説明

フリーサイズオーバーシューズ

【課題】 様々なサイズの靴にぴったりとフィットし且つ容易に脱着できるとともに、水の浸透を防ぎ、汚れが付着し難く、また汚れを落としやすいフリーサイズオーバーシューズを提供する。
【解決手段】 上面で靴底を受けるソール部2と、その周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部3とが、弾性変形容易なゴム素材で一体に形成されている。ソール部2と靴包囲部3を靴のサイズに合わせて前後方向に引き伸ばして靴包囲部3内に靴を収容したときに、ソール部2底面のつま先側と踵側に形成されたそれぞれのトレッドパターンが、ソール部2の前後方向途中に設けられたコルゲーション(易伸縮部)4の伸長によって、靴底に適正に対応する位置に収まり、且つ、靴包囲部3は、その上端部分の周方向の伸長が伸縮抑制リブ(伸縮抑制部)5によって抑制されることで内側に傾倒変位して靴の周囲に密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々なサイズの靴に装着可能なオーバーシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、造船所で建造中の船体の内装作業において、船室が上下複数階にある中規模の船体では、通常安全靴を履いた作業者が舷側に設けられた出入口から船内に入り、上階の船室から下階の船室へ順次移動しながら各室内の塗装や装飾を行っており、下階の船室の作業が終了した後は、再び内装作業が完了している上の階の船室を通って出入口に戻るようにしている。
【0003】
ところが、安全靴は、靴底の耐久性を高めるために、靴底のゴム素材に補強材として配合されるカーボンが一般の靴より多量に含まれており、内装済みの船室の通って戻る際に、安全靴でそのまま歩くと、床面と靴底との摩擦によって靴底のゴム素材に含まれている黒色のカーボンが色落ちして塗装済みの床面を汚してしまうため、内装作業を行う際には、通常安全靴にオーバーシューズを装着している。
【0004】
従来のオーバーシューズは、例えば、特許文献1に記載されているような布製やビニール製のものが一般的である。図7は、従来用いられている布製のオーバーシューズの1例を示す斜視図であって、同図に示すように、オーバーシューズA1は、全体が布A2で袋状に形成されており、ゴム入りの伸縮自在の開口部A3から靴を挿入するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した図7に示すような布製のオーバーシューズは、布を袋状に縫製して作られているために、装着する靴に多少大小のサイズの差があっても装着することができるが、靴を差し込む開口部が常時ゴムの弾力で狭められているため、開口部から靴先をオーバーシューズの奥まで入れることが困難であった。
【0007】
また、オーバーシューズを靴に装着したときには、襞状になった布が靴の周囲にだぶついて、靴底の幅よりもオーバーシューズの幅が広くなるので歩きにくく、また、小さいサイズの靴に装着して歩行すると、オーバーシューズのだぶついた部分を床面近くに配置されている器具類に引っ掛けて損傷したり、自分の足で踏んでつまずく虞があった。
【0008】
また、船室の内装作業で用いる場合には、下方の船室の床面には、鉄錆等の汚水溜まりが存在し、特に、布製のオーバーシューズでは、このような汚水に浸かると濡れて汚れがしみ込んでしまい、内装済みの船室内に入る際に、汚れ除去用マットの上で擦ってもオーバーシューズに付着した汚れを除去することが困難であるため床面を汚してしまう問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、前述したような従来技術における問題点を解消し、様々なサイズの靴にぴったりとフィットし且つ容易に脱着できるとともに、水の浸透を防ぎ、汚れが付着し難く、また汚れを落としやすいフリーサイズオーバーシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的のために提供される本発明のフリーサイズオーバーシューズは、上面で靴底を受けるソール部と、前記ソール部の周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部とが、弾性変形容易なゴム素材によって一体に形成されている。
【0011】
前記ソール部の前後方向途中位置には、当該ソール部の前後方向の伸縮変形を容易にするための易伸縮部が設けられているとともに、前記ソール部底面のつま先側と踵側には、前記易伸縮部を間に挟んで滑り止め用のトレッドパターンがそれぞれ形成され、前記靴包囲部の上端近傍部分には、その略全周に亘って当該靴包囲部の周方向の伸縮変形を抑制する伸縮抑制部が設けられている。
【0012】
本発明のフリーサイズオーバーシューズにおいては、ソール部ならびに靴包囲部を、装着する靴のサイズに合わせて前後方向に引き伸ばして靴包囲部内に靴を収容したときに、ソール部底面のつま先側と踵側のそれぞれのトレッドパターンが、易伸縮部の伸長によって靴底に適正に対応する位置に収まり、且つ、靴包囲部は、その上端部分の周方向の伸長が前記伸縮抑制部によって抑制されることにより、内側に傾倒変位して靴の周囲に密着することを特徴としている。
【0013】
本発明のフリーサイズオーバーシューズにおいては、易伸縮部がソール部の略全幅に亘って形成されたコルゲーションからなることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明に係るフリーサイズオーバーシューズによれば、靴底を受けるソール部と靴の周囲を覆う靴包囲部が弾性伸縮変形容易なゴム素材によって一体に形成されているため、防水性と耐久性に優れ、様々なサイズの靴に対応することができる。また、汚れが付着しにくく、汚れが付着した場合にも、靴に装着したしたまま布やマットの上で擦って簡単に落とすことができる。
【0015】
また、靴に装着する際ソール部が引き伸ばされると、主に易伸縮部が伸長変形するため、その前後に形成されている滑り止め用のトレッドパターンは、形状がほとんど変形することなく靴底に適正に対応する位置に収まるため、滑り止め効果を有効に保つことができる。
【0016】
また、靴包囲部がソール部の周縁部から略垂直に立ち上がった筒状に形成されているため、靴の出し入れを容易に行うことができるとともに、ソール部ならびに靴包囲部を装着する靴のサイズに合わせて前後方向に伸長させて靴包囲部内に靴を収容したときに、靴包囲部が内側に傾倒変位して靴の周囲に密着するため、様々なサイズの靴にぴったりとフィットし、従来の布製のオーバーシューズのように余った靴の周囲に襞状にはみ出した部分を床面近くに配置されている器具類に引っ掛けたり、自分の足で踏んでつまづく虞がない。
【0017】
また、請求項2記載の発明に係るフリーサイズオーバーシューズによれば、易伸縮部がソール部の略全幅に亘るコルゲーションで形成されているため、製作が容易で且つ柔軟な伸縮性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るフリーサイズオーバーシューズの1実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るフリーサイズオーバーシューズの1実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係るフリーサイズオーバーシューズの1実施形態を示す底面図である。
【図4】本発明に係るフリーサイズオーバーシューズの1実施形態における靴への装着方法を説明する縦断面図である。
【図5】本発明に係るフリーサイズオーバーシューズの1実施形態における靴への装着を完了した状態を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係るフリーサイズオーバーシューズの1実施形態における靴へ装着した状態を示す斜視図である。
【図7】従来用いられている布製のオーバーシューズの1例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明のフリーサイズオーバーシューズ(以下、単にオーバーシューズという。)の1実施形態を示す斜視図、図2はその縦断面図、図3はその底面図であって、これらの図に示すように、本発明のオーバーシューズ1は、上面で靴底を受けるソール部2と、このソール部2の周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部2と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部3から構成されている。また、これらのソール部2と靴包囲部3とは、弾性変形容易なゴム素材によって一体に成形されている。
【0020】
本実施形態のオーバーシューズ1においては、靴に装着していない状態で、ソール部2の前後方向の長さは、対応可能な靴のサイズの最小長さのものより短く製作されていて、その前後方向途中位置には、靴に装着する際に、前後方向に大きく伸縮変形できるように、易伸縮部としての波状のコルゲーション4が形成されている。
【0021】
また、本実施形態のものにおいては、筒状になっている靴包囲部3の上端近傍部分は、その略全周に亘って、他の部分よりも厚みを増加させて形成した、伸縮抑制部としての伸縮抑制リブ5が設けられている。
【0022】
前記伸縮抑制リブ5を設けたことによって、オーバーシューズ1を前後方向に引っ張ってソール部2とともに筒状の靴包囲部3を前後方向に引き伸ばしたときに、靴包囲部3の上端近傍部分の伸び量が他の部分よりも少なく制限されるため、靴包囲部3の上部が内側に倒れ込むように変位する。
【0023】
靴包囲部3の後部上端には、オーバーシューズ1を靴に着脱する際、指でつまんで引っ張るためのタブ6が伸縮抑制リブ5に連続して一体に形成されている。また、ソール部2の底面側には、図3に示すように、コルゲーション4の前後において、ソール部2の底面から様々な輪郭形状のつま先側滑り止め用凸部7A〜7Hと踵側滑り止め用凸部8A〜8Gを突出させてなる滑り止め用のトレッドパターンが形成されている。
【0024】
なお、これらのつま先側滑り止め用凸部7A〜7Hと踵側滑り止め用凸部8A〜8G凸部の周縁は、垂直に切り立ったエッジになっていると汚れが付着して落ちにくいので、鈍角に面取りされているか丸く角を落としてあることが望ましい。なお、これらのトレッドパターンは、本実施形態のものに限らず、オーバーシューズの使用場所等に応じて様々に異なるパターンを用いることができる。
【0025】
次に、前述したように構成されているオーバーシューズ1を靴に装着する場合には、先ず、図4に示すように、オーバーシューズ1の靴包囲部3内に、靴Sのつま先側をソール部2上面に突き当たるまで斜めに差し込む。
【0026】
この際、靴包囲部3は筒状になっているため、容易に靴Sの前側をオーバーシューズ1内に挿入することができる。この状態で、一方の手でオーバーシューズ1の前寄りの部分のソール部2下面と靴包囲部3の両側面とを包むようにつかんで保持し、タブ6を後方に引っ張る。
【0027】
そうすると、図5に示すように、オーバーシューズ1は、そのゴム素材の弾力性によって前後方向に伸長するので、引っ張った状態で靴Sの踵側をソール部2の上面に当接するまで靴包囲部3内に挿入する。
【0028】
この際、ソール部2底面のつま先側と踵側にそれぞれ形成されている滑り止め用のトレッドパターンは、トレッドパターンは、ソール部2が前後に引っ張られたときに、コルゲーション4部分が主に伸長変形するため、形状がほとんど変形することなく靴Sの底に適正に対応する位置に収まり、滑り止め効果を有効に保つことができる。
【0029】
また、ソール部2の伸長に伴って、これと連続している靴包囲部3も前後方向に伸びるが、靴包囲部3の上端近傍部分は、伸縮抑制リブ5が設けられていることによって、伸長量が他の部分より少なく抑えられる。
【0030】
そして、靴Sにオーバーシューズ1を完全に装着した状態では、図6に示すように、靴包囲部3が靴Sを包み込むように内側に傾倒変位して、靴Sの周囲にぴったりと密着するため、室内の内装作業等の際に、布製のオーバーシューズのように、床面付近に配置されている器具類に引っ掛けたり、自分の足で踏んでつまづくような虞はなく、また、使用中にオーバーシューズ1が靴Sから不用意に脱落してしまうこともない。
【0031】
なお、本実施形態のオーバーシューズ1のゴム素材の組成は、下記の通りである。
天然ゴム : 100.0
加硫剤 :イオウ 1.5
加硫助剤 :酸化亜鉛 5.0
加硫助剤 :ステアリン酸 1.0
加硫促進剤:ジフェニール・グアニジン 1.5
老化防止剤:パラフィンワックス 1.0
粘着剤 :クマロンインデン樹脂 1.5
白色補強剤:シリカ 50.0
軟化剤 :プロセスオイル 15.0
顔料 適 量
合 計 176.5
(ここで各数値は、重量比による配合比率を表している。)
【0032】
上記組成のゴム素材を使用している本実施形態におけるオーバーシューズ1は、23cmから32cmまでのサイズの靴に対応できる伸縮性を有している。また、シリカからなる白色補強剤を用いているため、使用中に補強剤が色落ちして床面等を汚す虞はない。
【0033】
しかしながら、本発明のオーバーシューズに用いられるゴム素材の組成はこれに限定するものではなく、また、天然ゴムに配合する各添加剤の配合比率や種類についても、本発明のオーバーシューズの本来の機能を損なわない範囲において適宜変更可能であり、例えば、使用する目的に応じて、添加剤を選択して電気絶縁性や耐薬品性等を高めるようにしてもよい。
【0034】
また、前述した実施形態のものにおいては、靴包囲部3の上端近傍部分の伸縮変形を抑制するための伸縮抑制部を、他の部分よりも厚みを増加させて形成した伸縮抑制リブ5で構成しているが、伸縮抑制部はこのような構造のみに限定するものではない。
【0035】
例えば、ゴム素材で形成されている靴包囲部の上端近傍部分の中に、周方向に当該ゴム素材より弾性伸縮し難い合成樹脂の糸や金属のワイヤ等を埋設したり、靴包囲部の上端近傍部分のみ弾性伸縮し難いゴム素材を用いて伸縮抑制部を構成してもよい。
【0036】
また、前述した実施形態のものにおいては、製作が容易で且つ柔軟な伸縮性が得られることから、ソール部2に形成した波状のコルゲーション4によって易伸縮部を構成しているが、易伸縮部は本実施形態に限定するものではなく、例えば、コルゲーションに変えて、ゴム素材の肉厚の厚い部分と薄い部分で網目状構造にして柔軟に伸縮できる構造としてもよく、また、易伸縮部を他の部分よりの柔軟に伸縮する別のゴム素材を用いて構成して隣接するゴム素材と一体に成形してもよい。
【0037】
さらに、ソール部のゴム素材の肉厚を一部薄くし、柔軟に伸縮変形できるようにして易伸縮部を構成したり、ソール部の途中部分を前後方向に伸縮し易くするために、ソール部底面の幅方向両側から中央に向けて円弧状に括れさせて易伸縮部を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のフリーサイズオーバーシューズは、船舶の内装作業に特に好適に用いることができる他、住居の新築や改築の際の内装作業や、クリーンルーム、放射線設備における様々な作業、さらには、雨天や降雪の際に靴に装着して靴を濡らさないように保護する用途等、幅広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 オーバーシューズ
2 ソール部
3 靴包囲部
4 コルゲーション(易伸縮部)
5 伸縮抑制リブ(伸縮抑制部)
6 タブ
7A、7B、7C、7D、7E、7F、7G、7H つま先側滑り止め用凸部
8A、8B、8C、8D、8E、8F、8G 踵側滑り止め用凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面で靴底を受けるソール部と、前記ソール部の周縁部から略垂直に立ち上がるように当該ソール部と下端側が全周に亘って連続した筒状の靴包囲部とが、弾性変形容易なゴム素材によって一体に形成されてなり、
前記ソール部の前後方向途中位置には、当該ソール部の前後方向の伸縮変形を容易にするための易伸縮部が設けられているとともに、前記ソール部底面のつま先側と踵側には、前記易伸縮部を間に挟んで滑り止め用のトレッドパターンがそれぞれ形成され、
前記靴包囲部の上端近傍部分には、その略全周に亘って当該靴包囲部の周方向の伸縮変形を抑制する伸縮抑制部が設けられ、
ソール部ならびに靴包囲部を、装着する靴のサイズに合わせて前後方向に引き伸ばして靴包囲部内に靴を収容したときに、ソール部底面のつま先側と踵側のそれぞれのトレッドパターンが、易伸縮部の伸長によって靴底に適正に対応する位置に収まり、且つ、靴包囲部は、その上端部分の周方向の伸長が前記伸縮抑制部によって抑制されることにより、内側に傾倒変位して靴の周囲に密着することを特徴とするフリーサイズオーバーシューズ。
【請求項2】
易伸縮部がソール部の略全幅に亘って形成されたコルゲーションからなることを特徴とする請求項1に記載のフリーサイズオーバーシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−167435(P2011−167435A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35632(P2010−35632)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【特許番号】特許第4502337号(P4502337)
【特許公報発行日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(595042896)スタ−コックス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】