フラーレン誘導体とその製造方法、並びにこれを用いたアレルゲン吸着剤
【課題】 花粉症を引き起こす原因となるアレルゲンを短時間で効率的に吸着して再放出せず、人体に悪影響を及ぼす金属などを含まず、そして各種の材料の表面に塗布、含浸、または化学的に結合させやすい、新規なフラーレン誘導体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 フラーレン核にハロゲン基および多数の水酸基が直接に結合していることを特徴とするフラーレン誘導体である。ハロゲン基が塩素の場合は、塩素化フラーレンの部分水酸化または水酸化フラーレンの部分塩素化により合成することができる。
【解決手段】 フラーレン核にハロゲン基および多数の水酸基が直接に結合していることを特徴とするフラーレン誘導体である。ハロゲン基が塩素の場合は、塩素化フラーレンの部分水酸化または水酸化フラーレンの部分塩素化により合成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲンを速やかに吸着するフラーレン誘導体ならびにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国における花粉症患者は国民全体の約2割に達すると推定されているが、その数の多さに比して、根源的な治療法が確立されていないのが現状である。そのため、医療的には対症療法や減感作療法が行われているものの、安価かつ簡便な主な花粉対策としては、マスクの着用や空気清浄機の使用が依然として効果を挙げている。また、このような状況は、世界各国においても同様に見受けられる。
【0003】
これまでに、花粉やアレルゲンを吸着または不活性化する機能を有する物質や材料を、マスクやフィルター製品に使用することが提案されている。例えば、特開2000−5531号公報(特許文献1)では、茶ポリフェノールがアレルゲン物質のアレルギー活性を不活性化するものとして提案されている。特開2002−167332号公報(特許文献2)には、シリカや酸化チタンのような無機微粒子を不織布に含浸坦持させて、アレルゲンを吸着することが開示されている。特開2004−204401号公報(特許文献3)では、第四級アンモニウム塩のような正電荷をもつ官能基を有する高分子繊維を用いる花粉吸着材が提案されている。
【0004】
このように従来種々の対策が検討されてきたが、その除去効果については常に向上が期待されるばかりでなく、幅広い種類のアレルゲン、菌、またはウィルス等に対しても作用することを目指し、まったく新しいタイプのアレルゲン吸着剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−5531号公報
【特許文献2】特開2002−167332号公報
【特許文献3】特開2004−204401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような現状に鑑みて、花粉症を引き起こす原因となるアレルゲンを短時間で効率的に吸着して再放出せず、人体に悪影響を及ぼす金属などを含まない吸着剤を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、各種の材料の表面に塗布、含浸、または化学的に結合させやすい新規なフラーレン誘導体を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はそのような吸着剤またはフラーレン誘導体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水酸基とハロゲン基の両方を有することを特徴とするフラーレン誘導体により前記目的を達成した。
【0010】
本発明は、フラーレン核に水酸基とハロゲン基の両方が直接結合しているフラーレン誘導体であり、一般式CpXn(OH)m(pは60以上の偶数、Xはハロゲン基、nは0より大きな(0を含まない)48以下の数、mは0より大きな44以下の数)で表わされることを特徴とするフラーレン誘導体により前記目的を達成した。
【0011】
この場合、ハロゲン基は特に限定されないが、塩素、臭素、フッ素であることが好ましい。
【0012】
出発原料のフラーレンとしては、C60またはC70、或いはC60を含む、C70以上の高次フラーレンとの混合物を使用できる。
【0013】
また、本発明は、フラーレン核にハロゲン基が結合しているハロゲン化フラーレンを、一部のハロゲン基を残したまま、水酸基をフラーレン核に結合させて、部分ハロゲン化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法により前記目的を達成した。
【0014】
ハロゲン基が塩素である塩素化フラーレンの場合は、過酸化水素、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと反応させて、部分塩素化水酸化フラーレンを生成できる。
【0015】
ハロゲン基が臭素である臭素化フラーレンを水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと反応させて、部分臭素化水酸化フラーレンを生成できる。
【0016】
更に、本発明は、フラーレン核に水酸基が結合している水酸化フラーレンを、一部の水酸基を残したまま、ハロゲン基をフラーレン核に結合させて、部分ハロゲン化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法により前記目的を達成した。
【0017】
また、本発明は、フラーレン核に水酸基が結合している水酸化フラーレンを、塩化ヨウ素と反応させて、一部の水酸基を残したまま、塩素をフラーレン核に結合させて、部分塩素化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法により前記目的を達成した。
【0018】
本発明によれば、上述のフラーレン誘導体を含んでいるアレルゲン吸着剤を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフラーレン誘導体はフラーレン核に直接、水酸基およびハロゲン基が結合しており、人体に悪影響を及ぼす金属などを含んでいない。
【0020】
また、本発明のフラーレン誘導体は、花粉症を引き起こす原因となるアレルゲンを短時間で効率的に吸着することができ、しかも一旦吸着したアレルゲンを再放出することがない。すなわち、アレルゲンのような蛋白質はアミノ基やカルボキシル基を多数有することから、水酸基やハロゲン基のような分極能の高い官能基と化学的に相互作用しやすいので、アレルゲンを短時間で効率的に吸着することができる。
【0021】
なお、本発明者が鋭意研究したところ、アレルゲンのような蛋白質は親水性官能基を有しているので、フラーレンが親水性表面を有していることが必要と考えて、水酸化フラーレン(水酸基のみが結合しているフラーレン誘導体)を検討したが、充分な成果が得られなかった。本発明の水酸基とハロゲン基を併せ持ったフラーレン誘導体としたことにより、アレルゲンの吸着に関して充分な成果が得られた。
【0022】
本発明によれば、ナノサイズの球状炭素分子であるフラーレンの誘導体であるので、表面積を増大させることができ、吸着剤に適している。すなわち、吸着剤の重量が同じであれば、吸着剤の粒子径と表面積は反比例の関係にあり、粒子径が小さくなれば吸着の表面積が増大するので、本発明のフラーレン誘導体は吸着剤として適している。
【0023】
また、本発明のフラーレン誘導体は水酸基とハロゲン基を併せ持つものであり、親水性と疎水性とを併せ持つ両親媒性という特性を有している。このため、本発明のフラーレン誘導体は各種の材料の表面に塗布、含浸、または化学的に結合させることができる。
【0024】
本発明のフラーレン誘導体は花粉症の原因物質であるアレルゲン(スギ花粉の場合は蛋白質Cry j 1 が主要物質)の吸着剤として用いることができ、花粉除去効果の高いマスク、空気清浄機フィルターなどに応用することができる。
【0025】
本発明によれば、多数の水酸基とハロゲン基を併せ持つ新規なフラーレン誘導体を、比較的簡便な方法で製造することができる。すなわち、ハロゲン化フラーレンの部分水酸化または水酸化フラーレンの部分ハロゲン化により合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】水溶性水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oのフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)による赤外線吸収スペクトル図であり、縦軸に透過率、横軸に波数をとった。
【図2】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl10(OH)30・5H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図3】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl2(OH)38・6H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図4】水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図5】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl15(OH)15・9H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図6】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl5(OH)15・5H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図7】塩素化フラーレンC60Cl8のFT−IRスペクトル図である。
【図8】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl0.5(OH)35.5・8H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図9】塩素化フラーレンC60Cl28のFT−IRスペクトル図である。
【図10】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl3(OH)25・6H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図11】臭素化フラーレンC60Br16のFT−IRスペクトル図である。
【図12】部分臭素化水酸化フラーレンC60Br4.5(OH)9・4H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図13】各反応時間ごとのアレルゲン減少率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明による新規なフラーレン誘導体は水酸基とともにハロゲン基をフラーレン核に有しているものである。
【0029】
より具体的には、一般式CpXn(OH)m(pは60以上の偶数、Xはハロゲン基、nは0より大きな48以下の数、mは0より大きな44以下の数)で表わされるフラーレン誘導体である。
【0030】
なお、本発明のフラーレン誘導体は、二次結合水を含んでいても良いし、或いは含んでいなくても良い。水酸基数が少ない場合は二次結合水は含まれず、多くなるに従って二次結合水が含まれる傾向がある。
【0031】
本発明のフラーレン誘導体の製造に使用するフラーレンとしては、球状炭素分子であれば特に制限はないが、好ましくはC60、C70またはC60とC70以上の高次フラーレン(例えばC76、C78、C80、C84、C86など)との混合物である。実施例のフラーレンはC60であるが、フラーレンC60に限らず、化学・物理的性質が類似のフラーレンC70や、あるいはC60を含む混合フラーレン(C60、C70、高次フラーレンの混合物)を出発原料として行っても、同様な構造ならびに同様な性質を有する化合物が得られるものと考えられる。
【0032】
本発明におけるハロゲン基(X)は、周期表7B族に属する1価基の元素うち、フッ素(F)、塩素(Cl)および臭素(Br)が好ましい。
【0033】
本発明のフラーレン誘導体は、ハロゲン化フラーレンの水酸化(或いは加水分解)または水酸化フラーレンのハロゲン化(或いはハロゲン基置換反応)により、部分水酸化または部分ハロゲン化することにより製造する。置換反応が行われる場合は中程度の進行度合い(すなわち、部分水酸化または部分ハロゲン化)までしか行わない。純粋に付加反応のみが行われる場合は理論上は反応が終了するまで行ってもよい。
【0034】
ハロゲン化フラーレンの水酸化は主として置換反応により行なわれるので、一部のハロゲン基が残っている状態までしか反応を行わせない(反応条件、時間、試薬の当量等により制御できる)。また、ハロゲン化フラーレンを水酸化する際に水酸基の付加反応も同時に行われたり、二次結合水として含まれたりすることがある。
【0035】
水酸化フラーレンのハロゲン化は主として付加反応で行われるが、実施例によれば出発原料である水酸化フラーレンの水酸基数が多い場合は、反応後の生成物では水酸基数が減少しており、ハロゲン基の導入が置換反応により行われたものと考えられる。
【0036】
本発明のフラーレン誘導体の出発原料となるハロゲン化フラーレンまたは水酸化フラーレンは既に知られている。
【0037】
例えば、塩素化フラーレンC60Clnは、フラーレンC60を出発原料として塩素化したもので、その製造方法も下記の非特許文献1〜3により既に知られている。
〔非特許文献1〕J.Am.Chem.Soc.,1991,113,9900
〔非特許文献2〕J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1993,1230
〔非特許文献3〕Eur.J.Org.Chem.,2005,4951
フッ素化フラーレン、塩素化フラーレンおよび臭素化フラーレンの製造方法が下記特許文献4に開示されている。
〔特許文献4〕 特開2002−193861号公報
下記非特許文献4にはフッ素化フラーレンC60F48の製造方法が開示されている。
〔非特許文献4〕Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2285
下記非特許文献5には臭素化フラーレンC60Br16の製造方法が開示されている。
〔非特許文献5〕Science,1992,256,822
なお、本発明のフラーレン誘導体の製造方法において、出発原料となるハロゲン化フラーレンは、どのような方法で製造したものであってもよい。
【0038】
水酸化フラーレンC60(OH)mは、フラーレンC60を出発原料として水酸化したもので、その製造方法も既に知られている。例えば、
〔特許文献5〕 特開平7−48302号公報
〔特許文献6〕 国際公開WO2008/096763号公報
〔非特許文献6〕J.Org.Chem.,1994,59,3960
〔非特許文献7〕Synth.Commun.,2005,35,1803
〔非特許文献8〕ACS Nano,2008,2,327
などに開示されている方法により製造することができる。
【0039】
なお、本発明のフラーレン誘導体の製造方法において、出発原料となる水酸化フラーレンは、どのような方法で製造したものであってもよい。
【0040】
更に、ハロゲン化フラーレンのハロゲン基をすべて水酸基に置換する方法は下記文献に記載されている。
〔特許文献4〕 特開2002−193861号公報
〔非特許文献9〕Fullerenes,Nanotubes,and Carbon Nanostructures, 2005,13,331
上記のように従来からハロゲン化フラーレンや水酸化フラーレンは知られているが、本発明のフラーレン誘導体のようにハロゲン基と水酸基が共存した部分ハロゲン化水酸化フラーレン誘導体はこれまでに知られていない。
【0041】
ハロゲン基が塩素である場合、本発明のフラーレン誘導体は、フラーレンを塩素化フラーレンまたは水酸化フラーレンとした後に、或いは公知の塩素化フラーレンまたは水酸化フラーレンを使用して、塩素化フラーレンの部分水酸化(method A)または水酸化フラーレンの部分塩素化(method B)することにより合成することができる。例えば、フラーレンがC60である場合、下記化1に示すようになる。
【0042】
【化1】
塩素化フラーレンを部分水酸化(method A)する場合、導入される塩素置換基の数nは出発原料の塩素化フラーレン中の塩素置換基数n’と同じか、または水酸基への置換反応により減少している。部分水酸化の方法は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基触媒を用いた一般的な加水分解反応や、過酸化水素水を用いる水酸化反応があるが、これら手法に特に限定されるものではない。例えば、部分水酸化するための水酸化試薬としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの他に、LiOH、RbOH、CsOH、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2、TlOH、nBuN(OH)、Triton Bなどが挙げられる。
【0043】
水酸化フラーレンを部分塩素化(method B)する場合、導入される水酸基の数mは出発原料の水酸化フラーレン中の置換基数m’と同じか、または塩素への置換反応により減少するか、或いは反応処理中の操作により増加してもよい。部分塩素化の方法は、塩化ヨウ素(ICl)を用いる塩素化反応を実施例では示したが、この試薬に特に限定されるものではない。例えば、塩化ヨウ素の他に、POCl3、PCl5、SbCl5、VCl4、VOCl3、MoCl5、KICl4などが挙げられる。
【0044】
本発明の出発原料(ハロゲン化フラーレンまたは水酸化フラーレン)の製造、ハロゲン化フラーレンの水酸化または水酸化フラーレンのハロゲン化において使用可能な溶媒としては、例えば
o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、トリメチルベンゼン、キシレン、トルエン、ベンゼンなどの芳香族溶媒、
塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタンなどのハロゲン溶媒、
THF、エーテル、酢酸エチル、ジオキサン、DMF、DMSOなどの非プロトン性極性溶媒、
その他、二硫化炭素、アセトニトリルなどが考えられる。
【0045】
前記化1における数nおよびmに関しては特に制限はないが、nおよびmは少なくとも0より大きく、nはC60Cln’において知られている最大数30(前述の非特許文献3参照)より小さく、mはC60(OH)m’において知られている最大数44(前述の特許文献5参照)より小さい。また、それらの数については、一種類の異性体に固有の数であってもよく、たくさんの異性体混合物の平均数であってもよい。更に、これら置換基のフラーレン核の表面における導入位置については、特に特定されるものではない。
【0046】
ハロゲン基が臭素またはフッ素である場合も、上記化1と同様に臭素化フラーレンまたはフッ素化フラーレンを水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基触媒を用いた一般的な加水分解反応や、過酸化水素水を用いる水酸化反応により、部分水酸化すればよい。
【0047】
この場合も、合成されたフラーレン誘導体における臭素またはフッ素の置換基の数nは出発原料中の置換基数n’と同じか、または水酸基への置換反応により減少している。出発原料となる臭素化フラーレンまたはフッ素化フラーレンにおいて置換基数が多いものとして、前記非特許文献4および特許文献4に記載されているようにC60F48が知られているので、本発明のフラーレン誘導体におけるハロゲン基の置換基の数nは最大でも48以下である。
【0048】
本発明の合成方法は、フラーレンC60に限らず、化学・物理的性質が類似のフラーレンC70や、或いはC60を含む混合フラーレン(C60、C70、高次フラーレンの混合物)を出発原料として行っても、同様な構造ならびに同様な性質を有する化合物が得られるものと考えられる。
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0050】
<水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oの合成>
特許文献6に開示された方法により合成した。すなわち、C60(市販品:商品名「nanom purple」フロンティアカーボン社製)100mgをトルエン(50mL)に溶解させ、30%過酸化水素水5mLおよび相間移動触媒として水酸化テトラn−ブチルアンモニウム(40%水溶液、500μL)を加え、60℃で16時間攪拌した。この溶液から無色になったトルエン層を除去した。トルエン層除去後の水層を、ヘキサン、ジエチルエーテル、2−プロパノールをそれぞれ5:5:7の割合で混合した溶液85mLに超音波照射しながら滴下し、淡黄色固体を析出させた。生じた沈殿を遠心分離により沈降させた後、デカンテーションにより上澄み液を除いた。この固体を60mLのジエチルエーテルを用いて洗浄し、再沈降させた後、上澄み液を除き、室温で終夜真空乾燥した。これにより反応粗生成物の水酸化フラーレンを淡黄色粉末として得た。
【0051】
更に、残留している触媒を除くために、この固体を3mLの水に溶解させ、重さ約1gのフロリジール(60〜100mesh)を長さ約6cmに充填したカラムクロマトグラフィーに通した。触媒除去後の水溶液を、0.45μmのメンブレンフィルターに通して完全にフロリジールも除去した。この水溶液に、水の体積に対して5:5:7の比でヘキサン、ジエチルエーテル、2−プロパノールを加えて淡黄色固体を析出させた。この固体を室温で終夜真空乾燥して、精製した生成物である水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oを淡黄色粉末として得た(収量149mg、収率67%)。得られた生成物の赤外線吸収(IR)スペクトルを図1に示す。
【0052】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl10(OH)30・5H2Oの合成>
上記の方法により得たC60(OH)44・8H2O(200mg)をテトラヒドロフラン(THF)2.5mL中に超音波を5分間照射することでよく分散させて、ICl(0.5mL)を加え、室温(rt)で2.5時間反応を行った(下記化2)。固体が消失し、赤褐色のクリアな溶液になったことを確認した後、減圧下においてTHF、IClを、エバポレータを用いて留去した。更に、残渣中に黒紫色固体として含まれる副生したヨウ素を除去するため、ヘキサンを用いて約20回洗浄することを繰り返し、ろ液の色が薄い赤色になったところで褐色固体を遠心分離により取り出し、室温で終夜真空乾燥を行った(収量208mg、収率100%)。
【0053】
【化2】
このようにして得られた生成物の赤外線吸収(IR)スペクトルを図2に示した。図2に示すIRスペクトルは、出発原料として用いた水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oのスペクトル(図1)とは若干異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンのスペクトルの特徴(水酸基のO−H伸縮に基づく3400cm-1付近の大きなブロードな吸収とともに、C−CおよびC−O伸縮に基づく1620、1380、1080cm-1付近にブロードな吸収)を残していた。また、この生成物の熱重量分析において、室温から100℃付近まで加熱する間に重量減少が5.0wt%見られた。この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;41.87%,H;3.00%,Cl;21.84%となり、C60Cl10(OH)30・5H2Oの計算値(C;43.01%,H;2.41%,Cl;21.16%,水;5.4wt%)とよく一致した。
【実施例2】
【0054】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl2(OH)38・6H2Oの合成>
実施例1の方法により得た水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oの(200mg)をICl(1mL)と、室温で24時間反応を行った(下記化3)。黒色の粘性の高いスラリー状残渣をヘキサンにて約15回洗浄することを繰り返し、メタノールに溶解させ、減圧下においてメタノールを、エバポレータを用いて留去した。この茶色固体をエタノール中に加え、超音波照射することでよく分散させ、これにヘキサンを加えた。析出した黄色固体を遠心分離により取り出し、ジエチルエーテルで洗浄後、室温で終夜真空乾燥を行った(収量120mg、収率63%)。
【0055】
【化3】
このようにして得られた生成物のIRスペクトルを図3に示した。図3のIRスペクトルは、出発原料として用いた水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oの図1に示したIRスペクトルとは若干異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンのスペクトルの特徴を残していた。また、この生成物の熱重量分析によれば、室温から120℃付近まで加熱する間に重量減少が7.4wt%見られた。この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;46.73%,H;2.56%,Cl;4.76%となり、C60Cl2(OH)38・6H2Oの計算値(C;46.61%,H;3.26%,Cl;4.59%,水;7.0wt%)とよく一致した。
【実施例3】
【0056】
<水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2Oの合成>
非特許文献6に開示された方法により合成した。すなわち、C60(10g)と60%発煙硫酸(150mL)を窒素雰囲気下に55〜60℃で3日間攪拌した。得られた反応混合物を氷浴中のジエチルエーテル中に激しく攪拌しながら滴下し、生成した沈殿物を遠心分離にて分離した。得られた沈殿物をジエチルエーテルで洗浄し、遠心分離にて分離した後、更に、ジエチルエーテル/アセトニトリル混合溶媒で洗浄し、遠心分離にて分離し、これを40℃で真空乾燥して、ポリシクロ硫酸化フラーレン13gを赤橙色粉末として得た。このポリシクロ硫酸化フラーレン(5.0g)と蒸留水(100mL)を窒素雰囲気下、85℃で10時間攪拌し、生成した沈殿物を遠心分離にて分離した。得られた沈殿物を水で洗浄し、遠心分離した後、40℃で真空乾燥して、水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2Oを茶褐色粉末として得た(収量4.5g)。得られた生成物のIRスペクトルを図4に示す。
【0057】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl15(OH)15・9H2Oの合成>
上記の方法により得たC60(OH)12・5H2O(100mg)をICl(1mL)と室温で24時間反応を行った(下記化4)。黒色の粘性の高いスラリー状残渣をヘキサンにて約15回洗浄することを繰り返し、THFを加え、超音波照射することでよく分散させ、これにヘキサンを加えた。ヘキサンを加えたことにより析出した黄色固体を遠心分離により取り出し、室温で終夜真空乾燥を行った(収量117mg、収率71%)。
【0058】
【化4】
この生成物のIRスペクトルを図5に示した。図5に示したIRスペクトルは、出発原料として用いた水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2OのIRスペクトル(図4参照)とは若干異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンのスペクトルの特徴を残していた。また、その熱重量分析において、室温から110℃付近まで加熱する間に重量減少が9.7wt%見られたことから、この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;42.68%,H;1.60%,Cl;32.57%となり、C60Cl15(OH)15・9H2Oの計算値(C;42.68%,H;1.99%,Cl;31.85%,水;9.7wt%)とよく一致した。
【実施例4】
【0059】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl5(OH)15・5H2Oの合成>
実施例1の方法により得た水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2O(100mg)をTHF2.5mL中に超音波を5分間照射することでよく分散させ、ICl(0.5mL)を加え、室温で24時間反応を行った(下記化5)。反応終了後、減圧下においてTHF、ヨウ素を留去した。残渣をヘキサンにて約10回洗浄することを繰り返し、酢酸エチルを加え、超音波照射することでよく分散させた。得られた橙色固体にさらにヘキサンを加えて超音波照射しながら、3回洗浄した。その後、橙色固体を遠心分離により取り出し、室温で終夜真空乾燥を行った(収量123mg、収率100%)。
【0060】
【化5】
生成物のIRスペクトルを図6に示した。図6のIRスペクトルは、出発原料として用いた水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2Oのスペクトル(図4参照)とは若干異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンのスペクトルの特徴を残していた。また、生成物の熱重量分析によれば、室温から110℃付近まで加熱する間に重量減少が7.9wt%見られた。この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;58.89%,H;3.86%,Cl;15.22%となり、C60Cl5(OH)15・5H2Oの計算値(C;57.97%,H;2.03%,Cl;14.26%,水;7.2wt%)とよく一致した。
【実施例5】
【0061】
<塩素化フラーレンC60Cl8の合成>
非特許文献2に開示された方法により合成した。すなわち、C60(2.33g)のo−ジクロロベンゼン(ODCB)溶液60mLに、アルゴン雰囲気下、ICl(7.5g)のo−ジクロロベンゼン溶液20mLを滴下し、室温にて6時間反応を行った(下記化6)。反応が終了したことを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて確認した後、o−ジクロロベンゼンおよび副生するヨウ素を、エバポレータを用いて留去した。残渣をヘキサンで洗浄後、遠心分離にて固体を取り出し、さらにもう一度ペンタンで洗浄後、遠心分離によりオレンジ色の固体を取り出した。これを室温で終夜真空乾燥を行った(収量2.53g、収率78%)。
【0062】
【化6】
液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)測定により、ほぼ1本の大きな生成物ピークの中に、C60Cl5(M=895)に相当すると思われるM=897のフラグメントピークを得た。生成物のIRスペクトルを図7に示した。図7のIRスペクトルは、非特許文献2に記載の塩素化フラーレンC60Cl6のIRスペクトルとよく類似していた。元素分析の値はC;72.53%,Cl;28.24%となり、C60Cl8の計算値(C;71.76%,Cl;28.55%)とよく一致した。
【0063】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl0.5(OH)35.5・8H2Oの合成>
上記で作成したC60Cl8(1g)を1,3,4−トリメチルベンゼン(TMB)50mLに溶解させ、相間移動触媒として水酸化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAH)の40%水溶液(5mL)存在下、30%の過酸化水素水溶液(H2O2aq)(30mL)と70℃で20時間反応を行った(下記化7)。上層の有機相の赤色がほぼ消失したことを確認した後、下層の黄褐色水溶液(約30mL)を取り出した。これに2−プロパノール、酢酸エチル、ヘキサンをそれぞれ加えた。沈殿させた黄色固体を遠心分離により取り出し、室温で終夜真空乾燥を行った(収量980mg、収率66%)。
【0064】
【化7】
この生成物のIRスペクトルを図8に示した。図8のIRスペクトルは、出発原料として用いた塩素化フラーレンC60Cl8のIRスペクトル(図7参照)と大きく異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンのスペクトルの特徴を残していた。また、その熱重量分析において、室温から100℃付近まで加熱する間に重量減少が9.8wt%見られた。この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;48.29%,H;3.10%,Cl;1.06%となり、C60Cl0.5(OH)35.5・8H2Oの計算値(C;48.49%,H;3.49%,Cl;1.19%,水;9.7wt%)とよく一致した。
【実施例6】
【0065】
<塩素化フラーレンC60Cl8の合成>
非特許文献3に開示された方法により合成した。すなわち、C60(400mg)にICl(2mL)を加え、アルゴン雰囲気下、120℃にて40時間反応を行った(下記化8)。反応終了後、反応器上部に析出した黒紫色のヨウ素の結晶を除去し、得られた茶色固体を室温で終夜真空乾燥を行った(収量931mg、収率98%)。
【0066】
【化8】
この生成物のIRスペクトルを図9に示した。図9のIRスペクトルは、883cm-1に大きなブロードのC−Cl伸縮振動を示しており、非特許文献3記載の塩素化フラーレンC60Cl28のスペクトルとよく類似していた。元素分析の値はC;40.96%,Cl;58.28%となり、C60Cl28の計算値(C;42.06%,Cl;57.94%)とよく一致した。
【0067】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl3(OH)25・6H2Oの合成>
上記で作成したC60Cl28(50mg)に、フラーレン核に対し14当量の濃度となるよう調製した水酸化ナトリウム水溶液(40.8mM、10mL)を加え、超音波照射により水に分散させ、60℃で1時間反応を行った(下記化9)。pH試験紙を用いて溶液が中性になったことを確認した後、メタノールを加えて沈殿させた茶色固体を遠心分離により取り出し、エーテルで洗浄した。その後、室温で終夜真空乾燥を行った(収量31.4mg、収率79%)。
【0068】
【化9】
この生成物のIRスペクトルを図10に示した。図10のIRスペクトルは、出発原料として用いた塩素化フラーレンC60Cl28のスペクトル(図9参照)と大きく異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンと塩素化フラーレンの両方のスペクトルの特徴を有していた。また、その熱重量分析は、室温から115℃付近まで加熱する間に重量減少が8.2wt%見られたことから、この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;53.57%,H;2.49%,Cl;7.88%となり、C60Cl3(OH)25・6H2Oなる計算値(C;52.98%,H;2.74%,Cl;7.82%,水;7.9wt%)とよく一致した。
【実施例7】
【0069】
<臭素化フラーレンC60Br16の合成>
非特許文献5に開示された方法により合成した。すなわち、C60(700mg)にBr2(12mL)を加え、アルゴン雰囲気下、室温にて10日間反応を行った(下記化10)。反応終了後、ヘキサン中に反応溶液を加えて、生じた茶色固体を遠心分離により取り出し、少量のクロロホルムに溶解させた。その後、ヘキサンを加えて再沈殿させた。更に、エーテルで洗浄した後、室温で終夜真空乾燥を行った(収量1587mg、収率82%)。
【0070】
【化10】
生成物のIRスペクトルを図11に示した。図11のIRスペクトルは、848cm-1にシャープで大きなC−Br伸縮振動を示し、非特許文献5記載の臭素化フラーレンC60Br8やC60Br24のスペクトルとよく類似しており、C60Br16という平均構造であることの根拠を示していた。元素分析の値はC;35.48%,H;0.45%,Br;62.47%となり、C60Br16の計算値(C;36.05%,Br;63.95%)とよく一致した。
【0071】
<部分臭素化水酸化フラーレンC60Br4.5(OH)9・4H2Oの合成>
上記で作成したC60Br16(50mg)に、フラーレン核に対し8当量の濃度となるよう調製した水酸化ナトリウムの水溶液(20.0mM、10mL)を加え、超音波照射により水に分散させ、60℃で30分反応を行った(下記化11)。pH試験紙を用いて溶液が中性になったことを確認した後、これに水の体積に対して5:6:7の比でヘキサン、ジエチルエーテル、2−プロパノールを加えて沈殿させた茶色固体を遠心分離により取り出した。これをエーテルで洗浄した後、室温で終夜真空乾燥を行った(収量32.4mg、収率99%)。
【0072】
【化11】
この生成物のIRスペクトルを図12に示した。図12のIRスペクトルは、出発原料として用いた臭素化フラーレンC60Br16のスペクトル(図11参照)と大きく異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンと臭素化フラーレンの両方のスペクトルの特徴を有していた。また、その熱重量分析は、室温から100℃付近まで加熱する間に重量減少が5.0wt%見られたことから、この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;55.26%,H;1.43%,Br;27.12%となり、C60Br4.5(OH)9・4H2Oなる計算値(C;55.21%,H;1.31%,Br;27.55%,水;5.5wt%)とよく一致した。
【0073】
〔試験例1〕
<スギ花粉アレルゲン(Cry j 1)に対する試料の反応試験>
実施例1〜5で合成した化合物の1%(w/v)溶液試料を調製し、リン酸緩衝液に溶解したアレルゲン(Cry j 1)を100ng/mLとなるよう加え、ボルテックスで混合後、4℃で振とうしながら反応させた。所定時間(5分および30分後)毎に溶液を回収し、遠心処理をした上清について、サンドイッチELISA法(酵素免疫測定法Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)を用いてアレルゲン濃度(A)を測定した。比較としてフラーレン試料を加えなかったアレルゲン溶液の濃度(B)を用い、下記の式からアレルゲン減少率(%)を求めた。
【0074】
減少率(%)=(B−A)/B×100
【0075】
サンドイッチELISA法の具体的手順を以下に示す。抗Cry j 1抗体をマイクロプレートの各ウェルに固相化し、洗浄後、ポストコーティングを行う。さらに洗浄後、試料溶液または標準アレルゲン溶液を添加し一次反応を行う。洗浄後、抗Cry j 1ビオチン標識抗体を添加し二次反応を行う。さらに洗浄後、酵素試薬ストレプトアビジンHRPを添加し、洗浄後、基質o−フェニレンジアミンを添加し発色反応を行う。希硫酸の添加により反応停止後、490nmの波長における吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて測定する。あらかじめ標準アレルゲン溶液を用いて作成した検量線から、各試料中のアレルゲン濃度を求める。
【0076】
結果を図13に示す。試料5種類のいずれも溶液中のアレルゲン濃度を減少させ、時間の経過とともにアレルゲン濃度は低下した。特に、実施例3および実施例4の試料については、5分で90%、30分で99%以上の減少率と、短時間で強いアレルゲン吸着作用が認められた。
【0077】
〔比較例1〕
実施例1で合成した水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oを用いて、上記試験例1と同じアレルゲン吸着試験を同条件下で行った。結果は、60分後でも6.2%の減少に止まった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のフラーレン誘導体は抗アレルゲン・抗ウィルスの性能を有するものであり、マスクやフィルター製品に使用することができる。
【0079】
更に、本発明のフラーレン誘導体は親水性と疎水性とを併せ持つ両親媒性という特性を有しており、各種の材料の表面に塗布、含浸、または化学的に結合させることができる。そのため、新しい有機合成、高分子変性、表面改質、医療分野等における利用可能性がある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲンを速やかに吸着するフラーレン誘導体ならびにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国における花粉症患者は国民全体の約2割に達すると推定されているが、その数の多さに比して、根源的な治療法が確立されていないのが現状である。そのため、医療的には対症療法や減感作療法が行われているものの、安価かつ簡便な主な花粉対策としては、マスクの着用や空気清浄機の使用が依然として効果を挙げている。また、このような状況は、世界各国においても同様に見受けられる。
【0003】
これまでに、花粉やアレルゲンを吸着または不活性化する機能を有する物質や材料を、マスクやフィルター製品に使用することが提案されている。例えば、特開2000−5531号公報(特許文献1)では、茶ポリフェノールがアレルゲン物質のアレルギー活性を不活性化するものとして提案されている。特開2002−167332号公報(特許文献2)には、シリカや酸化チタンのような無機微粒子を不織布に含浸坦持させて、アレルゲンを吸着することが開示されている。特開2004−204401号公報(特許文献3)では、第四級アンモニウム塩のような正電荷をもつ官能基を有する高分子繊維を用いる花粉吸着材が提案されている。
【0004】
このように従来種々の対策が検討されてきたが、その除去効果については常に向上が期待されるばかりでなく、幅広い種類のアレルゲン、菌、またはウィルス等に対しても作用することを目指し、まったく新しいタイプのアレルゲン吸着剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−5531号公報
【特許文献2】特開2002−167332号公報
【特許文献3】特開2004−204401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような現状に鑑みて、花粉症を引き起こす原因となるアレルゲンを短時間で効率的に吸着して再放出せず、人体に悪影響を及ぼす金属などを含まない吸着剤を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、各種の材料の表面に塗布、含浸、または化学的に結合させやすい新規なフラーレン誘導体を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はそのような吸着剤またはフラーレン誘導体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水酸基とハロゲン基の両方を有することを特徴とするフラーレン誘導体により前記目的を達成した。
【0010】
本発明は、フラーレン核に水酸基とハロゲン基の両方が直接結合しているフラーレン誘導体であり、一般式CpXn(OH)m(pは60以上の偶数、Xはハロゲン基、nは0より大きな(0を含まない)48以下の数、mは0より大きな44以下の数)で表わされることを特徴とするフラーレン誘導体により前記目的を達成した。
【0011】
この場合、ハロゲン基は特に限定されないが、塩素、臭素、フッ素であることが好ましい。
【0012】
出発原料のフラーレンとしては、C60またはC70、或いはC60を含む、C70以上の高次フラーレンとの混合物を使用できる。
【0013】
また、本発明は、フラーレン核にハロゲン基が結合しているハロゲン化フラーレンを、一部のハロゲン基を残したまま、水酸基をフラーレン核に結合させて、部分ハロゲン化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法により前記目的を達成した。
【0014】
ハロゲン基が塩素である塩素化フラーレンの場合は、過酸化水素、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと反応させて、部分塩素化水酸化フラーレンを生成できる。
【0015】
ハロゲン基が臭素である臭素化フラーレンを水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと反応させて、部分臭素化水酸化フラーレンを生成できる。
【0016】
更に、本発明は、フラーレン核に水酸基が結合している水酸化フラーレンを、一部の水酸基を残したまま、ハロゲン基をフラーレン核に結合させて、部分ハロゲン化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法により前記目的を達成した。
【0017】
また、本発明は、フラーレン核に水酸基が結合している水酸化フラーレンを、塩化ヨウ素と反応させて、一部の水酸基を残したまま、塩素をフラーレン核に結合させて、部分塩素化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法により前記目的を達成した。
【0018】
本発明によれば、上述のフラーレン誘導体を含んでいるアレルゲン吸着剤を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフラーレン誘導体はフラーレン核に直接、水酸基およびハロゲン基が結合しており、人体に悪影響を及ぼす金属などを含んでいない。
【0020】
また、本発明のフラーレン誘導体は、花粉症を引き起こす原因となるアレルゲンを短時間で効率的に吸着することができ、しかも一旦吸着したアレルゲンを再放出することがない。すなわち、アレルゲンのような蛋白質はアミノ基やカルボキシル基を多数有することから、水酸基やハロゲン基のような分極能の高い官能基と化学的に相互作用しやすいので、アレルゲンを短時間で効率的に吸着することができる。
【0021】
なお、本発明者が鋭意研究したところ、アレルゲンのような蛋白質は親水性官能基を有しているので、フラーレンが親水性表面を有していることが必要と考えて、水酸化フラーレン(水酸基のみが結合しているフラーレン誘導体)を検討したが、充分な成果が得られなかった。本発明の水酸基とハロゲン基を併せ持ったフラーレン誘導体としたことにより、アレルゲンの吸着に関して充分な成果が得られた。
【0022】
本発明によれば、ナノサイズの球状炭素分子であるフラーレンの誘導体であるので、表面積を増大させることができ、吸着剤に適している。すなわち、吸着剤の重量が同じであれば、吸着剤の粒子径と表面積は反比例の関係にあり、粒子径が小さくなれば吸着の表面積が増大するので、本発明のフラーレン誘導体は吸着剤として適している。
【0023】
また、本発明のフラーレン誘導体は水酸基とハロゲン基を併せ持つものであり、親水性と疎水性とを併せ持つ両親媒性という特性を有している。このため、本発明のフラーレン誘導体は各種の材料の表面に塗布、含浸、または化学的に結合させることができる。
【0024】
本発明のフラーレン誘導体は花粉症の原因物質であるアレルゲン(スギ花粉の場合は蛋白質Cry j 1 が主要物質)の吸着剤として用いることができ、花粉除去効果の高いマスク、空気清浄機フィルターなどに応用することができる。
【0025】
本発明によれば、多数の水酸基とハロゲン基を併せ持つ新規なフラーレン誘導体を、比較的簡便な方法で製造することができる。すなわち、ハロゲン化フラーレンの部分水酸化または水酸化フラーレンの部分ハロゲン化により合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】水溶性水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oのフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)による赤外線吸収スペクトル図であり、縦軸に透過率、横軸に波数をとった。
【図2】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl10(OH)30・5H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図3】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl2(OH)38・6H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図4】水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図5】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl15(OH)15・9H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図6】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl5(OH)15・5H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図7】塩素化フラーレンC60Cl8のFT−IRスペクトル図である。
【図8】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl0.5(OH)35.5・8H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図9】塩素化フラーレンC60Cl28のFT−IRスペクトル図である。
【図10】部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl3(OH)25・6H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図11】臭素化フラーレンC60Br16のFT−IRスペクトル図である。
【図12】部分臭素化水酸化フラーレンC60Br4.5(OH)9・4H2OのFT−IRスペクトル図である。
【図13】各反応時間ごとのアレルゲン減少率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明による新規なフラーレン誘導体は水酸基とともにハロゲン基をフラーレン核に有しているものである。
【0029】
より具体的には、一般式CpXn(OH)m(pは60以上の偶数、Xはハロゲン基、nは0より大きな48以下の数、mは0より大きな44以下の数)で表わされるフラーレン誘導体である。
【0030】
なお、本発明のフラーレン誘導体は、二次結合水を含んでいても良いし、或いは含んでいなくても良い。水酸基数が少ない場合は二次結合水は含まれず、多くなるに従って二次結合水が含まれる傾向がある。
【0031】
本発明のフラーレン誘導体の製造に使用するフラーレンとしては、球状炭素分子であれば特に制限はないが、好ましくはC60、C70またはC60とC70以上の高次フラーレン(例えばC76、C78、C80、C84、C86など)との混合物である。実施例のフラーレンはC60であるが、フラーレンC60に限らず、化学・物理的性質が類似のフラーレンC70や、あるいはC60を含む混合フラーレン(C60、C70、高次フラーレンの混合物)を出発原料として行っても、同様な構造ならびに同様な性質を有する化合物が得られるものと考えられる。
【0032】
本発明におけるハロゲン基(X)は、周期表7B族に属する1価基の元素うち、フッ素(F)、塩素(Cl)および臭素(Br)が好ましい。
【0033】
本発明のフラーレン誘導体は、ハロゲン化フラーレンの水酸化(或いは加水分解)または水酸化フラーレンのハロゲン化(或いはハロゲン基置換反応)により、部分水酸化または部分ハロゲン化することにより製造する。置換反応が行われる場合は中程度の進行度合い(すなわち、部分水酸化または部分ハロゲン化)までしか行わない。純粋に付加反応のみが行われる場合は理論上は反応が終了するまで行ってもよい。
【0034】
ハロゲン化フラーレンの水酸化は主として置換反応により行なわれるので、一部のハロゲン基が残っている状態までしか反応を行わせない(反応条件、時間、試薬の当量等により制御できる)。また、ハロゲン化フラーレンを水酸化する際に水酸基の付加反応も同時に行われたり、二次結合水として含まれたりすることがある。
【0035】
水酸化フラーレンのハロゲン化は主として付加反応で行われるが、実施例によれば出発原料である水酸化フラーレンの水酸基数が多い場合は、反応後の生成物では水酸基数が減少しており、ハロゲン基の導入が置換反応により行われたものと考えられる。
【0036】
本発明のフラーレン誘導体の出発原料となるハロゲン化フラーレンまたは水酸化フラーレンは既に知られている。
【0037】
例えば、塩素化フラーレンC60Clnは、フラーレンC60を出発原料として塩素化したもので、その製造方法も下記の非特許文献1〜3により既に知られている。
〔非特許文献1〕J.Am.Chem.Soc.,1991,113,9900
〔非特許文献2〕J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1993,1230
〔非特許文献3〕Eur.J.Org.Chem.,2005,4951
フッ素化フラーレン、塩素化フラーレンおよび臭素化フラーレンの製造方法が下記特許文献4に開示されている。
〔特許文献4〕 特開2002−193861号公報
下記非特許文献4にはフッ素化フラーレンC60F48の製造方法が開示されている。
〔非特許文献4〕Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2285
下記非特許文献5には臭素化フラーレンC60Br16の製造方法が開示されている。
〔非特許文献5〕Science,1992,256,822
なお、本発明のフラーレン誘導体の製造方法において、出発原料となるハロゲン化フラーレンは、どのような方法で製造したものであってもよい。
【0038】
水酸化フラーレンC60(OH)mは、フラーレンC60を出発原料として水酸化したもので、その製造方法も既に知られている。例えば、
〔特許文献5〕 特開平7−48302号公報
〔特許文献6〕 国際公開WO2008/096763号公報
〔非特許文献6〕J.Org.Chem.,1994,59,3960
〔非特許文献7〕Synth.Commun.,2005,35,1803
〔非特許文献8〕ACS Nano,2008,2,327
などに開示されている方法により製造することができる。
【0039】
なお、本発明のフラーレン誘導体の製造方法において、出発原料となる水酸化フラーレンは、どのような方法で製造したものであってもよい。
【0040】
更に、ハロゲン化フラーレンのハロゲン基をすべて水酸基に置換する方法は下記文献に記載されている。
〔特許文献4〕 特開2002−193861号公報
〔非特許文献9〕Fullerenes,Nanotubes,and Carbon Nanostructures, 2005,13,331
上記のように従来からハロゲン化フラーレンや水酸化フラーレンは知られているが、本発明のフラーレン誘導体のようにハロゲン基と水酸基が共存した部分ハロゲン化水酸化フラーレン誘導体はこれまでに知られていない。
【0041】
ハロゲン基が塩素である場合、本発明のフラーレン誘導体は、フラーレンを塩素化フラーレンまたは水酸化フラーレンとした後に、或いは公知の塩素化フラーレンまたは水酸化フラーレンを使用して、塩素化フラーレンの部分水酸化(method A)または水酸化フラーレンの部分塩素化(method B)することにより合成することができる。例えば、フラーレンがC60である場合、下記化1に示すようになる。
【0042】
【化1】
塩素化フラーレンを部分水酸化(method A)する場合、導入される塩素置換基の数nは出発原料の塩素化フラーレン中の塩素置換基数n’と同じか、または水酸基への置換反応により減少している。部分水酸化の方法は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基触媒を用いた一般的な加水分解反応や、過酸化水素水を用いる水酸化反応があるが、これら手法に特に限定されるものではない。例えば、部分水酸化するための水酸化試薬としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの他に、LiOH、RbOH、CsOH、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2、TlOH、nBuN(OH)、Triton Bなどが挙げられる。
【0043】
水酸化フラーレンを部分塩素化(method B)する場合、導入される水酸基の数mは出発原料の水酸化フラーレン中の置換基数m’と同じか、または塩素への置換反応により減少するか、或いは反応処理中の操作により増加してもよい。部分塩素化の方法は、塩化ヨウ素(ICl)を用いる塩素化反応を実施例では示したが、この試薬に特に限定されるものではない。例えば、塩化ヨウ素の他に、POCl3、PCl5、SbCl5、VCl4、VOCl3、MoCl5、KICl4などが挙げられる。
【0044】
本発明の出発原料(ハロゲン化フラーレンまたは水酸化フラーレン)の製造、ハロゲン化フラーレンの水酸化または水酸化フラーレンのハロゲン化において使用可能な溶媒としては、例えば
o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、トリメチルベンゼン、キシレン、トルエン、ベンゼンなどの芳香族溶媒、
塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタンなどのハロゲン溶媒、
THF、エーテル、酢酸エチル、ジオキサン、DMF、DMSOなどの非プロトン性極性溶媒、
その他、二硫化炭素、アセトニトリルなどが考えられる。
【0045】
前記化1における数nおよびmに関しては特に制限はないが、nおよびmは少なくとも0より大きく、nはC60Cln’において知られている最大数30(前述の非特許文献3参照)より小さく、mはC60(OH)m’において知られている最大数44(前述の特許文献5参照)より小さい。また、それらの数については、一種類の異性体に固有の数であってもよく、たくさんの異性体混合物の平均数であってもよい。更に、これら置換基のフラーレン核の表面における導入位置については、特に特定されるものではない。
【0046】
ハロゲン基が臭素またはフッ素である場合も、上記化1と同様に臭素化フラーレンまたはフッ素化フラーレンを水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基触媒を用いた一般的な加水分解反応や、過酸化水素水を用いる水酸化反応により、部分水酸化すればよい。
【0047】
この場合も、合成されたフラーレン誘導体における臭素またはフッ素の置換基の数nは出発原料中の置換基数n’と同じか、または水酸基への置換反応により減少している。出発原料となる臭素化フラーレンまたはフッ素化フラーレンにおいて置換基数が多いものとして、前記非特許文献4および特許文献4に記載されているようにC60F48が知られているので、本発明のフラーレン誘導体におけるハロゲン基の置換基の数nは最大でも48以下である。
【0048】
本発明の合成方法は、フラーレンC60に限らず、化学・物理的性質が類似のフラーレンC70や、或いはC60を含む混合フラーレン(C60、C70、高次フラーレンの混合物)を出発原料として行っても、同様な構造ならびに同様な性質を有する化合物が得られるものと考えられる。
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0050】
<水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oの合成>
特許文献6に開示された方法により合成した。すなわち、C60(市販品:商品名「nanom purple」フロンティアカーボン社製)100mgをトルエン(50mL)に溶解させ、30%過酸化水素水5mLおよび相間移動触媒として水酸化テトラn−ブチルアンモニウム(40%水溶液、500μL)を加え、60℃で16時間攪拌した。この溶液から無色になったトルエン層を除去した。トルエン層除去後の水層を、ヘキサン、ジエチルエーテル、2−プロパノールをそれぞれ5:5:7の割合で混合した溶液85mLに超音波照射しながら滴下し、淡黄色固体を析出させた。生じた沈殿を遠心分離により沈降させた後、デカンテーションにより上澄み液を除いた。この固体を60mLのジエチルエーテルを用いて洗浄し、再沈降させた後、上澄み液を除き、室温で終夜真空乾燥した。これにより反応粗生成物の水酸化フラーレンを淡黄色粉末として得た。
【0051】
更に、残留している触媒を除くために、この固体を3mLの水に溶解させ、重さ約1gのフロリジール(60〜100mesh)を長さ約6cmに充填したカラムクロマトグラフィーに通した。触媒除去後の水溶液を、0.45μmのメンブレンフィルターに通して完全にフロリジールも除去した。この水溶液に、水の体積に対して5:5:7の比でヘキサン、ジエチルエーテル、2−プロパノールを加えて淡黄色固体を析出させた。この固体を室温で終夜真空乾燥して、精製した生成物である水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oを淡黄色粉末として得た(収量149mg、収率67%)。得られた生成物の赤外線吸収(IR)スペクトルを図1に示す。
【0052】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl10(OH)30・5H2Oの合成>
上記の方法により得たC60(OH)44・8H2O(200mg)をテトラヒドロフラン(THF)2.5mL中に超音波を5分間照射することでよく分散させて、ICl(0.5mL)を加え、室温(rt)で2.5時間反応を行った(下記化2)。固体が消失し、赤褐色のクリアな溶液になったことを確認した後、減圧下においてTHF、IClを、エバポレータを用いて留去した。更に、残渣中に黒紫色固体として含まれる副生したヨウ素を除去するため、ヘキサンを用いて約20回洗浄することを繰り返し、ろ液の色が薄い赤色になったところで褐色固体を遠心分離により取り出し、室温で終夜真空乾燥を行った(収量208mg、収率100%)。
【0053】
【化2】
このようにして得られた生成物の赤外線吸収(IR)スペクトルを図2に示した。図2に示すIRスペクトルは、出発原料として用いた水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oのスペクトル(図1)とは若干異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンのスペクトルの特徴(水酸基のO−H伸縮に基づく3400cm-1付近の大きなブロードな吸収とともに、C−CおよびC−O伸縮に基づく1620、1380、1080cm-1付近にブロードな吸収)を残していた。また、この生成物の熱重量分析において、室温から100℃付近まで加熱する間に重量減少が5.0wt%見られた。この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;41.87%,H;3.00%,Cl;21.84%となり、C60Cl10(OH)30・5H2Oの計算値(C;43.01%,H;2.41%,Cl;21.16%,水;5.4wt%)とよく一致した。
【実施例2】
【0054】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl2(OH)38・6H2Oの合成>
実施例1の方法により得た水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oの(200mg)をICl(1mL)と、室温で24時間反応を行った(下記化3)。黒色の粘性の高いスラリー状残渣をヘキサンにて約15回洗浄することを繰り返し、メタノールに溶解させ、減圧下においてメタノールを、エバポレータを用いて留去した。この茶色固体をエタノール中に加え、超音波照射することでよく分散させ、これにヘキサンを加えた。析出した黄色固体を遠心分離により取り出し、ジエチルエーテルで洗浄後、室温で終夜真空乾燥を行った(収量120mg、収率63%)。
【0055】
【化3】
このようにして得られた生成物のIRスペクトルを図3に示した。図3のIRスペクトルは、出発原料として用いた水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oの図1に示したIRスペクトルとは若干異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンのスペクトルの特徴を残していた。また、この生成物の熱重量分析によれば、室温から120℃付近まで加熱する間に重量減少が7.4wt%見られた。この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;46.73%,H;2.56%,Cl;4.76%となり、C60Cl2(OH)38・6H2Oの計算値(C;46.61%,H;3.26%,Cl;4.59%,水;7.0wt%)とよく一致した。
【実施例3】
【0056】
<水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2Oの合成>
非特許文献6に開示された方法により合成した。すなわち、C60(10g)と60%発煙硫酸(150mL)を窒素雰囲気下に55〜60℃で3日間攪拌した。得られた反応混合物を氷浴中のジエチルエーテル中に激しく攪拌しながら滴下し、生成した沈殿物を遠心分離にて分離した。得られた沈殿物をジエチルエーテルで洗浄し、遠心分離にて分離した後、更に、ジエチルエーテル/アセトニトリル混合溶媒で洗浄し、遠心分離にて分離し、これを40℃で真空乾燥して、ポリシクロ硫酸化フラーレン13gを赤橙色粉末として得た。このポリシクロ硫酸化フラーレン(5.0g)と蒸留水(100mL)を窒素雰囲気下、85℃で10時間攪拌し、生成した沈殿物を遠心分離にて分離した。得られた沈殿物を水で洗浄し、遠心分離した後、40℃で真空乾燥して、水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2Oを茶褐色粉末として得た(収量4.5g)。得られた生成物のIRスペクトルを図4に示す。
【0057】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl15(OH)15・9H2Oの合成>
上記の方法により得たC60(OH)12・5H2O(100mg)をICl(1mL)と室温で24時間反応を行った(下記化4)。黒色の粘性の高いスラリー状残渣をヘキサンにて約15回洗浄することを繰り返し、THFを加え、超音波照射することでよく分散させ、これにヘキサンを加えた。ヘキサンを加えたことにより析出した黄色固体を遠心分離により取り出し、室温で終夜真空乾燥を行った(収量117mg、収率71%)。
【0058】
【化4】
この生成物のIRスペクトルを図5に示した。図5に示したIRスペクトルは、出発原料として用いた水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2OのIRスペクトル(図4参照)とは若干異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンのスペクトルの特徴を残していた。また、その熱重量分析において、室温から110℃付近まで加熱する間に重量減少が9.7wt%見られたことから、この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;42.68%,H;1.60%,Cl;32.57%となり、C60Cl15(OH)15・9H2Oの計算値(C;42.68%,H;1.99%,Cl;31.85%,水;9.7wt%)とよく一致した。
【実施例4】
【0059】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl5(OH)15・5H2Oの合成>
実施例1の方法により得た水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2O(100mg)をTHF2.5mL中に超音波を5分間照射することでよく分散させ、ICl(0.5mL)を加え、室温で24時間反応を行った(下記化5)。反応終了後、減圧下においてTHF、ヨウ素を留去した。残渣をヘキサンにて約10回洗浄することを繰り返し、酢酸エチルを加え、超音波照射することでよく分散させた。得られた橙色固体にさらにヘキサンを加えて超音波照射しながら、3回洗浄した。その後、橙色固体を遠心分離により取り出し、室温で終夜真空乾燥を行った(収量123mg、収率100%)。
【0060】
【化5】
生成物のIRスペクトルを図6に示した。図6のIRスペクトルは、出発原料として用いた水酸化フラーレンC60(OH)12・5H2Oのスペクトル(図4参照)とは若干異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンのスペクトルの特徴を残していた。また、生成物の熱重量分析によれば、室温から110℃付近まで加熱する間に重量減少が7.9wt%見られた。この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;58.89%,H;3.86%,Cl;15.22%となり、C60Cl5(OH)15・5H2Oの計算値(C;57.97%,H;2.03%,Cl;14.26%,水;7.2wt%)とよく一致した。
【実施例5】
【0061】
<塩素化フラーレンC60Cl8の合成>
非特許文献2に開示された方法により合成した。すなわち、C60(2.33g)のo−ジクロロベンゼン(ODCB)溶液60mLに、アルゴン雰囲気下、ICl(7.5g)のo−ジクロロベンゼン溶液20mLを滴下し、室温にて6時間反応を行った(下記化6)。反応が終了したことを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて確認した後、o−ジクロロベンゼンおよび副生するヨウ素を、エバポレータを用いて留去した。残渣をヘキサンで洗浄後、遠心分離にて固体を取り出し、さらにもう一度ペンタンで洗浄後、遠心分離によりオレンジ色の固体を取り出した。これを室温で終夜真空乾燥を行った(収量2.53g、収率78%)。
【0062】
【化6】
液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)測定により、ほぼ1本の大きな生成物ピークの中に、C60Cl5(M=895)に相当すると思われるM=897のフラグメントピークを得た。生成物のIRスペクトルを図7に示した。図7のIRスペクトルは、非特許文献2に記載の塩素化フラーレンC60Cl6のIRスペクトルとよく類似していた。元素分析の値はC;72.53%,Cl;28.24%となり、C60Cl8の計算値(C;71.76%,Cl;28.55%)とよく一致した。
【0063】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl0.5(OH)35.5・8H2Oの合成>
上記で作成したC60Cl8(1g)を1,3,4−トリメチルベンゼン(TMB)50mLに溶解させ、相間移動触媒として水酸化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAH)の40%水溶液(5mL)存在下、30%の過酸化水素水溶液(H2O2aq)(30mL)と70℃で20時間反応を行った(下記化7)。上層の有機相の赤色がほぼ消失したことを確認した後、下層の黄褐色水溶液(約30mL)を取り出した。これに2−プロパノール、酢酸エチル、ヘキサンをそれぞれ加えた。沈殿させた黄色固体を遠心分離により取り出し、室温で終夜真空乾燥を行った(収量980mg、収率66%)。
【0064】
【化7】
この生成物のIRスペクトルを図8に示した。図8のIRスペクトルは、出発原料として用いた塩素化フラーレンC60Cl8のIRスペクトル(図7参照)と大きく異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンのスペクトルの特徴を残していた。また、その熱重量分析において、室温から100℃付近まで加熱する間に重量減少が9.8wt%見られた。この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;48.29%,H;3.10%,Cl;1.06%となり、C60Cl0.5(OH)35.5・8H2Oの計算値(C;48.49%,H;3.49%,Cl;1.19%,水;9.7wt%)とよく一致した。
【実施例6】
【0065】
<塩素化フラーレンC60Cl8の合成>
非特許文献3に開示された方法により合成した。すなわち、C60(400mg)にICl(2mL)を加え、アルゴン雰囲気下、120℃にて40時間反応を行った(下記化8)。反応終了後、反応器上部に析出した黒紫色のヨウ素の結晶を除去し、得られた茶色固体を室温で終夜真空乾燥を行った(収量931mg、収率98%)。
【0066】
【化8】
この生成物のIRスペクトルを図9に示した。図9のIRスペクトルは、883cm-1に大きなブロードのC−Cl伸縮振動を示しており、非特許文献3記載の塩素化フラーレンC60Cl28のスペクトルとよく類似していた。元素分析の値はC;40.96%,Cl;58.28%となり、C60Cl28の計算値(C;42.06%,Cl;57.94%)とよく一致した。
【0067】
<部分塩素化水酸化フラーレンC60Cl3(OH)25・6H2Oの合成>
上記で作成したC60Cl28(50mg)に、フラーレン核に対し14当量の濃度となるよう調製した水酸化ナトリウム水溶液(40.8mM、10mL)を加え、超音波照射により水に分散させ、60℃で1時間反応を行った(下記化9)。pH試験紙を用いて溶液が中性になったことを確認した後、メタノールを加えて沈殿させた茶色固体を遠心分離により取り出し、エーテルで洗浄した。その後、室温で終夜真空乾燥を行った(収量31.4mg、収率79%)。
【0068】
【化9】
この生成物のIRスペクトルを図10に示した。図10のIRスペクトルは、出発原料として用いた塩素化フラーレンC60Cl28のスペクトル(図9参照)と大きく異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンと塩素化フラーレンの両方のスペクトルの特徴を有していた。また、その熱重量分析は、室温から115℃付近まで加熱する間に重量減少が8.2wt%見られたことから、この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;53.57%,H;2.49%,Cl;7.88%となり、C60Cl3(OH)25・6H2Oなる計算値(C;52.98%,H;2.74%,Cl;7.82%,水;7.9wt%)とよく一致した。
【実施例7】
【0069】
<臭素化フラーレンC60Br16の合成>
非特許文献5に開示された方法により合成した。すなわち、C60(700mg)にBr2(12mL)を加え、アルゴン雰囲気下、室温にて10日間反応を行った(下記化10)。反応終了後、ヘキサン中に反応溶液を加えて、生じた茶色固体を遠心分離により取り出し、少量のクロロホルムに溶解させた。その後、ヘキサンを加えて再沈殿させた。更に、エーテルで洗浄した後、室温で終夜真空乾燥を行った(収量1587mg、収率82%)。
【0070】
【化10】
生成物のIRスペクトルを図11に示した。図11のIRスペクトルは、848cm-1にシャープで大きなC−Br伸縮振動を示し、非特許文献5記載の臭素化フラーレンC60Br8やC60Br24のスペクトルとよく類似しており、C60Br16という平均構造であることの根拠を示していた。元素分析の値はC;35.48%,H;0.45%,Br;62.47%となり、C60Br16の計算値(C;36.05%,Br;63.95%)とよく一致した。
【0071】
<部分臭素化水酸化フラーレンC60Br4.5(OH)9・4H2Oの合成>
上記で作成したC60Br16(50mg)に、フラーレン核に対し8当量の濃度となるよう調製した水酸化ナトリウムの水溶液(20.0mM、10mL)を加え、超音波照射により水に分散させ、60℃で30分反応を行った(下記化11)。pH試験紙を用いて溶液が中性になったことを確認した後、これに水の体積に対して5:6:7の比でヘキサン、ジエチルエーテル、2−プロパノールを加えて沈殿させた茶色固体を遠心分離により取り出した。これをエーテルで洗浄した後、室温で終夜真空乾燥を行った(収量32.4mg、収率99%)。
【0072】
【化11】
この生成物のIRスペクトルを図12に示した。図12のIRスペクトルは、出発原料として用いた臭素化フラーレンC60Br16のスペクトル(図11参照)と大きく異なっており、反応が進行したことを示唆するとともに、水酸化フラーレンと臭素化フラーレンの両方のスペクトルの特徴を有していた。また、その熱重量分析は、室温から100℃付近まで加熱する間に重量減少が5.0wt%見られたことから、この重量減少分を生成物に含まれる二次結合水の量と見積もった。元素分析の値はC;55.26%,H;1.43%,Br;27.12%となり、C60Br4.5(OH)9・4H2Oなる計算値(C;55.21%,H;1.31%,Br;27.55%,水;5.5wt%)とよく一致した。
【0073】
〔試験例1〕
<スギ花粉アレルゲン(Cry j 1)に対する試料の反応試験>
実施例1〜5で合成した化合物の1%(w/v)溶液試料を調製し、リン酸緩衝液に溶解したアレルゲン(Cry j 1)を100ng/mLとなるよう加え、ボルテックスで混合後、4℃で振とうしながら反応させた。所定時間(5分および30分後)毎に溶液を回収し、遠心処理をした上清について、サンドイッチELISA法(酵素免疫測定法Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)を用いてアレルゲン濃度(A)を測定した。比較としてフラーレン試料を加えなかったアレルゲン溶液の濃度(B)を用い、下記の式からアレルゲン減少率(%)を求めた。
【0074】
減少率(%)=(B−A)/B×100
【0075】
サンドイッチELISA法の具体的手順を以下に示す。抗Cry j 1抗体をマイクロプレートの各ウェルに固相化し、洗浄後、ポストコーティングを行う。さらに洗浄後、試料溶液または標準アレルゲン溶液を添加し一次反応を行う。洗浄後、抗Cry j 1ビオチン標識抗体を添加し二次反応を行う。さらに洗浄後、酵素試薬ストレプトアビジンHRPを添加し、洗浄後、基質o−フェニレンジアミンを添加し発色反応を行う。希硫酸の添加により反応停止後、490nmの波長における吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて測定する。あらかじめ標準アレルゲン溶液を用いて作成した検量線から、各試料中のアレルゲン濃度を求める。
【0076】
結果を図13に示す。試料5種類のいずれも溶液中のアレルゲン濃度を減少させ、時間の経過とともにアレルゲン濃度は低下した。特に、実施例3および実施例4の試料については、5分で90%、30分で99%以上の減少率と、短時間で強いアレルゲン吸着作用が認められた。
【0077】
〔比較例1〕
実施例1で合成した水酸化フラーレンC60(OH)44・8H2Oを用いて、上記試験例1と同じアレルゲン吸着試験を同条件下で行った。結果は、60分後でも6.2%の減少に止まった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のフラーレン誘導体は抗アレルゲン・抗ウィルスの性能を有するものであり、マスクやフィルター製品に使用することができる。
【0079】
更に、本発明のフラーレン誘導体は親水性と疎水性とを併せ持つ両親媒性という特性を有しており、各種の材料の表面に塗布、含浸、または化学的に結合させることができる。そのため、新しい有機合成、高分子変性、表面改質、医療分野等における利用可能性がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基およびハロゲン基を有することを特徴とするフラーレン誘導体。
【請求項2】
一般式CpXn(OH)m (pは60以上の偶数、Xはハロゲン基、nは0より大きな48以下の数、m は0より大きな44以下の数)で表わされることを特徴とする請求項1記載のフラーレン誘導体。
【請求項3】
ハロゲン基が塩素であることを特徴とする請求項1または2記載のフラーレン誘導体。
【請求項4】
ハロゲン基が臭素であることを特徴とする請求項1または2記載のフラーレン誘導体。
【請求項5】
ハロゲン基がフッ素であることを特徴とする請求項1または2記載のフラーレン誘導体。
【請求項6】
フラーレン核がC60であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のフラーレン誘導体。
【請求項7】
フラーレン核がC70であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のフラーレン誘導体。
【請求項8】
フラーレン核がC60を含む、C70以上の高次フラーレンとの混合物であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のフラーレン誘導体。
【請求項9】
フラーレン核にハロゲン基が結合しているハロゲン化フラーレンを、一部のハロゲン基を残したまま、水酸基をフラーレン核に結合させて、部分ハロゲン化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項10】
ハロゲン基が塩素である塩素化フラーレンと過酸化水素とを反応させることを特徴とする請求項9記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項11】
ハロゲン基が塩素である塩素化フラーレンと水酸化ナトリウムとを反応させることを特徴とする請求項9記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項12】
ハロゲン基が塩素である塩素化フラーレンと水酸化カリウムとを反応させることを特徴とする請求項9記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項13】
ハロゲン基が臭素である臭素化フラーレンと水酸化ナトリウムとを反応させることを特徴とする請求項9記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項14】
ハロゲン基が臭素である臭素化フラーレンと水酸化カリウムとを反応させることを特徴とする請求項9記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項15】
フラーレン核に水酸基が結合している水酸化フラーレンを、一部の水酸基を残したまま、ハロゲン基をフラーレン核に結合させて、部分ハロゲン化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項16】
フラーレン核に水酸基が結合している水酸化フラーレンを、塩化ヨウ素と反応させて、一部の水酸基を残したまま、塩素をフラーレン核に結合させて、部分塩素化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項17】
請求項1から8の何れかのフラーレン誘導体を含んでいることを特徴とするアレルゲン吸着剤。
【請求項1】
水酸基およびハロゲン基を有することを特徴とするフラーレン誘導体。
【請求項2】
一般式CpXn(OH)m (pは60以上の偶数、Xはハロゲン基、nは0より大きな48以下の数、m は0より大きな44以下の数)で表わされることを特徴とする請求項1記載のフラーレン誘導体。
【請求項3】
ハロゲン基が塩素であることを特徴とする請求項1または2記載のフラーレン誘導体。
【請求項4】
ハロゲン基が臭素であることを特徴とする請求項1または2記載のフラーレン誘導体。
【請求項5】
ハロゲン基がフッ素であることを特徴とする請求項1または2記載のフラーレン誘導体。
【請求項6】
フラーレン核がC60であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のフラーレン誘導体。
【請求項7】
フラーレン核がC70であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のフラーレン誘導体。
【請求項8】
フラーレン核がC60を含む、C70以上の高次フラーレンとの混合物であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のフラーレン誘導体。
【請求項9】
フラーレン核にハロゲン基が結合しているハロゲン化フラーレンを、一部のハロゲン基を残したまま、水酸基をフラーレン核に結合させて、部分ハロゲン化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項10】
ハロゲン基が塩素である塩素化フラーレンと過酸化水素とを反応させることを特徴とする請求項9記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項11】
ハロゲン基が塩素である塩素化フラーレンと水酸化ナトリウムとを反応させることを特徴とする請求項9記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項12】
ハロゲン基が塩素である塩素化フラーレンと水酸化カリウムとを反応させることを特徴とする請求項9記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項13】
ハロゲン基が臭素である臭素化フラーレンと水酸化ナトリウムとを反応させることを特徴とする請求項9記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項14】
ハロゲン基が臭素である臭素化フラーレンと水酸化カリウムとを反応させることを特徴とする請求項9記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項15】
フラーレン核に水酸基が結合している水酸化フラーレンを、一部の水酸基を残したまま、ハロゲン基をフラーレン核に結合させて、部分ハロゲン化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項16】
フラーレン核に水酸基が結合している水酸化フラーレンを、塩化ヨウ素と反応させて、一部の水酸基を残したまま、塩素をフラーレン核に結合させて、部分塩素化水酸化フラーレンを生成することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項17】
請求項1から8の何れかのフラーレン誘導体を含んでいることを特徴とするアレルゲン吸着剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−162468(P2011−162468A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25303(P2010−25303)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000219222)東タイ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000219222)東タイ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
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