説明

フラット回路体の取付方法

【課題】フラット回路体の製造時に別部品の熱融着工程が必要なく、フラット回路体の生産性を向上させることができ、また、取付作業時間の遅延を招く変形等が取付孔周辺部に発生することを抑止して、取付作業時間の短縮を図ることができるフラット回路体の取付方法を提供することを目的とする。
【解決手段】フラット回路体10は、電線導体となる複数本の導体11と、これらの複数本の導体11相互を所定の離間間隔で平面状に保持するシート状の絶縁被覆材12と、この絶縁被覆材12上に形成された取付孔としてのスリット13と、を備え、フラット回路体10が取り付けられる筐体20は、フラット回路体10を配索する領域にスリット13を挿通可能に突設された樹脂製柱状突起21を備え、樹脂製柱状突起21をスリット13に挿通させた後、スリット13から突出する樹脂製柱状突起21の頂部を加熱成形により拡径させることで、フラット回路体10を筐体20に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等においてワイヤハーネスとして配索されるフラット回路体の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等では、ワイヤハーネスの配索作業を簡便にするために、ワイヤハーネスの配索経路に位置する樹脂製の筐体に、ワイヤハーネスを固定するための機構を一体形成しておく場合がある。
【0003】
また、省スペース化等のために、ワイヤハーネスとして、フラット回路体を採用することも少なくない。ここに、フラット回路体とは、絶縁被覆材で被覆された複数の電線が平面状に結合した構造を成すフラットな配線材で、具体的には、複数の被覆電線をリボン状に接続一体化したリボン電線、フレキシブルフラットケーブル(FFC)、フレキシブルプリントサーキット(FPC)、フレキシブルワイヤーサーキット(FWC)等が該当する。
【0004】
図9及び図10は、フラット回路体101の配索経路に位置する樹脂製の筐体111に、フラット回路体101を固定するための機構(後述の柱状突起対)を一体形成した従来のフラット回路体の取付方法を示したものである。このフラット回路体の取付方法は、下記特許文献1に開示されたものである。
【0005】
図示例の取付方法の場合、フラット回路体101は、複数の被覆電線102をリボン状に接続一体化したリボン電線103と、このリボン電線103の絶縁被覆材に熱融着された樹脂製テープ104と、を備えている。この樹脂製テープ104は、リボン電線103の絶縁被覆材であり、且つ、リボン電線103を幅方向に横断するテープ状で、両端105a,105bがフラット回路体101の外側に突出するように長さ設定されている。
【0006】
この樹脂製テープ104は、筐体111への取付部となるもので、リボン電線103の両側に突出するテープの両端105a,105bには、後述する樹脂製の筐体111側の柱状突起を挿通させるための取付孔106a,106bが、貫通形成されている。
【0007】
樹脂製の筐体111は、車体上のフラット回路体101の配索経路に配備される部品で、熱可塑性樹脂で形成されている。この樹脂製の筐体111としては、具体的には、例えば、インストルメントパネルや、ドアトリムなど、車体の内装に使用される各種の構造用樹脂部品が該当する。
【0008】
図示例の樹脂製の筐体111の場合は、フラット回路体101が載置されるハーネス配索面113に、柱状突起対115が、一体形成されている。ハーネス配索面113上の柱状突起対115は、フラット回路体101の長さ方向に適宜間隔Pで、複数装備されている。
【0009】
それぞれの柱状突起対115は、フラット回路体101の幅方向に離間して配置された一対の柱状突起116a,116bから構成されている。それぞれの柱状突起116a,116bは、いずれも、円柱状の突起である。各柱状突起116a,116bは、その上端部が、ハーネス配索面113に載置されたフラット回路体101の樹脂製テープ104の取付孔106a、106bから上方に突出するように、ハーネス配索面113からの突出高さが設定されている。
【0010】
図9に示したフラット回路体101の樹脂製の筐体111への取り付けは、ケーブル載置工程と、突起熱成形工程と、を順に実施することで完了する。
【0011】
ここに、ケーブル載置工程とは、図10(a)に示すように、フラット回路体101の各樹脂製テープ104の両端105a,105bの取付孔106a、106bを、樹脂製の筐体111上のハーネス配索面113の各柱状突起116a,116bの上端に嵌合させて、各柱状突起対115間に、フラット回路体101を配置する工程である。
【0012】
また、突起熱成形工程は、図10(a)に示すように、前述のケーブル載置工程を終えた各柱状突起116a,116bの上端に、加熱手段(ヒーティングダイ)121を押し当てて、各柱状突起116a,116bの上端部の熱成形を行う。
【0013】
更に詳しく説明すると、加熱手段121は、各柱状突起116a,116bの上端部に、該上端部の軟化(可塑化)に必要な加熱処理と、軟化した上端部を拡径状態に圧縮成形する加圧処理とを行う。この加熱手段121の加熱・加圧処理により、各柱状突起116a,116bの上端部は、図10(b)に示すように、取付孔106a、106bを通過できない程度に拡径した円板状107に変形する。
【0014】
図10(b)に示した各柱状突起116a,116bの上端部の拡径変形によって、フラット回路体101は、柱状突起対115間に位置決めされた状態に、樹脂製の筐体111のハーネス配索面113に固定される。
【0015】
以上に説明したフラット回路体の取付方法では、樹脂製の筐体111に一体形成された柱状突起対115間にフラット回路体101を載置し、各柱状突起対115を構成している各柱状突起116a,116bの上端を、フラット回路体101の取付孔106a、106bに嵌合させることで、フラット回路体101をハーネス配索面113上に位置決めする。
【0016】
更に、フラット回路体101の取付孔106a、106bに嵌合した柱状突起116a,116bの上端を、加熱手段121によって取付孔106a、106bよりも大きな外径に加熱変形させれば、フラット回路体101の樹脂製テープ104が柱状突起対115から離脱不可となり、フラット回路体101が樹脂製の筐体111に固定された状態になる。
【0017】
このように、上記のフラット回路体の取付方法では、フラット回路体101や樹脂製の筐体111とは別体のクリップ等を使用せずに、フラット回路体101を樹脂製の筐体111に固定できるため、別体のクリップ等を使用する取付方法の場合と比較すると、樹脂製の筐体111へのフラット回路体101の取り付けを容易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平10−285755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところが、特許文献1に記載のフラット回路体の取付方法では、フラット回路体101の製造時に、リボン電線103に該リボン電線103の絶縁被覆材とは別部品である樹脂製テープ104を熱融着させる工程が必要で、この樹脂製テープ104の熱融着工程のために、フラット回路体101の生産性を向上させることが難しいという問題があった。
【0020】
また、筐体111への取付部となる樹脂製テープ104の両端部は、リボン電線103の両側から外方に突出しているため、保管時や運搬時等に樹脂製テープ104の両端部が周囲の器物との干渉で変形し易く、樹脂製テープ104の両端部の変形のために、樹脂製テープ104の取付孔106a,106bへの柱状突起116a,116bの挿通作業が円滑にできず、取付作業時間の遅延を招くおそれがあった。
【0021】
また、特許文献1に記載のフラット回路体の取付方法では、筐体111への取付部となる樹脂製テープ104の取付孔106a,106bの周囲は、特に補強等を設けていないため、取付孔106a,106bに大きな荷重が作用したときに取付孔106a,106bの周囲で破断し易く、筐体111に対するフラット回路体101の結合強度の向上が難しいという問題もあった。
【0022】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、フラット回路体の製造時に別部品の熱融着工程が必要なく、フラット回路体の生産性を向上させることができ、また、取付作業時間の遅延を招く変形等が取付孔周辺部に発生することを抑止して、取付作業時間の短縮を図ることができるフラット回路体の取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)絶縁被覆材で被覆された複数の電線が平面状に結合した構造を成すフラット回路体を、樹脂製の筐体に固定するフラット回路体の取付方法であって、
前記フラット回路体は、電線導体となる複数本の導体と、これらの複数本の導体相互を所定の離間間隔で平面状に保持するシート状の絶縁被覆材と、この絶縁被覆材上に形成された取付孔としてのスリットと、を備え、
前記筐体は、前記フラット回路体を配索する領域において前記スリットを挿通可能に突設された樹脂製柱状突起を備え、
前記筐体上の前記樹脂製柱状突起を前記フラット回路体上のスリットに挿通させることで、前記フラット回路体を前記筐体上に位置決めした後、前記スリットを挿通している前記樹脂製柱状突起の頂部を加熱成形により拡径させた拡径頂部を形成することにより、前記スリットから前記樹脂製柱状突起が抜けることを防止して、前記フラット回路体が前記筐体に固定された状態を得ることを特徴とするフラット回路体の取付方法。
【0024】
(2)前記スリットは、隣接する前記導体間の前記絶縁被覆材上に、前記導体の長手方向に沿って延びる形態に形成されていることを特徴とする上記(1)に記載のフラット回路体の取付方法。
【0025】
(3)前記樹脂製柱状突起は直径dの円柱状、前記拡径頂部は直径Dの円柱状で、前記スリットの長さLは、d×π/2<L<D×π/2に設定されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のフラット回路体の取付方法。
【0026】
上記(1)の構成によれば、筐体への取り付けのためにフラット回路体に設けられる取付孔は、フラット回路体において導体を被覆している絶縁被覆材に直接形成されている。そのため、取付孔の装備のために、別部材の樹脂製テープ等をフラット回路体に熱融着する必要がない。従って、フラット回路体の製造時に別部品の熱融着工程が必要なく、フラット回路体の生産性を向上させることができる。
【0027】
また、筐体への取り付けのためにフラット回路体に設けられる取付孔は、フラット回路体の絶縁被覆材上に形成されるため、フラット回路体の幅内に取付孔を配置することができ、樹脂製テープに取付孔を装備していた従来の場合と比較すると、取付孔の周辺部が外側に突出しない。そのため、保管時や運搬時等に取付孔の周辺部が周囲の器物との干渉で変形することを防止することができる。従って、取付作業時間の遅延を招く変形等が取付孔周辺部に発生することを抑止して、取付作業時間の短縮を図ることができる。
【0028】
上記(2)の構成によれば、筐体への取り付けのためにフラット回路体に設けられる取付孔は、隣接する導体間に装備されており、取付孔を挟む導体が、取付孔周辺部の補強材として機能する。
【0029】
そのため、取付孔の周囲の強度を高めて、筐体に対するフラット回路体の結合強度を向上させることもできる。
【0030】
上記(3)の構成によれば、スリットの長さがLであるため、スリットにより提供される取付孔の内周は2Lで、樹脂製柱状突起の外周の長さよりも大きく、拡径頂部の外周の長さよりも小さい。そのため、スリットに樹脂製柱状突起を挿通した後に拡径頂部を形成することで、拡径頂部を確実に抜け止めすることができ、確実にフラット回路体を筐体に固定することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によるフラット回路体の取付方法によれば、筐体への取り付けのためにフラット回路体に設けられる取付孔は、フラット回路体において導体を被覆している絶縁被覆材に直接形成されている。そのため、取付孔の装備のために、別部材の樹脂製テープ等をフラット回路体に熱融着する必要がない。従って、フラット回路体の製造時に別部品の熱融着工程が必要なく、フラット回路体の生産性を向上させることができる。
【0032】
また、筐体への取り付けのためにフラット回路体に設けられる取付孔は、フラット回路体の絶縁被覆材上に形成されるため、フラット回路体の幅内に取付孔を配置することができ、樹脂製テープに取付孔を装備していた従来の場合と比較すると、取付孔の周辺部が外側に突出しない。そのため、保管時や運搬時等に取付孔の周辺部が周囲の器物との干渉で変形することを防止することができる。従って、取付作業時間の遅延を招く変形等が取付孔周辺部に発生することを抑止して、取付作業時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るフラット回路体の取付方法で筐体にフラット回路体が取り付けられている状態の斜視図である。
【図2】図1に示したフラット回路体の単体での斜視図である。
【図3】図2に示したフラット回路体の平面図である。
【図4】図1に示した筐体の斜視図である。
【図5】筐体に装備される樹脂製柱状突起の斜視図である。
【図6】フラット回路体を筐体に取り付ける作業工程の説明図で、フラット回路体を筐体上に載置する工程の斜視図である。
【図7】フラット回路体を筐体に取り付ける作業工程の説明図で、スリットと樹脂製柱状突起との嵌合によってフラット回路体が筐体上に位置決めされた状態の斜視図である。
【図8】樹脂製柱状突起の頂部に、加熱成形により拡径頂部が形成された状態の斜視図である。
【図9】従来のフラット回路体の取付方法を示す斜視図である。
【図10】(a)は従来のフラット回路体の取付方法においてフラット回路体を柱状突起対間に配置する工程の説明図、(b)は柱状突起対間のフラット回路体を固定する工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るフラット回路体の取付方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
図1〜図8は本発明に係るフラット回路体の取付方法の一実施形態を示したもので、図1は本発明の一実施形態のフラット回路体の取付方法で筐体にフラット回路体が取り付けられている状態の斜視図、図2は図1に示したフラット回路体の単体での斜視図、図3は図2に示したフラット回路体の平面図、図4は図1に示した筐体の斜視図、図5は筐体に装備される樹脂製柱状突起の斜視図、図6はフラット回路体を筐体に取り付ける作業工程の説明図で、フラット回路体を筐体上に載置する工程の斜視図である。図7はフラット回路体を筐体に取り付ける作業工程の説明図で、スリットと樹脂製柱状突起との嵌合によってフラット回路体が筐体上に位置決めされた状態の斜視図、図8は樹脂製柱状突起の頂部に、加熱成形により拡径頂部が形成された状態の斜視図である。
【0036】
この一実施形態のフラット回路体の取付方法は、絶縁被覆材で被覆された複数の電線が平面状に結合した構造を成すフラット回路体10を、樹脂製の筐体20に固定する方法である。
【0037】
フラット回路体10は、図2及び図3に示すように、電線導体となる複数本の導体11と、これらの複数本の導体11相互を互いに絶縁状態に覆う絶縁被覆材12と、この絶縁被覆材12上に形成された取付孔としてのスリット13と、を備える。絶縁被覆材12は、絶縁性フィルムで、複数本の導体11相互を所定の離間間隔で平面状に保持している。
【0038】
本実施形態のフラット回路体10は、絶縁性フィルム間に複数本の導体11を保持した構成で、全体としては、シート状を呈している。このようなフラット回路体10としては、FPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)と呼称されている配線材、及びリボン電線等が該当する。
【0039】
本実施形態の場合、スリット13は、図3に示すように、隣接する導体11間の絶縁被覆材12上に、導体11の長手方向に沿って延びる直線状の形態に形成されている。スリット13は、フラット回路体10の長さ方向に沿って適宜間隔で、複数装備される。本実施形態の場合、隣接するスリット13相互は、フラット回路体10の幅方向に位置をずらすと共に、フラット回路体10の長さ方向にも位置をずらした配置で、所謂千鳥状の配置で形成されている。各スリット13の長さLは、後述する筐体20上の樹脂製柱状突起21に対応して設定される。各スリット13の長さLについては、後述する。
【0040】
筐体20は、車両のインストルメントパネルや、ドアトリムなど、車体の内装に使用される各種の構造用樹脂部品であり、図4に示すように、フラット回路体10を配索する領域(以下、配索領域という)Sに、樹脂製柱状突起21が突設されている。樹脂製柱状突起21は、図5に示すように、フラット回路体10のスリット13に挿通可能な直径dの円柱状の突起である。樹脂製柱状突起21は、フラット回路体10上におけるスリット13の配列に対応して、配索領域Sに千鳥状に装備されている。
【0041】
本実施形態のフラット回路体の取付方法では、図6に矢印Y1で示すようにフラット回路体10を筐体20の配索領域Sに押し付けて、図7に示すように、筐体20上の樹脂製柱状突起21をフラット回路体10上のスリット13に挿通させる。図7に示すように樹脂製柱状突起21をスリット13に挿通させることで、フラット回路体10を筐体20上に位置決めすることができる。
【0042】
その後、図1に示すように、スリット13を挿通している樹脂製柱状突起21の頂部を加熱成形により拡径させた拡径頂部21aを形成する。本実施形態の場合、拡径頂部21aは、樹脂製柱状突起21と同心で、図8に示すように、直径Dの円柱状である。本実施形態の場合、スリット13の長さLと樹脂製柱状突起21の直径dと拡径頂部21aの直径Dとは、次の(1)式に示す関係に設定される。
d×π/2<L<D×π/2 ……(1)
【0043】
従って、図1に示すように拡径頂部21aを形成することで、スリット13から樹脂製柱状突起21が抜けることを防止して、フラット回路体10が筐体20に固定された状態を得ることができる。
【0044】
以上に説明した一実施形態のフラット回路体の取付方法では、筐体20への取り付けのためにフラット回路体10に設けられる取付孔は、フラット回路体10において導体11を被覆している絶縁被覆材12に直接形成されている。
【0045】
そのため、取付孔の装備のために、フラット回路体の絶縁被覆材とは別部材の樹脂製テープ等をフラット回路体に熱融着する必要がない。従って、フラット回路体10の製造時に別部品の熱融着工程が必要なく、フラット回路体10の生産性を向上させることができる。
【0046】
また、筐体20への取り付けのためにフラット回路体10に設けられる取付孔は、フラット回路体10の絶縁被覆材12上に形成されるため、フラット回路体10の幅内に取付孔を配置することができ、樹脂製テープに取付孔を装備していた従来の場合と比較すると、取付孔の周辺部が外側に突出しない。そのため、保管時や運搬時等に取付孔の周辺部が周囲の器物との干渉で変形することを防止することができる。従って、取付作業時間の遅延を招く変形等が取付孔周辺部に発生することを抑止して、取付作業時間の短縮を図ることができる。
【0047】
また、以上に説明した一実施形態のフラット回路体の取付方法では、筐体20への取り付けのためにフラット回路体10に設けられる取付孔は、隣接する導体11間に装備されており、取付孔を挟む導体11が、取付孔周辺部の補強材として機能する。
【0048】
そのため、取付孔の周囲の強度を高めて、筐体20に対するフラット回路体10の結合強度を向上させることもできる
【0049】
また、以上に説明した一実施形態のフラット回路体の取付方法では、スリット13の長さがLであるため、スリット13により提供される取付孔の内周は2Lで、樹脂製柱状突起21の外周の長さよりも大きく、拡径頂部21aの外周の長さよりも小さい。そのため、スリット13に樹脂製柱状突起21を挿通した後に拡径頂部21aを形成することで、拡径頂部21aを確実に抜け止めすることができ、確実にフラット回路体10を筐体20に固定することができる。
【0050】
なお、本発明のフラット回路体の取付方法は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
【0051】
例えば、フラット回路体上でのスリットの配置は、上記実施形態に示した千鳥状の配置に限るものではない。
【0052】
しかし、スリットを千鳥状に配置した構成では、例えば、フラット回路体の幅方向に対向する2位置にスリットを対にして設ける場合と比較すると、スリットや樹脂製柱状突起の装備数を押さえつつ、フラット回路体の幅方向両側を押さえることができ、スリットや樹脂製柱状突起の装備数の削減を図ることができる。
【0053】
また、樹脂製柱状突起の横断面形状は、円柱状に限らない。例えば、楕円形状や、任意の多角形状にすることもできる。
【符号の説明】
【0054】
10 フラット回路体
11 導体
12 絶縁被覆材
13 スリット
20 筐体
21 樹脂製柱状突起
21a 拡径頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆材で被覆された複数の電線が平面状に結合した構造を成すフラット回路体を、樹脂製の筐体に固定するフラット回路体の取付方法であって、
前記フラット回路体は、電線導体となる複数本の導体と、これらの複数本の導体相互を所定の離間間隔で平面状に保持するシート状の絶縁被覆材と、この絶縁被覆材上に形成された取付孔としてのスリットと、を備え、
前記筐体は、前記フラット回路体を配索する領域において前記スリットを挿通可能に突設された樹脂製柱状突起を備え、
前記筐体上の前記樹脂製柱状突起を前記フラット回路体上のスリットに挿通させることで、前記フラット回路体を前記筐体上に位置決めした後、前記スリットを挿通している前記樹脂製柱状突起の頂部を加熱成形により拡径させた拡径頂部を形成することにより、前記スリットから前記樹脂製柱状突起が抜けることを防止して、前記フラット回路体が前記筐体に固定された状態を得ることを特徴とするフラット回路体の取付方法。
【請求項2】
前記スリットは、隣接する前記導体間の前記絶縁被覆材上に、前記導体の長手方向に沿って延びる形態に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフラット回路体の取付方法。
【請求項3】
前記樹脂製柱状突起は直径dの円柱状、前記拡径頂部は直径Dの円柱状で、前記スリットの長さLは、d×π/2<L<D×π/2に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフラット回路体の取付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−13251(P2013−13251A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144499(P2011−144499)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】