説明

フラーレン誘導体およびそれを用いた有機光電変換素子

【課題】有機光電変換素子に用いた場合に、光電変換効率が高い化合物の提供。
【解決手段】下式で表されるフラーレン誘導体。


[式中、A環は炭素数70以上のフラーレン骨格を表す。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の複素環基等を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体およびそれを用いた有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
フラーレン誘導体は、電荷(電子、ホール)輸送性を有する有機半導体材料であるので、有機光電変換素子(有機太陽電池、光センサー等)等への適用が期待されている。有機半導体材料としてのフラーレン誘導体としては、炭素数70以上のフラーレンの誘導体が着目されており、C70フラーレンの[6,6]フェニル−酪酸メチルエステル誘導体(以下、[70]PCBMということがある。)が知られている。(非特許文献1)
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed.2003,42,3371−3375頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、[70]−PCBMを有機光電変換素子に用いた場合は、光電変換効率が必ずしも十分でないという問題点がある。
【0004】
そこで、本発明は、有機光電変換素子に用いた場合に、優れた光電変換効率を付与しうる炭素数70以上のフラーレンの誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は第一に、式(1)で表されるフラーレン誘導体を提供する。

(1)
[式(1)中、A環は炭素数70以上のフラーレン骨格を表す。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基または下記式(2)で示される基を表す。]

(2)
[式(2)中、mは1〜6の整数を、nは1〜4の整数を、pは0〜5の整数を表す。Xは、メチル基または置換基を有していてもよいアリール基を表す。mが複数個ある場合、複数のmは同一でも異なっていてもよい。]
【0006】
本発明は第二に、炭素数70以上のフラーレンと式(3)で表されるグリシン誘導体および式(4)で表されるアルデヒド化合物を反応させる前記フラーレン誘導体の製造方法を提供する。

(3) (4)
(式(3)中のR1およびR3、(4)中のR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の複素環基または式(2)で示される基を表す。)
【0007】
本発明は第三に、前記反応で得られた反応生成物を、芳香族炭化水素および酢酸エステルを展開溶媒として用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する式(1)で表されるフラーレン誘導体の精製方法を提供する。
【0008】
本発明は第四に、式(1)で表されるフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物を提供する。
【0009】
本発明は第五に、式(1)で表されるフラーレン誘導体を含む層を有する有機光電変換素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炭素数70以上のフラーレンの誘導体を用いれば、優れた光電変換効率を示す有機光電変換素子を製造することができるので、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
<フラーレン誘導体>
本発明のフラーレン誘導体は、炭素数70以上のフラーレン骨格を有し、前記式(1)で表される。式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基または下記式(2)で示される基を表す。前記アルキル基は、炭素数が通常1〜20であり、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基でもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、3−メチルブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基等が挙げられる。前記アルキル基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、モノハロメチル基、ジハロメチル基、トリハロメチル基、ペンタハロエチル基等があげられる。ハロゲン原子の中では、フッ素原子で置換されていることが好ましい。フッ素原子で水素原子が置換されたアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。
【0013】
前記アリール基は、炭素数が通常6〜60であり、置換基を有していてもよい。アリール基が有している置換基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基、式(2)で示される基があげられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基がより好ましい。前記アリール基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子の中では、フッ素原子で置換されていることが好ましい。
【0014】
前述のC1〜C20アルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルオキシ基であってもよい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ラウリルオキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子の中では、フッ素原子で置換されていることが好ましい。フッ素原子で水素原子が置換されたアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。
【0015】
前記アリールアルキル基は、炭素数が通常7〜60であり、置換基を有していてもよい。アリールアルキル基が有している置換基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基、式(2)で示される基があげられる。アリールアルキル基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基等が挙げられる。
【0016】
前記1価の複素環基は、複素環化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。1価の複素環基の炭素数は通常4〜60程度、好ましくは4〜20である。なお、前記の1価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。前記複素環化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、燐、硼素、珪素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。1価の複素環基としては、芳香族の複素環基が好ましい。1価の複素環基の具体例としては、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられ、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0017】
前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。有機光電変換素子に用いた場合の変換効率の観点からは、フッ素原子が好ましい。
【0018】
前記式(2)で示される基において、mは1〜6の整数を、nは1〜4の整数を、pは0〜5の整数を表す。mが複数個ある場合、複数のmは同一でも異なっていてもよい。有機光電変換素子に用いた場合の変換効率の観点からは、mは2であることが好ましく、nは2であることが好ましく、pは0であることが好ましい。また、Xは、メチル基または置換基を有していてもよいアリール基を表す。置換基を有していてもよいアリール基の具体例としては、前記R1で説明した基と同じ基があげられる。
【0019】
式(1)式で表されるフラーレン誘導体としては、具体的には下記式のような化合物が例示される。
【0020】

【0021】

【0022】

(式中、A環は前述と同じ意味を表す。)
【0023】
式(1)中のR1は、有機光電変換素子に用いた場合の光電変換効率の観点からは、式(2)で示される基であることあることが好ましい。
【0024】
式(1)中のR2およびR3は、有機光電変換素子に用いた場合の光電変換効率の観点からは、R2が置換基を有していてもよいアリール基であり、R3が水素原子であることあることが好ましい。
【0025】
式(1)中のA環は炭素数70以上のフラーレン骨格を表す。フラーレンの骨格(炭素クラスター)の炭素数は、好ましくは960以下、より好ましくは240以下、更に好ましくは96以下である。特に炭素数70のフラーレンが、合成の行いやすさの観点からは好ましい。
【0026】
<フラーレン誘導体の製造方法>
本発明のフラーレン誘導体は、炭素数70以上のフラーレン、前記式(3)で表されるグリシン誘導体および前記式(4)で表されるアルデヒド化合物を反応させて製造することができる。具体的には、グリシン誘導体とアルデヒド化合物との反応によりイミンが生成し、該イミンの脱炭酸によりイミニウムカチオンを生成し、該イミニウムカチオンと炭素数70以上のフラーレンとの1,3-双極子環化付加反応(Prato反応、Accounts of Chemical Research Vol.31 1998 519-526ページ)によりフラーレン誘導体を生成する。
【0027】
式(3)で表されるグリシン誘導体としては、N−メチルグリシン、N−オクチルグリシン、N−フェニルグリシン、N−メトキシメチルグリシン、N−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)グリシンなどが例示される。反応に用いるグリシン誘導体の量は、炭素数70以上のフラーレン1モルに対して、通常0.1〜10モルであり、好ましくは0.5〜3モルの範囲である。
【0028】
式(4)で表されるアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒドなどが例示される。反応に用いるアルデヒド化合物の量は、炭素数70以上のフラーレン1モルに対して、通常0.1〜10モルであり、好ましくは0.5〜4モルの範囲である。
【0029】
上記反応は、溶媒中で行なわれる。溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン、クロルベンゼン等の反応に対して不活性な溶媒が用いられる。溶媒量は、炭素数70以上のフラーレン1重量部に対して、通常1〜10000重量部である。
【0030】
反応に際しては、炭素数70以上のフラーレン誘導体、グリシン誘導体およびアルデヒド化合物を溶媒中で混合し加熱反応させればよく、反応温度は、通常50〜350℃の範囲で行なわれる。反応時間は、通常、30分間から50時間行なわれる。加熱反応後、反応物を室温まで放冷し、溶媒をロータリーエバポレーターで減圧留去することで、反応混合物が得られる。
【0031】
前記反応混合物には、通常、本発明のフラーレン誘導体、反応の副生物および未反応の原料等を含む。該反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー法により分離精製し、フラーレン誘導体を得ることができる。
高純度のフラーレン誘導体を得るためには、二硫化炭素と酢酸エステルをシリカゲルカラムクロマトグラフィーの展開溶媒として用いること、または、芳香族炭化水素と酢酸エステルをシリカゲルカラムクロマトグラフィーの展開溶媒として用いることが好ましく、芳香族炭化水素と酢酸エステルをシリカゲルカラムクロマトグラフィーの展開溶媒として用いることがより好ましい。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィーの中では、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いることが好ましい。
【0032】
ここで得られるフラーレン誘導体としては、N−メチルフレロピロリジン、N−エチルフレロピロリジン、N−メトキシエトキシエチルフレロピロリジン、N−メトキシエトキシエチルフレロピロリジン、N-エチル−2−(1-フェニル)フレロピロリジン、N−メトキシエトキシエチル−2−(1−ナフチル)フレロピロリジンなどのビリミジン化合物から誘導される基と炭素数70以上のフラーレンが結合したフラーレン誘導体があげられる。
【0033】
<有機光電変換素子>
本発明のフラーレン誘導体を用いる有機光電変換素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に本発明のフラーレン誘導体を含む層を有する。本発明のフラーレン誘導体は、電子受容性化合物として用いることも電子供与性化合物として用いることもできるが、電子受容性化合物として用いることが好ましい。本発明のフラーレン誘導体を電子受容性化合物として用いる場合、本発明のフラーレン誘導体のみを用いて有機光電変換素子に含まれる層を形成してもよく、本発明のフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物を用いて有機光電変換素子に含まれる層を形成してもよい。前記電子供与性化合物としては、高分子化合物が好ましい。
【0034】
次に、有機光電変換素子の動作機構を説明する。透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーが電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物で吸収され、電子とホールの結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0035】
本発明のフラーレン誘導体を用いる有機光電変換素子の具体的としては、
1.少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物として本発明のフラーレン誘導体を含有する第一の有機層と、該第一の有機層に隣接して設けられた電子供与性化合物を含有する第二の有機層とを有する有機光電変換素子であることを特徴とするもの、
2.少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物として本発明のフラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する有機層を少なくとも一層有する有機光電変換素子であることを特徴とするもの、
のいずれかが好ましい。
【0036】
このような観点から、本発明の有機光電変換素子としては、ヘテロ接合界面を多く含むという観点からは、前記2.が好ましい。また、本発明の有機光電変換素子には、少なくとも一方の電極と該素子中の有機層との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、例えば、ホール又は電子を輸送する電荷輸送層が挙げられる。
【0037】
また、前記2.の有機光電変換素子では、本発明のフラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する有機層におけるフラーレン誘導体の割合が、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、50〜500重量部であることがより好ましい。
【0038】
本発明のフラーレン誘導体を含む有機層は、該フラーレン誘導体を含む有機薄膜を含むことが好ましい。該有機薄膜の厚さは、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0039】
前記電子供与性化合物は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ポルフィリン、金属ポルフィリン、オリゴチオフェン、テトラセン、ペンタセン、ルブレン等が挙げられる。高分子化合物としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。塗布性の観点からは、高分子化合物が好ましい。
【0040】
有機光電変換素子の変換効率の観点からは、有機光電変換素子に用いる電子供与性化合物は、下記式(5)で表される繰り返し単位および下記式(6)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましく、下記式(5)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることがより好ましい。


(5) (6)
[式(5)および(6)中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。]
【0041】
式(5)中、R4およびR5がアルキル基である場合の具体例としては、前述のR1の場合と同様の基があげられる。R4およびR5がアリール基である場合の具体例としては、前述のR1の場合と同様の基があげられる。
【0042】
4およびR5で表されるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルオキシ基であってもよい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ラウリルオキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子の中では、フッ素原子で置換されていることが好ましい。フッ素原子で水素原子が置換されたアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。
【0043】
式(5)中、有機光電変換素子の変換効率の観点からは、R4およびR5の少なくとも一方が、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜8のアルキル基であることがより好ましい。
【0044】
前記式(6)中、R6〜R13がアルキル基である場合の具体例としては、前述のR1の場合と同様の基があげられる。R6〜R13がアルコキシ基である場合の具体例としては、前述のR4の場合と同様の基があげられる。R6〜R13がアリール基である場合の具体例としては、前述のR1の場合と同様の基があげられる。
【0045】
式(6)中、モノマーの合成の行いやすさの観点からは、R8〜R13は水素原子であることが好ましい。また、有機光電変換素子に用いた場合の変換効率の観点からは、R6およびR7は炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数5〜8のアルキル基または炭素数6〜15のアリール基であることがより好ましい。
【0046】
電子供与性化合物として用いられる高分子化合物の具体例は、例えば、式(7)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物があげられる。

(7)
【0047】
本発明の有機光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0048】
前記の透明又は半透明の電極材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。さらに電極材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができ、好ましくは一対の電極のうち一方の電極は仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0049】
付加的な層としてのバッファ層として用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物等を用いることができる。また、酸化チタン等無機半導体の微粒子を用いることもできる。
【0050】
<有機薄膜の製造方法>
前記有機薄膜の製造方法は、特に制限されず、例えば、本発明のフラーレン誘導体を含む溶液からの成膜による方法が挙げられる。
【0051】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒等が挙げられる。前記フラーレン誘導体は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0052】
前記溶液は、さらに高分子化合物を含んでいてもよい。該溶液に用いられる溶媒の具体例としては、前述の溶媒があげられるが、高分子化合物の溶解性の観点からは、炭化水素系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレンがより好ましい。
【0053】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0054】
有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0055】
また、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
合成に用いた試薬および溶媒は、市販品をそのまま使用するか、乾燥剤存在下蒸留精製した品を使用した。NMRスペクトルはJEOL社製 MH500を用いて測定し、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準に使用した。赤外吸収スペクトルは島津製作所社製 FT−IR 8000を用いて測定した。MALDI−TOF MSスペクトルはBRUKER AutoFLEX−T2を用いて測定した。
【0058】
ベンジル(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ)アセテートの合成

Step 1: Dean-Stark トラップを装着した2口フラスコにブロモ酢酸 (20.8 g, 150 mmol)、ベンジルアルコール(16.2 g, 150 mmol)、パラートルエンスルホン酸 (258 mg, 1.5 mmol)、ベンゼン (300 mL)を加え120 ℃ で 24 時間脱水縮合した。溶媒をエバポレーターで減圧留去し、ついでシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒:ヘキサン/エチルアセテート=10/1, 5/1)で精製してブロモ酢酸ベンジルエステル(34.3 g, 150 mmol) を黄色油状物として定量的に得た。: Rf 0.71 (hexane/ethyl acetate=4/1); 1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3, J=Hz) δ 3.81 (s, 2H), 5.14 (s, 2H), 7.31 (s, 5H); 13C NMR (125 MHz, ppm, CDCl3) δ 25.74, 67.79, 128.27, 128.48, 128.54, 134.88, 166.91; IR (neat, cm-1) 2959, 1751, 1458, 1412, 1377, 1167, 972, 750, 698.
【0059】
Step 2: アルゴン雰囲気下ブロモ酢酸ベンジルエステル (13.7 g, 60 mmol) のジクロロメタン(90 mL) 溶液にトリエチルアミン (17 mL, 120 mmol)を0 ℃ で加え、得られた混合液を20分同温度で攪拌し、ついで、2−(2−アミノエトキシ)エタノール (12 mL, 120 mmol) のジクロロメタン (40 mL) 溶液を加え,室温で4時間攪拌した。ついで、有機層を水洗(3回)後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターで溶媒を減圧留去後、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒:酢酸エチル /メタノール =1/0, 10/1, 5/1) 精製しグリシンエステル 2 (12.2 g, 48.0 mmol) を収率 80 % で無色油状物として得た。: Rf 0.48 (エチルアセテート/メタノール=2/1); 1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3, J=Hz) δ 2.83 (t, 2H, J=5.1 Hz), 3.50 (s, 2H), 3.52 (t, 2H, J= 4.6 Hz), 3.58 (t, 2H, J= 5.0 Hz), 3.65 (t, 2H, J= 4.6 Hz), 5.11 (s, 2H), 7.28-7.30 (m, 5H); 13C NMR (125 MHz, ppm, CDCl3) δ 48.46, 50.25, 61.29, 66.38, 69.80, 72.23, 126.63, 128.12, 128.37, 135.30, 171.78; IR (neat, cm-1) 3412, 2880, 1719, 1638, 1560, 1508, 1458, 1067, 669.
【0060】
(2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミノ)酢酸(1)の合成

Step 1: アルゴン雰囲気下ベンジル2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ)アセテート(2) (6.58 g, 26 mmol) のジクロロメタン (50 mL) 溶液にトリエチルアミン (4.3 mL, 31 mmol)を0℃で加え、ついで4−(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン (DMAP) (32 mg, 0.26 mmol) を加え、得られた混合液を20分攪拌後、これにジ-tert-ブチルジカルボネート (6.77 g, 31 mmol) のジクロロメタン(10 mL)溶液を滴下した。反応混合液を室温で4時間攪拌後、水を入れた3角フラスコ中に注ぎ入れて反応を停止しジエチルエーテル抽出(3回)を行った。有機層を乾燥後、減圧濃縮、ついでシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル= 3/1, 2.5/1, 2/1) 精製を行い、ベンジル{tert-ブトキシカルボニル−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(5.83 g, 16.5 mmol) を収率 63 % で無色油状物として得た。: Rf 0.58 (エチルアセテート/メタノール=20/1); 1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3, J=Hz) δ 1.34 (d, 9H, J= 54.5 Hz), 2.19 (brs, 1H), 3.38-3.45 (m, 4H), 3.50-3.60 (m, 4H), 3.99 (d, 2H, J= 41.3 Hz), 5.09 (d, 2H, J= 4.1 Hz), 7.25-7.30 (m, 5H); 13C NMR (125 MHz, ppm, CDCl3) δ 27.82, 28.05, 47.90, 48.20, 49.81, 50.39, 61.23, 66.42, 69.92, 72.12, 80.08, 127.93, 128.14, 135.25, 154.99, 155.19, 169.94, 170.07; IR (neat, cm-1) 3449, 2934, 2872, 1751, 1701, 1458, 1400, 1367, 1252, 1143; Anal. Calcd for C18H27NO6: C, 61.17; H, 7.70; N, 3.96. Found: C, 60.01; H, 7.75; N, 4.13.
【0061】
Step 2: アルゴンガス雰囲気下、水素化ナトリウム (1.2 g, 24.8 mmol, 50% in meneral oil) のテトラヒドロフラン(THF) (10 mL)溶液にベンジル{tert-ブトキシカルボニル−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(5.83 g, 16.5 mmol)のTHF (20 mL) 溶液を 0 ℃ で滴下し、同温度で20分攪拌後、ヨードメタン(1.6 mL, 24.8 mmol) を0 ℃で加えた。 反応混合液を室温で 20 時間攪拌し、ついでアイスバスで冷却しながら水を加えて反応を停止した.エーテル抽出(3回)し,有機層を乾燥後,減圧濃縮、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1, 3/1)精製して ベンジル{tert-ブトキシカルボニル−[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(3.02 g, 8.21 mmol) を収率50 %で無色油状物として得た。: Rf 0.54 (ヘキサン/エチルアセテート=1/1); 1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3, J=Hz) δ 1.34 (d, 9H, J= 51.8 Hz), 3.28 (d, 3H, J= 2.7 Hz), 3.37-3.46 (m, 6H), 3.52 (dt, 2H, J= 5.4Hz, 16.5 Hz), 4.02 (d, 2H, J= 34.8 Hz), 5.09 (d, 2H, J=4.5 Hz), 7.24-7.30 (m, 5H); 13C NMR (125 MHz, ppm, CDCl3) δ 24.93, 25.16, 44.68, 45.00, 46.70, 47.40, 55.78, 63.30, 67.22, 68.60, 76.95, 124.98, 125.14, 125.36, 132.49, 151.99, 152.31, 166.84, 166.96; IR (neat, cm-1) 2880, 1751, 1701, 1560, 1458, 1400, 1366, 1117, 698, 617; Anal. Calcd for C19H29NO6: C, 62.11; H, 7.96; N, 3.81. Found: C, 62.15; H, 8.16; N, 3.83.
【0062】
Step 3: アルゴン雰囲気下、ベンジル{tert-ブトキシカルボニル−[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート (3.02 g, 8.21 mmol) のジクロロメタン (17 mL) 溶液にトリフルオロ酢酸 (TFA) (9.0 mL)を加え室温で7時間攪拌した。ついで、10% 炭酸ナトリウム水溶液を加えて pH10に調整し、ジクロロメタン抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮してベンジル[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチルアミノ]アセテート (2.18 g, 8.19 mmol) を黄色油状物として定量的に得た。: Rf 0.32 (エチルアセテート/メタノール=20/1); 1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3, J=Hz) δ 1.99 (brs, 1H), 2.83 (t, 2H, J= 5.3 Hz), 3.38 (s, 3H), 3.50 (s, 2H), 3.54 (t, 2H, J= 4.6 Hz), 3.60-3.62 (m, 4H), 5.17 (s, 2H), 7.32-7.38 (m, 5H); 13C NMR (125 MHz, ppm, CDCl3) δ 48.46, 50.66, 58.76, 66.20, 70.00, 70.44, 71.64, 128.09, 128.33, 135.44, 171.84; IR (neat, cm-1) 3350, 2876, 1736, 1560, 1458, 1117, 1030, 698, 619; Anal. Calcd for C14H21NO4: C, 62.90; H, 7.92; N, 5.24. Found: C, 62.28; H, 8.20; N, 5.05.
【0063】
Step 4: ベンジル[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチルアミノ]アセテート(2.19 g, 8.19 mmol) のメタノール (27 mL) 溶液に、パラジウムを10重量%担持させた活性炭 (219 mg) を室温で加え、水素ガスをパージした後,水素雰囲気下、室温で7時間攪拌した。セライトパッドをしきつめたグラスフィルターでPd/Cを除去し、セライト層をメタノールで洗浄し、濾液を減圧濃縮し [2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミノ]酢酸 (1) (1.38 g, 7.78 mmol) を収率95%で黄色油状物として得た。: 1H NMR (500 MHz, ppm, MeOD, J=Hz) δ 3.21 (t, 2H, J= 5.1 Hz), 3.38 (s, 3H), 3.51 (s, 2H), 3.57 (t, 2H, J= 4.4 Hz), 3.65 (t, 2H, J= 4.6 Hz), 3.73 (t, 2H, J= 5.1 Hz); 13C NMR (125 MHz, ppm, MeOD) δ 48.13, 50.49, 59.16, 67.08, 71.05, 72.85, 171.10; IR (neat, cm-1) 3414, 2827, 1751, 1630, 1369, 1111, 1028, 851, 799; Anal. Calcd for C7H15NO4: C, 47.45; H, 8.53; N, 7.90. Found: C, 46.20; H, 8.49; N, 7.43.
【0064】
実施例1(フラーレン誘導体1の合成)
ジムロートコンデンサーを装着した3口フラスコに,C70(フロンティアカーボン社製)(100mg,0.12mmol)、グリシン誘導体1(32mg,0.18mmol)、および1−ナフトアルデヒド(37mg,0.24mmol)、クロロベンゼン(30mL)を混合し,アルゴン雰囲気下150℃で1時間加熱還流を行った。室温まで放冷し、溶媒をロータリーエバポレーターで減圧留去し、得られた固形物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製し(展開溶媒:二硫化炭素/酢酸エチル=1/0〜20/1)、目的とするフラーレン誘導体(化合物4)(68mg,0.06mmol, 収率51%)を得た。本フラーレン誘導体を、フラーレン誘導体1とよぶ。
Rf0.3(トルエンのみ);IR(KBr)2874,1427,1132,1103,795,752cm-1
MALDI-TOF-MS (matrix: SA) found 1111.428 (calcd for C87H21NO2, exact mass: 1111.16).

【0065】
実施例2(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
電子供与体としてレジオレギュラーポリ3−ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、ロット番号:01004AH、Mw=43000、Mn=22000)を1%(重量%)の濃度でo−ジクロロベンゼンに溶解させた。その後、フラーレン誘導体1の位置異性体混合物を電子供与体の重量に対して等倍重量電子受容体として溶液に混合した。ついで、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液を作製した。
【0066】
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。次に、前記塗布溶液を用い、スピンコートにより塗布し、有機薄膜太陽電池の活性層(膜厚約100nm)を得た。その後、真空中90℃の条件で60分間ベークを行った。その後、真空蒸着機によりフッ化リチウムを4nmの厚さで蒸着し、次いでAlを100nmの厚さで蒸着した。蒸着のときの真空度は、すべて1〜9×10-3Paであった。また、得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた有機薄膜太陽電池の光電変換効率は、ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して求めた。結果を表1に示す。
【0067】
比較例1(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
フラーレン誘導体1のかわりに[70]PCBMを用いた以外は、実施例2同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を求めた。結果を表1に示す。なお、[70]PCBMは、商品名ADS71BFA(アメリカンダイソース社製、ロット番号:07L022E)を用いた。
【0068】
実施例3(フラーレン誘導体2の合成)
アルゴン雰囲気下、ジムロートコンデンサーを装着した3口フラスコにC70(アルドリッチ社製)(194mg、0.23mmol)、グリシン誘導体1(80mg、0.45mmol)、および1−ナフトアルデヒド(0.1g、0.64mmol)、トルエン(500mL)を混合し、10時間加熱還流を行った。室温まで放冷し、溶媒をロータリーエバポレータで減圧留去し、得られた固形物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製し(展開溶媒:二硫化炭素/酢酸エチル=1/0〜95/5)、得られた結晶をトルエン/メタノール混合溶媒で再結晶することで目的とするフラーレン誘導体(化合物5)(54mg、21%)を位置異性体混合物として得た(褐色粉末、TLC:Rf=0.52 (トルエン))。本フラーレン誘導体を、フラーレン誘導体2と呼ぶ。

【0069】
(液体クロマトグラフィー分析)
フラーレン誘導体の位置異性体混合物5mgを5mLのトルエン(溶媒)に溶解させた。本溶液5μLを液体クロマトグラフィー(アライアンス2690型、Waters社製)に注入した。液体クロマトグラフィーの移動相はトルエン/アセトニトリル(55/45,体積比)であり、流量は1mL/minであった。面積百分率法によりもとめた(溶媒トルエンを除く)液体クロマトグラムの、フラーレン誘導体2の位置異性体混合物の面積百分率値は59.5%であった。
【0070】
実施例4(フラーレン誘導体3の合成)
シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いた精製条件を、(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=1/0 〜 95/5)とした以外は実施例2と同様の方法でフラーレン誘導体の位置異性体混合物を合成した。本フラーレン誘導体をフラーレン誘導体3と呼ぶ。面積百分率法によりもとめた(溶媒トルエンを除く)液体クロマトグラムの、フラーレン誘導体3の位置異性体混合物の面積百分率値は82.5%であった。
【0071】
実施例5(フラーレン誘導体4の合成)
フラーレン C70 (250 mg, 0.30 mmol)、グリシン誘導体 1 (79 mg, 0.45 mmol)及び4-メトキシベンズアルデヒド(81 mg, 0.60 mmol)にクロロベンゼン50mLを加え、2時間加熱還流した。実施例1と同様の操作で精製を行い、フラーレン誘導体4を121 mg (0.11 mmol, 37 %) 得た。
1H NMR (400 MHz, ppm, CDCl3, J= Hz) δ; 13C NMR (100 MHz, ppm, CDCl3) δ; IR (Neat, cm-1) 3443, 2866, 2805, 1609, 1508, 1427, 1032, 1248, 1171, 1131, 1105, 1030, 833, 795, 727, 640, 581, 534; MALDI-TOF-MS (matrix: SA) found 1091.4326 (calcd for C84H21NO3+exact Mass: 1091.1521)。

フラーレン誘導体4
【0072】
実施例6(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
フラーレン誘導体1のかわりにフラーレン誘導体4を用いた以外は、実施例2同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を求めた。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
−評価−
表1から分かるように、フラーレン誘導体1の位置異性体混合物は、[70]PCBMに比べて有機光電変換素子に用いた場合に高い光電変換効率を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるフラーレン誘導体。

(1)

[式(1)中、A環は炭素数70以上のフラーレン骨格を表す。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基または下記式(2)で示される基を表す。]

(2)
[式(2)中、mは1〜6の整数を、nは1〜4の整数を、pは0〜5の整数を表す。Xは、メチル基または置換基を有していてもよいアリール基を表す。mが複数個ある場合、複数のmは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
1が式(2)で示される基である請求項1に記載のフラーレン誘導体。
【請求項3】
2が置換基を有していてもよいアリール基であり、R3が水素原子である請求項1または2に記載のフラーレン誘導体。
【請求項4】
A環が炭素数70のフラーレン骨格である請求項1〜3のいずれかに記載のフラーレン誘導体。
【請求項5】
炭素数70以上のフラーレン、式(3)で表されるグリシン誘導体および式(4)で表されるアルデヒド化合物を反応させる請求項1に記載のフラーレン誘導体の製造方法。

(3) (4)
(式(3)中のR1およびR3、(4)中のR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の複素環基または式(2)で示される基を表す。)
【請求項6】
請求項5に記載の反応で得られた反応生成物を、芳香族炭化水素および酢酸エステルを展開溶媒として用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する式(1)で表されるフラーレン誘導体の精製方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物。
【請求項8】
電子供与性化合物が高分子化合物である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載のフラーレン誘導体を含む層を有する有機光電変換素子。
【請求項10】
請求項7または8に記載の組成物を含む層を有する有機光電変換素子。

【公開番号】特開2009−137932(P2009−137932A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128099(P2008−128099)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】