説明

フレキシブル光ディスクの製造方法

【課題】低コストで情報の高密度記録が可能なフレキシブル光ディスクを製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】 一側の面が表面保護フィルム122で覆われているフィルム基板120を、該フィルム基板120よりも大きな剛性を有する剛性基板140に、前記表面保護フィルム122を介して貼り付ける工程と、所定のプリグルーブが形成されているニッケル製のスタンパ150の表面に紫外線硬化型の樹脂143を塗布する工程と、該紫外線硬化型の樹脂143と、剛性基板140に貼り付けられたフィルム基板120の他側の面とを貼り合わせる工程と、剛性基板140側から紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂143を硬化させる工程と、スタンパ150を分離し、紫外線硬化型の樹脂143のプリグルーブが転写されている面に記録層を形成する工程とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル光ディスクの製造方法に係り、さらに詳しくは、記録容量の大きなフレキシブル光ディスクの製造に適したフレキシブル光ディスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、波長が約405nmのレーザ光に対応した光ディスク(以下では、「BD」ともいう)が商品化されている(例えば、特許文献1〜6参照)。
【0003】
そして、記録密度をさらに高めるため、光ピックアップ装置における集光レンズのNAの増大化が検討されている。
【0004】
ところで、1より大きいNAを達成する手法として、エバネッセント波、すなわち界面から指数関数的に減衰する光、いわゆる近接場光を用いた記録再生方式(以下では、「ニアフィールド光記録再生方式」ともいう)が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献7及び8には、対物用の光学レンズとソリッドイマージョンレンズ(SIL:Solid Immersion Lens、固浸レンズ)とを組み合わせて近接場光学系を構成し、光ディスクに近接場光を照射して情報の記録再生を行う装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献9には、ニアフィールド光記録再生方式に用いられるプラスチック基板が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献10〜13には、フレキシブル光ディスクが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フレキシブル光ディスクは、低コストで情報の高密度記録が可能な光ディスクとして開発が進められている。
【0009】
そして、光ピックアップ装置における集光レンズのNAが大きくなると、それに伴って、光ディスクにおける光の入射面の平坦度に対する要求が高くなってくる。
【0010】
しかしながら、フレキシブル光ディスクを波長が約405nmのレーザ光に対応させたり、ニアフィールド光記録再生方式に用いる場合に、従来の製造方法で製造されたフレキシブル光ディスクでは、高品質の記録再生が困難であった。
【0011】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、低コストで情報の高密度記録が可能なフレキシブル光ディスクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、一側の面がフィルムで覆われているシート状基板を、該シート状基板よりも大きな剛性を有する剛性基板に、前記フィルムを介して貼り付ける工程と;パターンが形成されているスタンパの表面に光硬化型樹脂を塗布する工程と;該光硬化型樹脂と、前記剛性基板に貼り付けられた前記シート状基板の他側の面とを貼り合わせる工程と;前記剛性基板側から光を照射し、前記光硬化型樹脂を硬化させる工程と;前記スタンパを分離し、前記光硬化型樹脂の前記パターンが転写されている面に記録層を形成する工程と;を含むフレキシブル光ディスクの製造方法である。
【0013】
これによれば、フレキシブル光ディスクにおける光の入射面の平坦度を従来よりも高めることができ、結果として、低コストで情報の高密度記録が可能なフレキシブル光ディスクを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフレキシブル光ディスク100を説明するための図である。
【図2】図2(A)〜図2(C)は、それぞれフレキシブル光ディスク100の製造方法を説明するための図(その1)である。
【図3】図3(A)及び図3(B)は、それぞれフレキシブル光ディスク100の製造方法を説明するための図(その2)である。
【図4】図4(A)〜図4(C)は、それぞれフレキシブル光ディスク100の製造方法を説明するための図(その3)である。
【図5】図5(A)及び図5(B)は、それぞれフレキシブル光ディスク100の製造方法を説明するための図(その4)である。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、それぞれフレキシブル光ディスク100の製造方法を説明するための図(その5)である。
【図7】図7(A)〜図7(C)は、それぞれフレキシブル光ディスク100の製造方法を説明するための図(その6)である。
【図8】図8(A)〜図8(C)は、それぞれフレキシブル光ディスク100の製造方法を説明するための図(その7)である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は、それぞれフレキシブル光ディスク100の製造方法を説明するための図(その8)である。
【図10】フレキシブル光ディスク100に対応した光ディスク装置を説明するための図である。
【図11】光ディスク装置にフレキシブル光ディスク100がセットされた様子を説明するための図である。
【図12】光ディスク装置が上位装置から記録要求あるいは再生要求を受けたときのCPUの動作を説明するための図である。
【図13】図13(A)は第1記録層にフォーカス制御されたときを説明するための図であり、図13(B)は第2記録層にフォーカス制御されたときを説明するための図である。
【図14】剛性基板を使用することの効果を説明するための図である(その1)。
【図15】剛性基板を使用することの効果を説明するための図である(その2)。
【図16】本発明の第2の実施形態に係るフレキシブル光ディスク200を説明するための図である。
【図17】図17(A)〜図17(C)は、それぞれフレキシブル光ディスク200の製造方法を説明するための図(その1)である。
【図18】図18(A)及び図18(B)は、それぞれフレキシブル光ディスク200の製造方法を説明するための図(その2)である。
【図19】図19(A)〜図19(C)は、それぞれフレキシブル光ディスク200の製造方法を説明するための図(その3)である。
【図20】図20(A)及び図20(B)は、それぞれフレキシブル光ディスク200の製造方法を説明するための図(その4)である。
【図21】図21(A)〜図21(C)は、それぞれフレキシブル光ディスク200の製造方法を説明するための図(その5)である。
【図22】図22(A)及び図22(B)は、それぞれフレキシブル光ディスク200の製造方法を説明するための図(その6)である。
【図23】図23(A)〜図23(D)は、それぞれSILの成形用金型の表面のナノ構造体を説明するための図である。
【図24】図24(A)はSILの成形用金型の外観を説明するための図であり、図24(B)はSILの成形用金型の表面の拡大図である。
【図25】図25(A)及び図25(B)は、それぞれSIL表面の反射防止機能の効果を説明するための図である。
【図26】図26(A)及び図26(B)は、それぞれ光ディスク装置にフレキシブル光ディスク200がセットされた様子を説明するための図である。
【図27】フレキシブル光ディスク200に対する光ピックアップ装置のフォーカス制御を説明するための図である。
【図28】透明なプラスチック材料の特性を説明するための図である。
【図29】図29(A)及び図29(B)は、それぞれはく離基板の特性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図15に基づいて説明する。図1には、第1の実施形態にかかるフレキシブル光ディスク100が示されている。
【0016】
このフレキシブル光ディスク100は、波長が約405nmのレーザ光に対応するフレキシブル光ディスクであり、フィルム基板120、第1記録層L1、第2記録層L2、及びオーバーコート層130などを有している。そして、フレキシブル光ディスク100には、フィルム基板120側からレーザ光が照射される。
【0017】
フレキシブル光ディスク100の製造方法について説明する。
【0018】
(1−1)フィルム基板120の片側の面に表面保護フィルム122を貼り付ける。フィルム基板120は、外径150mmφ、内径15mmφ、厚さ90μmの円板状のシート部材である。表面保護フィルム122は、外径150mmφ、内径15mmφのフィルム部材である。
【0019】
ここでは、フィルム基板120として、帝人化成社製のピュアーエース(C110−90)を用いている。これは、ポリカーボネート(PC)を素材としている。また、表面保護フィルム122として、サンエー化研製のPAC−2−70を用いている。これは、ポリエチレンを素材としている。なお、表面保護フィルム122の粘着力は、0.04N/25mmである。
【0020】
(1−2)剛性基板140上に紫外線硬化型の樹脂142を塗布する(図2(A)参照)。剛性基板140は、外径150mmφ、内径15mmφ、厚さ1mmの円板状の部材である。
【0021】
ここでは、剛性基板140として、ミスミ社製の樹脂円形プレート(ENJPY1−150−15)を用いている。これは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を素材としている。また、紫外線硬化型の樹脂142として、DIC社製のSD−347を用いている。
【0022】
(1−3)紫外線硬化型の樹脂142の上に、表面保護フィルム122側を下にしてフィルム基板120を載置する(図2(B)参照)。
【0023】
(1−4)紫外線照射器を用いてフィルム基板120の上方から紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂142を硬化させる(図2(C)参照)。
【0024】
ここでは、紫外線照射器として、ウシオ電機製の超高圧UVランプ(USH−500BY1)を用いている。なお、以下では、便宜上、この剛性基板140上に紫外線硬化型の樹脂142を介して表面保護フィルム122とフィルム基板120が積層されたものを、「第1積層体」という。
【0025】
(1−5)表面に、所定のプリグルーブが形成されているニッケル製のスタンパ150を準備する(図3(A)参照)。
【0026】
ここでは、スタンパ150には、波長が約405nmのレーザ光に対応した市販の光ディスク(BD)の規格に準拠したプリグルーブが形成されている。
【0027】
(1−6)スタンパ150のプリグルーブが形成されている面に紫外線硬化型の樹脂143を塗布する(図3(B)参照)。
【0028】
(1−7)紫外線硬化型の樹脂143の上に、フィルム基板120側を下にして上記第1積層体を載置する(図4(A)参照)。
【0029】
(1−8)紫外線照射器を用いて剛性基板140の上方から紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂143を硬化させる(図4(B)参照)。
【0030】
(1−9)スタンパ150をはく離させ、スタンパ150のプリグルーブが転写されている紫外線硬化型の樹脂143を第1転写層とする(図4(C)参照)。
【0031】
(1−10)第1転写層の表面に、半透明な記録層である第1記録層L1を形成する(図5(A)参照)。
【0032】
ここでは、第1記録層L1は、図5(B)に示されるように、紙面上方から下方に向かってレーザ光が入射されるとき、上側誘電体層として30nmのZnS−SiO層、相変化記録層として6nmのGeSnSbTe層、下側誘電体層として8nmのGeN層、反射層として8nmのAg層、及び放熱層として60nmのITOから構成され、スパッタリングによって成膜される。なお、以下では、便宜上、この第1記録層L1が形成されている積層体を、「第2積層体」という。
【0033】
(1−11)再度、上記スタンパ150を準備し、該スタンパ150のプリグルーブが形成されている面に紫外線硬化型の樹脂144を塗布する(図6(A)参照)。
【0034】
(1−12)紫外線硬化型の樹脂144の上に、第1記録層L1側を下にして上記第2積層体を載置する(図6(B)参照)。
【0035】
(1−13)紫外線照射器を用いて剛性基板140の上方から紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂144を硬化させる(図6(C)参照)。
【0036】
(1−14)スタンパ150をはく離させ、スタンパ150のプリグルーブが転写されている紫外線硬化型の樹脂144を第2転写層とする(図7(A)参照)。
【0037】
(1−15)第2転写層の表面に、第2記録層L2を形成する(図7(B)参照)。
【0038】
ここでは、第2記録層L2は、図7(C)に示されるように、紙面上方から下方に向かってレーザ光が入射されるとき、上側誘電体層として45nmのZnS−SiO層、相変化記録層として12nmのSbTe層、下側誘電体層として10nmのZnS−SiO層、及び反射層として150nmのAg層から構成され、スパッタリングによって成膜される。なお、以下では、便宜上、この第2記録層L2が形成されている積層体を、「第3積層体」という。
【0039】
(1−16)第2記録層L2が上側になるように、上記第3積層体を裏返す。
【0040】
(1−17)第2記録層L2の上に紫外線硬化型の樹脂145を塗布する(図8(A)参照)。
【0041】
(1−18)紫外線硬化型の樹脂145の上に、はく離基板160を載置する(図8(B)参照)。はく離基板160は、外径150mmφ、内径15mmφ、厚さ75μmの円板状の部材である。
【0042】
ここでは、はく離基板160として、東洋紡製のコスモシャイン(A4100)を用いている。
【0043】
(1−19)紫外線照射器を用いてはく離基板160の上方から紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂145を硬化させる(図8(C)参照)。
【0044】
(1−20)はく離基板160をはく離させる(図9(A)参照)。なお、紫外線硬化型の樹脂145は、オーバーコート層130となる。
【0045】
(1−21)フィルム基板120と表面保護フィルム122の界面で剥離する(図9(B)参照)。これにより、フレキシブル光ディスク100が得られる。
【0046】
図10には、フレキシブル光ディスク100に対応した光ディスク装置20が示されている。
【0047】
この光ディスク装置20は、フレキシブル光ディスク100に対応し、スタビライザ55(図10では、図示省略、図11参照)、フレキシブル光ディスク100を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、該光ピックアップ装置23をスレッジ方向に駆動するためのシークモータ21、レーザ制御回路24、エンコーダ25、駆動制御回路26、振動制御回路51、再生信号処理回路28、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、フラッシュメモリ39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図10における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0048】
光ピックアップ装置23は、フレキシブル光ディスク100の記録層にレーザ光を集光するとともに、フレキシブル光ディスク100からの反射光を受光するための装置である。この光ピックアップ装置23は、半導体レーザ、カップリングレンズ、対物レンズ、受光器、及び対物レンズを駆動するための駆動系(フォーカシングアクチュエータ及びトラッキングアクチュエータ)などを備えている。ここでは、光ピックアップ装置23は、波長が約405nmのレーザ光に対応する光ディスク(BD)の規格に準拠している。
【0049】
再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23の出力信号に基づいて、サーボ信号(フォーカスエラー信号やトラックエラー信号など)、アドレス情報、同期情報及びRF信号などを取得する。ここでは、再生信号処理回路28は、波長が約405nmのレーザ光に対応する光ディスク(BD)の規格に準拠している。
【0050】
ここで得られたサーボ信号は駆動制御回路26に出力され、アドレス情報はCPU40に出力され、同期信号はエンコーダ25や駆動制御回路26などに出力される。
【0051】
さらに、再生信号処理回路28は、RF信号に対して復号処理及び誤り検出処理などを行い、誤りが検出されたときには誤り訂正処理を行った後、再生データとしてバッファマネージャ37を介してバッファRAM34に格納する。また、再生データに含まれるアドレス情報はCPU40に出力される。
【0052】
駆動制御回路26は、再生信号処理回路28からのトラックエラー信号に基づいて、トラッキング方向に関する対物レンズの位置ずれを補正するためのトラッキングアクチュエータの駆動信号を生成する。
【0053】
また、駆動制御回路26は、再生信号処理回路28からのフォーカスエラー信号に基づいて、対物レンズのフォーカスずれを補正するためのフォーカシングアクチュエータの駆動信号を生成する。ここで生成された各アクチュエータの駆動信号は光ピックアップ装置23に出力される。これにより、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。
【0054】
さらに、駆動制御回路26は、CPU40の指示に基づいて、シークモータ21を駆動するための駆動信号、及びスピンドルモータ22を駆動するための駆動信号を生成する。各モータの駆動信号は、それぞれシークモータ21及びスピンドルモータ22に出力される。
【0055】
バッファRAM34には、フレキシブル光ディスク100に記録するデータ(記録用データ)、及びフレキシブル光ディスク100から再生したデータ(再生データ)などが一時的に格納される。このバッファRAM34へのデータの入出力は、バッファマネージャ37によって管理されている。
【0056】
エンコーダ25は、CPU40の指示に基づいて、バッファRAM34に蓄積されている記録用データをバッファマネージャ37を介して取り出し、データの変調及びエラー訂正コードの付加などを行ない、フレキシブル光ディスク100への書き込み信号を生成する。ここで生成された書き込み信号はレーザ制御回路24に出力される。
【0057】
レーザ制御回路24は、半導体レーザの発光パワーを制御する。例えば記録の際には、前記書き込み信号、記録条件、及び半導体レーザの発光特性などに基づいて、半導体レーザの駆動信号がレーザ制御回路24にて生成される。
【0058】
インターフェース38は、上位装置90(例えば、パソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)、SCSI(Small Computer System Interface)及びUSB(Universal Serial Bus)などの標準インターフェースに準拠している。
【0059】
フラッシュメモリ39には、CPU40にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、記録パワーや記録ストラテジ情報を含む記録条件、及び半導体レーザの発光特性などが格納されている。
【0060】
CPU40は、フラッシュメモリ39に格納されている上記プログラムに従って各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータなどをRAM41及びバッファRAM34に保存する。
【0061】
スタビライザ55は、フレキシブル光ディスク100が回転しているときに、空気力学的な力を作用させ、フレキシブル光ディスク100の面振れを抑制する。
【0062】
次に、上位装置90から、フレキシブル光ディスク100に対する記録あるいは再生の要求があったときの、光ディスク装置20における処理について図12を用いて簡単に説明する。図12のフローチャートは、CPU40によって実行される一連の処理アルゴリズムに対応している。
【0063】
上位装置90から記録要求コマンド又は再生要求コマンド(以下、便宜上、「要求コマンド」と総称する)を受信すると、図12のフローチャートに対応するプログラムの開始アドレスがCPU40のプログラムカウンタにセットされ、処理がスタートする。
【0064】
最初のステップS401では、駆動制御回路26を介してスピンドルモータ22の回転を開始する。このとき、上位装置90から要求コマンドを受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。
【0065】
次のステップS403では、指定アドレスに対応する目標位置近傍に光スポットが形成されるように、駆動制御回路26に指示する。これにより、シーク動作が行なわれる。なお、シーク動作が不要であれば、ここでの処理はスキップされる。
【0066】
このとき、指定アドレスが第1記録層L1に含まれる領域であれば、一例として図13(A)に示されるように、第1記録層L1にレーザ光が集光されるように、フォーカス制御が行われる。一方、指定アドレスが第2記録層L2に含まれる領域であれば、一例として図13(B)に示されるように、第2記録層L2にレーザ光が集光されるように、フォーカス制御が行われる。
【0067】
このステップS405では、要求コマンドに応じて記録又は再生を許可する。
【0068】
次のステップS405では、記録又は再生が完了したか否かを判断する。完了していなければ、ここでの判断は否定され、所定時間経過後に再度判断する。完了していれば、ここでの判断は肯定され、処理を終了する。
【0069】
ここでは、フレキシブル光ディスク100に対する記録及び再生は、正常に行われた。
【0070】
ところで、剛性基板140を使用して製造したフレキシブル光ディスク100と、剛性基板140を使用せずに製造したフレキシブル光ディスク(便宜上、フレキシブル光ディスクAという)とを比較した結果が、図14及び図15に示されている。図14は、フレキシブル光ディスク100及びフレキシブル光ディスクAの面ぶれを実測したものであり、剛性基板140を使用するほうが、面ぶれがきわめて小さいことがわかる。また、図15は、フレキシブル光ディスク100及びフレキシブル光ディスクAにおけるフォーカスエラー信号の特性を示したものであり、フレキシブル光ディスク100では、外周近傍までフォーカスサーボによるフォーカスロックを行うことができたのに対して、フレキシブル光ディスクAでは、回転中心からの距離が42mmより外側では、フォーカスサーボによるフォーカスロックを行うことができなかった。このように、剛性基板140を使用することの効果は顕著であった。なお、図14及び図15では、各フレキシブル光ディスクの回転数を10000rpmとしている。
【0071】
以上の説明から明らかなように、上記フレキシブル光ディスク100の製造方法において、本発明の製造方法が実施されている。
【0072】
以上説明したように、本第1の実施形態に係るフレキシブル光ディスク100の製造方法によると、一側の面が表面保護フィルム122で覆われているフィルム基板120を、該フィルム基板120よりも大きな剛性を有する剛性基板140に、前記表面保護フィルム122を介して貼り付ける工程と、所定のプリグルーブが形成されているニッケル製のスタンパ150の表面に紫外線硬化型の樹脂143を塗布する工程と、該紫外線硬化型の樹脂143と、剛性基板140に貼り付けられたフィルム基板120の他側の面とを貼り合わせる工程と、剛性基板140側から紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂143を硬化させる工程と、スタンパ150を分離し、紫外線硬化型の樹脂143のプリグルーブが転写されている面に第1記録層L1を形成する工程とを含んでいる。
【0073】
この場合には、紫外線硬化型の樹脂143が硬化する際に、フィルム基板120が変形するのを抑制することができる。すなわち、フィルム基板120が変形することなく、第1記録層L1を形成することができる。
【0074】
また、第1記録層L1を形成する工程に続いて、スタンパ150のパターンが形成されている面に紫外線硬化型の樹脂144を塗布する工程と、紫外線硬化型の樹脂144と、フィルム基板120上に形成された第1記録層L1とを貼り合わせる工程と、紫外線硬化型の樹脂144に、剛性基板140側から紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂144を硬化させる工程と、スタンパ150を分離し、紫外線硬化型の樹脂144の上記パターンが転写されている面に第2記録層L2を形成する工程とを更に含んでいる。
【0075】
この場合には、紫外線硬化型の樹脂144が硬化する際に、フィルム基板120が変形するのを抑制することができる。すなわち、フィルム基板120が変形することなく、第2記録層L2を形成することができる。
【0076】
また、第2記録層L2を形成する工程に続いて、第2記録層L2の上に紫外線硬化型の樹脂145を塗布し、該紫外線硬化型の樹脂145上に、はく離基板160を載置する工程と、紫外線硬化型の樹脂145に、はく離基板160側から光を照射し、紫外線硬化型の樹脂145を硬化させる工程と、はく離基板160を分離する工程とを更に含んでいる。
【0077】
この場合には、紫外線硬化型の樹脂145が硬化する際に、フィルム基板120が変形するのを抑制することができる。すなわち、フィルム基板120が変形することなく、オーバーコート層130を形成することができる。
【0078】
そこで、フレキシブル光ディスク100における光の入射面の平坦度を従来よりも高めることができ、結果として、低コストで情報の高密度記録が可能なフレキシブル光ディスク100を製造することができる。
【0079】
なお、上記第1の実施形態において、剛性基板140と表面保護フィルム122とを両面接着テープで貼り合わせても良い。この場合は、両面接着テープがタック性を持続するので、次にフレキシブル光ディスクを製造する際にも使用することができる。例えば、両面接着テープとして、粘着力が20N/25mmのもの(No.5015)を用いた場合であっても、上記フレキシブル光ディスク100と同等のフレキシブル光ディスクを製造することができた。
【0080】
また、上記第1の実施形態において、表面保護フィルム122として、サンエー化研製のPAC−3−70を用いても良い。この場合は、表面保護フィルム122の粘着力が、0.13N/25mmとなるが、上記第1の実施形態と同様にして、上記フレキシブル光ディスク100と同等のフレキシブル光ディスクを製造することができた。
【0081】
また、上記第1の実施形態において、表面保護フィルム122として、パナック製のGSを用いても良い。この場合は、表面保護フィルム122の粘着力が、0.8N/25mmとなるが、上記第1の実施形態と同様にして、上記フレキシブル光ディスク100と同等のフレキシブル光ディスクを製造することができた。
【0082】
なお、上記第1の実施形態において、表面保護フィルム122として、粘着力が、1.92N/25mmであるパナック製のHUCBを用いた場合には、剛性基板140をはく離する際に、フィルム基板120が変形しないように、特別の注意をはらう必要があった。
【0083】
また、上記第1の実施形態では、記録層が2つのフレキシブル光ディスクを製造する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、同様な方法を用いて、例えば、記録層が1つのフレキシブル光ディスクを製造しても良い。
【0084】
《第2の実施形態》
以下、本発明の第2の実施形態を図16〜図27に基づいて説明する。図16には、第2の実施形態に係るフレキシブル光ディスク200が示されている。
【0085】
このフレキシブル光ディスク200は、ニアフィールド光記録再生方式に対応するフレキシブル光ディスクであり、フィルム基板220、記録層L、及びハードコート層230などを有している。そして、フレキシブル光ディスク200には、ハードコート層230側からレーザ光が照射される。
【0086】
フレキシブル光ディスク200の製造方法について説明する。
【0087】
(2−1)フィルム基板220の片側の面に表面保護フィルム222を貼り付ける。フィルム基板220は、外径150mmφ、内径15mmφ、厚さ90μmの円板状のシート部材である。表面保護フィルム222は、外径150mmφ、内径15mmφのフィルム部材である。
【0088】
ここでは、フィルム基板220として、東洋紡製のコスモシャインA4300を用いている。また、表面保護フィルム222として、サンエー化研製のPAC−2−70を用いている。なお、表面保護フィルム222の粘着力は、0.04N/25mmである。
【0089】
(2−2)剛性基板240上に紫外線硬化型の樹脂242を塗布する(図17(A)参照)。剛性基板240は、外径150mmφ、内径15mmφ、厚さ1mmの円板状の部材である。
【0090】
ここでは、剛性基板240として、ミスミ社製の樹脂円形プレート(ENJPY1−150−15)を用いている。これは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を素材としている。また、紫外線硬化型の樹脂242として、DIC社製のSD−347を用いている。
【0091】
(2−3)紫外線硬化型の樹脂242の上に、表面保護フィルム222側を下にしてフィルム基板220を載置する(図17(B)参照)。
【0092】
(2−4)紫外線照射器を用いてフィルム基板220の上方から紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂242を硬化させる(図17(C)参照)。
【0093】
ここでは、紫外線照射器として、ウシオ電機製の超高圧UVランプ(USH−500BY1)を用いている。なお、以下では、便宜上、この剛性基板240上に紫外線硬化型の樹脂242を介して表面保護フィルム222とフィルム基板220が積層されたものを、「第1積層体」という。
【0094】
(2−5)表面に、所定のプリグルーブが形成されているニッケル製のスタンパ250を準備する(図18(A)参照)。
【0095】
ここでは、スタンパ250には、電子ビーム露光により、トラックピッチが226nmのプリグルーブが、表面粗さRa=5nmで形成されている。
【0096】
(2−6)スタンパ250のプリグルーブが形成されている面に紫外線硬化型の樹脂243を塗布する(図18(B)参照)。
【0097】
(2−7)紫外線硬化型の樹脂243の上に、フィルム基板220側を下にして上記第1積層体を載置する(図19(A)参照)。
【0098】
(2−8)紫外線照射器を用いて剛性基板240の上方から紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂243を硬化させる(図19(B)参照)。
【0099】
(2−9)スタンパ250をはく離させ、スタンパ250のプリグルーブが転写されている紫外線硬化型の樹脂243を転写層とする(図19(C)参照)。
【0100】
(2−10)転写層の表面に、記録層Lを形成する(図20(A)参照)。
【0101】
ここでは、記録層Lは、図20(B)に示されるように、紙面下方から上方に向かってレーザ光が入射されるとき、上側誘電体層として30nmのZnS−SiO層、相変化記録層として6nmのGeSnSbTe層、下側誘電体層として8nmのGeN層、及び反射層として8nmのAg層から構成され、スパッタリングによって成膜される。
【0102】
(2−11)記録層Lが上側になるように、裏返す。
【0103】
(2−12)記録層Lの上に、紫外線硬化型の樹脂245を塗布する(図21(A)参照)。
【0104】
ここでは、紫外線硬化型の樹脂245として、TiO含有のアクリル系ハードコート剤であるJSR(株)製の商品名「デソライトZ7252D」を用いている。
【0105】
(2−13)紫外線硬化型の樹脂245の上に、はく離基板260を載置する(図21(B)参照)。はく離基板260は、外径150mmφ、内径15mmφ、厚さ75μmの円板状の部材である。
【0106】
ここでは、はく離基板260として、東洋紡製のコスモシャイン(A4100)を用いている。
【0107】
(2−14)紫外線照射器を用いてはく離基板260の上方から紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂245を硬化させる(図21(C)参照)。
【0108】
(2−15)はく離基板260をはく離させる(図22(A)参照)。なお、紫外線硬化型の樹脂245は、オーバーコート層230となる。
【0109】
(2−16)フィルム基板220と表面保護フィルム222の界面で剥離する(図22(B)参照)。これにより、フレキシブル光ディスク200が得られる。
【0110】
ところで、ハードコート層230は、TiOの体積充填率が30%程度なので、平均的な屈折率ncは、TiOの屈折率をn1(=2.5)、光透過性材料部の屈折率をn2(=1.55)とすると、nc=√((1−0.3)×n2+0.3×n1)=√((1−0.3)×1.55+0.3×2.5)≒1.89となる。
【0111】
SILは高屈折率で且つ立方晶の結晶材料で光学的に等方性を有し、複屈折のない材料としてKTaO(以下KTOと略記する)を半球状にしたものである。KTOは波長405nmの光に対して屈折率nが2.38程度である。従って、KTOより成る半球状のSILと、NAが0.77程度の光学レンズとを組み合わせると、波長405nmの光に対して実効NAが1.83(n×NA=2.38×0.77)程度を実現できる。
【0112】
さらに、レーザ光を効率的に取り込むためには、SIL表面に反射防止機能を付与する必要がある。超臨界COにより銅の金属錯体であるアセチルアセトナート銅CuII(acac)からナノ粒子をSIL成形用の金型表面に捕集することで、金型表面にナノ構造体を形成でき(図23(A)及び図23(B)参照)、これをエッチングマスクとしてドライエッチングすることで、表面にナノ構造体を有する金型が作製できる(図23(C)、図23(D)、図24(A)及び図24(B)参照)。
【0113】
この金型を用いて射出成形によりSILを成形すると、SIL表面のナノ構造体により反射防止効果が発現する。反射率が図25(A)に示され、透過率が図25(B)に示されている。波長405nmのレーザ光に対して、反射率が3%程度低下し、透過率が5%程度向上した。
【0114】
上記フレキシブル光ディスク200の製造方法によって製造されたフレキシブル光ディスク200に対して、ニアフィールド光記録再生方式による記録再生が可能な光ディスク装置は、上記第1の実施形態における光ディスク装置20における光ピックアップ装置23に代えて、KTOより成る半球状のSILとNAが0.77程度の光学レンズとを組み合わせた集光レンズ(図27参照)を有し、実効NAが1.83の光ピックアップ装置を用いたものと同等の光ディスク装置である。
【0115】
この光ディスク装置に、フレキシブル光ディスク200がセットされた状態が、一例として図26(A)に示されている。また、スタビライザ55がフレキシブル光ディスク200に近接している状態が、一例として図26(B)に示されている。これにより、例えば、スピンドルが10000rpmで回転しているときに、フレキシブル光ディスク200は、面ぶれがきわめて小さい状態で、安定して回転することができる。そして、良好なサーボ信号(フォーカスエラー信号やトラックエラー信号など)、アドレス情報、及び同期情報を得ることができ、所望のアドレスに所望の情報(例えば、映像情報)を記録することができた。また、情報が記録されているフレキシブル光ディスク200から、良好なRF信号を得ることができ、所望の情報を正しく再生することができた。
【0116】
なお、更なる大容量化に対しては、位相転移マスタリング法により作製されたNiスタンパを用いてトラックピッチが160nmであるフレキシブル光ディスクを作製することで更に、容量が100GB相当となり、現行BDの4倍の記録容量が可能となる。
【0117】
以上の説明から明らかなように、上記フレキシブル光ディスク200の製造方法において、本発明の製造方法が実施されている。
【0118】
以上説明したように、本第2の実施形態に係るフレキシブル光ディスク200の製造方法によると、一側の面が表面保護フィルム222で覆われているフィルム基板220を、該フィルム基板220よりも大きな剛性を有する剛性基板240に、前記表面保護フィルム222を介して貼り付ける工程と、所定のプリグルーブが形成されているニッケル製のスタンパ250の表面に紫外線硬化型の樹脂243を塗布する工程と、該紫外線硬化型の樹脂243と、剛性基板240に貼り付けられたフィルム基板220の他側の面とを貼り合わせる工程と、剛性基板240側から紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂243を硬化させる工程と、スタンパ250を分離し、紫外線硬化型の樹脂243のプリグルーブが転写されている面に記録層Lを形成する工程とを含んでいる。
【0119】
この場合には、紫外線硬化型の樹脂243が硬化する際に、フィルム基板220が変形するのを抑制することができる。すなわち、フィルム基板220が変形することなく、記録層Lを形成することができる。
【0120】
また、記録層Lを形成する工程に続いて、記録層Lの上に紫外線硬化型の樹脂245を塗布し、該紫外線硬化型の樹脂245上に、はく離基板260を載置する工程と、はく離基板260側から光を照射し、紫外線硬化型の樹脂245を硬化させる工程と、はく離基板260を分離する工程とを更に含んでいる。
【0121】
この場合には、紫外線硬化型の樹脂245が硬化する際に、フィルム基板220が変形するのを抑制することができる。すなわち、フィルム基板220が変形することなく、オーバーコート層230を形成することができる。
【0122】
そこで、フレキシブル光ディスク200における光の入射面の平坦度を従来よりも高めることができ、結果として、低コストで情報の高密度記録が可能なフレキシブル光ディスク200を製造することができる。
【0123】
なお、上記第2の実施形態において、表面保護フィルム122として、粘着力が、1.92N/25mmであるパナック製のHUCBを用いた場合には、剛性基板240をはく離する際に、フィルム基板220が変形しないように、特別の注意をはらう必要があった。
【0124】
また、上記第2の実施形態において、前記ニッケル製のスタンパ250に代えて、ガラス製のスタンパを用いると、離型剤の膜厚のばらつきにより、転写されたプリグルーブの深さに変動がみられ、トラックエラー信号やグルーブでの反射率の変動が大きくなることがあった。従来の製造方法の多くは、スタンパに光透過性が要求されるため、ニッケル製のスタンパを用いることができなかった。一方、上記第2の実施形態では、離型剤が不要なニッケル製のスタンパを用いることができるため、転写されたプリグルーブの深さ変動をきわめて小さくすることができる。
【0125】
また、上記第2の実施形態において、前記ニッケル製のスタンパ250に代えて、ニッケル製のスタンパから射出成形によって製作されたポリカーボネート製のスタンパを用いると、Niスタンパの裏面粗さ(Ra=100nm程度)が射出成形時の高温、高圧によりポリカーボネート樹脂のグルーブ形成面に転写され、再生信号にピックアップサーボで除去不能なリップル成分が重畳する場合があった。
【0126】
なお、フィルム基板は、上記第1及び第2の実施形態において説明したものに限定されるものではなく、同等程度のものであれば良い。
【0127】
また、表面保護フィルムは、上記第1及び第2の実施形態において説明したものに限定されるものではなく、同等程度のものであれば良い。
【0128】
また、剛性基板は、上記第1及び第2の実施形態において説明したものに限定されるものではない。剛性基板に必要な性質としては、記録層を成膜する時の応力や、光硬化性樹脂の硬化収縮による変形に対する抵抗力として機能する必要がある。そこで、ヤング率が高く、熱伝導率の高いことに加えて、剛性基板側から紫外線を照射するための透明性を有する必要がある。従って、透明性の観点からプラスチック材料に絞られ、例えば、図28に示されるように、フィルム基板の材料であるポリカーボネートよりもヤング率及び熱伝導率の高いPETは最適である。
【0129】
また、紫外線硬化型の樹脂は、上記第1及び第2の実施形態において説明したものに限定されるものではなく、同等程度のものであれば良い。
【0130】
また、はく離基板は、上記第1及び第2の実施形態において説明したものに限定されるものではない。PETフィルムに要求される特性として、巻き取れること、材料との接着性の確保などが挙げられる。巻き取るためには、滑剤(材質はシリカなど)をフィルム表面に配することで可能となる。しかし、一例として図29(A)に示されるように、滑剤がフィルム全面に存在すると、フィルムの透明度が低下し、透過率が減衰し、光学フィルムとしての機能が消滅する。そこで、一例として図29(B)に示されるように、透明性を向上させるため、処理される側のみに滑剤を分散させる。すなわち、UVインクなどとの接着性に優れたポリエステル系材料などをコーティングし、そのコート膜内に滑剤を選択的に分散させることで、高透過率を維持する。上記各実施形態で使用している剥離基板の表面は、滑剤及びコート膜がなく、UVインクと十分な離型性を有する平滑な表面(図29(B)における裏面参照)である。なお、平滑性に関しては、平均表面粗さ(Ra)で10nm以下が好ましい。因みに、同じPETフィルムでも、第2の実施形態にかかるフレキシブル光ディスクで用いられるフィルム基板であるPETフィルムは、上記コスモシャインA4300である。これは図29(B)の上側の表面に相当し、活剤が分散した易接着コートされた表面と紫外線硬化型樹脂が接着されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
以上説明したように、本発明のフレキシブル光ディスクの製造方法によれば、低コストで情報の高密度記録が可能なフレキシブル光ディスクを製造するのに適している。
【符号の説明】
【0132】
100…フレキシブル光ディスク、120…フィルム基板(シート状基板)、122…表面保護フィルム(フィルム)、140…剛性基板、143…紫外線硬化型の樹脂(光硬化型樹脂)、150…スタンパ、160…はく離基板、200…フレキシブル光ディスク、220…フィルム基板(シート状基板)、222…表面保護フィルム(フィルム)、240…剛性基板、243…紫外線硬化型の樹脂(光硬化型樹脂)、250…スタンパ、260…はく離基板、L…記録層、L1…第1記録層、L2…第2記録層。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【特許文献1】特開2007−323769号公報
【特許文献2】特開2003−296978号公報
【特許文献3】特開2003−196891号公報
【特許文献4】特開2003−272237号公報
【特許文献5】特開2005−317054号公報
【特許文献6】特開2004−164727号公報
【特許文献7】特許第2553275号公報
【特許文献8】特開2007−293979号公報
【特許文献9】特開2002−92984号公報
【特許文献10】特開2006−239935号公報
【特許文献11】特開2008−257832号公報
【特許文献12】特開2009−64510号公報
【特許文献13】特開2009−76113号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側の面がフィルムで覆われているシート状基板を、該シート状基板よりも大きな剛性を有する剛性基板に、前記フィルムを介して貼り付ける工程と;
パターンが形成されているスタンパの表面に光硬化型樹脂を塗布する工程と;
該光硬化型樹脂と、前記剛性基板に貼り付けられた前記シート状基板の他側の面とを貼り合わせる工程と;
前記剛性基板側から光を照射し、前記光硬化型樹脂を硬化させる工程と;
前記スタンパを分離し、前記光硬化型樹脂の前記パターンが転写されている面に記録層を形成する工程と;を含むフレキシブル光ディスクの製造方法。
【請求項2】
前記記録層を形成する工程に続いて、
前記スタンパのパターンが形成されている面に光硬化型樹脂を塗布する工程と;
該光硬化型樹脂と、前記シート状基板上に形成された前記記録層とを貼り合わせる工程と;
該光硬化型樹脂に、前記剛性基板側から光を照射し、該光硬化型樹脂を硬化させる工程と;
前記スタンパを分離し、該光硬化型樹脂の前記パターンが転写されている面に第2の記録層を形成する工程と;を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル光ディスクの製造方法。
【請求項3】
前記第2の記録層を形成する工程に続いて、
前記第2の記録層の上に光硬化型樹脂を塗布し、該光硬化型樹脂上に、はく離基板を載置する工程と;
該光硬化型樹脂に、前記はく離基板側から光を照射し、該光硬化型樹脂を硬化させる工程と;
前記はく離基板を分離する工程と;を更に含むことを特徴とする請求項2に記載のフレキシブル光ディスクの製造方法。
【請求項4】
前記記録層を形成する工程に続いて、
前記記録層の上に光硬化型樹脂を塗布し、該光硬化型樹脂上に、はく離基板を載置する工程と;
前記はく離基板側から光を照射し、該光硬化型樹脂を硬化させる工程と;
前記はく離基板を分離する工程と;を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル光ディスクの製造方法。
【請求項5】
前記剛性基板の材質は、ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフレキシブル光ディスクの製造方法。
【請求項6】
前記剛性基板と前記フィルムは、光硬化型樹脂で貼り合わされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフレキシブル光ディスクの製造方法。
【請求項7】
前記剛性基板と前記フィルムは、両面接着テープで貼り合わされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフレキシブル光ディスクの製造方法。
【請求項8】
前記フィルムの材質は、ポリエチレンであること特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のフレキシブル光ディスクの製造方法。
【請求項9】
前記シート状基板と前記フィルムは、粘着剤を用いて貼り合わされていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のフレキシブル光ディスクの製造方法。
【請求項10】
前記粘着剤の粘着力は、0.04〜1(N/25mm)の範囲内であること特徴とする請求項9に記載のフレキシブル光ディスクの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2011−70722(P2011−70722A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219868(P2009−219868)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】