フルオロポリマーナノ粒子コーティング組成物
フルオロポリマーコーティング組成物は、結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液に分散されたサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子の均質な混合物を含む。組成物は、サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有するラテックスを、結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂粒子を含有するラテックスとブレンドし、ブレンドされたラテックスを凝固し、乾燥し、乾燥したブレンドをフッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解することによって調製することができる。準均質組成物は、結晶質の乾燥サブミクロンフルオロポリマー粒子を、a)結晶質でない、すなわち非晶質の乾燥フッ素樹脂粒子およびフッ素樹脂粒子用の溶媒、またはb)結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液とブレンドすることによって調製することができる。開示されたコーティングをラビングすることによって、サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有する結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂結合剤上に連続またはほぼ連続したフルオロポリマー表面薄層が提供され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマーナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化材料を含有する組成物は、例えば米国特許第3,484,503号明細書、第4,339,553号明細書、第4,503,179号明細書、第4,713,418号明細書、第4,879,362号明細書、第4,904,726号明細書、第5,006,594号明細書、第5,109,071号明細書、第5,180,470号明細書、第5,194,335号明細書、第5,647,400号明細書、第5,772,755号明細書、第6,117,555号明細書、第6,160,053号明細書、第6,310,141 B1号明細書、第6,310,142 B1号明細書、第6,395,834 B1号明細書、第6,417,280 B2号明細書、第6,429,249 B1号明細書、第6,444,741 B1号明細書、第6,476,144 B1号明細書、第6,592,977 B2号明細書、第6,660,798 B1号明細書、第6,664,336 B1号明細書、第6,734,254 B1号明細書、第6,756,445 B1号明細書;米国特許出願公開第2003/0198769 A1号明細書、第2004/0019176 A1号明細書、第2004/0241323 A1号明細書、および第2004/0241395 A1号明細書;欧州特許第0 168 020 B1号明細書、第0 670 868 B1号明細書、および第0 708 797 B1号明細書;国際出願第01/77226 A1号パンフレット;特開昭47−18346号公報、特開昭57−107336号公報、特開昭58−90955号公報、特開平01−182388号公報、特開平08−295845号公報、特開平10−88061号公報、および特開平11−269426号公報;モーガン(Morgan)ら、「フッ素プラスチック添加剤による強化(Reinforcement with Fluoroplastic Additives)」、Rubber World(1991年5月)、ホイットマン(Whitman)ら、「配向成長材料の代替物としての高配向ポリ(テトラフルオロエチレン)薄膜(Highly oriented thin films of poly(tetrafluoroethylene) as a substitute for oriented growth of materials)」、Nature, 352, pp. 414 − 417 (1991)、およびウッド(Wood)ら、「新規フルオロポリマーコーティングの外部耐久性の予測(Predicting the exterior durability of new fluoropolymer coatings)」、J. Fluorine Chem., 104, pp. 63 − 71 (2000)に記載または開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、一態様では、フルオロポリマーコーティング組成物の作製方法であって、サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有するラテックスを、結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂またはフッ素プラスチック(以下、「フッ素樹脂」と総称する)粒子を含有するラテックスとブレンドするステップと、ブレンドされたラテックスを凝固し、乾燥するステップと、乾燥したブレンドをフッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解するステップとを含む方法を提供する。本発明は、別の態様では、フルオロポリマーコーティング組成物の作製方法であって、サブミクロンの乾燥結晶質フルオロポリマー粒子を、a)結晶質でない、すなわち非晶質の乾燥フッ素樹脂粒子、およびフッ素樹脂粒子用の溶媒、またはb)結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液とブレンドし、それによってフッ素樹脂粒子の溶媒希釈型溶液中フルオロポリマー粒子の準均質分散液(quasi−homogenous dispersion)を含むコーティング組成物を形成するステップを含む方法を提供する。本発明は、さらに別の態様では、フルオロポリマーコーティング組成物であって、結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液に分散されたサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子の均質貯蔵安定な混合物を含む組成物を提供する。本発明は、別の態様では、フルオロポリマーコーティング組成物であって、結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液に分散されたサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子の準均質な混合物を含む組成物を提供する。本発明は、さらに別の態様では、物品であって、支持体の上にサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有する結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂結合剤層、その上に連続またはほぼ連続した固化または硬化フルオロポリマー薄層を含む物品を提供する。
【0004】
本発明の上記その他の態様は、添付図面および本明細書から明らかになるであろう。しかし、いかなる場合にも、上記の概要は、権利請求の対象となる主題を限定するものとして解釈されるべきでない。この対象は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定されるものであり、審査手続中に補正することができる。
【0005】
様々な図面の同様な参照記号は同様な要素を示す。図面の要素は一定の縮尺ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
単数形(単語「a」、「an」、および「the」)は、「少なくとも1つ」と同義的に使用され、記述された要素の1つまたは複数を意味する。開示された被覆物品中の様々な要素の位置のため「上にある」、「上に」、「最上部の」、「下にある」などの配向用語を使用することによって、水平に配置された上向きの支持体に対する要素の相対的位置を意味する。開示された物品が、製造中または製造後に空間の特定の配向を有することは意図していない。
【0007】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「ポリマー」は、ポリマー、コポリマー(例えば、2つ以上の異なるモノマーから形成された、または形成可能なポリマー)、オリゴマー、およびその組合せを意味する。
【0008】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「フルオロポリマー」は、水素を含む有機液体に室温および標準圧力で少なくとも1重量%の程度には溶解しない(例えば、メチルエチルケトン(「MEK」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、酢酸エチル、またはN−メチルピロリジノン(「NMP」)のいずれにも溶解しない)高フッ素化またはパーフッ素化ポリマー材料を意味する。語句「結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂(less crystalline or amorphous fluororesin)」は、水素を含む有機液体(例えば、MEK、THF、酢酸エチル、またはNMPの1つまたは複数)に溶解するフッ素樹脂材料を意味する。このようなフッ素樹脂材料は、開示された組成物で組み合わされるフルオロポリマーより結晶質でない(示差走査熱分析を使用して決定された結晶融点ピークTmによって示されるような)構造をとり、または(示差走査熱分析を使用して決定して、測定可能な結晶融点がないということによって示されるような)非晶質構造をとる。簡潔にするため、「結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂」は、下記では単に「フッ素樹脂」と通常呼ばれる。用語「溶解する」および「溶液」は、一般的な意味で溶液を形成する溶解だけでなく、サブミクロンスケール、例えば、ナノスケールの懸濁液の形成を意味する。
【0009】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「溶媒」は、フッ素樹脂を溶解することができる、水素を含む有機液体を意味する。用語「溶媒希釈型の(solvent−forne)」は、組成物の他の材料用の担体として働き、このような他の材料を適切な支持体に薄膜の形で塗布することができる、1つまたは複数の揮発性溶媒を含むコーティング組成物を意味する。開示された溶媒希釈型コーティング組成物は、フッ素樹脂を単独では溶解することができない他の有機液体も含むことができ、水も含むことができる。ただし、このような他の有機液体および水の重量が溶媒の重量より少ないことを条件とする。
【0010】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「均質の(homogeneous)」は、新たに振盪し、内径が少なくとも40mmのガラス容器(例えば、125mlの円柱状ガラスジャー、125mlの四角形ガラスジャー、または100mlのホウケイ酸ガラスビーカー)に配置し、室温で少なくとも4時間放置した場合に、(わずかな濃度グラデーションの陰影の差異または他の印を示すことはあるかもしれないが)視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層を示さない組成物を意味する。用語「準均質(quasi−homogeneous)」は、新たに振盪し、このようなガラス容器に配置して30分以内に視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層を示さないが、室温で少なくとも4時間放置した場合に視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層を示す組成物を意味する。
【0011】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「曇りのない」は、霧がかかったように見えない、またはルビーレーザーポインタービームを視覚的に散乱させないコーティング組成物を意味する。開示された硬化コーティングに関して使用される場合、用語「曇りのない」は、ビックガードナー(Byk−Gardner USA)のヘイズ・ガード・プラス(HAZE−GARD PLUS)(登録商標)機器を使用して測定したとき5%未満の曇り度を示すコーティングを意味する。
【0012】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「貯蔵安定な」は、シール容器に室温で少なくとも1週間保存したとき均質なままである組成物を意味する。
【0013】
開示された被覆物品に関して使用される場合、用語「連続した」は、薄層が少なくとも30Åの厚さであり、下層を覆っていることを意味する。語句「ほぼ連続した」は、薄層が少なくとも30Åの厚さであり、下層の大部分を覆っていることを意味する。
【0014】
開示されたコーティング組成物から形成されたコーティングに関して使用される場合、用語「透明な」は、垂直軸に沿って測定して、スペクトルの可視部における透過率Tvisが少なくとも約20%であるコーティングを意味する。語句「顔料および乳白剤」は、このようなコーティング組成物中に十分量で存在することによって、Tvis値が20%を下回る恐れがある材料を意味する。
【0015】
「PTFE」(テトラフルオロエチレン(「TFE」)のホモポリマー)、「PFA」(TFEとパーフルオロ(プロポキシビニルエーテル)とのコポリマー)、および「FEP」(TFEとヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)とのコポリマー)など、高結晶質フルオロポリマーは、非常に望ましい物理的諸特性を有する。C−F結合の結合強度が116Kcal/molであることは、高い熱安定性および優れた耐薬品性を与える役に立つ。フッ素は周期表の元素の中で電気陰性度が最も大きく、C−F結合の分極率は低い。高結晶質フルオロポリマーは、低い可溶性パラメータ、高分子量、および疎水性および親油性の挙動を有する傾向がある。残念なことに、これらの同じ特性のいくつかによって、高結晶質フルオロポリマーを(いくつかの場合を除いて、いくつかのパーフッ素化溶媒中、低い固形分レベルで)有機溶媒に溶解することが非常に困難になり、したがってこのような高結晶質フルオロポリマーは、一般には溶媒コーティング用途に適用できない。
【0016】
上記の高結晶質フルオロポリマーより結晶性が低く、または非晶質であるいくつかのフッ素化材料を、いくつかの溶媒に溶解することができる。例えば、THV(登録商標)フルオロサーモポリマー(例えば、ダイニオン、米国ミネソタ州オークデール(Dyneon, LLC, Oakdale, MN)から入手可能なTFE、HFP、およびフッ化ビニリデン(「VDF」)のターポリマー)やカイナー(KYNAR)(登録商標)ポリフッ化ビニリデン(例えば、ダイニオン(Dyneon LLC)から入手可能なTFE/VDFコポリマーまたはTFE/HFPコポリマー)など結晶性の低い材料、およびフローレル(FLUOREL)(登録商標)フルオロエラストマー(例えば、スリーエム(3M Company)から入手可能なHFP/VDFコポリマーおよびTFE/HFP/VDFターポリマー)などの非晶質フッ素樹脂を、様々なケトン、エーテル、アセテートに溶解することができる。しかし、これらのフッ素化材料は、上記の高結晶質フルオロポリマーより望ましくない機械的諸特性を有する傾向があり、したがって要求の厳しい最終用途が関与するコーティングに全面的に適しているわけではない。
【0017】
サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有するラテックスを、フッ素樹脂粒子を含有するラテックスとブレンドし、ブレンドされたラテックスを凝固し、乾燥し、乾燥したブレンドをフッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解することによって、フッ素樹脂の溶液中フルオロポリマー粒子の均質分散液を望ましくは高いフルオロポリマー粒子固形分レベルで含み、様々な有機溶媒を使用したコーティング組成物を形成できることを見出した。コーティング組成物は、明らかな沈降または凝集なしに優れた貯蔵安定性を有するようである。塗布されたコーティングは、優れた物理的諸特性を有するように思われる。フルオロポリマー粒子は、塗布されたコーティングで識別可能であり、ほとんど凝集していないようである。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、高い被覆品質を必要とする光学用途および他の最終用途で使用するのに十分に良好な特性を有する、透明または半透明な塗布されたコーティングを提供することができる。
【0018】
サブミクロンの乾燥結晶質フルオロポリマー粒子を乾燥フッ素樹脂粒子とブレンドし、得られた混合物をフッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解することによって、またはサブミクロンの乾燥結晶質フルオロポリマー粒子をフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液とブレンドすることによって、フッ素樹脂の溶媒希釈型溶液中フルオロポリマー粒子の分散液を含むコーティング組成物を形成できることも判明した。これらの後者のコーティング組成物は、上記に記載された均質なコーティング組成物より貯蔵安定性が低いが、使用量直前に撹拌すれば、非常に良好な物理的諸特性を有するように思われる塗布されたコーティング(例えば、オプティカルコーティング)を形成するために使用することができる。
【0019】
様々な結晶質フルオロポリマー粒子を、開示されたコーティング組成物で使用することができる。例示的な結晶質フルオロポリマー粒子としては、(約150℃より高いTmで示唆されるような)高い結晶質含有量と約50重量パーセントより高いフッ素含有量との組合せを有するフルオロポリマーの粒子が挙げられる。例えば、フルオロポリマー粒子には、Tmが約150℃〜約375℃、約150℃〜約320℃、約150℃〜約300℃、または約170℃〜約300℃であるフルオロポリマーの粒子が含まれ得る。また、フルオロポリマー粒子には、フッ素含有量が約50〜約76重量パーセント、約60〜約76重量パーセント、または約65〜約76重量パーセントであるフルオロポリマーの粒子が含まれ得る。代表的な結晶質フルオロポリマーには、例えば結晶質PTFE分散液(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)(登録商標)TF 5032 PTFE、ダイニオン(DYNEON)TF 5033 PTFE、ダイニオン(DYNEON)TF 5035 PTFE、またはダイニオン(DYNEON)TF 5050 PTFE、ならびにイ−・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニ−(E.I. du Pont de Nemours & Co.)からのテフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))(登録商標)PTFE GRADE 30およびテフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))PTFE GRADE 307A)、ETFEコポリマー(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)フルオロサーモプラスチックET 6235およびダイニオン(DYNEON)フルオロサーモプラスチックET X 6230 A、ならびにイ−・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニ−(E.I. du Pont de Nemours & Co.)からのテフゼル(TEFZEL)(登録商標)ETFEフルオロポリマー)、PFAコポリマー(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)フルオロサーモプラスチックPFA 6900Nおよびダイニオン(DYNEON)フルオロサーモプラスチックPFA X 6910N)、およびFEPコポリマー(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)フルオロサーモプラスチックFEP X 6300)などのパーフッ素化フルオロポリマーが含まれる。代表的な結晶質フルオロポリマーには、例えばすべてダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)THV 340Dフルオロサーモプラスチック、ダイニオン(DYNEON)THV 510Dフルオロサーモプラスチック、ダイニオン(DYNEON)THV 600フルオロサーモプラスチック、およびダイニオン(DYNEON)THV 800フルオロサーモプラスチック水系コポリマーラテックスなどの高フッ素化フルオロポリマーも含まれる。他の適切なフルオロポリマー粒子は、旭硝子(Asahi Glass)、アウシモント(Ausimont)、ヘキスト(Hoechst)、およびダイキン工業(Daikin Industries)などの供給業者から入手可能であり、当業者によく知られている。フルオロポリマー粒子の混合物を使用することができる。フルオロポリマー粒子は、望ましくは平均粒径が小さく、例えば400nm未満であるが、必要に応じて、特に塗布されたコーティングを硬化後にラビングする場合はより大きくてもよい。例えば、フルオロポリマー粒径の範囲は、約50〜約1000nm、または約50〜約400nm、または約50〜約200nmとすることができる。
【0020】
様々なフッ素樹脂(上記に指摘したように、フッ素プラスチックを含む)を、開示されたコーティング組成物で使用することができる。例示的なフッ素樹脂としては、(約150℃未満のTmで示唆されるような)低い結晶質含有量、または(示差走査熱分析を使用して決定して、測定可能な結晶融点がないということによって示されるような)非晶質構造と、約40重量パーセントより高いフッ素含有量との組合せを有するものが挙げられる。例えば、フッ素樹脂は、Tmが約100℃未満、約80℃未満、約60℃未満であるもの、または測定可能な結晶融点をもたないものが含まれ得る。また、フッ素樹脂には、フッ素含有量が約40〜約76重量パーセント、約50〜約76重量パーセント、約60〜約76重量パーセント、約65〜約76重量パーセント、または約65〜約71重量パーセントであるものが含まれ得る。このようなフッ素樹脂の代表的例には、例えばTHVフルオロサーモプラスチック(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)THV 220Dフルオロサーモプラスチック水系コポリマーラテックス);カイナー(KYNAR)ポリフッ化ビニリデン(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのカイナー(KYNAR)2800 HFP/VDFコポリマー、カイナー(KYNAR)7201 TFE/VDFコポリマー、およびカイナー(KYNAR)9301 VDF/HFP/TFEターポリマー、ならびにカイナー(KYNAR)ポリ(フッ化ビニリデン)(「PVDF」)樹脂(例えば、アトフィナ・ケミカル、米国ペンシルベニア州フィラデルフィア(Atofina Chemical, Philadelphia, PA)からのカイナー(KYNAR)500コポリマー分散液);フローレル(FLUOREL)フルオロエラストマー(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)から市販されているフローレル(FLUOREL)HFP/VDFコポリマーおよびフローレル(FLUOREL)TFE/HFP/VDFターポリマー);ダイニオン(DYNEON)フルオロエラストマー(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)FE−2145、ダイニオン(DYNEON)FT−2481、ダイニオン(DYNEON)FE−5530、ダイニオン(DYNEON)FE−5730、およびダイニオン(DYNEON)FE−5830フルオロエラストマー);ダイキン工業(Daikin Industries)からのNEOFLON(登録商標)ポリ(クロロトリフルオロエチレン)エラストマー;および非晶質フルオロポリマー粉末(例えば、旭硝子(Asahi Glass)からのCYTOP(登録商標)粉末、イ−・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニ−(E.I. du Pont de Nemours & Co.)からのテフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))AF 1600およびテフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))AF 2400粉末、ならびにダイニオン(Dyneon LLC)からのダイニオン(DYNEON)J24粉末)が含まれる。他の適切なフッ素樹脂は、アウシモント(Ausimont)、ヘキスト(Hoechst)、およびダイキン工業(Daikin Industries)などの供給業者から入手可能であり、当業者によく知られている。フッ素樹脂は、1つまたは複数の硬化部位モノマー(例えば、塩素、ヨウ素、または臭素硬化部位などのハロゲン硬化部位を有するモノマー)を含むモノマー混合物から作製することができる。ハロゲン硬化部位は、反応性ハロゲン末端基を提供するハロゲン化連鎖移動剤を慎重に使用することによって、フッ素樹脂ポリマーミクロ構造に導入することができる。例示的な連鎖移動剤は、当業者によく知られており、例えば米国特許第4,000,356号明細書に記載されている。米国特許第6,720,360号明細書に記載されているように、ハロゲン含有硬化部位モノマーに加えて、またはその代わりに、1つまたは複数の他の硬化部位モノマー、例えばニトリル含有硬化部位モノマーを含むモノマー混合物から、フッ素樹脂を作製することができる。フッ素樹脂の混合物を使用することができる。
【0021】
結晶質フルオロポリマー粒子およびフッ素樹脂を、様々な比で組み合わせることができる。例えば、溶媒または他の添加材料を除いて、フルオロポリマー粒子およびフッ素樹脂の重量だけを考慮して、開示されたコーティング組成物は、約5〜約95重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約95〜約5重量パーセントのフッ素樹脂;約10〜約75重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約90〜約25重量パーセントのフッ素樹脂;約10〜約50重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約90〜約50重量パーセントのフッ素樹脂;または約10〜約30重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約90〜約70重量パーセントのフッ素樹脂を含有することができる。光学用途で特定の値を有する清澄な曇りのないコーティングは、例えば約5〜約60重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約95〜約40重量パーセントのフッ素樹脂、または約5〜約60重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約95〜約40重量パーセントのフッ素樹脂を含有することができ、好ましくは透明な固化コーティングを形成することができるコーティング溶液が形成されるように、顔料または他の乳白剤を含まない。
【0022】
結晶質フルオロポリマー粒子およびフッ素樹脂は、望ましくはサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有するラテックスを、フッ素樹脂粒子を含有するラテックスとブレンドし、凝固し、場合によってはブレンドされたラテックスを洗浄し、乾燥することによって組み合わせる。凝固は、例えばブレンドされたラテックスを冷却すること(例えば、凍結すること)によって、または適切な塩(例えば、塩化マグネシウム)を添加することによって、実施することができる。冷却は、半導体製造および塩の導入が望ましくない可能性がある他の用途で使用されるコーティングに特に望ましい。洗浄ステップは、混合物から乳化剤または他の界面活性剤を実質的に除去する可能性があり、実質的に凝集していない乾燥粒子のよく混合されたブレンドを得るのに役立つことができる。得られた乾燥粒子混合物中の界面活性剤レベルは、例えば0.1重量%未満、0.05重量%未満、または0.01重量%未満とすることができる。次に、粒子混合物をフッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解して、フッ素樹脂の溶液中フルオロポリマー粒子の均質分散液を含む貯蔵安定なコーティング組成物を形成することができ、この組成物は、所望のコーティングを形成するために使用する前に明らかな沈降または凝集が起きることなく、長期間(例えば、1週間超、1か月超、6か月、または1年超)貯蔵することができる。
【0023】
結晶質フルオロポリマー粒子およびフッ素樹脂は、サブミクロンの乾燥結晶質フルオロポリマー粒子を乾燥フッ素樹脂粒子とブレンドし、得られた混合物をフッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解することによって、またはサブミクロンの乾燥結晶質フルオロポリマー粒子をフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液とブレンドすることによって組み合わせることもできる。これらのステップは、フッ素樹脂の溶媒希釈型溶液中フルオロポリマー粒子の分散液を含む準安定コーティング組成物を提供することができる。得られた組成物は、観察可能な沈降または凝集が起きる直前(例えば、1週間以内または1日以内)に使用することができ、あるいは必要なら使用直前に撹拌して、フルオロポリマー粒子を再分散し、これを使用して所望のコーティングを形成することができる。
【0024】
様々な溶媒を開示されたコーティング組成物で使用することができる。代表的な溶媒には、例えばアセトン、MEK、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、およびNMPなどのケトン;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、およびメチルテトラヒドロフルフリルエーテルなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、および酢酸ブチルなどのエステル;δ−バレロラクトンやγ−バレロラクトンなどの環状エステル;パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランやヒドロフルオロエーテルなどのフッ素化溶媒;およびその混合物が含まれる。上記に指摘したように、開示されたコーティング組成物は、フッ素樹脂を溶解することができない他の有機液体を含有してもよく、水を含有してもよい。ただし、このような他の有機液体と水の重量が溶媒の重量を下回ることを条件とする。例えば、このような他の有機液体または水は、開示されたコーティング組成物の30%未満、10%未満、5%未満、または1%未満に相当することができる。
【0025】
開示されたコーティング組成物は、様々なオプションの追加材料を含むことができる。例示的な追加材料としては、接着促進剤(例えば、シラン)、フルオロポリマー架橋剤(例えば、ポリオレフィン)、および開始剤(例えば、光開始剤および熱開始剤)が挙げられる。このような追加材料のタイプおよび量を当業者は容易に理解するであろう。例えば、例示的な接着促進剤としては、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートやビニルトリメトキシシランなど、オレフィン性官能基を含む光グラフト可能なシランエステルが挙げられる。これらの光グラフト可能なシランエステルは、フルオロポリマー、フッ素樹脂主鎖と反応して、懸垂型シロキシ基を有するシリル−グラフト化材料を形成することができる。このようなシロキシ基を利用して、同じまたは隣接したコーティング層の他の材料との結合を形成して、それによって他の材料または隣接した層への改善された接着をもたらすことができる。他の接着促進剤には、3−アミノプロピルトリメトキシシランやそのオリゴマー(例えば、ジーイー・シリコーンズ、米国コネチカット州ウィルトン(GE Silicones, Wilton, CT)からのシルクエスト(SILQUEST)(登録商標)A−1110);3−アミノプロピルトリエトキシシランやそのオリゴマー(例えば、ジーイー・シリコーンズ(GE Silicones)からのシルクエスト(SILQUEST)A−1100およびシルクエスト(SILQUEST)A−1106);3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(例えば、ジーイー・シリコーンズ(GE Silicones)からのシルクエスト(SILQUEST)A−1120);ジーイー・シリコーンズ(GE Silicones)からのシルクエスト(SILQUEST)A−1130;(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン;(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(例えば、ジーイー・シリコーンズ(GE Silicones)からのシルクエスト(SILQUEST)A−2120)、ビス−(γ−トリエトキシシリルプロピル)アミン(例えば、ジーイー・シリコーンズ(GE Silicones)からのシルクエスト(SILQUEST)A−1170);N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリブトキシシラン;6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン;4−アミノブチルトリメトキシシラン;4−アミノブチルトリエトキシシラン;p−(2−アミノエチル)フェニルトリメトキシシラン;3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン;3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(例えば、シベント・シランズ、米国ニュージャージー州ピスカタウエイ(Sivento Silanes, Piscataway, NJ)からのダイナシラン(DYNASYLAN)(登録商標)1146)などのオリゴマーのアミノシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン;3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン;3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン;3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン;4−アミノフェニルトリメトキシシラン;3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン;2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン;2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン;2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン;2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン;N,N−ジメチルアニリンやジアザビシクロオクタンなどの第三級アミン;および((RO)3Si(CH2)NR)2C=Oなどのビス−シリル尿素などのアミノ置換オルガノシランが含まれる。接着促進剤の混合物を使用することができる。
【0026】
例示的な架橋剤としては、例えば1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、およびトリプロピレングリコールジアクリレートなど、ジ(メタ)アクリルを含む化合物を含めて、ポリ(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。他の適切な架橋剤としては、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリアクリレート(例えば、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリトリトールトリアクリレート、プロポキシ化トリアクリレート(例えば、プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシ化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、およびトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートなど、トリ(メタ)アクリルを含む化合物が挙げられる。追加の適切な架橋剤としては、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリトリトールテトラアクリレート、およびペンタエリトリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート;例えば米国特許第4,262,072号明細書に記載のようなヒダントイン部分を含むポリ(メタ)アクリレート;および例えばウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートなど、オリゴマーの(メタ)アクリル化合物;上記のポリアクリルアミド類似体;ならびにその組合せなど、より高級な官能基(メタ)アクリルを含む化合物が挙げられる。適切な架橋剤は、サートマー、米国ペンシルベニア州エクストン(Sartomer Company, Exton, PA);ユーシービー・ケミカルズ・コーポレーション、米国ジョージア州スマーナ(UCB Chemicals Corporation, Smyrna, GA);およびアルドリッチ・ケミカル、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Aldrich Chemical Company, Milwaukee, WI)を含めて、業者から広く利用可能である。例示的な市販架橋剤としては、すべてサートマー(Sartomer Company)からのSR−351トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)ならびにSR−444およびSR 494ペンタエリトリトールトリ/テトラアクリレート(「PETA」)が挙げられる。架橋剤の混合物および一官能性材料(例えば、TMPTAとメチルメタクリレートの混合物など、多官能性および一官能性の(メタ)アクリレートの混合物)を使用することもできる。開示されたコーティング組成物で利用することができる他の架橋剤または一官能性材料には、パーフルオロポリエーテル(メタ)アクリレートなどのフッ素化(メタ)アクリレートが含まれる。これらのパーフルオロポリエーテルアクリレートは、望ましくはヘキサフルオロプロピレンオキサイド(「HFPO」)のマルチ(メタ)アクリレートまたはモノ(メタ)アクリレート誘導体に基づくことができ、(マルチ(メタ)アクリレート誘導体の場合)単独の架橋剤として使用することができる。マルチ(メタ)アクリレート誘導体は、メチルメタクリレートなどの非フッ素化一官能性(メタ)アクリレート、またはTMPTAやPETAなどの非フッ素化架橋剤と共に使用することもでき、モノ(メタ)アクリレート誘導体は、TMPTAやPETAなどの非フッ素化架橋剤と使用することができる。
【0027】
例示的な開始剤としては、ベンゾフェノンやその誘導体;ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−ベンジルベンゾイン;ベンジルジメチルケタール(例えば、米国ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation of Tarrytown, NY)からのイルガキュア(IRGACURE)(登録商標)651)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルなどのベンゾインエーテル;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのダロキュア(DAROCUR)(登録商標)1173)や1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのイルガキュア(IRGACURE)184)などのアセトフェノンおよびその誘導体;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのイルガキュア(IRGACURE)907);2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのイルガキュア(IRGACURE)369);ベンゾフェノンおよびその誘導体やアントラキノンおよびその誘導体などの芳香族ケトン;ベンジルジメチルケタール(例えば、ランベルティ、スペイン ガララーテ(Lamberti S.p.A of Gallarate, Spain)からのエサキュア(ESACURE)(登録商標)KB−1);ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩;チタン錯体(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのCGI 784 DC);ハロメチルニトロベンゼン;ならびにモノおよびビス−アシルホスフィン(例えば、すべてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのイルガキュア(IRGACURE)1700、イルガキュア(IRGACURE)1800、イルガキュア(IRGACURE)1850、イルガキュア(IRGACURE)819、イルガキュア(IRGACURE)2005、イルガキュア(IRGACURE)2010、イルガキュア(IRGACURE)2020、およびダロキュア(DAROCUR)4265)などのラジカル光開始剤が挙げられる。光開始剤の混合物を使用することもできる。光増感剤を使用することもできる。例えば、ファースト・ケミカル・コーポレーション、米国ミシシッピ州パスカグーラ(First Chemical Corporation, Pascagoula, MS)からの光増感剤である2−イソプロピルチオキサントンを、イルガキュア(IRGACURE)369などの光開始剤と共に使用することができる。例示的な熱開始剤としては、アゾ、過酸化物、過硫酸塩、レドックス開始剤、およびその混合物が挙げられる。必要に応じて、光開始剤と熱開始剤の混合物を使用することができる。コーティング組成物の全重量に対して、開始剤は全量で典型的には約10重量パーセント未満、より典型的には約5重量パーセント未満で使用される。
【0028】
開示されたコーティング組成物は、界面活性剤、帯電防止剤(例えば、導電性ポリマー)、レベリング剤、紫外線(「UV」)吸収剤、安定剤、酸化防止剤、滑沢剤、顔料、または(オプティカルコーティングにおける適切な透明度の達成を妨げるかもしれない場合を除いて)他の乳白剤、染料、可塑剤、懸濁化剤などを含めて他のオプションのアジュバントを含有できることを、当業者は理解するであろう。光学性能が重要な用途では、硬化コーティングは、550nmにおける可視光線透過率が好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%であり、好ましくは顔料および乳白剤を実質的に含まない可能性がある。
【0029】
当業者によく知られている様々な技法を使用して、開示されたコーティングを塗布し、硬化することができる。例示的なコーティング方法としては、ダイコーティング、ナイフコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング、およびディップコーティングが挙げられる。例えば移動ウェブまたは他の支持体もしくは基板を被覆して、ロール状または被覆長さの長い被覆物品を提供することによって、コーティング組成物を連続方式で塗布することができる。その代わりにまたはさらに、別々の支持体部分に個別にまたは複数にコーティング組成物を塗布して、例えば単独または複数被覆された1つまたは複数の物品をもたらすことができる。例示的な硬化技法としては、紫外線、可視光、電子ビーム、赤外線、および当業者によく知られている他の供給源などのエネルギー源の使用が挙げられる。
【0030】
開示された物品では様々な支持体を使用することができる。代表的な支持体には、ガラス、金属、セラミック、半導体、様々な熱可塑性または架橋ポリマー材料、および当業者によく知られている他の基板などの硬質基板が含まれる。代表的な支持体には、セルロース系材料(例えば、三酢酸セルロースまたは「TAC」)などの可撓性基板(例えば、透明、半透明、または不透明な可撓性のフィルム、織物ウェブまたは不織ウェブ、および可撓性積層物);ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、熱安定化PET(「HSPET」)、テレフタレートコポリエステル(「coPET」)、ポリエチレンナフタレート(「PEN」)、ナフタレートコポリエステル(「coPEN」)、およびポリブチレン2,6−ナフタレート(「PBN」)など、ポリエステルおよびコポリエステルを含めて、プラスチック;低密度ポリエチレン(「LDPE」)、線状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)、高密度ポリエチレン(「HDPE」)、ポリプロピレン(「PP」)、および環状オレフィンコポリマー(例えば、メタロセンによって触媒された環状オレフィンコポリマーまたは「COC」)などのポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)、エチレンエチルアクリレート(「EEA」)、エチレンメチルアクリレート(「EMA」)、およびエチレンビニルアクリレート(「EVA」)などのアクリレートおよびメタクリレート;ポリスチレン(「PS」)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(「ABS」)、スチレン−アクリロニトリル(「SAN」)、スチレン/無水マレイン酸(「SMA」)、およびポリα−メチルスチレンなどのスチレン系化合物(styrenic);ナイロン6(「PA6」)などのポリアミド;ポリアミドイミド(「PAI」);ポリイミド(「PI」);ポリエーテルイミド(「PEI」);ポリフタルアミド;ポリ塩化ビニル(「PVC」);ポリオキシメチレン(「POM」);ポリビニルナフタレン(「PVN」);ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」);ポリアリールエーテルケトン(「PAEK」);フェノール系化合物;エポキシ;フルオロポリマー(例えば、ダイニオン(DYNEON)(登録商標)HTE、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、およびエチレンのターポリマー);ビスフェノールAのポリカルボナート(「PC」)などのポリカルボナート;ポリアリーラート(「PAR」);ポリフェニレンオキシド(「PPO」);ポリスルホン(「PSul」)、ポリアリールスルホン(「PAS」)、およびポリエーテルスルホン(「PES」)などのスルホン;ならびに当業者によく知られている他の材料も含まれる。
【0031】
支持体は、通常は所期の使用に望まれる機械的、化学的(および必要なら光学的)諸特性に一部基づいて選択される。所望の機械的および化学的諸特性には、通常は可撓性、寸法安定性、耐衝撃性、コーティング受容性または接着性、表面汚染、および表面トポグラフィーの1つまたは複数が含まれる。所望の光学諸特性には、通常は透明度、光沢、曇り度、および艶消仕上げの有無が含まれる。例えば、光沢と艶消仕上げの両方の光透過型支持体を表示パネルで使用することができる。艶消支持体は、通常は典型的な光沢支持体より透過率の値が低く、曇り度の値が高い。艶消仕上げ可撓性フィルムには、例えばシリカなど、光を散乱するマイクロメートルのサイズの分散無機充填剤が含まれ得る。例示的な艶消フィルムは、U.S.A. キモト・テック、米国ジョージア州シーダータウン(U.S.A. Kimoto Tech, Cedartown, GA)から商品名「N4D2A」で市販されている。多層光学フィルム、再帰反射シーティングや輝度向上フィルムなどのミクロ構造フィルム、偏光またはリターダーフィルム(例えば、反射または吸収偏光フィルム、および二軸リターダーフィルム)、散乱フィルム、および(例えば、米国特許出願公開第2004/0184150 A1号明細書に記載のような)補償フィルムを含めて、様々な他の支持体を使用することもできる。多層光学フィルムは、特に有用であり、例えば米国特許第5,882,774号明細書および第6,368,699号明細書、米国特許出願公開第2003/0217806 A1号明細書、ならびに国際公開第第95/17303号パンフレットおよび第99/39224号パンフレットに記載されている。
【0032】
支持体の厚さも、通常は所期の使用に依存する。ロールツーロール処理装置を使用して作製または被覆された可撓性フィルム支持体が関与する用途では、支持体の厚さは、好ましくは約0.005〜約1mm、より好ましくは約0.02〜約0.25mmである。可撓性フィルムは、押出、ならびにオプションの一軸延伸、二軸延伸、ヒートセッティング、張力下アニーリング、および当業者によく知られている他の技法など、通常の製膜技法を使用して形成することができる。例えば、支持体は、少なくとも拘束されていない場合の熱安定化温度に至るまで収縮を阻止するように形成することができる。例えば、化学処理、空気や窒素コロナなどのコロナ処理、プラズマ、火炎、または化学線を用いて支持体への接着が改善されるように、支持体を処理することができる。必要に応じて、その代わりにまたはさらに、オプションのタイ層またはプライマーを支持体に塗布して、接着を高めることができる。
【0033】
開示されたコーティング組成物から形成され、固化(例えば、乾燥)または硬化された(例えば、重合または架橋された)コーティングで被覆された物品をラビングし、バフィングし、ポリッシングし、またはその他の方法で外乱させて、コーティング表面におけるサブミクロンのフルオロポリマー粒子が、その下にあるコーティングの残部上に連続またはほぼ連続したフルオロポリマー表面薄層を形成できることを見出した。好ましい実施形態では、フルオロポリマー薄層は、その下にあるコーティング上に比較的均一に塗抹され、フルオロポリマー粒子が単にフィブリル化を(例えば、延伸または他の引張りのため)起こした場合の実情であり得るものより薄く、かつ均一であると思われる。ラビングによって、硬化コーティングの曇り度が低減される可能性もある。したがって、開示されたコーティング組成物を使用して、固化または硬化コーティングで被覆された物品を提供することができる。この物品は、サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有するフッ素樹脂結合剤上に連続またはほぼ連続したフルオロポリマー薄層を含む。コーティング形成時に、あるいは被覆物品を使用し、もしくは使用予定である場合は後に、様々なラビング技法を使用することができる。チーズクロスまたは他の適切な織物、不織布、もしくは編物を使用して、コーティングを数回ワイピングまたはバフィングするだけで、所望の薄層が形成されることが多い。当業者は、他の多くのラビング技法が使用され得ることを理解するであろう。
【0034】
開示されたコーティングは、当業者によく知られている様々な用途で使用することができる。例えば、開示されたコーティングを、低摩擦表面、疎水性表面、親油性表面、または光管理構造が望まれることがある物品に塗布することができる。使用の一例は、開示されたコーティングを光学ディスプレイまたは表示パネル用の反射防止フィルムの低屈折率コーティング層として塗布するものである。このようなディスプレイおよび表示パネルは、点灯または消灯した携帯型または非携帯型情報表示デバイスとすることができ、例えば低表面エネルギー(例えば、耐汚れ性、染み抵抗性、撥油性、または撥水性)、耐久性(例えば、磨耗抵抗性)、および光学的透明度(例えば、低曇り度)の組合せが望まれることがある。例えば、曇り度レベルは、上記のヘイズ・ガード・プラス(HAZE−GARD PLUS)機器を使用して測定すると、望ましくは5%未満、2%未満、1%未満、または0.5%未満とすることができる。反射防止フィルムは、グレアおよび透過損失を低減し、同時に耐久性および光学的透明度を改善することができる。開示されたコーティング組成物は、損傷を受けやすい、またはインクペン、マーカー、および他のマーキングデバイス、ワイピング布、紙製品などでタッチもしくは接触されやすい情報表示ビューイング表面の少なくとも一部分を覆うのに特に有用である。ビューイング表面には、例えば下にある透明支持体、ハードコート、適切に薄い高屈折率層、および開示されたコーティング組成物から作製された適切に薄い低屈折率層を含むことができる。例示的な情報ディスプレイとしては、液晶ディスプレイ(「LCD」)、プラズマディスプレイ、フロントおよびリア・プロジェクションディスプレイ、陰極線管(「CRT」)、およびサイネージなどの複数文字ディスプレイ、特に複数行複数文字ディスプレイ、ならびに発光ダイオード(「LED」)、信号灯、およびスイッチなどの1文字またはバイナリーディスプレイが挙げられる。このような情報ディスプレイを使用することができる例示的な電子または電気デバイスとしては、パーソナルデジタルアシスタント(「PDA)」、LCDテレビ(ダイレクト照明およびエッジ照明)、(PDA/携帯電話の組合せを含めて)携帯電話、タッチ感応スクリーン、腕時計、カーナビゲーションシステム、全地球測位システム、測深機、計算機、電子ブック、CDおよびDVDプレーヤー、プロジェクションテレビスクリーン、コンピュータモニター、ノートブック型コンピュータディスプレイ、計器ゲージ、計器盤カバー、グラフィックディスプレイなどのサイネージなどが挙げられる。これらのデバイスは通常は、「レンズ」と呼ばれることがある露出したビューイング表面を有する。ビューイング表面は、平面状でも、非平面状(例えば、わずかに曲面)でもよく、所望の任意のサイズおよび形状を有することができる。開示されたコーティング組成物は、レンズ(例えば、カメラレンズ、眼鏡レンズ、および双眼鏡レンズ);装飾シーティングおよび再帰反射シーティングを含めて、反射鏡および他の反射物;車両前照灯および尾灯;自動車、船舶、列車、および航空機を含めて、車両の窓(風防ガラスおよび後退灯を含む);車体および車両トリム;インテリアまたはエクステリア使用向けの建築用窓;建造物表面;装置筺体;陳列ケース;道路舗装標識(例えば、道路鋲)、道路標識、および舗装マーキングテープ;オーバーヘッドプロジェクター;エンターテインメントキャビネット用扉およびエンターテインメントデバイス用カバー;時計カバー;光記録および光磁気記録ディスク;ならびに当業者によく知られている他の物品を含めて、様々な他の透明または非透明な物品の屋内または屋外建築用コーティング、保護コーティング、または装飾用コーティングとして使用することもできる。
【0035】
本発明を、さらに下記の例示的実施例で説明する。ここで、部および百分率はすべて、別段の指摘がない限り重量による。別段の注記のない限り、化学試薬はすべて、アルドリッチ・ケミカル、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI)から入手し、または入手することができる。下記の略語を使用する。
「A174」は、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートを意味する。
「A1106」は、ジーイー・シリコーンズ、米国コネティカット州ウィルトン(GE Silicones, Wilton CT)製、シルクエスト(SILQUEST)A−1106シラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランを意味する。
「APTMS」は、4−アミノフェニルトリメトキシシランを意味する。
「BPB」は、t−ブチルペルオキシドベンゾエートを意味する。
「DIADC」は、アゾジカルボン酸ジイソプロピルを意味する。
「DMAPS」は、N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランを意味する。
「FKMラテックスA」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)E15742、ペルオキシド硬化性臭素硬化部位を有するVDF/TFE/HFP/BTFEフルオロエラストマー(ただし、「HFP」はヘキサフルオロプロピレンであり、「BTFB」はブロモテトラフルオロブテンである)の水系ラテックス(固形分濃度32%)を意味する。
「FKMラテックスB」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)E18042、ペルオキシド硬化性ヨウ素硬化部位を有するVDF/TFE/HFP/ITFBフルオロエラストマー(ただし、「ITFB」はヨードテトラフルオロブテンである)の水系ラテックス(固形分濃度12.7%)を意味する。
「FKM−A」は、FKMラテックスAの凝固によって調製された乾燥固体FKMポリマーを意味する。
「FKM−B」は、FKMラテックスBの凝固によって調製された乾燥固体FKMポリマーを意味する。
「HFPO−A」は、2004年12月10日出願の、本譲受人の同時係属中の米国特許出願第11/009,181号明細書に記載のように調製された式C3F7O(CFCF3CF2O)5CF(CF3)CONHCH2CH2OCOCH=CH2を有するヘキサフルオロプロピレンオキサイドアミドエトキシアクリレートを意味する。
「HFPO−B」は、20%のTMPTA、40%のHFPO/TMPTA(1:1)付加物、および40%のHFPO/TMPTA(2:1)付加物の混合物を意味する。ここで、1:1および2:1のHFPO/TMPTA付加物は、本譲受人の上記の米国特許出願第11/009,181号明細書に記載のように、ヘキサフルオロプロピレンオキサイド−アミドプロピルメチルアミン付加物HFPOC(O)N(H)CH2CH2CH2N(H)CH3とTMPTAを1:1または2:1のモル比で混合することによって調製される。
「I651」は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、米国ニューヨーク州タリータウン(Ciba Specialty Chemicals, Tarrytown, NY)製、イルガキュア(IRGACURE)(登録商標)651、2−フェニル−2,2−ジメトキシアセトフェノンを意味する。
「PAPTMS」は、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを意味する。
「PET」は、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー、米国デラウェア州ウィルミントン(E.I. du Pont de Nemours and Co., Wilmington, DE)製、メリネックス(MELINEX)(登録商標)618、厚さ0.13mmの下塗付きポリ(エチレンテレフタレート)フィルムを意味する。
「PET−H」は、米国特許第6,299,799号明細書の実施例3に記載のもののようなセラマーハードコート組成物で被覆されたメリネックス(MELINEX)618 PETフィルムを意味する。下塗付きPET表面に、30%のセラマー組成物のイソプロパノール溶液を5マイクロメートルの厚さで被覆し、酸素を50ppm未満しか含まないチャンバ中、ヒュージョン・ユー・ブイ・システムズ、米国メリーランド州ゲーサーズバーグ(Fusion UV systems, Gaithersburg Maryland)の600ワットのH型球下で硬化する。
「PFAラテックスA」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオンフルオロサーモプラスチック(DYNEON Fluorothermoplastic)PFA 6910N(20.4%固形分の水系ラテックスとして入手可能)を意味する。
「PFAラテックスB」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオンフルオロサーモプラスチック(DYNEON Fluorothermoplastic)PFA 6900Nフルオロサーモプラスチック(30%固形分の水系ラテックスとして入手可能)を意味する。
「PFA−A」は、PFAラテックスAの凝固によって調製された乾燥固体のPFAポリマーを意味する。
「PFA−B」は、PFAラテックスBの凝固によって調製された乾燥固体のPFAポリマーを意味する。
「PTFEラテックスA」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)PTFEラテックス5033(9.6%固形分のTFEホモポリマーラテックスとして入手可能)を意味する。
「PTFE−A」は、PTFEラテックスAの凝固によって調製された乾燥固体のTFEホモポリマーを意味する。
「PTFE−J」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)J24、ポリ(テトラフルオロエチレン)マイクロ粉末を意味する。
「PVDF−A」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、カイナー(KYNAR)(登録商標)7201、ポリ(フッ化ビニリデン)フッ素樹脂を意味する。
「TAIC」は、トリアリルイソシアヌレートを意味する。
「THVラテックスA」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)THV 220D水系フッ素樹脂ラテックス、24%固形分のVDF/HFP/TFEコポリマーを意味する。
「THVラテックスB」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)THV 230水系フッ素樹脂ラテックス、36%固形分のVDF/HFP/TFEコポリマーを意味する。
「THV A」は、THVラテックスAの凝固によって調製された乾燥固体のTHVポリマーを意味する。
「THV B」は、THVラテックスBの凝固によって調製された乾燥固体のTHVポリマーを意味する。
「TMPTA」は、トリメチロールプロパントリアクリレートを意味する。
「VS」は、ビニルトリメトキシシランを意味する。
【0036】
「接着剤の剥離抵抗の標準試験方法」と題し、より一般的には「T型剥離」試験と呼ばれるASTM D−1876に記載されている試験手順を使用して、剥離強さを評価した。試料は、適度な接着性を有する厚さ0.5mmのフルオロポリマーシート(例えば、フルオロエラストマー系コーティングの場合、ダイニオン(Dyneon, LLC)のTHV 200フッ素樹脂シート、およびPVDF系コーティングの場合、ダイニオン(Dyneon, LLC)のPVDFフルオロエラストマーシート)に被覆面を熱積層することによって調製した。後期の分離を容易にするために、非接着性PTFE被覆ファイバーシートの細片を、組立層間に深さ6mmで組立層の一縁部に沿って一時的に挿入した。組立層を一緒に、ウォバシュ液圧プレス(Wabash Hydraulic press)の加熱プラテン間で、試料と厚さ0.5mmのシートを一緒に溶融するのに十分な温度(例えば、約200℃)で2分間加圧し、次いでコールドプレスのプラテン間で室温に冷却した。得られた積層アセンブリをT型剥離測定にかけた。データは、シンテック(SINTECH)(登録商標)モデル20測定装置(エム・ティー・エス・システムズ・コーポレーション、米国ミネソタ州イーデンプレーリー(MTS Systems Corporation, Eden Prairie, MN)から入手可能)を装備し、クロスヘッド速度101.6mm/分で操作されたインストロン(INSTRON)(登録商標)モデル1125試験機(インストロン、米国マサチューセッツ州カントン(Instron Corp., Canton, MA)から入手可能)を使用して得られた。剥離強さは、剥離試験中測定された平均荷重として算出し、少なくとも2つの試料の平均について、Kg/幅1mmの単位で報告した。場合によっては、積層した試料を沸騰水に2時間浸漬し、次いで積層物を手で分離して、中間膜の破損の程度を決定することによって、剥離接着力を定性評価した。定性的接着力レベルを以下の通り示した:「層間剥離された」は、コーティングが沸騰水中で支持体から剥がれたことを意味し、「中程度」は、コーティングが支持体から容易に剥がれる可能性があることを意味し、「良好」は、コーティングが支持体から剥がれることが困難であり得ることを意味し、「強力」は、コーティングが支持体から剥がれることはできないことを意味する。
【0037】
磨耗抵抗性は、被覆硬化した試料を空気中終夜放置することによってマニュアルで評価した。次いで、強力な手の圧力を用いて、各試料をキムワイプ(KIMWIPE)紙タオル(キンバリー・クラーク、米国ウィスコンシン州ニーナ(Kimberly−Clark Corp., Neenah, WI)から入手可能)で10回ラビングした。磨耗きずがあれば、それを目視評価し、観察された手動磨耗の程度を示すために、「なし」、「非常にわずか」、「わずか」、または「引掻き」のスコアを付与した。結果を引掻きの程度として報告した(手動磨耗抵抗性)。
【0038】
磨耗抵抗性は、コーティングを砂で磨耗したときの反射率の変化(「ΔR」)(パーセント)を評価する砂磨耗試験も使用して評価した。適切に薄い、開示されたコーティング層(例えば、入射光の四分の一波長の奇数倍数)は、反射防止性を有することができる。したがって、磨耗によるコーティング損失は、ΔRを評価することによって測定することができ、ΔR値が低いほど、改善された砂磨耗抵抗性に対応する。被覆フィルム試験試料をそれぞれ、直径90mmに打ち抜いた。フィルム試料の真中には、その無被覆面に直径25mmの円のきずがついて、反射測定が行われる前後の光学領域が特定された。パーキン・エルマー、米国マサチューセッツ州ウェルズリー(Perkin−Elmer, Inc. of Wellesley, MA)製のラムダ(LAMDA)(登録商標)900 UV−Vis−NIR分光計を反射モードで操作して使用して、光学領域の反射率値を550nmで測定した。ウィートン・ガラス・ボトルズ、米国ニュージャージー州ミルビル(Wheaton Glass Bottles, Millville, NJ)製の0.5リットルの直柱型透明ガラスジャー、モデルWS−216922の蓋部に、フィルム試料を被覆面がジャーの内部に向くように配置した。ジャーを、ビー・ダブリュー・アール・インターナショナル、米国ペンシルベニア州ウェストチェスター(VWR International of W. Chester, PA)から得られた、ASTM規格C−190 T−132に準拠する20〜30メッシュのオタワ標準砂(Ottawa Sand Standard)80gで部分充填した。蓋部を定位置にねじ込み、ジャーを上下逆さまに、ビー・ダブリュー・アール・インターナショナル(VWR International)製のシグネチャー(SIGNATURE)(登録商標)モデルDS−500Eオービタルシェーカーに載せた。シェーカーを250rpmで30分間操作して、試料を広範な砂磨耗にかけた。この試験時間の後、フィルム試料を蓋部から取り出し、コーティングを、2−プロパノールで湿らせた柔らかな布で拭いた。上述と同じ光学領域における反射率を550nmで測定し、次式:
磨耗抵抗性(ΔR)=(ACR−ICR)/(ISR−ICR)
(式中、
ACRは、磨耗コーティング反射率〜を意味し、
ICRは、初期のコーティング反射率を意味し、
ISRは、初期の支持体反射率を意味する)
に従って、初期の支持体反射率および初期のコーティング反射率と比較し、反射率の変化(ΔR)(百分率)として報告した。
【0039】
磨耗抵抗性は、アノラッド・プロダクツ、米国ニューヨーク州ハーパーグ(Anorad Products, Hauppauge, NY)製のリニアスクラッチ装置(Linear Scratch Apparatus)モデル4138を使用して、計量したダイヤモンド−黒鉛スタイラスを、試料表面を横切って一度移動させて、機械的にも評価を行った。グラフ・ダイヤモンド・プロダクツ、カナダ オンタリオ州ブランプトン(Graff Diamond Products Limited, Brampton, Ontario, Canada)製の直径500μmまたは5mmの異なる2つのスタイラスを、予荷重250〜1000gで使用した。スタイラスを、コーティングを横切って6.7m/分で10.2cm移動させる。得られた引掻き(があれば、それ)は、アキシオ・イメージャー(AXIO−IMAGER)(登録商標)カメラを装備したアキシオトロン(AXIOTRON)(登録商標)光学顕微鏡(両方とも、カール・ツァイス、ドイツ ゲティング(Carl Zeiss AG of Goetting, Germany)製)、およびオプトロニクス・テラ・ユニバーサル、米国カリフォルニア州アナハイム(Optronics−Terra Universal of Anaheim, CA)製のビデオインターフェースを使用して評価した。光パワーを10Xに設定し、損傷の性質を、ゼロから10の段階で記録し、評価ゼロは、視覚的に明らかな引掻きがないことを表し、評価10は、引掻きが完全にコーティングを貫通していることを表わす。結果を機械的引掻き抵抗性として報告した。
【実施例】
【0040】
実施例1
352.9g分のPFAラテックスAを900g分のFKMラテックスAとブレンドして、サブミクロンフルオロポリマー粒子とフッ素樹脂粒子を20:80の重量比で含む、ブレンドされたラテックスを得た。ブレンドされたラテックスを、60gのMgCl2・6H2Oを2500mlの脱イオン水に添加することによって調製された溶液2.5リットルと混合することによって、粒子を凝固させた。得られた混合物を濾過して、固体粒子を分離し、続いて濾過した粒子を、ブレンドされたラテックス中の水と等量の70℃の脱イオン水で3回洗浄し、洗浄した粒子を130℃で16時間乾燥した。同様な乾燥は、70℃の温度で終夜、または90℃の温度で4〜5時間によって得ることができる。得られた乾燥フルオロポリマー粒子と乾燥フッ素樹脂粒子の混合物は、ゴム質の白色固体を形成した。ブレンドされたラテックスおよび乾燥粒子中の界面活性剤レベルの定量分析によって、界面活性剤レベルが、ブレンドされたラテックスの1000ppm(0.1%)から乾燥粒子の168ppm(0.0168%)に減少したことが判明した。
【0041】
乾燥粒子混合物を、20重量%固形分のコーティング溶液を提供するのに十分な量のMEKと組み合わせた。これによって、貯蔵安定なマスターバッチが得られ、2か月にわたって、視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層が出現することなく貯蔵された。観察された貯蔵安定性は、フルオロポリマー粒子とMEKを組み合わせた場合に普通は観察される貯蔵安定性より大いに良好であり、界面活性剤レベルの低減にもかかわらず、持続した。
【0042】
マスターバッチ固体を「PFA−A/FKM−A 20/80」として認定することができ、100部のマスターバッチ固体には20部のPFA−Aフルオロポリマー粒子および80部のFKM−Aフッ素樹脂粒子が含まれていることが示唆されている。マスターバッチの一部分をMEKで3%固形分に希釈し、マイヤーバー(Meyer Bar)巻線ロッドNo.3を使用して、PET支持体に塗布し、120℃で10分間乾燥して、乾燥厚さ100〜120nmのコーティングが得た。ヒュージョン・ユー・ブイ・システムズ、米国メリーランド州ゲーサーズバーグ(Fusion UV Systems, Gaithersburg, MD)の600ワットのH型球を装備し、酸素を50ppm未満しか含まないチャンバを通って、10.7m/分で3回パスを行って、コーティングを紫外線にかけた。固化コーティングは、透明で無色であり、非常にわずかな曇りがあった。原子間力顕微鏡法を使用して検査すると、フルオロポリマー粒子は、凝集しておらず、コーティング表面全体に分散しているように思われた。図1aは、ラビング前のコーティングの高さ像(左側)および相画像(右側)を示す原子間力顕微鏡写真である。コーティングを、キムワイプス(キムワイプ(KIMWIPES))(登録商標)紙タオル(キンバリー・クラーク(Kimberly−Clark Corp.)から市販されている)でラビングすると、曇りが消失した。原子間力顕微鏡法を使用して再検査すると(図1bを参照)、フルオロポリマーは、コーティング表面全体上に薄膜として広がっているように思われた。ESCAを使用した分光学的表面検査によって、FKMフルオロエラストマー中のVDF単位の特徴的なCH2ピークは、ラビング後よりラビング前のほうがかなり顕著であることが判明し、表面が、連続またはほぼ連続したフルオロポリマー層で覆われていたことが示唆された。ESCAによって、通常は試料表面の最外部30〜100Åの分析が行われる。
【0043】
また、コーティングをPET−H支持体のセラマーハードコート面にも塗布した。固化コーティングは、PET支持体で観察されたように、ラビングの前後で同様な外観および挙動を示した。
【0044】
実施例2
実施例1の方法を使用して、PTFEラテックスAをFKMラテックスAとブレンドして、サブミクロンフルオロポリマー粒子とフッ素樹脂粒子を20:80の重量比で含む、ブレンドされたラテックスを得た。ブレンドされたラテックスを冷凍庫中、−20℃で終夜貯蔵し、冷凍した混合物を室温で溶かし、濾過して、固体粒子を分離し、ブレンドされたラテックス中の水と等量の70℃の脱イオン水で3回洗浄し、洗浄した粒子を90℃で16時間乾燥させることによって、粒子を凝固させた。得られた乾燥フルオロポリマー粒子と乾燥フッ素樹脂粒子の混合物は、ゴム質の白色固体を形成した。乾燥混合物を、20重量%固形分のコーティング溶液を提供するのに十分な量のMEKと組み合わせた。これによって、貯蔵安定なマスターバッチが得られ、10日間にわたって、消費する前に視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層が出現することなく貯蔵された。マスターバッチ固体を「PTFE−A/FKM−A 20/80」として認定することができ、100部のマスターバッチ固体には20部のPTFE−Aフルオロポリマー粒子および80部のFKM−Aフッ素樹脂粒子が含まれていることが示唆されている。マスターバッチの一部分を、厚さ100nmの硬化コーティングを形成するのに十分な量のMEKで希釈し、実施例1の方法を用いて、PETおよびPET−H支持体のセラマーハードコート面に塗布し、硬化した。固化した被覆物品は、透明で無色であり、非常にわずかな曇りがあった。原子間力顕微鏡法を使用して検査すると(図2aを参照)、フルオロポリマー粒子は、凝集しておらず、コーティング表面全体に分散しているように思われた。コーティングを紙タオルでラビングすると、曇りが消失した。原子間力顕微鏡法を使用して検査すると(図2bを参照)、フルオロポリマーは、コーティング表面全体上に薄膜として広がっているように思われた。
【0045】
実施例3
PFAラテックスAをTHVラテックスAとブレンドして、サブミクロンフルオロポリマー粒子とフッ素樹脂粒子を20:80の重量比で含む、ブレンドされたラテックスを得て、冷凍、濾過、洗浄、および乾燥によって、乾燥粉末ブレンドに変換した。得られた乾燥フルオロポリマー粒子と乾燥フッ素樹脂粒子の混合物は、綿毛状の純白外観で示した。乾燥混合物を、20重量%固形分のコーティング溶液を提供するのに十分な量のMEKと組み合わせた。これによって、貯蔵安定なマスターバッチが得られ、1週間にわたって、消費する前に視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層が出現することなく貯蔵された。マスターバッチ固体を「PFA−A/THV−A 20/80」として認定することができ、100部のマスターバッチ固体には20部のPFA−Aフルオロポリマー粒子および80部のTHV−Aフッ素樹脂粒子が含まれていることが示唆されている。マイヤーバー(Meyer Bar)巻線ロッドNo.3を使用した厚さ100nmの硬化コーティングの塗布が可能になるのに十分な量のMEKで、マスターバッチの一部分を希釈し、次いで実施例1の方法を用いて、PETおよびPET−H支持体に塗布し、光硬化した。また、コーティングを、PETおよびPET−H支持体に塗布し、風乾し、90〜120℃に加熱して、コーティングの熱接着も行った。固化した被覆物品は、透明で無色であり、非常にわずかな曇りがあった。コーティングを紙タオルでラビングすると、曇りが消失した。原子間力顕微鏡法を使用して検査すると、フルオロポリマーは、コーティング表面全体上に薄膜として広がっているように思われた。
【0046】
実施例4
実施例3の方法を使用して、PTFEラテックスAをTHVラテックスAとブレンドして、サブミクロンフルオロポリマー粒子とフッ素樹脂粒子を20:80の重量比で含む、ブレンドされたラテックスを得て、冷凍、濾過、洗浄、および乾燥によって、乾燥粉末ブレンドに変換させた。得られた乾燥フルオロポリマー粒子と乾燥フッ素樹脂粒子の混合物は、綿毛状の純白外観を示した。マスターバッチ固体を「PTFE−A/THV−A 20/80」として認定することができ、100部のマスターバッチ固体には20部のPTFE−Aフルオロポリマー粒子および80部のTHV−Aフッ素樹脂粒子が含まれていることが示唆されている。乾燥混合物を、20重量%固形分のコーティング溶液を提供するのに十分な量のMEKと組み合わせた。これによって、貯蔵安定なマスターバッチが得られ、23か月にわたって、視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層が出現することなく貯蔵された。調製した2週間後に、マイヤーバー(Meyer Bar)巻線ロッドNo.3を使用した厚さ100nmの硬化コーティングの塗布が可能になるのに十分な量のMEKで、マスターバッチの一部分を希釈し、次いで実施例1の方法を用いて、PETおよびPET−H支持体に塗布し、光硬化し、または加熱した。固化した被覆物品は、透明で無色であり、雲りがなかった。原子間力顕微鏡法を使用して検査すると、フルオロポリマー粒子は、凝集しておらず、コーティング表面全体に分散しているように思われた。
【0047】
実施例5
20g分のPTFE−J乾燥フルオロポリマー粒子を、80gのPVDF−Aフッ素樹脂を400gのMEKに溶解して、サブミクロンのフルオロポリマー粒子とフッ素樹脂を20:80の重量比で含むマスターバッチを得ることによって作製された溶液と、全固形分レベル20%で組み合わせた。マスターバッチ固体を「PTFE−J/PVDF−A 20/80」として認定することができ、100部のマスターバッチ固体には20部のPTFE−Jフルオロポリマー粒子および80部のPVDF−Aフッ素樹脂が含まれていることが示唆されている。得られた組成物の一部分をMEKで3%固形分に希釈し、十分に混合し、実施例1の方法を使用して、PETおよびPET−H支持体に迅速に塗布し、硬化した。未ラビングおよびラビング後の固化した被覆物品は、透明で無色であり、非常にわずかな曇りがあった。
【0048】
さらに、ラビング後の表面組成の変化を実証するために、PTFE−Jフルオロポリマー(図3a)およびPVDF−Aフッ素樹脂(図3b)から調製された被覆表面組成の最上部の80Åを分析することによって、化学分析電子分光(「ESCA」)スペクトルを得た。実施例5のコーティングについてラビングの前(図3c)および後(図3d)にもESCAスペクトルを得た。図3a、図3b、図3c、および図3dの比較によって、図3cの未ラビング試料は、フルオロポリマーからの−CF2CF2−基(図3aを参照)とフッ素樹脂からの−CF2CH2−基(図3bを参照)の両方の存在を示唆する約292および287eVにピークを示していることが判明した。図3dは、ラビング後、表面は、−CF2CH2−基が(この場合、このような基を表面から本質的に完全に減らすのに十分な程度に)非常に減少し、−CF2CF2−基が(この場合、このような基を含む明らかに連続した層を提供するのに十分な程度に)非常に富化されたことを示している。
【0049】
実施例6および比較例1〜11
実施例1〜5の方法を使用して、コーティング組成物を調製し、PET支持体に塗布した(および下記に記述するいくつかの場合には、PET−H支持体にも塗布し、あるいは代わりにPET−H支持体に塗布した)。(やはり、下記に記述する)いくつかの場合には、様々な量のシラン、アクリレート、または光開始剤を添加することによって、コーティング組成物を改変した。いくつかのコーティング組成物は、光開始剤を使用しないが、硬化部位モノマー、または別に添加される光開始剤が存在していない状態で硬化が起こることを可能にする他の材料を使用して作製した。実施例1のUVランプ下で、3回(または下記に記述する場合、6回)パスを行って、コーティングを光硬化した。コーティングを、剥離強さ、沸騰水浸漬に対する抵抗性、または手動磨耗抵抗性の1つまたは複数について評価した。下記の表Iに、実施番号、コーティング組成物の固体材料、および剥離強さ、沸騰水浸漬後の定性的接着強さ、または定性的に観察された手動磨耗抵抗性の結果を記述する。場合によっては、列挙した材料の量は、合計100部超になる。
【0050】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0051】
表Iのデータは、様々な量の各材料を使用し、様々な材料を使用して、開示された組成物を処方し、塗布できることを示している。耐久性があり、清澄で、引掻き抵抗性の様々なコーティングが得られた。これらをラビングすると、フルオロポリマー粒子のサイズおよび量によって決まるマイクロメートルまたはナノメートルのスケールの厚さ寸法を有する連続またはほぼ連続したフルオロポリマー層を有している被覆物品がもたらされた。例えば、図4は、実施番号6−53のコーティング(80部のTFE−Aフルオロポリマー粒子および20部のPVDF−Aフルオロエラストマー)のラビング後の高さ像(左側)および相画像(右側)を示す原子間力顕微鏡写真であり、連続したフルオロポリマー層が形成されたことを示している。PET−H支持体に塗布されたコーティングの接着値は、通常PET支持体に塗布されたコーティングの接着値と同じであり、またはそれより低い。
【0052】
実施番号6〜10の組成物をPET支持体に被覆し、120℃で1、3、または5分間加熱し、続いて実施例1のUVランプ下、1、3、または6回パスを行って光硬化した。被覆フィルムを室温で終夜貯蔵し、次いで機械的磨耗抵抗性を評価した。加熱時間を長くし、またはUVパスの回数を増やすと、引掻きの低減が観察された。
【0053】
実施例7
実施例1〜4の方法を使用して、一連の熱硬化性コーティング組成物を調製した。実施例3の方法を使用して、組成物をPET支持体に塗布し、150°で3分間硬化した。硬化コーティングを、手動磨耗抵抗性について評価した。下記の表IIに、実施番号、コーティング組成物の固体材料、および試験結果を記述する。場合によっては、列挙した材料の量は、合計100部超になる。
【0054】
【表7】
【0055】
実施例8
実施例6の方法を使用して、コーティング組成物を調製し、PET支持体に塗布した。コーティングを、砂磨耗抵抗性または機械的引掻き抵抗性について評価した。下記の表IIIに、実施番号、コーティング組成物の固体材料、および試験結果を記述する。場合によっては、列挙した材料の量は、合計100部超になる。
【0056】
【表8】
【表9】
【0057】
表IIIの結果は、非常に良好な砂磨耗抵抗性または機械的引掻き抵抗性を示している。実施番号8−1、8−2、および8−4は、特に良好な性能を発現した。実施番号8−4のコーティングをさらに試験して、コーティングをラビングした前後、かつ砂磨耗試験を実施した後の水およびヘキサデカンにたいしての前進および後退接触角を評価した。下記の表IVに、結果を示す。
【0058】
【表10】
【0059】
表IVの結果は、コーティングのラビングは、静止接触角および前進接触角を低減する傾向があったこと、コーティングは、砂磨耗抵抗性試験の過酷な条件にかけた後でさえその表面特性を保持したことを示している。
【0060】
実施例9
実施例1の方法を使用して、様々な屈折率を有する光硬化性組成物を調製した。実施例1の方法を使用して、組成物をPET支持体に塗布し、硬化した。下記の表Vに、実施番号、コーティング組成物の固体材料、および硬化コーティングの屈折率値を記述する。場合によっては、列挙した材料の量は、合計100部超になる。
【0061】
【表11】
【0062】
比較例12
特開平01−182388号公報の実施例1の手順と概して同様な手順を使用して、4部のPFA−Aフルオロポリマー粒子を16部のMEKに分散し、振盪して、20重量%のPFA粒子を含有する分散液を得た。分散液は、放置した場合沈殿する性向があり、溶液にならないように思われた。別に、2部のFKM−Aフッ素ゴムを8部のMEKに振盪溶解して、20%のフッ素樹脂を含有する溶液を得た。フルオロポリマー粒子分散液を再混合し、フッ素樹脂溶液と組み合わせ、ペイントシェーカーを使用して、終夜振盪混合した。混合物を翌日精査した。少量の沈殿物(フルオロポリマー粒子と思われる)が見られ、混合物を終夜放置した後、より多くの沈殿物が出現した。混合物は均質でも貯蔵安定でもなかった。
【0063】
比較例13
2本ロールミルを使用して、等量分のPFA−Aフルオロポリマー粒子とFKM−Aフッ素樹脂を一緒に、66℃で粉砕した。得られた粉砕ブレンドをMEKに混合したが、溶解も分散もせず、均質で貯蔵安定な混合物が得られなかった。
【0064】
本開示の例示的実施形態を記述し、本開示の範囲内の考えられる変形に言及してきた。本開示の範囲から逸脱することなく、開示における上記その他の変形および変更は、当業者に明らかであろう。本開示は、本明細書に記載されている例示的実施形態に限定されないと理解されたい。したがって、本発明は、冒頭に記載する特許請求の範囲によってしか限定されないものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1a】実施例1のコーティングのラビング前(図1a)およびラビング後(図1b)の高さ像(左側)および相画像(右側)を示す原子間力顕微鏡写真である。
【図1b】実施例1のコーティングのラビング前(図1a)およびラビング後(図1b)の高さ像(左側)および相画像(右側)を示す原子間力顕微鏡写真である。
【図2a】実施例2のコーティングのラビング前(図2a)およびラビング後(図2b)の相画像を示す原子間力顕微鏡写真である。
【図2b】実施例2のコーティングのラビング前(図2a)およびラビング後(図2b)の相画像を示す原子間力顕微鏡写真である。
【図3a】実施例5のフルオロポリマー(図3a)、フッ素樹脂(図3b)を使用して作製された被覆表面、ならびに実施例5のコーティングのラビング前(図3c)およびラビング後(図2d)の化学分析電子分光法(「ESCA」)スペクトルである。
【図3b】実施例5のフルオロポリマー(図3a)、フッ素樹脂(図3b)を使用して作製された被覆表面、ならびに実施例5のコーティングのラビング前(図3c)およびラビング後(図2d)の化学分析電子分光法(「ESCA」)スペクトルである。
【図3c】実施例5のフルオロポリマー(図3a)、フッ素樹脂(図3b)を使用して作製された被覆表面、ならびに実施例5のコーティングのラビング前(図3c)およびラビング後(図2d)の化学分析電子分光法(「ESCA」)スペクトルである。
【図3d】実施例5のフルオロポリマー(図3a)、フッ素樹脂(図3b)を使用して作製された被覆表面、ならびに実施例5のコーティングのラビング前(図3c)およびラビング後(図2d)の化学分析電子分光法(「ESCA」)スペクトルである。
【図4】実施例6の実施番号6−53のコーティングのラビング後の高さ像(左側)および相画像(右側)を示す原子間力顕微鏡写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマーナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化材料を含有する組成物は、例えば米国特許第3,484,503号明細書、第4,339,553号明細書、第4,503,179号明細書、第4,713,418号明細書、第4,879,362号明細書、第4,904,726号明細書、第5,006,594号明細書、第5,109,071号明細書、第5,180,470号明細書、第5,194,335号明細書、第5,647,400号明細書、第5,772,755号明細書、第6,117,555号明細書、第6,160,053号明細書、第6,310,141 B1号明細書、第6,310,142 B1号明細書、第6,395,834 B1号明細書、第6,417,280 B2号明細書、第6,429,249 B1号明細書、第6,444,741 B1号明細書、第6,476,144 B1号明細書、第6,592,977 B2号明細書、第6,660,798 B1号明細書、第6,664,336 B1号明細書、第6,734,254 B1号明細書、第6,756,445 B1号明細書;米国特許出願公開第2003/0198769 A1号明細書、第2004/0019176 A1号明細書、第2004/0241323 A1号明細書、および第2004/0241395 A1号明細書;欧州特許第0 168 020 B1号明細書、第0 670 868 B1号明細書、および第0 708 797 B1号明細書;国際出願第01/77226 A1号パンフレット;特開昭47−18346号公報、特開昭57−107336号公報、特開昭58−90955号公報、特開平01−182388号公報、特開平08−295845号公報、特開平10−88061号公報、および特開平11−269426号公報;モーガン(Morgan)ら、「フッ素プラスチック添加剤による強化(Reinforcement with Fluoroplastic Additives)」、Rubber World(1991年5月)、ホイットマン(Whitman)ら、「配向成長材料の代替物としての高配向ポリ(テトラフルオロエチレン)薄膜(Highly oriented thin films of poly(tetrafluoroethylene) as a substitute for oriented growth of materials)」、Nature, 352, pp. 414 − 417 (1991)、およびウッド(Wood)ら、「新規フルオロポリマーコーティングの外部耐久性の予測(Predicting the exterior durability of new fluoropolymer coatings)」、J. Fluorine Chem., 104, pp. 63 − 71 (2000)に記載または開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、一態様では、フルオロポリマーコーティング組成物の作製方法であって、サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有するラテックスを、結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂またはフッ素プラスチック(以下、「フッ素樹脂」と総称する)粒子を含有するラテックスとブレンドするステップと、ブレンドされたラテックスを凝固し、乾燥するステップと、乾燥したブレンドをフッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解するステップとを含む方法を提供する。本発明は、別の態様では、フルオロポリマーコーティング組成物の作製方法であって、サブミクロンの乾燥結晶質フルオロポリマー粒子を、a)結晶質でない、すなわち非晶質の乾燥フッ素樹脂粒子、およびフッ素樹脂粒子用の溶媒、またはb)結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液とブレンドし、それによってフッ素樹脂粒子の溶媒希釈型溶液中フルオロポリマー粒子の準均質分散液(quasi−homogenous dispersion)を含むコーティング組成物を形成するステップを含む方法を提供する。本発明は、さらに別の態様では、フルオロポリマーコーティング組成物であって、結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液に分散されたサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子の均質貯蔵安定な混合物を含む組成物を提供する。本発明は、別の態様では、フルオロポリマーコーティング組成物であって、結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液に分散されたサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子の準均質な混合物を含む組成物を提供する。本発明は、さらに別の態様では、物品であって、支持体の上にサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有する結晶質でない、すなわち非晶質のフッ素樹脂結合剤層、その上に連続またはほぼ連続した固化または硬化フルオロポリマー薄層を含む物品を提供する。
【0004】
本発明の上記その他の態様は、添付図面および本明細書から明らかになるであろう。しかし、いかなる場合にも、上記の概要は、権利請求の対象となる主題を限定するものとして解釈されるべきでない。この対象は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定されるものであり、審査手続中に補正することができる。
【0005】
様々な図面の同様な参照記号は同様な要素を示す。図面の要素は一定の縮尺ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
単数形(単語「a」、「an」、および「the」)は、「少なくとも1つ」と同義的に使用され、記述された要素の1つまたは複数を意味する。開示された被覆物品中の様々な要素の位置のため「上にある」、「上に」、「最上部の」、「下にある」などの配向用語を使用することによって、水平に配置された上向きの支持体に対する要素の相対的位置を意味する。開示された物品が、製造中または製造後に空間の特定の配向を有することは意図していない。
【0007】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「ポリマー」は、ポリマー、コポリマー(例えば、2つ以上の異なるモノマーから形成された、または形成可能なポリマー)、オリゴマー、およびその組合せを意味する。
【0008】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「フルオロポリマー」は、水素を含む有機液体に室温および標準圧力で少なくとも1重量%の程度には溶解しない(例えば、メチルエチルケトン(「MEK」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、酢酸エチル、またはN−メチルピロリジノン(「NMP」)のいずれにも溶解しない)高フッ素化またはパーフッ素化ポリマー材料を意味する。語句「結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂(less crystalline or amorphous fluororesin)」は、水素を含む有機液体(例えば、MEK、THF、酢酸エチル、またはNMPの1つまたは複数)に溶解するフッ素樹脂材料を意味する。このようなフッ素樹脂材料は、開示された組成物で組み合わされるフルオロポリマーより結晶質でない(示差走査熱分析を使用して決定された結晶融点ピークTmによって示されるような)構造をとり、または(示差走査熱分析を使用して決定して、測定可能な結晶融点がないということによって示されるような)非晶質構造をとる。簡潔にするため、「結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂」は、下記では単に「フッ素樹脂」と通常呼ばれる。用語「溶解する」および「溶液」は、一般的な意味で溶液を形成する溶解だけでなく、サブミクロンスケール、例えば、ナノスケールの懸濁液の形成を意味する。
【0009】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「溶媒」は、フッ素樹脂を溶解することができる、水素を含む有機液体を意味する。用語「溶媒希釈型の(solvent−forne)」は、組成物の他の材料用の担体として働き、このような他の材料を適切な支持体に薄膜の形で塗布することができる、1つまたは複数の揮発性溶媒を含むコーティング組成物を意味する。開示された溶媒希釈型コーティング組成物は、フッ素樹脂を単独では溶解することができない他の有機液体も含むことができ、水も含むことができる。ただし、このような他の有機液体および水の重量が溶媒の重量より少ないことを条件とする。
【0010】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「均質の(homogeneous)」は、新たに振盪し、内径が少なくとも40mmのガラス容器(例えば、125mlの円柱状ガラスジャー、125mlの四角形ガラスジャー、または100mlのホウケイ酸ガラスビーカー)に配置し、室温で少なくとも4時間放置した場合に、(わずかな濃度グラデーションの陰影の差異または他の印を示すことはあるかもしれないが)視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層を示さない組成物を意味する。用語「準均質(quasi−homogeneous)」は、新たに振盪し、このようなガラス容器に配置して30分以内に視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層を示さないが、室温で少なくとも4時間放置した場合に視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層を示す組成物を意味する。
【0011】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「曇りのない」は、霧がかかったように見えない、またはルビーレーザーポインタービームを視覚的に散乱させないコーティング組成物を意味する。開示された硬化コーティングに関して使用される場合、用語「曇りのない」は、ビックガードナー(Byk−Gardner USA)のヘイズ・ガード・プラス(HAZE−GARD PLUS)(登録商標)機器を使用して測定したとき5%未満の曇り度を示すコーティングを意味する。
【0012】
開示されたコーティング組成物に関して使用される場合、用語「貯蔵安定な」は、シール容器に室温で少なくとも1週間保存したとき均質なままである組成物を意味する。
【0013】
開示された被覆物品に関して使用される場合、用語「連続した」は、薄層が少なくとも30Åの厚さであり、下層を覆っていることを意味する。語句「ほぼ連続した」は、薄層が少なくとも30Åの厚さであり、下層の大部分を覆っていることを意味する。
【0014】
開示されたコーティング組成物から形成されたコーティングに関して使用される場合、用語「透明な」は、垂直軸に沿って測定して、スペクトルの可視部における透過率Tvisが少なくとも約20%であるコーティングを意味する。語句「顔料および乳白剤」は、このようなコーティング組成物中に十分量で存在することによって、Tvis値が20%を下回る恐れがある材料を意味する。
【0015】
「PTFE」(テトラフルオロエチレン(「TFE」)のホモポリマー)、「PFA」(TFEとパーフルオロ(プロポキシビニルエーテル)とのコポリマー)、および「FEP」(TFEとヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)とのコポリマー)など、高結晶質フルオロポリマーは、非常に望ましい物理的諸特性を有する。C−F結合の結合強度が116Kcal/molであることは、高い熱安定性および優れた耐薬品性を与える役に立つ。フッ素は周期表の元素の中で電気陰性度が最も大きく、C−F結合の分極率は低い。高結晶質フルオロポリマーは、低い可溶性パラメータ、高分子量、および疎水性および親油性の挙動を有する傾向がある。残念なことに、これらの同じ特性のいくつかによって、高結晶質フルオロポリマーを(いくつかの場合を除いて、いくつかのパーフッ素化溶媒中、低い固形分レベルで)有機溶媒に溶解することが非常に困難になり、したがってこのような高結晶質フルオロポリマーは、一般には溶媒コーティング用途に適用できない。
【0016】
上記の高結晶質フルオロポリマーより結晶性が低く、または非晶質であるいくつかのフッ素化材料を、いくつかの溶媒に溶解することができる。例えば、THV(登録商標)フルオロサーモポリマー(例えば、ダイニオン、米国ミネソタ州オークデール(Dyneon, LLC, Oakdale, MN)から入手可能なTFE、HFP、およびフッ化ビニリデン(「VDF」)のターポリマー)やカイナー(KYNAR)(登録商標)ポリフッ化ビニリデン(例えば、ダイニオン(Dyneon LLC)から入手可能なTFE/VDFコポリマーまたはTFE/HFPコポリマー)など結晶性の低い材料、およびフローレル(FLUOREL)(登録商標)フルオロエラストマー(例えば、スリーエム(3M Company)から入手可能なHFP/VDFコポリマーおよびTFE/HFP/VDFターポリマー)などの非晶質フッ素樹脂を、様々なケトン、エーテル、アセテートに溶解することができる。しかし、これらのフッ素化材料は、上記の高結晶質フルオロポリマーより望ましくない機械的諸特性を有する傾向があり、したがって要求の厳しい最終用途が関与するコーティングに全面的に適しているわけではない。
【0017】
サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有するラテックスを、フッ素樹脂粒子を含有するラテックスとブレンドし、ブレンドされたラテックスを凝固し、乾燥し、乾燥したブレンドをフッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解することによって、フッ素樹脂の溶液中フルオロポリマー粒子の均質分散液を望ましくは高いフルオロポリマー粒子固形分レベルで含み、様々な有機溶媒を使用したコーティング組成物を形成できることを見出した。コーティング組成物は、明らかな沈降または凝集なしに優れた貯蔵安定性を有するようである。塗布されたコーティングは、優れた物理的諸特性を有するように思われる。フルオロポリマー粒子は、塗布されたコーティングで識別可能であり、ほとんど凝集していないようである。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、高い被覆品質を必要とする光学用途および他の最終用途で使用するのに十分に良好な特性を有する、透明または半透明な塗布されたコーティングを提供することができる。
【0018】
サブミクロンの乾燥結晶質フルオロポリマー粒子を乾燥フッ素樹脂粒子とブレンドし、得られた混合物をフッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解することによって、またはサブミクロンの乾燥結晶質フルオロポリマー粒子をフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液とブレンドすることによって、フッ素樹脂の溶媒希釈型溶液中フルオロポリマー粒子の分散液を含むコーティング組成物を形成できることも判明した。これらの後者のコーティング組成物は、上記に記載された均質なコーティング組成物より貯蔵安定性が低いが、使用量直前に撹拌すれば、非常に良好な物理的諸特性を有するように思われる塗布されたコーティング(例えば、オプティカルコーティング)を形成するために使用することができる。
【0019】
様々な結晶質フルオロポリマー粒子を、開示されたコーティング組成物で使用することができる。例示的な結晶質フルオロポリマー粒子としては、(約150℃より高いTmで示唆されるような)高い結晶質含有量と約50重量パーセントより高いフッ素含有量との組合せを有するフルオロポリマーの粒子が挙げられる。例えば、フルオロポリマー粒子には、Tmが約150℃〜約375℃、約150℃〜約320℃、約150℃〜約300℃、または約170℃〜約300℃であるフルオロポリマーの粒子が含まれ得る。また、フルオロポリマー粒子には、フッ素含有量が約50〜約76重量パーセント、約60〜約76重量パーセント、または約65〜約76重量パーセントであるフルオロポリマーの粒子が含まれ得る。代表的な結晶質フルオロポリマーには、例えば結晶質PTFE分散液(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)(登録商標)TF 5032 PTFE、ダイニオン(DYNEON)TF 5033 PTFE、ダイニオン(DYNEON)TF 5035 PTFE、またはダイニオン(DYNEON)TF 5050 PTFE、ならびにイ−・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニ−(E.I. du Pont de Nemours & Co.)からのテフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))(登録商標)PTFE GRADE 30およびテフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))PTFE GRADE 307A)、ETFEコポリマー(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)フルオロサーモプラスチックET 6235およびダイニオン(DYNEON)フルオロサーモプラスチックET X 6230 A、ならびにイ−・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニ−(E.I. du Pont de Nemours & Co.)からのテフゼル(TEFZEL)(登録商標)ETFEフルオロポリマー)、PFAコポリマー(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)フルオロサーモプラスチックPFA 6900Nおよびダイニオン(DYNEON)フルオロサーモプラスチックPFA X 6910N)、およびFEPコポリマー(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)フルオロサーモプラスチックFEP X 6300)などのパーフッ素化フルオロポリマーが含まれる。代表的な結晶質フルオロポリマーには、例えばすべてダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)THV 340Dフルオロサーモプラスチック、ダイニオン(DYNEON)THV 510Dフルオロサーモプラスチック、ダイニオン(DYNEON)THV 600フルオロサーモプラスチック、およびダイニオン(DYNEON)THV 800フルオロサーモプラスチック水系コポリマーラテックスなどの高フッ素化フルオロポリマーも含まれる。他の適切なフルオロポリマー粒子は、旭硝子(Asahi Glass)、アウシモント(Ausimont)、ヘキスト(Hoechst)、およびダイキン工業(Daikin Industries)などの供給業者から入手可能であり、当業者によく知られている。フルオロポリマー粒子の混合物を使用することができる。フルオロポリマー粒子は、望ましくは平均粒径が小さく、例えば400nm未満であるが、必要に応じて、特に塗布されたコーティングを硬化後にラビングする場合はより大きくてもよい。例えば、フルオロポリマー粒径の範囲は、約50〜約1000nm、または約50〜約400nm、または約50〜約200nmとすることができる。
【0020】
様々なフッ素樹脂(上記に指摘したように、フッ素プラスチックを含む)を、開示されたコーティング組成物で使用することができる。例示的なフッ素樹脂としては、(約150℃未満のTmで示唆されるような)低い結晶質含有量、または(示差走査熱分析を使用して決定して、測定可能な結晶融点がないということによって示されるような)非晶質構造と、約40重量パーセントより高いフッ素含有量との組合せを有するものが挙げられる。例えば、フッ素樹脂は、Tmが約100℃未満、約80℃未満、約60℃未満であるもの、または測定可能な結晶融点をもたないものが含まれ得る。また、フッ素樹脂には、フッ素含有量が約40〜約76重量パーセント、約50〜約76重量パーセント、約60〜約76重量パーセント、約65〜約76重量パーセント、または約65〜約71重量パーセントであるものが含まれ得る。このようなフッ素樹脂の代表的例には、例えばTHVフルオロサーモプラスチック(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)THV 220Dフルオロサーモプラスチック水系コポリマーラテックス);カイナー(KYNAR)ポリフッ化ビニリデン(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのカイナー(KYNAR)2800 HFP/VDFコポリマー、カイナー(KYNAR)7201 TFE/VDFコポリマー、およびカイナー(KYNAR)9301 VDF/HFP/TFEターポリマー、ならびにカイナー(KYNAR)ポリ(フッ化ビニリデン)(「PVDF」)樹脂(例えば、アトフィナ・ケミカル、米国ペンシルベニア州フィラデルフィア(Atofina Chemical, Philadelphia, PA)からのカイナー(KYNAR)500コポリマー分散液);フローレル(FLUOREL)フルオロエラストマー(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)から市販されているフローレル(FLUOREL)HFP/VDFコポリマーおよびフローレル(FLUOREL)TFE/HFP/VDFターポリマー);ダイニオン(DYNEON)フルオロエラストマー(例えば、ダイニオン(Dyneon, LLC)からのダイニオン(DYNEON)FE−2145、ダイニオン(DYNEON)FT−2481、ダイニオン(DYNEON)FE−5530、ダイニオン(DYNEON)FE−5730、およびダイニオン(DYNEON)FE−5830フルオロエラストマー);ダイキン工業(Daikin Industries)からのNEOFLON(登録商標)ポリ(クロロトリフルオロエチレン)エラストマー;および非晶質フルオロポリマー粉末(例えば、旭硝子(Asahi Glass)からのCYTOP(登録商標)粉末、イ−・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニ−(E.I. du Pont de Nemours & Co.)からのテフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))AF 1600およびテフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))AF 2400粉末、ならびにダイニオン(Dyneon LLC)からのダイニオン(DYNEON)J24粉末)が含まれる。他の適切なフッ素樹脂は、アウシモント(Ausimont)、ヘキスト(Hoechst)、およびダイキン工業(Daikin Industries)などの供給業者から入手可能であり、当業者によく知られている。フッ素樹脂は、1つまたは複数の硬化部位モノマー(例えば、塩素、ヨウ素、または臭素硬化部位などのハロゲン硬化部位を有するモノマー)を含むモノマー混合物から作製することができる。ハロゲン硬化部位は、反応性ハロゲン末端基を提供するハロゲン化連鎖移動剤を慎重に使用することによって、フッ素樹脂ポリマーミクロ構造に導入することができる。例示的な連鎖移動剤は、当業者によく知られており、例えば米国特許第4,000,356号明細書に記載されている。米国特許第6,720,360号明細書に記載されているように、ハロゲン含有硬化部位モノマーに加えて、またはその代わりに、1つまたは複数の他の硬化部位モノマー、例えばニトリル含有硬化部位モノマーを含むモノマー混合物から、フッ素樹脂を作製することができる。フッ素樹脂の混合物を使用することができる。
【0021】
結晶質フルオロポリマー粒子およびフッ素樹脂を、様々な比で組み合わせることができる。例えば、溶媒または他の添加材料を除いて、フルオロポリマー粒子およびフッ素樹脂の重量だけを考慮して、開示されたコーティング組成物は、約5〜約95重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約95〜約5重量パーセントのフッ素樹脂;約10〜約75重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約90〜約25重量パーセントのフッ素樹脂;約10〜約50重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約90〜約50重量パーセントのフッ素樹脂;または約10〜約30重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約90〜約70重量パーセントのフッ素樹脂を含有することができる。光学用途で特定の値を有する清澄な曇りのないコーティングは、例えば約5〜約60重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約95〜約40重量パーセントのフッ素樹脂、または約5〜約60重量パーセントのフルオロポリマー粒子および約95〜約40重量パーセントのフッ素樹脂を含有することができ、好ましくは透明な固化コーティングを形成することができるコーティング溶液が形成されるように、顔料または他の乳白剤を含まない。
【0022】
結晶質フルオロポリマー粒子およびフッ素樹脂は、望ましくはサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有するラテックスを、フッ素樹脂粒子を含有するラテックスとブレンドし、凝固し、場合によってはブレンドされたラテックスを洗浄し、乾燥することによって組み合わせる。凝固は、例えばブレンドされたラテックスを冷却すること(例えば、凍結すること)によって、または適切な塩(例えば、塩化マグネシウム)を添加することによって、実施することができる。冷却は、半導体製造および塩の導入が望ましくない可能性がある他の用途で使用されるコーティングに特に望ましい。洗浄ステップは、混合物から乳化剤または他の界面活性剤を実質的に除去する可能性があり、実質的に凝集していない乾燥粒子のよく混合されたブレンドを得るのに役立つことができる。得られた乾燥粒子混合物中の界面活性剤レベルは、例えば0.1重量%未満、0.05重量%未満、または0.01重量%未満とすることができる。次に、粒子混合物をフッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解して、フッ素樹脂の溶液中フルオロポリマー粒子の均質分散液を含む貯蔵安定なコーティング組成物を形成することができ、この組成物は、所望のコーティングを形成するために使用する前に明らかな沈降または凝集が起きることなく、長期間(例えば、1週間超、1か月超、6か月、または1年超)貯蔵することができる。
【0023】
結晶質フルオロポリマー粒子およびフッ素樹脂は、サブミクロンの乾燥結晶質フルオロポリマー粒子を乾燥フッ素樹脂粒子とブレンドし、得られた混合物をフッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解することによって、またはサブミクロンの乾燥結晶質フルオロポリマー粒子をフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液とブレンドすることによって組み合わせることもできる。これらのステップは、フッ素樹脂の溶媒希釈型溶液中フルオロポリマー粒子の分散液を含む準安定コーティング組成物を提供することができる。得られた組成物は、観察可能な沈降または凝集が起きる直前(例えば、1週間以内または1日以内)に使用することができ、あるいは必要なら使用直前に撹拌して、フルオロポリマー粒子を再分散し、これを使用して所望のコーティングを形成することができる。
【0024】
様々な溶媒を開示されたコーティング組成物で使用することができる。代表的な溶媒には、例えばアセトン、MEK、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、およびNMPなどのケトン;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、およびメチルテトラヒドロフルフリルエーテルなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、および酢酸ブチルなどのエステル;δ−バレロラクトンやγ−バレロラクトンなどの環状エステル;パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランやヒドロフルオロエーテルなどのフッ素化溶媒;およびその混合物が含まれる。上記に指摘したように、開示されたコーティング組成物は、フッ素樹脂を溶解することができない他の有機液体を含有してもよく、水を含有してもよい。ただし、このような他の有機液体と水の重量が溶媒の重量を下回ることを条件とする。例えば、このような他の有機液体または水は、開示されたコーティング組成物の30%未満、10%未満、5%未満、または1%未満に相当することができる。
【0025】
開示されたコーティング組成物は、様々なオプションの追加材料を含むことができる。例示的な追加材料としては、接着促進剤(例えば、シラン)、フルオロポリマー架橋剤(例えば、ポリオレフィン)、および開始剤(例えば、光開始剤および熱開始剤)が挙げられる。このような追加材料のタイプおよび量を当業者は容易に理解するであろう。例えば、例示的な接着促進剤としては、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートやビニルトリメトキシシランなど、オレフィン性官能基を含む光グラフト可能なシランエステルが挙げられる。これらの光グラフト可能なシランエステルは、フルオロポリマー、フッ素樹脂主鎖と反応して、懸垂型シロキシ基を有するシリル−グラフト化材料を形成することができる。このようなシロキシ基を利用して、同じまたは隣接したコーティング層の他の材料との結合を形成して、それによって他の材料または隣接した層への改善された接着をもたらすことができる。他の接着促進剤には、3−アミノプロピルトリメトキシシランやそのオリゴマー(例えば、ジーイー・シリコーンズ、米国コネチカット州ウィルトン(GE Silicones, Wilton, CT)からのシルクエスト(SILQUEST)(登録商標)A−1110);3−アミノプロピルトリエトキシシランやそのオリゴマー(例えば、ジーイー・シリコーンズ(GE Silicones)からのシルクエスト(SILQUEST)A−1100およびシルクエスト(SILQUEST)A−1106);3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(例えば、ジーイー・シリコーンズ(GE Silicones)からのシルクエスト(SILQUEST)A−1120);ジーイー・シリコーンズ(GE Silicones)からのシルクエスト(SILQUEST)A−1130;(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン;(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(例えば、ジーイー・シリコーンズ(GE Silicones)からのシルクエスト(SILQUEST)A−2120)、ビス−(γ−トリエトキシシリルプロピル)アミン(例えば、ジーイー・シリコーンズ(GE Silicones)からのシルクエスト(SILQUEST)A−1170);N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリブトキシシラン;6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン;4−アミノブチルトリメトキシシラン;4−アミノブチルトリエトキシシラン;p−(2−アミノエチル)フェニルトリメトキシシラン;3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン;3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(例えば、シベント・シランズ、米国ニュージャージー州ピスカタウエイ(Sivento Silanes, Piscataway, NJ)からのダイナシラン(DYNASYLAN)(登録商標)1146)などのオリゴマーのアミノシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン;3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン;3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン;3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン;4−アミノフェニルトリメトキシシラン;3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン;2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン;2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン;2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン;2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン;N,N−ジメチルアニリンやジアザビシクロオクタンなどの第三級アミン;および((RO)3Si(CH2)NR)2C=Oなどのビス−シリル尿素などのアミノ置換オルガノシランが含まれる。接着促進剤の混合物を使用することができる。
【0026】
例示的な架橋剤としては、例えば1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、およびトリプロピレングリコールジアクリレートなど、ジ(メタ)アクリルを含む化合物を含めて、ポリ(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。他の適切な架橋剤としては、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリアクリレート(例えば、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリトリトールトリアクリレート、プロポキシ化トリアクリレート(例えば、プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシ化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、およびトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートなど、トリ(メタ)アクリルを含む化合物が挙げられる。追加の適切な架橋剤としては、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリトリトールテトラアクリレート、およびペンタエリトリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート;例えば米国特許第4,262,072号明細書に記載のようなヒダントイン部分を含むポリ(メタ)アクリレート;および例えばウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートなど、オリゴマーの(メタ)アクリル化合物;上記のポリアクリルアミド類似体;ならびにその組合せなど、より高級な官能基(メタ)アクリルを含む化合物が挙げられる。適切な架橋剤は、サートマー、米国ペンシルベニア州エクストン(Sartomer Company, Exton, PA);ユーシービー・ケミカルズ・コーポレーション、米国ジョージア州スマーナ(UCB Chemicals Corporation, Smyrna, GA);およびアルドリッチ・ケミカル、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Aldrich Chemical Company, Milwaukee, WI)を含めて、業者から広く利用可能である。例示的な市販架橋剤としては、すべてサートマー(Sartomer Company)からのSR−351トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)ならびにSR−444およびSR 494ペンタエリトリトールトリ/テトラアクリレート(「PETA」)が挙げられる。架橋剤の混合物および一官能性材料(例えば、TMPTAとメチルメタクリレートの混合物など、多官能性および一官能性の(メタ)アクリレートの混合物)を使用することもできる。開示されたコーティング組成物で利用することができる他の架橋剤または一官能性材料には、パーフルオロポリエーテル(メタ)アクリレートなどのフッ素化(メタ)アクリレートが含まれる。これらのパーフルオロポリエーテルアクリレートは、望ましくはヘキサフルオロプロピレンオキサイド(「HFPO」)のマルチ(メタ)アクリレートまたはモノ(メタ)アクリレート誘導体に基づくことができ、(マルチ(メタ)アクリレート誘導体の場合)単独の架橋剤として使用することができる。マルチ(メタ)アクリレート誘導体は、メチルメタクリレートなどの非フッ素化一官能性(メタ)アクリレート、またはTMPTAやPETAなどの非フッ素化架橋剤と共に使用することもでき、モノ(メタ)アクリレート誘導体は、TMPTAやPETAなどの非フッ素化架橋剤と使用することができる。
【0027】
例示的な開始剤としては、ベンゾフェノンやその誘導体;ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−ベンジルベンゾイン;ベンジルジメチルケタール(例えば、米国ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation of Tarrytown, NY)からのイルガキュア(IRGACURE)(登録商標)651)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルなどのベンゾインエーテル;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのダロキュア(DAROCUR)(登録商標)1173)や1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのイルガキュア(IRGACURE)184)などのアセトフェノンおよびその誘導体;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのイルガキュア(IRGACURE)907);2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのイルガキュア(IRGACURE)369);ベンゾフェノンおよびその誘導体やアントラキノンおよびその誘導体などの芳香族ケトン;ベンジルジメチルケタール(例えば、ランベルティ、スペイン ガララーテ(Lamberti S.p.A of Gallarate, Spain)からのエサキュア(ESACURE)(登録商標)KB−1);ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩;チタン錯体(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのCGI 784 DC);ハロメチルニトロベンゼン;ならびにモノおよびビス−アシルホスフィン(例えば、すべてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からのイルガキュア(IRGACURE)1700、イルガキュア(IRGACURE)1800、イルガキュア(IRGACURE)1850、イルガキュア(IRGACURE)819、イルガキュア(IRGACURE)2005、イルガキュア(IRGACURE)2010、イルガキュア(IRGACURE)2020、およびダロキュア(DAROCUR)4265)などのラジカル光開始剤が挙げられる。光開始剤の混合物を使用することもできる。光増感剤を使用することもできる。例えば、ファースト・ケミカル・コーポレーション、米国ミシシッピ州パスカグーラ(First Chemical Corporation, Pascagoula, MS)からの光増感剤である2−イソプロピルチオキサントンを、イルガキュア(IRGACURE)369などの光開始剤と共に使用することができる。例示的な熱開始剤としては、アゾ、過酸化物、過硫酸塩、レドックス開始剤、およびその混合物が挙げられる。必要に応じて、光開始剤と熱開始剤の混合物を使用することができる。コーティング組成物の全重量に対して、開始剤は全量で典型的には約10重量パーセント未満、より典型的には約5重量パーセント未満で使用される。
【0028】
開示されたコーティング組成物は、界面活性剤、帯電防止剤(例えば、導電性ポリマー)、レベリング剤、紫外線(「UV」)吸収剤、安定剤、酸化防止剤、滑沢剤、顔料、または(オプティカルコーティングにおける適切な透明度の達成を妨げるかもしれない場合を除いて)他の乳白剤、染料、可塑剤、懸濁化剤などを含めて他のオプションのアジュバントを含有できることを、当業者は理解するであろう。光学性能が重要な用途では、硬化コーティングは、550nmにおける可視光線透過率が好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%であり、好ましくは顔料および乳白剤を実質的に含まない可能性がある。
【0029】
当業者によく知られている様々な技法を使用して、開示されたコーティングを塗布し、硬化することができる。例示的なコーティング方法としては、ダイコーティング、ナイフコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング、およびディップコーティングが挙げられる。例えば移動ウェブまたは他の支持体もしくは基板を被覆して、ロール状または被覆長さの長い被覆物品を提供することによって、コーティング組成物を連続方式で塗布することができる。その代わりにまたはさらに、別々の支持体部分に個別にまたは複数にコーティング組成物を塗布して、例えば単独または複数被覆された1つまたは複数の物品をもたらすことができる。例示的な硬化技法としては、紫外線、可視光、電子ビーム、赤外線、および当業者によく知られている他の供給源などのエネルギー源の使用が挙げられる。
【0030】
開示された物品では様々な支持体を使用することができる。代表的な支持体には、ガラス、金属、セラミック、半導体、様々な熱可塑性または架橋ポリマー材料、および当業者によく知られている他の基板などの硬質基板が含まれる。代表的な支持体には、セルロース系材料(例えば、三酢酸セルロースまたは「TAC」)などの可撓性基板(例えば、透明、半透明、または不透明な可撓性のフィルム、織物ウェブまたは不織ウェブ、および可撓性積層物);ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、熱安定化PET(「HSPET」)、テレフタレートコポリエステル(「coPET」)、ポリエチレンナフタレート(「PEN」)、ナフタレートコポリエステル(「coPEN」)、およびポリブチレン2,6−ナフタレート(「PBN」)など、ポリエステルおよびコポリエステルを含めて、プラスチック;低密度ポリエチレン(「LDPE」)、線状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)、高密度ポリエチレン(「HDPE」)、ポリプロピレン(「PP」)、および環状オレフィンコポリマー(例えば、メタロセンによって触媒された環状オレフィンコポリマーまたは「COC」)などのポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)、エチレンエチルアクリレート(「EEA」)、エチレンメチルアクリレート(「EMA」)、およびエチレンビニルアクリレート(「EVA」)などのアクリレートおよびメタクリレート;ポリスチレン(「PS」)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(「ABS」)、スチレン−アクリロニトリル(「SAN」)、スチレン/無水マレイン酸(「SMA」)、およびポリα−メチルスチレンなどのスチレン系化合物(styrenic);ナイロン6(「PA6」)などのポリアミド;ポリアミドイミド(「PAI」);ポリイミド(「PI」);ポリエーテルイミド(「PEI」);ポリフタルアミド;ポリ塩化ビニル(「PVC」);ポリオキシメチレン(「POM」);ポリビニルナフタレン(「PVN」);ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」);ポリアリールエーテルケトン(「PAEK」);フェノール系化合物;エポキシ;フルオロポリマー(例えば、ダイニオン(DYNEON)(登録商標)HTE、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、およびエチレンのターポリマー);ビスフェノールAのポリカルボナート(「PC」)などのポリカルボナート;ポリアリーラート(「PAR」);ポリフェニレンオキシド(「PPO」);ポリスルホン(「PSul」)、ポリアリールスルホン(「PAS」)、およびポリエーテルスルホン(「PES」)などのスルホン;ならびに当業者によく知られている他の材料も含まれる。
【0031】
支持体は、通常は所期の使用に望まれる機械的、化学的(および必要なら光学的)諸特性に一部基づいて選択される。所望の機械的および化学的諸特性には、通常は可撓性、寸法安定性、耐衝撃性、コーティング受容性または接着性、表面汚染、および表面トポグラフィーの1つまたは複数が含まれる。所望の光学諸特性には、通常は透明度、光沢、曇り度、および艶消仕上げの有無が含まれる。例えば、光沢と艶消仕上げの両方の光透過型支持体を表示パネルで使用することができる。艶消支持体は、通常は典型的な光沢支持体より透過率の値が低く、曇り度の値が高い。艶消仕上げ可撓性フィルムには、例えばシリカなど、光を散乱するマイクロメートルのサイズの分散無機充填剤が含まれ得る。例示的な艶消フィルムは、U.S.A. キモト・テック、米国ジョージア州シーダータウン(U.S.A. Kimoto Tech, Cedartown, GA)から商品名「N4D2A」で市販されている。多層光学フィルム、再帰反射シーティングや輝度向上フィルムなどのミクロ構造フィルム、偏光またはリターダーフィルム(例えば、反射または吸収偏光フィルム、および二軸リターダーフィルム)、散乱フィルム、および(例えば、米国特許出願公開第2004/0184150 A1号明細書に記載のような)補償フィルムを含めて、様々な他の支持体を使用することもできる。多層光学フィルムは、特に有用であり、例えば米国特許第5,882,774号明細書および第6,368,699号明細書、米国特許出願公開第2003/0217806 A1号明細書、ならびに国際公開第第95/17303号パンフレットおよび第99/39224号パンフレットに記載されている。
【0032】
支持体の厚さも、通常は所期の使用に依存する。ロールツーロール処理装置を使用して作製または被覆された可撓性フィルム支持体が関与する用途では、支持体の厚さは、好ましくは約0.005〜約1mm、より好ましくは約0.02〜約0.25mmである。可撓性フィルムは、押出、ならびにオプションの一軸延伸、二軸延伸、ヒートセッティング、張力下アニーリング、および当業者によく知られている他の技法など、通常の製膜技法を使用して形成することができる。例えば、支持体は、少なくとも拘束されていない場合の熱安定化温度に至るまで収縮を阻止するように形成することができる。例えば、化学処理、空気や窒素コロナなどのコロナ処理、プラズマ、火炎、または化学線を用いて支持体への接着が改善されるように、支持体を処理することができる。必要に応じて、その代わりにまたはさらに、オプションのタイ層またはプライマーを支持体に塗布して、接着を高めることができる。
【0033】
開示されたコーティング組成物から形成され、固化(例えば、乾燥)または硬化された(例えば、重合または架橋された)コーティングで被覆された物品をラビングし、バフィングし、ポリッシングし、またはその他の方法で外乱させて、コーティング表面におけるサブミクロンのフルオロポリマー粒子が、その下にあるコーティングの残部上に連続またはほぼ連続したフルオロポリマー表面薄層を形成できることを見出した。好ましい実施形態では、フルオロポリマー薄層は、その下にあるコーティング上に比較的均一に塗抹され、フルオロポリマー粒子が単にフィブリル化を(例えば、延伸または他の引張りのため)起こした場合の実情であり得るものより薄く、かつ均一であると思われる。ラビングによって、硬化コーティングの曇り度が低減される可能性もある。したがって、開示されたコーティング組成物を使用して、固化または硬化コーティングで被覆された物品を提供することができる。この物品は、サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有するフッ素樹脂結合剤上に連続またはほぼ連続したフルオロポリマー薄層を含む。コーティング形成時に、あるいは被覆物品を使用し、もしくは使用予定である場合は後に、様々なラビング技法を使用することができる。チーズクロスまたは他の適切な織物、不織布、もしくは編物を使用して、コーティングを数回ワイピングまたはバフィングするだけで、所望の薄層が形成されることが多い。当業者は、他の多くのラビング技法が使用され得ることを理解するであろう。
【0034】
開示されたコーティングは、当業者によく知られている様々な用途で使用することができる。例えば、開示されたコーティングを、低摩擦表面、疎水性表面、親油性表面、または光管理構造が望まれることがある物品に塗布することができる。使用の一例は、開示されたコーティングを光学ディスプレイまたは表示パネル用の反射防止フィルムの低屈折率コーティング層として塗布するものである。このようなディスプレイおよび表示パネルは、点灯または消灯した携帯型または非携帯型情報表示デバイスとすることができ、例えば低表面エネルギー(例えば、耐汚れ性、染み抵抗性、撥油性、または撥水性)、耐久性(例えば、磨耗抵抗性)、および光学的透明度(例えば、低曇り度)の組合せが望まれることがある。例えば、曇り度レベルは、上記のヘイズ・ガード・プラス(HAZE−GARD PLUS)機器を使用して測定すると、望ましくは5%未満、2%未満、1%未満、または0.5%未満とすることができる。反射防止フィルムは、グレアおよび透過損失を低減し、同時に耐久性および光学的透明度を改善することができる。開示されたコーティング組成物は、損傷を受けやすい、またはインクペン、マーカー、および他のマーキングデバイス、ワイピング布、紙製品などでタッチもしくは接触されやすい情報表示ビューイング表面の少なくとも一部分を覆うのに特に有用である。ビューイング表面には、例えば下にある透明支持体、ハードコート、適切に薄い高屈折率層、および開示されたコーティング組成物から作製された適切に薄い低屈折率層を含むことができる。例示的な情報ディスプレイとしては、液晶ディスプレイ(「LCD」)、プラズマディスプレイ、フロントおよびリア・プロジェクションディスプレイ、陰極線管(「CRT」)、およびサイネージなどの複数文字ディスプレイ、特に複数行複数文字ディスプレイ、ならびに発光ダイオード(「LED」)、信号灯、およびスイッチなどの1文字またはバイナリーディスプレイが挙げられる。このような情報ディスプレイを使用することができる例示的な電子または電気デバイスとしては、パーソナルデジタルアシスタント(「PDA)」、LCDテレビ(ダイレクト照明およびエッジ照明)、(PDA/携帯電話の組合せを含めて)携帯電話、タッチ感応スクリーン、腕時計、カーナビゲーションシステム、全地球測位システム、測深機、計算機、電子ブック、CDおよびDVDプレーヤー、プロジェクションテレビスクリーン、コンピュータモニター、ノートブック型コンピュータディスプレイ、計器ゲージ、計器盤カバー、グラフィックディスプレイなどのサイネージなどが挙げられる。これらのデバイスは通常は、「レンズ」と呼ばれることがある露出したビューイング表面を有する。ビューイング表面は、平面状でも、非平面状(例えば、わずかに曲面)でもよく、所望の任意のサイズおよび形状を有することができる。開示されたコーティング組成物は、レンズ(例えば、カメラレンズ、眼鏡レンズ、および双眼鏡レンズ);装飾シーティングおよび再帰反射シーティングを含めて、反射鏡および他の反射物;車両前照灯および尾灯;自動車、船舶、列車、および航空機を含めて、車両の窓(風防ガラスおよび後退灯を含む);車体および車両トリム;インテリアまたはエクステリア使用向けの建築用窓;建造物表面;装置筺体;陳列ケース;道路舗装標識(例えば、道路鋲)、道路標識、および舗装マーキングテープ;オーバーヘッドプロジェクター;エンターテインメントキャビネット用扉およびエンターテインメントデバイス用カバー;時計カバー;光記録および光磁気記録ディスク;ならびに当業者によく知られている他の物品を含めて、様々な他の透明または非透明な物品の屋内または屋外建築用コーティング、保護コーティング、または装飾用コーティングとして使用することもできる。
【0035】
本発明を、さらに下記の例示的実施例で説明する。ここで、部および百分率はすべて、別段の指摘がない限り重量による。別段の注記のない限り、化学試薬はすべて、アルドリッチ・ケミカル、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI)から入手し、または入手することができる。下記の略語を使用する。
「A174」は、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートを意味する。
「A1106」は、ジーイー・シリコーンズ、米国コネティカット州ウィルトン(GE Silicones, Wilton CT)製、シルクエスト(SILQUEST)A−1106シラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランを意味する。
「APTMS」は、4−アミノフェニルトリメトキシシランを意味する。
「BPB」は、t−ブチルペルオキシドベンゾエートを意味する。
「DIADC」は、アゾジカルボン酸ジイソプロピルを意味する。
「DMAPS」は、N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランを意味する。
「FKMラテックスA」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)E15742、ペルオキシド硬化性臭素硬化部位を有するVDF/TFE/HFP/BTFEフルオロエラストマー(ただし、「HFP」はヘキサフルオロプロピレンであり、「BTFB」はブロモテトラフルオロブテンである)の水系ラテックス(固形分濃度32%)を意味する。
「FKMラテックスB」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)E18042、ペルオキシド硬化性ヨウ素硬化部位を有するVDF/TFE/HFP/ITFBフルオロエラストマー(ただし、「ITFB」はヨードテトラフルオロブテンである)の水系ラテックス(固形分濃度12.7%)を意味する。
「FKM−A」は、FKMラテックスAの凝固によって調製された乾燥固体FKMポリマーを意味する。
「FKM−B」は、FKMラテックスBの凝固によって調製された乾燥固体FKMポリマーを意味する。
「HFPO−A」は、2004年12月10日出願の、本譲受人の同時係属中の米国特許出願第11/009,181号明細書に記載のように調製された式C3F7O(CFCF3CF2O)5CF(CF3)CONHCH2CH2OCOCH=CH2を有するヘキサフルオロプロピレンオキサイドアミドエトキシアクリレートを意味する。
「HFPO−B」は、20%のTMPTA、40%のHFPO/TMPTA(1:1)付加物、および40%のHFPO/TMPTA(2:1)付加物の混合物を意味する。ここで、1:1および2:1のHFPO/TMPTA付加物は、本譲受人の上記の米国特許出願第11/009,181号明細書に記載のように、ヘキサフルオロプロピレンオキサイド−アミドプロピルメチルアミン付加物HFPOC(O)N(H)CH2CH2CH2N(H)CH3とTMPTAを1:1または2:1のモル比で混合することによって調製される。
「I651」は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、米国ニューヨーク州タリータウン(Ciba Specialty Chemicals, Tarrytown, NY)製、イルガキュア(IRGACURE)(登録商標)651、2−フェニル−2,2−ジメトキシアセトフェノンを意味する。
「PAPTMS」は、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを意味する。
「PET」は、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー、米国デラウェア州ウィルミントン(E.I. du Pont de Nemours and Co., Wilmington, DE)製、メリネックス(MELINEX)(登録商標)618、厚さ0.13mmの下塗付きポリ(エチレンテレフタレート)フィルムを意味する。
「PET−H」は、米国特許第6,299,799号明細書の実施例3に記載のもののようなセラマーハードコート組成物で被覆されたメリネックス(MELINEX)618 PETフィルムを意味する。下塗付きPET表面に、30%のセラマー組成物のイソプロパノール溶液を5マイクロメートルの厚さで被覆し、酸素を50ppm未満しか含まないチャンバ中、ヒュージョン・ユー・ブイ・システムズ、米国メリーランド州ゲーサーズバーグ(Fusion UV systems, Gaithersburg Maryland)の600ワットのH型球下で硬化する。
「PFAラテックスA」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオンフルオロサーモプラスチック(DYNEON Fluorothermoplastic)PFA 6910N(20.4%固形分の水系ラテックスとして入手可能)を意味する。
「PFAラテックスB」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオンフルオロサーモプラスチック(DYNEON Fluorothermoplastic)PFA 6900Nフルオロサーモプラスチック(30%固形分の水系ラテックスとして入手可能)を意味する。
「PFA−A」は、PFAラテックスAの凝固によって調製された乾燥固体のPFAポリマーを意味する。
「PFA−B」は、PFAラテックスBの凝固によって調製された乾燥固体のPFAポリマーを意味する。
「PTFEラテックスA」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)PTFEラテックス5033(9.6%固形分のTFEホモポリマーラテックスとして入手可能)を意味する。
「PTFE−A」は、PTFEラテックスAの凝固によって調製された乾燥固体のTFEホモポリマーを意味する。
「PTFE−J」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)J24、ポリ(テトラフルオロエチレン)マイクロ粉末を意味する。
「PVDF−A」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、カイナー(KYNAR)(登録商標)7201、ポリ(フッ化ビニリデン)フッ素樹脂を意味する。
「TAIC」は、トリアリルイソシアヌレートを意味する。
「THVラテックスA」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)THV 220D水系フッ素樹脂ラテックス、24%固形分のVDF/HFP/TFEコポリマーを意味する。
「THVラテックスB」は、ダイニオン(Dyneon LLC)製、ダイニオン(DYNEON)THV 230水系フッ素樹脂ラテックス、36%固形分のVDF/HFP/TFEコポリマーを意味する。
「THV A」は、THVラテックスAの凝固によって調製された乾燥固体のTHVポリマーを意味する。
「THV B」は、THVラテックスBの凝固によって調製された乾燥固体のTHVポリマーを意味する。
「TMPTA」は、トリメチロールプロパントリアクリレートを意味する。
「VS」は、ビニルトリメトキシシランを意味する。
【0036】
「接着剤の剥離抵抗の標準試験方法」と題し、より一般的には「T型剥離」試験と呼ばれるASTM D−1876に記載されている試験手順を使用して、剥離強さを評価した。試料は、適度な接着性を有する厚さ0.5mmのフルオロポリマーシート(例えば、フルオロエラストマー系コーティングの場合、ダイニオン(Dyneon, LLC)のTHV 200フッ素樹脂シート、およびPVDF系コーティングの場合、ダイニオン(Dyneon, LLC)のPVDFフルオロエラストマーシート)に被覆面を熱積層することによって調製した。後期の分離を容易にするために、非接着性PTFE被覆ファイバーシートの細片を、組立層間に深さ6mmで組立層の一縁部に沿って一時的に挿入した。組立層を一緒に、ウォバシュ液圧プレス(Wabash Hydraulic press)の加熱プラテン間で、試料と厚さ0.5mmのシートを一緒に溶融するのに十分な温度(例えば、約200℃)で2分間加圧し、次いでコールドプレスのプラテン間で室温に冷却した。得られた積層アセンブリをT型剥離測定にかけた。データは、シンテック(SINTECH)(登録商標)モデル20測定装置(エム・ティー・エス・システムズ・コーポレーション、米国ミネソタ州イーデンプレーリー(MTS Systems Corporation, Eden Prairie, MN)から入手可能)を装備し、クロスヘッド速度101.6mm/分で操作されたインストロン(INSTRON)(登録商標)モデル1125試験機(インストロン、米国マサチューセッツ州カントン(Instron Corp., Canton, MA)から入手可能)を使用して得られた。剥離強さは、剥離試験中測定された平均荷重として算出し、少なくとも2つの試料の平均について、Kg/幅1mmの単位で報告した。場合によっては、積層した試料を沸騰水に2時間浸漬し、次いで積層物を手で分離して、中間膜の破損の程度を決定することによって、剥離接着力を定性評価した。定性的接着力レベルを以下の通り示した:「層間剥離された」は、コーティングが沸騰水中で支持体から剥がれたことを意味し、「中程度」は、コーティングが支持体から容易に剥がれる可能性があることを意味し、「良好」は、コーティングが支持体から剥がれることが困難であり得ることを意味し、「強力」は、コーティングが支持体から剥がれることはできないことを意味する。
【0037】
磨耗抵抗性は、被覆硬化した試料を空気中終夜放置することによってマニュアルで評価した。次いで、強力な手の圧力を用いて、各試料をキムワイプ(KIMWIPE)紙タオル(キンバリー・クラーク、米国ウィスコンシン州ニーナ(Kimberly−Clark Corp., Neenah, WI)から入手可能)で10回ラビングした。磨耗きずがあれば、それを目視評価し、観察された手動磨耗の程度を示すために、「なし」、「非常にわずか」、「わずか」、または「引掻き」のスコアを付与した。結果を引掻きの程度として報告した(手動磨耗抵抗性)。
【0038】
磨耗抵抗性は、コーティングを砂で磨耗したときの反射率の変化(「ΔR」)(パーセント)を評価する砂磨耗試験も使用して評価した。適切に薄い、開示されたコーティング層(例えば、入射光の四分の一波長の奇数倍数)は、反射防止性を有することができる。したがって、磨耗によるコーティング損失は、ΔRを評価することによって測定することができ、ΔR値が低いほど、改善された砂磨耗抵抗性に対応する。被覆フィルム試験試料をそれぞれ、直径90mmに打ち抜いた。フィルム試料の真中には、その無被覆面に直径25mmの円のきずがついて、反射測定が行われる前後の光学領域が特定された。パーキン・エルマー、米国マサチューセッツ州ウェルズリー(Perkin−Elmer, Inc. of Wellesley, MA)製のラムダ(LAMDA)(登録商標)900 UV−Vis−NIR分光計を反射モードで操作して使用して、光学領域の反射率値を550nmで測定した。ウィートン・ガラス・ボトルズ、米国ニュージャージー州ミルビル(Wheaton Glass Bottles, Millville, NJ)製の0.5リットルの直柱型透明ガラスジャー、モデルWS−216922の蓋部に、フィルム試料を被覆面がジャーの内部に向くように配置した。ジャーを、ビー・ダブリュー・アール・インターナショナル、米国ペンシルベニア州ウェストチェスター(VWR International of W. Chester, PA)から得られた、ASTM規格C−190 T−132に準拠する20〜30メッシュのオタワ標準砂(Ottawa Sand Standard)80gで部分充填した。蓋部を定位置にねじ込み、ジャーを上下逆さまに、ビー・ダブリュー・アール・インターナショナル(VWR International)製のシグネチャー(SIGNATURE)(登録商標)モデルDS−500Eオービタルシェーカーに載せた。シェーカーを250rpmで30分間操作して、試料を広範な砂磨耗にかけた。この試験時間の後、フィルム試料を蓋部から取り出し、コーティングを、2−プロパノールで湿らせた柔らかな布で拭いた。上述と同じ光学領域における反射率を550nmで測定し、次式:
磨耗抵抗性(ΔR)=(ACR−ICR)/(ISR−ICR)
(式中、
ACRは、磨耗コーティング反射率〜を意味し、
ICRは、初期のコーティング反射率を意味し、
ISRは、初期の支持体反射率を意味する)
に従って、初期の支持体反射率および初期のコーティング反射率と比較し、反射率の変化(ΔR)(百分率)として報告した。
【0039】
磨耗抵抗性は、アノラッド・プロダクツ、米国ニューヨーク州ハーパーグ(Anorad Products, Hauppauge, NY)製のリニアスクラッチ装置(Linear Scratch Apparatus)モデル4138を使用して、計量したダイヤモンド−黒鉛スタイラスを、試料表面を横切って一度移動させて、機械的にも評価を行った。グラフ・ダイヤモンド・プロダクツ、カナダ オンタリオ州ブランプトン(Graff Diamond Products Limited, Brampton, Ontario, Canada)製の直径500μmまたは5mmの異なる2つのスタイラスを、予荷重250〜1000gで使用した。スタイラスを、コーティングを横切って6.7m/分で10.2cm移動させる。得られた引掻き(があれば、それ)は、アキシオ・イメージャー(AXIO−IMAGER)(登録商標)カメラを装備したアキシオトロン(AXIOTRON)(登録商標)光学顕微鏡(両方とも、カール・ツァイス、ドイツ ゲティング(Carl Zeiss AG of Goetting, Germany)製)、およびオプトロニクス・テラ・ユニバーサル、米国カリフォルニア州アナハイム(Optronics−Terra Universal of Anaheim, CA)製のビデオインターフェースを使用して評価した。光パワーを10Xに設定し、損傷の性質を、ゼロから10の段階で記録し、評価ゼロは、視覚的に明らかな引掻きがないことを表し、評価10は、引掻きが完全にコーティングを貫通していることを表わす。結果を機械的引掻き抵抗性として報告した。
【実施例】
【0040】
実施例1
352.9g分のPFAラテックスAを900g分のFKMラテックスAとブレンドして、サブミクロンフルオロポリマー粒子とフッ素樹脂粒子を20:80の重量比で含む、ブレンドされたラテックスを得た。ブレンドされたラテックスを、60gのMgCl2・6H2Oを2500mlの脱イオン水に添加することによって調製された溶液2.5リットルと混合することによって、粒子を凝固させた。得られた混合物を濾過して、固体粒子を分離し、続いて濾過した粒子を、ブレンドされたラテックス中の水と等量の70℃の脱イオン水で3回洗浄し、洗浄した粒子を130℃で16時間乾燥した。同様な乾燥は、70℃の温度で終夜、または90℃の温度で4〜5時間によって得ることができる。得られた乾燥フルオロポリマー粒子と乾燥フッ素樹脂粒子の混合物は、ゴム質の白色固体を形成した。ブレンドされたラテックスおよび乾燥粒子中の界面活性剤レベルの定量分析によって、界面活性剤レベルが、ブレンドされたラテックスの1000ppm(0.1%)から乾燥粒子の168ppm(0.0168%)に減少したことが判明した。
【0041】
乾燥粒子混合物を、20重量%固形分のコーティング溶液を提供するのに十分な量のMEKと組み合わせた。これによって、貯蔵安定なマスターバッチが得られ、2か月にわたって、視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層が出現することなく貯蔵された。観察された貯蔵安定性は、フルオロポリマー粒子とMEKを組み合わせた場合に普通は観察される貯蔵安定性より大いに良好であり、界面活性剤レベルの低減にもかかわらず、持続した。
【0042】
マスターバッチ固体を「PFA−A/FKM−A 20/80」として認定することができ、100部のマスターバッチ固体には20部のPFA−Aフルオロポリマー粒子および80部のFKM−Aフッ素樹脂粒子が含まれていることが示唆されている。マスターバッチの一部分をMEKで3%固形分に希釈し、マイヤーバー(Meyer Bar)巻線ロッドNo.3を使用して、PET支持体に塗布し、120℃で10分間乾燥して、乾燥厚さ100〜120nmのコーティングが得た。ヒュージョン・ユー・ブイ・システムズ、米国メリーランド州ゲーサーズバーグ(Fusion UV Systems, Gaithersburg, MD)の600ワットのH型球を装備し、酸素を50ppm未満しか含まないチャンバを通って、10.7m/分で3回パスを行って、コーティングを紫外線にかけた。固化コーティングは、透明で無色であり、非常にわずかな曇りがあった。原子間力顕微鏡法を使用して検査すると、フルオロポリマー粒子は、凝集しておらず、コーティング表面全体に分散しているように思われた。図1aは、ラビング前のコーティングの高さ像(左側)および相画像(右側)を示す原子間力顕微鏡写真である。コーティングを、キムワイプス(キムワイプ(KIMWIPES))(登録商標)紙タオル(キンバリー・クラーク(Kimberly−Clark Corp.)から市販されている)でラビングすると、曇りが消失した。原子間力顕微鏡法を使用して再検査すると(図1bを参照)、フルオロポリマーは、コーティング表面全体上に薄膜として広がっているように思われた。ESCAを使用した分光学的表面検査によって、FKMフルオロエラストマー中のVDF単位の特徴的なCH2ピークは、ラビング後よりラビング前のほうがかなり顕著であることが判明し、表面が、連続またはほぼ連続したフルオロポリマー層で覆われていたことが示唆された。ESCAによって、通常は試料表面の最外部30〜100Åの分析が行われる。
【0043】
また、コーティングをPET−H支持体のセラマーハードコート面にも塗布した。固化コーティングは、PET支持体で観察されたように、ラビングの前後で同様な外観および挙動を示した。
【0044】
実施例2
実施例1の方法を使用して、PTFEラテックスAをFKMラテックスAとブレンドして、サブミクロンフルオロポリマー粒子とフッ素樹脂粒子を20:80の重量比で含む、ブレンドされたラテックスを得た。ブレンドされたラテックスを冷凍庫中、−20℃で終夜貯蔵し、冷凍した混合物を室温で溶かし、濾過して、固体粒子を分離し、ブレンドされたラテックス中の水と等量の70℃の脱イオン水で3回洗浄し、洗浄した粒子を90℃で16時間乾燥させることによって、粒子を凝固させた。得られた乾燥フルオロポリマー粒子と乾燥フッ素樹脂粒子の混合物は、ゴム質の白色固体を形成した。乾燥混合物を、20重量%固形分のコーティング溶液を提供するのに十分な量のMEKと組み合わせた。これによって、貯蔵安定なマスターバッチが得られ、10日間にわたって、消費する前に視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層が出現することなく貯蔵された。マスターバッチ固体を「PTFE−A/FKM−A 20/80」として認定することができ、100部のマスターバッチ固体には20部のPTFE−Aフルオロポリマー粒子および80部のFKM−Aフッ素樹脂粒子が含まれていることが示唆されている。マスターバッチの一部分を、厚さ100nmの硬化コーティングを形成するのに十分な量のMEKで希釈し、実施例1の方法を用いて、PETおよびPET−H支持体のセラマーハードコート面に塗布し、硬化した。固化した被覆物品は、透明で無色であり、非常にわずかな曇りがあった。原子間力顕微鏡法を使用して検査すると(図2aを参照)、フルオロポリマー粒子は、凝集しておらず、コーティング表面全体に分散しているように思われた。コーティングを紙タオルでラビングすると、曇りが消失した。原子間力顕微鏡法を使用して検査すると(図2bを参照)、フルオロポリマーは、コーティング表面全体上に薄膜として広がっているように思われた。
【0045】
実施例3
PFAラテックスAをTHVラテックスAとブレンドして、サブミクロンフルオロポリマー粒子とフッ素樹脂粒子を20:80の重量比で含む、ブレンドされたラテックスを得て、冷凍、濾過、洗浄、および乾燥によって、乾燥粉末ブレンドに変換した。得られた乾燥フルオロポリマー粒子と乾燥フッ素樹脂粒子の混合物は、綿毛状の純白外観で示した。乾燥混合物を、20重量%固形分のコーティング溶液を提供するのに十分な量のMEKと組み合わせた。これによって、貯蔵安定なマスターバッチが得られ、1週間にわたって、消費する前に視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層が出現することなく貯蔵された。マスターバッチ固体を「PFA−A/THV−A 20/80」として認定することができ、100部のマスターバッチ固体には20部のPFA−Aフルオロポリマー粒子および80部のTHV−Aフッ素樹脂粒子が含まれていることが示唆されている。マイヤーバー(Meyer Bar)巻線ロッドNo.3を使用した厚さ100nmの硬化コーティングの塗布が可能になるのに十分な量のMEKで、マスターバッチの一部分を希釈し、次いで実施例1の方法を用いて、PETおよびPET−H支持体に塗布し、光硬化した。また、コーティングを、PETおよびPET−H支持体に塗布し、風乾し、90〜120℃に加熱して、コーティングの熱接着も行った。固化した被覆物品は、透明で無色であり、非常にわずかな曇りがあった。コーティングを紙タオルでラビングすると、曇りが消失した。原子間力顕微鏡法を使用して検査すると、フルオロポリマーは、コーティング表面全体上に薄膜として広がっているように思われた。
【0046】
実施例4
実施例3の方法を使用して、PTFEラテックスAをTHVラテックスAとブレンドして、サブミクロンフルオロポリマー粒子とフッ素樹脂粒子を20:80の重量比で含む、ブレンドされたラテックスを得て、冷凍、濾過、洗浄、および乾燥によって、乾燥粉末ブレンドに変換させた。得られた乾燥フルオロポリマー粒子と乾燥フッ素樹脂粒子の混合物は、綿毛状の純白外観を示した。マスターバッチ固体を「PTFE−A/THV−A 20/80」として認定することができ、100部のマスターバッチ固体には20部のPTFE−Aフルオロポリマー粒子および80部のTHV−Aフッ素樹脂粒子が含まれていることが示唆されている。乾燥混合物を、20重量%固形分のコーティング溶液を提供するのに十分な量のMEKと組み合わせた。これによって、貯蔵安定なマスターバッチが得られ、23か月にわたって、視覚的に分離した沈殿物または視覚的に分離した層が出現することなく貯蔵された。調製した2週間後に、マイヤーバー(Meyer Bar)巻線ロッドNo.3を使用した厚さ100nmの硬化コーティングの塗布が可能になるのに十分な量のMEKで、マスターバッチの一部分を希釈し、次いで実施例1の方法を用いて、PETおよびPET−H支持体に塗布し、光硬化し、または加熱した。固化した被覆物品は、透明で無色であり、雲りがなかった。原子間力顕微鏡法を使用して検査すると、フルオロポリマー粒子は、凝集しておらず、コーティング表面全体に分散しているように思われた。
【0047】
実施例5
20g分のPTFE−J乾燥フルオロポリマー粒子を、80gのPVDF−Aフッ素樹脂を400gのMEKに溶解して、サブミクロンのフルオロポリマー粒子とフッ素樹脂を20:80の重量比で含むマスターバッチを得ることによって作製された溶液と、全固形分レベル20%で組み合わせた。マスターバッチ固体を「PTFE−J/PVDF−A 20/80」として認定することができ、100部のマスターバッチ固体には20部のPTFE−Jフルオロポリマー粒子および80部のPVDF−Aフッ素樹脂が含まれていることが示唆されている。得られた組成物の一部分をMEKで3%固形分に希釈し、十分に混合し、実施例1の方法を使用して、PETおよびPET−H支持体に迅速に塗布し、硬化した。未ラビングおよびラビング後の固化した被覆物品は、透明で無色であり、非常にわずかな曇りがあった。
【0048】
さらに、ラビング後の表面組成の変化を実証するために、PTFE−Jフルオロポリマー(図3a)およびPVDF−Aフッ素樹脂(図3b)から調製された被覆表面組成の最上部の80Åを分析することによって、化学分析電子分光(「ESCA」)スペクトルを得た。実施例5のコーティングについてラビングの前(図3c)および後(図3d)にもESCAスペクトルを得た。図3a、図3b、図3c、および図3dの比較によって、図3cの未ラビング試料は、フルオロポリマーからの−CF2CF2−基(図3aを参照)とフッ素樹脂からの−CF2CH2−基(図3bを参照)の両方の存在を示唆する約292および287eVにピークを示していることが判明した。図3dは、ラビング後、表面は、−CF2CH2−基が(この場合、このような基を表面から本質的に完全に減らすのに十分な程度に)非常に減少し、−CF2CF2−基が(この場合、このような基を含む明らかに連続した層を提供するのに十分な程度に)非常に富化されたことを示している。
【0049】
実施例6および比較例1〜11
実施例1〜5の方法を使用して、コーティング組成物を調製し、PET支持体に塗布した(および下記に記述するいくつかの場合には、PET−H支持体にも塗布し、あるいは代わりにPET−H支持体に塗布した)。(やはり、下記に記述する)いくつかの場合には、様々な量のシラン、アクリレート、または光開始剤を添加することによって、コーティング組成物を改変した。いくつかのコーティング組成物は、光開始剤を使用しないが、硬化部位モノマー、または別に添加される光開始剤が存在していない状態で硬化が起こることを可能にする他の材料を使用して作製した。実施例1のUVランプ下で、3回(または下記に記述する場合、6回)パスを行って、コーティングを光硬化した。コーティングを、剥離強さ、沸騰水浸漬に対する抵抗性、または手動磨耗抵抗性の1つまたは複数について評価した。下記の表Iに、実施番号、コーティング組成物の固体材料、および剥離強さ、沸騰水浸漬後の定性的接着強さ、または定性的に観察された手動磨耗抵抗性の結果を記述する。場合によっては、列挙した材料の量は、合計100部超になる。
【0050】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0051】
表Iのデータは、様々な量の各材料を使用し、様々な材料を使用して、開示された組成物を処方し、塗布できることを示している。耐久性があり、清澄で、引掻き抵抗性の様々なコーティングが得られた。これらをラビングすると、フルオロポリマー粒子のサイズおよび量によって決まるマイクロメートルまたはナノメートルのスケールの厚さ寸法を有する連続またはほぼ連続したフルオロポリマー層を有している被覆物品がもたらされた。例えば、図4は、実施番号6−53のコーティング(80部のTFE−Aフルオロポリマー粒子および20部のPVDF−Aフルオロエラストマー)のラビング後の高さ像(左側)および相画像(右側)を示す原子間力顕微鏡写真であり、連続したフルオロポリマー層が形成されたことを示している。PET−H支持体に塗布されたコーティングの接着値は、通常PET支持体に塗布されたコーティングの接着値と同じであり、またはそれより低い。
【0052】
実施番号6〜10の組成物をPET支持体に被覆し、120℃で1、3、または5分間加熱し、続いて実施例1のUVランプ下、1、3、または6回パスを行って光硬化した。被覆フィルムを室温で終夜貯蔵し、次いで機械的磨耗抵抗性を評価した。加熱時間を長くし、またはUVパスの回数を増やすと、引掻きの低減が観察された。
【0053】
実施例7
実施例1〜4の方法を使用して、一連の熱硬化性コーティング組成物を調製した。実施例3の方法を使用して、組成物をPET支持体に塗布し、150°で3分間硬化した。硬化コーティングを、手動磨耗抵抗性について評価した。下記の表IIに、実施番号、コーティング組成物の固体材料、および試験結果を記述する。場合によっては、列挙した材料の量は、合計100部超になる。
【0054】
【表7】
【0055】
実施例8
実施例6の方法を使用して、コーティング組成物を調製し、PET支持体に塗布した。コーティングを、砂磨耗抵抗性または機械的引掻き抵抗性について評価した。下記の表IIIに、実施番号、コーティング組成物の固体材料、および試験結果を記述する。場合によっては、列挙した材料の量は、合計100部超になる。
【0056】
【表8】
【表9】
【0057】
表IIIの結果は、非常に良好な砂磨耗抵抗性または機械的引掻き抵抗性を示している。実施番号8−1、8−2、および8−4は、特に良好な性能を発現した。実施番号8−4のコーティングをさらに試験して、コーティングをラビングした前後、かつ砂磨耗試験を実施した後の水およびヘキサデカンにたいしての前進および後退接触角を評価した。下記の表IVに、結果を示す。
【0058】
【表10】
【0059】
表IVの結果は、コーティングのラビングは、静止接触角および前進接触角を低減する傾向があったこと、コーティングは、砂磨耗抵抗性試験の過酷な条件にかけた後でさえその表面特性を保持したことを示している。
【0060】
実施例9
実施例1の方法を使用して、様々な屈折率を有する光硬化性組成物を調製した。実施例1の方法を使用して、組成物をPET支持体に塗布し、硬化した。下記の表Vに、実施番号、コーティング組成物の固体材料、および硬化コーティングの屈折率値を記述する。場合によっては、列挙した材料の量は、合計100部超になる。
【0061】
【表11】
【0062】
比較例12
特開平01−182388号公報の実施例1の手順と概して同様な手順を使用して、4部のPFA−Aフルオロポリマー粒子を16部のMEKに分散し、振盪して、20重量%のPFA粒子を含有する分散液を得た。分散液は、放置した場合沈殿する性向があり、溶液にならないように思われた。別に、2部のFKM−Aフッ素ゴムを8部のMEKに振盪溶解して、20%のフッ素樹脂を含有する溶液を得た。フルオロポリマー粒子分散液を再混合し、フッ素樹脂溶液と組み合わせ、ペイントシェーカーを使用して、終夜振盪混合した。混合物を翌日精査した。少量の沈殿物(フルオロポリマー粒子と思われる)が見られ、混合物を終夜放置した後、より多くの沈殿物が出現した。混合物は均質でも貯蔵安定でもなかった。
【0063】
比較例13
2本ロールミルを使用して、等量分のPFA−Aフルオロポリマー粒子とFKM−Aフッ素樹脂を一緒に、66℃で粉砕した。得られた粉砕ブレンドをMEKに混合したが、溶解も分散もせず、均質で貯蔵安定な混合物が得られなかった。
【0064】
本開示の例示的実施形態を記述し、本開示の範囲内の考えられる変形に言及してきた。本開示の範囲から逸脱することなく、開示における上記その他の変形および変更は、当業者に明らかであろう。本開示は、本明細書に記載されている例示的実施形態に限定されないと理解されたい。したがって、本発明は、冒頭に記載する特許請求の範囲によってしか限定されないものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1a】実施例1のコーティングのラビング前(図1a)およびラビング後(図1b)の高さ像(左側)および相画像(右側)を示す原子間力顕微鏡写真である。
【図1b】実施例1のコーティングのラビング前(図1a)およびラビング後(図1b)の高さ像(左側)および相画像(右側)を示す原子間力顕微鏡写真である。
【図2a】実施例2のコーティングのラビング前(図2a)およびラビング後(図2b)の相画像を示す原子間力顕微鏡写真である。
【図2b】実施例2のコーティングのラビング前(図2a)およびラビング後(図2b)の相画像を示す原子間力顕微鏡写真である。
【図3a】実施例5のフルオロポリマー(図3a)、フッ素樹脂(図3b)を使用して作製された被覆表面、ならびに実施例5のコーティングのラビング前(図3c)およびラビング後(図2d)の化学分析電子分光法(「ESCA」)スペクトルである。
【図3b】実施例5のフルオロポリマー(図3a)、フッ素樹脂(図3b)を使用して作製された被覆表面、ならびに実施例5のコーティングのラビング前(図3c)およびラビング後(図2d)の化学分析電子分光法(「ESCA」)スペクトルである。
【図3c】実施例5のフルオロポリマー(図3a)、フッ素樹脂(図3b)を使用して作製された被覆表面、ならびに実施例5のコーティングのラビング前(図3c)およびラビング後(図2d)の化学分析電子分光法(「ESCA」)スペクトルである。
【図3d】実施例5のフルオロポリマー(図3a)、フッ素樹脂(図3b)を使用して作製された被覆表面、ならびに実施例5のコーティングのラビング前(図3c)およびラビング後(図2d)の化学分析電子分光法(「ESCA」)スペクトルである。
【図4】実施例6の実施番号6−53のコーティングのラビング後の高さ像(左側)および相画像(右側)を示す原子間力顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーコーティング組成物の作製方法であって、
サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有するラテックスを、結晶性が低いまたは非晶質のフッ素樹脂粒子を含有するラテックスとブレンドするステップと、
前記ブレンドされたラテックスを凝固し、乾燥するステップと、
前記乾燥したブレンドを前記フッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記ラテックスを冷却することによって凝固するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング組成物層を支持体に塗布するステップと、
前記塗布層を固化または硬化するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固化または硬化させた層をラビングし、バフィングし、ポリッシングし、またはその他の方法で外乱させて、サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有する結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂結合剤層上に連続またはほぼ連続フルオロポリマー表面薄層を形成するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フルオロポリマーコーティング組成物の作製方法であって、
結晶質の乾燥サブミクロンフルオロポリマー粒子を、a)結晶性の低いまたは非晶質の乾燥フッ素樹脂粒子およびフッ素樹脂粒子用の溶媒、またはb)結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液とブレンドし、それによって前記フッ素樹脂粒子の溶媒希釈型溶液中、前記フルオロポリマー粒子の準均質分散液を含むコーティング組成物を形成するステップを含む方法。
【請求項6】
フルオロポリマーコーティング組成物であって、
結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液に分散されたサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子の均質貯蔵安定な混合物を含む組成物。
【請求項7】
前記フルオロポリマー粒子がパーフルオロポリマー粒子を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記フルオロポリマー粒子が、テトラフルオロエチレンのホモポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロポキシビニルエーテル)のポリマー、またはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのポリマーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記フルオロポリマー粒子の平均粒径が約50〜約200nmである、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記フッ素樹脂がフルオロ熱可塑性材料を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記フッ素樹脂が、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンのポリマー、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンのポリマー、またはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのポリマーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
前記溶媒が、ケトン、エーテル、エステル、または環状エステルを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】
溶媒を除いて、約5〜約60重量パーセントのフルオロポリマー固形分、および約95〜約40重量パーセントのフッ素樹脂固形分を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
シール容器に室温で少なくとも1週間貯蔵したとき均質なままであるほど貯蔵安定である、請求項6に記載の組成物。
【請求項15】
シール容器に室温で少なくとも1か月貯蔵したとき均質なままである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
水、またはフッ素樹脂を単独では溶解することができない有機液体を10重量%未満含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項17】
支持体に塗布し、硬化すると、透明な曇りのないコーティングを形成する、請求項6に記載の組成物。
【請求項18】
固化または硬化した後、透明なオプティカルコーティングが提供されるように顔料または他の乳白剤を含まない、請求項6に記載の組成物。
【請求項19】
フルオロポリマーコーティング組成物であって、
結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液に分散されたサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子の準均質な混合物を含む組成物。
【請求項20】
接着促進剤をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項21】
前記接着促進剤がアミノシランを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
架橋剤をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、ヘキサフルオロプロピレンオキサイドのマルチ(メタ)アクリレートまたはモノ(メタ)アクリレート誘導体を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
物品であって、
支持体の上に、サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有する結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂結合剤層とさらに、その上に連続またはほぼ連続した固化または硬化フルオロポリマー薄層を含む物品。
【請求項25】
前記フルオロポリマー層が連続性である、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
前記フルオロポリマー層が、前記フルオロポリマー粒子のサイズおよび量によって決まるマイクロメートルまたはナノメートルのスケールの厚さ寸法を有する、請求項24に記載の物品。
【請求項27】
前記フルオロポリマー層が、低摩擦表面、疎水性表面、親油性表面、または光管理構造を提供する、請求項24に記載の物品。
【請求項28】
前記光管理構造が反射防止性である、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記フルオロポリマー層およびフッ素樹脂結合剤層が、顔料および乳白剤を実質的に含まず、透明なコーティングを提供する、請求項24に記載の物品。
【請求項30】
前記フルオロポリマー層およびフッ素樹脂結合剤層が、損傷を受けやすい表示ビューイング表面の少なくとも一部分を覆う、請求項24に記載の物品。
【請求項1】
フルオロポリマーコーティング組成物の作製方法であって、
サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有するラテックスを、結晶性が低いまたは非晶質のフッ素樹脂粒子を含有するラテックスとブレンドするステップと、
前記ブレンドされたラテックスを凝固し、乾燥するステップと、
前記乾燥したブレンドを前記フッ素樹脂粒子用の溶媒に溶解するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記ラテックスを冷却することによって凝固するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング組成物層を支持体に塗布するステップと、
前記塗布層を固化または硬化するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固化または硬化させた層をラビングし、バフィングし、ポリッシングし、またはその他の方法で外乱させて、サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有する結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂結合剤層上に連続またはほぼ連続フルオロポリマー表面薄層を形成するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フルオロポリマーコーティング組成物の作製方法であって、
結晶質の乾燥サブミクロンフルオロポリマー粒子を、a)結晶性の低いまたは非晶質の乾燥フッ素樹脂粒子およびフッ素樹脂粒子用の溶媒、またはb)結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液とブレンドし、それによって前記フッ素樹脂粒子の溶媒希釈型溶液中、前記フルオロポリマー粒子の準均質分散液を含むコーティング組成物を形成するステップを含む方法。
【請求項6】
フルオロポリマーコーティング組成物であって、
結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液に分散されたサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子の均質貯蔵安定な混合物を含む組成物。
【請求項7】
前記フルオロポリマー粒子がパーフルオロポリマー粒子を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記フルオロポリマー粒子が、テトラフルオロエチレンのホモポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロポキシビニルエーテル)のポリマー、またはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのポリマーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記フルオロポリマー粒子の平均粒径が約50〜約200nmである、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記フッ素樹脂がフルオロ熱可塑性材料を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記フッ素樹脂が、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンのポリマー、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンのポリマー、またはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのポリマーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
前記溶媒が、ケトン、エーテル、エステル、または環状エステルを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】
溶媒を除いて、約5〜約60重量パーセントのフルオロポリマー固形分、および約95〜約40重量パーセントのフッ素樹脂固形分を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
シール容器に室温で少なくとも1週間貯蔵したとき均質なままであるほど貯蔵安定である、請求項6に記載の組成物。
【請求項15】
シール容器に室温で少なくとも1か月貯蔵したとき均質なままである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
水、またはフッ素樹脂を単独では溶解することができない有機液体を10重量%未満含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項17】
支持体に塗布し、硬化すると、透明な曇りのないコーティングを形成する、請求項6に記載の組成物。
【請求項18】
固化または硬化した後、透明なオプティカルコーティングが提供されるように顔料または他の乳白剤を含まない、請求項6に記載の組成物。
【請求項19】
フルオロポリマーコーティング組成物であって、
結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂の溶媒希釈型溶液に分散されたサブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子の準均質な混合物を含む組成物。
【請求項20】
接着促進剤をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項21】
前記接着促進剤がアミノシランを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
架橋剤をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、ヘキサフルオロプロピレンオキサイドのマルチ(メタ)アクリレートまたはモノ(メタ)アクリレート誘導体を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
物品であって、
支持体の上に、サブミクロンの結晶質フルオロポリマー粒子を含有する結晶性の低いまたは非晶質のフッ素樹脂結合剤層とさらに、その上に連続またはほぼ連続した固化または硬化フルオロポリマー薄層を含む物品。
【請求項25】
前記フルオロポリマー層が連続性である、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
前記フルオロポリマー層が、前記フルオロポリマー粒子のサイズおよび量によって決まるマイクロメートルまたはナノメートルのスケールの厚さ寸法を有する、請求項24に記載の物品。
【請求項27】
前記フルオロポリマー層が、低摩擦表面、疎水性表面、親油性表面、または光管理構造を提供する、請求項24に記載の物品。
【請求項28】
前記光管理構造が反射防止性である、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記フルオロポリマー層およびフッ素樹脂結合剤層が、顔料および乳白剤を実質的に含まず、透明なコーティングを提供する、請求項24に記載の物品。
【請求項30】
前記フルオロポリマー層およびフッ素樹脂結合剤層が、損傷を受けやすい表示ビューイング表面の少なくとも一部分を覆う、請求項24に記載の物品。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【公表番号】特表2008−527081(P2008−527081A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549482(P2007−549482)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/046439
【国際公開番号】WO2006/086081
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/046439
【国際公開番号】WO2006/086081
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
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