説明

フルオレン骨格を有するアルコールの製造方法

【課題】着色が著しく少ないフルオレン骨格含有アルコールの製造方法を提供する。
【解決手段】酸触媒およびチオール類の存在下、下記式(1)で表されるフルオレノン類と、下記式(2)で表されるアルコールとを反応させ、下記式(3)で表される化合物を製造する際、アルコールの使用割合を、フルオレノン類1モルに対して3モル以上とし、かつチオール類の使用割合を、フルオレノン類100重量部に対して3重量部以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のフルオレン骨格[詳細には9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格]を有するアルコールの製造方法、この方法により得られるアルコール、およびこのアルコールを重合成分とする樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどのフルオレン骨格を有するアルコールは、屈折率、耐熱性などにおいて優れた機能を有しており、樹脂原料などとして利用できることが知られている。
【0003】
このようなフルオレン骨格を有するアルコールの代表的な製造方法としては、例えば、対応するフェノール[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなど]に、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドなど)やアルキレンカーボネートを付加させる方法[例えば、特開2009−155251号公報(特許文献1)、特開2009−155253号公報(特許文献2)、特開2009−155254号公報(特許文献3)など]が知られている。しかし、このような方法では、目的生成物である2分子付加物(9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなど)に加えて、3分子付加物、4分子付加物などが得られ、2分子付加物を高い純度で効率よく得ることができない。また、この方法で得られる生成物は、純度が低く、着色している場合が多い。
【0004】
また、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンにおいては、フルオレノンに直接的にフェノキシエタノールを反応させて製造する方法も知られている。例えば、特許第2559332号公報(特許文献4)には、フルオレンを空気酸化して得られるフルオレノンを出発原料とし、硫酸及びチオール(メルカプトプロピオン酸など)を触媒として使用し、フェノキシエタノールと縮合反応させる方法が開示されている。
【0005】
なお、上記のように、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンについては、比較的多くの研究がなされていることが知られているが、それ以外のフルオレン骨格を有するアルコールについては、その製法において未だ開発途上であり、特許公報をはじめとする公知文献もほとんど知られていない。例えば、前記特許文献1〜3では、硫酸などの酸触媒(およびチオール類)の存在下で、フルオレノンとフェノキシアルコール類[例えば、2−(2−メチルフェノキシ)プロパノール、2−(2,6−ジメチルフェノキシ)プロパノールなど]やナフトキシアルコール類[例えば、エチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテル、プロピレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテルなど]とを反応させる方法によっても、フルオレン骨格を有するアルコールを製造できることが記載されているものの、具体的には、前記アルキレンオキシドを使用する方法で合成している。
【0006】
これらの文献に記載のフェノキシアルコール類やナフトキシアルコール類を用いる方法では、前記のようなアルキレンオキシドなどを付加させる方法に比べると、3分子付加物などを生じない。しかし、単純にこのような方法で製造したフルオレン骨格を有するアルコールは、着色している場合が多く、また、このような着色は慣用の精製技術によっても低減できない。なお、このような着色は、光学用途などの用途によっては特に敬遠される場合が多く、できるだけ低減されることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−155251号公報(段落番号[0047]〜[0067]、実施例)
【特許文献2】特開2009−155253号公報(段落番号[0055]〜[0075]、実施例)、
【特許文献3】特開2009−155254号公報(段落番号[0040]〜[0059]、実施例)
【特許文献4】特許第2559332号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、着色がない(又は著しく少ない)フルオレン骨格を有するアルコール[9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類]を製造する方法、およびこの方法により得られるフルオレン骨格を有するアルコールを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、高純度のフルオレン骨格を有するアルコールを効率よく製造する方法、、およびこの方法により得られるフルオレン骨格を有するアルコールを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、上記のようなフルオレン骨格を有するアルコールを重合成分(又はモノマー)とする樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどのフルオレン骨格を有するアルコール[9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アリール)フルオレン類]は、原料としての9−フルオレノンが残留しているためか着色しやすいこと、そして、このような着色は特定の条件下で反応させることにより、著しく抑制できること、また、このような方法により得られるフルオレン骨格を有するアルコールを樹脂原料として用いると、着色のない(又は少ない)樹脂が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の製造方法では、酸触媒およびチオール類の存在下、下記式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは置換基を示し、kは0〜4の整数を示す。)
で表されるフルオレノン類と、下記式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは置換基を示し、mは1以上の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数である。ただし、環Zがベンゼン環であるとき、Rはアリール基を含まず、nは1である。)
で表されるアルコールとを反応させ、下記式(3)
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、Z、R、R、R、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
で表される化合物を製造する。
【0019】
そして、本発明の方法では、特に、前記式(2)で表されるアルコールの使用割合を、前記式(1)で表されるフルオレノン類1モルに対して3モル以上とし、かつ前記チオール類の使用割合を、前記式(1)で表されるフルオレノン類100重量部に対して3重量部以上(例えば、5〜30重量部)として、前記化合物(3)を製造する。
【0020】
前記式(2)において、代表的には、環Zがベンゼン環であり、RがC2−4アルキレン基であり、mが1であり、pが0〜3であり、Rがアルキル基であってもよい。このような前記式(2)で表されるアルコールには、C2−4アルキレングリコールモノフェニルエーテル、およびC2−4アルキレングリコールモノ(モノ又はジC1−4アルキルフェニル)エーテルから選択されたアルコールなどが含まれる。
【0021】
また、前記式(2)において、代表的には、環Zがナフタレン環であり、RがC2−4アルキレン基であり、mが1であってもよく、このような前記式(2)で表されるアルコールには、C2−4アルキレングリコールモノナフチルエーテルなどが含まれる。
【0022】
前記方法において、前記酸触媒は、例えば、硫酸であってもよく、前記チオール類はメルカプトC2−6カルボン酸(例えば、β−メルカプトプロピオン酸など)であってもよい。
【0023】
また、前記方法において、前記チオール類の使用割合が、前記式(1)で表されるフルオレノン類100重量部に対して5〜30重量部程度であってもよく、前記チオール類の使用割合は、前記酸触媒100重量部に対して4〜25重量部程度であってもよい。
【0024】
前記方法では、代表的には、(i)前記式(2)で表されるアルコールの使用割合が、前記式(1)で表されるフルオレノン類1モルに対して3〜15モルであり、(ii)前記チオール類の使用割合が、前記式(1)で表されるフルオレノン類100重量部に対して6〜25重量部であり、(iii)前記チオール類の使用割合が、酸触媒100重量部に対して5〜20重量部であってもよい。
【0025】
前記方法において、反応は、通常、溶媒の存在下で行ってもよく、特に、少なくとも芳香族炭化水素類で構成された溶媒の存在下で反応させてもよい。溶媒の割合は、例えば、前記式(1)で表されるフルオレノン類および前記式(2)で表されるアルコールの総量1重量部に対して、0.3〜10重量部であってもよい。
【0026】
前記方法において、より代表的には、(i)前記式(2)で表されるアルコールの使用割合が、前記式(1)で表されるフルオレノン類1モルに対して3.5〜10モルであり、(ii)前記チオール類の使用割合が、前記式(1)で表されるフルオレノン類100重量部に対して7〜20重量部であり、(iii)前記チオール類の使用割合が、前記酸触媒100重量部に対して6〜18重量部であり、(iv)前記芳香族炭化水素類がC6−10アレーンであり、(v)前記溶媒の割合が、前記式(1)で表されるフルオレノン類および前記式(2)で表されるアルコールの総量1重量部に対して、0.5〜5重量部であってもよい。
【0027】
本発明には、前記製造方法により得られる前記式(3)で表される化合物も含まれる。このような化合物は、代表的には、前記式(3)において、環Zがベンゼン環およびpが1〜4であるか、又は環Zがナフタレン環である化合物であってもよい。このような化合物は、着色が少なく、例えば、色相が20以下の9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジアルキルフェニル)フルオレン、色相が60以下の9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなどであってもよい。
【0028】
また、本発明には、前記化合物(前記製造方法により得られる前記式(3)で表される化合物)を重合成分とする樹脂も含まれる。このような樹脂は、代表的には、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリレートおよびエポキシ樹脂から選択された樹脂であってもよい。このような樹脂は、前記方法により得られた前記式(3)で表される化合物を重合成分とするため、着色が少なく、例えば、前記ポリエステル樹脂の色差b*は20以下であり、前記ポリ(メタ)アクリレートの色差b*は50以下であり、前記エポキシ樹脂の色差b*は40以下であってもよい。
【0029】
なお、本明細書において、化合物名などの「類」とは、「置換基を有さない」場合と「置換基を有する」場合とを含み、「置換基を有していてもよい」ことを意味する場合がある。また、本明細書において、「式(3)で表される化合物」とは、化合物自体に加えて不純物を含む混合物を意味する場合がある。
【発明の効果】
【0030】
本発明の方法では、特定の条件下で反応させることにより、着色が著しく少ないフルオレン骨格を有するアルコールを製造できる。そして、このような本発明の方法では、未反応フルオレノン類の残存量を著しく低減できるためか、高純度のフルオレン骨格を有するアルコールを効率よく製造できる。このような本発明の方法は、特に、その製法の詳細が発展途上にあるフルオレン骨格を有するアルコール、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシ−モノ又はジアルキルフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類などの着色を低減する方法として有用である。そして、このような本発明の方法により得られるフルオレン骨格を有するアルコールを重合成分(又はモノマー)とすることにより、原料段階で着色がない(又は著しく低減されている)ためか、重合工程を経ても、着色がない(又は著しく低減されている)樹脂を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[製造方法]
本発明では、酸触媒およびチオール類の存在下、下記式(1)
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、Rは置換基を示し、kは0〜4の整数を示す。)
で表されるフルオレノン類と、下記式(2)
【0034】
【化5】

【0035】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは置換基を示し、mは1以上の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数である。ただし、環Zがベンゼン環であるとき、Rはアリール基を含まず、nは1である。)
で表されるアルコールとを、特定の条件下で反応させ、下記式(3)
【0036】
【化6】

【0037】
(式中、Z、R、R、R、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
で表される化合物を製造する。
【0038】
前記式(1)において、基Rで表される置換基としては、通常、非反応性置換基、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などが挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0039】
前記式(1)で表される代表的なフルオレノン類は、9−フルオレノンである。フルオレンノン類は、反応において、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、使用するフルオレノン類の純度は、特に限定されないが、通常、95重量%以上、好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上である。
【0040】
なお、フルオレノン類は、市販品を使用してもよく、フルオレン類を空気酸化するなどの方法により製造することもできる。
【0041】
前記式(2)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合2乃至4環式炭化水素環]などが挙げられ、ベンゼン環又はナフタレン環であるのが好ましい。
【0042】
また、前記式(2)において、基Rで表されるアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、C2−10アルキレン基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基、ヘキシレン基などのC2−6アルキレン基)などが例示でき、特に、C2−4アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基などのC2−3アルキレン基)が好ましく、通常エチレン基であってもよい。なお、Rは、同一の又は異なるアルキレン基であってもよい(すなわち、mが複数である場合、Rは同一又は異なっていてもよい)。すなわち、mが2以上の場合、ポリアルコキシ(ポリオキシアルキレン)基[−(OR−]は、同一のオキシアルキレン基で構成されていてもよく、複数のオキシアルキレン基(例えば、オキシエチレン基とオキシプロピレン基など)で構成されていてもよい。通常、Rは同一のベンゼン環において、同一のアルキレン基であってもよい。
【0043】
オキシアルキレン基(OR)の数(付加モル数)mは、例えば、1〜15(例えば、1〜10)程度の範囲から選択でき、例えば、1〜8(例えば、1〜6)、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。また、前記式(2)において、基−[(OR−OH](ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ基)の置換数nは、環Zの種類にもよるが、例えば、1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3、特に1〜2であってもよい。なお、前記のように、環Zがベンゼン環であるとき、nは1である。
【0044】
また、前記式(2)において、基Rで表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基、さらに好ましくはC6−8アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのC1−20アルコキシ基、好ましくはC1−8アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などの基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基などのC1−20アルキルチオ基、好ましくはC1−8アルキルチオ基、さらに好ましくはC1−6アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)などの基−SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;メルカプト基;カルボキシル基;アミノ基;カルバモイル基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など);スルホニル基;これらの置換基同士が結合した置換基[例えば、アルコキシアリール基(例えば、メトキシフェニル基などのC1−4アルコキシC6−10アリール基)、アルコキシカルボニルアリール基(例えば、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニルC6−10アリール基など)]などが挙げられる。
【0045】
これらのうち、代表的には、基Rは、炭化水素基、−OR(式中、Rは炭化水素基を示す。)、−SR(式中、Rは前記と同じ。)、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などの非反応性基であってもよい。
【0046】
好ましい基Rとしては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。特に、Rは、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などであるのが好ましい。なお、環Zがベンゼン環であるとき、前記のように、Rには、アリール基は含まれない。
【0047】
また、好ましい置換数pは、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。異なる環Zにおいて、置換数pは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。また、同一の環Zにおいて、pが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。さらに、2つの環Zにおいて、基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
なお、前記式(2)において、環Zに置換する基Rおよび基−[(OR−OH](ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ基)の置換位置は、特に限定されず、例えば、n=p=1のとき、1および2位、1および3位、1および4位などのいずれであってもよいが、特に、1および2位であってもよい。また、n=1およびp=2のとき、1,2および3位、1,2および4位などであってもよいが、特に1,2および3位であってもよい。
【0049】
なお、前記式(2)において、n+pの値は、環Zの種類にもよるが、例えば、1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3程度であってもよい。
【0050】
代表的な前記式(2)で表されるアルコールには、例えば、アルキレングリコールモノフェニルエーテル(例えば、2−フェノキシエタノールなどのC2−4アルキレングリコールモノフェニルエーテル)、アルキレングリコールモノ(アルキルフェニル)エーテル[例えば、エチレングリコールモノo−トリルエーテル(又は2−(2−メチルフェノキシ)エタノール)、エチレングリコールモノ(2,6−キシリル)エーテル(又は2−(2,6−ジメチルフェノキシ)エタノール)などのC2−4アルキレングリコールモノ(モノ又はジC1−4アルキルフェニル)エーテル]、アルキレングリコールモノナフチルエーテル[例えば、エチレングリコールモノ(1−ナフチル)エーテル(又は1−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン)、エチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテル(又は2−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン)などのC2−4アルキレングリコールモノナフチルエーテル]などのアルキレングリコールモノアリールエーテル類(前記式(2)においてmが1であるアルコール);ポリアルキレングリコールモノフェニルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルなどのジ乃至テトラC2−4アルキレングリコールモノフェニルエーテル)、ポリアルキレングリコールモノ(アルキルフェニル)エーテル[例えば、ジエチレングリコールモノo−トリルエーテル、ジエチレングリコールモノ(2,6−キシリル)エーテルなどのジ乃至テトラC2−4アルキレングリコールモノ(モノ又はジC1−4アルキルフェニル)エーテル]、ポリアルキレングリコールモノナフチルエーテル[例えば、ジエチレングリコールモノ(1−ナフチル)エーテル、ジエチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテルなどのジ乃至テトラC2−4アルキレングリコールモノナフチルエーテル]などのポリアルキレングリコールモノアリールエーテル類[前記式(2)においてmが2以上(例えば、2〜6、好ましくは2〜4、さらに好ましくは2〜3)であるアルコール]が含まれる。
【0051】
これらのうち、好ましい前記式(2)で表されるアルコールには、C2−4アルキレングリコールモノフェニルエーテル、C2−4アルキレングリコールモノ(モノ又はジC1−4アルキルフェニル)エーテル、C2−4アルキレングリコールモノナフチルエーテルなどが含まれる。特に、本発明では、C2−4アルキレングリコールモノ(モノ又はジC1−4アルキルフェニル)エーテル、C2−4アルキレングリコールモノナフチルエーテルのような通常の方法では着色しやすいアルコールを使用しても、着色がない(又は著しく少ない)前記式(3)で表される化合物を得ることができる。
【0052】
反応において、前記式(2)で表されるアルコールは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0053】
なお、また、前記式(2)で表されるアルコールの純度は、特に限定されないが、通常、95重量%以上、好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上である。
【0054】
反応において、前記式(2)で表されるアルコールの使用割合は、前記式(1)で表されるフルオレノン類1モルに対して、2.5モル以上(例えば、2.8〜20モル)の範囲から選択でき、例えば、3モル以上(例えば、3〜15モル)、好ましくは3.2モル以上(例えば、3.3〜12モル)、さらに好ましくは3.5モル以上(例えば、3.7〜10モル)、特に3.7〜8モル(例えば、3.8〜6モル)程度であってもよく、通常3.5〜10モル程度であってもよい。
【0055】
本発明では、上記のようなフルオレノン類に対して特定量の前記アルコール(前記式(2)で表されるアルコール)およびチオール類を使用することにより(さらには、特定の酸触媒や特定の溶媒を使用することにより)、著しく着色が低減された式(3)で表される化合物を得ることができる。このような理由は定かではないが、着色が単純な純度のみならず残留するフルオレノン類に大きく起因しており、上記特定の反応条件によりフルオレノン類の転化率を非常に高くできることにより、着色が著しく低減できるものと考えられる。なお、式(3)で表される化合物中に含まれるフルオレノン類(前記式(1)で表される化合物)は、通常の精製では高レベルで除去できないようであり、本発明では反応混合物そのものに含まれるフルオレノン類の含有量を極めて高いレベルで低減できることに特徴がある。
【0056】
前記フルオレノン類と前記アルコール(前記式(2)で表されるアルコール)との反応は、酸触媒およびチオール類の存在下で行われる。
【0057】
酸触媒としては、無機酸[硫酸、塩化水素、塩酸(5〜36重量%、好ましくは20〜36重量%程度の塩化水素の水溶液など)、リン酸など]、有機酸[スルホン酸(メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸など)など]、固体酸などが挙げられる。前記硫酸には、希硫酸(例えば、濃度30〜90重量%程度の硫酸)、濃硫酸(例えば、濃度90重量%以上の硫酸)、発煙硫酸などが含まれ、反応系において硫酸に転化可能であれば、硫酸前駆体として、三酸化硫黄を使用してもよい。通常、硫酸として、HSO換算で、80〜99重量%(例えば、85〜98重量%)、好ましくは90〜97.5重量%程度の硫酸(濃硫酸)を使用してもよい。
【0058】
固体酸としては、無機固体酸[金属化合物(SiO、Al、TiO、Fe、ZrO、SnO、Vなどの酸化物、SiO−Al、SiO−TiO、TiO−ZrO、SiO−ZrOなどの複合酸化物、ZnSなどの硫化物、CaSO、Fe(SO、CuSO、NiSO、Al(SO、MnSO、BaSO、CoSO、ZnSOなどの硫酸塩、P、Mo、V、W、Siなどの元素を含有するポリ酸(AlPO、Tiのリン酸塩などのリン酸塩など)など);(NHSOなどの非金属硫酸塩;粘土鉱物(酸性白土、モンモリロナイトなど);ゼオライト(酸性OH基を有するY型、X型、A型、ZSM5、モルデナイト、VIPI、AlPO−5、AlPO−11など);カオリンなど]、有機固体酸(陽イオン交換樹脂など)などを例示できる。固体酸は、固体酸の種類に応じて多孔性又は非多孔性であってもよい。
【0059】
陽イオン交換樹脂(カチオン型イオン交換樹脂、酸型イオン交換樹脂)としては、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂[例えば、スルホン酸基を有するイオン交換樹脂[スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーなどの架橋ポリスチレンのスルホン化物、スルホン酸基(又は−CF2CF2SO3H基)を有する含フッ素樹脂(例えば、[2−(2−スルホテトラフルオロエトキシ)ヘキサフルオロプロポキシ]トリフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンとのブロック共重合体(例えば、デュポン社製のナフィオン)などの含フッ素イオン交換樹脂など]など]、弱酸性陽イオン交換樹脂[例えば、カルボン酸基を有するイオン交換樹脂(メタクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマー、アクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマーなど)など]などを使用できる。これらの陽イオン交換樹脂の中でも、強酸性陽イオン交換樹脂、特に、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーを基体(又は母体)とする強酸性陽イオン交換樹脂を好適に用いることができる。
【0060】
陽イオン交換樹脂は、ゲル型イオン交換樹脂[例えば、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーなどを基体とし、ミクロポアー(例えば、孔径が15〜30Å程度の細孔)を有するイオン交換樹脂など]であってもよく、ポーラス型イオン交換樹脂[ミクロポアーの他にマクロポアー(例えば、孔径が50〜1000Å程度の細孔)を有するイオン交換樹脂]であってもよい。
【0061】
ミクロポアーの平均孔径は、例えば、5〜50Å、好ましくは10〜40Å、さらに好ましくは15〜30Å程度であってもよい。また、ポーラス型イオン交換樹脂において、マクロポアーの平均孔径は、例えば、50〜1000Å、好ましくは70〜950Å、さらに好ましくは100〜900Å、特に150〜850Å(特に200〜800Å)程度であってもよい。
【0062】
また、ポーラス型イオン交換樹脂の多孔度は、通常、0.03〜0.6cm3/g程度であり、例えば、0.05〜0.55cm3/g、好ましくは0.1〜0.5cm3/g、さらに好ましくは0.15〜0.45cm3/g(特に0.2〜0.4cm3/g)程度であってもよい。
【0063】
なお、フルオレノン類とフェノール類との反応では、通常、ポーラス型イオン交換樹脂を用いるが、本発明の反応(フルオレノン類と前記アルコール類との反応)では、特定の架橋度を有する陽イオン交換樹脂(ポーラス型イオン交換樹脂、ゲル型イオン交換樹脂)の使用により、効率よく反応が進行する場合がある。
【0064】
陽イオン交換樹脂のイオン交換容量は、通常、0.2当量/L以上(例えば、0.3〜8当量/L)、例えば、0.4〜5当量/L(例えば、0.5〜4当量/L)、好ましくは0.6〜3当量/L(例えば、0.7〜2.5当量/L)、さらに好ましくは0.8〜2当量/L(例えば、1〜1.7当量/L)程度であってもよい。
【0065】
また、ジビニルベンゼンコポリマー(スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、メタクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマー、アクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマーなど)を基体とする陽イオン交換樹脂において、架橋度(ジビニルベンゼンの割合)は、例えば、1〜30%、好ましくは1.2〜25%、さらに好ましくは1.5〜20%程度であってもよい。特に、前記架橋度は、2〜13%、好ましくは3〜12.5%、さらに好ましくは3.5〜12%程度であってもよい。
【0066】
陽イオン交換樹脂としては、例えば、バイエル社(ランクセス社)製の「レバチットK1131」、「レバチットK1221」、「レバチットK2361」、「レバチットK2420」、「レバチットK2431」、「レバチットK2620」、「レバチットK2649」;オルガノ社製の「アンバーリスト31」、「アンバーリスト131」、「アンバーリスト121」、「アンバーリスト15JWet」、「アンバーリスト31Wet」;三菱化学(株)製の「ダイヤイオンSK104H」、「ダイヤイオンSK1BH」、「ダイヤイオンSK112H」、「ダイヤイオンPK208LH」、「ダイヤイオンPK216LH」、「ダイヤイオンPK228LH」、「ダイヤイオンRCP160M」;デュポン社製の「ナフィオン」などの市販の陽イオン交換樹脂を使用してもよい。
【0067】
陽イオン交換樹脂の形態は、例えば、フルオレノン類と前記アルコール類との反応の効率、イオン交換樹脂と反応液との分離などに悪影響がなければ、特に制限はないが、通常、粒状であり、微粒状であってもよい。また、粒状(微粒状)の陽イオン交換樹脂の形状は、例えば、無定形状、球状、多角体状、ペレット状などであってもよい。粒状の陽イオン交換樹脂の平均粒径は、通常、0.1〜1.5mm程度であり、例えば、0.15〜1.2mm、好ましくは0.2〜1mm、さらに好ましくは0.25〜0.8mm(特に0.3〜0.6mm)程度であってもよい。
【0068】
好ましい酸触媒は、硫酸などの無機酸、陽イオン交換樹脂であり、特に硫酸が好ましい。硫酸は、反応の進行により生成する水の脱水剤としても作用するため好ましい。
【0069】
酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0070】
酸触媒の割合は、前記フルオレノン類1重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜7重量部(例えば、0.3〜5重量部)、さらに好ましくは0.5〜4重量部(例えば、0.7〜3重量部)、特に0.8〜2重量部程度であってもよく、通常0.5〜2重量部程度であってもよい。
【0071】
チオール類としては、例えば、メルカプトカルボン酸(例えば、チオ酢酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオシュウ酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸など)、アルキルメルカプタン(メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのC1−16アルキルメルカプタン(特にC1−4アルキルメルカプタン)など)、アラルキルメルカプタン(ベンジルメルカプタンなど)、これらの塩などが挙げられる。塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えば、メチルメルカプタンナトリウム、エチルメルカプタンナトリウムなどのナトリウム塩など)が例示できる。これらのチオール類のうち、メルカプトC2−6カルボン酸(例えば、β−メルカプトプロピオン酸)が好ましい。チオール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、反応において、チオール類は、酸触媒の助触媒又は共触媒として作用するようである。
【0072】
チオール類の使用割合は、前記フルオレノン類100重量部に対して、2重量部以上(例えば、2.5〜50重量部)の範囲から選択でき、例えば、3重量部以上(例えば、4〜40重量部)、好ましくは5重量部以上(例えば、6〜25重量部)、さらに好ましくは7〜20重量部(例えば、8〜15重量部)程度であってもよく、通常5〜30重量部程度であってもよい。
【0073】
なお、チオール類の使用割合は、前記フルオレノン類および前記アルコールの総量100重量部に対して、例えば、0.1重量部以上(例えば、0.2〜30重量部)、好ましくは0.3重量部以上(例えば、0.4〜20重量部)、さらに好ましくは0.5重量部以上(例えば、0.7〜15重量部)、特に0.8〜10重量部(例えば、1〜7重量部)程度であってもよく、通常1〜5重量部(例えば、1.2〜3重量部)程度であってもよい。
【0074】
また、チオール類の使用割合は、酸触媒100重量部に対して、例えば、1〜50重量部(例えば、2〜40重量部)、好ましくは3〜35重量部(例えば、3.5〜30重量部)、さらに好ましくは4〜25重量部(例えば、5〜20重量部)、特に6〜18重量部(例えば、7〜15重量部)程度であってもよい。
【0075】
反応は、通常、溶媒中(又は溶媒の存在下)で行ってもよい。溶媒(反応溶媒)としては、例えば、炭化水素類[例えば、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどのアルカン)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどのC6−12アレーン、好ましくはC6−10アレーン、さらに好ましくはC6−8アレーン)など]、エーテル類(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素など)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0076】
これらの溶媒のうち、芳香族炭化水素類などの疎水性溶媒が好ましく、特に、トルエン、キシレンなどのアルキルベンゼン(モノ又はジC1−4アルキルベンゼン、好ましくはモノ又はジC1−2アルキルベンゼン)が好ましい。
【0077】
このため、溶媒は、少なくとも芳香族炭化水素類で構成するのが好ましく、芳香族炭化水素類単独、又は芳香族炭化水素類と他の溶媒とで構成してもよい。他の溶媒を使用する場合、溶媒全体に対する芳香族炭化水素類の割合は、例えば、50重量%以上(例えば、55〜99重量%)、好ましくは60重量%以上(例えば、70〜98重量%)、さらに好ましくは80重量%以上(例えば、85〜97重量%)程度であってもよい。
【0078】
溶媒の割合は、例えば、前記フルオレノン類および前記アルコールの総量1重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部(例えば、0.2〜20重量部)、好ましくは0.3〜10重量部(例えば、0.4〜7重量部)、さらに好ましくは0.5〜5重量部(例えば、0.7〜3重量部)程度であってもよい。
【0079】
反応温度は、特に限定されないが、例えば、20〜200℃、好ましくは40〜170℃(例えば、45〜150℃)、さらに好ましくは50〜120℃(例えば、55〜110℃)程度であってもよく、通常40〜100℃(例えば、50〜80℃)程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、好ましくは1〜24時間、好ましくは2〜10時間程度であってもよい。
【0080】
反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧又は加圧下で行ってもよい。また、反応は、脱水しながら行ってもよい。
【0081】
本発明の方法では、前記特定の条件にて反応を行うことなどにより、前記フルオレノン類を完全に又はほぼ完全に反応させることができ、例えば、前記フルオレノン類の転化率は、通常99.0モル%以上(例えば、99.2〜100モル%)であり、好ましくは99.3モル%以上(例えば、99.5〜100モル%)、さらに好ましくは99.7モル%以上(例えば、99.75〜100モル%)、特に99.8モル%以上(例えば、99.85〜100モル%)である。そのため、このような本発明の方法により得られる前記式(3)で表される化合物中に含まれる前記フルオレノン類の量も極めて少なく、着色が著しく低減された又は着色のない前記式(3)で表される化合物を得ることができる。
【0082】
なお、反応終了後の反応混合物(反応混合液)には、目的生成物又は反応生成物である前記式(3)で表される化合物以外に、未反応の前記式(2)で表されるアルコール類(フェノキシエタノールなど)、酸触媒、チオール類、溶媒、水などが含まれる。このような反応混合物からの前記式(3)で表される化合物の分離(精製)には、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段を利用できる。例えば、慣用の方法(アルカリ水溶液を加えて中和する方法など)により酸触媒(およびチオール類)を除去したのち、前記式(3)で表される化合物を結晶化させ、分離(精製)してもよい。
【0083】
このような反応(および精製)を経て、前記式(3)で表される化合物が得られる。
【0084】
前記式(3)において、Z、R、R、R、k、m、nおよびpは前記と同じであり、好ましい態様なども前記と同様である。
【0085】
なお、前記式(3)で表される化合物において、前記式(2)で表されるアルコールの置換位置は、特に限定されず、置換基Rの種類や置換位置、nやpの数などによるが、例えば、環Zがベンゼン環であり、かつnが1であるとき、フルオレノン類の9位に置換する環Zの置換位置を1とするとき、基−[(OR−OH]の置換位置は2又は4位、特に4位である場合が多い。
【0086】
代表的な前記式(3)で表される化合物には、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(3)において環Zがベンゼン環、mが1である化合物)、9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(3)において環Zがベンゼン環、mが2以上である化合物)、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類(前記式(3)において環Zがナフタレン環、mが1である化合物)、9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類(前記式(3)において環Zがナフタレン環、mが2以上である化合物)などが含まれる。
【0087】
9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類には、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジアルキルフェニル)フルオレン、好ましくは9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン、さらに好ましくは9,9−ビス(ヒドロキシC2−3アルコキシ−モノ又はジC1−2アルキルフェニル)フルオレン}などが含まれる。
【0088】
9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類には、前記9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類に対応し、mが2以上(例えば、2〜6、好ましくは2〜4、さらに好ましくは2〜3)である化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシジアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(ヒドロキシジアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]−3−メチルフェニル}フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]−3,5−ジメチルフェニル}フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ]−3−メチルフェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシ−モノ又はジアルキルフェニル)フルオレン、好ましくは9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン、さらに好ましくは9,9−ビス(ヒドロキシジC2−3アルコキシ−モノ又はジC1−2アルキルフェニル)フルオレン}などが含まれる。
【0089】
9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類には、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン、好ましくは9,9−ビス(ヒドロキシC2−3アルコキシナフチル)フルオレン}などが含まれる。
【0090】
9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類には、前記9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類に対応し、mが2以上(例えば、2〜6、好ましくは2〜4、さらに好ましくは2〜3)である化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシジアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{6−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]−2−ナフチル}フルオレン、9,9−ビス{5−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]−1−ナフチル}フルオレン、9,9−ビス{6−[2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ]−2−ナフチル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシナフチル)フルオレン、好ましくは9,9−ビス(ヒドロキシジC2−3アルコキシナフチル)フルオレン}などが含まれる。
【0091】
本発明の方法で得られる前記式(3)で表される化合物は、不純物の割合が少なく高純度であり、例えば、純度95%以上(例えば、95〜100%)、好ましくは95.5%以上(例えば、96〜99.9%)、さらに好ましくは96.5%以上(例えば、96.7〜99.5%)、特に97%以上(例えば、97〜99%)であってもよい。
【0092】
特に、本発明の方法で得られる前記式(3)で表される化合物は、前記フルオレノン類の含有量(残存量)が著しく少ないという特徴がある。例えば、前記式(3)で表される化合物全体全体に含まれる前記フルオレノン類の割合は、1重量%以下(例えば、0又は検出限界〜0.8重量%)の範囲から選択でき、0.7重量%以下(例えば、0又は検出限界〜0.5重量%)、好ましくは0.3重量%以下(例えば、0又は検出限界〜0.2重量%)、さらに好ましくは0.1重量%以下(例えば、0又は検出限界〜0.05重量%)であってもよく、通常0.1〜0.5重量%程度であってもよい。なお、反応混合物に、通常の反応により未反応のフルオレノン類が多く残存している場合、理由は定かではないが、慣用の分離精製によっても十分に除去することはできず、精製後においても式(3)で表される化合物中中にある程度のフルオレノン類が含まれている場合が多い。
【0093】
そして、前記式(3)で表される化合物は、高純度であるとともに、特に上記のように前記フルオレノン類の含有割合が著しく少ないためか、公知の方法で得られる化合物に比べて、着色が著しく抑制されている。例えば、前記式(3)で表される化合物の色相は、100以下(例えば、0〜85)の範囲から選択でき、好ましくは70以下(例えば、1〜55)、さらに好ましくは50以下(例えば、2〜45)、特に40以下(例えば、2〜35)であり、30以下(例えば、3〜30)とすることもできる。
【0094】
特に、本発明では、着色しやすい前記式(2)で表される化合物を使用しても、着色が著しく少ない前記式(3)で表される化合物を得ることができる。例えば、本発明では、前記式(3)(及び/又は前記式(2))において、環Zがベンゼン環、かつpが1〜4(例えば、1〜3、好ましくは1〜2)である化合物{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジアルキルフェニル)フルオレンなど}の色相を、30以下(例えば、0〜27)、好ましくは25以下(例えば、1〜22)、さらに好ましくは20以下(例えば、2〜18)、特に15以下(例えば、3〜12)とすることができる。
【0095】
また、前記式(3)(及び/又は前記式(2))において、環Zがナフタレン環である化合物[例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]の色相を、80以下(例えば、0〜75)、好ましくは70以下(例えば、2〜65)、さらに好ましくは60以下(例えば、3〜55)、特に50以下(例えば、5〜45)とすることができる。
【0096】
[式(3)で表される化合物の用途]
前記式(3)で表される化合物は、特定のフルオレン骨格を有しているため、種々の特性(光学特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐薬品性、電気特性、機械特性、寸法安定性など)に優れており、種々の用途においてこれらの特性を向上又は改善するのに有用である。また、前記骨格により、高い屈折率も有している。このため、このような前記式(3)で表される化合物は、機能性材料[例えば、添加剤(レジスト用添加剤、樹脂用添加剤、硬化剤(樹脂用硬化剤)など)、試薬(医薬、農薬など)の原料又は中間体など](又はその原料又は中間体)、樹脂原料(モノマーなど)などとして好適に用いることができ、前記のような優れた特性を効率よく付与するための化合物として用いることができる。
【0097】
これらの用途の中でも、前記式(3)で表される化合物は、着色において著しく抑制されているので、樹脂原料として好適である。以下に、樹脂原料用途について詳述する。
【0098】
(樹脂原料用途および樹脂)
前記式(3)で表される化合物は、樹脂原料として用いることができる。例えば、前記式(3)で表される化合物は、2以上のヒドロキシル基を有しているため、熱可塑性樹脂のモノマー成分や熱硬化性樹脂(又はその前駆体)として用いることができる。すなわち、このような樹脂は、前記化合物を重合成分とする樹脂である。
【0099】
詳細には、前記樹脂は、ポリオール成分を単量体成分(又は重合成分)とする樹脂において、前記ポリオール成分の一部又は全部が、前記化合物(又はその誘導体)で構成された樹脂であってもよい。
【0100】
ポリオール成分(例えば、ジオール成分)を単量体成分(又は重合成分)とする樹脂としては、熱可塑性樹脂[ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトンなど)など]、熱硬化性樹脂[例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化性ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂(前記化合物のポリグリシジルエーテルなど)、ビニルエステル系樹脂、フェノール樹脂、ポリオールポリ(メタ)アクリレート(前記化合物(3)のポリ(メタ)アクリレート、又は前記化合物(3)と(メタ)アクリル酸又はその誘導体((メタ)アクリル酸ハライドなど)との反応物など)、ウレタン(メタ)アクリレート]など]などが挙げられる。
【0101】
このようなポリオール成分を単量体成分(又は重合成分)とする樹脂では、ポリオール成分を、前記式(3)で表される化合物で構成することができる。このような樹脂において、前記式(3)で表される化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0102】
以下、代表的な樹脂として、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、およびエポキシ樹脂(エポキシ化合物)を詳述する。これらの樹脂は、用途にもよるが、着色を好まない場合が多く、前記化合物をモノマー成分とすることによる有用性は極めて高い。
【0103】
(ポリエステル)
ポリエステルとしては、前記式(3)において、nが1である化合物(化合物(a1)ということがある)を少なくとも含むジオール成分(ジオール成分(a)ということがある)と、ジカルボン酸成分(ジカルボン酸成分(b))とを重合成分とするポリエステル(ポリエステル樹脂)などが挙げられる。
【0104】
前記ジオール成分(a)は、前記化合物(a1)で構成されている限り、他のジオール成分(化合物(a1)以外のジオール成分)を含んでいてもよい。このような他のジオール成分(ジオール成分(a2)ということがある)としては、例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−6アルカンジオール、さらに好ましくはC2−4アルカンジオール)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2−4アルカンジオールなど)、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC5−8シクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C5−8シクロアルカンなど)、ジヒドロキシアレーン(ハイドロキノン、レゾルシノールなど)、芳香脂肪族ジオール[1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーンなど]、ビフェノール、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカンなど]などが挙げられる。他のジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0105】
これらのジオール成分(a2)のうち、重合性の点、ポリエステル樹脂にバランスよく光学的特性を付与するという点からは、アルカンジオール、ポリアルカンジオールなどが好ましく、特に、C2−4アルカンジオール(特にエチレングリコールなどのC2−3アルカンジオール)が好ましい。
【0106】
ポリエステル樹脂において、前記化合物(a1)(又は化合物(a1)のジオール単位)とジオール成分(a2)(又はジオール成分(a2)のジオール単位)との割合(モル比)は、前者/後者=30/70〜99/1(例えば、40/60〜99/1)程度の広い範囲から選択できるが、優れた光学的特性(高屈折率など)を付与するという観点からは、特に、50/50〜99/1、好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましくは70/30〜90/10(例えば、75/25〜85/15)程度であってもよい。このような範囲でジオール成分(a2)を併用すると、高い重合性で、高耐熱性及び高屈折率(さらには、低複屈折性)のポリエステル樹脂を得ることができる。
【0107】
なお、前記化合物(a1)の割合は、ジオール成分全体に対して、30モル%以上(例えば、40〜100モル%)の範囲から選択でき、例えば、50モル%以上(例えば、55〜100モル%程度)、好ましくは60モル%以上(例えば、65〜99モル%程度)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば、75〜95モル%程度)であってもよく、通常60〜90モル%程度であってもよい。
【0108】
なお、必要に応じて、ジオール成分に加えて、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール成分[例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのアルカンポリオール、フルオレン骨格を有するポリオール(ビスカテコールフルオレンなど)など]を少量[例えば、ジオール成分とポリオール成分との総量に対して10モル%以下(例えば、0.1〜8モル%、好ましくは0.2〜5モル%程度)]使用してもよい。
【0109】
また、前記ポリエステル樹脂において、ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸[例えば、アルカンジカルボン酸(アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC2−20アルカン−ジカルボン酸、好ましくはC2−14アルカン−ジカルボン酸など)など];脂環族ジカルボン酸[例えば、シクロアルカンジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸など)、ジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸など)など];芳香族ジカルボン酸[例えば、アレーンジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などのC6−14アレ−ンジカルボン酸など)、ビフェニルジカルボン酸(2,2’−ビフェニルジカルボン酸など)、ジフェニルアルカンジカルボン酸(4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、2,2−ジ(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどのジフェニルC1−10アルカンジカルボン酸)、ジフェニルケトンジカルボン酸(4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸など)、ジフェニルエーテルジカルボン酸(4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸など)、フルオレン骨格を有するジカルボン酸など];これらの誘導体[例えば、ジカルボン酸ハライド(ジカルボン酸ジクロライド)、ジカルボン酸無水物、低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステルなどのC1−4アルキルエステル、好ましくはC1−2アルキルエステルなど)など]などが例示できる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのジカルボン酸成分のうち、脂環族ジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロアルカンジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸などのアレーンジカルボン酸)、これらの誘導体(特に、メチルエステルなどの低級アルキルエステル)が好ましい。すなわち、脂環族ジカルボン酸成分を使用すると、複屈折を低下させることができ、芳香族ジカルボン酸成分を使用すると、耐熱性及び屈折率を向上できる点で好ましい。
【0110】
なお、必要に応じて、ジカルボン酸成分に加えて、3以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸など)を少量[例えば、ジカルボン酸成分とポリカルボン酸成分との総量に対して10モル%以下(例えば、0.1〜8モル%、好ましくは0.2〜5モル%程度)]使用してもよい。
【0111】
ポリエステル樹脂の好ましい態様(ジオール成分とジカルボン酸成分との好ましい組合せ)には、以下の(i)及び(ii)などが含まれる。
【0112】
(i)ジオール成分が、前記化合物(a)と、エチレングリコールなどのC2−4アルカンジオールとを、前者/後者(モル比)=50/50〜99/1(例えば、55/45〜97/3、好ましくは65/35〜95/5、さらに好ましくは70/30〜93/7、特に75/25〜90/10)程度の割合で含むジオール成分であり、ジカルボン酸成分が、芳香族ジカルボン酸成分(例えば、テレフタル酸ジメチルなどのアレーンジカルボン酸又はこの誘導体)であるポリエステル樹脂。
【0113】
このようなポリエステル樹脂は、前記化合物(a)と芳香族ジカルボン酸成分とを組み合わせているため、非常に高い屈折率および耐熱性を有している。また、芳香族ジカルボン酸成分を含んでいるにもかかわらず、比較的複屈折が低く、通常、両立が難しい高屈折率と低複屈折性とを備えたポリエステル樹脂である。
【0114】
(ii)ジオール成分が、前記化合物(a)と、エチレングリコールなどのC2−4アルカンジオールとを、前者/後者(モル比)=50/50〜99/1(例えば、55/45〜97/3、好ましくは65/35〜95/5、さらに好ましくは70/30〜93/7、特に75/25〜90/10)程度の割合で含むジオール成分であり、ジカルボン酸成分が、脂環族ジカルボン酸成分(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロアルカンジカルボン酸又はこの誘導体)であるポリエステル樹脂。
【0115】
このようなポリエステル樹脂は、複屈折が非常に小さい。また、前記化合物(a)と脂環族ジカルボン酸成分との組み合わせにより、脂環族ジカルボン酸成分を含んでいるにもかかわらず、比較的高屈折率(さらには高耐熱性)であり、低複屈折性と高屈折率とを両立できる。
【0116】
なお、ポリエステル樹脂は、前記のように、前記ジオール成分(a)と、前記ジカルボン酸成分(b)とを重合成分とするポリエステル樹脂であり、通常、下記式(4)で表されるユニットを有するポリエステルである。
【0117】
【化7】

【0118】
(式中、Aはジカルボン酸成分(b)の残基を示し、Z、R、R、R、k、mおよびpは前記と同じ。)
前記ポリエステルの重量平均分子量は、例えば、3000〜1000000程度の範囲から選択でき、例えば、5000〜800000、好ましくは8000〜600000、さらに好ましくは10000〜500000(例えば、30000〜500000)程度であってもよい。なお、上記重量平均分子量は、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより評価した値であってもよい。本発明では、高分子量であっても、着色が抑制されたポリエステル樹脂を製造することも可能である。
【0119】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば、50〜350℃、好ましくは60〜300℃、さらに好ましくは70〜250℃、特に80〜200℃程度であってもよい。
【0120】
また、ポリエステル樹脂の屈折率(nd)は、波長589nmにおいて、例えば、1.55〜1.8、好ましくは1.56〜1.7、さらに好ましくは1.57〜1.68(例えば、1.58〜1.67)程度であってもよい。特に、前記化合物(a)の種類やジオール成分における割合、さらにはジカルボン酸の種類などを選択することにより、屈折率1.60以上(例えば、1.60〜1.80)、好ましくは1.605以上(例えば、1.605〜1.70)、さらに好ましくは1.61以上(例えば、1.61〜1.69、特に1.62〜1.68)のポリエステル樹脂とすることもできる。
【0121】
本発明では、着色が少ない(又は実質的にない)ポリエステル樹脂を得ることができる。このようなポリエステル樹脂の色差b*は、例えば、30以下(例えば、0〜27)、好ましくは25以下(例えば、0.1〜22)、さらに好ましくは20以下(例えば、0.3〜18)、特に15以下(例えば、0.5〜13)であってもよい。
【0122】
特に、本発明では、前記式(3)(及び/又は前記式(2))において、環Zがベンゼン環、nが1、かつpが1〜3である化合物{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジアルキルフェニル)フルオレンなど}を化合物(a)として使用しても、ポリエステル樹脂の色差b*を、例えば、25以下(例えば、0〜22)、好ましくは20以下(例えば、0.3〜18)、さらに好ましくは15以下(例えば、0.5〜14)程度とすることもできる。
【0123】
また、本発明では、前記式(3)(及び/又は前記式(2))において、環Zがナフタレン環、nが1である化合物[例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]を化合物(a)として使用しても、ポリエステル樹脂の色差b*を30以下(例えば、0〜27)、好ましくは25以下(例えば、0.1〜22)、さらに好ましくは20以下(例えば、0.5〜18)、特に15以下(例えば、1〜14)程度とすることもできる。
【0124】
色差b*は、例えば、分光測色計を用い、反射条件、測定径30mmで測定できる。
【0125】
なお、前記ポリエステル樹脂は、前記ジオール成分(a)と前記ジカルボン酸成分(b)とを反応(縮合反応)させることにより得ることができる。縮合反応(重縮合反応)は、一般的なポリエステル樹脂の合成に用いられる方法、例えば、エステル交換法、直接重合法などの溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などを利用して製造できる。なお、溶融重合法では、通常、ジカルボン酸成分として、ジカルボン酸や、ジカルボン酸エステル(例えば、メチルエステルなどの低級アルキルエステルなど)を使用する場合が多い。本発明では、溶融重合法のような高温下で重合させる方法であっても、着色が少ないポリエステル樹脂を得ることができる。
【0126】
ポリエステル樹脂は、成形体を構成してもよい。成形体の形状は、特に限定されず、例えば、二次元的構造(フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(管状、棒状、チューブ状、中空状など)などが挙げられる。
【0127】
このような成形体は、前記ポリエステル樹脂で構成されていればよく、前記ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物で構成してもよい。このような樹脂組成物は、各種添加剤[例えば、充填剤又は補強剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤(シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末など)、耐熱性改良剤(硫黄化合物やポリシランなど)、炭素材など]を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0128】
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
【0129】
特に、本発明のポリエステル樹脂は、種々の光学的特性に優れているため、光学用成形体(特に光学フィルム)を形成するのに有用である。
【0130】
(ポリ(メタ)アクリレート)
ポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0131】
【化8】

【0132】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Z、R、R、R、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
代表的なポリ(メタ)アクリレート(又は前記式(5)で表される化合物)には、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン}、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシジアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]−3−メチルフェニル}フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]−3,5−ジメチルフェニル}フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシジC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン}、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−1−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシジアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{6−[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]−2−ナフチル}フルオレン、9,9−ビス{5−[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]−1−ナフチル}フルオレン、9,9−ビス{6−[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)プロポキシ]−2−ナフチル}フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシジC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などが含まれる。
【0133】
前記ポリ(メタ)アクリレートは、前記式(3)で表される化合物を重合成分として得られるので、着色が少なく、例えば、前記ポリ(メタ)アクリレートの色差b*は、例えば、70以下(例えば、0〜65)、好ましくは60以下(例えば、0.1〜55)、さらに好ましくは50以下(例えば、0.3〜45)程度であってもよい。
【0134】
特に、本発明では、前記式(3)(及び/又は前記式(2))において、環Zがベンゼン環、かつpが1〜3である化合物{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジアルキルフェニル)フルオレンなど}をポリオール成分として使用しても、ポリ(メタ)アクリレート[例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン]の色差b*を、例えば、25以下(例えば、0〜22)、好ましくは20以下(例えば、0.3〜18)、さらに好ましくは15以下(例えば、0.3〜12)程度とすることもできる。
【0135】
なお、前記ジ(メタ)アクリレートは、例えば、前記式(3)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体[例えば、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどのC1−4アルキル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸ハライド(例えば、(メタ)アクリル酸クロライドなど)、(メタ)アクリル酸無水物など]とを反応させることにより製造できる。
【0136】
なお、前記ポリ(メタ)アクリレートは、重合開始剤、希釈剤(溶媒、重合性希釈剤など)などを含む樹脂組成物を構成してもよい。
【0137】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂(エポキシ化合物)としては、例えば、下記式(6)で表される化合物(前記式(3)で表される化合物のポリグリシジルエーテル類)が挙げられる。
【0138】
【化9】

【0139】
(式中、は水素原子又はメチル基を示し、Z、R、R、R、R、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
代表的なエポキシ樹脂(又は前記式(6)で表される化合物)には、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(グリシジルオキシジアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−3−メチルフェニル}フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−3,5−ジメチルフェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシジC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−グリシジルオキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−グリシジルオキシエトキシ)−1−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}、9,9−ビス(グリシジルオキシジアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{6−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−2−ナフチル}フルオレン、9,9−ビス{5−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−1−ナフチル}フルオレン、9,9−ビス{6−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−2−ナフチル}フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシジC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などが含まれる。
【0140】
なお、前記エポキシ樹脂は、例えば、前記式(3)で表される化合物と、エピハロヒドリン[又はハロメチルオキシラン、例えば、エピクロロヒドリン(クロロメチルオキシラン)、エピブロモヒドリン(ブロモメチルオキシラン)など]又は1−ハロメチル−2−メチルオキシラン(1−クロロメチル−2−メチルオキシランなど)とを反応させることにより製造できる。
【0141】
前記エポキシ樹脂は、前記式(3)で表される化合物を重合成分として得られるので、着色が少なく、例えば、前記エポキシ樹脂の色差b*は、例えば、60以下(例えば、0〜55)、好ましくは50以下(例えば、0.1〜45)、さらに好ましくは40以下(例えば、0.3〜35)程度であってもよい。
【0142】
特に、本発明では、前記式(3)(及び/又は前記式(2))において、環Zがベンゼン環、かつpが1〜3である化合物{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジアルキルフェニル)フルオレンなど}をポリオール成分として使用しても、エポキシ樹脂(例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン)の色差b*を、例えば、25以下(例えば、0〜22)、好ましくは20以下(例えば、0.3〜18)、さらに好ましくは15以下(例えば、0.3〜12)程度とすることもできる。
【0143】
なお、前記エポキシ樹脂は、希釈剤、硬化剤、硬化促進剤などを含むエポキシ樹脂組成物を構成してもよい。
【実施例】
【0144】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0145】
なお、実施例において、各種測定は以下のようにして行った。
【0146】
(HPLC純度)
装置としてL−2000(日立ハイテク製HPLC)、カラムとしてODS−80TM(東ソー製)を用いて40℃で測定した。
【0147】
(色相)
アセトンに10重量%の割合で溶解させて、日本電色工業(株)製「COH−400」を用いて色相(APHA)を測定した。
【0148】
(屈折率)
多波長アッベ屈折計「DR−M2/1550」((株)アタゴ製)を用い、光源波長589nm、測定温度20℃で測定した。
【0149】
(色差)
分光測色計「SPECTROPHOTOMETER CM−3500」(コニカミノルタ製)を用い、室温、反射条件、測定径30mmでb*値を測定した。
【0150】
(ヘーズ)
色差濁度測定器(日本電色工業(株)製、COH−300A)を用い、試験管(マルエム製、A−24(24×200)、直口)又は10×10mm石英セルに入れて測定した。
【0151】
(Tg)
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製、DSC 6220)を用い、アルミパンに試料を入れ、30℃から200℃の範囲でTgを測定した。
【0152】
(分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィ(東ソー(株)製、HLC−8120GPC)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、10分から20分の範囲で分子量(ポリスチレン換算)を測定した。
【0153】
(実施例1)
1Lのセパラブルフラスコに、9−フルオレノン45g(0.25モル、大阪ガスケミカル(株)製)、2−フェノキシエタノール138g(1モル)、3−メルカプトプロピオン酸1gを投入した後に、60℃まで加温して完全に溶解させた。その後、徐々に硫酸を54g投入して、60℃で維持して5時間攪拌させたところ、HPLCにて9−フルオレノンの転化率が99%以上であることを確認できた。得られた反応液に48%苛性ソーダ水を投入して中和した後に、キシレンを400g添加して蒸留水にて数回洗浄し、冷却することで結晶を析出させた。さらにろ過して乾燥させたところ、82g(収率75%)の結晶として、目的とする9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンを得た。得られた結晶のHPLC純度を測定したところ、純度が99.2%であった。また、アセトンに10重量%の割合で溶解させて、日本電色製「COH−400」を用いて色相(APHA)を測定したところ、0と極めて着色が少なかった。なお、得られたサンプルのH−NMRおよびマススペクトルを測定した結果、目的とする9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(下記式で表される化合物)であることを確認した。
【0154】
【化10】

【0155】
(実施例2)
硫酸の量を65gにした以外は実施例1と同様に合成した結果、純度99.1%の目的生成物が、81g(収率74%)得られた。色相は0であった。
【0156】
(実施例3)
3−メルカプトプロピオン酸の量を2gにした以外は実施例1と同様に合成した結果、純度99.1%の目的生成物を83g(収率76%)得られた。色相は0であった。
【0157】
(実施例4)
キシレンをトルエンに変えたこと以外は、実施例1と同様に合成した結果、純度99.3%の目的生成物が、85g(収率77%)得られた。色相は0であった。
【0158】
(参考例1)
実施例1において、2−フェノキシエタノールを0.75モル使用したこと以外は、実施例1と同様にして合成した結果、反応混合物において、HPLCにて測定した9−フルオレノンの転化率は85%であった。また、得られた結晶のHPLC純度を測定したところ、純度が78%であり、副生物が大量に生成してしまった。また、色相は、3であった。
【0159】
(参考例2)
実施例1において、3−メルカプトプロピオン酸を0.1g使用したこと以外は、実施例1と同様にして合成した結果、反応混合物において、HPLCにて測定した9−フルオレノンの転化率は70%であった。
【0160】
(実施例5)
実施例1において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノo−トリルエーテル(日本乳化剤製)1モルを使用したこと以外は、実施例1と同様に合成した結果、純度99.3%の目的生成物が、81g(収率70%)得られた。色相は8であった。なお、得られたサンプルのH−NMRおよびマススペクトルを測定した結果、目的とする9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン(下記式で表される化合物)であることを確認した。
【0161】
【化11】

【0162】
(実施例6)
実施例2において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノo−トリルエーテル(日本乳化剤製)1モルを使用したこと以外は、実施例2と同様に合成した結果、純度99.2%の目的生成物が、83g(収率72%)得られた。色相は8であった。
【0163】
(実施例7)
実施例3において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノo−トリルエーテル(日本乳化剤製)1モルを使用したこと以外は、実施例3と同様に合成した結果、純度99.0%の目的生成物が、81g(収率70%)得られた。色相は9であった。
【0164】
(実施例8)
実施例4において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノo−トリルエーテル(日本乳化剤製)1モルを使用したこと以外は、実施例4と同様に合成した結果、純度99.0%の目的生成物が、80g(収率69%)得られた。色相は10であった。
【0165】
(参考例3)
参考例1において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノo−トリルエーテル(日本乳化剤製)1モルを使用したこと以外は、参考例1と同様に合成した結果、反応混合物において、HPLCにて測定した9−フルオレノンの転化率は70%であった。また、得られた結晶のHPLC純度を測定したところ、純度が72%であり、副生物が大量に生成してしまった。また、色相は、30であった。
【0166】
(参考例4)
参考例1において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノo−トリルエーテル(日本乳化剤製)1モルを使用したこと以外は、参考例1と同様に合成した結果、反応混合物において、HPLCにて測定した9−フルオレノンの転化率は52%であった。
【0167】
(参考例5)
セパラブルフラスコに、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCF、大阪ガスケミカル(株)製)37.8g(0.1モル)、エチレンカーボネート29.5g(0.25モル)および溶媒としてのジエチレングリコール212g(2モル)を入れ、触媒として1−メチルイミダゾール3gを添加した後に、100℃に加熱して5時間反応させた。反応終了後、溶媒IPA(イソプロピルアルコール)500mlを加えて10℃まで冷却することにより、生成物40gを得た。得られた生成物のうち、HPLCにて測定した9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンの純度は、60%未満であった。
【0168】
(実施例9)
実施例1において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2,6−キシリル)エーテル1モルを使用したこと以外は、実施例1と同様に合成した結果、純度99.4%の目的生成物が、80.2g(収率65%)得られた。色相は6であった。なお、得られたサンプルのH−NMRおよびマススペクトルを測定した結果、目的とする9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン(下記式で表される化合物)であることを確認した。
【0169】
【化12】

【0170】
なお、エチレングリコールモノ(2,6−キシリル)エーテルは、2,6−キシレノールにエチレンカーボネートを反応させて得られた反応混合物から精製したもの(純度99%以上)を用いた(以下同じ)。
【0171】
(実施例10)
実施例2において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2,6−キシリル)エーテル1モルを使用したこと以外は、実施例2と同様に合成した結果、純度99.0%の目的生成物が、82g(収率67%)得られた。色相は8であった。
【0172】
(実施例11)
実施例3において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2,6−キシリル)エーテル1モルを使用したこと以外は、実施例3と同様に合成した結果、純度99.0%の目的生成物が、79g(収率64%)得られた。色相は10であった。
【0173】
(実施例12)
実施例4において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2,6−キシリル)エーテル1モルを使用したこと以外は、実施例4と同様に合成した結果、純度99.1%の目的生成物が、75g(収率60%)得られた。色相は9であった。
【0174】
(参考例6)
参考例1において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2,6−キシリル)エーテル1モルを使用したこと以外は、参考例1と同様に合成した結果、反応混合物において、HPLCにて測定した9−フルオレノンの転化率は82%であった。また、得られた結晶のHPLC純度を測定したところ、純度が63%であり、副生物が大量に生成してしまった。また、色相は、40であった。
【0175】
(参考例7)
参考例1において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2,6−キシリル)エーテル1モルを使用したこと以外は、参考例1と同様に合成した結果、反応混合物において、HPLCにて測定した9−フルオレノンの転化率は43%であった。
【0176】
(参考例8)
セパラブルフラスコに、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン(BXF、大阪ガスケミカル(株)製)49.4g(0.1モル)、エチレンカーボネート29.5g(0.25モル)および溶媒としてのジエチレングリコール212g(2モル)を入れ、触媒として1−メチルイミダゾール3gを添加した後に、100℃に加熱して6時間反応させた。反応終了後、溶媒IPA(イソプロピルアルコール)500mlを加えて10℃まで冷却することにより、生成物45gを得た。得られた生成物のうち、HPLCにて測定した9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンの純度は、60%未満であった。
【0177】
(実施例13)
実施例1において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテル1モルを使用したこと以外は、実施例1と同様に合成した結果、純度98.3%の目的生成物が、87g(収率67%)得られた。色相は30であった。なお、得られたサンプルのH−NMRおよびマススペクトルを測定した結果、目的とする9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン(下記式で表される化合物)であることを確認した。
【0178】
【化13】

【0179】
なお、エチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテルは、2−ナフトールにエチレンカーボネートを反応させて得られた反応混合物から精製したもの(純度99%以上)を用いた(以下同じ)。
【0180】
(実施例14)
実施例2において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテル1モルを使用したこと以外は、実施例2と同様に合成した結果、純度98.5%の目的生成物が、81g(収率61%)得られた。色相は35であった。
【0181】
(実施例15)
実施例3において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテル1モルを使用したこと以外は、実施例3と同様に合成した結果、純度98.8%の目的生成物が、85g(収率63%)得られた。色相は28であった。
【0182】
(実施例16)
実施例4において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテル1モルを使用したこと以外は、実施例4と同様に合成した結果、純度99.1%の目的生成物が、78g(収率59%)得られた。色相は41であった。
【0183】
(参考例9)
参考例1において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテル1モルを使用したこと以外は、参考例1と同様に合成した結果、反応混合物において、HPLCにて測定した9−フルオレノンの転化率は91.3%であった。また、得られた結晶のHPLC純度を測定したところ、純度が68.3%であり、副生物が大量に生成してしまった。また、色相は、60であった。
【0184】
(参考例10)
参考例1において、2−フェノキシエタノール1モルに変えて、エチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテルを使用したこと以外は、参考例1と同様に合成した結果、反応混合物において、HPLCにて測定した9−フルオレノンの転化率は82.1%であった。
【0185】
(参考例11)
セパラブルフラスコに、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン(BNF、大阪ガスケミカル(株)製)45g(0.1モル)、エチレンカーボネート29.6g(0.25モル)および溶媒としてのジエチレングリコール212g(2モル)を入れ、触媒として1−メチルイミダゾール3gを添加した後に、90℃に加熱して5時間反応させた。反応終了後、溶媒IPA(イソプロピルアルコール)500mlを加えて10℃まで冷却することにより、生成物40gを得た。得られた生成物のうち、HPLCにて測定した9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンの純度は、60%未満であった。
【0186】
(実施例17)
反応器に、実施例1で得られた9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.8モル、エチレングリコール2.2モル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸1.0モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、エステル交換反応を行った後、酸化ゲルマニウム20×10−4モルを加え、298℃、1トール以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。この後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0187】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来のポリエステル樹脂であることが分かった。
【0188】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量は40400、ガラス転移温度Tgは121℃、色差b*値は1.5であった。そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを180℃でプレス成形し、フィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.607であった。
【0189】
(実施例18)
実施例17において、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に変えて、テレフタル酸ジメチルを使用したこと以外は、実施例17と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0190】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来のポリエステル樹脂であることが分かった。
【0191】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量は34200、ガラス転移温度Tgは142℃、色差b*値は3.2であった。そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを180℃でプレス成形し、フィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.632であった。
【0192】
(実施例19)
実施例17において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.8モルに変えて、実施例5で得られた9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン0.8モルを使用したこと以外は、実施例17と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0193】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来のポリエステル樹脂であることが分かった。
【0194】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量は35800、ガラス転移温度Tgは118℃、色差b*値は5.2であった。そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを180℃でプレス成形し、フィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.602であった。
【0195】
(実施例20)
実施例19において、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に変えて、テレフタル酸ジメチルを使用したこと以外は、実施例19と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0196】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来のポリエステル樹脂であることが分かった。
【0197】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量は29600、ガラス転移温度Tgは135℃、色差b*値は7.1であった。そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを180℃でプレス成形し、フィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.625であった。
【0198】
(実施例21)
実施例17において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.8モルに変えて、実施例9で得られた9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン0.8モルを使用したこと以外は、実施例17と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0199】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来のポリエステル樹脂であることが分かった。
【0200】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量は33600、ガラス転移温度Tgは139℃、色差b*値は9.3であった。そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを180℃でプレス成形し、フィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.590であった。
【0201】
(実施例22)
実施例21において、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に変えて、テレフタル酸ジメチルを使用したこと以外は、実施例21と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0202】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来のポリエステル樹脂であることが分かった。
【0203】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量は29700、ガラス転移温度Tgは152℃、色差b*値は10.9であった。そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを200℃でプレス成形し、フィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.618であった。
【0204】
(実施例23)
実施例17において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.8モルに変えて、実施例13で得られた9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン0.8モルを使用したこと以外は、実施例17と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0205】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来のポリエステル樹脂であることが分かった。
【0206】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量は42100、ガラス転移温度Tgは160℃、色差b*値は12.9であった。そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを220℃でプレス成形し、フィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.644であった。
【0207】
(実施例24)
実施例23において、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に変えて、テレフタル酸ジメチルを使用したこと以外は、実施例23と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0208】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン由来、20モル%がエチレングリコール由来のポリエステル樹脂であることが分かった。
【0209】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量は39500、ガラス転移温度Tgは182℃、色差b*値は13.4であった。そして、得られたポリエステル樹脂のペレットを240℃でプレス成形し、フィルム(未延伸フィルム)を得た。このフィルムの屈折率を測定したところ、1.661であった。
【0210】
(実施例25)
実施例1で得られた9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン43.8g(0.1モル)、アクリル酸18.7g(2.6モル)、p−トルエンスルホン酸2.2g、トルエン98g、及びメトキノン0.21gを仕込み、110℃〜115℃で還流しながら理論脱水量を得るまで脱水エステル化反応を行った。その後、反応液をアルカリ中和し、20%食塩水で洗浄を行った。洗浄後、トルエンを除去した。さらに、得られた化合物のNMR分析を行った結果、目的とするジアクリレート(下記式で表される化合物)を主成分とする化合物(HPLC純度85%以上)であることを確認した。
そして、得られた化合物の屈折率は1.626、色相(APHA)は20、色差b*は3であった。
【0211】
【化14】

【0212】
(実施例26)
実施例25において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンに変えて、実施例5で得られた9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンを用いた以外は、実施例25と同様にして、化合物を得た。得られた化合物のNMR分析を行った結果、目的とするジアクリレート(下記式で表される化合物)を主成分とする化合物(HPLC純度80%以上)であることを確認した。そして、得られた化合物の屈折率は1.617、色相(APHA)は60、色差b*は9であった。
【0213】
【化15】

【0214】
(実施例27)
実施例25において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンに変えて、実施例9で得られた9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンを用いた以外は、実施例25と同様にして、化合物を得た。得られた化合物のNMR分析を行った結果、目的とするジアクリレート(下記式で表される化合物)を主成分とする化合物(HPLC純度80%以上)であることを確認した。そして、得られた化合物の屈折率は1.610、色相(APHA)は55、色差b*は8であった。
【0215】
【化16】

【0216】
(実施例28)
実施例25において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンに変えて、実施例13で得られた9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンを用いた以外は、実施例25と同様にして、化合物を得た。得られた化合物のNMR分析を行った結果、目的とするジアクリレート(下記式で表される化合物)を主成分とする化合物(HPLC純度80%以上)であることを確認した。そして、得られた化合物の屈折率は1.649、色相(APHA)は500、色差b*は40であった。
【0217】
【化17】

【0218】
(実施例29)
ディーンスタークおよび還流管を取り付けたセパラブルフラスコに、実施例1で得られた9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン43.8g(0.1モル)、クロロメチルオキシラン92g(1mol)、塩化テトラメチルアンモニウム(特級、関東化学(株)製)1gを添加し、65℃で1時間、加熱溶解させた。その後、フレーク状の水酸化ナトリウム12gを、温度が70℃以下を保つように少量ずつ120分以内に投入した。
【0219】
水酸化ナトリウム投入後5時間、温度を65℃以下に保持しつつ加熱攪拌した結果、HPLCにて原料化合物の消失を確認した。引き続き、メチルイソブチルケトン80gを投入し、イオン交換水30gを投入し、水層を廃棄した。この操作をpHが中性になるまで、3〜5回繰り返した。エバポレーターにて90℃以下でメチルイソブチルケトンを除去した。その後、乾燥機内にて90℃で24時間乾燥し、化合物を得た。得られた化合物のNMR分析を行った結果、目的とするジグリシジルエーテル(下記式で表される化合物)を主成分とする化合物(HPLC純度80%以上)であることを確認した。得られた化合物のへーズは1.2、色相(APHA)は70、色差b*は6であった。
【0220】
【化18】

【0221】
(実施例30)
実施例29において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンに変えて、実施例5で得られた9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンを用いた以外は、実施例29と同様にして、化合物を得た。得られた化合物のNMR分析を行った結果、目的とするジグリシジルエーテル(下記式で表される化合物)を主成分とする化合物(HPLC純度80%以上)であることを確認した。得られた化合物のへーズは0.9、色相(APHA)は93、色差b*は8.5であった。
【0222】
【化19】

【0223】
(実施例31)
実施例29において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンに変えて、実施例9で得られた9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンを用いた以外は、実施例29と同様にして、化合物を得た。得られた化合物のNMR分析を行った結果、目的とするジグリシジルエーテル(下記式で表される化合物)を主成分とする化合物(HPLC純度80%以上)であることを確認した。得られた化合物のへーズは1.2、色相(APHA)は77、色差b*は8であった。
【0224】
【化20】

【0225】
(実施例32)
実施例29において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンに変えて、実施例13で得られた9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンを用いた以外は、実施例29と同様にして、化合物を得た。得られた化合物のNMR分析を行った結果、目的とするジグリシジルエーテル(下記式で表される化合物)を主成分とする化合物(HPLC純度80%以上)であることを確認した。得られた化合物のへーズは0.8、色相(APHA)は210、色差b*は25であった。
【0226】
【化21】

【産業上の利用可能性】
【0227】
本発明の方法では、着色が著しく抑制されたフルオレン骨格を有するアルコールを得ることができる。このようなアルコールは、着色が低減されているとともに、種々の特性(光学特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐薬品性、電気特性、機械特性、寸法安定性など)に優れている。そのため、前記アルコールは、樹脂原料や樹脂硬化剤などとして好適に用いることができる。特に、前記アルコールを、エポキシ樹脂(又はその硬化剤)や、アクリル系樹脂(ジ(メタ)アクリレートなど)などの光又は熱硬化性樹脂や、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂に適用すると、高耐熱性、高架橋性、高屈折率、高透明性、低線膨張率などの優れた特性が効率よく付与されているとともに、着色が著しく低減された樹脂やその成形体を得ることができる。前記エポキシ樹脂は、上記のような特性が要求される用途、例えば、半導体封止剤、電装基板などとして好適である、また、前記アクリル系樹脂は、光学材料用途、例えば、光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、眼鏡レンズ、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどに有用である。また、ポリエステル樹脂は、帯電防止剤、インキ、接着剤、粘着剤、樹脂充填材、帯電トレイ、導電シート、保護膜(電子機器、液晶部材などの保護膜など)、電気・電子材料(キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、ホログラム記録材料)、電気・電子部品又は機器(光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池、EMIシールドフィルム、フォトクロミック材料、有機EL素子、カラーフィルタなど)用樹脂、機械部品又は機器(自動車、航空・宇宙材料、センサ、摺動部材など)用の樹脂などに好適に利用できる。
【0228】
特に、ポリエステル樹脂は、光学的特性に優れているため、光学用途の成形体(光学用成形体)を構成(又は形成)するのに有用である。このような前記ポリエステル樹脂で形成(構成)された光学用成形体としては、例えば、光学フィルムなどが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸触媒およびチオール類の存在下、下記式(1)
【化1】

(式中、Rは置換基を示し、kは0〜4の整数を示す。)
で表されるフルオレノン類と、下記式(2)
【化2】

(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは置換基を示し、mは1以上の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数である。ただし、環Zがベンゼン環であるとき、Rはアリール基を含まず、nは1である。)
で表されるアルコールとを反応させ、下記式(3)
【化3】

(式中、Z、R、R、R、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
で表される化合物を製造する方法であって、
前記式(2)で表されるアルコールの使用割合が、前記式(1)で表されるフルオレノン類1モルに対して3モル以上であり、かつ前記チオール類の使用割合が、前記式(1)で表されるフルオレノン類100重量部に対して3重量部以上である製造方法。
【請求項2】
式(2)において、環Zがベンゼン環であり、RがC2−4アルキレン基であり、mが1であり、pが0〜3であり、Rがアルキル基である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
式(2)で表されるアルコールが、C2−4アルキレングリコールモノフェニルエーテル、およびC2−4アルキレングリコールモノ(モノ又はジC1−4アルキルフェニル)エーテルから選択されたアルコールである請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
式(2)において、環Zがナフタレン環であり、RがC2−4アルキレン基であり、mが1である請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
式(2)で表されるアルコールが、C2−4アルキレングリコールモノナフチルエーテルである請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
酸触媒が硫酸であり、チオール類がメルカプトC2−6カルボン酸である請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
チオール類の使用割合が、式(1)で表されるフルオレノン類100重量部に対して5〜30重量部である請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
チオール類の使用割合が、酸触媒100重量部に対して4〜25重量部である請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
(i)式(2)で表されるアルコールの使用割合が、式(1)で表されるフルオレノン類1モルに対して3〜15モルであり、(ii)チオール類の使用割合が、式(1)で表されるフルオレノン類100重量部に対して6〜25重量部であり、(iii)チオール類の使用割合が、酸触媒100重量部に対して5〜20重量部である請求項1記載の製造方法。
【請求項10】
少なくとも芳香族炭化水素類で構成された溶媒の存在下で反応させる請求項1記載の製造方法。
【請求項11】
溶媒の割合が、式(1)で表されるフルオレノン類および式(2)で表されるアルコールの総量1重量部に対して、0.3〜10重量部である請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
(i)式(2)で表されるアルコールの使用割合が、式(1)で表されるフルオレノン類1モルに対して3.5〜10モルであり、(ii)チオール類の使用割合が、式(1)で表されるフルオレノン類100重量部に対して7〜20重量部であり、(iii)チオール類の使用割合が、酸触媒100重量部に対して6〜18重量部であり、(iv)芳香族炭化水素類がC6−10アレーンであり、(v)溶媒の割合が、式(1)で表されるフルオレノン類および式(2)で表されるアルコールの総量1重量部に対して、0.5〜5重量部である請求項10又は11記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12の製造方法により得られる前記式(3)で表される化合物であって、環Zがベンゼン環およびpが1〜4であるか、又は環Zがナフタレン環である化合物。
【請求項14】
色相が20以下の9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジアルキルフェニル)フルオレンである請求項13記載の化合物。
【請求項15】
色相が60以下の9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンである請求項13記載の化合物。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれかに記載の化合物を重合成分とする樹脂であって、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリレートおよびエポキシ樹脂から選択された樹脂。
【請求項17】
ポリエステル樹脂の色差b*が20以下であり、ポリ(メタ)アクリレートの色差b*が50以下であり、エポキシ樹脂の色差b*が40以下である請求項16記載の樹脂。

【公開番号】特開2011−68624(P2011−68624A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223257(P2009−223257)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(591147694)大阪ガスケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】