説明

フリップ実装した高周波モジュール

【課題】GND電位を確保するための構成を有しないICチップについて、設計性能を維持し、かつ、ノイズ特性を確保し、さらに薄い形態のモジュールを提供すること。
【解決手段】配線基盤101に集積回路素子112をフリップ実装したモジュール100であって、モジュール100は、配線基板101と接続され、集積回路素子112を外部と遮断する導電性収容容器102を有し、集積回路素子112は、導電性収容容器102と導電性部材116で接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波回路のモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に内蔵するモジュールは、特に厚さ方向において、小型であることが要求される。
そこで、従来、モジュールを薄くするために、プリント基板にICチップをフリップ実装する技術が実施されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図4は、フリップ実装を使用した従来のアナログ高周波モジュールの一例を示す概略図である。
図4に示すように、アナログ高周波モジュール1は、外部接続用半田ボール8が接続されているプリント基板2を有する。そして、プリント基板2とシールドケース4及び半田6,6によって形成された空間Sに高周波ICチップ10が格納されている。高周波ICチップ10は半田12によってプリント基板2にフリップ実装されている。
ここで、フリップ実装とは、パッケージに格納されていない集積回路素子(いわゆるベアチップ)の実装方法であり、図4に示すように、高周波ICチップ10のプリント基板2側の外面に半田バンプ12,12を形成し、プリント基板2上に半田付けして実装するものである。
また、プリント基板2には、ベースバンド用ICチップ14が半田16によってフリップ実装されている。
なお、プリント基板2にはGND(Ground)用板3が配置され、半田6とGND確保用電線8によって接続されている。
このような構成によって、アナログ高周波モジュールの薄型化が図られている。
【特許文献1】特開平11−87549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アナログ高周波ICチップにも複数の種類があり例えば、プリント基板に対向する面にGND電位確保用のパッド等のGND電位を確保するための構成を有しないアナログ高周波ICチップがある。このようなアナログ高周波ICチップをフリップ実装すると、アナログ高周波ICチップのGND電位が確保できない場合があるという問題がある。このため、アナログ高周波ICチップ上のトランジスタのバックゲート端子の電位が設計時と異なり、回路全体の動作も設計性能とは異なる場合がある。
また、例えばICチップ上に形成されたコイル等の、ICチップシリコン基板との間に大きな寄生容量のつくデバイスがあった場合、これらのコイル等に流れる交流電流がICチップシリコン基板に流れ込むが、アナログ高周波ICチップのGND電位が確保できないと、ICチップシリコン基板に流れ込んだ上述の交流電流が近傍のコイル等にこのコイルの寄生容量を通して流れ込み、正常な回路動作を阻害するという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、GND電位を確保するための構成を有しないICチップについて、設計性能を維持し、かつ、ノイズ特性を確保し、さらに薄い形態のモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的は、第1の発明によれば、配線基板に集積回路素子をフリップ実装したモジュールであって、前記配線基板と接続され、前記集積回路素子を外部と遮断する導電性収容容器を有し、前記集積回路素子は、前記導電性収容容器と導電性部材で接続されていることを特徴とするモジュールにより達成される。
【0007】
第1の発明の構成によれば、前記モジュールは、配線基盤に集積回路素子がフリップ実装されている。
したがって、モジュールを非常に薄く構成することができる。
また、前記導電性収容容器は前記配線基板と接続されているから、前記配線基板のGND電位が確保されていれば、前記配線基板に接続されている前記導電性収容容器のGND電位も確保することができる。そして、前記集積回路素子が、前記導電性収容容器と前記導電性部材で接続されているから前記集積回路素子のGND電位も確保される。なお、前記配線基板のGND電位を確保することは、容易である。
したがって、ICチップ自体がGND電位を確保するための構成を有しない場合でも、上述の構成によってGND電位を確保することができるから、設計性能を維持することができる。
さらに、前記導電性収容容器によって、外部からのノイズを遮断することができる。
これにより、GND電位を確保するための構成を有しないICチップについて、設計性能を維持し、かつ、ノイズ特性を確保し、さらに薄い形態のモジュールを提供することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記集積回路素子は、前記導電性部材側に導電性層部を有し、前記導電性層部が前記導電性収容容器と前記導電性部材で接続されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明の構成によれば、前記集積回路素子は、前記導電性層部を有し、前記導電性層部が前記導電性収容容器と前記導電性部材で接続されているから、前記集積回路素子のGND電位を効果的に確保することができる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明の構成において、前記導電性部材は、前記導電性層部の全面に接していることを特徴とする。
【0011】
第3の発明の構成によれば、前記導電性部材は、前記導電性層部の全面に接しているから、前記導電性層部の一部がGND電位とならないことを、防止することができる。
【0012】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの構成において、前記導電性部材は、軟性部材であることを特徴とする。
【0013】
第4の発明の構成によれば、前記導電性部材は、軟性部材であるから、前記導電性収容容器から応力を受けた場合にその応力を吸収することができる。このため、前記導電性収容容器からの応力が前記集積回路素子に及ぶことを未然に防止することができる。
【0014】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの構成において、前記集積回路素子は、アナログ高周波集積回路素子であることを特徴とする。
【0015】
第5の発明の構成によれば、前記集積回路素子は、アナログ高周波集積回路素子であるから、フリップ実装を行うための設計になっていないアナログ高周波集積回路素子について、設計性能を維持し、かつ、ノイズ特性を確保し、さらに薄い形態のモジュールを提供することができる。
【0016】
第6の発明は、第1の発明乃至第5の発明の構成において、前記導電性部材は、導電性ペースト、導電性ゴム、導電性バネ、導電性スポンジ、導電性接着剤又は金属板のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のモジュール。
【0017】
第6の発明の構成によれば、前記導電性部材は、前記導電性部材は、導電性ペースト、導電性ゴム、導電性バネ、導電性スポンジ、導電性接着剤又は金属板のいずれかであるから、確実に前記集積回路素子と前記導電性収容容器との電気的物理的接続確保し、かつ、前記導電性収容容器からの応力が前記集積回路素子に及ぶことを確実に防止することができる。
【0018】
第7の発明は、第1の発明乃至第6の発明のいずれかの構成において、前記導電性層部の全面と接する導電性確保部材を有することを特徴とする。
【0019】
第7の発明の構成によれば、前記導電性層部の全面と接する導電性確保部材を有するから、前記集積回路素子のGND電位を確実に確保することができる。
【0020】
第8の発明は、第1の発明乃至第7の発明のいずれかの構成において、前記導電性部材の寄生インダクタンスが、前記集積回路素子の正常な動作のための許容範囲内であることを特徴とする。
【0021】
第8の発明の構成によれば、前記導電性部材の寄生インダクタンスが、前記集積回路素子の正常な動作のための許容範囲内であるから、前記寄生インダクタンスによって前記集積回路素子の正常な動作を阻害されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態のアナログ高周波モジュール100を示す概略図である。このアナログ高周波モジュール100は、モジュールの一例である。
【0024】
図1に示すように、アナログ高周波モジュール100は、配線基板である例えば、プリント基板101を有する。このプリント基板101は、図示しないGND電位確保手段によって、GND電位が確保されている。
プリント基板101の外面101bには、外部と接続するための外部接続用半田ボール106,106及び、ベースバンド用ICチップ108が配置されている。ベースバンド用ICチップ108は、プリント基板101に、半田110,110によってフリップ実装されている。
【0025】
また、このプリント基板101の外面101aには、集積回路素子である例えば、高周波ICチップ112がフリップ実装されている。この高周波ICチップ112はアナログ高周波ICチップであり、アナログ高周波集積回路素子の一例である。
【0026】
すなわち、高周波ICチップ112は、パッケージに格納されていない、いわゆるベアチップであり、高周波ICチップ112のプリント基板101側の外面112bに半田バンプ114,114を形成し、プリント基板101上に半田付けして実装されている。上述のように、ベースバンド用ICチップ108もプリント基板101にフリップ実装されている。このように、プリント基板101にベースバンド用ICチップ108及び高周波ICチップ112がフリップ実装されているから、モジュールを非常に薄く構成することができる。
また、プリント基板101の外面101bにベースバンド用ICチップ108がフリップ実装され、プリント基板101の外面101aに高周波ICチップ112がフリップ実装されているから、図4のアナログ高周波モジュール1の構成よりも、平面的な寸法も小さくすることができる。
【0027】
図1に示すようにアナログ高周波モジュール100は、導電性収容容器である例えば、シールドケース102を有する。シールドケース102は金属で形成されており、半田104,104によってプリント基板101に接続されている。上述のように、プリント基板101はGND電位が確保されているから、プリント基板101と電気的物理的に接続されているシールドケース102もGND電位が確保されている。
図1に示すように、プリント基板101とシールドケース102とで空間Tを形成し、空間Tに高周波ICチップ112を格納することで、高周波ICチップ112を外部と遮断する構成となっている。これにより、アナログ高周波モジュール100の外部からの電磁波によるノイズが、高周波ICチップ112に影響することを防止することができる。
【0028】
図1に示すように、高周波ICチップ112は、シールドケース102と導電性部材である例えば、導電性ペースト116で接続されている。すなわち、高周波ICチップ112は、導電性ペースト116によって、シールドケース102に電気的物理的に接続されている。そして、上述のように、シールドケース102はGND電位が確保されているから、高周波ICチップ112のGND電位も確保される。
したがって、高周波ICチップ112自体が、GND電位を確保するための構成を有しなくても、上述の構成によって高周波ICチップ112のGND電位を確保することができるから、高周波ICチップ112の設計性能を維持することができる。
また、導電性ペースト116は軟性部材であるから、シールドケース102から応力を受けた場合にその応力を吸収することができる。このため、シールドケース102からの応力が高周波ICチップ112に及ぶことを未然に防止することができる。
【0029】
図1に示すように、高周波ICチップ112は、導電性ペースト116側に導電性部である例えば、金属被覆層112cを有する。金属被覆層112cは、高周波ICチップ112の製造過程において例えば、ウエハ製造の段階でAu等の金属を加えることによって生成される。
そして、図1に示すように、金属被覆層112cの外面112aがシールドケース102と導電性ペースト116で接続されている。
このため、高周波ICチップ112のGND電位を効果的に確保することができる。
【0030】
図1に示すように、導電性ペースト116は、金属被覆層112の全面に接している。 このため、金属被覆層112の一部がGND電位とならないことを、防止することができる。
【0031】
以上の構成により、GND電位を確保するための構成を有しないICチップについて、設計性能を維持し、かつ、ノイズ特性を確保し、さらに薄い形態のモジュールを提供することができる。
【0032】
なお、本実施の形態とは異なり、高周波ICチップ112とシールドケース102を導
導電性ゴム、導電性バネ、導電性スポンジ、導電性接着剤で接続するように構成してもよい。
【0033】
(第1の実施の形態の変形例)
図2は、アナログ高周波モジュール200を示す概略図である。
図2に示すように、アナログ高周波モジュール200の導電性ペースト116Aは、シールドケース102の空間T側の上面102aの全面と接触している。
このため、高周波ICチップ112のGND電位をより効果的に確保することができる。
【0034】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について、説明する。
第2の実施の形態におけるアナログ高周波モジュール300の構成は、上記第1の実施の形態のアナログ高周波モジュール100と多くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、主な相違点を中心に説明する。
【0035】
図3は、アナログ高周波モジュール300等を示す概略図である。
図3(a)に示すように、アナログ高周波モジュール300は、高周波ICチップ112の金属被覆層112cの外面112aの全面と接する導電性確保部材である例えば、金属板118を有する。
そして、金属板118とシールドケース102が、金属バネ120によって電気的物理的に接続されている。
【0036】
上述のように、高周波ICチップ112は、金属バネ120だけではなく、金属板118を介してシールドケース102と接続されているから、高周波ICチップ112のGND電位を確実に確保することができる。
【0037】
なお、金属バネ120は、その寄生インダクタンスが、高周波ICチップ112の正常な動作の許容範囲内になるように構成されている。例えば、図3(b)に示すように、金属バネ120の幅W1は、金属バネ120の寄生インダクタンスが高周波ICチップ112の正常な動作の許容範囲内になるように例えば、幅W2よりも大きい。
このため、寄生インダクタンスによって高周波ICチップ112の正常な動作が阻害されることを防止することができる。
【0038】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施の形態のアナログ高周波モジュールを示す概略図である。
【図2】アナログ高周波モジュールを示す概略図である。
【図3】第2の実施の形態のアナログ高周波モジュールを示す概略図である。
【図4】従来のアナログ高周波モジュールの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0040】
100,200,300・・・アナログ高周波モジュール、101・・・プリント基板、102・・・シールドケース、104,110・・・半田、106・・・外部接続用半田ボール、108・・・ベースバンド用ICチップ、112・・・高周波ICチップ、116,116A・・・導電性ペースト、118・・・金属板、120・・・金属バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に集積回路素子をフリップ実装したモジュールであって、
前記配線基板と接続され、前記集積回路素子を外部と遮断する導電性収容容器を有し、
前記集積回路素子は、前記導電性収容容器と導電性部材で接続されていることを特徴とするモジュール。
【請求項2】
前記集積回路素子は、前記導電性部材側に導電性層部を有し、
前記導電性層部が前記導電性収容容器と前記導電性部材で接続されていることを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記導電性部材は、前記導電性層部の全面に接していることを特徴とする請求項2に記載のモジュール。
【請求項4】
前記導電性部材は、軟性部材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のモジュール。
【請求項5】
前記集積回路素子は、アナログ高周波集積回路素子であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のモジュール。
【請求項6】
前記導電性部材は、導電性ペースト、導電性ゴム、導電性バネ、導電性スポンジ、導電性接着剤又は金属板のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のモジュール。
【請求項7】
前記導電性層部の全面と接する導電性確保部材を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のモジュール。
【請求項8】
前記導電性部材の寄生インダクタンスが、前記集積回路素子の正常な動作のための許容範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−66612(P2006−66612A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246904(P2004−246904)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】