説明

フレキシブルホースユニットの保護装置

【課題】 簡単な構成でフレキシブルホースユニット使用時の過負荷による振り回しや機器損傷を防止し、さらに取扱操作上においても安全に作業を行うことのできるフレキシブルホースユニットの保護装置を提供する。
【解決手段】 回転入力軸に連結されるカップリングと、カップリングに着脱可能に一端を連結され他端側を回転出力側とするフレキシブルホースユニットであり、曲がり自在なフレキシブルホースに曲がり自在かつ軸回り回転自在なフレキシブルシャフトを挿入したフレキシブルホースユニットと、カップリングとフレキシブルシャフトとに着脱自在であり、かつその一部を同時にカップリングとフレキシブルシャフトとのそれぞれの受け部に嵌合する回転伝達部材と、を有する。回転伝達部材は、カップリングからの回転入力をフレキシブルシャフトへの回転出力に伝達する回転伝達部材であって、フレキシブルシャフト側からの過度の回転負荷時に破断して回転伝達を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転入力をフレキシブルに伝達するフレキシブルシャフトを内装させたフレキシブルホースユニットの保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液混合機、農薬等散布機、刈り払い機、その他産業機器において、回転入力側と回転出力側とを撓み自在あるいは曲がり自在なフレキシブルシャフトを挿入内蔵させたフレキシブルホースユニットで連結させて軸回転力をフレキシブルに出力側に伝達させ、出力側の機器の操作を行ない易くさせたり、回転入出力中間の伝達軸を曲げた状態で設置して設備、設置の自由度確保・設置空間のコンパクト化・装置の小型化・低コスト化を実現させる回転伝達機構が知られている。例えば、特許文献1の攪拌装置においてその例が示されている。
【0003】
【特許文献1】実公昭51−47116
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1は、図10のように、薬液タンクN内に配置した攪拌装置Rと噴霧器SとをフレキシブルホースユニットTで接続し、発電機等の原動機Uを介して駆動される噴霧器Sのクランクシャフト等の回転軸にフレキシブルホースに挿入されたフレキシブルシャフトを連結して攪拌装置Rの線材枠V内に配置した回転羽根を回転駆動させて薬液タンク内の薬液を攪拌し、一方でその混合される薬液を吸引しながら噴霧器Sで所望の植栽地の対象範囲に噴霧するものである。そして、フレキシブルホースユニットTは、曲り自在の耐圧フレキシブルホースに曲がり自在なフレキシブルシャフトを長手方向を軸として軸回りに回転自在に挿入したものであり、噴霧器Sと薬液タンクNの開口とに高低差や途中に種々の設備機器等が配置されてまっすぐに配管しえないような場合にも簡易に回転力を伝達し得るものである。ところで、耐圧フレキシブルホース内に挿入されたフレキシブルシャフトは、芯となる鋼線に金属素線を帯状複数層に巻きつけて構成したものであり、柔軟性と軸回り回転についての高い強度を保持して回転力伝達をフレキシブルな態様で行なえるようになっている。しかしながら、従来のフレキシブルホースユニット構成においては、原動機あるいは原動機を介した噴霧器Sからの回転入力でフレキシブルシャフトが回転すると、特に、屈曲部において、素線間の摩擦、素線自体の内部摩擦、フレキシブルシャフトとフレキシブルホースとの直接接触による摩擦などを伴い、回転抵抗が大きくなってそのぶん回転入力側が過負荷となるおそれがあった。また、薬液タンクN内の液体の粘性が高い場合や紐状物あるいは石ころ等の異物が混入した場合には、フレキシブルシャフト側に大きな回転負荷が加わり、フレキシブルホースユニットの長手方向中間部を大きく振り回したり、あるいはホース全体に振動が発生するおそれがある。さらに、過負荷運転が続くと金属素線が断裂し、内部でバラケて最終的にはフレキシブルホースを損傷し、フレキシブルホースユニット全体を交換する必要が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、簡単な構成でフレキシブルホースユニット使用時の過負荷による振り回し、振動、ホース損傷を防止し、さらに取扱操作上においても安全に作業を行うことのできるフレキシブルホースユニットの保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、回転入力軸14に連結されるカップリング12と、カップリング12に着脱可能に一端を連結され他端側を回転出力側とするフレキシブルホースユニットTであり、曲がり自在なフレキシブルホース52に曲がり自在かつ軸回り回転自在なフレキシブルシャフト54を挿入したフレキシブルホースユニットTと、カップリング12とフレキシブルシャフト54とに着脱自在であり、かつその一部を同時にカップリング12とフレキシブルシャフト54とのそれぞれの受け部24、72に嵌合してカップリング12からの回転入力をフレキシブルシャフト54への回転出力に伝達する回転伝達部材であって、フレキシブルシャフト54側からの過度の回転負荷時に破断して回転伝達を遮断する回転伝達部材80と、を備えたフレキシブルホースユニットの保護装置10から構成される。カップリング12は、回転入力軸14に直結し回転入力軸の先端部として機能する。カップリングと、フレキシブルシャフトを保護案内するフレキシブルホースとは、軸心を同じにし、かつ軸回りにフリー回転するように軸方向に接続される。カップリングからの回転入力は回転伝達部材を介してフレキシブルシャフトに加えられフレキシブルシャフトから先端側である回転出力側に回転出力する。回転伝達部材は、過度の回転負荷が加わると自本体部を破断して回転伝達を遮断し、フレキシブルホースユニット全体を保護する。回転伝達部材の素材は金属、軽金属、合金、プラスチック、セラミック等で形成できる。外周面から内側方向に凹設する凹状部を形成することで、軸回りに捩り回転負荷が加わる場合に設定された過負荷破断力が確実に凹状部に加わり、設定力に対する破断応答を確実に行わせることができる。
【0007】
その際、カップリング12とフレキシブルシャフト54とのそれぞれの受け部24、72はカップリング12とフレキシブルシャフト54とが連結された状態で対向壁側に開口23、68を有する受穴22、70からなるようにするとよい。
【0008】
また、回転伝達部材80は、それぞれの受け部24、72に挿脱自在に嵌合しかつカップリング12からの回転入力を受けてカップリング12、回転伝達部材80、フレキシブルシャフト54が一体回転するように一体回転係合構造で連結されるとよい。
【0009】
また、回転伝達部材80は棒状体からなり、その外周面から凹む過負荷破断力設定用の凹状部86を有するとなおよい。
【0010】
また、凹状部86は、回転伝達部材80の周状に形成された溝88であるとなおよい。
【0011】
また、凹状部86が、カップリング12とフレキシブルシャフト54とが近接あるいは密着対向して連結された状態での連結軸線100上においてそれらの端部の対向中央線とほぼ同じ位置か、近傍位置に配置されているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフレキシブルホースユニットの保護装置によれば、回転入力軸に連結されるカップリングと、カップリングに着脱可能に一端を連結され他端側を回転出力側とするフレキシブルホースユニットであり、曲がり自在なフレキシブルホースに曲がり自在かつ軸回り回転自在なフレキシブルシャフトを挿入したフレキシブルホースユニットと、カップリングとフレキシブルシャフトとに着脱自在であり、かつその一部を同時にカップリングとフレキシブルシャフトとのそれぞれの受け部に嵌合してカップリングからの回転入力をフレキシブルシャフトへの回転出力に伝達する回転伝達部材であって、フレキシブルシャフト側からの過度の回転負荷時に破断して回転伝達を遮断する回転伝達部材と、を備えた構成であるから、簡単な構成でフレキシブルホースユニット使用時の過負荷によるホースの振り回し、振動を防止し安全に取り扱い操作を行うことができる上に、フレキシブルホースユニット全体が使用不能となり交換が不可欠となる事態を生じることなく、単に回転伝達部材のみの交換で低コストに維持でき、さらに出力側作業を安定して継続させることが可能である。
【0013】
また、カップリングとフレキシブルシャフトとのそれぞれの受け部はカップリングとフレキシブルシャフトとが連結された状態で対向壁側に開口を有する受穴からなる構成であるから、カップリングとフレキシブルシャフトとの脱着部分に回転伝達部材を装着させることができ、装置の使用開始や管理作業等における点検時に同時に回転伝達部材の状態を確認でき、使用、管理上の利便性を保持し得る。
【0014】
また、回転伝達部材は、それぞれの受け部に挿脱自在に嵌合しかつカップリングからの回転入力を受けてカップリング、回転伝達部材、フレキシブルシャフトが一体回転するように一体回転係合構造で連結される構成であるから、例えば回転伝達部材を剛体で構成し、カップリングからの回転入力が直接にフレキシブルシャフトに伝達される構成で、回転伝達部材に凹状部等を形成する簡単な方法で回転伝達部材の過負荷破断設定を行うことができる。
【0015】
また、回転伝達部材は棒状体からなり、その外周面から凹む過負荷破断力設定用の凹状部を有する構成であるから、簡単な構成で回転伝達部材の過負荷破断設定を行なえるとともに、過負荷破断力設定に対する破断応答を確実に行わせることができる。
【0016】
また、凹状部は、回転伝達部材の周状に形成された溝である構成であるから、簡単な構成で回転伝達部材の過負荷破断設定を行なえるとともに、過負荷破断力設定に対する破断応答を確実に行わせることができる。
【0017】
また、凹状部が、カップリングとフレキシブルシャフトとが近接あるいは密着対向して連結された状態での連結軸線上においてそれらの端部の対向中央線とほぼ同じ位置か、近傍位置に配置される構成であるから、カップリングとフレキシブルシャフトとの脱着部分に回転伝達部材を装着させることができ、装置の使用開始や管理作業等における点検時に同時に回転伝達部材の凹状部の状態を確認でき、使用、管理上の利便性を保持し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明するが、従来の説明に示した構成と同一装置あるいは部材には同一の符号を付して説明する。本発明のフレキシブルホースユニットの保護装置は、農業、工業分野その他の産業分野において、曲り自在なフレキシブルホースとフレキシブルシャフトを用いて曲り自在に回転入力を伝達する曲がり自在伝達ホース手段において適用可能であるが、本実施形態では一つの実施形態として薬液混合機に適用した例を示す。
【0019】
図1ないし図8は本発明の第1実施形態を示している。図1、図2において、本実施形態のフレキシブルホースユニットの保護装置10は、カップリング12と、フレキシブルホースユニット30と、回転伝達部材80と、を備えている。
【0020】
カップリング12は、ポンプ、エンジン、モータなどの原動機あるいはそれらの組合せにより回転力を発生させる回転機器に連結される回転入力軸14に一部あるいは一端側を連結し他部あるいは他端側をフレキシブルホースユニット30に接続させる軸連結手段であり、実施形態において、一端側が有底円筒体16で他端側がその底部の中心部に該筒体より小径の軸体18を筒体の軸方向で離隔方向に一体突設させた金属製連結具から構成されている。実施形態では、このカップリングは、鉄製の鋳物成形で構成され、回転入力軸14の一端を円筒体16の内側中空部に挿入した状態で螺子などの固定部材20により固定され、回転入力軸14の回転と一体に回転する。有底円筒体16の底部に突設されたカップリングの軸体18は、回転入力軸14の長手方向に円筒体の底側から円筒の高さ方向と離反方向に断面円形のシャフトとして所定長さで突設されているが、この軸体18の中心部には突設端側を開口する第1の受穴22が形成されている。受穴22は、後述する回転伝達部材80が一端側を嵌入させる際にこれを受けるカップリング12の受け部24であり、図3に示すように受穴22は、円柱状軸体18の中心を芯とする有底角穴として構成されている。なお、軸体18の受穴22の縁部は、角穴本体部26から開口23に向けてしだいに広がるテーパ部28を形成しており、後述する回転伝達部材80の装着、離脱操作を行いやすくしている。受穴22は嵌入連結される回転伝達部材と回り止め構造で連結するものであり、三角形、五角形、その他の多角形、異形形状穴、あるいはスプライン溝等を付けた円柱状穴でもよい。また、抜け止めが施されておれば、入力軸連結側に貫通する孔でもよい。
【0021】
本実施形態において、カップリング12には継手金具30を介してフレキシブルホースユニットTが接続される。継手金具30は、回転入力軸14に連結したカップリング12とフレキシブルホースユニットTとを接続し回転力伝達を行なわせながら最外面に配置される保護用のホース部を入力回転と切り離して該カップリングに固定連結させる接続手段であり、ホース部を把持したり地面などに載置する場合等にカップリング12の回転がホース部に伝わらないようにして種々の作業や、ユニット全体の取扱をしやすいようにしている。
【0022】
図2において、継手金具30は、大径部301と小径部302と大径部から小径部にかけて形成した小さな段付き部303とを一体に形成した略円筒体から形成されている。継手金具30の大径部301が軸体18に軸受32を介して外装されている。すなわち、軸受32の内輪孔に軸体18が嵌入固定されるとともに、外輪に継手金具30の内壁が密着固定されている。軸受32の軸体18あるいは継手金具30の軸方向移動は図示しないスナップリングなどの幅移動規制部材により規制されている。したがって、カップリング12の軸体18を支軸としてその軸回りに継手金具30が一応、回転自在に支持された態様となっている。実際には、フレキシブルホースユニット側を作業者が把持したり、あるいは載置する場合が多いので、入力軸との連結部分であるカップリング12が外部から見て回転する。継手金具30の大径部301を軸体18に外嵌させた状態で軸体18の先端側は軸受32のレース幅よりもフレキシブルホースユニット側に突設させて受穴22の開口23をフレキシブルホースユニット側に対向させている。さらに、継手金具30の外周の一部には、取付枠34を介して拡大頭部を有するストッパピン36が取り付けられており、継手金具30の外周に穿孔したピン孔38にストッパピン36の下端部が常時継手金具30の中心軸方向にバネ40により付勢された状態で設置されている。常時は、ストッパピン36の下端は継手金具の内壁から内側にわずかに突出するように配置されており、ストッパピン36をバネの力に抗して引いて継手金具30の中空孔から退避させた状態でフレキシブルホースユニット側の連結金具を挿入させ、その後ストッパピン36への引く力を解除してピン先端を突出復帰させてフレキシブルホースユニット側の金具と連結させる。継手金具30のカップリング12との非連結側端部は開口(30a)しており、フレキシブルホースユニットの連結金具56の一端側を受けて連結接続される。
【0023】
フレキシブルホースユニットTは、カップリング12に着脱可能に一端を連結されカップリングからの回転入力をフレキシブルな回転軸により伝達して他端側を回転出力側に連結させるフレキシブル回転軸ユニットであり、本実施形態において、該フレキシブルホースユニットTは、曲がり自在なフレキシブルホース52と、フレキシブルホース52内に軸回り回転自在に挿入された曲がり自在なフレキシブルシャフト54と、を含む。
【0024】
フレキシブルホース52は、曲がり自在なフレキシブルシャフト54を曲がり自在、回転自在に支持し、かつ外部から保護を行なうフレキシブルシャフト54の支持並びに保護手段である。実施形態において、フレキシブルホース52は、軸方向と交差する方向に曲がり自在な耐圧性の合成ゴムに補強用の合成繊維や金属繊維等を複数積層して一体化した円筒ホースからなり、その一端側が継手金具30に連結固定されるとともに、他端側が延長されて例えば図8、図10の攪拌装置Rに接続される。フレキシブルホース52の両端側にはそれぞれ該ホース52と同じ外径サイズの連結金具56、57が締着バンド等の固定部材58により連結固定されている。継手金具30と接続される側の連結金具56は、継手金具30の開口30aに対向する開口62を有する段付き円筒形状で形成されており、大径筒60と大径筒に一体に連結された小径筒61と、を含む。連結金具56の小径筒61は回転出力側に伸びる先端を有するとともに、大径筒60は、継手金具30の開口30aに対向する端部を有している。小径筒61はフレキシブルホース52の中空内に一端側から挿入嵌着され固定部材58で固定されている。その際、連結金具56の段差壁がフレキシブルホース52の端面に密着衝合した状態で固定連結される。小径筒61内の筒孔は大径筒60の筒孔と同心で連通している。そして、大径筒60の中空内部も小さな段差壁605を介して大径孔部と小径孔部とを連設させた段付き孔形状を呈している。小径部302がフレキシブルホース52に嵌入された状態で固定部材58を介してフレキシブルホース52の一端側に連結金具56を連結固定している。大径筒60の開口端寄り位置には継手金具30側のストッパピン36を受け入れる孔64が設けられている。
【0025】
フレキシブルシャフト54は、回転入力軸14に一端を連結され、回転自在かつ曲がり自在に回転入力を伝達する可撓軸伝達手段であり、一端側を回転入力軸14に連結するカップリング12に連結されるとともに、他端側が回転出力側とされる。フレキシブルシャフト54の一端側と回転入力軸14とは後述するように回転伝達部材80を介して着脱自在に連結されるとともに、この着脱自在連結部としての回転伝達部材装着部は、シャフト54の支持、保護用のフレキシブルホース52と、回転入力軸14と軸回り回転自在に連結するカップリング12と、の着脱部あるいはその近傍に設定されている。
【0026】
フレキシブルシャフト54は、芯となる鋼線に金属素線を帯状複数層に巻きつけて構成し柔軟性と軸回り回転についての高い強度を保持した公知のものを採用しうる。金属素線内にグリース等を注入してフレキシブルシャフト54自体あるいは、フレキシブルホース52と内部のフレキシブルシャフト54との動きを良くして回転抵抗や発熱軽減、さらには外部からのホースの取扱性を維持する。
【0027】
図2において、フレキシブルシャフト54の回転入力軸との連結側端部には、棒状のアダプタ部材66が一端をカップリング12の軸体18先端に対向させてフレキシブルシャフト54の長手方向に延長するように連結固定されている。実施形態において、アダプタ部材66は、円柱形状で形成されており軸体18との対向端面に開口68を有するシャフト54方向を深さ方向とする第2受穴70を備えている。第2受穴70は回転伝達部材80の一端側を嵌入させる際にこれを受けるフレキシブルシャフト側の受け部72であり、図3に示すように第2受穴70は、円柱状軸体18の有底角穴と同じ深さで同じ縦横サイズの有底角穴として形成されている。フレキシブルシャフト54にはワッシャ74がその中孔を通係されてアダプタ部材66の基部側に配置されており、図7に示すように、アダプタ部材66の基端と小径筒61の孔あき底壁76との間に介装されている。
【0028】
本発明において、一つの特徴的なことは、カップリング12とフレキシブルシャフト54の一端側にそれぞれその両端の一端側を着脱自在に嵌合連結する回転伝達部材80が設けられていることである。回転伝達部材80は、その一部を同時にカップリング12とフレキシブルシャフト54とのそれぞれの受け部24、72に嵌合してカップリング12からの回転入力をフレキシブルシャフト54への回転出力に伝達する回転伝達手段であり、特に、本実施形態において、この回転伝達部材は過負荷時の伝達遮断機能を有する。回転伝達部材80は、剛性のある基本的には棒状体あるいは筒体構成が考えられるがその他両受部24、72に同時に嵌合し一体回転するものであれば、外形形状、内部構造は任意に設定できる。すなわち、回転伝達部材80は、それぞれの受け部24、72に挿脱自在に嵌合しかつカップリング12からの回転入力を受けてカップリング12、回転伝達部材80、フレキシブルシャフト54が一体回転するように一体回転係合構造でカップリング12と、フレキシブルシャフト54とに連結される。
【0029】
すなわち、本実施形態において、図5に示すように、回転伝達部材80は断面略正方形で一方向に長いやや短尺の金属角棒部材、すなわち剛体で形成されている。実施形態では例えば加工性の点から真鍮製で構成されている。この回転伝達部材80は、フレキシブルシャフト54側からの過度の回転負荷時に自本体部が破断して入力から出力側への回転伝達を遮断する。回転伝達部材80は、カップリング12の軸体18の第1受穴22に挿入されて嵌合する第1半体部82と、フレキシブルシャフト54のアダプタ部材66の第2受穴70に挿入されて嵌合する第2半体部84と、凹状部86と、を含む。実施形態において、第1、第2半体部82,84は、略同じ形状、サイズの直方体形状をしており、それぞれ第1、第2受穴22,70よりわずかに小さなサイズで、それぞれの穴内にスムーズに挿入しうる程度の大きさで形成されている。
【0030】
金属棒部材の回転伝達部材80の凹状部86は、フレキシブルシャフト54側からの過度の回転負荷時に破断する部分であり、断面で見ると少なくとも棒部材の芯側に凹設形成されて断面径が小さくなっている部分である。すなわち、回転入力軸からの軸回りの回転入力はカップリング部材12からこの回転伝達部材80を介してフレキシブルシャフト54に直接に伝達されるが、このとき、回転の捩り力を最初に受けるのは回転伝達部材80であり、回転伝達部材の回転によりアダプタ部材66を介してフレキシブルシャフト54に捩り回転力を与える。したがって、大きな捩り回転力を受ける回転伝達部材の一部に断面径が小さな部分が存在すると、薬液タンク側の高粘性や異物噛み込み等で、フレキシブルシャフト54側からの、回転に対する負荷が増大する場合に強度の点で劣る凹状部86において捩り破断する。この凹状部86は、本実施形態において棒状体からなり、その外周面から凹む過負荷破断力設定部とされる。凹状部86は、剛性体の回転伝達部材80の断面径が小さな部分であり、その形態は種々考えられる。例えば凹陥穴、定形、不定形のキズや溝、格子状の凹部、部材の周方向に連続するもの、不連続のもの、一定、不定間隔で形成されるものその他種々の凹状部構成が考えられる。周状に溝を形成して凹状部とする場合には、過負荷破断力設定を無段階に行うことができる。
【0031】
本実施形態において、詳細には、凹状部80は、図5のように回転伝達部材80の周状に形成された溝88で形成されている。溝88は例えば角棒部材の長手中心部を旋盤等で溝付け加工したものであり、角棒部材の断面サイズx、yに対して溝88付け後の残存部90の断面サイズにより、材質を考慮した破断限界がある程度設定でき、これによって、具体的な出力側の出力機器の構成や使用方法などに応じた過負荷破断力設定を行うことができる。
【0032】
なお、図7において、着脱自在連結部としての回転伝達部材装着部は、シャフト54の支持、保護用のフレキシブルホース52と、回転入力軸14と軸回り回転自在に連結するカップリング12と、の着脱部あるいはその近傍に設定されているが、本実施形態では、さらに、凹状部86が、カップリング12とフレキシブルシャフト54とが近接あるいは密着対向して連結された状態での連結軸線100上においてそれらの対向端部の中央線150とほぼ同じ位置か、近傍位置に配置されている。これによって、回転伝達部材80の凹状部86形成位置がカップリング12とフレキシブルシャフト54との当接あるいは対面位置に近い部分に設定されることとなり、図7のように軸体18の端部にテーパ部28などを形成することで過負荷破断力設定部すなわち凹状部において、過負荷時に回転伝達部材が確実に破断し、回転力伝達を遮断させる。
【0033】
次に、図を参照しつつ実施形態のフレキシブルホースユニットの保護装置10の作用について説明する。図10の薬剤タンクN内にフレキシブルホースユニットTを接続した攪拌装置Rを設置し、また、吸引ホース92に吸引部を接続して薬液内に配置した噴霧器Sを原動機Uからの回転駆動力により駆動させ、噴霧管94のノズル96から薬液を植物栽培地等に噴霧する。噴霧器Sのクランクアームに連結した回転入力軸14がカップリング12、継手金具30、を介してフレキシブルホースユニットTに連結され、同ユニットTの先端側の攪拌装置Rの回転羽根を回転駆動させる。
【0034】
図2の状態から、図7、図1の状態に各部を組み付けた連結状態で、回転入力軸14に連結したカップリング12が回転し、継手金具30とフレキシブルホース52の外皮保護部分は、ベアリング32により軸回り回転が伝達されず、ホース52内のフレキシブルシャフト54のみがカップリング12とともに軸回り回転を行なう。図7において、回転入力軸14の回転力はカップリング12、回転伝達部材80、継手金具30、フレキシブルシャフト54の順に伝達される。このとき、攪拌装置R、フレキシブルホースユニットT、などの外的要因、あるいは外部操作により回転に対する大きな抵抗が生じ、回転伝達部材80に対して過負荷破断力設定部で設定された耐強度を越える捩り回転負荷が加えられると、例えばその凹状部86において破断し、回転入力伝達を遮断する。これによって、フレキシブルホースユニットTにおいて、過熱やホース全体の暴れ、さらにホース全体の破損が未然に防止され、作業場の安全確保、さらに、機器の交換コスト発生等を防止することができる。
【0035】
図9には、回転伝達部材80の他の例が示されている。この実施形態では、回転伝達部材の中央に設けた凹状部としての溝88内に位置決め部材120が嵌め込まれている。位置決め部材120は、凹状部86の設置位置が継手金具30を介したフレキシブルシャフト54側と、カップリング12を介した回転入力軸14側との対向あるいは対面部分の中央又は略中央位置に位置決めされて配置させるためのものであり、実施形態では、例えば、ゴムなどの弾性リング部材を溝内に外嵌させている。過負荷破断力設定部での設定による破断作動及び継手金具やカップリングの軸体の受穴22、70の穴深さによらない配置位置決めを実現し得る。
【0036】
以上説明した本発明のフレキシブルホースユニットの保護装置は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のフレキシブルホースユニットの保護装置は、薬液混合機ばかりでなく、農薬等散布機、刈り払い機、その他産業機器において、回転入力側と回転出力側とをフレキシブルに軸回転伝達を行なう伝達機構全般について、適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフレキシブルホースユニットの保護装置の一部省略外観図である。
【図2】図1装置の分解縦断面図である。
【図3】図2での断面しない状態でのA−A線矢示図である。
【図4】図2での断面しない状態でのB−B線矢示図である。
【図5】回転伝達部材の斜視図である。
【図6】図5の溝部分の断面図である。
【図7】図1の縦断面図兼、作用説明図である。
【図8】図1の装置を適用した薬剤噴霧器の攪拌装置と本実施形態のフレキシブルホースユニットの保護装置とを分解して示した縦断面説明図である。
【図9】回転伝達部材の他の実施形態の斜視説明図である。
【図10】本願実施形態構成説明を兼ねた薬剤噴霧器の使用例構成の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10 フレキシブルホースユニットの保護装置
12 カップリング
14 回転入力軸
18 軸体
22 第1受穴
24 受け部
30 継手金具
52 フレキシブルホース
54 フレキシブルシャフト
56 連結金具
66 アダプタ部材
70 第2受穴
72 受け部
80 回転伝達部材
86 凹状部
100 連結軸線
150 対向中央線
T フレキシブルホースユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転入力軸に連結されるカップリングと、
カップリングに着脱可能に一端を連結され他端側を回転出力側とするフレキシブルホースユニットであり、曲がり自在なフレキシブルホースに曲がり自在かつ軸回り回転自在なフレキシブルシャフトを挿入したフレキシブルホースユニットと、
カップリングとフレキシブルシャフトとに着脱自在であり、かつその一部を同時にカップリングとフレキシブルシャフトとのそれぞれの受け部に嵌合してカップリングからの回転入力をフレキシブルシャフトへの回転出力に伝達する回転伝達部材であって、フレキシブルシャフト側からの過度の回転負荷時に破断して回転伝達を遮断する回転伝達部材と、を備えていることを特徴とするフレキシブルホースユニットの保護装置。
【請求項2】
カップリングとフレキシブルシャフトとのそれぞれの受け部はカップリングとフレキシブルシャフトとが連結された状態で対向壁側に開口を有する受穴からなる請求項1記載のフレキシブルホースユニットの保護装置。
【請求項3】
回転伝達部材は、それぞれの受け部に挿脱自在に嵌合しかつカップリングからの回転入力を受けてカップリング、回転伝達部材、フレキシブルシャフトが一体回転するように一体回転係合構造で連結されることを特徴とする請求項1又は2記載のフレキシブルホースユニットの保護装置。
【請求項4】
回転伝達部材は棒状体からなり、その外周面から凹む過負荷破断力設定用の凹状部を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフレキシブルホースユニットの保護装置。
【請求項5】
凹状部は、回転伝達部材の周状に形成された溝であることを特徴とする請求項4記載のフレキシブルホースユニットの保護装置。
【請求項6】
凹状部が、カップリングとフレキシブルシャフトとが近接あるいは密着対向して連結された状態での連結軸線上においてそれらの端部の対向中央線とほぼ同じ位置か、近傍位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のフレキシブルホースユニットの保護装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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