説明

フルオロカーボンエラストマーの動的加硫ゴムの結合

【課題】 熱可塑性フルオロエラストマー組成物の基材への接着力を高める方法を提供する。
【解決手段】 熱可塑性フルオロエラストマー組成物の基材への接着力を高める方法、及び複合品の製造方法は、フルオロエラストマーと熱可塑性材料との部分的に硬化した動的加硫ゴムを基材上に塗布する工程、及び部分的に硬化した動的加硫ゴムを基材と接触させながら硬化させる工程を含む。部分的に硬化した動的加硫ゴムは、熱可塑性材料と硬化剤の存在下、フルオロエラストマーが完全に硬化するより短い時間及び低い温度の条件下でフルオロエラストマーを動的に加硫させることによって製造する。動的加硫ゴムが基材と接触しているときに硬化が完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(序文)
本発明は、フルオロポリマー組成物と、ポリマー及び他の基材に対するその接着に関する。本発明は、さらに基材に結合したフルオロポリマーを含む複合品に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素含有ポリマーは、有利な物理的性質が独特に混ざり合っている。例えば、該ポリマーは、一般的に種々多様な化学流体に対する高度な安定性と耐性を特徴とする。これらの特性は、シール中のような、物質が流体と接触している用途で使用するのに該ポリマーを有益にする。
【0003】
フルオロカーボンゴムはフッ素含有モノマーのコポリマーで構成されるエラストマー材料である。硬化したゴムは、一般的なフッ素含有ポリマーの安定性と流体耐性に加え、ゴム材料に典型的なエラストマー特性を有する。フルオカーボンゴムは、シール及びガスケットの領域で広範な用途がある。
【0004】
いくつかの用途では、O-リングやガスケットのようなシールとして直接役立つ物品にフルオロカーボンゴムを成形することができる。他の用途では、フルオロカーボンゴム成分と基材の両方を含む複合品を提供することが望ましい。基材は物理的強度を与え、かつシール及び他の用途で使う種々多様な形状にフルオロカーボンエラストマーを組み込むことを可能にする。
【0005】
しかし、金属やプラスチック、セラミック、及び他のエラストマーのような他の基材に対するフルオロカーボンゴム材料の結合は、フッ素化分子構造を有する物質の低い表面エネルギー状態のため達成しにくい。機械的なインターロック構造をフルオロカーボンポリマーと基材に与えることで結合を高めることができる。フルオロカーボンエラストマーの結合は、硬化プロセスの間の接着層内におけるカップリング分子の反応によっても達成することができる。このようなプロセスは、フッ素化エラストマーとカップリング剤分子との間に化学反応を生じさせ、或いは誘発することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フルオロカーボンの動的加硫ゴムは、フッ素樹脂のような熱可塑性材料の連続相内で硬化したフルオロカーボンエラストマー粒子の不連続相から成る。フルオロエラストマー粒子の完全に硬化した性質は、動的加硫ゴムが、伝統的なフルオロエラストマー接着剤で用いられるエラストマー分子とカップリング剤分子との間に化学反応を誘発できないことを意味する。さらに、連続マトリックスがフッ素樹脂のような熱可塑性樹脂で構成されているので、硬化したエラストマー粒子は、それらが結合すべき基材の表面と密に接していない。
【0007】
フルオロカーボンエラストマーの動的加硫ゴムの金属及び他の基材に対する接着力を高める方法を提供することが望ましい。さらに、フルオロエラストマーの動的加硫ゴムが基材に接着している複合品の調製方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(概要)
本発明は、基材に対する熱可塑性フルオロエラストマー組成物の接着力を高める方法、及び複合品の製造方法を提供する。種々の実施形態において、該方法は、フルオロエラストマーと熱可塑性材料との部分的に硬化した動的加硫ゴムを基材上に塗布する工程、及びその部分的に硬化した動的加硫ゴムを基材と接触させながら硬化させる工程を含む。キャスティング、インサーション成形(insertion molding)、及び共押出成形(coextrusion)のような種々の方法で、部分的に硬化した材料を基材と接触させることによって塗布する。
【0009】
部分的に硬化した動的加硫ゴムは、好ましくは熱可塑性材料と硬化剤の存在下、フルオロエラストマーが決して完全には硬化しないような時間と温度の条件下でフルオロエラストマーを動的に加硫させることによって製造する。硬化は、動的加硫ゴムが基材と接触しているときに完了する。種々の実施形態において、基材は固体支持体と接触している接着剤又は結び(tie)層を含む。このような一実施形態では、部分的に硬化した熱可塑性フルオロエラストマー組成物を接着剤層と接触させる。
【0010】
(説明)
本明細書で述べるこの発明の説明を精査する際は、以下の定義及び非限定的な指針を考慮しなければならない。
【0011】
本明細書で用いる表題(“序文”及び“概要”のような)は、本発明の開示内の話題の一般的構成のためのみを意図し、かつ本発明又はそのいずれかの局面の開示に限定することを意図しない。特に、“序文”で開示する主題は、本発明の範囲内の技術の局面を包含し、先行技術の列挙を構成するものではない。“概要”で開示する主題は、本発明又はそのいずれかの実施形態の全範囲の排他的又は完全な開示ではない。
【0012】
本明細書の参考文献の引用は、当該参考文献が先行技術であり、或いは本明細書で開示する本発明の特許性に何らかの関連性を有するという承認を構成しない。この明細書の説明セクションで引用するすべての参考文献は、参照によってその全体が本明細書に取り込まれる。
【0013】
説明及び特定例は、本発明の実施形態を示すが、例証の目的のためだけを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図しない。さらに、規定した特徴を有する複数の実施形態の列挙は、さらなる特徴を有する他の実施形態、又は規定した特徴の異なる組合せを取り入れた他の実施形態を排除することを意図しない。特定例は、この発明の組成物をどうやって作り、どうやって使用するか、また本発明の方法をどうやって実施するかの例証目的で提供したものであり、かつ別に明瞭に言及しない限り、この発明の与えられた実施形態が有し、又は持たない、製造又は試験した代表であることを意図しない。
【0014】
本明細書で使用する場合、用語“好ましい”及び“好ましくは”は、特定条件下で特定の利益を与える本発明の実施形態を表す。しかし、同一条件又は他の条件下で、他の実施形態が好ましいこともありうる。さらに、1又は複数の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味せず、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図しない。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語“挙げられる(include)”及びその変形は、リスト中の項目の列挙は、この発明の材料、組成物、装置、及び方法でも有用でありうる他の同様な項目の排除にならないように、非限定的であることを意図する。
【0016】
一局面では、本発明は、固体基材に熱可塑性フルオロエラストマー組成物を接着させる方法を提供する。該方法は、固体基材に熱可塑性エラストマー組成物を接着させる方法であって、以下の工程を含む方法が挙げられる。
(a)熱可塑性材料と硬化剤の存在下、フルオロエラストマーを完全に硬化させるのに必要な時間より短い時間フルオロエラストマーを動的に加硫させて、部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを形成する工程;
(b)前記基材に接着剤層を塗布する工程;
(c)前記部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを前記接着剤層に接触させる工程;及び
(d)前記熱可塑性加硫ゴムの硬化を完全にする工程。
【0017】
フッ素含有熱可塑性材料と硬化剤の存在下、使用温度でフルオロエラストマーを完全に硬化させるのに必要な時間より短い時間動的にフルオロエラストマーを加硫させる。こうして、部分的に硬化した熱可塑性動的加硫ゴムが形成される。別個の工程で、金属、プラスチック、セラミック、又は別のエラストマーのような基材に接着剤層を塗布する。部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを接着剤層に接触させ、かつ熱可塑性加硫ゴムを接着剤層と接触させながら熱可塑性加硫ゴムの硬化を完全にする。
【0018】
インサーション成形及び共押出成形のような種々の方法で加硫ゴムを接着剤層と接触させる。種々の実施形態において、接触プロセス要素(c)は、前記部分的に硬化した加硫ゴムを前記接着剤被覆基材上にインサーション成形する工程を含む。(本明細書で言及する場合、“プロセス要素”は、該プロセスで遂行される工程又は他の活動を意味する。このような要素は、該プロセス要素の文脈で別に指定又は要求しない限り、逐次的又は同時に行うことができる。)種々の実施形態において、部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムと基材との間に接着剤層を共押出する。一実施形態では、共押出の間に、液体連続射出装置で接着剤層を塗布する。
【0019】
フルオロカーボンエラストマーとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びペルフルオロビニルエーテルのような1種以上のフッ素含有モノマーのコポリマーが挙げられる。フルオロカーボンエラストマーは、さらに硬化部位モノマーを含みうる。ビスフェノール硬化剤及びペルオキド硬化剤のようなフルオロカーボンエラストマー用の慣習的な硬化剤を使用できる。
【0020】
別の局面では、複合品の製造方法が提供される。複合品は固体基材を含み、その上に、硬化したフルオロエラストマー組成物が接着している。該方法としては、以下の工程:
(a)部分的に硬化したフルオロエラストマーの不連続相と、熱可塑性ポリマー材料の連続相とを含む、部分的に硬化した熱可塑性エラストマー組成物を基材上に塗布する工程;及び
(b)前記部分的に硬化した熱可塑性エラストマー組成物を硬化させる工程;
を含む複合品の製造方法が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
好ましい実施形態では、フルオロエラストマーと熱可塑性材料の部分的に硬化した動的加硫ゴムを基材上に塗布し、かつ部分的に硬化した加硫ゴムが基材と接触している間に、該部分的に硬化した加硫ゴムの硬化が完了する。部分的に硬化した動的加硫ゴムは、好ましくは部分的に硬化したフルオロエラストマー粒子の不連続相と、熱可塑性ポリマー材料の連続相とを含む。部分的に硬化した動的加硫ゴムは、フルオロエラストマー、熱可塑性材料、及び硬化剤を一緒に混合しながら同時に、加熱して熱可塑性材料の存在下で該フルオロエラストマーの部分的硬化を達成することによって製造する。熱可塑性材料はフッ素樹脂材料又は非-フッ素含有熱可塑性ポリマーでよい。フルオロエラストマーは、任意に硬化部位モノマー、及びビスフェノール又はペルオキシドのような硬化剤を含んでよい。基材が接着剤層を含む種々の実施形態では、接着剤層を固体支持体上に塗布し、この接着剤層の上に、上記部分的に硬化した動的加硫ゴムを塗布する。この基材に、インサーション成形及び共押出成形を含む種々の方法で、部分的に硬化した材料を塗布する。
【0022】
共押出成形法では、部分的に硬化したフルオロエラストマー不連続相と、熱可塑性ポリマー材料を含有する連続相とを含む部分的に硬化した動的加硫ゴムを製造する。部分的に硬化した動的加硫ゴムと基材を共押出して接触させる。部分的に硬化した動的加硫ゴムのさらなる硬化は、共押出後、それぞれの層が接触しながら遂行する。任意に、接着剤層を動的加硫ゴムと基材層との間に共-押出する。
【0023】
種々の実施形態では、フルオロエラストマー樹脂、熱可塑性ポリマー材料、及びフルオロエラストマー樹脂と反応しうる硬化剤を一緒に混合する工程を含むプロセスによって、部分的に硬化した動的加硫ゴムを製造する。混合する間、混合物を加熱してフルオロエラストマー樹脂と硬化剤を反応させる。反応は、樹脂を完全に硬化するのに必要な時間より短い時間行う。例えば、熱エラストマーと熱可塑性材料とを一緒に混合する工程は、一般にT90以下に相当する時間行う。ここで、T90はエラストマー材料の硬化に関連する通常のパラメーターである。
【0024】
インサーション成形を含む種々の方法では、基材上に接着剤層を塗布してから、接着剤被覆基材を型内に置く。そして、上述した動的加硫ゴムのような部分的に硬化したエラストマー組成物を型内にインサーション成形して基材を接触させる。さらにエラストマーの硬化が完了するまでの時間、エラストマー組成物と基材との接触を保持する。
【0025】
動的加硫、又はフルオロエラストマーと熱可塑性材料の混合は、バッチ、連続、又は半バッチ法によって行われる。一方法では、未硬化フルオロカーボンエラストマーと熱可塑性材料の混合物を二軸スクリュー押出機のバレル内に供給することができる。供給された混合物が該混合物中に硬化剤を供給するために使用する下流ポートに達するまで、二軸スクリュー押出機のバレル内で該混合物をブレンドかつ加熱する。フルオロエラストマーを完全に硬化するのに必要な時間より短い時間、例えばT90以下の時間、押出機のバレル内で硬化剤、フルオロカーボンエラストマー、及び熱可塑性材料をさらに混合する。フルオロエラストマーが完全に硬化する前に、部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムをバレルから押し出す。その後、加硫ゴムを基材上に塗布する。基材と接触しながら加硫ゴムの硬化が完了する。
【0026】
種々の実施形態では、部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを共押出ダイに直接供給し、或いは上述したような基材を含有する型内に即座にインサーション成形する。代わりに、押し出された加硫ゴムを冷却し、後の使用のため保持する。
【0027】
マトリックス中に分散した加硫エラストマー材料を含む加工可能なゴム組成物を提供する。加硫エラストマー材料は、フルオロカーボンエラストマーを加硫、架橋、又は硬化させる生成物である。マトリックスは熱可塑性材料で構成される。この加工可能なゴム組成物を慣習的な熱可塑性樹脂技術を含む種々の方法で加工して、固体基材に接着したゴム組成物を有する複合品を形成する。複合品のゴム組成物は、エラストマー特性を必要とする多くの用途で複合品を役立たせる物理的性質を有する。特に好ましい実施形態では、ゴム組成物は約50以上のショアーA硬度、ショアーA70以上、又は約ショアーA70〜約ショアーA90の範囲のショアーA硬度を示す。これに加え、或いはこれとは別に、引張り強さは、好ましくは約4MPa以上、約8MPa以上、又は約8〜約13MPaの範囲である。さらに他の実施形態では、硬化したゴムは、少なくとも2MPa、又は少なくとも約4MPa、又は約4〜約8MPaの100%モジュラスを有すると特徴づけられる。他の実施形態では、本発明の加工可能な組成物から作られる物品の破断点伸びは10%以上、好ましくは少なくとも約50%、又は少なくとも約150%、又は約150〜約300%の範囲である。本発明の成形品は、好ましくは上記範囲内の硬度、引張り強さ、モジュラス、及び破断点伸びの少なくとも1つを有すると特徴づけられる。
【0028】
一局面では、ゴム組成物は、マトリックスが連続相を形成し、かつ加硫エラストマー材料が非連続相、分散相、又は不連続相を形成する粒子の形態である2相で構成される。別の局面では、エラストマー材料とマトリックスが一緒に連続相を形成する。
【0029】
好ましい実施形態では、該組成物は、エラストマーと熱可塑性材料の全質量に基づき、約35質量%以上、又は約40質量%以上のエラストマー相を含む。他の実施形態では、該組成物は、約50質量%以上のエラストマー相を含む。該組成物は、シール、ホース等のようなエラストマー特性を必要とする用途で工業的に有用である引張り強さ、モジュラス、破断点伸び、及び圧縮ひずみのような十分なエラストマー特性を有する成形品に該組成物を容易に形成しうるのに十分適合性である2相の均一ブレンドである。
【0030】
エラストマー相は、連続的な熱可塑性相中の粒子の形態で、熱可塑性材料と一緒に連続相を形成する3-D網目構造として、或いは両者の混合物として存在しうる。エラストマー相の粒子又は3-D網目構造は、好ましくは約10μm以下、又は約1μm以下の最小寸法を有する。
【0031】
種々の実施形態では、本発明のゴム組成物は、熱可塑性成分の存在下、フルオロカーボンエラストマーの動的加硫によって作られる。このような実施形態では、ゴム組成物の製造方法であって、硬化剤、エラストマー材料、及び熱可塑性材料を混合して混合物を形成する工程を含む方法が提供される。この混合物を熱可塑性材料の存在下、フルオロカーボンエラストマーの部分的な加硫又は硬化を引き起こすのに十分な温度と時間加熱するが、完全な硬化に必要な時間より短い時間行う。加熱工程の間、エラストマー材料、硬化剤及び熱可塑性材料の混合物に機械的エネルギーを加える。従って、本発明の方法は、硬化剤の存在下、エラストマーと熱可塑性成分を混合する工程と、混合時に加熱してエラストマー成分の部分的硬化を達成する工程を備える。代わりに、連続的又は共-連続的熱可塑性相中のエラストマー材料の分散系を形成するのに十分な時間とせん断速度でエラストマー材料と熱可塑性材料を混合する。その後、混合を続けながらエラストマー材料と熱可塑性材料の分散系に硬化剤を添加する。最後に、混合を続けながら分散系を加熱して、本発明の加工可能なゴム組成物を生成する。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明の組成物から調製される複合品は、化学溶媒の影響に対する高度の耐性を含む有利な組合せの物理的性質を示す。好ましい実施形態では、有機溶媒又は燃料中に浸漬又は部分的な浸漬によってのような長時間物品をさらした場合、硬度、引張り強さ、及び/又は破断点伸びがほとんど変化せず、或いは硬化したフルオロカーボンエラストマー又は他の既知の熱可塑性加硫ゴムと比較して有意に少ししか変化しない物品が製造される。
【0033】
好ましいフルオロカーボンエラストマーとしては、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、及びペルフルオロビニルエーテル(PFVE)のような1種以上のフッ素含有モノマーの商業的に入手可能なコポリマーが挙げられる。好ましいPFVEとしては、C1-8ペルフルオロアルキル基、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基を有するもの、特にペルフルオロメチルビニルエーテル及びペルフルオロプロピルビニルエーテルが挙げられる。さらに、コポリマーは、任意にエチレン(Et)及びプロピレン(Pr)のようなオレフィン由来の繰返し単位を含むことがある。コポリマーは、さらに後述する相対的に少量の硬化部位モノマー(CSM)を含んでもよい。好ましいコポリマーフルオロカーボンエラストマーとしては、VDF/HFP、VDF/HFP/CSM、VDF/HFP/TFE、VDF/HFP/TFE/CSM、VDF/PFVE/TFE/CSM、TFE/Pr、TFE/Pr/VDF、TFE/Et/PFVE/VDF/CSM、TFE/Et/PFVE/CSM及びTFE/PFVE/CSMが挙げられる。エラストマーの名称は、エラストマーゴムが合成されるモノマーを与える。エラストマーゴムは、好ましくは通常約15〜約160の範囲のムーニー粘性(ML1+10、約121℃の大ローター)を与える粘度を有する。ムーニー粘度は、流れと物理的性質の組合せで選択することができる。エラストマー供給者としては、Dyneon(3M)、Asahi Glass Fluoropolymers、Solvay/Ausimont、DuPont、及びDaikinが挙げられる。
【0034】
一実施形態では、エラストマー材料はテトラフルオロエチレンと少なくとも1種のC2-4オレフィンのコポリマーとして記載される。それ自体、該エラストマー材料は、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のC2-4オレフィン由来の繰返し単位を含む。任意に、該エラストマー材料は、1種以上のさらなるフッ素含有モノマー由来の繰返し単位を含むことができる。
【0035】
加硫エラストマー材料の好ましい追加モノマーは、ニフッ化ビニリデンである。エラストマー材料中で任意に使用される他のフッ素含有モノマーとしては、ペルフルオロアルキルビニル化合物、ペルフルオロアルキルビニリデン化合物、及びペルフルオロアルコキシビニル化合物が挙げられる。ヘキサフルオロプロピレン(HFP)はペルフルオロアルキルビニルモノマーの例である。ペルフルオロメチルビニルエーテルは好ましいペルフルオロアルコキシビニルモノマーの例である。例えば、テトラフルオロエチレン、エチレン、及びペルフルオロメチルビニルエーテルを基礎とするゴムは、商標名Viton(登録商標)ETPでDuPontから商業的に入手可能である。
【0036】
別の実施形態では、エラストマー材料は、フルオロモノマーフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の繰返し単位を含有する硬化性フルオロカーボンエラストマーである。いくつかの実施形態では、エラストマーはさらにテトラフルオロエチレン由来の繰返し単位を含む。
【0037】
化学的に、この実施形態では、エラストマー材料はVDFとHFPのコポリマー、又はVDF、HFP、及びテトラフルオロエチレン(TFE)のターポリマーと、任意に硬化部位モノマーで構成される。好ましい実施形態では、それらは約66〜約70質量%のフッ素を含む。エラストマーは商業的に入手可能であり、DuPont Dow ElastomersからのViton(登録商標)A、Viton(登録商標)B、及びViton(登録商標)Fシリーズのエラストマーが例示される。
【0038】
別の実施形態では、エラストマーは化学的にTFEとPFVEのコポリマー、任意にVDFとのターポリマーとして記載される。エラストマーは、さらに硬化部位モノマー由来の繰返し単位を含むことができる。
【0039】
種々の実施形態では、本発明の加工可能なゴム組成物の製造に用いるフルオロカーボンエラストマー材料は、所望のモル比の開始モノマーを含有するモノマー混合物のフリーラジカル乳化重合によって調製される。開始剤としては、有機又は無機ペルオキシド化合物が挙げられ、好適な乳化剤としてはフッ素化酸性セッケンが挙げられる。一実施形態では、モノマーレベルと比べた使用する開始剤の相対量と、もしあれば移動剤の選択によって、形成されるポリマーの分子量をコントロールする。好適な移動剤としては、四塩化炭素、メタノール、及びアセトンが挙げられる。乳化重合はバッチ又は連続条件下で行う。このようなフルオロエラストマーは上述したように商業的に入手可能である。
【0040】
フルオロカーボンエラストマーは、約5モル%まで、好ましくは約3モル%までの、後述するような加硫用の硬化部位を与えるいわゆる硬化部位モノマー由来の繰返し単位をも含有しうる。一実施形態では、硬化部位繰返し単位は臭素含有オレフィンモノマー及び/又はヨウ素含有モノマーから誘導される。使用する場合、好ましくはヨウ素又は臭素含有モノマーの繰返し単位は、ポリマー中、少なくとも約0.05%、好ましくは0.3%以上の臭素又はヨウ素を与えるレベルで存在する。好ましい実施形態では、ポリマー中の臭素又はヨウ素の全質量は約1.5wt.%以下である。
【0041】
フルオロポリマーの硬化部位を与えるのに有用な臭素含有オレフィンモノマーは、例えば、米国特許第4,035,565号で開示されている。臭素含有モノマーの非限定例としては、ブロモトリフルオロエチレン及び4-ブロモ-3,3,4,4-テトラフルオロ-1-ブテンが挙げられる。さらなる非限定例としては、臭化ビニル、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルブロマイド、4-ブロモ-1,1,2-トリフルオロブテン、4-ブロモ-1,1,3,3,4,4-ヘキサフルオロブテン、4-ブロモ-3-クロロ-1,1,3,4,4-ペンタフルオロブテン、6-ブロモ-5,5,6,6-テトラフルオロヘキセン、4-ブロモペルフルオロブテン-1、及び3,3-ジフルオロアルキルブロマイドが挙げられる。上述したように、通常、コポリマー中約0.3〜1.5wt.%の臭素を与えるのに十分なブロモ-オレフィン繰返し単位が存在することが好ましい。
【0042】
低レベル、好ましくは約5モル%以下、さらに好ましくは約3モル%以下の、エポキシ、カルボン酸、カルボン酸ハライド、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、スルホン酸基、スルホン酸アルキルエステル、及びスルホン酸塩のような官能基を導入する他の硬化モノマーを使用することができる。このようなモノマーと硬化については、例えばKamiyaら,米国特許第5,354,811号に記載されている。
【0043】
マトリックスを構成する熱可塑性材料は、加熱すると軟化かつ流れるポリマー材料である。一局面では、熱可塑性材料は、その融点より高い温度で、ASTM D-1238又はD-2116によってのように、その溶融粘度を測定できる材料である。
【0044】
本発明の熱可塑性材料を選択して、高温、好ましくは約100℃より高い、さらに好ましくは約150℃以上の温度におけるゴム/熱可塑性材料組合せの特性を向上させることができる。このような熱可塑性材料としては、引張り強さ、モジュラス、及び破断点伸びの少なくとも1つのような物理的性質を高温で許容しうる程度に維持するものが挙げられる。好ましい実施形態では、熱可塑性材料は、高温での物理的性質が、硬化したフルオロカーボンエラストマー(ゴム)の類似温度での物理的性質より優れる(すなわち、高い引張り強さ、高いモジュラス、及び/又は高い破断点伸び)。
【0045】
種々の実施形態では、熱可塑性ポリマー材料は、熱可塑性エラストマーである。熱可塑性エラストマーは、軟化、フレキシビリティー及び弾力のようなゴムのいくつかの物理的性質を有するが、熱可塑性プラスチックのように加工することができる。冷却すると、融成物から固体ゴム様組成物への遷移がかなり急速に起こる。これは、通常のエラストマーが加熱によってゆっくり硬化するのと対照的である。種々の実施形態では、射出成形機及び押出機のような通常のプラスチック用装置で熱可塑性エラストマーを加工する。好ましくはスクラップを直ちにリサイクルする。
【0046】
熱可塑性エラストマーは、多相構造を有し、相は通常親密に混合している。多くの場合、相は、グラフト又はブロック共重合によって結合している。少なくとも1つの相は室温で硬いが、加熱すると流動性の材料で構成される。別の相は室温でゴムのように軟らかい材料である。
【0047】
ここで有用な熱可塑性エラストマーの多くは既知である。A-B-A型熱可塑性エラストマーの非限定例としては、ポリスチレン/ポリシロキサン/ポリスチレン、ポリスチレン/ポリエチレン-共-ブチレン/ポリスチレン、ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリスチレン、ポリスチレン/ポリイソプレン/ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン/ポリブタジエン/ポリ-α-メチルスチレン、ポリ-α-メチルスチレン/ポリイソプレン/ポリ-α-メチルスチレン、及びポリエチレン/ポリエチレン-共-ブチレン/ポリエチレンが挙げられる。
【0048】
(A-B)n繰返し構造を有する熱可塑性エラストマーの非限定例としては、ポリアミド/ポリエーテル、ポリスルホン/ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン/ポリエステル、ポリウレタン/ポリエーテル、ポリエステル/ポリエーテル、ポリカーボネート/ポリジメチルシロキサン、及びポリカーボネート/ポリエーテルが挙げられる。
【0049】
一実施形態では、熱可塑性エラストマーはポリアミドとポリエーテルの交互ブロックを有する。このような材料としては、例えば、Atofinaから商標名Pebax(登録商標)で商業的に入手可能なものが挙げられる。ポリアミドブロックは、二塩基酸成分とジアミン成分のコポリマーから誘導し、或いは環状ラクタムのホモ重合によって調製しうる。ポリエーテルブロックは、一般にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びテトラヒドロフランのような環状エーテルのホモ又は共重合から誘導する。
【0050】
一実施形態では、熱可塑性ポリマー材料は、固体で、通常高分子量のプラスチック材料の中から選択する。好ましくは、該材料は結晶性又は半結晶性ポリマーであり、さらに好ましくは示差走査熱量分析で測定した場合少なくとも約25%の結晶性を有する。適切に高いガラス転移温度を有する非晶質ポリマーも熱可塑性ポリマー材料として許容しうる。熱可塑性材料は、好ましくは約80℃〜約350℃の範囲の融解温度又はガラス転移温度を有するが、融解温度は一般的に熱可塑性加硫ゴムの分解温度より低いはずである。
【0051】
熱可塑性ポリマーの非限定例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体、ポリフェニレンオキシド、ポリオキシメチレン、及びフッ素含有熱可塑性プラスチックが挙げられる。
【0052】
ポリオレフィンは、限定するものではないが、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン、及びこれらの混合物のようなα-オレフィンの重合によって生成される。エチレンとプロピレン又はエチレン若しくはプロピレンと、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン若しくはこれらの混合物のような別のα-オレフィンとのコポリマーも考えられる。これらホモポリマーとコポリマー、及びそれらのブレンドを本発明の熱可塑性ポリマー材料として取り込むことができる。
【0053】
ポリエステル熱可塑性プラスチックは、ポリマー骨格中に繰返しエステル連結単位を含む。一実施形態では、それらは低分子量ジオールと低分子量芳香族二塩基酸から誘導される繰返し単位を含む。非限定例としては、商業的に入手可能グレードのポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートが挙げられる。代わりに、ポリエステルは脂肪族ジオールと脂肪族二塩基酸を基礎とする。例は、エチレングリコール又はブタンジオールとアジピン酸のコポリマーである。別の実施形態では、熱可塑性ポリエステルは、ヒドロキシルとカルボキシルの両官能性を含むモノマーを重合して調製されるポリラクトンである。ポリカプロラクトンは、この分類の熱可塑性ポリエステルの非限定例である。
【0054】
ポリアミド熱可塑性プラスチックは、ポリマー骨格中に繰返しアミド連結単位を含む。一実施形態では、ポリアミドは、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸のポリマーである周知なナイロン66のようなジアミンと二塩基酸モノマーから誘導される繰返し単位を含む。他のナイロンは、ジアミンと二塩基酸成分の大きさを変えることから生じる構造を有する。非限定例としては、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、及びナイロン6/66コポリマーが挙げられる。別の実施形態では、ポリアミドはアミンとカルボキシルの両官能性
を有するモノマーを重合することから生じる構造を有する。非限定例としては、ナイロン6(ポリカプロラクタム)、ナイロン11、及びナイロン12が挙げられる。
【0055】
ジアミンと二塩基酸成分から生成される他のポリアミドとしては、ジアミンとテレフタル酸のような芳香族二塩基酸とから誘導される繰返し単位を含有する高温芳香族ポリアミドが挙げられる。これらの商業的に入手可能な例としては、Kurarayによって商標名Genestarで販売されているPA6T(ヘキサンジアミンとテレフタル酸のコポリマー)、及びPA9T(ノナンジアミンとテレフタル酸のコポリマー)が挙げられる。いくつかの用途では、いくつかの芳香族ポリアミドの融点は熱可塑性プラスチック加工の最適値より高い。このような場合、適切なコポリマーを調製することによって融点を下げる。非限定例で、約370℃の融解温度を有するPA6Tの場合、ポリマー製造時、有効量のアジピン酸のような非芳香族二塩基酸を含めることによって、事実上融点を約320℃の成形可能温度未満に下げることができる。
【0056】
別の好ましい実施形態では、テレフタル酸のような芳香族二塩基酸と、6個より多い炭素原子、好ましくは9個以上の炭素原子を含有するジアミンとのコポリマーを基礎とする芳香族ポリアミドを使用する。ジアミンの炭素鎖の長さの上限は、ポリマー合成に好適なモノマーの利用能によって実用的観点から制限される。好適なジアミンとしては、7〜20個の炭素原子、好ましくは9〜15個の範囲の炭素原子、さらに好ましくは9〜12個の範囲の炭素原子を有するものが挙げられる。好ましい実施形態は、C9、C10及びC11ジアミンベース芳香族ポリアミドを包含する。好ましくは、このような芳香族ポリアミドは、6個より多くの炭素原子を有する炭素鎖の親油性に基づいた溶媒耐性のレベル上昇を示す。融点を好ましい成形温度以下(典型的に約320℃以下)に下げたい場合、6個より多い炭素原子のジアミンを基礎とする芳香族ポリアミドは、6炭素原子ジアミンを基礎とする芳香族ポリアミドと共に、上述したような有効量の非芳香族二塩基酸を含みうる。このような有効量の二塩基酸は、所望の溶媒耐性に許容しえない影響を与えることなく、所望の成形温度範囲に融点を下げるのに十分でなければならない。
【0057】
高温熱可塑性プラスチックの他の非限定例としては、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、及び高温ポリイミドが挙げられる。液晶ポリマーは、化学的に、芳香環を線状に繰返し含有する線状ポリマーを基礎とする。芳香族構造のため、この材料は、X線回折法で検出できる特徴的な空間的配置を有するネマチック溶融状態の領域を形成する。この材料の例としては、ヒドロキシ安息香酸のコポリマー、又はエチレングリコールとテレフタル酸若しくはナフタレンジカルボン酸のような線状芳香族ジエステルのコポリマーが挙げられる。
【0058】
高温熱可塑性ポリイミドとしては、芳香族二無水物と芳香族ジアミンの重合反応生成物が挙げられる。このようなポリイミドとしては、多くの供給元から商業的に入手可能なものが挙げられる。例は、1,4-ベンゼンジアミンと1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物のコポリマーである。
【0059】
好ましい実施形態では、マトリックスは少なくとも1種のフッ素含有熱可塑性プラスチックを含む。好適な熱可塑性フッ素含有ポリマーとしては、広範なポリマー及び市販製品から選択されるものが挙げられる。ポリマーは、好ましくは加熱するとそれらが軟化かつ流れるように、溶融加工可能であり、かつ射出成形、押出成形、圧縮成形、及びブロー成形のような熱可塑性プラスチック技術で容易に加工することができる。該材料は、好ましくは融解かつ再加工することによって容易にリサイクルできる。
【0060】
種々の実施形態では、熱可塑性ポリマーを完全にフッ素化し、或いは部分的にフッ素化する。完全にフッ素化した熱可塑性ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルのコポリマーが挙げられる。ペルフルオロアルキル基は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。他のコポリマーの例は、PFA(TFEとペルフルオロプロピルビニルエーテルのコポリマー)及びMFA(TFEとペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー)である。完全にフッ素化した熱可塑性ポリマーの他の例としては、TFEと3〜8個の炭素原子のペルフルオロオレフィンのコポリマーが挙げられる。非限定例としては、FEP(TFEとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー)が挙げられる。
【0061】
部分的にフッ素化した熱可塑性ポリマーとしては、E-TFE(エチレンとTFEのコポリマー)、E-CTFE(エチレンとクロロトリフルオロエチレンのコポリマー)、及びPVDF(フッ化ポリビニリデン)が挙げられる。フッ化ビニリデンの多くの熱可塑性コポリマーも本発明で使用するのに好適な熱可塑性ポリマーである。これらとしては、ヘキサフルオロプロピレンのようなペルフルオロオレフィンとのコポリマー、及びクロロトリフルオロエチレンとのコポリマーが挙げられる。種々の実施形態では、熱可塑性ターポリマーを使用する。これらとしては、TFE、HFP、及びフッ化ビニリデンの熱可塑性ターポリマーが挙げられ、商業的に入手可能なフッ素含有熱可塑性材料を含む。供給元としてはDyneon(3M)、Daikin、Asahi Glass Fluoroplastics、Solvay/Ausimont及びDuPontが挙げられる。いくつかの市販の実施形態では、部分的にフッ素化したフルオロプラスチックは約59〜約76質量%のフッ素を有する。
【0062】
有用な硬化剤としては、ジアミン、ペルオキシド、及びポリオール/オニウム塩の組合せが挙げられる。ジアミン硬化剤は比較的遅速に硬化するが、いくつかの分野で利点を提供する。このような硬化剤は、例えばDuPont Dow ElastomersからのDiak-1のように商業的に入手可能である。
【0063】
好ましいペルオキシド硬化剤としては、有機ペルオキシド、好ましくはジアルキルペルオキシドが挙げられる。好ましくは、有機ペルオキシドは、他の成分の存在下かつ硬化操作で用いる温度下で、硬化操作に先行する混合又は他の操作の間にいかなる有害な量の硬化を引き起こすことなく、該組成物の硬化剤として機能するように選択される。組成物を硬化させる前に高温処理に供する場合、約49℃以上の温度で分解するジアルキルペルオキシドが特に好ましい。多くの場合、ペルオキシ酸素に結合した三級炭素原子を有するジ-tert-ブチルペルオキシドを使用することが好ましい。非限定例としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン;及び1,3-ビス-(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが挙げられる。ペルオキシド硬化剤の他の非限定例としては、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾエート、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート等が挙げられる。
【0064】
種々の実施形態では、ペルオキシドと共に1種以上の架橋助剤を併用する。例としては、シアヌル酸トリアリル;イソシアヌル酸トリアリル;イソシアヌル酸トリ(メタリル);トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン;亜リン酸トリアリル;N,N-ジアリルアクリルアミド;ヘキサアリルホスホルアミド;N,N,N’,N’-テトラアリルテレフタルアミド;N,N,N’,N’-テトラアリルマロンアミド;イソシアヌル酸トリビニル;2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン;及びシアヌル酸トリ(5-ノルボルネン-2-メチレン)が挙げられる。
【0065】
好適なオニウム塩は、例えば、米国特許第4,233,421号;第4,912,171号;及び第5,262,490号に記載されている。例としては、塩化トリフェニルベンジルホスホニウム、塩化トリブチルアルキルホスホニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、及び塩化トリアリールスルホニウムが挙げられる。
【0066】
別分類の有用なオニウム塩は、下記式で表される。
【化1】

式中、
Qは窒素又はリンであり;
Zは水素原子であり、或いは
末端が式-COOA(Aは水素原子又はNH4+カチオンである)である4〜約20個の炭素原子を有する置換又は無置換の環式又は非環式アルキル基であり、或いはZは式-CY2COOR’(Yは水素又はハロゲン原子であり、又は任意に1個以上の四級ヘテロ原子を含有してもよい1〜約6個の炭素原子を有する置換又は無置換のアルキル又はアリール基であり、かつR’は水素原子、NH4+カチオン、アルキル基であり、又は非環式無水物、例えば式-COR(Rはアルキル基又はそれ自体有機オニウムを含有する(すなわち、ビス-有機オニウムを与える)基である)の基であり;好ましくはR’は水素原子である)の基であり;Zは末端が式-COOA(Aは水素原子又はNH4+カチオンである)である4〜約20個の炭素原子を有する置換又は無置換の環式又は非環式アルキル基でもよく;R1、R2、及びR3は、それぞれ独立的に水素原子又はアルキル、アリール、アルケニル、又はそのいずれかの組合せであり、各R1、R2、及びR3は、塩素、フッ素、臭素、シアノ、-OR”、又は-COOR’’(R’’は、C1〜C20アルキル、アリール、アラルキル、又はアルケニルであり、かつR1、R2、及びR3基のいずれかの対が相互に結合し、かつQと結合してヘテロ環式環を形成してもよく;R1、R2、及びR3基の1個以上は、式Z(Zは上記定義どおりである)の基でもよく;
Xは有機又は無機アニオン(例えば、限定するものではないが、ハライド、スルフェート、アセテート、ホスフェート、ホスホネート、ヒドロキシド、アルコキシド、フェノキシド、又はビスフェノキシド)であり;かつ
nはアニオンXのイオン価に等しい数である。
【0067】
ポリオール架橋剤は、米国特許第4,259,463号(Moggiら)、米国特許第3,876,654号(Pattison)、米国特許第4,233,421号(Worm)、及び米国防護公開T107,801(Nersasian)で開示されている当該ポリヒドロキシ化合物のような、フルオロエラストマー用架橋剤又は架橋助剤として機能する本技術で既知の当該ポリヒドロキシ化合物のいずれでもよい。好ましいポリオールとしては、芳香族ポリヒドロキシ化合物、脂肪族ポリヒドロキシ化合物、及びフェノール樹脂が挙げられる。
【0068】
代表的な芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、ジ-、トリ-、及びテトラヒドロキシベンゼン、-ナフタレン、及び-アントラセン、及び下記式のビスフェノールのいずれか1つが挙げられる。
【化2】

式中、Aは、1〜13個の炭素原子の二官能性脂肪族、環式脂肪族、若しくは芳香族基、又はチオ、オキシ、カルボニル、若しくはスルホニル基であり、Aは、任意に、少なくとも1個の塩素又はフッ素原子で置換されていてもよく、xは0又は1であり、nは1又は2であり、かつ該ポリヒドロキシ化合物のいずれの芳香環も任意に塩素、フッ素、若しくは臭素原子の少なくとも1個の原子、又はカルボキシル若しくはアシル基(例えば、-COR(RはH又はC1〜C8アルキル、アリール若しくはシクロアルキル基である)又は例えば1〜8個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。上記ビスフェノールの式IIIから、-OH基はどちらかの環内のいずれの位置(数1以外)にも結合できることが分かるだろう。2種以上の該化合物のブレンドも使用できる。好ましいビスフェノール化合物は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンであるビスフェノールAFである。他の非限定例としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が挙げられる。ヒドロキノンのような芳香族ポリヒドロキシ化合物も硬化剤として使用できる。さらなる非限定例としては、カテコール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、2-メチルヒドロキノン、2,5-ジメチルヒドロキノン、及び2-t-ブチルヒドロキノン、1,5-ジヒドロキシナフタレン及び9,10-ジヒドロキシアントラセンが挙げられる。
【0069】
脂肪族ポリヒドロキシ化合物もポリオール硬化剤として使用できる。例としては、フルオロ脂肪族ジオール、例えば、1,1,6,6-テトラヒドロオクタフルオロヘキサンジオール、及び米国特許第4,358,559号(Holcombら)及びその中で引用している参考文献に記載されているものにような他のものが挙げられる。米国特許第4,446,270号(Guenthnerら)に記載されているようなポリヒドロキシ化合物の誘導体も使用でき、例えば、2-(4-アリルオキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。2種以上のポリヒドロキシ化合物の混合物も使用できる。
【0070】
ゴムポリマーを架橋することができるフェノール樹脂をポリオール硬化剤として利用できる。フェノール樹脂に対する言及はフェノール樹脂の混合物を包含しうる。このような樹脂は、米国特許第2,972,600号及び第3,287,440号に開示されている。これらフェノール樹脂を用いて、他の硬化剤を使用せずに所望レベルの硬化を達成することができる。
【0071】
フェノール樹脂硬化剤は、アルカリ媒体中のアルキル置換フェノール又は無置換フェノールとアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドとの縮合によって、或いは二官能性フェノールジアルコールの縮合によって作ることができる。アルキル置換フェノールのアルキル置換基は、通常1〜約10個の炭素原子を含む。パラ位で1〜約10個の炭素原子を含有するアルキル基によって置換されているジメチロールフェノール又はフェノール樹脂が好ましい。有用な商業的に入手可能なフェノール樹脂としては、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及びブロモメチル化アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。
【0072】
一実施形態では、フェノール樹脂硬化剤は、下記一般式で表される。
【化3】

式中、Qは、-CH2-及び-CH2-O-CH2-から成る群より選択される二価基であり;mはゼロ又は1〜20の正整数であり、かつR’は水素又は有機基である。好ましくは、Qが二価基-CH2-O-CH2-であり、mがゼロ又は1〜10の正整数であり、かつR’が水素又は20個未満の炭素原子を有する有機基である。別の実施形態では、好ましくはmがゼロ又は1〜5の正整数であり、かつR’が4〜12個の炭素原子を有する有機基である。他の好ましいフェノール樹脂は、米国特許第5,952,425号にも開示されている。
【0073】
この発明の加工可能なゴム組成物は、エラストマー材料、熱可塑性ポリマー材料、及び硬化剤に加え、任意に、安定剤、加工助剤、硬化促進剤、充填材、顔料、接着剤、粘着付与剤、及びワックスのような他の添加剤を含んでよい。
【0074】
種々の実施形態では、可塑剤及び離型剤を含む種々多様な加工助剤を使用する。加工助剤の非限定例としては、カラヌバ(Caranuba)ワックス、ジオクチルフタレート(DOP)及びジブチルフタレートシリケート(DBS)のようなフタレートエステル可塑剤、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸ナトリウムのような脂肪酸塩、ポリエチレンワックス、及びケラミド(keramide)が挙げられる。いくつかの実施形態では、高温加工助剤が好ましい。このような加工助剤としては、限定するものではないが、C10-C28アルコールのブレンドのような線状脂肪アルコール、有機シリコーン、及び官能化ペルフルオロポリエーテルが挙げられる。いくつかの実施形態では、本組成物は約1〜約15質量%、好ましくは約5〜約10質量%の加工助剤を含む。
【0075】
種々の実施形態では、酸受容体化合物を硬化促進剤又は硬化安定剤として使用する。好ましい酸受容体化合物としては、二価金属の酸化物及び水酸化物が挙げられる。非限定例としては、Ca(OH)2、MgO、CaO、及びZnOが挙げられる。
【0076】
充填剤の非限定例としては、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、カーボンブラック、シリカ、二酸化チタン、クレー、タルク、ガラス繊維、ヒュームドシリカ、及び鉱物繊維、ウッドセルロース繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、及びアラミド繊維(Kevlar)のような不連続繊維のような有機及び無機の両充填剤が挙げられる。加工添加剤のいくつかの非限定例としては、ステアリン酸及びラウリン酸が挙げられる。好ましくは動的加硫前のカーボンブラック、エクステンダー油、又は両者の添加が特に好ましい。カーボンブラック充填剤の非限定例としては、SAFブラック、HAFブラック、SRPブラック及びAustinブラックが挙げられる。カーボンブラックは、引張り強さを高め、エクステンダー油は加工性、油膨潤に対する耐性、熱安定性、ヒステリシス、価格、及び永久ひずみを改良しうる。好ましい実施形態では、カルボキシブロックのような充填剤は、本発明の組成物の全質量の約40質量%まで構成する。好ましくは、本組成物は、約1〜約40質量%の充填剤を含む。他の実施形態では、充填剤が本組成物の約10〜約25質量%を構成する。
【0077】
本明細書では一般的に“ゴム”とも呼ぶ加硫エラストマー材料は、好ましくは連続的な熱可塑性ポリマーマトリックス中に小粒子として存在する。いくつかの実施形態では、熱可塑性材料に対するエラストマー材料の量、硬化系、エラストマーの硬化のメカニズムと程度、及びミキシングの量と程度によって、共-連続形態が存在する。好ましくは、エラストマー材料は、最終組成物中で完全に架橋/硬化する。
【0078】
部分的硬化は、熱可塑性材料とエラストマー材料のブレンドに適切な硬化剤又は硬化系を添加し、かつ加硫条件下、所望の程度にゴムを加硫又は硬化させることによって達成することができる。エラストマーは動的加硫のプロセスで架橋される。用語動的加硫は、硬化性ゴムが熱可塑性成分の融点以上の温度で十分に高せん断の条件下で加硫される、熱可塑性組成物中に含まれるゴム(ここではフルオロカーボンエラストマー)の加硫又は硬化プロセスを意味する。従って、ゴムは、熱可塑性マトリックス内で同時に架橋かつ分散する。ロールミル、モリヤマミキサー、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、連続ミキサー、一軸及び二軸-スクリュー押出機のような混合押出機などのような通常の混合装置内、硬化剤の存在下、高温でエラストマー及び熱可塑性成分に機械的エネルギーを加えて混合することによって動的加硫を達成する。動的に硬化した組成物の有利な特徴は、それらが完全に硬化した後でさえ、該組成物を押出成形、射出成形及び圧縮成形のような通常のプラスチック加工法で加工かつ再加工できることである。好ましくは、スクラップ又はフラッシングを利用して再加工する。
【0079】
加硫温度での加熱及び混合又は素練りは、好ましくは数分以下で加硫反応を完了するのに十分であるが、より短い加硫時間が望ましい場合、より高い温度及び/又はより高いせん断力を用いてよい。加硫温度の好適な範囲は、熱可塑性材料のほぼ融解温度(典型的に約120℃)〜約300℃以上である。典型的に、この範囲は約150℃〜約250℃である。加硫温度の好ましい範囲は、約180℃〜約220℃である。加硫が起こり、又は完了するまで中断せずに混合を続けることが好ましい。
【0080】
本発明の加工可能なゴム組成物は、バッチ法又は連続法で製造できる。バッチ法では、所定装填量のエラストマー材料、熱可塑性材料及び硬化剤を混合装置に加える。典型的なバッチ手順では、まずエラストマー材料と熱可塑性材料を混合し、ブレンドし、素練りし又は他のやり方で、熱可塑性材料の連続相内に所望粒径のエラストマー材料が得られるまで物理的に混ぜ合わせる。エラストマー材料の構造が所望どおりになったら、機械的エネルギーを加え続けながら硬化剤を添加してエラストマー材料と熱可塑性材料を混ぜ合わせる。部分的な硬化は、硬化剤の存在下、エラストマーを完全に硬化するのに必要な時間より短い時間、熱可塑性材料とエラストマー材料の混合配合物を加熱し、或いは加熱し続けることによって達成する。
【0081】
熱可塑性材料が軟化して流れる温度でエラストマー材料と熱可塑性材料を混合することが好ましい。このような温度が硬化剤が活性化する温度未満の場合、バッチ法の最初の粒子分散工程時に、硬化剤を混合物の一部にしてよい。いくつかの実施形態では、硬化剤を硬化温度未満の温度でエラストマー及びポリマー材料と混ぜ合わせる。所望の分散が達成したとき、温度を上げて硬化を達成することができる。一実施形態では、エラストマー中に予め配合された硬化剤を含有する商業的に入手可能なエラストマー材料を使用する。しかし、硬化剤が最初の混合工程の温度で活性化する場合、熱可塑性マトリックス中のエラストマー材料の所望の粒度分布が達成されるまで硬化剤を除外することが好ましい。別の実施形態では、エラストマー材料と熱可塑性材料を混合した後に硬化剤を添加する。好ましい実施形態では、全混合物を機械的に撹拌、扇動、又は他のやり方で混合し続けながら熱可塑性材料中のエラストマー材料の混合物に硬化剤を添加する。
【0082】
連続法も使用することができる。一実施形態では、二軸スクリュー押出装置、共回転又は反回転スクリュー型は、二軸スクリュー装置のモジュール成分で構成される材料添加用ポートと反応チャンバーを備える。第1ポートと第2下流ポートを有する二軸スクリュー押出機を用いて、熱可塑性フルオロカーボンエラストマー組成物を基材上に接着させるこのような一方法は、以下の工程を含む。
(a)時間T90の特徴がある未硬化フルオロカーボンエラストマーと、熱可塑性材料との混合物を前記押出機の前記第1ポート内に供給する工程;
(b)前記フルオロカーボンエラストマー用の硬化剤を前記押出機の前記第2ポート内に供給する工程;
(c)前記押出機内でT90以下の時間、前記硬化剤、フルオロカーボンエラストマー、及び熱可塑性材料を混合して、該フルオロカーボンエラストマーの部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを製造する工程;
(d)前記部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを前記押出機から押し出す工程;
(e)前記熱可塑性加硫ゴムを前記基材上に塗布する工程;及び
(f)前記基材上の前記熱可塑性加硫ゴムの硬化を完全にする工程。
【0083】
一実施形態では、熱可塑性材料とエラストマー材料(未硬化樹脂又はゴムとして)をスクリュー押出機内に一緒に第1ホッパーからフィーダー(ロス-イン-ウエイトフィーダー又は容積計量フィーダー)で挿入してこれら材料を混ぜ合わせる。好ましくは温度及びスクリューパラメーターを調整して、熱可塑性材料マトリックス内で所望の混合と未硬化エラストマー成分の粒度分布を達成するために適した温度とせん断力を与える。より長いか又は短い長さの押出装置を与えるか、或いは混合段階中に通過するエラストマー材料と熱可塑性材料の混合物のスクリュー回転速度を制御することによって、混合持続時間を制御する。混合の度合は、強い、中程度、又は穏やかなスクリュー設計のように、スクリューシャフト内の混合スクリュー要素の構成によって制御してもよい。そして、熱可塑性材料とエラストマー材料の混合物が二軸スクリュー押出経路を下流に移動し続ける間に下流ポートで、サイドフィーダー(ロス-イン-ウエイトフィーダー又は容積計量フィーダー)を用いて該混合物に硬化剤を連続的に添加することができる。硬化剤添加ポートの下流で、混合パラメーターと通過時間を上述したように変えることができる。せん断速度、温度、混合持続時間、混合スクリュー要素構成、及び硬化剤を添加するタイミングを調整することによって、本発明の部分的に硬化した動的加硫ゴムを連続法で調製することができる。バッチ法におけるのと同様、硬化剤、一般的にフェノール又はフェノール樹脂硬化剤を含んで商業的に配合されたエラストマー材料でよい。
【0084】
本発明の組成物及び物品は、問題のゴム状組成物を形成するのに十分な量の加硫エラストマー材料(“ゴム”)を含む。すなわち、それらは望ましい組合せのフレキシビリティー、軟らかさ、及び圧縮ひずみを示す。好ましくは、本組成物は、ゴムと熱可塑性ポリマーを合わせた100質量部当たり少なくとも約25質量部のゴム、好ましくは少なくとも約35質量部のゴム、さらに好ましくは少なくとも約40質量部のゴム、なおさらに好ましくは少なくとも約45質量部のゴム、さらに好ましくは少なくとも約50質量部のゴムを含むべきである。熱可塑性加硫ゴム中の硬化したゴムの量は、一般的にゴムと熱可塑性ポリマーを合わせた全質量の約5〜約95質量%、好ましくは約35〜約95質量%、さらに好ましくは約40〜約90質量%、さらに好ましくは約50〜約80質量%である。
【0085】
本発明の加工可能なゴム組成物中の熱可塑性ポリマーの量は、一般的にゴムと熱可塑性ポリマーを合わせた全質量の約5〜約95質量%、好ましくは約10〜約65質量%、さらに好ましくは約20〜約50質量%である。
【0086】
本発明の複合品中の加工可能なゴム組成物は、硬化ゴムと熱可塑性ポリマーを含む。本組成物は、ゴムが非加硫マトリックス内で微細かつよく分散したゴム粒子の形態の均一混合物である。しかし、この発明の熱可塑性加硫ゴムは、不連続相を含有するものに限定するものと解釈すべきでなく、事実上、この発明の組成物は共-連続形態のような他の形態をも含みうる。特に好ましい実施形態では、ゴム粒子は約50μm未満、さらに好ましくは約25μm未満、なおさらに好ましくは約10μm以下、なおさらに好ましくは約5μm未満の平均粒径を有する。
【0087】
完全に硬化した材料は、好ましくは、ASTM D1566で定義されているように、室温でその元の長さを2倍まで伸ばして1分間保持後離した後1分以内でその元の長さの1.5倍未満に収縮する程度にゴム様である。また、これら材料はASTM D412に示される引張りひずみ要求を満たし、かつそれらはASTM D395による圧縮ひずみの弾性要求も満たす。
【0088】
複合品は、基材に接着した上述したとおりのゴム組成物で構成される。上記部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムとの接触前に基材上に接着剤層を供給してよい。接着剤層は、金属、プラスチック、又はセラミックのような基材にフルオロエラストマー材料を結合させるのに好適な接着剤組成物で構成される。一般的に、接着剤層は、結合する面の一方又は両方と反応して結合力を高める傾向があるカップリング剤を含む。このようなカップリング剤は、通常2つの化学的官能性を有し、一方の官能性は基材表面と相互作用し、もう一方の官能性は結合界面のフルオロエラストマー成分と相互作用する。
【0089】
カップリング剤は、構造“R-M-Y”で表すことができ、式中、Rはポリマーと反応又は相互作用する基であり、Yは金属、プラスチック、若しくはセラミック又は基材を構成する他の材料と反応又は相互作用する基である。基材が金属を含む場合、Y基は、通常加水分解感受性の形態である。Y基は、酸性又はアルカリ性条件下で離れて、より反応性のヒドロキシ官能性を生じる傾向がある。この種のカップリング剤の例は、商業的に入手可能なシランである。
【0090】
シランは、一般構造R-Si-(OR’)3を有し、式中、Rは上記定義どおりであり、かつR’は一般的にメチル、エチル、又は低級アルキルである。好適なR基としては、ビニル、アミノプロピル、メタクリルオキシ、メルカプト、及びグリシドキシが挙げられる。接着剤組成物中で使うシランカップリング剤の非限定例は、ビニルトリエトキシシラン及びγ-アミノプロピルシランである。一局面では、金属及び他の基材にフルオロカーボンエラストマーを結合するための商業的に入手可能な接着剤を使用し、かつ本発明の方法を実施することによってその活性と効率を向上させる。
【0091】
好ましくはほとんど又は全くエラストマー特性のない樹脂又はゴムの形態で未硬化ゴム又はエラストマーを供給する。好ましくは材料にフレキシビリティー、軟らかさ、弾力性、圧縮ひずみ等のような有利な特性を与えるため、樹脂又はゴムを硬化又は架橋させる。このような硬化は、エラストマーの物理的性質が十分に発現するまでの時間、選択した温度で行う。硬化の間、ゴム又は樹脂の非エラストマー特性から、完全に硬化したゴムのエラストマー特性に物理的性質が徐々に変化する。硬化の進行をたどる便利な方法は、該材料の粘度を時間の関数として測定することである。硬化ゴム系は、硬化の開始から完了までの粘度の増加によって特徴づけられる。
【0092】
一局面では、部分的に硬化したフルオロカーボンエラストマー組成物を基材に塗布し、フルオロカーボンエラストマー材料と固体基材が接触している間に硬化を完全にすることによって、両者間の結合を高める。実験的に、これはフルオロカーボンエラストマー組成物のエラストマー特性を完全に発現させるのに必要な時間より短い時間、該フルオロカーボンエラストマー組成物を動的に硬化させることによって行うことができる。例えば、T90以下の時間、フルオロカーボンエラストマー材料を硬化させることができる。ここで、T90は、反応温度に依存し、反応混合物の粘度が、反応混合物が完全に硬化したゴムに達する値の90%だけ増加する時間として決定される。好ましい実施形態では、例えばT90マイナス30秒、又はT90マイナス60秒のようなT90未満の時間、フルオロカーボンエラストマー組成物を硬化させる。このような部分的に硬化した状態では、該材料を押し出し、又はインサーション成形することができるが、さらなる硬化時間まで、完全なエラストマー特性は発現しない。
【0093】
本発明の熱可塑性加硫ゴムのフルオロカーボンエラストマー成分を硬化させることによって、T90のような硬化パラメーターを別個の実験で決定できる。平均粘度は、RPA(ゴム加工分析器(Rubber Processing Analyzer))で分かる。T90、Ts2、及び他のパラメーターは日常的に決定しうる。本発明のフルオロカーボンエラストマー材料では、典型的温度でのT90は、1分未満から、2〜5分までのような数分の範囲である。従って、フルオロカーボンエラストマー成分に、基材に塗布するための部分的に硬化した状態をもたらすための硬化時間は、一般にかなり短い。このことは、多くの状況では、後述する連続又は半連続法で、部分的硬化と基材への塗布を行うことが実験的により容易であることを意味している。
【0094】
無ポストキュア(post cure)又は低ポストキュアの、ビスフェノールで硬化する系の硬化時間T90は、上述したようにおよそ2〜5分である。ペルオキシドによって硬化する系は、より低いT90を有する傾向がある。典型的に、ペルオキシド硬化系のT90は1分未満でありうる。
【0095】
一般的に、本発明の部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムは、ゴムと熱可塑性材料の動的加硫ゴムを製造する普通の手順に従って製造することができる。特に、この方法は、同時係属の米国特許出願番号10/620,213で開示される方法と同様であるが、より短い時間、硬化を行い、部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムの合成を達成することが異なる。バッチ法では、ミキサー内でエラストマー、熱可塑性材料及び硬化剤を一緒に混合し、後で使用するために部分的に硬化した材料を収集する。連続又は半連続法は、二軸スクリュー押出機内で行い、混合時間は混合速度とバレルの長さによって決まる。部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムは、ストランドダイを通じて二軸スクリュー押出機から押し出し、水浴で冷却し、かつ後で使用するためペレットに切断する。代わりに、部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを二軸スクリュー押出機から、基材への塗布用の共-押出ダイ又はインサーション型内に直接押し出すことができる。
【0096】
部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを基材上に塗布した後、エラストマー組成物が基材と接触している間に、部分的に硬化したエラストマー組成物のエラストマーの硬化を完全にする。これは、塗布後高温で、共押出した又はインサーション成形した基材/エラストマー複合品をさらに硬化させることによって達成できる。インサーション成形の場合、硬化を完全にするために十分な時間、高温で型内に複合品を留める。シートやホースのような共押出品の場合、該プロセスは、硬化を完全にするために十分な時間と温度で共押出生成物を加熱オーブンに通す工程を備える。基材と接触しながら硬化を完全にする間に、硬化性エラストマーが接着剤層中のカップリング剤と相互作用し、或いはカップリング剤との反応を惹起すると考えられる。この相互作用が結合を増強させると考えられる。
【0097】
本発明を好ましい実施形態について上述した。さらなる非限定例を以下の実施例で与える。
【実施例1】
【0098】
種々のフルオロカーボンエラストマーの硬化時間T90をRPA(ゴム加工分析器)で測定する。ビスフェノール硬化性のターポリマーエラストマーであるDyneon(登録商標)BRE 7231Xについて測定すると、T90は124秒である。無(低)ポストキュアビスフェノール硬化性ターポリマーエラストマーであるTecnoflon(登録商標)FOR 80HSについて測定するとT90は217秒である。ペルオキシド硬化性ターポリマーエラストマーであるTecnoflon P457のT90を測定すると26秒であり、Tecnoflon P575について測定すると、T90は47秒である。Dyneon材料は3Mから入手でき、Tecnoflon材料はSolvayから入手可能である。
【実施例2】
【0099】
ペルオキシド硬化性エラストマーによるバッチ手順
ペルオキシド硬化性FKMエラストマーで部分的にFMK-TPVを作る手順は以下のとおりである。
【0100】
バッチミキサー内、高温(120〜200℃)でフルオロカーボンエラストマーとプラスチックを融解させる。温度は、ペルオキシド硬化剤の分解温度が低いため(通常80〜200℃)ビスフェノール硬化性FKMを基礎とするFKM-TPVの温度より低い。バッチ混合物中に充填剤、硬化剤パッケージ及び加工助剤を添加する。均一に混ざり、かつ部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴム(TPV)が得られるまで(通常、50RPMのローター速度で1〜3分の混合時間)混合を続ける。混合時間はT90硬化時間によって決まり、典型的なペルオキシド硬化性エラストマーでは、180℃で30〜90秒である。硬化時間は、ペルオキシド硬化剤の種類にも依存する(T1/2)。例えばTrigonox145のT1/2は182℃であり、Perkadox TMLのT1/2は80℃である。より低温では硬化速度が遅いので、T1/2より低い温度を使用することによって混合時間を延長することができる。
【0101】
射出成形又は押出成形プロセスでは、バッチプロセスTPVの大きな塊を粉砕する。インサート成形操作用のシランベース接着剤被覆金属ハウジングを準備する。接着剤層を噴霧するか、或いはハウジングを接着剤中に浸漬又は沈めてよい。接着剤被覆金属ハウジングを型内に挿入する。ハウジングをオーブン内で100〜250℃に予備加熱する。射出成形機を加熱してTPVを120〜200℃で融かす。TPV材料を接着剤被覆金属ハウジング上に射出し(射出圧力1.4×107〜2.1×107Pa(2000〜3000psi))、一緒に5〜180秒間加圧下(5.5×106〜1.0×107Pa(800〜1500psi))で維持して接着剤層と溶融TPV材料を一緒に接触かつ反応させて結合層を進展させる。
【0102】
成形試料を型から離し、直ちに或いは短い後-加熱処理(例えば、オーブン内230℃で1時間)後に結合特性を評価する。
【0103】
引き離し試験後、破損した領域をSEM及びEDAXで調べ、それぞれ走査画像及びX線による元素分析で破損態様を調査する。例えば、走査SEM画像を鉄(Fe)、ケイ素(Si)、フッ素(F)、リン(P)等のようなそれぞれ別個の元素の地図と重ねることができる。
【実施例3】
【0104】
ビスフェノール硬化性フルオロカーボンエラストマーによるバッチ手順
部分的に硬化したFMK-RPVをビスフェノール硬化性FKM(定型的及び無ポストキュアの両方)を作る手順は以下のとおりである。
【0105】
フルオロカーボンエラストマーと熱可塑性材料をバッチミキサー内、高温(例えば220〜250℃)で融解させる。バッチ混合物中に充填剤、硬化剤パッケージ、及び加工助剤を添加する。均一に混ざり、かつ部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムが得られるまで(通常50RPMローター速度で1〜3分の混合時間)混合を続ける。混合時間はT90硬化時間によって決まり、典型的なペルオキシド硬化性エラストマーでは2〜5分である。例えば、FKMコポリマー及びターポリマーエラストマーのT90は2〜3分であり、典型的な無ポストキュアエラストマーのT90は3〜4分である。バッチ処理したFKM-TPVの大きい塊を射出成形又は押出成形プロセス用に粉砕する。実施例2のように、シランベース接着剤被覆金属ハウジングを準備する。
【0106】
実施例2のように、TPVとハウジングをインサーション成形する。成形試料を型から離し、直ちに或いは短いポスト-加熱処理(通常オーブン内230℃で22時間)後に結合挙動について試験する。無ポストキュア添加剤では、約1時間のポスト加熱処理を用いる。
【実施例4】
【0107】
連続法
二軸スクリュー押出機内で連続法によって、部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを製造することができる。
【0108】
フルオロカーボンエラストマーを熱可塑性材料粒子の大きさに粉砕する。粉砕したエラストマーと熱可塑性材料ペレットを混合する。粉砕したエラストマーと熱可塑性材料ペレットの混合物を二軸スクリュー押出機のホッパー内に注ぐ。スクリューバレル温度を熱可塑性材料の融点以上(例えば約200〜280℃以上)に設定する。エラストマーと熱可塑性材料の混合物を加熱バレル中に供給し始める。スクリューが回転して混合物が二軸スクリュー押出機の正面に押し出されるとき、エラストマーと熱可塑性材料が融解、圧縮、かつ混合する。
【0109】
下流供給ステーションでサイドフィーダーを通じて硬化剤、硬化促進剤、加工助剤、及びカーボンブラックの混合物を添加する。粉末混合物の添加前(例えば、200rpmかつ240℃でトータル5〜10分)にエラストマーと熱可塑性材料の混合物を完全に融解かつ均一に混合すべきである。
【0110】
下流の二軸スクリュー押出機のバレル内にサイドフィーダーからエラストマー、熱可塑性材料、硬化剤、硬化促進剤、及び他の添加剤を加える。混合の時間は、スクリュー速度とバレルの長さによって決まる。混合の時間は、T90以下でなければならない。ここで、T90はエラストマーの硬化パラメーターである。
【0111】
二軸スクリュー押出機バレルの最後でストランドダイを通じて部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを放出する。この押出物を冷却用水浴に通し、適切な長さに切断して次の処理工程用のペレットを与えることができる。
【0112】
ビスフェノール硬化性エラストマーでは、典型的に、硬化剤の添加前約2分の押出機バレル内滞留時間を用いる。典型的なスクリュー速度は約240℃のバレル温度で200rpmである。残りの成分を下流フィーダーで添加後、バレル内滞留時間は通常30秒未満である。好ましくは、ストランドダイから放出後、押出物を冷却水浴でクエンチ又は急冷する。
【0113】
ペルオキシド硬化性エラストマーでは、エラストマーと熱可塑性材料を押出機バレル内で150℃のバレル温度、200rpmのスクリュー速度で約2分間混合後、硬化剤を添加する。これらパラメーターは、バレル温度が一般的にいくらか低いことを除き、ビスフェノール硬化性エラストマーで用いるパラメーターと同様である。典型的に、硬化剤パッケージの添加後バレル内滞留時間は30秒未満である。硬化剤パッケージは、粉末形態又はペレットとしてマスターバッチ形態で添加することができる。ペルオキシド硬化性エラストマーの典型的なT90硬化時間は、180℃で30〜90秒である。より低温で硬化させることでT90時間を長くすることができる。例えば、150℃のコンパウンド温度では、典型的なT90硬化時間は約2〜3分である。以前と同様に、好ましくはストランドダイから押し出した後、押出物を冷却水浴内でクエンチ又は急冷する。
【実施例5】
【0114】
多層共-押出成形手順
複数のスクリュー押出機(例えば、2〜5台の押出機;いくつかの実施形態では、3台の押出機を使用する)を多層ダイに接続する。水性接着剤では、この結び層押出機を液体連続射出装置で置き換えることができる。
【0115】
各層材料のため押出機のバレルを加熱する。部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムの押出機の典型的な温度は240℃であり、Pebax(登録商標)4033のようなナイロンベース熱可塑性エラストマー基材の典型的な温度は200℃である。
【0116】
内層押出機と、接着剤連続射出装置を含む外層押出機を同時に始動させる。多層押出機ストランドが冷却水浴内の共-押出ダイから出るとき、それをクエンチする。
【0117】
典型的に、一軸スクリュー押出機の大きさは直径約2.5〜5cm(約1〜2インチ)であり、該スクリューの速度は20〜100rpmである。スクリューの大きさと速度は各層の厚さと共-押出速度によって決まる。
【0118】
共-押出生成物は、シートの形態、又はホースのような同心押出生成物の形態でよい。共-押出成形後、部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムの硬化を高温で完全にする。共-押出複合品は、エラストマー又はプラスチック基材に結合した完全に硬化したフルオロカーボンエラストマー熱可塑性成分を含む。例えばホース用に同心的に共-押出して複合品を形成する場合、硬化したフルオロカーボンエラストマー組成物の典型的な配置はホースの内層であり、エラストマー又は熱可塑性材料はホースの外層を構成する。シート複合品では、結び層はフルオロカーボンエラストマーと基材との間に与えることができる。基材として使用可能なエラストマーの非限定例としては、EPDM、NBR、HNBR、ACM、AEM、FKM、PU、FFKM、及びシリコーンエラストマーが挙げられる。基材として役立ちうる熱可塑性材料の非限定例としては、ポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル、pvc、フッ素樹脂、及びプラスチックエラストマー(商標名Hytrel(登録商標)、Pebax(登録商標)、Santoprene(登録商標)、Pellethane(登録商標)、及びKraton(登録商標)で商業的に入手可能な熱可塑性ポリウレタン及び熱可塑性エラストマーのような)が挙げられる。結び-層は、硬化したフルオロカーボンエラストマー組成物をエラストマー/熱可塑性材料層と結合できる接着剤で構成される。シラン又は無水マレイン酸を基礎とする接着剤組成物はこの目的のため商業的に入手可能である。
【0119】
部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを共-押出ダイに与える一軸スクリュー押出機は、連続法で熱可塑性加硫ゴムを製造するために用いられる二重バレル二軸スクリュー押出機から直接供給することもできる。所望により、最初に部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムのストランドを水浴内で冷却せずに、二軸スクリュー押出機の出力を直接共-押出装置の多層押出ダイ中への入力に使用することができる。多層押出装置にコンパウンディング押出機を接続することによって、ペレット化、再融解、及び再-押出工程を排除することができる。
【実施例6】
【0120】
金属基材へのフルオロカーボンエラストマー組成物の結合
実施例6A−部分的に硬化したペルオキシド硬化性エラストマーの結合
【0121】
以下の成分を使用する:80部のTecnoflon P757(Solvayからのペルオキシド硬化性フルオロエラストマー);25部のKynar Flex 2500-04(Atofina Chemicalsからのフッ化ビニリデンベース熱可塑性樹脂);5部の酸化亜鉛;10部のカーボンブラック;及び20部のマスターバッチ。Tecnoflon P575とKynar Flex 2500-04を、均一混合物を形成するように混合しながらバッチミキサー内150℃で5分間融解させる。酸化亜鉛を添加する。バッチミキサー内にマスターバッチを加え、30秒間混合する(マスターバッチは、別個のバッチミキサー内80℃で100部のTecnoflon P757、15部のLuperco 101 XL、及び20部のTAICの75%分散系を混合して調製する)。バッチミキサーから混合物を放出し、冷却し、約1〜3mmの大きさの小粒子又はペレットに切断する。射出成形機のホッパー内にペレットを注ぐ。射出成形バレルを150℃に加熱する。シール用ハウジングのような金属基材を市販のシランベース接着剤で製造業者の使用説明書に従って被覆する。接着剤被覆金属ハウジングを型内に挿入し、金属ハウジング上に溶融混合物を射出する。ハウジングを約200℃のオーブン内で予備加熱するか、或いは射出前に型内で加熱してよい。この予備加熱は、接着剤層とフルオロカーボン熱可塑性加硫ゴムとの間の接着を向上させる傾向がある。射出後、1〜2分間加圧下で(5.5×106〜1.0×107Pa(800〜1500psi))一緒に型を維持する。この時間の間に、材料が完全に硬化する。
【0122】
実施例6B−比較例
【0123】
実施例6Bは、30秒に代えて3〜5分間、マスターバッチ、酸化亜鉛、Tecnoflon、及びKynar材料の混合を行うこと以外、実施例6Aと同様に行う。
【実施例7】
【0124】
実施例7A−部分的に硬化したビスフェノール硬化性エラストマーとの結合
【0125】
使用した成分は、100部のTecnoflon FOR 80HS(Solvayからのビスフェノール硬化剤を樹脂中に配合したビスフェノール硬化性フルオロカーボンエラストマー);25部のHylar MP-10(Solvayからのフッ素樹脂);3部の酸化マグネシウム;30部のカーボンブラック;1部のStruktol WS-280(Struktolからの加工助剤);及びTecnoflon FPA-1(Solvayからの高温加工助剤)である。Tecnoflon FOR 80HSとHylar MP-10をバッチミキサー内190℃で1分間ポリマーが均一に混ざるまで融かす。残りの成分を加え、さらに1分間190℃で成分がよく分散するまで撹拌する。混合物をバッチミキサーから放出し、冷却し、1〜3mmのペレットに切断する。切断した混合物を射出成形ホッパー内に注ぐ。射出成形バレルを240℃に加熱する。接着剤被覆金属ハウジングを型内に挿入し、金属ハウジング上で混合物を射出成形する。型をオーブン内で又は型内で約250℃に予備加熱する。射出後、硬化が完了する時間、3〜5分間5.5×106〜1.0×107Pa(800〜1500psi)で型を結合させる。
【0126】
実施例7B−比較
【0127】
手順は、残りの成分を添加する前、1分に代えて5〜10分間混合を行うことを除き、実施例7Aと同様である。
【実施例8】
【0128】
手順は、成分が70部のDyneon FE840(Ausimontからの組込み硬化ポリマー)、30部のDyneon BRE 7231X(Dyneonからの塩基耐性エラストマー)、25部のHylar MP-10、6部のRhenofit CF(Rhein Chemieからの水酸化カルシウム)、3部の酸化マグネシウム、1部のStruktol WS-280、10部のカーボンブラック、及び1部のTecnoflon FPA-1であることを除き、実施例7Aと同様である。
【0129】
すべての実施例6〜8で、フルオロカーボンエラストマー組成物を基材と接触させて完全に硬化させた後、エラストマーの基材への接着力を引張り試験機で試験して分離強さを測定する。その後、分離した領域を調べて破損態様を評価する。部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを基材上に射出して調製した複合品(実施例6A、7A、及び8A)の破損領域は凝集破壊を示す。これは、エラストマーと基材との間の結合ではなくエラストマー材料自体が破壊したことを示す。これは、相対的に高度の接着力と結合強度を示す。他方、完全に硬化したエラストマーを射出して調製した複合品(実施例6B及び7B)の破損領域は結合破壊を示す。完全に硬化した場合、引張り試験の間にほとんどのエラストマーが基材から除去される。これは、破損態様がエラストマー材料自体内ではなく結合内だったという点で、相対的に弱い接着力又は結合強度を示す。破損態様を可視的に観察し、かつ走査型電子顕微鏡によってのように顕微鏡的検査で確認することができる。さらに、引張り試験後EDAXで複合品の元素地図を決定することによって破損態様を確認することができる。例えば、エラストマーがまだ基材表面に接着している領域は高いフッ素含量を特徴とし、接着剤層を有する基材は相対的に高レベルの鉄及びケイ素を特徴とする。典型的に、凝集破壊したエラストマー層の元素地図は高いシリコーン含量を示す。ケイ素が接着剤層からエラストマー表面層中に移動して、エラストマーと接着剤層との間の界面における接着力を高める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体基材に熱可塑性エラストマー組成物を接着させる方法であって、以下の工程:
(a)熱可塑性材料と硬化剤の存在下、フルオロエラストマーを完全に硬化させるのに必要な時間より短い時間フルオロエラストマーを動的に加硫させて、部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを形成する工程;
(b)前記基材に接着剤層を塗布する工程;
(c)前記部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを前記接着剤層に接触させる工程;及び
(d)前記熱可塑性加硫ゴムの硬化を完全にする工程;
を含む方法。
【請求項2】
前記接触プロセス要素(c)が、前記部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを前記接着剤被覆基材上にインサーション成形する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記基材が金属である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記基材がプラスチックである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記接触プロセス要素(c)が、前記部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを前記基材と共-押出する工程を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記塗布プロセス要素(b)及び前記接触プロセス要素(c)が、前記接着剤層、前記部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴム、及び前記基材を共-押出する工程を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記共-押出の間に、液体連続射出装置で前記接着剤層を塗布する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記硬化剤がビスフェノールを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記硬化剤がペルオキシドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
複合品の製造方法であって、以下の工程:
(a)部分的に硬化したフルオロエラストマーの不連続相と、熱可塑性ポリマー材料の連続相とを含む、部分的に硬化した熱可塑性エラストマー組成物を基材上に塗布する工程;及び
(b)前記部分的に硬化した熱可塑性エラストマー組成物を硬化させる工程;
を含む方法。
【請求項11】
前記部分的に硬化した熱可塑性エラストマー組成物が、フルオロエラストマーと熱可塑性材料の部分的に硬化した動的加硫ゴムを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記フルオロエラストマーがフッ化ビニリデンのコポリマーである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
さらに、前記フルオロエラストマー、前記熱可塑性材料、及び硬化剤を一緒に混合すると同時に、加熱して前記熱可塑性材料の存在下で前記フルオロエラストマーの部分的な硬化を達成する工程を含むプロセスによって、部分的に硬化した熱可塑性エラストマー組成物を形成する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記熱可塑性材料がフッ素樹脂を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記熱可塑性材料が非フッ素含有熱可塑性樹脂を含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記熱可塑性材料が、部分的にフッ素化した熱可塑性樹脂を含む、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記硬化剤がビスフェノールを含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記硬化剤がペルオキシドを含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
前記基材が固体支持体上の接着剤層を含み、かつ前記部分的に硬化した組成物を前記接着剤層上に塗布する、請求項10記載の方法。
【請求項20】
前記塗布プロセス要素(a)が、前記部分的に硬化した組成物を前記基材上にインサーション成形する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項21】
前記塗布プロセス要素(a)が、前記部分的に硬化した組成物と前記基材を共-押出する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項22】
ポリマー複合品の製造方法であって、以下の工程:
(a)フルオロエラストマー不連続相と熱可塑性連続相を有する部分的に硬化した動的加硫ゴムを製造する工程;
(b)前記部分的に硬化した動的加硫ゴムを基材と共-押出する工程;及び
(c)前記共-押出した部分的に硬化した動的加硫ゴムの硬化を完全にする工程;
を含む方法。
【請求項23】
前記部分的に硬化した動的加硫ゴムと前記基材との間に接着剤層を共-押出する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記共-押出プロセス要素(b)中に、前記部分的に硬化した動的加硫ゴムと前記基材との間に液体接着剤を射出する、請求項22記載の方法。
【請求項25】
フルオロエラストマー樹脂、熱可塑性ポリマー材料、及び前記フルオロエラストマー樹脂と反応する硬化剤を一緒に混合すると同時に、前記フルオロエラストマーのT90以下に相当する時間加熱して前記フルオロエラストマー樹脂と硬化剤を反応させる工程を含むプロセスによって、前記部分的に硬化した動的加硫ゴムを製造する工程を含む、請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記フルオロエラストマー樹脂が、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、及びそれらの混合物から成る群より選択されるモノマーの未硬化コポリマーを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記硬化剤がビスフェノールを含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記硬化剤がペルオキシドを含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
硬化したフルオロエラストマー組成物を固体金属基材上に含んでなる複合品を型を用いて製造する方法であって、以下の工程:
(a)前記基材上に接着剤層を塗布する工程;
(b)前記型内に前記接着剤被覆基材を置く工程;
(c)部分的に硬化したエラストマー組成物をインサーション成形して、前記型内の前記基材を接触させる工程;及び
(d)前記エラストマー組成物の硬化を完全にする工程;
を含み、
前記部分的に硬化したエラストマーが、部分的に硬化したフルオロカーボンエラストマーを含んでなる不連続相と、フッ素含有熱可塑性材料を含んでなる連続相を含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
さらに、フルオロエラストマー樹脂、熱可塑性ポリマー材料、及び前記フルオロエラストマー樹脂と反応する硬化剤を一緒に混合すると同時に、加熱して前記樹脂と前記硬化剤を反応させる工程を含むプロセスによって、前記部分的に硬化したエラストマーを製造する工程を含み、前記樹脂は硬化時間T90の特徴があり、かつ前記硬化反応をT90未満の時間行うことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記混合工程を二軸スクリュー押出機内で行う、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記フルオロエラストマー樹脂が、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、及びテトラフルオロエチレンのコポリマーを含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記硬化剤がビスフェノールを含む、請求項30記載の方法。
【請求項34】
前記硬化剤がペルオキシドを含む、請求項30記載の方法。
【請求項35】
第1ポートと第2下流ポートを有する二軸スクリュー押出機を用いて、熱可塑性フルオロカーボンエラストマー組成物を基材上に接着させる方法であって、以下の工程:
(a)時間T90の特徴がある未硬化フルオロカーボンエラストマーと、熱可塑性材料との混合物を前記押出機の前記第1ポート内に供給する工程;
(b)前記フルオロカーボンエラストマー用の硬化剤を前記押出機の前記第2ポート内に供給する工程;
(c)前記押出機内でT90以下の時間、前記硬化剤、フルオロカーボンエラストマー、及び熱可塑性材料を混合して、該フルオロカーボンエラストマーの部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを製造する工程;
(d)前記部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを前記押出機から押し出す工程;
(e)前記熱可塑性加硫ゴムを前記基材上に塗布する工程;及び
(f)前記基材上の前記熱可塑性加硫ゴムの硬化を完全にする工程;
を含む方法。
【請求項36】
前記塗布プロセス要素(e)が、前記部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを前記基材含有型内にインサーション成形する工程を含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記部分的に硬化した熱可塑性加硫ゴムを前記基材と共-押出する工程を含む、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記フルオロカーボンエラストマーが、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、及びテトラフルオロエチレンのコポリマーを含む、請求項35記載の方法。
【請求項39】
前記硬化剤がビスフェノールを含む、請求項35記載の方法。
【請求項40】
前記硬化剤がペルオキシドを含む、請求項35記載の方法。
【請求項41】
前記熱可塑性材料がフッ素樹脂を含む、請求項35記載の方法。
【請求項42】
前記熱可塑性材料が部分的にフッ素化したフッ素樹脂を含む、請求項35記載の方法。
【請求項43】
前記熱可塑性材料が非-フッ素含有熱可塑性樹脂を含む、請求項35記載の方法。

【公開番号】特開2006−193677(P2006−193677A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8716(P2005−8716)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(591105775)フロイデンバーク − ノク ジェネラル パートナーシップ (3)
【Fターム(参考)】