説明

フルオロアルキルアルコール混合物およびその製造法

【課題】生体蓄積性が低いといわれている炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物であって、生物的分解(微生物による生化学的分解)または化学的分解(環境中の酸、塩基、活性酸素、オゾン等による分解)を受け易いCH=CF基を、フルオロアルキル基中に形成させた、界面活性剤等として有効に使用し得るフルオロアルキルアルコール混合物およびその製造法を提供する。
【解決手段】一般式 CF3(CF2)n(CH=CF)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔Ia〕および一般式 CF3(CF2)n-1(CF=CH)aCF2(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔Ib〕(ここで、nは1〜5の整数であり、aは1〜4の整数であり、bは0〜3の整数であり、cは1〜3の整数である)で表わされるフルオロアルキルアルコール混合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロアルキルアルコール混合物およびその製造法に関する。さらに詳しくは、界面活性剤等として有効に用いられるフルオロアルキルアルコール混合物およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロアルキルアルコールのアクリル酸誘導体、例えばCF3(CF2)7CH2CH2OCOCH=CH2は、繊維用撥水撥油剤合成モノマーとして多量に使用されている。また、そのアクリレートの原料となるパーフルオロアルキルアルコールは、界面活性剤等として広く使用されている。
【特許文献1】特公昭63−22237号公報
【0003】
しかるに、近年炭素数8のパーフルオロオクタン酸あるいは炭素数が8を超えるパーフルオロカルボン酸は難分解性で、生体蓄積性が高く、生体毒性が疑われるなど環境に問題がみられるとの報告がなされている。これらの化合物の内、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物は、環境中での生物的分解または化学的分解によって、パーフルオロオクタン酸または炭素数が8を超えるパーフルオロカルボン酸に変化する可能性が示唆されており、今後はその製造や使用が困難になることが懸念されている。ただし、パーフルオロアルキル基の炭素数が6以下の化合物にあっては、生体蓄積性が低いといわれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、生体蓄積性が低いといわれている炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物であって、生物的分解(微生物による生化学的分解)または化学的分解(環境中の酸、塩基、活性酸素、オゾン等による分解)を受け易いCH=CF基を、フルオロアルキル基中に形成させた、界面活性剤等として有効に使用し得るフルオロアルキルアルコール混合物およびその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって、一般式
CF3(CF2)n(CH=CF)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔Ia〕
および一般式
CF3(CF2)n-1(CF=CH)aCF2(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔Ib〕
(ここで、nは1〜5の整数であり、aは1〜4の整数であり、bは0〜3の整数であり、cは1〜3の整数である)で表わされるフルオロアルキルアルコール混合物が提供される。
【0006】
かかるフルオロアルキルアルコール混合物は、一般式
CF3(CF2)n(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cI 〔II〕
で表わされるフルオロアルキルアイオダイドを、N-メチルホルムアミドと反応させ、次いで塩基性化合物の存在下で加水分解することによって製造される。ここで、式〔II〕ではCH2CF2基とCF2CF2基とはランダムに結合され得るが、CF3(CF2)n基の隣接基は少くとも1個のCH2CF2基である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るフルオロアルキルアルコール混合物は、分子中のフッ化ビニリデン由来のCH2CF2基が容易に脱HFして二重結合を形成し、それがオゾン分解を受けて分解し易いため、パーフルオロアルキル基が生体蓄積性の低い炭素数6以下に分解され得る。さらに、従来の化合物と同様にフルオロアルキルアルコール混合物は界面活性剤として、またその(メタ)アクリル酸誘導体の混合物は撥水撥油剤合成モノマーとして有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
フルオロアルキルアルコール混合物製造の出発原料として用いられるフルオロアルキルアイオダイド
CH3(CF2)n(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cI 〔II〕
は、一般式
CF3(CF2)n(CH2CF2)a(CF2CF2)bI 〔A〕
で表わされる末端ヨウ素化化合物にエチレンを付加反応させることにより製造される。エチレンの付加反応は、上記化合物〔A〕に過酸化物開始剤の存在下で加圧エチレンを付加反応させることにより行われ、その付加数は反応条件にもよるが、1以上、好ましくは1である。なお、反応温度は用いられる開始剤の分解温度にも関係するが、反応は一般に約80〜120℃で行われ、低温で分解する過酸化物開始剤を用いた場合には80℃以下での反応が可能である。過酸化物開始剤としては、第3ブチルパーオキサイド、ジ(第3ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート等が、上記化合物〔I〕に対して約1〜5モル%の割合で用いられる。
【0009】
上記化合物〔A〕は、より詳細には一般式
CnF2n+1(CH2CF2)s+p(CF2CF2)t+rI 〔A′〕
p:反応により付加したフッ化ビニリデン骨格の数
r:反応により付加したテトラフルオロエチレン骨格の数
s+p:aと同じ(1〜4、好ましくは1〜2)
t+r:bと同じ(0〜3、好ましくは1〜2)
で表わすことができ、より具体的には次のような方法によって製造される。
(1)一般式
CnF2n+1I 〔B-1〕
(ここで、nは1〜6の整数である)で表わされるパーフルオロアルキルアイオダイドを、過酸化物開始剤の存在下でフッ化ビニリデンと反応させ、一般式
CnF2n+1(CH2CF2)pI 〔A-1〕
(ここで、nは上記定義と同じであり、pは1〜4の整数で、反応により付加したフッ化ビニリデン骨格の数である)で表わされる末端ヨウ素化ポリフルオロアルカンオリゴマーとして製造される。
(2)一般式
CnF2n+1(CH2CF2)s(CF2CF2)tI 〔B-2〕
(ここで、nは1〜6の整数であり、sは1〜4の整数であって原料中のフッ化ビニリデン骨格の数であり、tは0〜2の整数であって原料中のテトラフルオロエチレン骨格の数である)で表わされる末端ヨウ素化ポリフルオロアルカンを、過酸化物開始剤の存在下でテトラフルオロエチレンと反応させ、一般式
CnF2n+1(CH2CF2)s(CF2CF2)t+rI 〔A-2〕
(ここで、n、s、tは上記定義と同じであり、rは1〜3の整数であって、反応により付加したテトラフルオロエチレンの骨格の数である)で表わされる末端ヨウ素化ポリフルオロアルカンオリゴマーとして製造される。
あるいは
(3)一般式
CnF2n+1(CH2CF2)s(CF2CF2)tI 〔B-3〕
(ここで、nは1〜6の整数であり、sは1〜3の整数であって原料中のフッ化ビニリデン骨格の数であり、tは1〜3の整数であって原料中のテトラフルオロエチレン骨格の数である)で表わされる末端ヨウ素化ポリフルオロアルカンを、過酸化物開始剤の存在下でフッ化ビニリデンと反応させ、一般式
CnF2n+1(CH2CF2)s+p(CF2CF2)tI 〔A-3〕
(ここで、n、s、tは上記定義と同じであり、pは1〜3の整数であって、反応により付加したフッ化ビニリデン骨格の数である)で表わされる末端ヨウ素化ポリフルオロアルカンオリゴマーとして製造される。
【0010】
具体的に用いられる末端ヨウ素化ポリフルオロアルカンとしては、次のような化合物が例示される。
CF3(CF2)(CH2CF2)I
CF3(CF2)(CH2CF2)2I
CF3(CF2)2(CH2CF2)I
CF3(CF2)2(CH2CF2)2I
CF3(CF2)3(CH2CF2)I
CF3(CF2)3(CH2CF2)2I
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)I
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)2I
CF3(CF2)2(CH2CF2)(CF2CF2)I
CF3(CF2)2(CH2CF2)(CF2CF2)2I
CF3(CF2)3(CH2CF2)2(CF2CF2)I
CF3(CF2)3(CH2CF2)2(CF2CF2)2I
【0011】
一般式〔B-1〕、〔B-2〕または〔B-3〕で表わされる末端ヨウ素化ポリフルオロアルカンのフッ化ビニリデンまたはテトラフルオロエチレンによるオリゴマー化反応は、過酸化物開始剤、例えばジ(第3ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート等の存在下で行われる。過酸化物開始剤は、前記化合物〔B-1〕、〔B-2〕または〔B-3〕に対して約0.1〜0.5モル%の割合で用いられ、p、rはそれぞれフッ化ビニリデンまたはテトラフルオロエチレンの増加したオリゴマー化度を示している。反応温度は、用いられる開始剤の分解温度にも依存するが、低温で分解する過酸化物開始剤を用いることにより、80℃以下での反応が可能である。
【0012】
フルオロアルキルアイオダイド〔II〕は、N-メチルホルムアミドと反応させ、次いで塩基性化合物の存在下で加水分解反応させることにより、次の一般式で表わされるフルオロアルキルアルコール
CF3(CF2)n(CH=CF)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔Ia〕
CF3(CF2)n-1(CF=CH)aCF2(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔Ib〕
の混合物を形成させる。ここで化合物〔Ia〕および〔Ib〕の混合物として形成されるのは、脱HF化反応において、メチレン鎖CH2のH原子とこれと前後の位置に結合しているフルオロメチレン鎖CF2のいずれか一方のF原子との引き抜きが、前後で等価的に生ずるためである。また、生成したフルオロアルキルアルコールは、脱HF化反応が等価的であるため、化合物〔Ia〕と〔Ib〕との生成割合はほぼ半々となる。これらの化合物〔Ia〕と〔Ib〕とは、極めて類似した構造異性体であるため、それぞれを分離して同定することはできないが、同等の反応性を有するため、混合物のままそれを他の物質と合成原料として用いることができる。
【0013】
この反応は、フルオロアルキルアイオダイド〔II〕に対して約5〜20倍モル、好ましくは約10〜15倍モル量程度のN-メチルホルムアミドを用い、約140〜160℃で約7〜10時間程度反応させ、次いで水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物を用い、約85〜95℃で約7〜10時間程度反応させることにより行われる。
【0014】
得られたフルオロアルキルアルコール〔Ia〕、〔Ib〕の混合物は、これをアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化反応させることができる。エステル化反応に際しては、フルオロアルキルアルコール混合物にトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、p-トルエンスルホン酸等の触媒および重合禁止剤としてのハイドロキノンを加え、約90〜100℃に加熱した後、そこに約1〜2倍モル量のアクリル酸またはメタクリル酸を加え、約110〜120℃で約2〜5時間程度加熱し、脱水、エステル化反応が行われる。
【実施例】
【0015】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0016】
参考例1
攪拌機および温度計を備えた容量1200mlのオートクレーブに、
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)2I (99GC%)
603g(0.99モル)およびジ第3ブチルパーオキサイド7gを仕込み、真空ポンプでオートクレーブを脱気した。内温を80℃迄加熱したところで、エチレンを逐次的に導入し、内圧を0.5MPaとした。内圧が0.2MPa迄下がったら、再びエチレンを導入して0.5MPaとし、これをくり返した。内温を80〜115℃に保ちながら、約3時間かけてエチレン41g(1.45モル)を導入した。内温50℃以下で内容物を回収し、
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)I (98GC%)
637g(収率98.8%)を得た。
【0017】
実施例1
コンデンサ、温度計および攪拌機を備えた容量300mlの四口フラスコに、参考例1で得られた
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)I (98GC%)
150g(0.23モル)およびN-メチルホルムアミド170g(2.88モル)を仕込み、150℃で8時間攪拌し、反応させた後、反応混合物を水100mlで洗浄し、その下層(133g)を10重量%NaOH水溶液140gと混合し、90℃で8時間攪拌して反応させた。反応混合物を静置後、下層として常温で淡黄色透明な液体である反応生成物(66.4GC%)を124g(収率70.5%)得た。
【0018】
反応生成物について、内圧0.2kPa、内温109〜123℃、塔頂温度86〜87℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(97.4GC%)を30g(蒸留収率35.6%)を得た。この精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で示される化合物の混合物であることが確認された。
CF3(CF2)3(CH=CF)(CF2CF2)2(CH2CH2)OH
CF3(CF2)2(CF=CH)CF2(CF2CF2)2(CH2CH2)OH
1H-NMR(CDCl3、TMS):δ5.71〜5.92(CH=CF、CF=CH)
2.28〜2.45(CH2CH2)
3.97(CH2CH2)
2.28〜2.45(OH)
19F-NMR((CDCl3、C6F6):ppm -82.13〜-81.77(CF3)
-128.22〜-126.84(CF3CF2CF2)
-125.52〜-124.83(CF3CF2CF2)
-111.22〜-109.58(CF2CH=CF、CF=CHCF2)
-120.76〜-119.73(CF2CF2CF2CF2CH2)
-123.69〜-122.27(CF2CF2CF2CF2CH2)
-114.44(CF2CF2CF2CF2CH2)
-124.73(CF2CF2CF2CF2CH2)
【0019】
参考例2
コンデンサ、温度計および攪拌機を備えた容量100mlの四口フラスコに、実施例1で得られた化合物の混合物(97.4GC%)30.0g(0.06モル)、トルエン21g、p-トルエンスルホン酸6gおよびハイドロキノン0.3gを仕込み、内温を100℃迄加熱した後アクリル酸6g(0.07モル)を加え、内温115℃で4時間攪拌して反応させた。反応終了後、冷却して得られた反応混合物溶液61gからエバポレータでトルエンを除去し、42gの残渣を水道水で洗浄し、常温で淡黄色透明な液体である反応生成物(86.9GC%)を34g(収率84.1%)得た。
【0020】
反応生成物について、内圧0.1kPa、内温128〜133℃、塔頂温度64〜72℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(98.0GC%)を23g(蒸留収率77.7%)を得た。この精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で示される化合物の混合物であることが確認された。
CF3(CF2)3(CH=CF)(CF2CF2)2(CH2CH2)OCOCH=CH2
CF3(CF2)2(CF=CH)CF2(CF2CF2)2(CH2CH2)OCOCH=CH2
1H-NMR(CDCl3、TMS):δ5.73〜5.97(CH=CF、CF=CH)
2.48(CH2CH2)
4.46(CH2CH2)
6.14(CH=CH2)
6.41、5.73〜5.97(CH=CH2)
19F-NMR((CDCl3、C6F6):ppm -82.06〜-81.73(CF3)
-128.22〜-126.84(CF3CF2CF2)
-125.52〜-124.81(CF3CF2CF2)
-111.22〜-109.58(CF2CH=CF、CF=CHCF2)
-120.76〜-119.73(CF2CF2CF2CF2CH2)
-123.69〜-122.27(CF2CF2CF2CF2CH2)
-114.54(CF2CF2CF2CF2CH2)
-124.56(CF2CF2CF2CF2CH2)
【0021】
参考例3
攪拌機および温度計を備えた容量1200mlのオートクレーブに、
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)I (99.3GC%)
609g(1.19モル)およびジ第3ブチルパーオキサイド6gを仕込み、真空ポンプでオートクレーブを脱気した。内温を80℃迄加熱したところで、エチレンを逐次的に導入し、内圧を0.5MPaとした。内圧が0.2MPa迄下がったら、再びエチレンを導入して0.5MPaとし、これをくり返した。内温を80〜115℃に保ちながら、約3時間かけてエチレン50g(1.79モル)を導入した。内温50℃以下で内容物を回収し、
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)I (97.4GC%)
640g(収率97.3%)を得た。
【0022】
実施例2
コンデンサ、温度計および攪拌機を備えた容量300mlの四口フラスコに、参考例3で得られた
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)I (97.4GC%)
153g(0.28モル)およびN-メチルホルムアミド207g(3.51モル)を仕込み、150℃で8時間攪拌し、反応させた後、反応混合物を水100mlで洗浄し、その下層(135g)を10重量%NaOH水溶液140gと混合し、90℃で8時間攪拌して反応させた。反応混合物を静置後、下層として常温で淡黄色透明な液体である反応生成物(65.3GC%)を132g(収率75.4%)得た。
【0023】
反応生成物について、内圧0.2kPa、内温103〜118℃、塔頂温度84〜85℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(97.8GC%)を38g(蒸留収率42.8%)を得た。この精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で示される化合物の混合物であることが確認された。
CF3(CF2)3(CH=CF)(CF2CF2)(CH2CH2)OH
CF3(CF2)2(CF=CH)CF2(CF2CF2)(CH2CH2)OH
1H-NMR(CDCl3、TMS):δ5.75〜5.88(CH=CF、CF=CH)
2.35(CH2CH2)
3.93(CH2CH2)
3.07〜3.28(OH)
19F-NMR((CDCl3、C6F6):ppm -82.0〜-81.6(CF3)
-128.0〜-126.6(CF3CF2CF2)
-125.3〜-124.6(CF3CF2CF2)
-111.1〜-108.8(CF2CH=CF、CF=CHCF2)
-126.6(CF2CF2CH2)
-113.2(CF2CF2CH2)
【0024】
参考例4
コンデンサ、温度計および攪拌機を備えた容量100mlの四口フラスコに、実施例2で得られた化合物の混合物(97.8GC%)37g(0.09モル)、トルエン23g、p-トルエンスルホン酸7gおよびハイドロキノン0.4gを仕込み、内温を100℃迄加熱した後アクリル酸8g(0.11モル)を加え、内温115℃で4時間攪拌して反応させた。反応終了後、冷却して得られた反応混合物溶液74gからエバポレータでトルエンを除去し、53gの残渣を水道水で洗浄し、常温で淡黄色透明な液体である反応生成物(88.1GC%)を42g(収率85.4%)得た。
【0025】
反応生成物について、内圧0.1kPa、内温124〜128℃、塔頂温度63〜68℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(98.5GC%)を30g(蒸留収率79.2%)を得た。この精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で示される化合物の混合物であることが確認された。
CF3(CF2)3(CH=CF)(CF2CF2)(CH2CH2)OCOCH=CH2
CF3(CF2)2(CF=CH)CF2(CF2CF2)(CH2CH2)OCOCH=CH2
1H-NMR(CDCl3、TMS):δ5.75〜5.88(CH=CF、CF=CH)
2.52(CH2CH2)
4.46(CH2CH2)
6.13(CH=CH2)
6.41、5.89(CH=CH2)
19F-NMR((CDCl3、C6F6):ppm -82.0〜-81.7(CF3)
-127.9〜-126.5(CF3CF2CF2)
-125.4〜-124.8(CF3CF2CF2)
-110.9〜-110.2(CF2CH=CF、CF=CHCF2)
-126.7(CF2CF2CH2)
-113.7(CF2CF2CH2)
【0026】
参考例5
攪拌機および温度計を備えた容量1200mlのオートクレーブに、
CF3CF2(CH2CF2)(CF2CF2)3I (98.7GC%)
605g(0.98モル)およびジ第3ブチルパーオキサイド7gを仕込み、真空ポンプでオートクレーブを脱気した。内温を80℃迄加熱したところで、エチレンを逐次的に導入し、内圧を0.5MPaとした。内圧が0.2MPa迄下がったら、再びエチレンを導入して0.5MPaとし、これをくり返した。内温を80〜115℃に保ちながら、約3時間かけてエチレン43g(1.53モル)を導入した。内温50℃以下で内容物を回収し、
CF3CF2(CH2CF2)(CF2CF2)3(CH2CH2)I (97.7GC%)
630g(収率98.5%)を得た。
【0027】
実施例3
コンデンサ、温度計および攪拌機を備えた容量300mlの四口フラスコに、参考例5で得られた
CF3CF2(CH2CF2)(CF2CF2)3(CH2CH2)I (97.7GC%)
150g(0.23モル)およびN-メチルホルムアミド170g(2.88モル)を仕込み、150℃で8時間攪拌し、反応させた後、反応混合物を水100mlで洗浄し、その下層(132g)を10重量%NaOH水溶液141gと混合し、90℃で8時間攪拌して反応させた。反応混合物を静置後、下層として常温で淡黄色透明な液体である反応生成物(66.1GC%)を126g(収率71.4%)得た。
【0028】
反応生成物について、内圧0.2kPa、内温110〜123℃、塔頂温度85〜87℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(97.5GC%)を31g(蒸留収率35.9%)を得た。この精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で示される化合物の混合物であることが確認された。
CF3CF2(CH=CF)(CF2CF2)3(CH2CH2)OH
CF3(CF=CH)CF2(CF2CF2)3(CH2CH2)OH
1H-NMR(CDCl3、TMS):δ5.13〜5.84(CH=CF、CF=CH)
2.28〜2.45(CH2CH2)
3.97(CH2CH2)
2.27〜2.47(OH)
19F-NMR((CDCl3、C6F6):ppm -87.1〜-86.7(CF3)
-118.1〜-109.7(CF2CH=CF、CF=CHCF2)
-120.8〜-119.6(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
-120.4〜-119.3(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
-120.4〜-119.3(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
-123.4〜-122.1(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
-124.6(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
-114.6(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
【0029】
参考例6
コンデンサ、温度計および攪拌機を備えた容量100mlの四口フラスコに、実施例3で得られた化合物の混合物(97.5GC%)30.0g(0.06モル)、トルエン21g、p-トルエンスルホン酸6gおよびハイドロキノン0.3gを仕込み、内温を100℃迄加熱した後アクリル酸6g(0.07モル)を加え、内温115℃で4時間攪拌して反応させた。反応終了後、冷却して得られた反応混合物溶液61gからエバポレータでトルエンを除去し、42gの残渣を水道水で洗浄し、常温で淡黄色透明な液体である反応生成物(87.3GC%)を34g(収率84.7%)得た。
【0030】
反応生成物について、内圧0.1kPa、内温129〜133℃、塔頂温度65〜72℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(98.1GC%)を24g(蒸留収率78.3%)を得た。この精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で示される化合物の混合物であることが確認された。
CF3CF2(CH=CF)(CF2CF2)3(CH2CH2)OCOCH=CH2
CF3(CF=CH)CF2(CF2CF2)3(CH2CH2)OCOCH=CH2
1H-NMR(CDCl3、TMS):δ5.72〜5.85(CH=CF、CF=CH)
2.51(CH2CH2)
4.46(CH2CH2)
6.13(CH=CH2)
6.41、5.89(CH=CH2)
19F-NMR((CDCl3、C6F6):ppm -87.0〜-86.7(CF3)
-117.6〜-110.4(CF2CH=CF、CF=CHCF2)
-121.7〜-119.9(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
-120.9〜-120.0(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
-120.9〜-120.0(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
-123.3〜-122.0(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
-124.4(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
-114.5(CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2)
【0031】
参考例7
攪拌機および温度計を備えた容量1200mlのオートクレーブに、
CF3CF2(CH2CF2)(CF2CF2)2I (99.4GC%)
605g(1.18モル)およびジ第3ブチルパーオキサイド6gを仕込み、真空ポンプでオートクレーブを脱気した。内温を80℃迄加熱したところで、エチレンを逐次的に導入し、内圧を0.5MPaとした。内圧が0.2MPa迄下がったら、再びエチレンを導入して0.5MPaとし、これをくり返した。内温を80〜115℃に保ちながら、約3時間かけてエチレン50g(1.79モル)を導入した。内温50℃以下で内容物を回収し、
CF3CF2(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)2I (97.3GC%)
639g(収率98.0%)を得た。
【0032】
実施例4
コンデンサ、温度計および攪拌機を備えた容量300mlの四口フラスコに、参考例7で得られた
CF3CF2(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)I (97.3GC%)
150g(0.27モル)およびN-メチルホルムアミド205g(3.48モル)を仕込み、150℃で8時間攪拌し、反応させた後、反応混合物を水100mlで洗浄し、その下層(134g)を10重量%NaOH水溶液140gと混合し、90℃で8時間攪拌して反応させた。反応混合物を静置後、下層として常温で淡黄色透明な液体である反応生成物(67.1GC%)を127g(収率77.1%)得た。
【0033】
反応生成物について、内圧0.2kPa、内温104〜119℃、塔頂温度84〜85℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(98.0GC%)を36g(蒸留収率41.6%)を得た。この精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で示される化合物の混合物であることが確認された。
CF3CF2(CH=CF)(CF2CF2)2(CH2CH2)OH
CF3(CF=CH)CF2(CF2CF2)2(CH2CH2)OH
1H-NMR(CDCl3、TMS):δ5.11〜5.81(CH=CF、CF=CH)
2.26〜2.42(CH2CH2)
3.95(CH2CH2)
3.02〜3.21(OH)
19F-NMR((CDCl3、C6F6):ppm -87.0〜-86.6(CF3)
-118.0〜-109.6(CF2CH=CF、CF=CHCF2)
-120.1〜-119.3(CF2CF2CF2CF2CH2)
-123.4〜-122.1(CF2CF2CF2CF2CH2)
-124.6(CF2CF2CF2CF2CH2)
-114.2(CF2CF2CF2CF2CH2)
【0034】
参考例8
コンデンサ、温度計および攪拌機を備えた容量100mlの四口フラスコに、実施例4で得られた化合物の混合物(98.0GC%)35g(0.08モル)、トルエン22g、p-トルエンスルホン酸7gおよびハイドロキノン0.4gを仕込み、内温を100℃迄加熱した後アクリル酸8g(0.11モル)を加え、内温115℃で4時間攪拌して反応させた。反応終了後、冷却して得られた反応混合物溶液72gからエバポレータでトルエンを除去し、52gの残渣を水道水で洗浄し、常温で淡黄色透明な液体である反応生成物(87.9GC%)を42g(収率85.8%)得た。
【0035】
反応生成物について、内圧0.1kPa、内温124〜128℃、塔頂温度63〜68℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(98.8GC%)を30g(蒸留収率79.1%)を得た。この精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で示される化合物の混合物であることが確認された。
CF3CF2(CH=CF)(CF2CF2)2(CH2CH2)OCOCH=CH2
CF3(CF=CH)CF2(CF2CF2)2(CH2CH2)OCOCH=CH2
1H-NMR(CDCl3、TMS):δ5.70〜5.83(CH=CF、CF=CH)
2.46(CH2CH2)
4.43(CH2CH2)
6.14(CH=CH2)
6.41、5.8(CH=CH2)
19F-NMR((CDCl3、C6F6):ppm -87.0〜-86.7(CF3)
-117.6〜-110.4(CF2CH=CF、CF=CHCF2)
-122.1〜-120.3(CF2CF2CF2CF2CH2)
-123.8〜-122.5(CF2CF2CF2CF2CH2)
-124.8(CF2CF2CF2CF2CH2)
-114.5(CF2CF2CF2CF2CH2)
【0036】
参考例9
攪拌機および温度計を備えた容量1200mlのオートクレーブに、
CF3CF2(CH2CF2)(CF2CF2)I (99.8GC%)
610g(1.48モル)およびジ第3ブチルパーオキサイド7gを仕込み、真空ポンプでオートクレーブを脱気した。内温を80℃迄加熱したところで、エチレンを逐次的に導入し、内圧を0.5MPaとした。内圧が0.2MPa迄下がったら、再びエチレンを導入して0.5MPaとし、これをくり返した。内温を80〜115℃に保ちながら、約3時間かけてエチレン62g(2.23モル)を導入した。内温50℃以下で内容物を回収し、
CF3CF2(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)I (98.7GC%)
644g(収率98.0%)を得た。
【0037】
実施例5
コンデンサ、温度計および攪拌機を備えた容量300mlの四口フラスコに、参考例9で得られた
CF3CF2(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)I (98.7GC%)
150g(0.34モル)およびN-メチルホルムアミド251g(4.26モル)を仕込み、150℃で8時間攪拌し、反応させた後、反応混合物を水100mlで洗浄し、その下層(130g)を10重量%NaOH水溶液135gと混合し、90℃で8時間攪拌して反応させた。反応混合物を静置後、下層として常温で淡黄色透明な液体である反応生成物(68.8GC%)を119g(収率78.2%)得た。
【0038】
反応生成物について、内圧0.2kPa、内温100〜114℃、塔頂温度80〜81℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(98.1GC%)を38g(蒸留収率45.3%)を得た。この精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で示される化合物の混合物であることが確認された。
CF3CF2(CH=CF)(CF2CF2)(CH2CH2)OH
CF3(CF=CH)CF2(CF2CF2)(CH2CH2)OH
1H-NMR(CDCl3、TMS):δ5.09〜5.77(CH=CF、CF=CH)
2.21〜2.36(CH2CH2)
3.91(CH2CH2)
3.55〜3.68(OH)
19F-NMR((CDCl3、C6F6):ppm -87.0〜-86.6(CF3)
-118.0〜-109.5(CF2CH=CF、CF=CHCF2)
-124.6(CF2CF2CH2)
-114.2(CF2CF2CH2)
【0039】
参考例10
コンデンサ、温度計および攪拌機を備えた容量100mlの四口フラスコに、実施例5で得られた化合物の混合物(98.1GC%)37g(0.12モル)、トルエン26g、p-トルエンスルホン酸8gおよびハイドロキノン0.4gを仕込み、内温を100℃迄加熱した後アクリル酸11g(0.15モル)を加え、内温115℃で4時間攪拌して反応させた。反応終了後、冷却して得られた反応混合物溶液81gからエバポレータでトルエンを除去し、58gの残渣を水道水で洗浄し、常温で淡黄色透明な液体である反応生成物(89.2GC%)を45g(収率87.5%)得た。
【0040】
反応生成物について、内圧0.1kPa、内温120〜124℃、塔頂温度59〜63℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(98.9GC%)を34g(蒸留収率83.0%)を得た。この精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で示される化合物の混合物であることが確認された。
CF3CF2(CH=CF)(CF2CF2)(CH2CH2)OCOCH=CH2
CF3(CF=CH)CF2(CF2CF2)(CH2CH2)OCOCH=CH2
1H-NMR(CDCl3、TMS):δ5.67〜5.81(CH=CF、CF=CH)
2.45(CH2CH2)
4.37(CH2CH2)
6.11(CH=CH2)
6.40、5.88(CH=CH2)
19F-NMR((CDCl3、C6F6):ppm -87.0〜-86.7(CF3)
-117.6〜-110.4(CF2CH=CF、CF=CHCF2)
-124.8(CF2CF2CH2)
-114.5(CF2CF2CH2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
CF3(CF2)n(CH=CF)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔Ia〕
および一般式
CF3(CF2)n-1(CF=CH)aCF2(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔Ib〕
(ここで、nは1〜5の整数であり、aは1〜4の整数であり、bは0〜3の整数であり、cは1〜3の整数である)で表わされるフルオロアルキルアルコール混合物。
【請求項2】
一般式
CF3(CF2)n(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cI 〔II〕
(ここで、nは1〜5の整数であり、aは1〜4の整数であり、bは0〜3の整数であり、cは1〜3の整数である)で表わされるフルオロアルキルアイオダイドを、N-メチルホルムアミドと反応させ、次いで塩基性化合物の存在下で加水分解反応することを特徴とする、一般式
CF3(CF2)n(CH=CF)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔Ia〕
および一般式
CF3(CF2)n-1(CF=CH)aCF2(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔Ib〕
(ここで、n、a、b、cは上記定義と同じである)で表わされるフルオロアルキルアルコール混合物の製造法。

【公開番号】特開2009−173576(P2009−173576A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13385(P2008−13385)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】