フレキシブルな籠状樹脂管フィルタ
【課題】目詰まりを起こしにくくメンテナンスの容易な樹脂管フィルタ、および当該フィルタを用いた各種システムを提供する。
【解決手段】樹脂モノフィラメントを、横糸のみでフレキシブルマンドレル上に編組し、加熱処理した後フレキシブルマンドレルを抜き取ることで形成した、籠状に編み込まれた樹脂製の素材からなるフレキシブルな有孔樹脂管の一方の端部を封止して、モノフィラメント間に接合された部分を有していないフレキシブルな籠状樹脂管フィルタを形成する。
【解決手段】樹脂モノフィラメントを、横糸のみでフレキシブルマンドレル上に編組し、加熱処理した後フレキシブルマンドレルを抜き取ることで形成した、籠状に編み込まれた樹脂製の素材からなるフレキシブルな有孔樹脂管の一方の端部を封止して、モノフィラメント間に接合された部分を有していないフレキシブルな籠状樹脂管フィルタを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、流体中に設置されて流体中の異物を分離、除去するフィルタ、およびこのフィルタを使用する廃液処理システムに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、工場等の廃液処理システムや、浴槽、プールの循環システムなどにおける流体中の異物を分離・除去するためのろ過フィルタとして、金属製のメッシュスクリーンが広く用いられている。
【０００３】
例えば、廃液処理システムにおいては、ＢＯＤ（生物学的酸素要求量）を除去するための微生物を高濃度で保持する粒子状担体を分散させた微生物担体処理槽を備える場合があり、この微生物担体が槽内から処理液と共に排出されるのを防ぐためのろ過フィルタとして、平面状の金属メッシュスクリーンを用いるのが一般的である。また、浴槽やプールなどの循環システムにおいては、配管途中にストレーナやヘアキャッチャと呼ばれるろ過装置を設置して流体中の異物を除去するが、通常、このストレーナ等のろ過フィルタとしては円筒状の金属メッシュスクリーンが使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、上記のような従来のメッシュスクリーンでは、設置される装置の規模の制約を受けて十分なろ過面積の確保が困難であること、および装置内に固定設置されることから、目詰まりを起こしやすいため、頻繁にスクリーンの浄化作業や交換作業をおこなう必要があり、メンテナンスの負担が大きい。また、特に浴槽の循環システム内で使用されるろ過装置である、いわゆるヘアキャッチャにおいては、その使用環境から病原菌が繁殖しやすいため、フィルタ部分の洗浄作業に際して衛生面でも問題がある。衛生面を考慮してフィルタ部分を洗浄せずに交換するとしても、コスト負担が増大する。
【０００５】
一方、上記の技術分野に直接関連しないものの、透水性舗装道路に埋設する導水管として、樹脂モノフィラメントを編組するなどにより形成した網状の樹脂管を用いることが提案されている（例えば、特許文献１参照）。この網状樹脂管は、砂礫等の異物の侵入を防止するための選択透過性と、凹凸面への設置や曲がり配管を行うための柔軟性（可撓性）を備えている点で舗装道路の導水管に適している。
【０００６】
【特許文献１】特開２００１−２５４８７３
【０００７】
本件の発明者は、前記網状の樹脂管が選択透過性および柔軟性を有していることから、フィルタ部材として使用できる可能性について検討して、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、フレキシブルな樹脂管の一端を封止して、これをろ過膜として用いることにより、目詰まりを起こしにくくメンテナンスの容易な樹脂管フィルタ、および当該フィルタを用いた廃液処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
前記した目的を達成するために、本発明に係るフレキシブルな籠状樹脂管フィルタは、籠状に編み込まれた樹脂性の素材からなるフレキシブルな有孔樹脂管の一方の端部を封止することで形成されている。
【０００９】
この構成によれば、樹脂管フィルタの周面のほぼ全体がろ過面となるので、設置スペースに対するろ過面積を大幅に増加させることができる。また、フィルタを構成する有孔樹脂管がフレキシブルな構造、つまり、弾性的に柔軟に曲がる構造であるので、流体の流れによって揺れ動くことにより、フィルタの目詰まりが起こりにくい。したがって、当該フィルタのメンテナンス負担が軽減される。
【００１０】
本発明に係る樹脂管フィルタにおいて、前記有孔樹脂管が有する多数の孔が、編み目状の隙間により形成されたものであってよい。また、前記有孔樹脂管は、樹脂モノフィラメントを編組して形成され、モノフィラメント間に接合された部分を有さないものとすることが好ましい。このような構成とすることで、樹脂管フィルタをよりフレキシブルなものとして構成することができ、さらにフィルタの揺動に伴ってフィルタの孔自体が一定の範囲で変形するので、目詰まりをより効果的に防止することができる。
【００１１】
さらに、本発明に係る樹脂管フィルタにおいて、前記有孔樹脂管を、樹脂モノフィラメントを、横糸のみで巻芯となるフレキシブルマンドレル上で編組され、加熱処理されてなるものであり、前記モノフィラメント間の接合部および縦糸を有さない、菱形の連続編み目構造を有するものとすることができる。樹脂管フィルタを構成する有孔樹脂管をこのように形成して縦糸を有さない構造とすることにより、樹脂管フィルタの曲げ方向の柔軟性が増すとともに、捩れ方向に対して復元性が増す。したがって揺動による曲がり、捩れや樹脂管フィルタ同士の絡み合いが起こっても、樹脂管の閉塞によるろ過性能の低下が抑制される。
【００１２】
本発明に係る樹脂管フィルタを形成するために、前記有孔樹脂管の封止は、単数本または複数本を束ね、端部で変形結束、または溶融接着することにより行うことができる。これらの方法により封止することで、簡易な工程により樹脂管フィルタを形成することができる。特に溶融接着により封止する場合は、単一の材料によって樹脂管フィルタを構成できるため、廃棄やリサイクル等の処理に便宜である。
【００１３】
本発明に係るフィルタ構造体は、流体通路の内部に設置され、前記の籠状樹脂管フィルタと、各フィルタの開放された他方の端部が接続されるニップルおよび前記フィルタを通過する前後の流体である原液とろ過液とを仕切る仕切り板を有する管接続部材とを備えている。籠状樹脂管フィルタを、仕切り板を有する管接続部材に接続して使用することにより、ろ過されるべき流体の漏出を簡易な構造で効果的に防止し、確実にろ過することができる。
【００１４】
前記フィルタ構造体において、複数のニップルを有する管接続部材に接続された複数の有孔樹脂管フィルタのそれぞれが、内径の５倍以上の長さを有することが好ましい。このような長さとすることで、樹脂管フィルタの管接続部材への取り付けが容易となり、かつ十分なろ過面積を確保することができる。
【００１５】
本発明に係る廃液処理システムは、廃液処理のための微生物担体処理層と排水系との間に、微生物担体が槽外へ流出するのを防止する前記フィルタ構造体が設置されたものである。微生物担体処理槽に前記フィルタ構造体を設置することにより、従来のフィルタに比べて廃液処理システムのメンテナンス負担を軽減することができる。
【００１６】
上記の廃液処理システムにおいて、好ましくは、前記フィルタ構造体の有孔樹脂管フィルタが槽の内部側に突出しており、前記微生物担体処理槽から排出される処理水が、前記有孔樹脂管の外面から内面へ通過するように設定されている。前記フィルタ構造体をこのように設置することで、既存の設備においても、従来のフィルタと互換的に前記樹脂管フィルタを使用することができる。特に、微生物担体処理槽においては、通常、微生物を曝気させるために上下方向に空気流を発生させるので、槽内に設置される樹脂管フィルタの揺動が大きく、一層効果的に目詰まりが防止される。
【発明の効果】
【００１７】
以上のように、本発明に係るフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ、フィルタ構造体、および廃液システムによれば、ろ過面積の増大とフィルタの揺動性によって、フィルタの目詰まりを防止することができるので、この樹脂管フィルタのメンテナンス負担を大幅に低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１８】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【００１９】
図１は本発明に係る籠状樹脂管フィルタの一実施形態を示す斜視図である。この籠状樹脂管フィルタ１は、籠状に編み込まれて、編み目状の隙間からなる多数の孔を有するフレキシブルな樹脂管の一端を、溶融接着により封止して先端部１ａとし、他端を、開放したままの状態の開放端部１ｂとすることにより、流体を管壁の通過によりろ過するフィルタとして機能するように形成したものである。
【００２０】
この籠状樹脂管フィルタ１の基本構造を形成する樹脂管１１は、図２に模式的に示すように、複数のボビン１４に巻回された樹脂モノフィラメント１５を、縦糸を使わず横糸のみで、巻芯となる長尺のフレキシブルマンドレル１６上に編組し、これを加熱処理した後にフレキシブルマンドレル１６をその軸方向（矢印Ｃの方向）に抜き取ることで形成したものである。加熱処理は、１５０℃〜２４０℃で１０〜１２０分間の範囲でおこなうことが好ましく、このような処理を施すことにより、樹脂管１１の内面を平滑な網状管状態にして内面祖度を抑え、排水量を向上させることができる。また、樹脂管１１は、このように縦糸を使わずに形成することで、樹脂管１１の長手方向と円周方向とに頂点を持つほぼ菱形の連続する編み目を有し、さらにモノフィラメント間には接合する部分がないので、きわめてフレキシブルな構造を有する。
【００２１】
ここで樹脂モノフィラメントとは、あらゆる樹脂単繊維からなる線状体を指し、代表的な素材としてはポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレン（ＰＥ）、ポリエステルテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリブチレンテレフタレート（ＰＢＴ）、ポリアミド（Ｎｙ）、ビニロン（ＰＶＡ繊維）が挙げられる。汎用性と耐久性の点からＰＰ、ＰＥＴ、Ｎｙが特に好適であるが、これらに限定されるものではない。
【００２２】
また、樹脂モノフィラメント１１の太さは、想定する樹脂管の内径との関係において管形状の保持力とフレキシビリティのバランスを考慮して適宜選択することができるが、本実施形態においては外径０．１ｍｍ〜５．０ｍｍの範囲としている。
【００２３】
上記のフレキシブルマンドレルとは、柔軟に曲げることができる巻芯のことであり、フレキシブルに曲げることができるため、比較的狭いスペースで長尺の網状樹脂管の成形が可能となる。フレキシブルマンドレル１６の材質としては、熱処理による変形が少なく、かつ抜き取り工程を容易にする滑り性を有するものが好ましい。代表的なものとしては、樹脂モノフィラメントよりも高い加熱変形温度を有する樹脂（耐熱樹脂）で形成された樹脂管、金属フレキ管、または金属フレキ管の表面に耐熱樹脂を被覆した耐熱複合管などが挙げられるが、耐久性および抜き取り時の滑り性を考慮すると耐熱複合管を使用することが好ましく、耐熱性樹脂としてフッ素樹脂を被覆した耐熱複合管が特に好ましい。
【００２４】
籠状樹脂管フィルタ１の先端部１ａとなる樹脂管先端部の封止方法としては、一般的に知られた各種方法、例えば管内側への封止材（ゴム栓など）の挿入、管外側からの線材（針金、インシュロックタイなど）による締め付け封止、金具によるプレス封止、樹脂管１１の溶融接着などを用いることができるが、図１の実施形態においては、樹脂管１１の溶融接着により封止している。溶融接着を用いた場合には、封止部が樹脂管１１の他の部分と同一の材料で構成されるため、籠状樹脂管フィルタ１の使用後の分別回収、焼却、廃棄、リサイクル処理等において好都合である。
【００２５】
この籠状樹脂管フィルタ１は、図３に示すように、その開放された基端部１ｂを単体の管接続部材３に接続して、フィルタ構造体９として使用される。単体管接続部材３は、籠状樹脂管フィルタ１との接続部分であるニップル３ａと、ニップル３ａの樹脂管フィルタ１が接続される側とは反対側の端部に形成される鍔状の仕切り板３ｂとで構成されている。この仕切り板３ｂは、後述するように、液体の通路において、籠状樹脂管フィルタ１の前後の液体を仕切る機能を持つ。接続部分であるニップルの形状としては、外周面に複数の環状の凹凸を形成したタケノコ形状が一般的であるが、本実施形態では、長さ方向に押し付ければ編組交合角度が広がって内径が拡大し、長さ方向に引っ張れば内径が縮小するという樹脂管の特性を利用するために、円筒形状のニップル３ａを用いている。
【００２６】
具体的には、単体管接続部材３のニップル３ａの外径を、フリー状態の籠状樹脂管フィルタ１の開放された基端部１ｂにおける内径とほぼ同等から１．２倍の範囲に設定し、ニップル３ａの長さを、前記基端部１ｂ内径の１．５倍以上に設定して、このニップル３ａに籠状樹脂管フィルタ１の基端部１ｂを被せてから、先端部１ａの方向に籠状樹脂管フィルタ１を引っ張ることで、籠状樹脂管フィルタ１が単体管接続部材３に固定される。すなわち上記のような形状および大きさのニップル３ａを用いることにより、接着などの二次加工を施すことなく実用上十分な固定を行うことができる。
【００２７】
管接続部材は図３に示すような単体で使用される管接続部材３のほかにも、図４に示す、複数のニップル５ａが一体に形成された複合管接続部材５を用いてもよい。単体管接続部材３および複合管接続部材５の材質としては、硬質の材料であればどのようなものでも用いることができるが、耐久性および廃棄性の点で、ＰＰ，ＰＥ，ＰＥＴなどが特に好適である。
【００２８】
複合管接続部材５を使用する場合には、図５に示すように、複数の籠状樹脂管フィルタ１の各先端部１ａがそれぞれに、前述の一般的な封止方法、例えば溶融接着によって封止されたものを、複合管接続部材５の各ニップル５ａに接続してフィルタ構造体９Ａとしてもよい。あるいは図６に示すように、複数本の樹脂管の基端部１ｂを複合管接続部材５のニップル５ａに接続し、先端部１ａをまとめて、管外側からの線材（針金、インシュロックタイなど）による締め付け封止、金具によるプレス封止、または樹脂モノフィラメント管の溶融接着などによって封止して（図６の実施形態ではインシュロックタイ８による封止）、複数本の樹脂管フィルタ１を一体化した状態の籠状樹脂管フィルタ束７を形成したフィルタ構造体９Ｂとしてもよい。
【００２９】
図５のフィルタ構造体９Ａを使用する場合には、複数本の籠状樹脂管フィルタ１が互いに結束されていないので、流体の流れによる各樹脂管フィルタ１の揺動、および各樹脂管フィルタ１，１間の接触や摩擦によって、フィルタの目詰まりが極めて起こりにくくなる。このような形態および特性を有するフィルタ構造体９Ａは、比較的広い空間内に設置して使用する用途に適している。例えば、流体が槽間を移動する廃液処理システムにおいて、担体を含む槽から担体の流出を防ぐためのフィルタとして、その槽内に設置される場合である。一方、図６のフィルタ構造体９Ｂは、複数本の樹脂管フィルタ１を一体化してフィルタ束７としているので、組み付けなどの取り扱いが容易となる。したがって、ストレーナ等の配管システムのように、比較的狭い空間内に設置して使用する用途に適している。なお、図５および図６では、フィルタ構造体９Ａおよび９Ｂの複合管接続部材５の仕切り板５ｂを円板形状としたが、フィルタ構造体が設置される装置の構造に合わせて、適宜形状の変更が可能である。
【００３０】
本発明に係る、籠状樹脂管フィルタを用いた廃液処理システムの一実施形態を、図７ないし図９と共に説明する。図７に、本発明の一実施形態に係る籠状樹脂管フィルタ１が使用される廃液処理システムの構成の一部を模式的に示す。工場のような排出源から排出された廃液は、まず原水調整槽５１に導入されて、油分除去、夾雑物除去などの前処理を施された後、微生物担体処理槽５３に移送される。微生物担体処理槽５３では、好気条件化で（一般的には曝気用の空気流を発生させて）、廃液と担体に保持された微生物を接触させて有機物が分解され、処理液が、フィルタ構造体９Ｃを介して沈殿槽５５に排出される。
【００３１】
上記微生物担体処理槽５５、およびこれに含まれる微生物担体としては、従来のいかなる態様のものであってもよい。例えば微生物担体としては、ゲル状担体、プラスチック担体および繊維状担体から選ばれた１種類の担体、あるいはこれらのうちから２種類以上を組み合わせたものを使用することができる。本実施形態では、粒子径約３ｍｍのＰＶＡバクテリアコロニー粒子を担体として使用し、この担体を槽内に１ｍ３あたり約３万個分散させた。
【００３２】
微生物担体処理槽５３に取り付けられるフィルタ構造体９Ｃは、図８に示すように、複数の円筒形状のニップル４５ａと長方形の樹脂板である仕切り板４５ｂとを有し、各ニップル４５ａに、複数の籠状樹脂管フィルタ１のそれぞれを取付けて構成される。仕切り板４５ｂは、液体の通路において、籠状樹脂管フィルタ１の前後の液体を仕切る機能を持つ。本実施形態では、樹脂管として、図２に示した要領で、外径０．８ｍｍのＰＥＴモノフィラメント１５を、外径２０ｍｍ、長さ２５ｍのフッ素樹脂製フレキシブルマンドレル１６に対して編み組みし、１５０℃×０．５時間の加熱処理を施して形状固定させた後にフレキシブルマンドレル１６を抜き取って得た、内径２０ｍｍ、長さ２５ｍ、交合角度１１２°の樹脂管１１を３０本用い、それぞれの先端部を、側部から押さえつけて収縮させた状態で、３００℃の熱板に押し付けて溶融接着により封止し、籠状樹脂管フィルタ１とした。また、ニップル４５ａは、外径２２ｍ、長さ５０ｍｍのＰＰパイプを使用し、７５ｍｍ×２５０ｍｍの仕切り板４５ｂにニップル４５ａの各基端部を接合配置して、複合管接合部材４５とした。この複合管接合部材４５における複数のニップル４５ａは、これらに取り付けられる複数の樹脂管フィルタ１がほぼ最密状に並ぶように配置することが好ましい。このように配置することにより、樹脂管フィルタ１同士が接触する頻度が増すので、目詰まりをより効果的に防止することができる。
【００３３】
図９に示すように、微生物担体処理槽５３と沈殿槽５５とを隔てる隔壁６１の中央上部に凹部を形成し、微生物担体処理槽５３で処理された処理水を沈殿槽５５へ排出するための排出溝６３としている。この排出溝６３の両内側面にほぼ沿うように、かつ微生物担体処理槽５３の内側に突出して、一組のフィルタ支持部６５，６５を設け、このフィルタ支持部６５，６５の嵌合溝６７，６７にフィルタ構造体９Ｃの仕切り板４５ｂの両側端部を嵌め込むことによってフィルタ構造体９Ｃが微生物担体槽５３に設置される。なお、廃液処理システム５０のフィルタ構造体９Ｃを除く部分の構成は、金属製のメッシュスクリーンを使用していた既存のものと同様である。すなわち、既存のシステムにおいてはフィルタ支持部６５，６５の嵌合溝に嵌め込まれていたメッシュスクリーンを、フィルタ構造体９Ｃで置き換えて、本実施形態に係る廃液処理システムとした。したがって、既存の廃液処理システムに本実施形態のフィルタ構造体９Ｃを容易に装着できる。
【００３４】
この廃液処理システムにおいて、微生物担体処理槽５３の籠状樹脂管フィルタ１の周辺に到達した処理水は、仕切り板４５ｂに遮られて、確実に樹脂管フィルタ１を介して沈殿槽５５へと排出される。樹脂管フィルタ１は微生物担体処理槽５３内に突出しているので、微生物担体処理槽５３の処理水は、排出溝６３から沈殿槽５５へ排出される際、樹脂管フィルタ１の外側から内側へ通過し、このとき微生物担体処理槽５３内の微生物担体は、各樹脂管フィルタ１の外側で捕捉され、沈殿槽５５へ流出するのが防止される。
【００３５】
廃液処理システム５０におけるフィルタ構造体９Ｃのろ過面積は、従来のメッシュスクリーンのろ過面積（ほぼ仕切り板４５ｂの面積に相当）に比較して大幅に増大しており、かつ、フレキシブルな籠状樹脂管フィルタ１が、処理水の流れおよび曝気用の空気流によって大きく揺動する。しかも、各樹脂管フィルタにおいては、モノフィラメント間に接合部がないために、樹脂管フィルタ束７の揺動に伴って孔形状も変化する。したがって、ろ過された担体による目詰まりが極めて起こりにくくなっており、フィルタの洗浄作業にかかる負担が大幅に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【００３６】
【図１】本発明の一実施形態に係る籠状樹脂管フィルタを示す斜視図である。
【図２】本発明の一実施形態に係る籠状樹脂管フィルタに使用される樹脂管の製造方法を示す模式図である。
【図３】本発明の一実施形態に係るフィルタ構造体を示す斜視図である。
【図４】本発明の一実施形態に係るフィルタ構造体に使用される複合管接続部材を示す斜視図である。
【図５】本発明の他の実施形態に係るフィルタ構造体を示す斜視図である。
【図６】本発明のさらに他の実施形態に係るフィルタ構造体を示す斜視図である。
【図７】本発明の一実施形態に係る廃液処理システムの構成の一部を示す概略図である。
【図８】図７の廃液処理システムの管接続部材を示す斜視図である。
【図９】図７の廃液処理システムの要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【００３７】
１ 籠状樹脂管フィルタ
１ａ 先端部
１ｂ 基端部
３ 単体接続管部材
３ａ，５ａ，４５ａ ニップル
３ｂ，５ｂ、４５ｂ 仕切り板
５ 複合接続管部材
９，９Ａ，９Ｂ，４５ フィルタ構造体
１１ 有孔樹脂管
１５ 樹脂モノフィラメント
１６ フレキシブルマンドレル
５３ 微生物担体処理槽
【技術分野】
【０００１】
本発明は、流体中に設置されて流体中の異物を分離、除去するフィルタ、およびこのフィルタを使用する廃液処理システムに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、工場等の廃液処理システムや、浴槽、プールの循環システムなどにおける流体中の異物を分離・除去するためのろ過フィルタとして、金属製のメッシュスクリーンが広く用いられている。
【０００３】
例えば、廃液処理システムにおいては、ＢＯＤ（生物学的酸素要求量）を除去するための微生物を高濃度で保持する粒子状担体を分散させた微生物担体処理槽を備える場合があり、この微生物担体が槽内から処理液と共に排出されるのを防ぐためのろ過フィルタとして、平面状の金属メッシュスクリーンを用いるのが一般的である。また、浴槽やプールなどの循環システムにおいては、配管途中にストレーナやヘアキャッチャと呼ばれるろ過装置を設置して流体中の異物を除去するが、通常、このストレーナ等のろ過フィルタとしては円筒状の金属メッシュスクリーンが使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、上記のような従来のメッシュスクリーンでは、設置される装置の規模の制約を受けて十分なろ過面積の確保が困難であること、および装置内に固定設置されることから、目詰まりを起こしやすいため、頻繁にスクリーンの浄化作業や交換作業をおこなう必要があり、メンテナンスの負担が大きい。また、特に浴槽の循環システム内で使用されるろ過装置である、いわゆるヘアキャッチャにおいては、その使用環境から病原菌が繁殖しやすいため、フィルタ部分の洗浄作業に際して衛生面でも問題がある。衛生面を考慮してフィルタ部分を洗浄せずに交換するとしても、コスト負担が増大する。
【０００５】
一方、上記の技術分野に直接関連しないものの、透水性舗装道路に埋設する導水管として、樹脂モノフィラメントを編組するなどにより形成した網状の樹脂管を用いることが提案されている（例えば、特許文献１参照）。この網状樹脂管は、砂礫等の異物の侵入を防止するための選択透過性と、凹凸面への設置や曲がり配管を行うための柔軟性（可撓性）を備えている点で舗装道路の導水管に適している。
【０００６】
【特許文献１】特開２００１−２５４８７３
【０００７】
本件の発明者は、前記網状の樹脂管が選択透過性および柔軟性を有していることから、フィルタ部材として使用できる可能性について検討して、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、フレキシブルな樹脂管の一端を封止して、これをろ過膜として用いることにより、目詰まりを起こしにくくメンテナンスの容易な樹脂管フィルタ、および当該フィルタを用いた廃液処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
前記した目的を達成するために、本発明に係るフレキシブルな籠状樹脂管フィルタは、籠状に編み込まれた樹脂性の素材からなるフレキシブルな有孔樹脂管の一方の端部を封止することで形成されている。
【０００９】
この構成によれば、樹脂管フィルタの周面のほぼ全体がろ過面となるので、設置スペースに対するろ過面積を大幅に増加させることができる。また、フィルタを構成する有孔樹脂管がフレキシブルな構造、つまり、弾性的に柔軟に曲がる構造であるので、流体の流れによって揺れ動くことにより、フィルタの目詰まりが起こりにくい。したがって、当該フィルタのメンテナンス負担が軽減される。
【００１０】
本発明に係る樹脂管フィルタにおいて、前記有孔樹脂管が有する多数の孔が、編み目状の隙間により形成されたものであってよい。また、前記有孔樹脂管は、樹脂モノフィラメントを編組して形成され、モノフィラメント間に接合された部分を有さないものとすることが好ましい。このような構成とすることで、樹脂管フィルタをよりフレキシブルなものとして構成することができ、さらにフィルタの揺動に伴ってフィルタの孔自体が一定の範囲で変形するので、目詰まりをより効果的に防止することができる。
【００１１】
さらに、本発明に係る樹脂管フィルタにおいて、前記有孔樹脂管を、樹脂モノフィラメントを、横糸のみで巻芯となるフレキシブルマンドレル上で編組され、加熱処理されてなるものであり、前記モノフィラメント間の接合部および縦糸を有さない、菱形の連続編み目構造を有するものとすることができる。樹脂管フィルタを構成する有孔樹脂管をこのように形成して縦糸を有さない構造とすることにより、樹脂管フィルタの曲げ方向の柔軟性が増すとともに、捩れ方向に対して復元性が増す。したがって揺動による曲がり、捩れや樹脂管フィルタ同士の絡み合いが起こっても、樹脂管の閉塞によるろ過性能の低下が抑制される。
【００１２】
本発明に係る樹脂管フィルタを形成するために、前記有孔樹脂管の封止は、単数本または複数本を束ね、端部で変形結束、または溶融接着することにより行うことができる。これらの方法により封止することで、簡易な工程により樹脂管フィルタを形成することができる。特に溶融接着により封止する場合は、単一の材料によって樹脂管フィルタを構成できるため、廃棄やリサイクル等の処理に便宜である。
【００１３】
本発明に係るフィルタ構造体は、流体通路の内部に設置され、前記の籠状樹脂管フィルタと、各フィルタの開放された他方の端部が接続されるニップルおよび前記フィルタを通過する前後の流体である原液とろ過液とを仕切る仕切り板を有する管接続部材とを備えている。籠状樹脂管フィルタを、仕切り板を有する管接続部材に接続して使用することにより、ろ過されるべき流体の漏出を簡易な構造で効果的に防止し、確実にろ過することができる。
【００１４】
前記フィルタ構造体において、複数のニップルを有する管接続部材に接続された複数の有孔樹脂管フィルタのそれぞれが、内径の５倍以上の長さを有することが好ましい。このような長さとすることで、樹脂管フィルタの管接続部材への取り付けが容易となり、かつ十分なろ過面積を確保することができる。
【００１５】
本発明に係る廃液処理システムは、廃液処理のための微生物担体処理層と排水系との間に、微生物担体が槽外へ流出するのを防止する前記フィルタ構造体が設置されたものである。微生物担体処理槽に前記フィルタ構造体を設置することにより、従来のフィルタに比べて廃液処理システムのメンテナンス負担を軽減することができる。
【００１６】
上記の廃液処理システムにおいて、好ましくは、前記フィルタ構造体の有孔樹脂管フィルタが槽の内部側に突出しており、前記微生物担体処理槽から排出される処理水が、前記有孔樹脂管の外面から内面へ通過するように設定されている。前記フィルタ構造体をこのように設置することで、既存の設備においても、従来のフィルタと互換的に前記樹脂管フィルタを使用することができる。特に、微生物担体処理槽においては、通常、微生物を曝気させるために上下方向に空気流を発生させるので、槽内に設置される樹脂管フィルタの揺動が大きく、一層効果的に目詰まりが防止される。
【発明の効果】
【００１７】
以上のように、本発明に係るフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ、フィルタ構造体、および廃液システムによれば、ろ過面積の増大とフィルタの揺動性によって、フィルタの目詰まりを防止することができるので、この樹脂管フィルタのメンテナンス負担を大幅に低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１８】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【００１９】
図１は本発明に係る籠状樹脂管フィルタの一実施形態を示す斜視図である。この籠状樹脂管フィルタ１は、籠状に編み込まれて、編み目状の隙間からなる多数の孔を有するフレキシブルな樹脂管の一端を、溶融接着により封止して先端部１ａとし、他端を、開放したままの状態の開放端部１ｂとすることにより、流体を管壁の通過によりろ過するフィルタとして機能するように形成したものである。
【００２０】
この籠状樹脂管フィルタ１の基本構造を形成する樹脂管１１は、図２に模式的に示すように、複数のボビン１４に巻回された樹脂モノフィラメント１５を、縦糸を使わず横糸のみで、巻芯となる長尺のフレキシブルマンドレル１６上に編組し、これを加熱処理した後にフレキシブルマンドレル１６をその軸方向（矢印Ｃの方向）に抜き取ることで形成したものである。加熱処理は、１５０℃〜２４０℃で１０〜１２０分間の範囲でおこなうことが好ましく、このような処理を施すことにより、樹脂管１１の内面を平滑な網状管状態にして内面祖度を抑え、排水量を向上させることができる。また、樹脂管１１は、このように縦糸を使わずに形成することで、樹脂管１１の長手方向と円周方向とに頂点を持つほぼ菱形の連続する編み目を有し、さらにモノフィラメント間には接合する部分がないので、きわめてフレキシブルな構造を有する。
【００２１】
ここで樹脂モノフィラメントとは、あらゆる樹脂単繊維からなる線状体を指し、代表的な素材としてはポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレン（ＰＥ）、ポリエステルテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリブチレンテレフタレート（ＰＢＴ）、ポリアミド（Ｎｙ）、ビニロン（ＰＶＡ繊維）が挙げられる。汎用性と耐久性の点からＰＰ、ＰＥＴ、Ｎｙが特に好適であるが、これらに限定されるものではない。
【００２２】
また、樹脂モノフィラメント１１の太さは、想定する樹脂管の内径との関係において管形状の保持力とフレキシビリティのバランスを考慮して適宜選択することができるが、本実施形態においては外径０．１ｍｍ〜５．０ｍｍの範囲としている。
【００２３】
上記のフレキシブルマンドレルとは、柔軟に曲げることができる巻芯のことであり、フレキシブルに曲げることができるため、比較的狭いスペースで長尺の網状樹脂管の成形が可能となる。フレキシブルマンドレル１６の材質としては、熱処理による変形が少なく、かつ抜き取り工程を容易にする滑り性を有するものが好ましい。代表的なものとしては、樹脂モノフィラメントよりも高い加熱変形温度を有する樹脂（耐熱樹脂）で形成された樹脂管、金属フレキ管、または金属フレキ管の表面に耐熱樹脂を被覆した耐熱複合管などが挙げられるが、耐久性および抜き取り時の滑り性を考慮すると耐熱複合管を使用することが好ましく、耐熱性樹脂としてフッ素樹脂を被覆した耐熱複合管が特に好ましい。
【００２４】
籠状樹脂管フィルタ１の先端部１ａとなる樹脂管先端部の封止方法としては、一般的に知られた各種方法、例えば管内側への封止材（ゴム栓など）の挿入、管外側からの線材（針金、インシュロックタイなど）による締め付け封止、金具によるプレス封止、樹脂管１１の溶融接着などを用いることができるが、図１の実施形態においては、樹脂管１１の溶融接着により封止している。溶融接着を用いた場合には、封止部が樹脂管１１の他の部分と同一の材料で構成されるため、籠状樹脂管フィルタ１の使用後の分別回収、焼却、廃棄、リサイクル処理等において好都合である。
【００２５】
この籠状樹脂管フィルタ１は、図３に示すように、その開放された基端部１ｂを単体の管接続部材３に接続して、フィルタ構造体９として使用される。単体管接続部材３は、籠状樹脂管フィルタ１との接続部分であるニップル３ａと、ニップル３ａの樹脂管フィルタ１が接続される側とは反対側の端部に形成される鍔状の仕切り板３ｂとで構成されている。この仕切り板３ｂは、後述するように、液体の通路において、籠状樹脂管フィルタ１の前後の液体を仕切る機能を持つ。接続部分であるニップルの形状としては、外周面に複数の環状の凹凸を形成したタケノコ形状が一般的であるが、本実施形態では、長さ方向に押し付ければ編組交合角度が広がって内径が拡大し、長さ方向に引っ張れば内径が縮小するという樹脂管の特性を利用するために、円筒形状のニップル３ａを用いている。
【００２６】
具体的には、単体管接続部材３のニップル３ａの外径を、フリー状態の籠状樹脂管フィルタ１の開放された基端部１ｂにおける内径とほぼ同等から１．２倍の範囲に設定し、ニップル３ａの長さを、前記基端部１ｂ内径の１．５倍以上に設定して、このニップル３ａに籠状樹脂管フィルタ１の基端部１ｂを被せてから、先端部１ａの方向に籠状樹脂管フィルタ１を引っ張ることで、籠状樹脂管フィルタ１が単体管接続部材３に固定される。すなわち上記のような形状および大きさのニップル３ａを用いることにより、接着などの二次加工を施すことなく実用上十分な固定を行うことができる。
【００２７】
管接続部材は図３に示すような単体で使用される管接続部材３のほかにも、図４に示す、複数のニップル５ａが一体に形成された複合管接続部材５を用いてもよい。単体管接続部材３および複合管接続部材５の材質としては、硬質の材料であればどのようなものでも用いることができるが、耐久性および廃棄性の点で、ＰＰ，ＰＥ，ＰＥＴなどが特に好適である。
【００２８】
複合管接続部材５を使用する場合には、図５に示すように、複数の籠状樹脂管フィルタ１の各先端部１ａがそれぞれに、前述の一般的な封止方法、例えば溶融接着によって封止されたものを、複合管接続部材５の各ニップル５ａに接続してフィルタ構造体９Ａとしてもよい。あるいは図６に示すように、複数本の樹脂管の基端部１ｂを複合管接続部材５のニップル５ａに接続し、先端部１ａをまとめて、管外側からの線材（針金、インシュロックタイなど）による締め付け封止、金具によるプレス封止、または樹脂モノフィラメント管の溶融接着などによって封止して（図６の実施形態ではインシュロックタイ８による封止）、複数本の樹脂管フィルタ１を一体化した状態の籠状樹脂管フィルタ束７を形成したフィルタ構造体９Ｂとしてもよい。
【００２９】
図５のフィルタ構造体９Ａを使用する場合には、複数本の籠状樹脂管フィルタ１が互いに結束されていないので、流体の流れによる各樹脂管フィルタ１の揺動、および各樹脂管フィルタ１，１間の接触や摩擦によって、フィルタの目詰まりが極めて起こりにくくなる。このような形態および特性を有するフィルタ構造体９Ａは、比較的広い空間内に設置して使用する用途に適している。例えば、流体が槽間を移動する廃液処理システムにおいて、担体を含む槽から担体の流出を防ぐためのフィルタとして、その槽内に設置される場合である。一方、図６のフィルタ構造体９Ｂは、複数本の樹脂管フィルタ１を一体化してフィルタ束７としているので、組み付けなどの取り扱いが容易となる。したがって、ストレーナ等の配管システムのように、比較的狭い空間内に設置して使用する用途に適している。なお、図５および図６では、フィルタ構造体９Ａおよび９Ｂの複合管接続部材５の仕切り板５ｂを円板形状としたが、フィルタ構造体が設置される装置の構造に合わせて、適宜形状の変更が可能である。
【００３０】
本発明に係る、籠状樹脂管フィルタを用いた廃液処理システムの一実施形態を、図７ないし図９と共に説明する。図７に、本発明の一実施形態に係る籠状樹脂管フィルタ１が使用される廃液処理システムの構成の一部を模式的に示す。工場のような排出源から排出された廃液は、まず原水調整槽５１に導入されて、油分除去、夾雑物除去などの前処理を施された後、微生物担体処理槽５３に移送される。微生物担体処理槽５３では、好気条件化で（一般的には曝気用の空気流を発生させて）、廃液と担体に保持された微生物を接触させて有機物が分解され、処理液が、フィルタ構造体９Ｃを介して沈殿槽５５に排出される。
【００３１】
上記微生物担体処理槽５５、およびこれに含まれる微生物担体としては、従来のいかなる態様のものであってもよい。例えば微生物担体としては、ゲル状担体、プラスチック担体および繊維状担体から選ばれた１種類の担体、あるいはこれらのうちから２種類以上を組み合わせたものを使用することができる。本実施形態では、粒子径約３ｍｍのＰＶＡバクテリアコロニー粒子を担体として使用し、この担体を槽内に１ｍ３あたり約３万個分散させた。
【００３２】
微生物担体処理槽５３に取り付けられるフィルタ構造体９Ｃは、図８に示すように、複数の円筒形状のニップル４５ａと長方形の樹脂板である仕切り板４５ｂとを有し、各ニップル４５ａに、複数の籠状樹脂管フィルタ１のそれぞれを取付けて構成される。仕切り板４５ｂは、液体の通路において、籠状樹脂管フィルタ１の前後の液体を仕切る機能を持つ。本実施形態では、樹脂管として、図２に示した要領で、外径０．８ｍｍのＰＥＴモノフィラメント１５を、外径２０ｍｍ、長さ２５ｍのフッ素樹脂製フレキシブルマンドレル１６に対して編み組みし、１５０℃×０．５時間の加熱処理を施して形状固定させた後にフレキシブルマンドレル１６を抜き取って得た、内径２０ｍｍ、長さ２５ｍ、交合角度１１２°の樹脂管１１を３０本用い、それぞれの先端部を、側部から押さえつけて収縮させた状態で、３００℃の熱板に押し付けて溶融接着により封止し、籠状樹脂管フィルタ１とした。また、ニップル４５ａは、外径２２ｍ、長さ５０ｍｍのＰＰパイプを使用し、７５ｍｍ×２５０ｍｍの仕切り板４５ｂにニップル４５ａの各基端部を接合配置して、複合管接合部材４５とした。この複合管接合部材４５における複数のニップル４５ａは、これらに取り付けられる複数の樹脂管フィルタ１がほぼ最密状に並ぶように配置することが好ましい。このように配置することにより、樹脂管フィルタ１同士が接触する頻度が増すので、目詰まりをより効果的に防止することができる。
【００３３】
図９に示すように、微生物担体処理槽５３と沈殿槽５５とを隔てる隔壁６１の中央上部に凹部を形成し、微生物担体処理槽５３で処理された処理水を沈殿槽５５へ排出するための排出溝６３としている。この排出溝６３の両内側面にほぼ沿うように、かつ微生物担体処理槽５３の内側に突出して、一組のフィルタ支持部６５，６５を設け、このフィルタ支持部６５，６５の嵌合溝６７，６７にフィルタ構造体９Ｃの仕切り板４５ｂの両側端部を嵌め込むことによってフィルタ構造体９Ｃが微生物担体槽５３に設置される。なお、廃液処理システム５０のフィルタ構造体９Ｃを除く部分の構成は、金属製のメッシュスクリーンを使用していた既存のものと同様である。すなわち、既存のシステムにおいてはフィルタ支持部６５，６５の嵌合溝に嵌め込まれていたメッシュスクリーンを、フィルタ構造体９Ｃで置き換えて、本実施形態に係る廃液処理システムとした。したがって、既存の廃液処理システムに本実施形態のフィルタ構造体９Ｃを容易に装着できる。
【００３４】
この廃液処理システムにおいて、微生物担体処理槽５３の籠状樹脂管フィルタ１の周辺に到達した処理水は、仕切り板４５ｂに遮られて、確実に樹脂管フィルタ１を介して沈殿槽５５へと排出される。樹脂管フィルタ１は微生物担体処理槽５３内に突出しているので、微生物担体処理槽５３の処理水は、排出溝６３から沈殿槽５５へ排出される際、樹脂管フィルタ１の外側から内側へ通過し、このとき微生物担体処理槽５３内の微生物担体は、各樹脂管フィルタ１の外側で捕捉され、沈殿槽５５へ流出するのが防止される。
【００３５】
廃液処理システム５０におけるフィルタ構造体９Ｃのろ過面積は、従来のメッシュスクリーンのろ過面積（ほぼ仕切り板４５ｂの面積に相当）に比較して大幅に増大しており、かつ、フレキシブルな籠状樹脂管フィルタ１が、処理水の流れおよび曝気用の空気流によって大きく揺動する。しかも、各樹脂管フィルタにおいては、モノフィラメント間に接合部がないために、樹脂管フィルタ束７の揺動に伴って孔形状も変化する。したがって、ろ過された担体による目詰まりが極めて起こりにくくなっており、フィルタの洗浄作業にかかる負担が大幅に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【００３６】
【図１】本発明の一実施形態に係る籠状樹脂管フィルタを示す斜視図である。
【図２】本発明の一実施形態に係る籠状樹脂管フィルタに使用される樹脂管の製造方法を示す模式図である。
【図３】本発明の一実施形態に係るフィルタ構造体を示す斜視図である。
【図４】本発明の一実施形態に係るフィルタ構造体に使用される複合管接続部材を示す斜視図である。
【図５】本発明の他の実施形態に係るフィルタ構造体を示す斜視図である。
【図６】本発明のさらに他の実施形態に係るフィルタ構造体を示す斜視図である。
【図７】本発明の一実施形態に係る廃液処理システムの構成の一部を示す概略図である。
【図８】図７の廃液処理システムの管接続部材を示す斜視図である。
【図９】図７の廃液処理システムの要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【００３７】
１ 籠状樹脂管フィルタ
１ａ 先端部
１ｂ 基端部
３ 単体接続管部材
３ａ，５ａ，４５ａ ニップル
３ｂ，５ｂ、４５ｂ 仕切り板
５ 複合接続管部材
９，９Ａ，９Ｂ，４５ フィルタ構造体
１１ 有孔樹脂管
１５ 樹脂モノフィラメント
１６ フレキシブルマンドレル
５３ 微生物担体処理槽
【特許請求の範囲】
【請求項１】
籠状に編み込まれた樹脂製の素材からなるフレキシブルな有孔樹脂管の一方の端部を封止することで形成されたフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ。
【請求項２】
請求項１において、前記有孔樹脂管の多数の孔が、編み目状の隙間により形成されているフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ。
【請求項３】
請求項１または２において、前記有孔樹脂管が、樹脂モノフィラメントを編組して形成され、モノフィラメント間に接合された部分を有していないものであるフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ。
【請求項４】
請求項１または２において、前記有孔樹脂管は、樹脂モノフィラメントが、横糸のみで巻芯となるフレキシブルマンドレル上で編組され、加熱処理されてなるものであり、前記モノフィラメント間の接合部および縦糸を有しないで、菱形の連続編み目構造を有するものであるフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ。
【請求項５】
請求項１から４のいずれか一項において、前記有孔樹脂管が、単数本または複数本を束ね、端部で変形結束、または溶融接着されることで封止されているフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ。
【請求項６】
流体通路の内部に設置されるフィルタ構造体であって、請求項１から５のいずれか一項に記載の１つ以上の籠状樹脂管フィルタと、
各フィルタの開放された他方の端部が接続されるニップル、および前記流体通路内において前記フィルタを通過する前後の流体である原液とろ過液とを仕切る仕切り板を有する管接続部材と、
を備えたフィルタ構造体。
【請求項７】
請求項６において、前記管接続部材が複数のニップルを有しており、この管接続部材に接続された複数の有孔樹脂管フィルタのそれぞれが、内径の５倍以上の長さを有するフィルタ構造体。
【請求項８】
廃液処理のための微生物担体処理層と排水系との間に、微生物担体が槽外へ流出するのを防止する請求項６または７に記載のフィルタ構造体が設置されている廃液処理システム。
【請求項９】
請求項８において、前記フィルタ構造体の有孔樹脂管フィルタが槽の内部側に突出しており、前記微生物担体処理槽から排出される処理水が、前記有孔樹脂管の外面から内面へ通過するように設定されている廃液処理システム。
【請求項１】
籠状に編み込まれた樹脂製の素材からなるフレキシブルな有孔樹脂管の一方の端部を封止することで形成されたフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ。
【請求項２】
請求項１において、前記有孔樹脂管の多数の孔が、編み目状の隙間により形成されているフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ。
【請求項３】
請求項１または２において、前記有孔樹脂管が、樹脂モノフィラメントを編組して形成され、モノフィラメント間に接合された部分を有していないものであるフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ。
【請求項４】
請求項１または２において、前記有孔樹脂管は、樹脂モノフィラメントが、横糸のみで巻芯となるフレキシブルマンドレル上で編組され、加熱処理されてなるものであり、前記モノフィラメント間の接合部および縦糸を有しないで、菱形の連続編み目構造を有するものであるフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ。
【請求項５】
請求項１から４のいずれか一項において、前記有孔樹脂管が、単数本または複数本を束ね、端部で変形結束、または溶融接着されることで封止されているフレキシブルな籠状樹脂管フィルタ。
【請求項６】
流体通路の内部に設置されるフィルタ構造体であって、請求項１から５のいずれか一項に記載の１つ以上の籠状樹脂管フィルタと、
各フィルタの開放された他方の端部が接続されるニップル、および前記流体通路内において前記フィルタを通過する前後の流体である原液とろ過液とを仕切る仕切り板を有する管接続部材と、
を備えたフィルタ構造体。
【請求項７】
請求項６において、前記管接続部材が複数のニップルを有しており、この管接続部材に接続された複数の有孔樹脂管フィルタのそれぞれが、内径の５倍以上の長さを有するフィルタ構造体。
【請求項８】
廃液処理のための微生物担体処理層と排水系との間に、微生物担体が槽外へ流出するのを防止する請求項６または７に記載のフィルタ構造体が設置されている廃液処理システム。
【請求項９】
請求項８において、前記フィルタ構造体の有孔樹脂管フィルタが槽の内部側に突出しており、前記微生物担体処理槽から排出される処理水が、前記有孔樹脂管の外面から内面へ通過するように設定されている廃液処理システム。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【公開番号】特開２００８−２２９５６８（Ｐ２００８−２２９５６８Ａ）
【公開日】平成２０年１０月２日（２００８．１０．２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−７６００２（Ｐ２００７−７６００２）
【出願日】平成１９年３月２３日（２００７．３．２３）
【出願人】（０００００１０８５）株式会社クラレ (1,607)
【出願人】（０００１０４９０６）クラレプラスチックス株式会社 (52)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年１０月２日（２００８．１０．２）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年３月２３日（２００７．３．２３）
【出願人】（０００００１０８５）株式会社クラレ (1,607)
【出願人】（０００１０４９０６）クラレプラスチックス株式会社 (52)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]