0058】
そこで、本実施例では、上記の角度範囲が、塗布ムラを生じる範囲から外れるように、パネルの配置を基板内の位置によって異なる向きとする。配線屈曲部の配列の方向とは、図3のように、屈曲部113の屈曲角の内側(図3左半分では左下)から屈曲角の外側(同、中央寄り)へ向けた方向、すなわち、屈曲部113の配列方向であって表示領域101に向かう方向(矢印αで示す。)が基準線となす角θ1と定義する。塗布ムラは屈曲部配列の延長上に現れる。図2のような基板内配置においてはスピン塗布の放射方向、すなわち、スピン塗布の回転中心から表示領域101に最も近い屈曲部113(屈曲部113が図のように2つの直線に沿って配列されている場合は、その交点)に向かう方向が屈曲部配列の方向と一致または近づき得るのは、基板の上半分の領域に限られ、図2の下半分では発生条件を満たさない。従って、図2の下半分の状態を全面に作り出すことで、塗布ムラ発生が抑制できる。
【0059】
図4は、図2に対して上半分が上下逆にパネルを配置した構成になっている。このような配置とすることで、塗布ムラ発生条件を満たす場所がなくなり、塗布ムラは解消する。有機平坦化膜としてアクリル樹脂をスピン塗布して焼成した後は、画素コンタクトをレジストマスクによるエッチングで開口して、画素電極としてITOを40〜100nm程度、スパッタ等で成膜し、レジストマスクによりエッチングしてTFT基板が完成する。
【0060】
なお、本実施例の説明に用いたプロセス、層構成は一例であって、他のプロセスフロー、層構成においてもパネル配置の条件が満たされれば同様の効果を発揮する。
【実施例2】
【0061】
次に、本発明の第2の実施例に係るフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法について、図5乃至図8を参照して説明する。
【0062】
実施例1においては、パネルの向きが基板内で異なるものが混在することから、パネル工程でのラビング方向はラビング処理を分割するなどしない限り同一にならず、視野角特性を同じにできないことがある。そこで、本実施例では、パネルの向きを同一にした状態での塗布ムラ発生条件を回避する方法を説明する。
【0063】
具体的には、実施例2では、パネルの基板内配置から、各パネルのムラの起点となる表示領域に最も近い屈曲部(本実施例では屈曲部配列の交点)を通る放射方向と、配線屈曲部配列の角度が近づかないように、配線引き回しの形状を設計する。
【0064】
図2のパネル配置における塗布ムラ発生条件を定量的に確認する。図2の下半分は発生条件を満たさず、上半分は左右線対称であるので、右上領域に着目する。図5は、図2の右上領域を切り出して、各パネルの屈曲部配列交点161とスピン塗布の回転中心160を結んだ直線が基準線162となす角度δを数値で表示してある。角度δを小さい順に並べると、6.9、13.7、32.3、48.3、51.8、66.3となる。図5ではパネルの屈曲部配列の角度θ1は約31?で作図しており、右端上から2番目のδ=32.3?のパネルではδとθ1の差は1.3?となり塗布ムラが発生する。その前後のδでは発生条件に対して十分な差(約17?)を持っており、塗布ムラは発生しないことがわかる。角度δの並びでもっとも間隔の広いのは、13.7〜32.3?でその差18.6?である。両者の中間である23.0?にθ1を設定すれば、両者との差はそれぞれ9.3?となり、表示上問題となるムラ発生条件(角度差8?未満)を外れる。
【0065】
次に、このときに配置可能な配線幅を求める。ソースドライバ配線の引き回し領域を図6のようにモデル化すると、Ppix:画素ピッチ、Pic:ドライバIC出力端子ピッチ、N:横方向画素数、L:引き回し領域幅として、θ1:屈曲部配列角度、θ2:画素側配線角度、Ps:画素側配線(傾斜部)ピッチとの関係が求まる。具体的な条件として、SOGでソースドライバ出力をRGB3ラインに切り替えるスイッチを搭載したパネルを例として、Ppix=141μm、Pic=60μm、N=240に設定したときの各パラメータの関係を図7に示す。このモデルにより、塗布ムラ解消のための条件(θ1)を、レイアウト上の必要領域(L)、配線配置の可能性(Ps)とともに考えることが出来る。本実施例の条件ではθ1≒23?になるのは、Ps=42μm、θ1=22.8?で、このときL=3.03mmとなる。配線ピッチが狭いほうの傾斜部でPs=42μmであるので、配線幅10μmで配線間隔は32μmとなり、余裕を持って引き回しができる。図8に配線引き回し領域のイメージ(a)と、配線屈曲部付近の配線形状の拡大図(b)を示す。
【0066】
すべてのパネルの配線部を上述のように、各パネルのδと差を大きくとれ、角度差8?以上とできるθ1≒23?とすることで、表示上問題となる塗布ムラの発生を抑止することができる。
【0067】
上記手順をもう一度整理すると、基板上の各パネルの屈曲部配列の交点とスピン塗布の回転中心の角度δを求め、角度δを大きさの順に並べて、間隔が最も広いところの中間値を屈曲部配列の角度θ1に設定する。
【0068】
なお、本実施例では、最も間隔の広いところを使ったが、レイアウトの制約などがある場合は、これに限らず条件を決められる場合もある。また、すべてのパラメータが切りのいい数字になるとは限らない。
【0069】
また、上記実施例では、傾斜部の配線ピッチPsを切りのいい数値にしたが、CAD(Computer Aided Design)での扱いやすさなどを考慮して、任意のパラメータにキリのいい数値を設定することができる。
【0070】
また、設計上の制約等があって、塗布ムラ対策を任意に設定できない場合には、基板外形およびプロセスの有効領域に対して、パネル配置領域が余裕を持っている場合にはパネル配置を上下左右にシフトさせることで角度δが変化するので、設計上の制約を回避できる場合もある。
【実施例3】
【0071】
次に、本発明の第3の実施例に係るフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法について、図9及び図10を参照して説明する。
【0072】
実施例2においては、すべてのパネルに同一の条件を適用したが、パネルの設計、基板上の配置によっては十分な効果が得られない場合もある。そこで、本実施例では、複数の条件で求まる配線の引き回し形状のパネルを組み合わせて、基板面内に配置する方法を説明する。
【0073】
実施例2と同様に、図5のパネル配置をもとに配線を設計する。角度δを小さい順に並べると、6.9、13.7、32.3、48.3、51.8、66.3である。図5ではパネルの屈曲部配列の角度θ1は約31?で作図してあり、右端上から2番目のδ=32.3?のパネルではδとθ1の差は1.3?となり表示上問題となる塗布ムラが発生する。そこで、実施例3では、基本的な設計で、ムラ発生条件となるパネルの配線形状を変えて、ムラ発生条件を回避する。具体的には、δ:32.3?に対して、ムラ発生条件を回避する方法として、θ1=13?を選択する。δ:32.3?とは19.3?の差があり、ムラは解消できる条件(15?以上)である。このときの形状を図6、図7により確認すると、θ1≒13?になるのは、Ps=24μm、θ1=13.1?で、このときL=1.68mmとなる。配線ピッチが狭いほうの傾斜部でPs=24μmであるので、配線幅10μmが配線間隔14μmで引き回しができる。図9に配線引き回し領域のイメージ(a)と、配線屈曲部付近の配線形状の拡大図(b)を示す。
【0074】
θ1が31?のパネルP1と、θ1が13?のパネルP2を図10のように、δ:32.3?となる位置にP2となるように組み合わせて配置することで、塗布ムラが解消できる。
【0075】
本実施例では、基本パターンとしてP1を用い、P2を部分的に用いた組み合わせとしたが、P2を基本として、δ:13.7?となる位置にP1を配置してもよいし、δとθ1の関係を、塗布ムラを生じさせない関係にした他の配置を組み合わせとすることも可能であり、効果がある。さらに、本実施例では、P1、P2の二種類の設計のパネルを組み合わせたが、3種類以上の設計を組み合わせることも可能であり、δとθ1の関係を適切に設定することで、ムラ解消の効果が得られる。
【0076】
製造上は、複数パネルを一括で露光する場合、当該配線層を加工するためのマスクのみ、上述したパネルの組み合わせとしておけばよい。基板を2分割して露光するような場合にも、問題となる上半分(図10)に適切な組み合わせの配置を適用しておけば、下半分は実施例2で説明したように、ムラ発生条件は成立しないので、十分な効果が得られる。また、さらに細かくステップアンドリピートで露光する場合には、当該配線層のみ複数のマスクを組み合わせ切り替えて露光すればよい。
【実施例4】
【0077】
次に、本発明の第4の実施例に係るフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法について、図11及び図12を参照して説明する。
【0078】
実施例4では配線の屈曲自体を軽減、あるいは解消して、ムラ発生を抑える方法を採る。図11は屈曲を軽減する配線の形状を設計する考え方を説明する図であり、配線引き回し部(例えば図8(a))の左半分を模式的に示したものである。上側の水平線201が画素側に接続する部分で、下側の水平線202がソースドライバの出力に接続する部分である。210aおよび210bは基本となる配線形状を抜粋したものである。全配線を描画すると図が複雑になるため、一部の配線のみを抜粋したもので、たとえば図8(a)の配線形状に相当する。実施例4では、この基本となる配線形状の屈曲部を円弧でなめらかにつなぐ、フィレットを施すことで屈曲を軽減し、屈曲部の配列を解消することでムラ発生を抑えるものである。フィレットはつなぐべき2つの線(図11では直線、線分)と接続部の半径(R)を決定すれば、多くの作画ソフトウェアでは、自動的にRを付加して作画してくれる。また、あらかじめ始点、終点、通過点としての接点の座標を計算で求めておき、作画する方法を採ってもよい。
【0079】
続いて、具体的な作画手順について図11を使って説明する。各配線210aに対して、ソースドライバ側水平線202にフィレットの接点をとるようにRを設定する。より詳しくは、個々の配線の屈曲の内側に内接する円211aの配線の垂直部203…との接点213aがソースドライバ側水平線202上に載るように幾何学的に計算すればよい。図11(a)のように左端の配線から右へ順にフィレットを形成していくと、Rは徐々に増加していく。このとき下側の接点213aは水平線202上を右へ、上側の接点214aは右斜め上へと移動していく。上側の接点214aが画素側の上側水平線を越える手前まで同じ方法で、配線の基本形状に対してフィレットを付加する。ここで、Rの計算方法を変える。
【0080】
図11(b)で残りの部分にRを付加する方法を説明する。右方(全体では中央寄り)の配線に対しては、個々の配線の屈曲の内側に内接する円211bの配線の傾斜部204…との接点214bが画素側水平線201上に載るように幾何学的に計算する。図11(b)のように残りの配線を右へ順にフィレットを形成していくと、Rは徐々に減少していく。このとき、上側の接点214bは水平線201上を右へ、下側の接点213bは右斜め上へと移動していく。右半分についても同様な作画あるいは左半分を線対称に複写し、これらを基準線として配線幅を付与することで、配線形状ができあがる。
【0081】
図12に以上の手順で形成した配線引き回し領域のイメージ(a)と、Rを付与した部分の配線形状の拡大図A部(b)を示す。
【0082】
上記のような手順で作画した形状は、基本となる屈曲部をもつ配線形状に対し、個々の配線の屈曲の内側に内接する円の配線の垂直部との接点をソースドライバ側水平線上に載せた場合のRと、配線の傾斜部との接点を画素側水平線上に載せた場合のRのうち、小さい方のR(等しい場合はどちらでも同じ。)でフィレットを施した状態となる。
【0083】
このように、本実施例による配線形状は図12のように基本となった配線形状(図8)に比べて、著しく配線屈曲部の配列感が軽減されており、このあとの塗布工程において塗布ムラの発生を抑制できる。基本形状で顕著な塗布ムラの発生した位置に本実施例の配線を配置した場合にも、塗布ムラは問題とならないレベルまで軽減されており品質上の問題は解消する。その際のメカニズムとしては、もとあった塗布ムラがその付近一帯に薄く引き延ばされていきムラとして認識できなくなっていくということが詳細な観察により解っている。
【0084】
本実施例では、計算および作画の容易な円弧で配線を滑らかにつなぐ方法を説明したが、そのほかにも、楕円弧やその他の関数による曲線を適切に選択して配線の屈曲部を解消するという方法を採っても、同等の効果が得られる。
【0085】
また、本実施例では左右対称な場合を例に説明したが、非対称な場合にも同様の考え方が適用可能である。また、必要な位置のパネルにだけ、本実施例の方法を適用したり、また、同一パネルでも左右のいずれかのみに適用することも選択肢である。
【0086】
また、本実施例では、ソースドライバ側水平線202の下側に配線がない形状で説明したが、接線をさらに水平線202の下側に延長することも選択可能である。
【0087】
なお、本実施例の形状による最小配線ピッチはその基本となった配線形状(図12に対して図8)と同等になり、配線幅を変更する必要はない。
【0088】
本実施例の考え方に基づく配線形状は、基本配線形状にフィレットでRを付加する方法で説明したが、作画の始点、終点、通過点、接続方法(直線、円弧)を規定することでも作画可能である。いずれの方法を選んでも、基本的な設計情報、ソースドライバの端子ピッチ、画素側の端子ピッチ、配線を配置する領域の幅などとRの付加方法をもとに、本実施例で説明した手順に基づいて、パーソナルコンピュータの汎用表計算ソフトウェアなどで形状のデータを生成することが可能で、これを作画(描画)ソフトが読み込める形に成形して出力することで、設計の省力化が可能である。
【実施例5】
【0089】
次に、本発明の第5の実施例に係るフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法について、図11及び図12を参照して説明する。
【0090】
実施例5では実施例4を発展させ、さらに配線に曲線部を増やす方法を採る。実施例4の配線形状を採ることで、かなり効果的な塗布ムラ改善効果は得られるものの、配線膜厚が大きかったり、塗布材料の特性、塗布条件によっては、完全に塗布ムラを消し去ることが出来ない場合もある。
【0091】
実施例4による配線形状は図12に示すとおりであるが、図12(a)中央部付近の直線と円弧のつなぎ目の”配列感”が残っている。さらに形状に工夫を加えることで、この”配列感”をなくし配線領域のマクロ形状を均一化する方法を説明する。
【0092】
図11(a)に相当する領域は実施例4と同じであるので、その部分を再掲する。
【0093】
各配線210aに対して、ソースドライバ側水平線202にフィレットの接点をとるようにRを設定する。より詳しくは、個々の配線の屈曲の内側に内接する円211aの配線の垂直部203…との接点213aがソースドライバ側水平線202上に載るように幾何学的に計算すればよい。図11(a)のように左端の配線から右へ順にフィレットを形成していくと、Rは徐々に増加していく。このとき下側の接点213aは水平線202上を右へ、上側の接点214aは右斜め上へと移動していく。上側の接点214aが画素側の上側水平線を越える手前まで同じ方法で、配線の基本形状に対してフィレットを付加する。ここで、Rの計算方法を変える。
【0094】
図13は実施例4で用いた図11と同様に屈曲を軽減する配線の形状を設計する考え方を説明する図であり、図11(b)の右側領域のみを模式的に示したものである。図13ではすべての配線を表示すると図面が見づらくなるので、抜粋した部分のみを表示している。フィレット円211aは前述の図11(a)の手順で作画した右端の配線に相当するものである。この右隣の配線から図13右端(配線全体では中央部)へと、さらにRを大きくしながら配線を形成していく。本実施例では、残りの端子間をそれぞれ1つの円弧のみで結ぶ。図13において、ソースドライバ側に相当する下側水平線202上に作画の始点221が等間隔に並んでおり、画素側にあたる上側水平線201上に作画の終点222が等間隔で並んでいる。それぞれの始点221と終点222を円弧で結ぶのに、通過点を決めることで円弧が確定する。通過点は右端のフィレット円211a上の基準点219から右端(配線全体では中央)の配線の通過点229の間を直線で結び等分した点を通過点223とする。本実施例では、基準点219、右端の通過点229を次のように決定した。
【0095】
図13において左端の配線のフィレット円の中心218から、下側水平線202に対して角度θ(本実施例では5度)で立ち上げた基準直線228と右端のフィレット円211aとの交点を基準点219とした。また右端の配線の作画の始点221から下側水平線202に対して垂直に立ち上げた直線および、右端の作画始点221と終点222を結ぶ直線の双方と基準直線228の交点の中間点を右端の通過点229とした。
【0096】
基準直線228の引き方、角度θの決め方、右端の通過点229の決め方については一例であって、配線形状全体がマクロ的に均一化するように、個々の基本設計に対して適切に選択すればよい。
【0097】
以上のようにして各配線に対して、作画の始点221、終点222、通過点223が決定し、円弧で結ばれた配線217の形状が確定できる。
【0098】
図14に以上の手順で形成した配線引き回し領域のイメージ(a)と、Rを付与した部分の配線形状の拡大図A部(b)、B部(c)を示す。
【0099】
本実施例による配線形状は図14のように実施例4の配線形状(図12)に比べても、さらに配線のマクロ的な配列感がほぼ解消されており、このあとの塗布工程において塗布ムラの発生を抑制できる。
【0100】
本実施例では、計算および作画の容易な円弧で配線を滑らかにつなぐ方法を説明したが、そのほかにも、楕円弧やその他の関数により生成される曲線、ベジエ、スプライン等を適切に選択して配線の屈曲部を解消して、マクロ的な均一化を図るという方法を採っても、同等の効果が得られる。
【0101】
本実施例においても最小配線ピッチはその基本となった配線形状(図14に対して図8)と同等になり、配線幅を変更する必要はない。
【0102】
なお、上記各実施例では、引き出し配線が図の左右で反対方向に屈曲する構成を例にして説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、各々のパネルにおいて引き出し配線が1つの方向に屈曲する(すなわち、ドライバICが左端部や右端部に配置される)構成に対しても、同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、液晶表示装置を構成するアクティブマトリクス型液晶パネルをはじめとするフラットパネルディスプレイに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】ソースドライバをCOG実装したパネルを模式的に示す平面図である。
【図2】パネルを縦横に格子状に配置したTFT基板の中央に有機塗布液を滴下し、スピンコータで塗り広げた後の様子を模式的に示す平面図である。
【図3】ソースドライバをCOG実装したパネル(ゲートドライバ側は省略)を模式的に示す平面図であり、屈曲部配列の方向を説明する図である。
【図4】パネルを縦横に格子状に配置したTFT基板において、上下でパネルの向きを逆にした例を示す平面図である。
【図5】パネルを縦横に格子状に配置したTFT基板の右上領域における、屈曲部配列交点とスピン塗布の回転中心を結んだ直線が基準線となす角度δを示す平面図である。
【図6】ソースドライバ配線の引き回し領域をモデル化した図である。
【図7】屈曲部配列角度、画素側配線角度、画素側配線(傾斜部)とレイアウト上の必要領域(L)との関係を示す図である。
【図8】第2の実施例における配線引き回し領域のイメージ図及び配線屈曲部付近の配線形状の拡大図である。
【図9】第3の実施例における配線引き回し領域のイメージ図及び配線屈曲部付近の配線形状の拡大図である。
【図10】第3の実施例におけるパネルを縦横に格子状に配置したTFT基板を示す平面図である。
【図11】第4の実施例における屈曲を軽減する配線の形状を設計する考え方を説明する図である。
【図12】第4の実施例における配線引き回し領域のイメージ図及び配線屈曲部付近の配線形状の拡大図である。
【図13】第5の実施例における屈曲を軽減する配線の形状を設計する考え方を説明する図である。
【図14】第5の実施例における配線引き回し領域のイメージ図及び配線屈曲部付近の配線形状の拡大図である。
【図15】ソースドライバをCOG実装したパネルにおける塗布ムラを説明するための図である。
【符号の説明】
【0105】
100 液晶パネル
101 表示領域
110 ソースドライバ配線
111 ソースドライバ配線画素側
113 屈曲部
112 ソースドライバ配線ドライバ側
120 ソースドライバIC
130 ソースドライバ入力配線
150 TFT基板
155 塗布ムラ
160 回転中心
161 屈曲部配列交点
162 基準線
201、202 水平線
203 垂直部
204 傾斜部
210a、210b 配線
211a、211b 円
213a、213b 下側の接点
214a、214b 上側の接点
217 配線
218 フィレット円の中心
219 基準点
221 始点
222 終点
223 通過点
228 基準直線
229 右端の通過点
300 液晶パネル
301 表示領域
310 引き出し配線
313 屈曲部
320 ドライバICチップ
325 塗布ムラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域から複数の引き出し配線が引き回されるアクティブマトリクス基板を含むフラットパネルディスプレイにおいて、
各々の前記引き出し配線は、直線と曲線とが滑らかに接続された形状であることを特徴とするフラットパネルディスプレイ。
【請求項2】
表示領域の所定の辺から複数の引き出し配線が引き回されるアクティブマトリクス基板を含むフラットパネルディスプレイにおいて、
各々の前記引き出し配線は、前記表示領域の所定の辺から第1の方向に延在する第1の直線と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2の直線と、が、双方の直線に内接する円弧、楕円弧又は特定の関数で規定される曲線によって滑らかに接続された形状であることを特徴とするフラットパネルディスプレイ。
【請求項3】
前記第2の方向が前記表示領域の所定の辺に直交する方向であり、前記双方の直線が円弧又は楕円弧によって接続されている場合に、
前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺から離間する第1の領域では、前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺に対して傾斜して配列され、前記第2の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺に平行に配列されていることを特徴とする請求項2に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項4】
更に、前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺の近傍となる第2の領域では、前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺に平行に配列され、前記第2の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺に対して傾斜して配列されていることを特徴とする請求項3に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項5】
前記第2の領域では、前記複数の引き出し配線の内、配線の屈曲の外側に配置される引き出し配線の前記円弧又は楕円弧の曲率半径が、配線の屈曲の内側に配置される引き出し配線の前記円弧又は楕円弧の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項6】
更に、前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺の近傍となる第2の領域では、前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点、及び、前記第2の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺に平行に配列されていることを特徴とする請求項3に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項7】
前記第2の領域では、前記複数の引き出し配線の内、配線の屈曲の外側に配置される引き出し配線の前記円弧又は楕円弧の曲率半径が、配線の屈曲の内側に配置される引き出し配線の前記円弧又は楕円弧の曲率半径よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項8】
前記フラットパネルディスプレイが液晶ディスプレイであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項9】
表示領域から複数の引き出し配線が引き回されるアクティブマトリクス基板を含むフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法であって、
各々の前記引き出し配線を、直線と曲線とが滑らかに接続された形状となるように設計することを特徴とするフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法。
【請求項10】
表示領域の所定の辺から複数の引き出し配線が引き回されるアクティブマトリクス基板を含むフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法であって、
各々の前記引き出し配線を、前記表示領域の所定の辺から第1の方向に延在する第1の直線と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2の直線と、が、双方の直線に内接する円弧、楕円弧又は特定の関数で規定される曲線によって滑らかに接続された形状となるように設計することを特徴とするフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法。
【請求項11】
前記第2の方向が前記表示領域の所定の辺に直交する方向であり、前記双方の直線が円弧又は楕円弧によって接続されている場合に、
前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺から離間する第1の領域では、前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺に対して傾斜して配列され、前記第2の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺に平行に配列されるように、前記円弧又は楕円弧の中心位置及び径を規定することを特徴とする請求項10に記載のフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法。
【請求項12】
更に、前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺の近傍となる第2の領域では、前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺に平行に配列され、前記第2の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺に対して傾斜して配列されるように、前記円弧又は楕円弧の中心位置及び径を規定することを特徴とする請求項11に記載のフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法。
【請求項13】
前記第2の領域では、前記複数の引き出し配線の内、配線の屈曲の外側に配置される引き出し配線の前記円弧又は楕円弧の曲率半径が、配線の屈曲の内側に配置される引き出し配線の前記円弧又は楕円弧の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項12に記載のフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法。
【請求項14】
更に、前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺の近傍となる第2の領域では、前記第1の直線と前記円弧又は楕円弧との接点、及び、前記第2の直線と前記円弧又は楕円弧との接点が、前記表示領域の所定の辺に平行に配列されるように、前記円弧又は楕円弧の中心位置及び径を規定することを特徴とする請求項11に記載のフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法。
【請求項15】
前記第2の領域では、前記複数の引き出し配線の内、配線の屈曲の外側に配置される引き出し配線の前記円弧又は楕円弧の曲率半径が、配線の屈曲の内側に配置される引き出し配線の前記円弧又は楕円弧の曲率半径よりも小さいことを特徴とする請求項14に記載のフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法。
【請求項16】
前記フラットパネルディスプレイが液晶ディスプレイであることを特徴とする請求項9乃至15のいずれか一に記載のフラットパネルディスプレイにおける引き出し配線の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−54372(P2013−54372A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237397(P2012−237397)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2008−94006(P2008−94006)の分割
【原出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(303018827)NLTテクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】