説明

フルオレン二量体及び三量体

光電子デバイスは式Iの三重項障壁化合物を含む。式中のR1は各々独立にC1-20ヒドロカルビルであるが、少なくとも1つのR1はR3であり、R2は各々独立にC1-20ヒドロカルビル、C1-20ヒドロカルビロキシ、C1-20チオエーテル、C1-20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノであり、R3は−R4XR5であり、R4は直接結合、C1-20アリール、C1-20アリールアルキル、C1-20アルキルアリール、C1-20置換アリール、C1-20置換アリールアルキル又はC1-20置換アルキルアリールであり、R5はC1-20ヒドロカルビル又は炭素原子間に1以上のS、N、O又はP原子を含むC1-20ヒドロカルビルであり、R6はC1-20アルキル又はC1-20置換アルキルであり、Xは−O−、−S−、−COO−、−OOC−、−CSS−、−SSC−、NR6又はPR6であり、aは各々独立に0、1又は2であり、nは0又は1である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三重項障壁化合物及びこれを含む光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
OLEDデバイスでは、カソード及びアノードからそれぞれ注入された電子及び正孔(ホール)が発光層内で結合して一重項及び三重項励起子(エキシトン)を形成するが、これらの励起子は発光しながら放射減衰(輻射減衰)するか、発熱しながら無放射減衰(無輻射減衰)する。ほとんどの有機分子では、三重項状態からの発光はスピン禁止遷移過程であり、これは無放射モードの減衰と十分に競争できず、したがって、三重項励起子はそれほど発光性ではない。遷移金属錯体は、スピン軌道カップリングの作用で、無放射経路と競争できる効率をもって放射減衰することができる。これらの錯体をOLEDデバイスに取り入れる場合、デバイス中で形成される一重項及び三重項励起子の両方が発光できるので、ほぼ100%の内部量子効率を実現することが可能である。
【0003】
溶液処理し得るOLEDデバイスでは、遷移金属錯体は通常、ブレンドしたり、ポリマーホストに共有結合することによりポリマーホストに取り入れる。これらの種類のデバイスに適当なポリマーホストは、発光性ゲストの遷移金属錯体よりも高い三重項エネルギーを有し、これが望ましいエネルギー輸送を保証する。ホストポリマーで発生した三重項励起子は発光性ゲストに遭遇するまで移動し、エネルギー輸送がゲストを励起すると、発光が起こる。ホストからの三重項励起子は、アノード又はカソードに向かって移動することもでき、そこで無放射態様で減衰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2005/049546号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、三重項励起子を閉じ込めて発光性のゲストと遭遇する確率をできるだけ高め、電極、特にカソードに向かう移動を阻止することが望ましい。カソードに向かう励起子の移動を阻止する一つの方法として、ホスト発光層よりも高い三重項エネルギーを有する障壁層(ブロッキング層)をカソードと発光層の間に入れる。障壁層は、カソードからの電子注入を促進することもでき、良好な電子移動度を有することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡潔に述べると、1つの態様では、本発明は、式Iの三重項障壁化合物を含む光電子デバイス、特にOLEDを提供する。
【0007】
【化1】

式中、R1は各々独立にC1-20ヒドロカルビルであるが、少なくとも1つのR1はR3であり、
2は各々独立にC1-20ヒドロカルビル、C1-20ヒドロカルビロキシ、C1-20チオエーテル、C1-20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノであり、
3は−R4XR5であり、
4は直接結合、C1-20アリール、C1-20アリールアルキル、C1-20アルキルアリール、C1-20置換アリール、C1-20置換アリールアルキル又はC1-20置換アルキルアリールであり、
5はC1-20ヒドロカルビル又は炭素原子間に1以上のS、N、O又はP原子を含むC1-20ヒドロカルビルであり、
6はC1-20アルキル又はC1-20置換アルキルであり、
Xは−O−、−S−、−COO−、−OOC−、−CSS−、−SSC−、NR6又はPR6であり、
aは各々独立に0、1又は2であり、
nは0又は1である。
【0008】
別の態様では、本発明は式Iaの化合物を提供する。
【0009】
【化2】

式中、R1は各々独立にC1-20ヒドロカルビルであるが、少なくとも1つのR1はR3aであり、
2は各々独立にC1-20ヒドロカルビル、C1-20ヒドロカルビロキシ、C1-20チオエーテル、C1-20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノであり、
3aは炭素原子間に1以上のS、N、O又はP原子を含むC1-20ヒドロカルビルであり、
aは各々独立に0、1又は2であり、
nは0又は1である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、一連の層即ち、アノード、通常インジウム錫オキサイド(ITO)、ITOから有機層への正の電荷キャリヤの注入を容易にする正孔注入層、電子と正孔が再結合して発光する1つ又は2つ以上の発光層、式I又はIaの化合物を含む電子輸送兼三重項障壁層及び電子注入カソードを有する光電子デバイスに関する。
【0011】
表1に、オリゴマーのフルオレン単位の総数が変化するときのエネルギー準位の順序を示す。また、オリゴマー単位からなるポリマーは、同等のLUMO準位(したがって、発光層への電子の注入を促進する)及び若干深いHOMO準位(したがって、発光層から正孔が移動するのを抑制する)を有する。さらに、これらの材料は多層デバイスの溶液加工製造を可能にする溶解特性を有する。
【0012】
【表1】

したがって、式Iの化合物は、発光層の三重項準位がポリフルオレンの三重項準位(T1=2.11eV)以下であるデバイスで三重項障壁層として用いるのによく適している。
【0013】
これらの材料が電子の注入及び移動を促進するという要求を満たすべく、本発明の光電子デバイスは、フルオレンセグメントの9位に極性置換基を有する化合物を含む。したがって、1つの態様では、本発明は、光電子デバイスに三重項障壁材料として用いることのできる式Iの化合物に関する。極性置換基は、炭素原子間に1以上のS、N、O又はP原子を含有し、S、N、O又はPヘテロ原子を約10個以下含有することができる。用語「炭素原子間」は、ヘテロ原子がヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド(−CHO)などの末端基の一部ではないことを意味し、炭素原子間にある基としては、エーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル及びアミノ基があげられるが、これらに限らない。ヘテロ原子は、すべて1種類、例えばすべてO原子であっても、S、N、O及びPのいくつか、或いはすべてが混合されていてもよい。特に、ヘテロ原子は、1つ又は2つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル又はアミノ基の一部として存在することができる。
【0014】
特定の実施形態では、式Iの化合物は次式で表される。
【0015】
【化3】

別の実施形態では、式Iの化合物は次式で表される。
【0016】
【化4】

式中、R1は各々独立にアルキル又はR3とすることができる。
【0017】
特に、式Iの化合物では、R3は次式の基とすることができる。
【0018】
【化5】

式中、R7はC1-20ヒドロカルビル、C1-20ヒドロカルビロキシ、C1-20チオエーテル、C1-20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノであり、bは0、1又は2である。
【0019】
5はモルホリニル又はピロリジニルとすることができ、特に、R5は以下の化合物から選択することができる。
【0020】
【化6】

特定の実施形態では、R3は−O(CH2CH2O)mCH2CH2NR6(式中のmは0又は0〜約20の整数である)とすることができ、或いはR3は以下の化合物から選択することができる。
【0021】
【化7】

本発明の化合物の具体例では、
1がC817であって、R3が以下の基から選択されるもの、
【0022】
【化8】

1が次式の基
【0023】
【化9】

であって、R3が以下の基から選択されるもの、
【0024】
【化10】

1がC817であって、R3が次式の基であるもの、
【0025】
【化11】

1がC817であって、R3が次式の基であるもの、
【0026】
【化12】

1がC817であって、R3が次式の基であるもの、
【0027】
【化13】

1がC817であって、R3が次式の基であるもの、
【0028】
【化14】

1が次式の基
【0029】
【化15】

であって、R3が次式の基であるもの、
【0030】
【化16】

1が次式の基
【0031】
【化17】

であって、R3が次式の基であるもの、
【0032】
【化18】

1が次式の基
【0033】
【化19】

であって、R3が次式の基であるもの、
【0034】
【化20】

1が次式の基
【0035】
【化21】

であって、R3が次式の基であるものがある。
【0036】
【化22】

別の態様では、本発明は、
カソードと、
アノードと、
カソードとアノードの間に配置されたエレクトロルミネセント層と
エレクトロルミネセント層とカソードの間に配置され、式Iaの化合物を含有する層と
を含む、光電子デバイスに関する。
式Iaの化合物に包含される化合物群は式Iの化合物を含む。
【0037】
ある実施形態では、式Iaの化合物は次式の化合物であり、
【0038】
【化23】

別の実施形態では式Iaの化合物は次式の化合物である。
【0039】
【化24】

他の実施形態では、光電子デバイスは、R3aが少なくとも1つのエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル又はアルキルアミノ基を有するC1-20ヒドロカルビルである、式1aの化合物を含む。
【0040】
適当なオリゴマー障壁層の例の幾つかを表2に示す。
【0041】
【表2】

式Iの化合物は通常非晶質材料であり、適当な有機溶剤から蒸発キャスティング(evaporative casting)により薄膜にキャスティングできる。フルオレンオリゴマーの長さが約3フルオレンセグメントを超えない限り、これらのオリゴマーの三重項エネルギーはほとんどの発光ホスト材料より高くなり、三重項ブロッキングが起こり得る。
【0042】
式Iの化合物は、典型的なアリールカップリング反応、例えば鈴木又は山本カップリングにより簡単に製造することができる。特に式Iの化合物は、鈴木クロスカップリング反応により製造することができる。鈴木クロスカップリング反応の一般的な手順は、アリールハライドとホウ酸アリール(即ち、ボロン酸)を塩基及びPd触媒の存在下適当な溶剤中で混合し、不活性雰囲気下で加熱する工程を含む。適当な溶剤には、ジオキサン、THF、エタノール、トルエン及びこれらの混合物があるが、これらに限らない。塩基の例には、Na2CO3、K2CO3、Cs2CO3、リン酸カリウム及びこれらの水和物がある。塩基を固体粉末又は水溶液として反応系に添加することができる。適当な触媒には、Pd(PPh34、第2のリガンドを付加したPd(OAc)2及びPd(dba)2がある。リガンドの例には、下記のジアルキルホスフィノビフェニルリガンドがある。式中のCyはシクロヘキシルである。
【0043】
【化25】

光電子デバイスは、最も簡単な場合、アノード層、対応するカソード層及びこれらのアノードとカソードの間に配置されたエレクトロルミネセント(EL)層を有する。バイアス電圧を両電極間にかけると、電子がカソードからEL層中に注入され、一方電子がEL層から取り出される(「正孔」がアノードからEL層に「注入」される)。有機発光デバイス(OLED)では、発光が起こるのは、EL層内で正孔と電子が結合して一重項又は三重項励起子(エキシトン)を形成する際で、そして一重項及び/又は三重項励起子が放射減衰により基底状態へ減衰するにつれて発光が起こる。光起電(PV)デバイスでは、光吸収により電流を生じる。
【0044】
アノード、カソード及び発光材料以外に光電子デバイス内に存在しうる他の構成要素には、正孔注入層、電子注入層及び電子輸送層がある。電子輸送層はカソードと直接接触する必要はなく、しばしば電子輸送層は正孔障壁層としても作用して正孔がカソードに向かって移動するのを阻止する。有機発光デバイス内に存在しうる他の構成要素には、正孔輸送層、正孔輸送兼発光層及び電子輸送兼発光層がある。
【0045】
有機EL層、即ち発光層は、デバイスの作動時に、電子及び正孔の両方を有意な濃度で含有し、励起子形成及び発光にふさわしい位置を提供する、有機発光デバイス内の層である。正孔注入層は、アノードからOLEDの内部層への正孔の注入を促進する、アノードと接触した層であり、電子注入層は、カソードからOLED内への電子の注入を促進する、カソードと接触した層であり、電子輸送層は、カソード及び/又は電子注入層から電荷再結合位置への電子の伝導を容易にする層である。電子輸送層を有する有機発光デバイスの作動中、電子輸送層内に存在する電荷キャリヤ(即ち、正孔及び電子)の大部分は電子であり、発光は発光層内に存在する正孔と電子の再結合によって起こりうる。正孔輸送層は、OLEDの作動中に、アノード及び/又は正孔注入層から電荷再結合位置への正孔の伝導を容易にする層であり、この層がアノードと直接接触する必要はない。正孔輸送兼発光層は、OLEDの作動中に、電荷再結合位置への正孔の伝導を容易にする層であり、その層において、電荷キャリヤの大部分が正孔であり、発光は残留電子との再結合を介してだけでなく、デバイス内のどこかの電荷再結合区域からのエネルギーの輸送を介しても生起する。電子輸送兼発光層は、OLEDの作動中に、電荷再結合位置への電子の伝導を容易にする層であり、その層において、電荷キャリヤの大部分が電子であり、発光は残留正孔との再結合を介してだけでなく、デバイス内のどこかの電荷再結合区域からのエネルギーの輸送を介しても生起する。
【0046】
アノードとして用いるのに適当な材料には、四点プローブ法で測定して、バルク抵抗が約1000Ω/□である材料が好ましい。インジウム錫オキサイド(ITO)がアノードとしてよく用いられるが、それは光透過に対してほぼ透明であり、電気活性な有機層から発せられた光が抜け出るのを容易にするからである。アノード層として用いることのできる他の材料には、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、インジウム亜鉛オキサイド、亜鉛インジウム錫オキサイド、酸化アンチモン及びこれらの混合物がある。
【0047】
カソードとして用いるのに適当な材料には、負の電荷キャリヤ(電子)をOLEDの内部層に注入することができる通常の導電体、例えば金属があるがこれらに限らない。ITOなどの金属酸化物も用いることができる。カソードとして用いるのに適当な金属には、K、Li、Na、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、Au、In、Sn、Zn、Zr、Sc、Y、ランタノイド系列の元素、これらの合金及びこれらの混合物があげられる。カソード層として用いるのに適当な合金材料には、Ag−Mg、Al−Li、In−Mg、Al−Ca及びAl−Au合金がある。非合金層状構造、例えばカルシウムなどの金属もしくはLiFなどの金属フッ化物の薄い層をアルミニウム、銀などの金属の比較的厚い層で覆った構造もカソードに用いることができる。特に、カソードを単一の金属、中でもアルミニウム金属で構成することができる。
【0048】
式Iの化合物は、電子輸送層において、従来の材料、例えばポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,1−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、1,3,4−オキサジアゾール含有ポリマー、1,3,4−トリアゾール含有ポリマー、キノキサリン含有ポリマー及びシアノPPVの代わりに、或いはそれに加えて使用することができる。
【0049】
正孔輸送層に用いるのに適当な材料には、米国特許第6,023,371号に開示されているような、1,1−ビス((ジ−4−トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−(1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル)−4,4’−ジアミン、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン、フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン、トリフェニルアミン、1−フェニル−3−(p−(ジエチルアミノ)スチリル)−5−(p−(ジエチルアミノ)フェニル)ピラゾリン、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、銅フタロシアニン、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾール、トリアリールジアミン、テトラフェニルジアミン、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体及びポリチオフェンがあげられる。
【0050】
発光層に用いるのに適した材料は、エレクトロルミネセントポリマー、例えばポリフルオレン、好ましくはポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)及びこれらのコポリマー、例えばポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(F8−TFB)、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリフェニレンビニレン及びこれらの誘導体がある。さらに、発光層は、青、黄、橙、緑又は赤色ホスホレセント(リン光)色素、金属錯体及びこれらの組合せを含んでもよい。ホスホレセント色素として用いるのに適当な材料には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(赤色色素)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(緑色色素)及びイリジウム(III)ビス(2・(4,6・ジフルオロフェニル)ピリジナト・N,C2)(青色色素)があるが、これらに限らない。ADS(American Dyes Source社)から市販のエレクトロ蛍光及びエレクトロホスホレセント金属錯体を用いることもできる。ADS緑色色素には、ADS060GE、ADS061GE、ADS063GE、ADS066GE、ADS078GE及びADS090GEがある。ADS青色色素には、ADS064BE、ADS065BE及びADS070BEがある。ADS赤色色素には、ADS067RE、ADS068RE、ADS069RE、ADS075RE、ADS076RE、ADS067RE及びADS077REがある。
[定義]
ここで用いる用語「ヒドロカルビル」は、特記しないなら、水素と炭素のみを含む有機基を意味し、芳香族、脂肪族、脂環式基、及び2つ又は3つ以上の脂肪族、脂環式及び芳香族基を有する基を包含することができる。
【0051】
ここでは、アルキルは低級アルキル、高級アルキルなどの直鎖状、分枝状又は環状炭化水素構造及びこれらの組合せを含むものとする。アルキル基はC20以下のものが好ましい。低級アルキルは、炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−、s−及びt−ブチルである。高級アルキルは、炭素原子数7以上、好ましくは炭素原子数7〜20のアルキル基を示し、例えば、n−、s−及びt−ヘプチル、オクチル及びドデシルである。シクロアルキルは、アルキルの一部であり、例えば炭素原子数3〜8の環状炭化水素基である。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びノルボルニルがある。アルケニル及びアルキニルはそれぞれ2つ以上の水素原子が二重結合又は三重結合によって置き換えられたアルキル基を示す。
【0052】
アリール及びヘテロアリールは、窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を0〜3個含有する5又は6員の芳香環又はヘテロ芳香環;窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を0〜3個含有する二環式9又は10員の芳香環又はヘテロ芳香環系;又は窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を0〜3個含有する三環式13又は14員の芳香環又はヘテロ芳香環系を意味する。6〜14員の芳香族炭素環には、例えばベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン及びフルオレンがあり、5〜10員の芳香族ヘテロ環には、例えばイミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール及びピラゾールがある。
【0053】
アリールアルキルはアリール環にアルキル残基が結合したものを意味する。例としては、ベンジル及びフェネチルがある。ヘテロアリールアルキルはヘテロアリール環にアルキル残基が結合したものを意味する。例としては、ピリジニルメチル及びピリミジニルエチルがある。アルキルアリールは、1つ又は2つ以上のアルキル基が結合したアリール残基を意味する。例としては、トリル及びメシチルがある。
【0054】
アルコキシ又はアルコキシルは、酸素を介して親構造に結合した直鎖状、分枝状又は環状構造及びこれらの組合せの炭素原子数1〜8の基を意味する。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ及びシクロヘキシルオキシが挙げられる。低級アルコキシは炭素原子数1〜4の基を示す。
【0055】
アシルはカルボニル官能基を介して親構造に結合した直鎖状、分枝状又は環状構造、飽和、不飽和及び芳香族及びこれらの組合せの炭素原子数1〜8の基を意味する。アシル残基の1個又は2個以上の炭素原子は、親構造への結合位置がカルボニルのままであれば、窒素、酸素又は硫黄原子により置き換えられていてもよい。例としては、アセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリル、t−ブトキシカルボニル及びベンジルオキシカルボニルが挙げられる。低級アシルは炭素原子数1〜4の基を示す。
【0056】
ヘテロ環(複素環)は、1個又は2個の炭素原子が酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子により置き換えられたシクロアルキル又はアリール残基を意味する。本発明の要旨に入るヘテロ環の例としては、ピロリジン、ピラゾール、ピロール、インドール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(置換基として存在する場合、通常メチレンジオキシフェニルと記す)、テトラゾール、モルホリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、ジオキサン及びテトラヒドロフランが挙げられる。
【0057】
置換はアルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールなどの残基において、3個以下のH原子が低級アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ハロアルキル、アルコキシ、カルボニル、カルボキシ、カルボキシアルコキシ、カルボキサミド、アシルオキシ、アミジノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、OCH(COOH)2、シアノ、1級アミノ、2級アミノ、アシルアミノ、アルキルチオ、スルホキシド、スルホン、フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリール又はヘテロアリールオキシで置換されていることを意味する。
【0058】
ハロアルキルは1個又は2個以上のH原子がハロゲン原子によって置き換えられたアルキル残基を意味し、用語「ハロアルキル」はペルハロアルキルを含む。本発明の要旨に入るハロアルキル基の例としてはCH2F、CHF2及びCF3がある。
【0059】
ここに記載する化合物の多くが1つ又は2つ以上の非対称な中心を含有し得、エナンチオマー(鏡像異性体)、ジアステレオマー、その他の立体異性体を生じ、これらは絶対立体化学によって(R)−又は(S)−配置と定義できる。本発明はこのような可能な異性体すべて、並びにそのラセミ体及び光学的に純粋な形態も包含する。光学的に活性な(R)−及び(S)−異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を用いて製造したり、普通の技術を用いて分割することができる。ここに記載する化合物がオレフィン系二重結合又は幾何非対称な他の中心を含有する場合、そして特記しないなら、該化合物がE及びZ幾何異性体両方を含むものとする。同様に、すべての互変異性体が包含されるものとする。
【0060】
オキサアルキルは、1個又は2個以上の炭素原子が酸素に置き換えられたアルキル残基を示す。これはアルキル残基を介して親構造に結合される。例には、メトキシプロポキシ、3,6,9−トリオキサデシルなどがある。用語オキサアルキルは、当業界で理解されているとおりである(Naming and Indexing of Chemical Substances for Chemical Abstracts, published by the American Chemical Society, ¶196参照、但し¶127(a)の制限はない)。即ち、オキサアルキルは、酸素が単結合により隣接原子に結合されて(エーテル結合を形成する)化合物を示すが、カルボニル基に見られるような二重結合酸素を示さない。同様に、チアアルキル及びアザアルキルはそれぞれ1個又は2個以上の炭素原子が硫黄又は窒素で置き換えられたアルキル残基を示す。例にはエチルアミノエチル及びメチルチオプロピルがある。
【0061】
シリルは、1〜3個の炭素原子が四価のケイ素で置き換えられ、ケイ素原子を介して親構造に結合されるアルキル残基を意味する。シロキシは、両方の炭素原子が四価のケイ素で置き換えられ、(そのケイ素がアルキル残基、アリール残基又はシクロアルキル残基で末端封止され)、酸素原子を介して親構造に結合されるアルコキシ残基である。
【0062】
ここで用いる用語「芳香族基」は、少なくとも1つの芳香族部分を有する原子価1以上の原子の配列を示す。少なくとも1つの芳香族部分を有する原子価1以上の原子の配列は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素、酸素などのヘテロ原子を含んでも、或いは炭素及び水素のみから構成されてもよい。ここで用いる用語「芳香族基」は、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン及びビフェニル基を含むが、これらに限らない。上記の通り、芳香族基は少なくとも1つの芳香族部分を有する。芳香族部分は常に、(4n+2)つの「非局在化」電子を有する環状構造であり、ここでnは1以上の整数であり、具体的にはフェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などがある。芳香族基は非芳香族成分を含有してもよい。例えば、ベンジル基はフェニル環(芳香族部分)とメチレン基(非芳香族成分)とを含む芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は、芳香族部分(C63)が非芳香族成分−(CH24−に縮合した芳香族基である。記述の便宜上、用語「芳香族基」はここでは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル、アミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広い範囲の官能基の導入を包含すると定義する。例えば、4−メチルフェニル基は、メチル基を有するC7芳香族基であり、ここでメチル基はアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロフェニル基は、ニトロ基を有するC6芳香族基であり、ここでニトロ基は官能基である。芳香族基はハロゲン化芳香族基を含み、例えば4−トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェニ−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CF32PhO−)、4−クロロメチルフェニ−1−イル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェニ−1−イル(即ち、3−CCl3Ph−)、4−(3−ブロモプロピ−1−イル)フェニ−1−イル(即ち、4−BrCH2CH2CH2Ph−)などがある。芳香族基の別の例には、4−アリルオキシフェニ−1−オキシ、4−アミノフェニ−1−イル(即ち、4−H2NPh−)、3−アミノカルボニルフェニ−1−イル(即ち、NH2COPh−)、4−ベンゾイルフェニ−1−イル、ジシアノメチリデンビス(4−フェニ−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CN)2PhO−)、3−メチルフェニ−1−イル、メチレンビス(4−フェニ−1−イルオキシ)(即ち、−OPhCH2PhO−)、2−エチルフェニ−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェニ−1−イルオキシ)(即ち、−OPh(CH26PhO−)、4−ヒドロキシメチルフェニ−1−イル(即ち、4−HOCH2Ph−)、4−メルカプトメチルフェニ−1−イル(即ち、4−HSCH2Ph−)、4−メチルチオフェニ−1−イル(即ち、4−CH3SPh−)、3−メトキシフェニ−1−イル、2−メトキシカルボニルフェニ−1−イルオキシ(例えば、メチルサリチル)、2−ニトロメチルフェニ−1−イル(即ち、2−NO2CH2Ph)、3−トリメチルシリルフェニ−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェニ−1−イル、4−ビニルフェニ−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)などがある。用語「C3−C10芳香族基」は炭素原子数3個以上10個以下の芳香族基を含む。芳香族基1−イミダゾリル(C322−)は、C3芳香族基の1例である。ベンジル基(C77−)はC7芳香族基の1例である。
【0063】
ここで用いる用語「脂環式基」は、環状であるが、芳香族ではない、原子の配列を含む、原子価1以上の基を示す。ここで定義する用語「脂環式基」は芳香族基を含まない。「脂環式基」は1つ又は2つ以上の非環状成分を含有してもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)は、シクロヘキシル環(環状であるが、芳香族ではない、原子の配列)とメチレン基(非環状成分)からなる脂環式基である。脂環式基は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素、酸素などのヘテロ原子を含んでも、或いは炭素と水素のみから構成されてもよい。記述の便宜上、用語「脂環式基」はここでは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル、アミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広い範囲の官能基の導入を包含すると定義する。例えば、4−メチルシクロペンタ−1−イル基は、メチル基を有するC6脂環式基であり、ここでメチル基はアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロシクロブタ−1−イル基は、ニトロ基を有するC4脂環式基であり、ここでニトロ基は官能基である。脂環式基は1個又は2個以上のハロゲン原子を有してもよく、その場合ハロゲン原子は同じでも異なってもよい。ハロゲン原子には、例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1個又は2個以上のハロゲン原子を有する脂環式基には、2−トリフルオロメチルシクロヘキサ−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクタ−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキサ−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン−2,2−ビス(シクロヘキサ−4−イル)(即ち、−C610C(CF32610−)、2−クロロメチルシクロヘキサ−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキサ−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキサ−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキサ−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペンタ−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキサ−1−イルオキシ(例えば、CH3CHBrCH2610O−)などがある。脂環式基の他の例には、4−アリルオキシシクロヘキサ−1−イル、4−アミノシクロヘキサ−1−イル(即ち、H2NC610−)、4−アミノカルボニルシクロペンタ−1−イル(即ち、NH2COC58−)、4−アセチルオキシシクロヘキサ−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(即ち、−OC610C(CN)2610O−)、3−メチルシクロヘキサ−1−イル、メチレンビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(即ち、−OC610CH2610O−)、1−エチルシクロブタ−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(即ち、−OC610(CH26610O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキサ−1−イル(即ち、4−HOCH2610−)、4−メルカプトメチルシクロヘキサ−1−イル(即ち、4−HSCH2610−)、4−メチルチオシクロヘキサ−1−イル(即ち、4−CH3SC610−)、4−メトキシシクロヘキサ−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキサ−1−イルオキシ(即ち、2−CH3OCOC610O−)、4−ニトロメチルシクロヘキサ−1−イル(即ち、NO2CH2610−)、3−トリメチルシリルシクロヘキサ−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペンタ−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキサ−1−イル(例えば、(CH3O)3SiCH2CH2610−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などがある。用語「C3−C10脂環式基」は、炭素原子数3個以上10個以下の脂環式基を含む。脂環式基2−テトラヒドロフラニル(C47O−)はC4脂環式基の1例である。シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)はC7脂環式基の1例である。
【0064】
ここで用いる用語「脂肪族基」は、環状でない原子の直鎖状もしくは分岐状配列からなる、原子価1以上の有機基を示す。脂肪族基は1個以上の炭素原子を有すると定義される。脂肪族基を構成する原子の配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレン、酸素などのヘテロ原子を含んでも、或いは炭素と水素のみから構成されてもよい。記述の便宜上、用語「脂肪族基」はここでは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル、アミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広い範囲の官能基で置換された有機基を「環状でない原子の直鎖状もしくは分岐状配列」の一部として包含すると定義する。例えば、4−メチルペンタ−1−イル基は、メチル基を有するC6脂肪族基であり、ここでメチル基はアルキル基である官能基である。同様に、4−ニトロブタ−1−イル基は、ニトロ基を有するC4脂肪族基であり、ここでニトロ基は官能基である。脂肪族基は1個又は2個以上のハロゲン原子を有するハロアルキル基でもよく、その場合ハロゲン原子は同じでも異なってもよい。ハロゲン原子には、例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1個又は2個以上のハロゲン原子を有する脂肪族基には、アルキルハライド、具体的にはトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(即ち、−CH2CHBrCH2−)などがある。脂肪族基の他の例には、アリル、アミノカルボニル(即ち、−CONH2)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(即ち、−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(即ち、−CH3)、メチレン(即ち、−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル(即ち、−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(即ち、−CH2OH)、メルカプトメチル(即ち、−CH2SH)、メチルチオ(即ち、−SCH3)、メチルチオメチル(即ち、−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(即ち、CH3OCO−)、ニトロメチル(即ち、−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル(即ち、(CH33Si−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(即ち、(CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどがある。さらに例示すると、C1−C10脂肪族基は1個以上10個以下の炭素原子を含む。メチル基(即ち、CH3−)はC1脂肪族基の1例である。デシル基(即ち、CH3(CH29−)はC10脂肪族基の1例である。
【実施例】
【0065】
実施例1
オリゴフルオレンの製造
オリゴフルオレンの製造の一般的な手順の例として392−59の合成を示す。冷却器、ガス導入管及びテフロン(登録商標)製磁気撹拌子を備えた200mlの二口フラスコに2.028g(3.00mmol)の9,9−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン、3.132g(6.24mmol)の9,9−ジオクチル−2−エチレンジオキシボラン、0.129g(0.32mmol)のジシクロヘキシル−2−(2’,6’−ジメトキシフェニル)フェニルホスフィン及び60mlのトルエンを仕込んだ。溶液をアルゴンで15分間脱気し、0.20g(0.09mmol)の酢酸パラジウム、続いて、22gの水に2.2g(15mmol)のテトラエチルアンモニウムヒドロキシドを溶解し脱気した水溶液を添加した。溶液を70℃の油浴に浸し、窒素ブランケット下で16時間撹拌した。冷却した混合物を50mlのトルエン及び25mlの水で希釈し、セライトのパッドに通して濾過し、分液ロートに移した。水相を捨て、有機相を順次各100mlの水で2回、100mlのブラインで1回洗い、その後、ドライアライトのコーンを通過させた。溶液を約25mgの水素化ホウ素ナトリウムとともに室温で撹拌し、ついで真空下で濃縮し、残留油状物を120gのシリカゲルのクロマトグラフィーに通し、0〜30%酢酸エチル/ヘキサン溶液で溶出して2.3gの無色油状物を得た。1H NMR(CDCl3)δ8.0−7.3(m,20,フルオレン−H),7.3−6.8(AB四重線,8,フェノールエーテルAr−H),3.96(t,4,ArOCH2),2.04(t,8,C9−CH2),及び1.8−0.6 ppm(m,60,オクチル−H)。
【0066】
実施例2
多層構造
本発明の材料は、1−ブタノール、1−ヘキサノールなどの普通のアルコールに溶解する。例えば、JC392−59、392−38などの材料が1−ヘキサノール及び1−ブタノールに約10mg/mlの濃度で簡単に溶解することを確認した。溶液を室温まで冷却したら、アルコール溶剤に溶解しないポリフルオレンポリマー層上に、この材料を溶液から直接スピンキャスティングにより堆積することができる。約10mg/mlのアルコール溶液をポリフルオレン被覆スライドガラスに約1000rpmでスピンコーティングすることにより厚さ約20nmの第2の膜となることを確認し、それを三量体型材料の追加層によるものと考えた。ガラス上のポリマー膜の機械的及び光学的厚さ測定の両方によってこの二層構造の形成を追跡することが可能であるとわかった。機械的測定は、まず鋭い刃を用いて膜に傷をつけ、膜の上面とガラスの間の距離をプロフィロメータ(この場合、Tencor社製P1)を用いて測定することにより行う。光学的測定は、ポリフルオレン材料が、390nm付近で光吸収のピークを示し、本発明の三量体の多くのピーク吸収がある357nm付近で極めて低吸収性であるという事実を利用して行う。したがって、層吸収として重なり合ったものを2つの成分、即ちポリフルオレンに対応する成分と、本発明のオリゴマーに対応する成分とにデコンボリューション(分解)処理することが可能である。光学的吸光度(OD単位)は平均の厚さと直線的に相関するので、これが二層構造の存在のさらなる証拠となる。
【0067】
実施例3
多層構造を組入れたOLED
本発明の材料の有利な溶解特性を利用してOLEDデバイスを製造することができる。デバイスは以下のように製造することができる。清浄なUV−オゾン処理した2.5cm×2.5cmのITOパターン付ガラス基板上に、PEDOT/PSS(Baytron P VP 8000、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート、HC Starck社から溶液として入手)又は他の正孔注入材料の層を厚さ約60nmにスピンコートにより成膜することができる。その後、被覆基板をホットプレート上で空気中160℃で30分間ベークすることができる。PEDOT/PSS被覆基板の上に、F8−TFB(オクチルフルオレン/トリアリールアミンコポリマー、Sumation社から入手)の正孔輸送層を厚さ約10〜20nmにスピンコートにより成膜することができる。ついで、F8−TFB及びPEDOT/PSS被覆基板をホットプレート上でアルゴン中160℃で30分間ベークすることができる。続いて、アルコール不溶性ポリフルオレン材料(Sumation chemical社又はAmerican Dye Source社から入手)をキシレンなどの溶剤に溶解し、溶液塗工によりF8−TFB層の上にこの材料からなる層を発光層として成膜することができる。この発光層の厚さは200nm以下のどのような値でもよいが、5nm〜40nmの厚さが好ましい。最終層としての三量体材料の層をアルコール(例えば、1−ブタノール、1−ヘキサノール)溶液から10nm〜50nmの範囲の好ましい厚さに成膜することができる。
【0068】
その後、被覆基板をベルジャーエバポレータに入れ、圧力が約1×10-6torrになるまで系をポンプで引いた。続いて、被覆基板の最終層の上に物理蒸着によりフッ化ナトリウム層を厚さ約7nm(較正済み水晶天秤(QCM=quartz crystal microbalance)により測定)に成膜することができる。その後、フッ化ナトリウム層の上に真空下の蒸着によりアルミニウム金属層を厚さ約130nmに成膜して、OLEDのカソード部分を形成することができる。
【0069】
以上、本発明を特定の特徴だけについて例示し、説明したが、多くの変更や改変を当業者が想起することができるであろう。したがって、特許請求の範囲は本発明の要旨に入るこのようなすべての変更や改変を含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式Iの化合物。
【化1】

式中、R1は各々独立にC1-20ヒドロカルビルであるが、少なくとも1つのR1はR3であり、
2は各々独立にC1-20ヒドロカルビル、C1-20ヒドロカルビロキシ、C1-20チオエーテル、C1-20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノであり、
3は−R4XR5であり、
4は直接結合、C1-20アリール、C1-20アリールアルキル、C1-20アルキルアリール、C1-20置換アリール、C1-20置換アリールアルキル又はC1-20置換アルキルアリールであり、
5はC1-20ヒドロカルビル又は炭素原子間に1以上のS、N、O又はP原子を含むC1-20ヒドロカルビルであり、
6はC1-20アルキル又はC1-20置換アルキルであり、
Xは−O−、−S−、−COO−、−OOC−、−CSS−、−SSC−、NR6又はPR6であり、
aは各々独立に0、1又は2であり、
nは0又は1である。
【請求項2】
次式で表される、請求項1記載の化合物。
【化2】

【請求項3】
次式で表される、請求項1記載の化合物。
【化3】

【請求項4】
3が次式の基である、請求項1記載の化合物。
【化4】

式中、R7はC1-20ヒドロカルビル、C1-20ヒドロカルビロキシ、C1-20チオエーテル、C1-20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノであり、
bは0、1又は2である。
【請求項5】
1が各々独立にアルキル又はR3である、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
3が−O(CH2CH2O)mCH2CH2NR6であり、mが0又は0〜20の整数である、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
5がモルホリニル又はピロリジニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
5が以下の基から選択される、請求項1記載の化合物。
【化5】

【請求項9】
3が以下の基から選択される、請求項1記載の化合物。
【化6】

【請求項10】
1がC817であり、R3が以下の基から選択される、請求項3記載の化合物。
【化7】

【請求項11】
1が次式の基
【化8】

であり、R3が以下の基から選択される、請求項3記載の化合物。
【化9】

【請求項12】
1がC817であり、R3が次式の基である、請求項3記載の化合物。
【化10】

【請求項13】
1がC817であり、R3が次式の基である、請求項3記載の化合物。
【化11】

【請求項14】
1がC817であり、R3が次式の基である、請求項3記載の化合物。
【化12】

【請求項15】
1がC817であり、R3が次式の基である、請求項3記載の化合物。
【化13】

【請求項16】
1が次式の基であり、R3が次式の基である、請求項3記載の化合物。
【化14】

【化15】

【請求項17】
1が次式の基
【化16】

であり、R3が次式の基である、請求項3記載の化合物。
【化17】

【請求項18】
1が次式の基
【化18】

であり、R3が次式の基である、請求項3記載の化合物。
【化19】

【請求項19】
1が次式の基
【化20】

であり、R3が次式の基である、請求項3記載の化合物。
【化21】

【請求項20】
請求項1記載の化合物を含む光電子デバイス。
【請求項21】
カソードと、
アノードと、
カソードとアノードの間に配置されたエレクトロルミネセント層と、
エレクトロルミネセント層とカソードの間に配置され、式Iaの化合物を含有する層と
を含む、光電子デバイス。
【化22】

式中、R1は各々独立にC1-20ヒドロカルビルであるが、少なくとも1つのR1はR3aであり、
2は各々独立にC1-20ヒドロカルビル、C1-20ヒドロカルビロキシ、C1-20チオエーテル、C1-20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノであり、
3aは炭素原子間に1以上のS、N、O又はP原子を含むC1-20ヒドロカルビルであり、
aは各々独立に0、1又は2であり、
nは0又は1である。
【請求項22】
式Iaの化合物が次式の化合物である、請求項22記載の光電子デバイス。
【化23】

【請求項23】
式Iaの化合物が次式の化合物である、請求項22記載の光電子デバイス。
【化24】

【請求項24】
3aが少なくとも1つのエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル又はアルキルアミノ基を有するC1-20ヒドロカルビルである、請求項22記載の光電子デバイス。

【公表番号】特表2012−532101(P2012−532101A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517511(P2012−517511)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/025718
【国際公開番号】WO2011/002532
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】