説明

フルオロアルキルシリコーンおよびヒドロシリコーンを含有する組成物

記載したのは、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するフルオロアルキルシリコーンを含むフリーラジカル硬化性組成物であり、シリコーンは、少なくとも2つのSi−Hを有し、ポリエチレン性不飽和成分は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基、ヒドロシリル化触媒およびフリーラジカル開始剤を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性フルオロアルキルシリコーン組成物およびその保護コーティングを有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
光学表示装置類、布類、金属類、石、木材、革およびその類などのある一般に使用される材料類は、日常で使用時、傷、磨耗および汚れをこうむりやすい。場合によっては、保護をもたらし、耐久性、性能および外観を強化するため保護被膜がこれらの材料の表面に利用されてもよい。
【0003】
アクリル樹脂の重合に基づくUV硬化系が、様々な表面に対する保護コーティング組成物として使用されている。場合によっては、フッ素化基などの特定の構造体をポリマー網状組織に導入することによりこれらのコーティングの性能を修正または強化することが望ましい場合がある。フッ素化基は、アクリル樹脂とフッ素化アクリレート化合物などの少量(<1%、w/w)のフッ素化モノマーとの共重合によってこれらの組成物に組み込むことができる。
【0004】
米国特許第6,132,861号(カン(Kang)ら、’861)、米国特許第6,238,798B1号(カン(Kang)ら、’798)、米国特許第6,245,833B1号(カン(Kang)ら、’833)、米国特許第6,299,799号(クレイグ((Craig)ら)およびPCT国際公開特許WO99/57185(ハング(Huang)ら)は、コロイド状無機酸化物粒子、硬化性バインダ前駆体および特定のフッ素性化学物質のブレンドを含有するセラマー組成物を記載している。これらの組成物は、単一層被膜中に耐歪み性・耐磨耗性のハードコートを提供すると記載されている。
【0005】
米国特許出願第2006/0014915号は、平均で1分子当たり少なくとも2つの不飽和有機基を有する非フッ素化ポリオルガノシロキサン流体および平均で1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する非フッ素化架橋剤、ヒドロシリル化触媒並びにフルオロオルガノシリコーンを含む組成物を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フッ素化ポリマーを使用した種々の保護コーティングが開発されているが、既存の系よりもより良い性能と寿命を有する改善されたコーティング組成物が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
a)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する51〜99.5重量部のポリエチレン性不飽和成分と、
b)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するフルオロアルキルシリコーンと、
c)少なくとも2つのSi−H基を有し、b)およびc)の合計が1〜49重量部であるヒドロシリコーンと、
d)ヒドロシリル化触媒と、
e)フリーラジカル重合触媒とを含むフリーラジカル硬化性組成物を提供する。
【0008】
一般に、ヒドロシリコーンc)は、Si−H基のモル比が、フルオロアルキルシリコーンのエチレン性不飽和基b)とポリエチレン性不飽和成分のエチレン性不飽和基a)とのモル量未満であるような量で存在する。ヒドロシリコーンは、a)および/またはb)のいずれかの構成成分の不飽和基をヒドロシリル化してもよいが、これに続くフリーラジカル硬化のヒドロシリル化後十分な不飽和基が残留すべきである。
【0009】
他の実施形態では、硬化性組成物は、1〜49重量部の少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するフルオロアルキルシリコーンと少なくとも2つのSi−H基を有するヒドロシリコーンとのヒドロシリル化反応生成物を含む。一般に、ヒドロシリコーンは、Si−H基のモル比が、前記フルオロアルキルシリコーンのエチレン性不飽和基のモル量以下であるような量で存在する。
【0010】
ポリエチレン性不飽和成分は、複数個のエチレン性不飽和基を有する有機化合物を含んでもよく、または複数個のエチレン性不飽和基を有する表面官能化無機粒子を含んでもよい。フルオロアルキルシリコーンは、末端エチレン性不飽和基、ペンダント(すなわち鎖内エチレン性不飽和基)またはそれらの組み合わせを有してもよい。所望により、硬化性組成物は、官能基を有するモノ(メタ)アクリロイル化合物を更に含んでもよい。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、本発明の硬化コーティングを含むコーティングされた物品を提供する。硬化性組成物は、種々の基材に硬質表面コーティングを調製するために使用されてもよく、耐久性、低表面エネルギー、耐溶媒性並びに水、マーカーおよび汚れ忌避性表面をもたらす。
【0012】
定義
本明細書で使用する時、用語「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイル基/化合物の両方を含む。少なくともいくつかの実施態様においては、アクリレート基が好ましい。本明細書で使用する時、(メタ)アクリル基は、(メタ)アクリレートエステル類、(メタ)アクリルアミド類およびN−アルキル(メタ)アクリルアミド類などの化合物のこれらの部類を含む。
【0013】
「ポリエチレン性不飽和」により複数個のビニルおよび(メタ)アクリロイル基などの複数個のエチレン性不飽和基を有する化合物または構成成分を表す。
【0014】
「ポリ(メタ)アクリロイル」により複数個のアクリレート基などの複数個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物または構成成分を表す。
【0015】
「ハードコート」または「トップコート」により所望により無機添加剤を含むフリーラジカル硬化組成物を表す。
【0016】
「低表面エネルギー」により本明細書に記載の物品の表面層が好ましくは水に対して少なくとも70°の静的または動的な接触角を示すことを表す。更に詳しくは、水との接触角が少なくとも80度、更に好ましくは少なくとも90度(例えば、少なくとも95度、少なくとも100度)である。表面エネルギーが低いということは、耐汚れ性、さらにはその表面をクリーンにするのが容易であることを示唆している。低表面エネルギーの更に別の表示として、市販のマーカーからのインクが好ましくは玉状になる。更に、本明細書に記載の表面層および物品は、「インク忌避性」を示し、インクが市販のティッシュで拭うことにより容易に除去できることを意味する。
【0017】
終点による数字範囲の本明細書における詳細説明では、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)。
【0018】
この明細書および添付の特許請求の範囲に使用される時、単数の形態「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に特に指定しない限り複数形態も含む。従って、例えば「化合物」(“a compound”)を含有する組成物の言及は、2つ以上の化合物の混合物を包含する。更に、用語「or」は、文脈が明確に特に指定しない限り一般に「and/or」の意味に使用される。
【0019】
指示がない限り、当該明細書および特許請求の範囲に使用される構成成分の量、表面エネルギー、接触角等などの性状の測定値を示す全ての数は、全ての場合用語「約」により修飾されているとして理解される。従って、特にそうでない限り、明細書および添付の特許請求の範囲で記載された数字パラメーターは、本発明の教示を使用し当業者により探求される所望の性状により変化させることができる近似値である。少なくともおよび特許請求の範囲に相当する原理の出願を限定する試みとしてではなく、各数字パラメーターは、通常の丸め技術を使用することにより報告された有効数字の数の見地から少なくとも解釈されるべきである。本発明の広範囲で示す数値的範囲およびパラメーターは、近似値であるが、具体例に記載の数値は可能な限り正確に報告する。しかし、全ての数値は、それらのそれぞれの試験測定値で見出される標準偏差から必然的にもたらされる特定の誤差および不確実性を本質的に包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
硬化性組成物の第1構成成分は、2つまたはそれ以上のエチレン性不飽和重合性基を有する有機ポリエチレン性不飽和成分を含んでもよい。ポリエチレン性不飽和成分は、式R(Z’)であり、式中、Rは、原子価pの有機部分であり、pは少なくとも2であり、およびZ’はエチレン性不飽和重合性基で前記フルオロアルキルシリコーンの前記エチレン性不飽和基と反応する。好ましくは、R部分は、ヒドロカルビル基(炭素と水素だけを含有する)であり、最も好ましくは、R部分は、直鎖、分枝状、環状または非環式非ウレタン脂肪族基である。
【0021】
エチレン性不飽和基Z’は、ビニル、アリルおよびブテニル(butentyl)などのアルケニル基;エチニル、プロピニルおよびブチニルなどのアルキニル基、ビニルオキシアルキレン(例えば、CH=CHO−C2m−)、アリルオキシアルキレン、
(例えば、CH=CHCHO−C2m−)、並びに(メタ)アクリロイル基(例えば、CH=CR”CO−C2m−、R”=H、C〜Cアルキル、Fおよびその窒素類似体)(式中、mは1〜12の整数である)を含んでもよい。好ましくは、ポリエチレン性不飽和成分のZ’基は、(メタ)アクリロイル基である。
【0022】
例えば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなどの化合物を含有するジ(メタ)アクリロイル;グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート類(例えば、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリアクリレート類(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの化合物を含有するトリ(メタ)アクリル;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの化合物を含有する高官能性(メタ)アクリル;例えば、ポリエステルアクリレート類、エポキシアクリレート類などのオリゴマー(メタ)アクリル化合物;前記ポリアクリルアミド類似体;およびそれらの組み合わせなどの幅広い(メタ)アクリロイル化合物が、コーティング組成物に使用できる。
【0023】
かかる化合物は、例えば、ペンシルバニア州エクストンのサートマー カンパニー(Sartomer Company,Exton,PA);ジョージア州スミュルナのUCB ケミカルズ コーポレーション(UCB Chemicals Corporation,Smyrna,GA);およびウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル カンパニー(Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WI)等の販売業者から広範囲に入手可能である。追加の有用な(メタ)アクリレート物質としては、例えば米国特許第4,262,072号(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載されたようなヒダントイン部分含有ポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。
好ましい市販の(メタ)アクリロイル化合物としては、商品表記「SR306」として入手可能なトリプロピレングリコールジアクリレート、商品表記「SR351」として入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレート、商品表記「SR444」として入手可能なペンタエリスリトールトリアクリレート、商品表記「SR399LV」として入手可能なジペンタエリスリトールペンタアクリレート、商品表記「SR454」として入手可能なエトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレートおよび商品表記「SR494」として入手可能なエトキシル化(4)ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Company)から入手可能なものが挙げられる。
【0024】
非フッ素化有機ポリエチレン性不飽和成分の5重量部ほどが(100重量部の有機ポリエチレン性不飽和成分およびフルオロアルキルシリコーンを基準として)いくつかの用途で好適な耐久性をもたらす場合があるが、特にこれらの化合物はフッ素化化合物より安価なため典型的に濃度を最大限にすることが好ましい。それ故に、本明細書に記載のコーティング組成物は、典型的に50重量部を超えて非フッ素化有機ポリエチレン性不飽和成分を含む。いくつかの実施では、非フッ素化有機ポリエチレン性不飽和成分は、60重量部を超え、少なくとも70重量部、少なくとも80重量部、少なくとも90重量部および更に99.5重量部のコーティング組成物を含んでもよい。
【0025】
或いは、ポリエチレン性不飽和成分は、表面官能化無機粒子、好ましくは複数個のポリエチレン性不飽和基を有するナノ粒子(100ナノメートル未満の平均粒子サイズを有する)を含んでもよい。これらの粒子およびナノ粒子は、シリカ、酸化亜鉛、チタニア、アルミナ、ジルコニア、バナジア、クロミア、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、その他のコロイド状金属酸化物類およびそれらの混合物の群からのコロイド状物質から調製され、官能化される、そのため(a)粒子は硬化性組成物中に分散されおよび(b)粒子に結合されるエチレン性不飽和基は重合可能である、すなわちこれらの粒子は、実質的にシリカなどの単一酸化物を含むことができまたは1つの種類の酸化物のコア(または物質のコア)を含むことができその上に別の種類の酸化物が付着される。粒子は、5〜約1,000ナノメートル、好ましくは100ナノメートル未満、より好ましくは10〜50ナノメートルの平均粒径を有する平均粒径は、透過型電子顕微鏡を使用して測定することができ、所定の直径の粒子数を数える。好適なコロイダルシリカの追加の例が、米国特許第5,126,394号に記載されており、参照として本明細書に組み込む。
【0026】
前記粒子は、米国特許第6,353,037号、米国特許第6,462,100号(サンホースト(Thunhorst)ら)および米国特許第6,329,058号(アーニー(Arney)ら)に記載されており、参照として本明細書に組み込む。他の有用な表面修飾粒子が、米国特許出願第2002/0128336号(バラン(Baran)ら)に記載されており、参照として本明細書に組み込む。
【0027】
好ましくは、粒子は、(メタ)アクリロイル官能化無機粒子であり、すなわち複数個の(メタ)アクリロイル基で官能化される。典型的にシリカ粒子は、シリルアクリレートを水性コロイダルシリカに添加することにより官能化される。アクリレート官能化コロイダルシリカの例が、米国特許第4,491,508号および米国特許第4,455,205号(オルセン(Olsen)ら)、米国特許第4,478,876号および米国特許第4,486,504号(チャング(Chung))、並びに米国特許第5,258,225号(カットサンベリス(Katsamberis))に記載されており、それらのすべてを参照として本明細書に組み込む。
【0028】
ポリエチレン性不飽和無機粒子は、有機ポリエチレン性不飽和成分の全てまたは一部を代替してもよい、すなわち硬化性組成物は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基、ポリエチレン性不飽和官能化粒子成分およびフリーラジカル開始剤有するフルオロアルキルシリコーンを含んでもよい。一般に、有機化合物、表面官能化無機粒子成分またはそれらの組み合わせのいずれであれエチレン性不飽和成分の全量は、50重量部を超える、すなわち51〜99.5重量部である。
【0029】
組成物は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するフルオロアルキルシリコーンを更に含み、それと少なくとも2つのSi−H基を有するヒドロシリコーンとのヒドロシリル化反応生成物を含んでもよい。一般にヒドロシリコーンは、Si−H基のモル比が、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する前記フルオロアルキルシリコーンのエチレン性不飽和基とポリエチレン性不飽和成分のエチレン性不飽和基とのモル量未満であるような量で存在する。
【0030】
本明細書に記載のコーティング組成物は、少なくとも1つのフルオロアルキルシリコーン化合物も含む。硬化されコーティングを形成するコーティング組成物内のフルオロアルキルシリコーン化合物および少なくとも2つのSi−H基を有するヒドロシリコーンの合計量は、典型的に少なくとも0.5重量部である。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、ポリエチレン性不飽和成分とフルオロアルキルシリコーン化合物と少なくとも2つのSi−H基を有するシリコーンとを加えた100重量部を基準として49重量部ほども含有してもよい。しかし、所望の低表面エネルギーをもたらす最小限の濃度のフルオロアルキルシリコーン化合物を使用することが一般によりコスト効果が高い。それ故に、組成物にあてがわれるフルオロアルキルシリコーン化合物の全量は、典型的に20重量部を超えない。
【0031】
フルオロアルキルシリコーン化合物は、下記式:
【0032】
【化1】

【0033】
(式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基であって、脂肪族および芳香族基を含み、
は、Rまたはエチレン性不飽和基Zであり、
はフルオロアルキル基であり、
aは、0〜2000であり、
bは、1〜2000であり、
a+bは、少なくとも10、好ましくは少なくとも50であり、
前記R基の少なくとも2つは、エチレン性不飽和基Zである)により表される任意の化合物である。
【0034】
式Iに関して、フルオロアルキルシリコーンは、式:
【0035】
【化2】

【0036】
(式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基であって、脂肪族および芳香族基を含み、
Zは、エチレン性不飽和基であり、
は、フルオロアルキル基であり、
aは、0〜2000であり、
bは、1〜2000であり、および
a+bは、少なくとも10、好ましくは少なくとも50である)で表わされる少なくとも2つの末端エチレン性不飽和基を有する化合物を含んでもよい。
【0037】
フルオロアルキルシリコーンは、式:
【0038】
【化3】

【0039】
(式中、Zは、エチレン性不飽和基であり、
は、一価のヒドロカルビル有機基であって、脂肪族および芳香族基を含み、
は、Rまたはエチレン性不飽和基Zであり、
は、フルオロアルキル基であり、
aは、0〜2000であり、
bは、1〜2000であり、
cは、2〜2000であり、および
a+b+cは、少なくとも10、好ましくは少なくとも50である)で表わされる、少なくとも2つのペンダントエチレン性不飽和基を有する化合物を含んでもよい。
【0040】
式I、IIおよびIIIに関して、示したポリマーがランダムまたはブロックコポリマーであってもよいことが理解されるであろう。整数a、bおよびcで表わされるシリコーン単位の数は、一般に少なくとも10、好ましくは少なくとも50である。フルオロアルキルシリコーンのいずれかが更に任意のRSiO1/2単位、SiO4/2単位、RSiO3/2単位およびRSiO2/2単位またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0041】
フルオロアルキルシリコーン化合物のフルオロアルキル基Rは、式C2n+1(CHO)2m−、C2n+1CHXCF(C2mO)2p−またはC2n+1OCHXCF(C2mO)2p−であってもよく、式中、XはHまたはFであり、nは1〜12の整数であり、mは1〜12の整数であり、dは0または1でありおよびpは2〜12の整数である。nは、3〜6の整数であることが好ましい。フルオロアルキル基の大きさおよびフルオロアルキル基の数は、硬化コーティングが少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%のフッ素を有するように選択される。
【0042】
フルオロアルキル基の代表的な例は、CFCHCH−、CFCFCFCFCHCH−、(CFNCFCFCHCH−、CFCHOCHCH−、CFCFCHOCHCH−、CFCFHCFCHOCHCH−、CFCFHCFOCHCH−およびCFCFCFCFCHCFCHCH−である。
【0043】
特定のパーフルオロオクチル含有化合物(C17−)が生物中に生体内蓄積する傾向がありうることが報告されている。この傾向は、いくつかのフルオロケミカル組成物に関する潜在的な懸念として述べられてきた。例えば、米国特許第5,688,884号(ベーカー(Baker)ら)を参照すること。結果として、より効果的に生体系から排除されつつ、所望の機能特性、例えば、撥水性および撥油性、界面活性剤特性などを提供する際に有効なフッ素含有組成物が必要とされている。
【0044】
本組成物は、追加の利益をもたらす。先ず、より短い(すなわちC〜C)フルオロアルキル基を含有するコーティング組成物は、それらの有効性を同じ重量基準で有効な低表面エネルギーコーティングとして維持する一方より高い収率のため重量当たりより低いコストで製造できる。例えば、フッ素化ヘプタフルオロブチリル前駆体は、電気化学フッ素化プロセス(バンクス(R.E.Banks)編「有機フッ素化合物の調製、特性および工業用途(Preparation,Properties,and Industrial Applications of Organofluorine Compounds)」、エリス・ホーウッド(Ellis Horwood Ltd.)(1982)、p26)のフッ素化パーフルオロオクタノイル前駆体(31%)と比べて60%の収率で調製することができる。更に、短鎖カルボン酸(推定中間分解生成物)は、より長鎖の同族体より低い毒性および低い生体内蓄積性である。
【0045】
で表わされる一価の有機基は、C1〜C20炭素原子或いはC1〜C10炭素原子を有してもよい。一価の有機基の例としては、一価の炭化水素基が挙げられるがこれらに限定されない。一価の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシルなどのアルキル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル並びにフェニル、トリルおよびナフチル(napthyl)などの芳香族基(アリール)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0046】
エチレン性不飽和基Zとしては、ビニル、アリルおよびブテニル(butentyl)などのアルケニル基、エチニル、プロピニルおよびブチニルなどのアルキニル基、ビニルオキシアルキレン(例えば、CH=CHO−C2m−)、アリルオキシアルキレン(例えば、CH=CHCHO−C2m−)および(メタ)アクリロイル基が挙げられてもよく、式中mは1〜12のの整数である。フルオロアルキルシリコーンのZ基は、ビニル基であることが好ましい。
【0047】
フルオロアルキルシリコーンは、ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン);ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル−6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシルシロキサン);ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル−ビニルシロキサン/メチル−6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシルシロキサン);ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン);ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(メチル−6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシルシロキサン);ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル−ビニルシロキサン/メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン);トリメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル−ビニルシロキサン/メチル−6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシルシロキサン);トリメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン/メチルビニルシロキサン);トリメチルビニルシロキシ末端ポリ(メチルビニルシロキサン/メチル−6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシルシロキサン);トリメチルシロキシ末端ポリ(メチルビニルシロキサン/メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン);またはこれらの組み合わせにより例示される。
【0048】
フルオロアルキルシリコーン類は、当業者に周知であり、いくつかの経路によって調製できる。1つの方法では、フルオロアルキルビニル化合物をジクロロアルキルシランでヒドロシリル化し、水で処理してオリゴマー類、低分子量ポリマー、環状(cylic)トリマーまたはテトラマーを形成し、その後環状トリマーまたはテトラマーを重合し(所望によりジアルキルシロキサンの環状トリマーまたはテトラマーで)以下に示すような選択された末端基を有する高分子量フルオロアルキルシリコーンを形成できる。
【0049】
CH=CH→RCHCHSiMeCl
CHCHSiMeO2/2の環状トリマーまたはテトラマー
→−(SiMe(C)−O)−、
またはMeSiO2/2の環状トリマーまたはテトラマーを有するコポリマー
→−(SiMe(C)−O)−(SiMe−O)
別の主要な経路は、他のRSiMe(OMe)を有するまたは有しないRCHCHSiMe(OMe)からの加水分解であり、その後ポリマーに脱水する。
【0050】
フルオロアルキルシリコーン類および中間体類を調製するその他の方法が、米国特許第2,915,544号(ホルブルック(Holbrook)ら)、P.タラント(Tarrant)ら、J.Am.Chem.Soc.79巻、6536〜6540頁、1957年、A.M.ゲイヤー(Geyer)ら、J.Chem.Soc.、4472〜9頁、1957年、Y.K.キム(Kim)ら、J.Org.Chem.、38巻、1615〜6頁、1973年およびE.ベイオウ(Beyou)ら、Tet.Letters、36(11)巻、1843〜4、1995年などの多くの文献に記載されている。
【0051】
更に、フルオロアルキルシリコーンは、アルケニル含有エンドブロキング試薬を用いたダウト(Daudt)らのシリカ水性ゾルキャッピング法により製造することができる。ダウト(Daudt)らの方法が、米国特許第2,676,182号に開示されている。簡潔に述べるとダウト(Daudt)らの方法は、酸性条件下でシリカ水性ゾルとトリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサンまたはそれらの混合物とを反応させる工程とそれらから得られるユニットを有するコポリマーを回収する工程を包含する。生成したコポリマーは、一般に2〜5重量%のヒドロキシル基を含有する。
【0052】
典型的に2重量%未満のケイ素結合ヒドロキシル基を含有するフルオロアルキルシリコーンは、ダウト(Daudt)らの生成物と不飽和有機基含有末端ブロッキング剤および脂肪族不飽和の存在しない末端ブロッキング剤とを最終製品中に3〜30モル・パーセントの不飽和有機基をもたらすのに十分な量で反応させることにより調製できる。末端ブロッキング剤の例としては、シラザン類、シロキサン類およびシラン類が挙げられるがこれらに限定されない。好適な末端ブロッキング剤は、当該技術分野において既知であり、米国特許第4,584,355号、米国特許第4,591,622号および米国特許第4,585,836号に例示されている。単一末端ブロッキング剤または前記剤の混合物は、樹脂を調製するために使用できる。
【0053】
複数個のビニル基を有する市販のシリコーン類としては、ダウ・コーニング社(Dow Corning Corp.)から商品表記「SYL−OFF Q2−7785」として市販のビニル末端フルオロシリコーンが挙げられる。
【0054】
フルオロアルキルシリコーンは、単一流体または以下の性状、すなわち構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位および順序の少なくとも1つが異なる2つまたはそれ以上のフルオロアルキルシリコーン流体を含む組み合わせであることができる。
【0055】
組成物は、Si−H基のモル比が、前記フルオロアルキルシリコーンのエチレン性不飽和基とポリエチレン性不飽和成分のエチレン性不飽和基とのモル量未満であるような量で少なくとも2つのSi−H基(ヒドロシリコーン)を有するヒドロシリコーンを更に含む。ある実施形態ではヒドロシリコーンは、Si−H基のモル比が、前記フルオロアルキルシリコーンのエチレン性不飽和基のモル量以下であるような量で存在する。ある実施形態では組成物は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するフルオロアルキルシリコーンと少なくとも2つのSi−H基を有するヒドロシリコーンのヒドロシリル化反応生成物とを含む。Si−H基は、末端、ペンダントまたはそれらの組み合わせであってもよい。
【0056】
複数個のSi−H基を有するヒドロシリコーンは、一般式:
【0057】
【化4】

【0058】
であり、式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基でであって、脂肪族および芳香族基を含み、
は、HまたはRであり、
は、RまたはRであり、ここでRは、フルオロアルキル基であり、
dは、0〜2000であり、
eは、1〜2000であり、
fは、0〜2000であり、
およびd+e+fは、少なくとも10で、好ましくは少なくとも20であり、R基の少なくとも2つがHであることを拒まない。
【0059】
1つの実施形態ではヒドロシリコーンは、式:
【0060】
【化5】

【0061】
におけるような複数個の末端Si−H基を有し、式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基であって、脂肪族および芳香族基を含み、
は、HまたはRであり、
は、RまたはRであり、ここでRは、フルオロアルキル基であり、
dは、0〜2000であり、
eは、0〜2000であり、
fは、0〜2000でありおよびd+e+fは少なくとも10で、好ましくは少なくとも20である。
【0062】
他の実施形態では、ヒドロシリコーンは、式:
【0063】
【化6】

【0064】
のような複数個のペンダントSi−H基を有し、式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基であって、脂肪族および芳香族基を含み、
は、RまたはRであり、ここでRはフルオロアルキル基であり、
dは、0〜2000であり、
eは、2〜2000であり、
fは、0〜2000でありおよびd+e+fは少なくとも10で、好ましくは少なくとも20である。
【0065】
他の実施形態では、ヒドロシリコーンは、式:
【0066】
【化7】

【0067】
のような複数個のペンダントフルオロアルキル基Rを有し、
式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基であって、脂肪族および芳香族基を含み、
は、HまたはRであり、
は、RまたはRであり、ここでRはフルオロアルキル基であり、
dは、0〜2000であり、
eは、2〜2000であり、
fは、1〜2000でありおよびd+e+fは少なくとも10で、好ましくは少なくとも20であり、少なくとも2つのR基はHである。
【0068】
非フッ素化ヒドロシリコーン化合物(少なくとも2つのSi−H基を有する)は、既知であり、H−SiMe−(O−SiMe)n−OSiMe−H(CAS#70900−21−9);MeSi−O−(SiHMe−O)n−(SiMe−O)m−SiMe(CAS#68037−59−2);H−SiMe−O−(SiHMe−O)n−(SiMe−O)m−SiMe−H(CAS#69013−23−6);MeSi−O−(SiHMe−O)n−SiMe(CAS#63148−57−2);EtSi−O−(SiHEt−O)n−SiEt(CAS#24979−95−1);H−SiMe−O−(SiPh(OSiHMe−O)n−SiMe−H;H−SiMe−O−(SiHMe−O)n−(SiMePh−O)m−SiMe−H(CAS#115487−49−5);および−(SiHMe−O)n−(SiMeC17−O)m−(CAS#68554−69−8)により例示される。
【0069】
フッ素化ヒドロシリコーン化合物(少なくとも2つのSi−H基を有する)は、既知であり、H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−SiMe−H、H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−SiMe−H;H−SiEt−O−(SiEtH−O)n−(SiMeCCF−O)m−SiEt−H;H−SiEt−O−(SiEtH−O)n−(SiMeC−O)m−SiEt−H;H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−SiMe−O)o−SiMe−H;H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−SiMe−O)o−SiMe−H;H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−(SiMePh−O)o−SiMe−H;H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−(SiMePh−O)o−SiMe−H;MeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−SiMe;MeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−SiMe;MeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−SiMe−O)o−SiMe;MeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−SiMe−O)o−SiMe;MeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−(SiMePh−O)o−SiMe;およびMeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−(SiMePh−O)o−SiMeにより例示される。
【0070】
複数個の水素化物基を有する市販のヒドロシリコーン類としては、ダウ・コーニング社(Dow Corning Corp.)から商品表記「SYL−OFF Q2−7560」として市販されている水素化物末端フルオロシリコーンが挙げられる。
【0071】
ある実施形態ではコーティング組成物は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するフルオロアルキルシリコーンと少なくとも2つのSi−H基を有するヒドロシリコーンのヒドロシリル化反応生成物を含む。Si−H基は、末端、ペンダントまたはそれらの組み合わせであってもよい。すなわち、式IV、V、VIおよびVIIのR(H)の少なくとも1つが、ヒドロシリル化反応により式I、IIまたはIIIのエチレン性不飽和基でヒドロシリル化される。
【0072】
硬化性組成物は、所望により官能基を有するモノ(メタ)アクリロイル化合物を更に含んでもよい。前記官能化合物は、一般式:
【0073】
【化8】

【0074】
を有し、式中Rは、水素、C〜Cアルキル基またはフェニル基、好ましくは水素またはメチル基であり;Rは、(メタ)アクリロイル基を官能基Yに結合し、好ましくは34まで、好ましくは18まで、より好ましくは10までの炭素、所望により酸素および窒素原始を含有する二価結合基である。Rは、好ましくは−O−R10−および−NH−R10−から選択され、R10は、C1〜C6炭素原子を有するアルキレン基、C5〜C10炭素原子を有する5または6員環シクロアルキレン基、またはアルキレン−オキシアルキレンであり、各アルキレンはC1〜C6炭素原子またはC6〜C16炭素原子を有するニ価の芳香族基であり、並びにYは、硬化性組成物の基材に対する結合または接着を改善する官能基である。好ましくはYは、ヒドロキシル、アミノ(二級および三級アミノを含む)、カルボキシル、イソシアナト、アジリジニル、エポキシ、ハロゲンアシル、アズラクトン、オキサゾリニル(oxazolinyl)、アセトアセチル、加水分解性シラン類(トリアルコキシシラン類などの)および環状無水物基から成る部類から選択される。前記化合物は、一般に100重量部のモノ(メタ)アクリロイル化合物、ポリエチレン性不飽和成分およびフルオロアルキルシリコーン成分を基準として10重量部の量で使用される。
【0075】
複数個のビニル基を有するフルオロアルキルシリコーンと複数個のSi−H基を有するヒドロシリコーンは、ヒドロシリル化により反応させる。それ故に、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(光ヒドロシリル化触媒を含む)が硬化性組成物に含まれる。有用なヒドロシリル化触媒としては、熱触媒類(例えば、白金触媒類)が挙げられ、ケイ素結合水素基とケイ素結合エチレン性不飽和基間のヒドロシリル化反応を促進するのに有効である。熱ヒドロシリル化触媒類に関する更なる詳細は、例えば米国特許第2,823,218号(スパイヤー(Speier)ら)、米国特許第2,970,150号(バイレイ(Bailey))、米国特許第3,159,601号および米国特許第3,159,662号(アッシュバイ(Ashby))、米国特許第3,220,972号(ラマレアクス(Lamoreaux))、米国特許第3,516,946号(モディック(Modic))、米国特許第3,814,730号(カーステッド(Karstedt9)、米国特許第4,029,629号(ジェラム(Jeram))、米国特許第4,533,575号および米国特許第4,504,645号(メランコン(Melancon))、並びに米国特許第5,741,552号(タカヤマ(Takayama)ら)に見出すことができ、その開示を参照として本明細書に組み込む。
【0076】
光活性化ヒドロシリル化触媒類(すなわち、光ヒドロシリル化触媒類)も使用されてよい。光ヒドロシリル化触媒類およびそれらの使用法(例えば、光硬化条件)の例は、例えば米国特許第4,510,094号および米国特許第4,530,879号(ドラナク(Drahnak))、米国特許第5,145、886号(オクスマン(Oxmanら)、米国特許第6,376,569号(ボードマン(Boardman)ら)並びに米国特許第6,451,869号(ブッツ(Butts)ら)に見出すことができ、その開示を参照として本明細書に組み込む。ヒドロシリル化触媒類、光触媒類および/または硬化方法の組み合わせも使用されてよい。PtCpMeなどの光活性化ヒドロシリル化は、紫外線に暴露されるまでヒドロシリル化反応を開始しない。そのため、硬化性組成物は、貯蔵安定性を有する。
【0077】
触媒は、典型的にヒドロシリル化反応を促進するのに有効な量で存在する。より典型的には触媒は、ビニル基を有するシリコーン百万部当たり1部以下の触媒を供給するのに十分な量で存在する。一方、ビニル基を有するシリコーン1,000部当たり1〜10部以上の触媒を供給するのに十分な触媒量が使用されてもよい。
【0078】
少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するフルオロアルキルシリコーンと少なくとも2つのSi−H基を有するヒドロシリコーンの反応生成物は、組み合わされ、フリーラジカル触媒、好ましくはUV触媒を使用して硬化される。架橋の主手段は、ポリエチレン性不飽和成分のエチレン性不飽和基とフルオロアルキルシリコーンの未反応エチレン性不飽和基の間にある。
【0079】
或いは、フルオロアルキルシリコーン、少なくとも2つのSi−H基を有するヒドロシリコーンおよびポリエチレン性不飽和成分は、ヒドロシリル化触媒と組み合わされ、ヒドロシリル化をもたらし、その後フリーラジカル触媒を添加し、続いて硬化させてもよい。ヒドロシリル化は、ヒドロシリコーンとフルオロアルキルシリコーンとの間およびヒドロシリコーンとポリエチレン性不飽和成分との間で発生することになる。しかし、使用したポリエチレン性不飽和成分の量によりポリエチレン性不飽和成分の遊離エチレン性不飽和基は、その後のフリーラジカル架橋のため残留する。
【0080】
硬化を促進するため、本発明による重合性組成物は少なくとも一種のフリーラジカル熱開始剤および/または光開始剤を更に含んでよい。典型的に、前記反応開始剤および/または光開始剤が存在する場合、100重量部のポリエチレン性不飽和成分、ヒドロシリコーンおよびフルオロアルキルシリコーンを基準として、それは約5重量部未満、より典型的には約2重量部未満を含む。フリーラジカル硬化技術は当該分野で周知であり、そして例えば熱による硬化法並びに電子ビームまたは紫外放射線等の放射線による硬化法が挙げられる。フリーラジカル熱および光重合技術に関する更なる詳細は、例えば米国特許第4,654,233号(グラント(Grant)ら)、米国特許第4,855,184号(クルン(Klun)ら)および米国特許第6,224,949号(ライト(Wright)ら)に見出すことができる。有用なフリーラジカル熱反応開始剤としては、例えばアゾ、過酸化物、過硫酸塩、酸化還元反応開始剤類およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0081】
有用なフリーラジカル熱反応開始剤としては、例えばアゾ、過酸化物、過硫酸塩、酸化還元反応開始剤類およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0082】
有用なフリーラジカル光開始剤としては、例えばアクリレートポリマーのUV硬化に有用であるものとして既知のものが挙げられる。かかる開始剤としてはベンゾフェノンおよびその誘導体;ベンゾイン、アルファ−メチルベンゾイン、アルファ−フェニルベンゾイン、アルファ−アリルベンゾイン、アルファ−ベンジルベンゾイン;ベンジルジメチルケタール(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,New York)のチバ スペシャルティ ケミカルズ コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商標名「イルガキュア(IRGACURE)651」で市販品として入手可能)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(チバ スペシャルティ ケミカルズ コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商標名「ダロカー(DAROCUR)1173」で市販品として入手可能)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ スペシャルティ ケミカルズ コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商標名「イルガキュア(IRGACURE)184」で市販品として入手可能)等のアセトフェノンおよびその誘導体;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(チバ スペシャルティ ケミカルズ コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商標名「イルガキュア(IRGACURE)907」で市販品として入手可能);2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(チバ スペシャルティ ケミカルズ コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商標名「イルガキュア(IRGACURE)369」で市販品として入手可能);ベンゾフェノンおよびその誘導体並びにアントラキノンおよびその誘導体等の芳香族ケトン;ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩等のオニウム塩;例えばチバ スペシャルティ ケミカルズ コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商標名「CGI 784 DC」で市販品として入手可能であるもの等のチタン錯体;ハロメチルニトロベンゼン;並びにチバ スペシャルティ ケミカルズ コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商標名「イルガキュア(IRGACURE)1700」、「イルガキュア(IRGACURE)1800」、「イルガキュア(IRGACURE)1850」、「イルガキュア(IRGACURE)819」「イルガキュア(IRGACURE)2005」、「イルガキュア(IRGACURE)2010」、「イルガキュア(IRGACURE)2020」および「ダロカー(DAROCUR)4265」で市販品として入手可能であるもの等のモノ−およびビス−アシルホスフィンが挙げられる。二種以上の光開始剤の組み合わせが使用されてもよい。更にミシシッピー州パスカグーラのファースト ケミカル コーポレーション(First Chemical Corporation,Pascagoula,MS)から市販品として入手可能な2−イソプロピルチオキサントン等の増感剤を「イルガキュア(IRGACURE)369」等の光開始剤と組み合わせて使用してもよい。
【0083】
所望であれば、硬化性組成物は、有機溶媒を更に含んでもよい。フリーラジカル架橋反応に使用される有機溶媒は、反応物質および生産物に対して不活性であり、別の方法で反応に悪影響を及ぼさない任意の有機液体であることができる。好適な溶媒類としては、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルコール類、エチルアセテートなどのエステル類、トルエンなどの芳香族溶媒類、ヘプタン、塩素系溶剤類、エーテル類などの脂肪族炭化水素溶媒類並びにアセトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン類が挙げられる。他の溶媒系も使用できる。溶媒の量は、一般に反応物質と溶媒の全重量の約20〜90重量%であることができる。尚、溶液重合に加え、架橋は、懸濁、乳化およびバルク重合技術などの他の周知の技術により成し遂げることができる。
【0084】
表面修飾エチレン性不飽和無機粒子に加え、様々な非官能無機酸化物粒子が、コーティングに使用できる。その粒子は、典型的には、その形状が実質的に球状であり、そのサイズが比較的均一である。その粒子は、実質的に単分散の粒径分布を有していてもよいし、或いは、実質的に単分散分布のものを2種以上ブレンドすることにより得られる多分散の分布を有していてもよい。その無機酸化物粒子は、典型的には非凝集(実質的に分散)であるが、それは、凝集が起きると、無機酸化物粒子が沈降したり、ハードコートのゲル化が起きたりする可能性があるからである。
【0085】
無機酸化物粒子は、典型的に約0.001〜約0.2マイクロメートル、約0.05マイクロメートル未満および約0.03マイクロメートル未満の平均粒径を有するコロイドである。これらの範囲のサイズであると、バインダ樹脂の中に無機酸化物粒子を分散させるのが容易となり、所望の表面特性と光学的透明度を有するセラマーが得られる。無機酸化物粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて、所定の直径の無機酸化物粒子の数を数えることによって測定することができる。
【0086】
無機酸化物粒子としては、コロイド状シリカ、コロイド状チタニア、コロイド状アルミナ、コロイド状ジルコニア、コロイド状バナジア、コロイド状クロミア、コロイド状酸化鉄、コロイド状酸化アンチモン、コロイド状酸化スズ、およびそれらの混合物などが挙げられる。無機酸化物粒子は、例えばシリカのような単一の酸化物からなるか、実質的になっていてもよいし、或いは酸化物の組み合わせ、例えばシリカと酸化アルミニウムを含んでいてもよいし、或いは、1つのタイプの酸化物のコア(または金属酸化物以外の材料のコア)と、その上に他のタイプの酸化物を析出させたものであってもよい。シリカが、一般的な無機粒子である。
【0087】
無機酸化物粒子は、液状媒体の中に無機酸化物粒子のコロイド状分散物を含むゾルの形態で供給されることも多い。例えば、米国特許第5,648,407号(ゴエッツ(Goetz)ら)、米国特許第5,677,050号(ビルカディ(Bilkadi)ら)および米国特許第6,299,799号(クレイグ(Craig)ら)に記載されているように、ゾルは、種々の技術を使用し、水性ゾル(水が液体媒体として作用する)、有機ゾル(有機液体がそのように作用する)および混合ゾル(液体媒体が水と有機液体の両方を含有する)を含む各種形態に調製でき、その開示を参照として本明細書に組み込む。(例えば、非晶質シリカの)水性ゾルを使用することも可能である。ゾルには一般に、ゾルの全重量を基準にして、少なくとも2重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも25重量%、多くの場合少なくとも35重量%のコロイド状無機酸化物粒子を含む。コロイド状無機酸化物粒子の量は、硬化性組成物の重量を基準として典型的に50重量%(乾燥重量)以下である。
【0088】
本明細書に記載の組成物は、常にではないが、典型的に親水性成分が存在しない、というのは前記の包含は、抗汚れ性を減少させ並びに特定の媒体を汚す傾向がある。親水性成分は更に、水系のクリーニング剤に暴露すると分解を受けやすい。
【0089】
当業者には、コーティング組成物が、バインダ類、界面活性剤類、静電気防止剤類(例えば、導電性ポリマー類)、平坦化剤類、光増感剤類、紫外線(「UV」)吸収剤類、安定剤類、酸化防止剤類、潤滑剤類、顔料類、染料類、可塑剤類、分散剤類およびその類などのその他の選択が自由な補助剤を包含できることが分かる。コーティング組成物に添加されてもよいその他の構成成分としては、米国特許第6,730,388号に記載されたものが挙げられ、その全てを参照として本明細書に組み込む。
【0090】
本発明は、硬化コーティング組成物を包含する保護表面層を有する基材を含む物品を特徴とする。コーティングは、容易な洗浄性並びにインク、靴墨、食物汚れおよびその類などの一般的な汚れに対して保護を有する物品をもたらす。
【0091】
種々の基材が、本発明のコーティング物品に利用できる。好適な基材材料としては、ビニル、木材、セラミックス、ガラス、れんが、コンクリート、天然石、人造石、しっくい、金属シート類およびフォイル類、木、塗料、プラスチック類などの硬質基材並びにポリエステル類、ポリアミド類(ナイロン)、ポリオレフィン類、ポリカーボネート類、ポリ塩化ビニルおよびその類などの熱可塑性樹脂のフィルムが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート(PET)、ビスフェノールAポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)および2軸配向ポリプロピレンなどのポリマー材料は、一般的に各種光学装置に使用される。ある実施形態では、組成物は、光学表示装置用途に使用されてもよい。
【0092】
典型的に、基材は部分的に、意図された使用に望ましい光学特性および機械特性に基づいて選択される。かかる機械特性としては典型的に、屈曲性、寸法安定性および衝撃耐性が挙げられる。基材の厚さも典型的に、意図された用途次第である。ほとんどの用途に対して、約0.5mm未満の基材の厚さが好ましく、約0.02〜約0.2mmがより好ましい。自己支持高分子フィルムが好ましい。押出および押出フィルムの任意の一軸または二軸配向によるなどの従来のフィルム製造技術を使用して、ポリマー材料をフィルムへと形成することができる。基材とハードコート層との間での接着を改善するために、例えば化学処置、コロナ処置、例えば空気または窒素コロナ、プラスマ、火炎または化学放射線によって基材を処理することができる。所望であれば、中間層接着を増加させるため、任意の結合層またはプライマーを基材および/またはハードコート層に適用することができる。
【0093】
種々の光透過性光学フィルムが既知であり、多層光学フィルム、再帰反射性シーティングおよび輝度増強フィルムなどのミクロ構造化フィルム、(例えば、反射または吸収)偏光フィルム、拡散フィルム並びに米国特許出願第2004/0184150号に記載されているような(例えば、二軸)位相差板フィルムおよび補償器フィルムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0094】
米国特許出願第2003/0217806号に記載されているように多層光学フィルムは、異なる屈折率のミクロ層の配列により少なくとも部分的に所望の透過および/または反射特性をもたらす。ミクロ層は、異なる屈折率特性を有する、そのため一部の光は、隣接したミクロ層間の境界面で反射される。フィルム体に所望の反射または透過特性を付与するために、複数の境界面で反射する光が、強め合うまたは弱め合う干渉を受けるように、ミクロ層は十分に薄い。光を紫外線、可視または近赤外線波長で反射するように設計された光学フィルムに関しては、各ミクロ層は、一般に約1μm未満の光学厚さ(すなわち屈折率を乗じた物理的な厚さ)を有する。しかし、フィルムの外側表面での表面薄層またはミクロ層の包みを分離するフィルム内に配置される保護境界層などのより厚い層も含むことができる。またラミネート中で多層光学フィルムの2枚以上のシートに結合するように、多層光学フィルム体に1つ以上の厚い接着剤層を含めることもできる。
【0095】
好適な多層光学フィルムおよび関連する構造体の更なる詳細は、米国特許第5,882,774号(ジョンザ(Jonza9)ら)およびPCT国際公開特許WO95/17303(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)並びにWO99/39224(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)に見出すことができる。ポリマー多層光学フィルムおよびフィルム体には、それらの光学的特性、機械的特性、および/または、化学的特性に関して選択した追加的な層およびコーティングを含めることができる。米国特許第6,368,699号(ギルバート((Gilbert)ら)を参照のこと。またポリマーフィルムおよびフィルム体には、無機層、例えば金属または金属酸化物コーティングまたは層を含めることもできる。
【0096】
用語「光学表示装置」または「ディスプレイパネル」は、任意の従来の光学表示装置を指すことができ、液晶ディスプレイ(「LCDs」)、プラズマディスプレイ、前後投写型ディスプレイ、ブラウン管(「CRTs」)およびビジュアルサイン伝達などの多重特性多回線ディスプレイ並びに発光ダイオード(「LEDs」)、信号灯およびスイッチなどの単一特性または2進表示装置が挙げられるがこれらに限定されない。前記ディスプレイパネルの暴露表面は、「レンズ」と呼ばれてもよい。本発明は、特にインクペン、マーカーおよびその他のマーキング道具、ワイピング・クロス、紙用品並びにその類により触れられまたは接触されやすい表示表面を有する表示装置に有用である。
【0097】
本発明の保護コーティングは、様々な携帯型および非携帯型情報ディスプレイ物品において使用可能である。これらの物品としては、PDAs、携帯電話(PDA/携帯電話を含む)、LCDテレビジョン(直接照明および端部照明)、接触感応スクリーン、腕時計、自動車用位置情報システム、全地球測位システム、深さ計、計算器、電子ブック、CDおよびDVDプレーヤー、投写型テレビジョンスクリーン、コンピュータモニター、ノートパソコン表示装置、計器ゲージ、計器パネルカバー、図形表示などのビジュアルサイン伝達並びにその類が挙げられる。表示面はいずれかの従来の大きさおよび形状を有し得、そして平面または非平面であり得るが、フラットパネルディスプレイが好ましい。コーティング組成物またはコーティングフィルムは、例えば、カメラのレンズ、眼鏡のレンズ、双眼鏡のレンズ、鏡、再帰反射性シーティング、自動車の窓、建物の窓、電車の窓、汽船の窓、飛行機の窓、車両のヘッドランプおよび尾灯、ショーケース、道路舗装マーカー(例えば隆起した)および舗道マーキングテープ、オーバーヘッドプロジェクター、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、時計カバー並びに光および光磁気記録ディスクおよびその類などの様々な他の物品にも使用することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では保護コーティングが、表示装置表面に配置される。他の実施形態では保護コーティングが、基材上にコーティングされ、保護被膜として使用される。保護コーティングおよび保護被膜の基材は、好ましくは2%未満の初期かすみおよび/または少なくとも90%の初期透過を示す。
【0099】
いくつかの実施形態では高屈折率コーティングが、本発明の硬化性組成物を使用して基材にもたらされてもよい。高屈折率コーティングは、多くの光学用途に特に望ましい。少なくとも1.6の屈折率を有し発明の硬化性組成物を含むコーティングおよびポリエチレン性不飽和成分としての表面修飾ジルコニアナノ粒子が提供される。
【0100】
ジルコニアナノ粒子は、典型的に5〜150ナノメートル、5〜75ナノメートル、5〜25ナノメートルまたは5〜15ナノメートルの粒径を示すことになる。ポリエチレン性不飽和成分の全てまたは一部が、表面修飾ジルコニアナノ粒子であってもよい。本発明の組成物に使用されるジルコニアが、ナルコケミカル社(Nalco Chemical Co.)(イリノイ州ネイパービル(Naperville))から製品表記NALCO OOSS008として、バーラー(Buhler)(スイス、ウズウェイル(Uzweil))から製品表記WOもしくはWOSとして市販されており、または出願人の同時係属出願U.S.S.N.11/027426(2004年12月30日申請)に記載されたように調製されてもよく、参照として本明細書に組み込む。
【0101】
基材は、例えば、化学処理等により基材表面に反応性基を組み込むことにより基材とコーティング層間の接着を改善するため処理されてもよい。所望であれば、光学結合層もしくはプライマーが基材および/またはハードコート層に適用され層間接着を増加させることができる。或いは、組成物は、官能基を有するモノ(メタ)アクリロイル化合物を更に含んでもよい、ここで、官能基は、特定の基材に対する接着を改善するために選択される。例えば、トリアルコキシラン基などのシリル官能基は、ガラス基材に対する接着を改善できる。
【0102】
コーティング組成物は、種々の従来のコーティング方法を使用し基材に適用できる。好適なコーティングとしては、例えば、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、ダイコーティング法、ワイヤコーティング法、フラッドコーティング法、パディング法、スプレー法、ロールコーティング法、ディッピング法、ブラシ法、泡塗布法などが挙げられる。コーティングは、典型的には強制空気炉を用いて乾燥させる。乾燥させたコーティングを、エネルギー源を用いて、少なくとも部分的に、典型的には全面的に硬化させる。
【0103】
好ましいエネルギー源としては、1平方センチメートル当たり約5〜60ミリジュール(mJ/cm)のUV「C」をもたらす紫外線硬化装置が挙げられる。好ましくは、硬化は少ない酸素量、例えば約100ppm未満を含む環境内で行われる。窒素ガスは、好ましい環境である。
【0104】
好ましくは、塗料組成物は、少なくとも約10ナノメートル、好ましくは少なくとも約25ナノメートルの厚さを有する硬化した層を提供するのに十分な量で被着される。典型的に硬化層は、約1270マイクロメートル(50ミル)未満、好ましくは約254マイクロメートル(10ミル)未満およびより好ましくは約127マイクロメートル(5ミル)未満の厚さを有する。
【0105】
コーティング物品は、感圧性接着剤の層を更に含んでもよい。従って、本発明は、一方の主表面に硬化性組成物のコーティングおよび他方の主表面に接着層を載せる基材を含む接着物品を提供する。好適な接着剤組成物としては、テキサス州ウェストホロウ(Westhollow)のクラトンポリマーズ(Kraton Polymers)から商品表記「クラトン(Kraton)G−1657」として市販のもののような(例えば、水素添加)ブロックコポリマー類、並びに他の(例えば、類似の)熱可塑性ゴムが挙げられる。その他の代表的な接着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系およびエポキシ系接着剤が挙げられる。光学ディスプレイの表示品質を低下するように時間とともに、または天候暴露時に接着剤が黄色化しないように、好ましい接着剤は十分な光学的品質および光安定性を有するものである。トランスファーコーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ダイコーティング等の様々な既知のコーティング技術を使用して接着剤を適用することができる。代表的な接着剤が、米国特許出願第2003/0012936号に記載されている。前記接着剤のいくつかが、ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社(3M Company)から商品表記8141、8142および8161として市販されている。
【0106】
本発明のさらなる特徴および利点は、次の実施例により、更に説明されるが、これにより制限されることを決して意図しない。本発明は、本明細書に記載の特定の実施例に限定されると考えるべきではなく、更に適切に言えば添付の特許請求の範囲に相当する本発明の全態様を包含すると理解されるべきである。本明細書を検討すると様々な修正形態、等価の方法、並びに本発明を適用できる非常に多くの構造が、本発明が対象とする当業界の技術者には容易に明らかであろう。
【0107】
この発明の種々の修正および変更が、発明の精神および範囲から逸脱しないことを当業者には分かるであろう。この発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態によって不必要に限定されることを意図せずおよび前記実施形態は、追従する特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される発明の範囲によってのみ例として示されることが理解されるべきである。
【実施例】
【0108】
マーカー忌避性を測定する方法:
この試験のため、シャーピー・パーマネント・マーカー(Sharpie Permanent Marker)、ビス−ア−ビス・パーマネント・オーバーヘッド・プロジェクト・ペン(Vis-a-vis Permanent Overhead Project Pen)またはキングサイズ・パーマネント・マーカー(King Size Permanent Marker)(全てが米国のサンフォード(Sanford)から市販)の1つをマーカーとして使用した。先ず、選択したマーカーのチップをかみそりの刃でカットし幅の広い平坦なマーキングチップを用意した。次に、マーカーとガイドとして直線用定規の縁部を使用し、PET基材に適用された試料コーティング上に約1秒当たり15cmの速度で直線を引いた。コーティング上に引いた直線の外観を下の目盛りと比較し、番号を割り当て、試料コーティングの忌避性の度合をマーカーに対して反映させた。1の割り当て番号は、優れた忌避性を示し、一方5の割り当て番号は、劣った忌避性を示す。使用したマーカーの種類にもよるが、結果をシャーピー試験(Sharpie test)、ビス−ア−ビス試験(Vis-a-vis test)またはキングマーカー試験(King marker test)として報告する。
【0109】
耐溶剤性を測定する方法:
この試験のため、メチルエチルケトン(MEK)または他の有機溶媒の滴(直径が約1.25cm)をPET基材に適用された試料コーティング上に定置し、室温で乾燥させた。その後、試料コーティングは、外観を目視により観察し、劣った溶媒忌避性を示すかすみ(H)または良好な溶媒忌避性を示す透明(C)としてのどちらか一方で評価した。更に、上記「マーカー試験方法」を使用し、シャーピー試験(Sharpie test)をMEKまたは有機溶媒忌避性試験の滴が行われたスポット上で繰り返し、1〜5の範囲のマーカー忌避性番号を割り当てた。
【0110】
耐汚れ試験:
この試験は、試料コーティングを研磨花崗岩または多孔質石基材に適用し、MEKまたは有機溶媒の代わりにコーヒー、クールエイド(粉末即席清涼飲料)、赤ワイン、グレープジュース等から選択された各種汚れを試料コーティング上に定置したことを除いて溶媒忌避性試験と同じであった。24時間後、乾燥した汚れを汚れの状態により軟らかいぬれたまたは乾燥した紙タオルで除去した。残留汚れ染みを0(残留した目視できる染みがない)から5(残留したひどい染みまたは広がった色濃い汚れ)の目盛りで目視により評価した。
【0111】
接触角を測定する方法:
ビデオ接触角分析器(マサチューセッツ州ビラリカ(Billerica)のASTプロダクツ(AST Products)から製品番号VCA−2500XEとして市販)で標準試薬用ヘキサデカン(ミズリー州セントルイス(St. Louis)のアルドリッチ(Aldrich)から得られた)および濾過装置(マサチューセッツ州ビラリカ(Billerica)のミリポア社(Millipore Corporation)から得られた)により濾過した脱イオン水を使用し、試料コーティング上で接触角の測定を行った。報告した値は、5つの測定値の平均である。
【0112】
スチールウール試験:
スチールウール試験を行い硬化試料コーティングの磨耗耐性を測定した。硬化試料コーティングの磨耗耐性は、被膜の表面全体にわたってスタイラスに固定された(ゴムのガスケットにより)スチールウールを振動させることが可能な機械装置を使用することにより架橋ウェブをコーティング方向に試験した。スタイラスを、10cmの掃引幅で、3.5拭取り/秒の速度で振動させたが、ここで「拭取り(wipe)」という用語は、10cmを1回移動させることと定義する。スタイラスは、平坦で円筒状の幾何学的形状を有し、直径1.25インチ(3.2cm)であった。その装置にはプラットホームが備え付けられていて、その上におもりを載せて、フィルムの表面に対して直角にしたスタイラスにより加わる力を増やした。スチールウールは、ワシントン州ベリンハム(Bellingham)のホマックスプロダクツ(Homax Products)の部門、ローデス−アメリカン(Rhodes-American)から商品表記「#0000スーパーファイン(#0000-Super-Fine)」として得られ、標準として使用した。試験時使用したスタイラスおよび300の拭き取り用品に500グラムの負荷が加えられた状態で単一試料を試験した。
【0113】
使用した材料:
Q2−7785:ミシガン州ミッドランド(Midland)のダウ・コーニング(Dow Corning)から得られたジビニル基で終端化されたC含有フルオロシリコーン、ヒドロシリル化触媒(ヘプタン中80%溶液)を有するCH=CHSiMe−[OSiMe]y−[OSi(Me)(C)]x−OSiMeCH=CH
Q2−7560:ミシガン州ミッドランド(Midland)のダウ・コーニング(Dow Corning)から得られたフッ素化ヒドロシロキサン、HMeSi−[O−SiHMe]y’−[O−SiMeC]x’−OSiMe
C−2:ペンシルベニア州ブリストル(Bristol)のヒュールス・アメリカ社(Huls America Inc)から得られた、45〜50%から50〜55%のモル比の(メチルヒドロ−フェニルメチル)シロキサンの水素化物末端コポリマーを含有する非フッ素化ヒドロシロキサンまたは2,500〜3,000の分子量を有するH−(SiMePh−O)x−(SiHMe−O)y−SiMePh−H
MeFBSEA:ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社(3M Company)から入手可能なCSONMeCHCHOC(O)CH=CH
PFBEA:日本、ダイキン(Daikin)から得られたn−CCHCHOC(O)CH=CH
TMPTA:ペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Company)から得られた商品表記「SR351」として市販のトリメチロールプロパントリアクリレート
SR−238:ペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Company)から得られたヘキサンジオールジアクリレート
SR−9036A:ペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Company)から得られた高エトキシル化ビスフェノールジメタクリレート(CAS#41637−38−1)
CN−9002:ペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Company)から得られた脂肪族ウレタンアクリレート
SR444C:ペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Company)から市販のペンタエリスリトールトリアクリレート
906HC:実施例に使用した光開始剤を有するシリカ系セラマーハードコートは、米国特許第5,677,050号(ビルカディ(Bilkadi)ら)の10段、25〜39行および実施例1に記載されたようにして作製された。
【0114】
MIBK:ミズリー州セントルイス(St. Louis)のアルドリッチ(Aldrich)から得られたメチルイソブチルケトン
HCCl:ミズリー州セントルイス(St. Louis)のアルドリッチ(Aldrich)から得られたトリクロロメタン
401:ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3Mから入手可能なCFCFCFCFOCH
IPA:ミズリー州セントルイス(St. Louis)のアルドリッチ(Aldrich)から得られたイソプロピルアルコール
MEK:ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown)のEMサイエンス(EM Science)から得られたメチルエチルケトン
アセトンおよびトルエンは、ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown)EMDケミカルズ社(EMD Chemicals Inc.)から得られた。
【0115】
(HFPO)aCOCH:平均分子量1,200g/モルを有するF(CF(CF)CFO)aCF(CF)COCHは、米国特許第3,250,808号(ムーア(Moore)ら)に報告された方法により分別蒸留で精製した状態で調製し、その開示を参照として本明細書に組み込む。
【0116】
(HFPO)aC(O)−NH−CHCH−OH(MW〜1229):(HFPO)aC(O)OCH(MW=1200g/モル、50.0g)を200mL丸底フラスコ内に定置した。フラスコを窒素でパージし、水浴内に定置し、50℃以下の温度に維持した。このフラスコに2.55g(0.042モル)の2−アミノエタノール(アルドリッチ(Aldrich)から得られた)を添加した。その反応混合物を、約1時間撹拌してから、その反応混合物の赤外スペクトルを測定すると、1790cm−1におけるメチルエステル吸収帯が完全に消失し、1710cm−1に強いアミドカルボニル伸縮振動が存在することが分かった。メチルt−ブチルエーテル(MTBE、200mL)を反応混合物に添加し、有機相を水/HCl(〜5%)で2回抽出し、未反応アミンとメタノールを除去した。MTBE層をMgSOで乾燥した。MTBEを減圧下で除去し、透明粘性液体を得た。H核磁気共鳴スペクトル法(NMR)および赤外スペクトル法(IR)により、上述の化合物が生成していることを確認した。
【0117】
HFPO:1部のDesN100、0.15部の(HFPO)xC(O)NHCHCHOHおよび0.85部のSR−444Cの混合物9.55g(50ミリグラム当量)DesN100、9.22g(MW〜1229、7.5ミリグラム当量)HFPO)xC(O)NHCHCHOH、(21.0g、42.5ミリグラム当量)SR−444C、80gの酢酸エチルおよびジラウリン酸ジブチルスズの5滴を窒素下で、電磁攪拌棒を備えた240mlボトル内で混合することにより調製した。濁った溶液を得た。ボトルを密封し、反応を70℃で5時間行った。透明均質な33%固体の溶液を得た。FTIR分析は、未反応−NCOシグナルを示さなかった。
【0118】
N100:DES N100またはデスモジュラー(Desmodur)(商標)N100、ヘキサメチレンジイソシアネートビウレットは、ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)のバイエルポリマーズ社(Bayer Polymers LLC)から得られた。
【0119】
EtOAc:ミズリー州セントルイス(St. Louis)のアルドリッチ(Aldrich)から得られた酢酸エチル
D−1173:ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown)のチバ・スペシャルティ・プロダクツから入手可能な2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、UV光開始剤
白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン(divinyltetamethydisiloxane)錯体:ゲレスト社(Gelest, Inc.)から得られた。
【0120】
実施例1〜25および比較例A〜E:
実施例の1〜25は、発明に従い組成物を調製し、各種基材(特に指定がない限りPET基材)にコーティングし、その後コーティングを紫外線硬化し、続いて生成したコーティングの特性を測定することにより作製した。実施例1〜25の組成物は、2つまたはそれ以上のエチレン性不飽和、フリーラジカル重合性基(示したように溶媒中に20%)を有するポリエチレン性不飽和化合物を含有する溶液をビニルシリコーンおよびヒドロシリコーンなどのフルオロケミカルシリコーンの混合物を含有する添加剤溶液と混合することにより調製した。2つまたはそれ以上のエチレン性不飽和、フリーラジカル重合性基を有するポリエチレン性不飽和化合物を含有する溶液は、以後ハードコート剤溶液と呼ばれる。F1として識別された添加剤溶液は、ヘキサン中90:10重量比のQ2−7785とQ2−7560の混合物の8%溶液であった。F2として識別された添加剤溶液は、ヘキサン中87.5:12.5重量比のQ2−7785とQ2−7560の混合物の8%溶液であった。F3として識別された添加剤溶液は、ヘキサン中90:10重量比のQ2−7785とC2の混合物の14%溶液であった。F4として識別された添加剤溶液は、ヘキサン中75:25重量比のQ2−7785とC2の混合物の8%溶液であった。ハードコート剤溶液が(溶媒1:溶媒2)として示される1つを超える溶媒を含有する場合、溶媒の比率は重量で4:1であった。溶媒1と溶媒2がIPAとMEKであった場合、IPAとMEKの比率は重量で1:1であった。特に記載がない限り、ハードコート剤溶液は約1%の光開始剤(特に指示がない限りD−1173)を含有した。ある場合には、十分にヒドロシリル化するため、余分のヒドロシリル化触媒、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン(divinyltetamethydisiloxane)錯体(100ppm)をコーティング処方に添加した。ひとたびハードコート剤溶液と添加剤溶液の均一な混合物が得られたら、生成した組成物を回転ロッドでコーティング組成物を基材上に広げることにより基材にコーティングした。コーティング組成物の性状が組み合わされたロッドの「ゲージ」が、コーティング厚さを確定する。特に指定がない限り、基材上にコーティング組成物をコーティングするためロッド#10を使用した。次に、基材およびコーティングをオーブン内で約120℃で約5分乾燥し、その後、水素電球光源を使用し窒素ガス雰囲気下約600cm/分の移動速度で紫外線硬化した。比較例Aの場合、コーティング組成物がいかなる添加剤溶液も含有していないことを除いて、同じコーティングを実施例1〜25の場合のように調製した。比較例Bの場合、添加剤溶液が以下S1と呼ばれるHFPOの溶液であったことを除いて、同じコーティングを実施例1〜25の場合のように調製した。比較例C〜Dの場合、添加剤溶液が以下対応してS2およびS3と呼ばれるMeFBSEAおよびPFBEAの溶液であったことを除いて、同じコーティングを実施例1〜25の場合のように調製した。比較例Eの場合、添加剤溶液F1が、2つまたはそれ以上のエチレン性不飽和、フリーラジカル重合性基を有するポリエチレン性不飽和化合物を添加しないコーティングを形成するのに使用され、コーティングがオーブン内の加熱だけで硬化されたことを除いて、同じコーティングを実施例1〜25の場合のように調製した。以下の表Iに実施例1〜25および比較例A〜Eの組成物をまとめる。
【0121】
【表1】

【0122】
発明によるコーティング組成物から得られたコーティングのマーカー忌避性は、上記のマーカー忌避性を測定する方法を使用して測定した。以下の表IIには、比較例A、CおよびDの既知のコーティング組成物と比較した各種基材に対するこの発明のコーティング組成物のマーカー忌避性試験の結果をまとめる。
【0123】
【表2−1】

【0124】
【表2−2】

【0125】
発明によるコーティング組成物から得られたコーティングの接触角データを上記の接触角を測定する方法を使用して測定した。以下の表IIIには、発明による組成物から上記したように形成したハードコーティングの接触角のデータをまとめる。
【0126】
【表3】

【0127】
発明によるコーティング組成物から得られたコーティングの溶媒忌避性を上記した溶媒忌避性を測定する方法を使用し測定した。以下の表IVにはPET基材に対するこの発明のコーティング組成物の溶媒忌避性試験の結果をまとめる。
【0128】
【表4】

【0129】
発明によるコーティング組成物から得られたコーティングの汚れ忌避性を上記したような汚れ忌避性を測定する方法を使用して確定した。以下の表VにはPET基材に対するこの発明のコーティング組成物の汚れ忌避性試験の結果をまとめる。
【0130】
【表5】

【0131】
発明によるコーティング組成物から得られたいくつかのコーティングは、それらの耐久性を測定するため上記したようなスチールウール試験を行った。コーティングの耐久性は、スチールウール試験後のそれらの目視による外観およびマーカー忌避性の観点から測定した。以下の表VIにはスチールウール試験前後のいくつかのコーティングの目視によるコーティング外観およびマーカー忌避性をまとめる。
【0132】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する、51〜99.5重量部のポリエチレン性不飽和成分と、
b)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する、フルオロアルキルシリコーンと、
c)少なくとも2つのSi−H基を有し、b)およびc)の合計が1〜49重量部であるヒドロシリコーンと、
d)ヒドロシリル化触媒と、
e)フリーラジカル重合触媒と、
を含む、フリーラジカル硬化性組成物。
【請求項2】
a)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する、51〜99重量部のポリエチレン性不飽和成分と、
b)1〜49重量部の、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する前記フルオロアルキルシリコーンと少なくとも2つのSi−H基を有する前記ヒドロシリコーンとの前記ヒドロシリル化反応生成物と、
c)フリーラジカル重合触媒と、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フルオロアルキルシリコーンが、式:
【化1】

(式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基であり、
は、Rまたはエチレン性不飽和基Zであり、
は、フルオロアルキル基であり、
aは、0〜2000であり、
bは、1〜2000であり、
a+bは、少なくとも10であり、
前記R基の少なくとも2つは、エチレン性不飽和基Zである)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
が、式C2n+1(C2mO)2p−、またはC2n+1CHFCF(C2mO)2p−またはC2n+1OCHFCF(C2mO)2p
(式中、nは1〜12の整数であり、mは1〜12の整数であり、dは0または1であり、pは2〜12の整数である)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
Zが、アルケニル基、アルキニル基、ビニルオキシアルキレン、アリルオキシアルキレン、および(メタ)アクリロイル基から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記フルオロアルキルシリコーンが、式:
【化2】

(式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基であり、
Zは、エチレン性不飽和基であり、
は、フルオロアルキル基であり、
aは、0〜2000であり、
bは、1〜2000であり、そして
a+bは、少なくとも10である)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記フルオロアルキルシリコーンが、式:
【化3】

(式中、Zは、エチレン性不飽和基であり、
は、一価のヒドロカルビル有機基であり、
は、フルオロアルキル基であり、
aは、0〜2000であり、
bは、1〜2000であり、
cは、2〜2000であり、そして
a+bは、少なくとも10である)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリエチレン性不飽和成分が、式:
(Z’)
(式中、Rは、原子価pの非ウレタン有機部分であり、pは、少なくとも2であり、そしてZ’は、エチレン性不飽和重合性基であり、前記フルオロアルキルシリコーンの前記エチレン性不飽和基と反応性である)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
が、原子価pの脂肪族部分である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリエチレン性不飽和成分が、アクリレート化ポリオールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも2つのSi−H基を有する前記ヒドロシリコーンが、式:
【化4】

(式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基であり、
は、HまたはRであり、
は、RまたはRであり、ここでRは、フルオロアルキル基であり、
dは、0〜2000であり、
eは、1〜2000であり、
fは、0〜2000であり、そしてd+e+fは、少なくとも10であるが、ただし、R基の少なくとも2つは、Hである)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも2つのSi−H基を有する前記ヒドロシリコーンが、式:
【化5】

(式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基であり、
は、HまたはRであり、
は、RまたはRであり、ここでRはフルオロアルキル基であり、
dは、0〜2000であり、
eは、1〜2000であり、
fは、0〜2000であり、そしてd+e+fは、少なくとも10である)である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも2つのSi−H基を有する前記ヒドロシリコーンが、式:
【化6】

(式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基であり、
は、RまたはRであり、ここでRはフルオロアルキル基であり、
dは、0〜2000であり、
eは、2〜2000であり、
fは、0〜2000であり、そしてd+e+fは、少なくとも10である)である、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも2つのSi−H基を有する前記ヒドロシリコーンが、式:
【化7】

(式中、
は、一価のヒドロカルビル有機基であり、
は、HまたはRであり、
は、フルオロアルキル基であり、
dは、0〜2000であり、
eは、1〜2000であり、
fは、1〜2000でありおよびd+e+fは、少なくとも10であるが、ただし、R基の少なくとも2つは、Hである)である、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
100重量部の前記ヒドロシリル化反応生成物およびポリエチレン性不飽和成分を基準として、少なくとも80重量部の前記ポリエチレン性不飽和成分を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリエチレン性不飽和成分が、複数個のエチレン性不飽和基を有する表面官能化無機ナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記無機ナノ粒子が、複数個の(メタ)アクリロイル表面官能基を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
官能基を有するモノ(メタ)アクリロイル化合物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
nが、3〜6である、請求項4に記載の組成物。
【請求項20】
Si−H基のモル比が、前記フルオロアルキルシリコーンのエチレン性不飽和基と前記ポリエチレン性不飽和成分のエチレン性不飽和基とのモル量以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリエチレン性不飽和成分が、表面修飾ジルコニアナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
a)基材に請求項1の組成物をコーティングする工程と、前記コーティングをヒドロシリル化触媒およびフリーラジカル開始剤で硬化する工程とを含む、基材上にコーティングを提供する方法。
【請求項23】
組成物が、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するフルオロアルキルシリコーンと、ヒドロシリル化触媒によりもたらされる少なくとも2つのSi−Hを有する前記ヒドロシリコーンとの反応生成物を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記コーティングが、UVにより硬化される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記基材が、ビニル、木材、ガラス、石、金属類、セラミックス、れんが、塗料、プラスチック類および熱可塑性樹脂類から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
請求項1の硬化組成物を含む、コーティングされた基材。
【請求項27】
前記基材が、ビニル、木材、ガラス、石、金属類、セラミックス、れんが、塗料、プラスチック類および熱可塑性樹脂類から選択される、請求項26に記載のコーティングされた基材。
【請求項28】
前記コーティングが、少なくとも1.6の屈折率を有する、請求項26に記載のコーティングされた基材。

【公表番号】特表2009−533533(P2009−533533A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505541(P2009−505541)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/065953
【国際公開番号】WO2007/121091
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】