説明

フロアパネルおよびその製造方法

【課題】 プラスチックフィルムを用いて強度の優れたフロアパネルを提供することにある。
【解決手段】 無機質ボードの表裏面に、引張破断強度が縦方向、横方向ともに150〜350MPa以上であって、かつ引張伸度が縦方向、横方向ともに80〜200%である高分子樹脂フィルムが接着されているフロアパネルであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は置き敷き用フロアパネルに関し、金属板で補強されたフロアパネルと同等の物性を持つ、軽量、高強度、安価なフロアパネルの提供に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィス等の床材としては、無機質あるいは有機質のボードからなるフロアパネルが敷設されている。この種の床板には、充分な耐荷重性を確保するためケイ酸カルシウム板あるいはセメント板などよりなるフロア基板の裏面側に、湿気硬化性の一液型ポリウレタン接着剤などのような接着剤を介して補強用鋼板を一体的に貼着して形成したものが広く用いられている。例えば、特許文献1には、ケイ酸カルシウム板あるいはセメント板などよりなるフロア基板の裏面側に、補強用鋼板を一体的に貼着して形成されるフリーアクセスフロア板の製造方法において、上記フロア基板あるいは補強用鋼板のいずれか一方側の接着面に接着剤を塗布すると共に、他方側の接着面に接着剤の硬化触媒を塗布し、次いで両板を圧着して積層することを特徴とするフリーアクセスフロア板の製造方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、このようにフロアパネル基材に補強用鋼板を接着したものは、重量が重い、価格が高いといった問題点があった。
また、表面はフロアパネル基材がむき出しであるため、表面が粗い、粉塵が発生する、傷つきやすい、汚れやすいといった問題点もあった。
【0004】
ところで、補強用鋼板の役割としては、(a)耐荷重性の向上、(b)耐衝撃性の向上、(c)そりの低下、(d)耐ローリングロード性の向上、が挙げられる。これらの特性を他の材料で補う場合、例えば、厚みの厚いプラスチック板を裏面に接着する方法が考えられる。この方法によれば、そりは低下したが、耐荷重試験、耐衝撃性試験、ローリングロード試験では割れが発生し、補強用鋼板並み物性を得ることはできなかった。この理由としては、厚みの厚いプラスチック板の強度が、鋼板に比較して低く割れやすかったためである。
【0005】
そこで、次に、柔軟性が高い(割れない)厚めのプラスチックフィルム(ポリスチレンフィルム)をフロアパネル基材の表裏面に接着する方法が考えられた。
なお、フロアパネル基材の片面又は両面にプラスチックフィルムを接着する方法は、従来より存在している。しかし、その目的は(一)「粉じん対策」、(二)「防湿」(特許文献2等)、(三)「高温下における有害ガス・黒煙等の発生防止」(特許文献3等)などであり、本願発明のような「強度対策」を目的とするものではなかった。また、プラスチック板を表裏面に接着したものは、耐荷重試験及びそりは良好な結果であったが、耐衝撃性試験、ローリングロード試験では割れが発生し、補強用鋼板並み物性を得ることはできなかった。この理由としては、柔軟性が高い厚めのプラスチックフィルムは引張り強度や伸びが不十分で、プラスチックフィルムが裂けてしまったためである。
【0006】
【特許文献1】特開平05−179207号公報
【特許文献2】特開平05−214774号公報
【特許文献3】実開平01−131520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そして、柔軟性が高い(割れない)厚めのプラスチックフィルム(ポリスチレンフィルム)を表裏面に接着したところ、(a)耐荷重性、(b)耐衝撃性、(c)そり、いずれも改善した。しかし、(d)ローリングロード試験を行ったところ、フロアパネル基材に亀裂が入り、破損してしまうことがわかった。破損状況を確認すると、プラスチックフィルムが破断し、それに伴ってフロアパネル基材が破断している様子が観察された。そこで、本願発明は、プラスチックフィルムを用いて強度の優れたフロアパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般的に、無機質ボードは、曲げ強度が低く、ローリングロード試験に耐える力が弱いということができる。これに対し、プラスチックフィルムは曲げ強度や引張り強度等の物理特性がフィルムの種類や製造方法によって異なる。
そこで、各種試験を実施したところ、引張破断強度が縦方向、横方向ともに150〜350MPaであって、かつ引張伸度が縦方向、横方向ともに80〜200%であるプラスチックフィルムを使用すれば、(a)耐荷重性、(b)耐衝撃性、(c)そり、(d)耐ローリングロード性のいずれにも優れ、かつ、補強用鋼板に比較して、(e)軽量で、(f)安価なフロアパネル、が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)引張破断強度が縦方向、横方向ともに150〜350MPa以上であって、かつ引張伸度が縦方向、横方向ともに80〜200%である高分子樹脂フィルムを無機質ボードの表裏面に接着することで、(a)耐荷重性、(b)耐衝撃性、(c)そり、(d)耐ローリングロード性のいずれにも優れたフロアパネルを提供できる。
(2)また、補強用鋼板を利用したフロアパネルと比較して、(e)軽量で、(f)安価なフロアパネルを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本願発明の実施形態を説明する。
無機質ボードとしては、珪酸カルシウムボード、石膏ボード、セメントボードなどが挙げられる。これらのボードを厚さ10〜20mmに成型し、フロアパネル基材とした。フロアパネル基材の表裏面に、接着剤を塗布した。接着剤の種類としては、ウレタン系、エポキシ系、変成シリコーン系、クロロプレンゴム系などが挙げられる。接着剤はどのように塗布しても良いが、スプレーコート、ロールコートなどが挙げられる。接着剤を塗布した後に、または塗布と同時に、高分子樹脂フィルムをフロアパネル基材に接着する。高分子樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレンなどが挙げられる。高分子樹脂フィルムの厚さとしては、0.05〜1.0mmが適している。高分子樹脂フィルムを接着したフロアパネル基材は、所定の厚さにカットして、使用する。
【0011】
[実施例1]
厚さ14mm、密度1.1g/cm3の珪酸カルシウムボードの表裏面に、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(引張強度:縦方向186MPa横方向235MPa、引張伸度:縦方向130%、横方向90%)を接着した。接着剤としては、ウレタン系接着剤を使用した。
得られた板状体を500×500mmに切り出し、耐荷重試験、耐衝撃性試験、ローリングロード試験、そりの測定を行った(フリーアクセスフロア試験方法:JIS A 1450、以下同じ)。
試験結果を図1に示す。
【0012】
[比較例1]
厚さ14mm、密度1.1g/cm3の珪酸カルシウムボードを500×500mmに切り出し、耐荷重試験、耐衝撃性試験、ローリングロード試験、そりの測定を行った。
試験結果を図1に示す。
【0013】
[比較例2]
厚さ14mm、密度1.1g/cm3の珪酸カルシウムボードの表裏面に、厚さ0.25mmのポリスチレンフィルム(引張強度:縦方向284MPa横方向216MPa、引張伸度:縦方向47%、横方向35%)を接着した。接着剤としては、ウレタン系接着剤を使用した。
得られた板状体を500×500mmに切り出し、耐荷重試験、耐衝撃性試験、ローリングロード試験、そりの測定を行った。
試験結果を図1に示す。
【0014】
(試験結果)
実施例1は、高分子樹脂フィルムを接着していない比較例1と比較して、全ての試験結果において優れている。
実施例1は、引張伸度が「80〜200%」の範囲内にない高分子樹脂フィルムを接着した比較例2と比較して、特に「耐衝撃性」及び「耐ローリングロード性」の試験結果において優れている。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本願発明は、置き敷き用フロアパネルとして幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例及び比較例における試験結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質ボードの表裏面に、引張破断強度が縦方向、横方向ともに150〜350MPaであって、かつ引張伸度が縦方向、横方向ともに80〜200%である高分子樹脂フィルムが接着されていることを特徴とするフロアパネル。
【請求項2】
高分子樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1に記載のフロアパネル。
【請求項3】
無機質ボードが珪酸カルシウムボード、石膏ボード、セメントボードであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロアパネル。
【請求項4】
接着剤がウレタン系、変成シリコーン系、クロロプレンゴム系であることを特徴とする請求項1〜3に記載のフロアパネル。
【請求項5】
無機質ボードに高分子樹脂フィルムを表裏面に接着し、その後に所定の寸法に切断することを特徴とするフロアパネルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−203698(P2009−203698A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46609(P2008−46609)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】