説明

フレキソ印刷要素の熱現像装置及び方法

加熱された印刷要素とブロッターとを接触させることで軟化又は溶融された未硬化の感光性ポリマーを刷版から取り除くことができるように、感光性ポリマーの未硬化部分が選択的に溶融又は軟化する温度に印刷要素が加熱される画像形成及び露光された感光性ポリマー印刷要素を現像する方法が開示される。取り除かれた未硬化の感光性ポリマーの画像は、暗色に着色されたブロッターを使用することで分かりにくくするため、印刷作業のセキュリティー性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刷版及び印刷スリーブを含むフレキソ印刷要素の熱現像方法及び装置に関する。
【0002】
フレキソ印刷は、一般的に大量生産に使用される印刷方法である。フレキソ印刷は、紙、板紙素材、段ボール、フィルム、フォイル、及び合板等の多様な被印刷物に対する印刷に用いられる。新聞、及び食料雑貨入れの袋(grocery bag)が主な例である。平滑性の悪い面及び伸縮性フィルムは、フレキソ印刷を用いた場合のみ経済的に印刷可能である。フレキソ刷版は、画像要素を開口領域の上方に隆起させた凸版である。このような版は、主にその耐性及び作製容易性により、多くの長所をプリンターに提供する。
【0003】
感光性ポリマー印刷要素は、一般的に「平らな」シート形状で使用されるが、印刷要素をcontinuous In―The―Round(CITR)感光性ポリマースリーブとして連続円柱形状で使用するという特別な適用及び利点がある。CITR感光性ポリマースリーブは、フレキソ印刷プロセスにデジタル画像化、正確な位置決め、速い取り付け、版のリフトが無い等の利点を加える。CITRスリーブは、壁紙、装飾用紙、ギフト用ラッピング包装紙、及びテーブルクロス等のその他の連続デザイン等、連続デザインのフレキソ印刷に利用される。CITRスリーブは、印刷の質に関してグラビア及びオフセットに対するフレキソ印刷の競争力をより高めることができる。
【0004】
製造業者により供給される標準的なフレキソ刷版は、バック層すなわち支持層、1つ以上の未露光の光硬化性層、保護層すなわちスリップフィルム、及びカバーシートの順からなる多層体である。標準的なCITR感光性ポリマースリーブは、一般的に、スリーブキャリヤ(支持層)及び該支持層の上に少なくとも1つの未露光の光硬化性層を含む。
【0005】
フレキソプリプレス印刷工業では、刷版から印刷へより迅速に進めるために、レリーフ像現像において印刷要素の化学処理の必要性を無くすことも非常に望まれている。感光性ポリマー刷版を熱を使用して作製し、硬化した感光性ポリマーと未硬化の感光性ポリマーの溶融温度の差を利用して潜像を現像するプロセスが開発されている。このプロセスの基本パラメータは、特許文献1〜8に開示されるように公知であり、これらの各内容を、参照することにより全体を本願に援用する。これらのプロセスにより、現像溶媒を除くこと、及び該溶媒を除去するために必要な版の長い乾燥時間を除くことが可能となる。このプロセスの速度及び効率性により、迅速な納期及び高い生産性が重要である新聞及び他の出版物印刷用のフレキソ刷版の製造への該プロセスの使用が可能となる。
【0006】
感光性ポリマー層は、所望の画像形成を可能にし、かつ印刷面を提供する。使用する感光性ポリマーは、概して、バインダー、モノマー、光開始剤、及びその他の性能添加剤を含む。本発明の実施に際して有用な感光性ポリマー組成物は、特許文献9に記載の組成物を含み、その内容を参照することにより全体を本願に援用する。バインダーとして、ポリスチレン−イソプレン−スチレン、ポリスチレン−ブタジエン−スチレン、ポリウレタン及び/又はチオール−エン(thiolenes)に基づくものなどの様々な感光性ポリマーが使用され得る。好適なバインダーは、ポリスチレン−イソプレン−スチレン、及びポリスチレン−ブタジエン−スチレンであり、特に好ましくは、前記のブロック共重合体である。
【0007】
感光性ポリマーの組成は、硬化したポリマーと未硬化のポリマーとの溶融温度に実質的な相違がなければならない。まさにこの相違によって、加熱時に感光性ポリマーへの画像形成が可能となる。未硬化の感光性ポリマー(即ち、感光性ポリマーの化学線により接触しない部分)は、溶融又は実質的に軟化するが、硬化した感光性ポリマーは、選択された温度で固体のまま変わらない。よって、溶融温度の相違により、未硬化の感光性ポリマーの選択的除去が可能になり、結果的に画像が形成される。
【0008】
そして、印刷要素は、化学線により選択的に露光される。選択的露光は、従来3つの関連方法の1つで成し遂げられる。第1の方法は、透過領域、及びほぼ不透過な領域を有するネガを使用して、刷版要素に対する化学線の透過を選択的に遮断する。第2の方法は、感光性ポリマー層を、自身もレーザによってアブレーションされやすい化学線が(ほぼ)不透過な層で被覆する。そして、レーザを使用して、該化学線不透過層の選択された領域を除去し、その場(in situ)でネガを形成する。そして、印刷要素を該その場(in situ)で作製したネガを介してフラッド露光する。第3の方法は、化学線の集束ビームを使用して感光性ポリマーを選択的に露光する。これらの他の方法はいずれも、感光性ポリマーを化学線により選択的に露光することで、感光性ポリマー部分を選択的に硬化するという能力においては、許容され得る結果をもたらす。
【0009】
印刷要素の感光性ポリマー層が化学線により選択的に露光されれば、熱を使用して現像が可能となる。そのように、印刷要素は、通常少なくとも約70℃に加熱される。正確な温度は、使用される特定の感光性ポリマーの特性によって決まる。しかしながら、現像温度の決定には2つの主な要因が考慮されるべきである。
1.現像温度は、好ましくは未硬化の感光性ポリマーの下限溶融温度と硬化した感光性ポリマーの上限溶融温度との間で設定される。これにより、感光性ポリマーが選択的に除去されるため、結果的に画像が形成される。
2.現像温度が高ければ高いほど、工程所要時間はより少なくなる。しかしながら、現像温度は、硬化した感光性ポリマーの溶融温度を超える程高すぎるべきではなく、又は硬化した感光性ポリマーが劣化する程高すぎるべきではない。温度は、未硬化の感光性ポリマーを溶融、又は実質的に軟化するのに十分であるべきで、これにより未硬化の感光性ポリマーを除去することができる。
【0010】
加熱された印刷要素が現像されると、未硬化の感光性ポリマーは、溶融、即ち除去可能である。多くの場合、加熱された印刷要素を、軟化又は溶融した未硬化の感光性ポリマーを吸収、或いは除去する材料と接触させる。この除去プロセスは、一般的に「拭取り(blotting)」と称される。拭取りは、通常、吸収性布を使用して達成される。織布又は不織布が使用されるが、該布は使用温度に耐えることができる限り、ポリマー製、又は紙でもよい。一般的に、吸取り布は、セレックス(Cerex)(登録商標)等の白色不織布である。これらの白色材料を使用することで、刷版の画像が布から分かってしまうことが欠点である。これは、布を処分する際に印刷画像を見ることが可能であるという点でセキュリティー上の問題を生じる。ほとんどの場合、拭き取りはローラを使用して、材料と加熱された刷版とを接触させることで行われる。
【0011】
特許文献2は、吸収性シート材料を使用することによる感光性ポリマーの未硬化部分の除去を開示し、この主題を参照することにより全体を本願に援用する。未硬化の感光性ポリマー層は、導電、対流、又は他の加熱方法により、溶融が生じるのに十分な温度に加熱される。吸収性シート材料を、光硬化性層とほぼ密接に接触維持することで、未硬化の感光性ポリマーは、感光性ポリマー層から吸収性シート材料に移動する。加熱状態の間に、吸収性シート材料は支持層と接触する硬化した感光性ポリマー層から剥離され、レリーフ構造が現れる。冷却後、得られるフレキソ刷版は、刷版シリンダーに取り付け可能である。
【0012】
拭取プロセスの完了後、好ましくは、同一装置内で刷版要素を更に化学線により後露光し、次いで冷却を経て、使用可能な状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,279,697号明細書
【特許文献2】米国特許第5,175,072号明細書(Martens)
【特許文献3】米国特許第3,264,103号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0180655号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0211423号明細書
【特許文献6】国際公開第01/88615号パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/18604号パンフレット
【特許文献8】欧州特許出願公開第1239329号明細書
【特許文献9】米国特許出願第10/353,446号明細書(2003年1月29日出願)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、当該技術分野において、拭取材料に残った画像を隠す又は分かりにくくすることでセキュリティー性を向上することができる改良された拭取システムが依然として必要とされている。従って、本発明の目的は、拭取材料に残った画像を分かりにくくすることで、プロセス全体のセキュリティー性を向上させる改良された拭取材料を開示することである。
【0015】
本発明は、フレキソ印刷要素の画像形成面から未硬化の感光性ポリマーを取り除く改良された熱現像方法を含む。
【課題を解決するための手段】
【0016】
好適な実施形態において、前記方法は、
(i) フレキソ印刷要素の一部が硬化した感光性ポリマーを含み、及び一部が未硬化の感光性ポリマーを含むように事前に化学線により選択的に露光したフレキソ印刷要素を支持する、好ましくは循環又は回転する工程;並びに
(ii)前記フレキソ印刷要素を熱現像する工程、を含み、
前記工程(ii)が
a)前記フレキソ印刷要素を熱に曝すことで、フレキソ印刷要素上の未硬化の感光性ポリマーを軟化又は溶融する工程、及び
b)前記フレキソ印刷要素から未硬化の感光性ポリマーが除去されるように前記加熱したフレキソ印刷要素を拭取材料と接触させる工程
を含み、
前記未硬化の感光性ポリマーによってブロッターに形成された画像が肉眼で認識できないようにブロッターが着色されている。
【0017】
一実施形態において、フレキソ印刷要素の露光された画像形成面で未架橋の感光性ポリマーを軟化又は溶融する手段は、ブロッターとフレキソ印刷要素の画像形成面とを接触させるために使用する少なくとも1つのロールを加熱することを含む。本発明の他の実施形態において、フレキソ印刷要素の露光された画像形成面に未架橋の感光性ポリマーを軟化又は溶融する手段は、フレキソ印刷要素の露光された画像形成面に隣接するように加熱器を配置することを含む。また、加熱されたロールと外部加熱器は一緒に使用することもできる。
【0018】
本発明は、また、フレキソ印刷要素の熱現像方法を含み、該方法は、
a)フレキソ印刷要素を支持及び回転する工程、
b)任意ではあるが好ましくは、前記フレキソ印刷要素の画像形成面を1つ以上の化学線源により露光する工程、
c)前記フレキソ印刷要素の画像形成面の未架橋のポリマーを熱で溶融又は軟化する工程、
d)少なくとも1つのロールを使用して前記フレキソ印刷要素の画像形成面とブロッターとを接触させる工程、及び
e)前記少なくとも1つのロールを前記フレキソ印刷要素の画像形成面の少なくとも一部に対して回転させ、前記ブロッターが前記フレキソ印刷要素の露光された画像形成面から前記未架橋の感光性ポリマーを取り除く工程、
を含み、
前記未硬化の感光性ポリマーによって前記ブロッターに形成された画像が肉眼で認識できないように前記ブロッターが着色されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施に有用な熱現像装置の一実施形態を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施形態の実施に有用な熱現像装置の異なる図であり、円柱状印刷要素を長さ方向に横移動する加熱されたローラーの動きを示す。
【図3】図3は、対向するヘッドを使用して、画像形成速度を向上させ、ロールのたわみ、及び機械の剛性設計問題を除いた本発明の実施に有用な熱現像装置の他の実施形態を示す。
【図4】図4は、露光工程及び現像工程が同じ装置で同時に行われる本発明の一実施形態を示す。
【図5】図5は、露光現像複合装置が印刷要素を粘着除去及び後露光する装置を更に含む本発明の他の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、レリーフ像印刷要素を作製するプロセス中に、レリーフ像印刷要素の画像形成面から未架橋のポリマーを取り除く装置を使用する方法に関する。
【0021】
フレキソ印刷要素は、印刷要素の表面にレリーフ像を形成するために、光硬化性印刷ブランクを画像形成することで、光硬化性印刷ブランクから作製される。これは、一般的に光硬化性材料を化学線により選択的に露光することで達成され、該露光は、照射領域で光硬化性材料を硬化すなわち架橋するように作用する。
【0022】
光硬化性印刷ブランクは、適切なバック層上に未硬化の光硬化性材料層を1つ以上含む。光硬化性印刷ブランクは、連続(シームレス)スリーブの形態であるか、又はキャリアスリーブに取り付ける平らな板であり得る。版は、真空、接着剤及び/又は機械的クランプ等の適切な手段でキャリアスリーブに取り付けてもよい。
【0023】
そして、3つの関連方法の1つで、印刷要素は、化学線により選択的に露光される。第1の方法は、透過領域、及びほぼ不透過な領域を有するネガを使用して、刷版要素に対する化学線の透過を選択的に遮断する。第2の方法は、感光性ポリマー層を、自身もレーザによってアブレーションされやすい化学線が(ほぼ)不透過な層で被覆する。そして、レーザを使用して、該化学線不透過層の選択された領域を除去し、その場(in situ)でネガを形成する。そして、印刷要素を該その場(in situ)で作製したネガを介してフラッド露光する。第3の方法は、化学線の集束ビームを使用して感光性ポリマーを選択的に露光する。これらの他の方法はいずれも、感光性ポリマーを化学線により選択的に露光することで、感光性ポリマー部分を選択的に硬化するという能力においては、許容され得る結果をもたらす。
【0024】
好適な実施形態において、印刷要素は、レーザアブレーションされやすい一般的にカーボンブラックを含む化学線が(ほぼ)不透過な層で被覆される感光性ポリマー層を有する。レーザは、好ましくは、赤外線レーザであり、該化学線不透過層の選択された領域を除去するために使用され、その場(in situ)でネガを形成する。この手法は公知であり、米国特許第5,262,275及び6,238,837号明細書(Fan)、並びに米国特許第5,925,500号明細書(Yang他)に開示され、これらの各内容を参照することにより全体を本願に援用する。
【0025】
そして、レーザアブレーション中に露呈された感光性ポリマー層の選択領域は、化学線により露光され、その場(in situ)で作製したネガに覆われていない感光性ポリマー層部分が架橋及び硬化する。使用する照射の種類は、光重合性層中の光開始剤の種類によって決まる。光重合性層上に残る赤外線感光層中の放射線不透過材料は、その下にある材料に対する照射を防止するため、放射線不透過材料によって保護されるこれらの領域は重合しない。放射線不透過材料に保護されない領域は、化学線照射されて重合し、架橋及び硬化する。任意の従来の化学線源がこの露光工程に使用できる。適切な可視線、又は紫外線源は、カーボンアーク、水銀アーク、蛍光灯、電子フラッシュ装置、電子ビーム装置、及び写真用フラッドランプ等が挙げられる。
【0026】
次に、印刷要素の感光性ポリマー層が熱現像されて、感光性ポリマー層の硬化した部分に支障をきたさずに感光性ポリマーの未硬化(すなわち、未架橋)部分が除去され、レリーフ像が形成される。
【0027】
印刷要素の熱現像装置は、一般的に、
(i)フレキソ印刷要素を支持、好ましくは循環即ち回転する手段と、
(ii)任意ではあるが好ましくは、前記フレキソ印刷要素の画像形成面を化学線により露光する手段と、
(iii)前記フレキソ印刷要素の露光された画像形成面を熱現像する手段と
を有し、
前記熱現像手段は、一般的に、
a)前記フレキソ印刷要素に熱を加えて、前記フレキソ印刷要素の露光された画像形成面の未架橋の感光性ポリマーを軟化、又は溶融させる手段と、
b)前記フレキソ印刷要素の露光された画像形成面の軟化、又は溶融した未架橋の感光性ポリマーを除去するため、拭取材料を前記フレキソ印刷要素の画像形成面と接触させることができ、且つ前記フレキソ印刷要素の画像形成面の少なくとも一部上を移動させることができる少なくとも1つのロールと、
c)前記少なくとも1つのロールと前記フレキソ印刷要素の露光された画像形成面との接触を維持する手段とを有する。
【0028】
図1に示すように、熱現像装置(10)は、一般的に、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)と接触可能な少なくとも1つのロール(12)と、該少なくとも1つのロール(12)とフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)との接触を維持する手段(18)とを有する。一実施形態において、少なくとも1つのロール(12)が加熱されて、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)の少なくとも一部上を移動する際に、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)上の未架橋のポリマーは、少なくとも1つの加熱性ロール(12)により溶融及び除去される。他の実施形態において、ロール(12)の前に熱源(50)を配置してフレキソ印刷要素の露光された画像形成面の未架橋のポリマーが軟化、又は溶融され、ロール(12)で除去される。熱源(50)を加熱ロール(12)と併用してフレキソ印刷要素の画像形成面上の未架橋のポリマーを少なくとも部分的に軟化、又は溶融させてもよい。
【0029】
熱現像装置は、任意で、互いに隣接及び離間して対向配置可能であり、且つフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)とそれぞれ接触維持可能な2つのロール(12)及び(24)を含んでもよい。2つのロール(12)及び(24)をフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)と接触させると、2つのロール(12)及び(24)は、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)に対して自動的にセンタリングする。
【0030】
熱源(50)は、一般的に、赤外線加熱器、又は温風加熱器であるが、本発明の実施において他の熱源も使用でき、それらは、当業者に公知である。好適な実施形態において、熱源は赤外線加熱器である。代わりに、或いは追加として、少なくとも1つのロールが熱源を内蔵した加熱ローラーであってもよい。
【0031】
少なくとも1つのロール(12)とフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)との接触を維持する手段(18)は、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)に対して少なくとも1つのロール(12)を押し付ける役割をするエアシリンダー又は油圧シリンダーを一般的に含む。少なくとも1つのロール(12)とフレキソ印刷要素(16)との接触を維持する他の手段も当業者に公知である。
【0032】
フレキソ印刷要素(16)は円柱状フレキソ印刷要素、即ち、印刷スリーブとして描写されているが、上述のように、本発明は円柱状フレキソ印刷要素に限定されず、平らなフレキソ印刷要素の画像形成面からの未架橋のポリマーの除去にも使用できる。平らなフレキソ印刷要素は、刷版として使用してもよいし、あるいは円柱状の軸の周りに巻き付けて円柱状印刷要素として使用してもよい。
【0033】
好適な実施形態において、熱現像装置は、少なくとも1つのロール(12)の少なくとも一部上に配置される拭取材料(20)を含む。よって、少なくとも1つのロール(12)が加熱されてフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)と接触する際に、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)上の未架橋の感光性ポリマーは、加熱されたロール(12)により溶融され、及び拭取材料(20)により除去される。また、加熱源(50)は、未架橋の感光性ポリマーを溶融又は軟化し、少なくとも1つのロールの少なくとも一部に配置する拭取材料(20)が溶融又は軟化したポリマーを除去する。
【0034】
拭取材料(20)は、通常、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)と接触する少なくとも1つのロール(12)の少なくとも一部の下部、及び周りに掛架される。拭取材料(20)は、拭取材料(20)の離れた材料源(不図示)から少なくとも1つのロール(12)に継続的に供給される。熱現像装置は、更に巻取装置(不図示)を含み、除去した未架橋の感光性ポリマーを含む拭取材料(20)を取り除くために使用される。
【0035】
拭取材料は、好ましくは、紙、織布又は不織布を含む。使用可能な拭取材料は、スクリーンメッシュ、及び吸収性布を含み、該吸収性布は、ポリマー製、及び非ポリマー製の布を含む。本発明の目的のために、拭取材料は暗色であることが重要である。概して、暗ければ暗いほど良い。一般的に、黒、茶、青、緑が十分であり、黒が好ましい。ブロッターは、取り除かれた未硬化の感光性ポリマーによって形成されたブロッター上の画像が肉眼で見ることが出来ない程度に暗いことが必要である。概して、ブロッターは、ポリエステル又はナイロンからなる不織布を含み、ナイロンが好ましい。布の坪量は、1オンス/平方ヤード〜2オンス/平方ヤードである。布は、一層又は多層を含む。布の一つとしては、セレックス(CEREX)(登録商標)が挙げられるが、セレックスは白色で市販されているので、もし、暗色に着色された形態であれば適切である。ブロッターは使用後ごみとして処分されるので、処分されたブロッターに何が印刷されたのか画像を確認するのを阻止することでセキュリティー性が増すため、着色は有用である。
【0036】
他の実施形態において、熱現像装置は、少なくとも1つのロール(12)又は(24)に隣接配置可能であるドクターブレード(28)を含み、第2のロール(24)に隣接配置されて示される。少なくとも1つのロール(24)がフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)から未架橋の感光性ポリマーを除去する際に、ドクターブレード(28)は、少なくとも1つのロール(24)の表面から未架橋の感光性ポリマーを拭取る。
【0037】
熱現像装置は、ブロッターが未硬化の感光性ポリマーを除去するようにフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)の少なくとも一部上で少なくとも1つのロール(12)を回転して、フレキソ印刷要素の画像形成面(14)から未架橋のポリマーを除去する。好ましくは、少なくとも1つのロール(12)は、第1方向(30)に回転し、且つ円柱状フレキソ印刷要素(16)は、少なくとも1つのロール(12)とは反対方向(32)に回転する。
【0038】
熱現像装置は、少なくとも1つのロールを円柱状フレキソ印刷要素の長さ方向に沿って横移動可能にする手段(26)(図4)を含み、該手段は、通常1つ以上の往復キャリッジを含む。この設計上の特徴の利点は、印刷要素の表面を横切るロールの移動により、本発明の改良された熱現像装置が様々な長さ及び直径の印刷要素に対応して調整可能となることである。この場合、少なくとも1つのロールは、印刷要素を長さ方向すなわち外周に沿って回転し、また、印刷要素の幅方向に沿って回転軸に平行な方向にも移動する。
【0039】
拭取材料(20)をフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)と接触する第1のロール(12)の少なくとも一部の下部、及び周りに掛架し、拭取材料(20)を2つのロール(12)及び(24)の間に位置する1つ以上のトラックロール(36)の周りに掛架し、そして、拭取材料(20)をフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)と接触可能な第2のロール(24)の少なくとも一部の下部、及び周りに掛架することで、拭取材料(20)が、2つのロール(12)及び(24)に継続的に供給されてもよい。
【0040】
図3に示すように、熱現像装置は、円柱状フレキソ印刷要素(16)の反対側の対向位置に配置可能な1つ以上の追加的なロール(40)及び(42)を更に含んでもよい。1つ以上の追加的なロール(40)及び(42)は、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)の少なくとも一部との接触を維持可能である。1つ以上の追加的なロール(40)及び(42)は、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)と接触する際に、画像形成速度だけでなくフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)からの樹脂の除去量も増加することができる。2つの追加的なロール(40)及び(42)の使用により、大きな平面機械において平らでない床部(floor)を生じる可能性があるロールのたわみ、及び機械の剛性設計問題も排除し得る。また、拭取材料と樹脂とが互いに反発し合うので、拭取材料を樹脂に押し込むために高い押力が必要である。よって、本発明の改良された設計上の特徴により、印刷スリーブが処理されている間、印刷スリーブを支持するための非常により軽い材料(すなわち、スチール製支持軸の代わりにファイバーグラス)の使用が可能となる。
【0041】
図4に示すように、装置は、フレキソ印刷要素の露光と熱現像との両方の手段を含んでもよい。
図4に示す本発明の改良された露光熱現像装置(10)は、通常、フレキソ印刷要素(16)の長さ方向を横移動可能なキャリッジ(26)に取り付けられた1つ以上の化学線源(52)を含む。1つ以上の化学線源(52)は、通常、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)を選択的に露光及び硬化可能な1つ以上の紫外線源を含む。
【0042】
キャリッジ(26)は、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)の長さ方向上を1つ以上の化学線源(52)を横移動してフレキソ印刷要素(16)を硬化する。キャリッジ(26)がフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)の長さ方向を横移動する間に、フレキソ印刷要素(16)は、第1方向(30)に継続的に回転し、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面全体が露光されてフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)が硬化する。
【0043】
少なくとも1つのロール(12)は、1つ以上の化学線源(52)と同じキャリッジ(26)に取り付けられるか、又は、1つ以上の化学線源(52)とは別のキャリッジ(不図示)に取り付けられる。図1に示すように、装置は、また、少なくとも1つのロール(12)とフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)との間で接触を維持する手段(18)を含む。
【0044】
少なくとも1つのロール(12)は、1つ以上の化学線源(52)が予め横移動したフレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)の少なくとも一部上を移動して、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)上の未架橋の感光性ポリマーを除去する。
【0045】
好適な実施形態において、フレキソ印刷要素(16)は、第1方向(30)に回転すると同時に、ロール(12)が第2方向(32)に回転する。フレキソ印刷要素(16)は、露光及び現像工程間に第1方向(30)に継続的に回転することで、フレキソ印刷要素(16)の画像形成面(14)全体が露光及び現像可能となる。キャリッジ(26)がフレキソ印刷要素(16)の長さ方向を横移動するにつれて印刷スリーブが回転するこのプロセスの螺旋性が、全ての大きさの印刷要素(16)の全域で均一な露光及び現像を確実にする。
【0046】
他の実施形態において、図5に示すとおり、本発明の改良された熱現像装置(10)は、フレキソ印刷要素(16)が1つ以上の紫外線(52)で露光され、且つ少なくとも1つのロール(12)で熱現像されるとすぐに、フレキソ印刷要素(16)を粘着除去、及び後硬化する装置(54)を更に含む。本発明の装置(10’’)内で粘着除去、及び後硬化する装置(54)を使用すると、印刷要素の取扱、すなわち、印刷要素を次の装置に移動する必要が無くなり、より正確で精密な印刷要素を提供する。
【0047】
本発明は、また、少なくとも1つのロールでフレキソ印刷要素の画像形成面から未架橋のポリマーを除去する方法に関する。好適な実施形態において、熱現像工程において未架橋のポリマーを除去する直前に、フレキソ印刷要素を選択的に化学線により露光して、フレキソ印刷要素の画像形成部分を選択的に架橋及び硬化する。
【0048】
前記方法は、概して、次の工程を含む。
a)フレキソ印刷要素を支持する、好ましくは回転する工程。
b)任意ではあるが好ましくは、前記フレキソ印刷要素の画像形成面を化学線により露光することで、前記フレキソ印刷要素の画像形成面を架橋及び硬化する工程。
c)前記フレキソ印刷要素の露光された画像形成面上の未架橋のポリマーを溶融又は軟化する工程。
d)少なくとも1つのロールを用いて、前記フレキソ印刷要素の画像形成面とブロッターとを接触させる工程。
e)前記フレキソ印刷要素の画像形成面の少なくとも一部に対して前記少なくとも1つのロールを回転して、前記フレキソ印刷要素の画像形成面から軟化又は溶融した未架橋の感光性ポリマーを除去し、前記ブロッターに移動させる工程。
移動した未硬化の感光性ポリマーにより前記ブロッターに形成された画像が肉眼で認識できないように前記ブロッターが着色されている。
【0049】
少なくとも1つのロールは、円柱状フレキソ印刷要素を長さ方向に螺旋状に、又は段階的に横移動してもよい。好適な実施形態において、全ての未架橋のポリマーがフレキソ印刷要素の画像形成面から除去されるまで、少なくとも1つのロールは、フレキソ印刷要素を長さ方向に1回、又は複数回横移動する。ロールは、回転軸がフレキソ印刷要素の回転軸と平行でなく、フレキソ印刷要素の回転軸に対して直角であるような角度も成し得る。
【0050】
一実施形態において、フレキソ印刷要素の露光された画像形成面に接触する少なくとも1つのロールを加熱することで、フレキソ印刷要素の露光された画像形成面上の未架橋の感光性ポリマーが溶融又は軟化する。
【0051】
他の実施形態において、フレキソ印刷要素の露光された画像形成面の未架橋の感光性ポリマーを軟化又は溶融するために加熱器をフレキソ印刷要素の露光された画像形成面に隣接配置することで未架橋の感光性ポリマーは溶融又は軟化され、そして、少なくとも1つのロールにより除去される。加熱されたロール及び赤外線加熱器は、また、未架橋の感光性ポリマーの除去を更に促進するために一緒に使用される。使用される場合は、少なくとも1つの加熱されたロールは、通常、未硬化の感光性ポリマーの下限溶融温度と硬化した感光性ポリマーの上限溶融温度との間の温度に維持される。これにより、感光性ポリマーの選択的な除去が可能となり、画像が形成される。好ましくは、少なくとも1つの加熱されたロールは、約華氏350度から約華氏450度の温度に維持される。
【0052】
上述のように、好適な実施形態において、1つ以上の化学線源は1つ以上の紫外線である。必要であれば、化学線源は、印刷要素の過度な加熱を防ぐためにフィルターを含んでもよい。
【0053】
他の実施形態において、方法は、更に、露光及び熱現像された印刷要素を粘着除去及び後露光する工程を含む。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋した感光性ポリマー及び未架橋の感光性ポリマーを含むフレキソ印刷要素を現像する方法であって、
a)フレキソ印刷要素を支持する工程、
b)前記フレキソ印刷要素上の未架橋の感光性ポリマーを溶融又は軟化する工程、
c)少なくとも1つのロールを用いて前記フレキソ印刷要素の表面とブロッターとを接触させる工程、
d)前記フレキソ印刷要素の表面の少なくとも一部に対して前記少なくとも1つのロールを回転して、前記フレキソ印刷要素から前記未架橋の感光性ポリマーを除去し、前記未架橋の感光性ポリマーを前記ブロッターに移動させる工程
を含み、
移動した前記未架橋の感光性ポリマーにより前記ブロッターに形成された画像が肉眼で認識できないように前記ブロッターが着色されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
ブロッターが黒、青、茶、及び緑からなる群から選択される色である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブロッターが黒である請求項1に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−508396(P2012−508396A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535581(P2011−535581)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/058989
【国際公開番号】WO2010/053635
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(506314391)マクダーミッド プリンティング ソリューションズ, エルエルシー (23)
【Fターム(参考)】