説明

フロアマット用クリップ

【課題】フロアマット用クリップの保持力の低下を防止し、また組み付け対象の厚さの違いを許容する。
【解決手段】カーペットのピン挿入孔に挿入するピン部材4を外向フランジ部4aと軸部4bとにより形成し、軸部が挿入される筒状部5bを有するキャップ部材5に外向フランジ部5aを設け、両外向フランジ部によりカーペットを挟持し、筒状部の内周面には軸線方向に並ぶように複数の周方向溝を設け、軸部には周方向溝に係合しかつ半径方向に弾性的に変位し得る係合凸部7aを設ける。複数の周方向溝により厚さ違いに対応し、フロアマットがずれる向きの荷重が生じた場合に軸部で荷重を受けることができ、係合凸部の変形や破損が防止されるため、長期の使用に対して抜け止めのための係合状態が低下することが無く、フロアマットの確実な固定状態を維持し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアマット用クリップに関し、特に、自動車の車内のフロアにフロアマットを固定するためのフロアマット用クリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車内のフロア上にフロアマットを敷くようにしたものがあり、その場合にはフロアマットの位置がずれるのを防止することが望ましく、そのためのフロアマット用固定具(クリップ)を設けたものがあった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−193016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のものでは、ベース層とその上面のカーペット層との積層構造からなるマットにおけるマットへの保持力を強化したマット用固定具であり、マット上面側の雄グロメットと、マット下面側の雌グロメットとを有し、各グロメットにそれぞれ設けた各フランジにより両層を挟持しかつ互いに結合し、両グロメットの中央部分に貫通孔が設けられ、フロアに立設されたピンを貫通孔に挿入した形態で、マットが固定されるようになっている。また、上記マット用固定具では、各グロメットを互いに軸線方向に抜け止めして結合状態にする構造として、雄グロメットに形成した内筒部の外周面に軸線方向に複数段の溝を設けると共に、雌グロメットに形成した外筒部の内周面に周方向に等間隔に3個の弾性係止爪を配設し、溝と係止爪とを挿入方向への変位は許容するが抜き出し方向には係合させている。
【0005】
上記マット用固定具では、マットの厚さ違いに対しては複数段の溝に対する係止片の係合位置の違いにより対応している。一方、溝に係合する係止爪は周方向等間隔に3個配設されており、それにより内筒部の周囲を3方向から位置決めすることができ、マットの面に沿う方向の位置決めを可能にしている。しかしながら、マットに加わる荷重方向がマットの面に沿う方向すなわちグロメット(外筒部)の径方向になった場合には、係止爪の突出端と溝の底とが突き当たり、荷重が大きい場合には係止爪が変形したり破損したりする虞があり、変形したままや破損した場合には保持力が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決して、保持力の低下を防止することができ、また組み付け対象の厚さの違いを許容し得るフロアマット用クリップを実現するために、本発明に於いては、車両のフロアパネルに敷設されたカーペットの上面に載置されるフロアマットを固定するためのフロアマット用クリップであって、前記カーペットに設けられたピン挿入孔に挿入されるピン部材と、前記フロアマットに設けられたクリップ挿入孔に受容されるキャップ部材とを有し、前記ピン部材は、前記カーペットの下面に当接可能に前記ピン挿入孔よりも拡径された外向フランジ部と、前記ピン挿入孔を介して前記カーペットの上方に突出するように前記外向フランジ部に突設された軸部とを有し、前記キャップ部材は、前記クリップ挿入孔に挿入されかつ前記軸部が同軸的に挿入される筒状部と、当該筒状部に前記軸部が挿入されることにより前記ピン部材の外向フランジ部との間に前記カーペットを挟持するべく前記筒状部の軸線方向端部に形成された外向フランジ部とを有し、前記軸部と前記筒状部との一方に、当該一方の軸線方向に並べられた複数の係合部が設けられ、前記軸部と前記筒状部との他方に、前記軸部と前記筒状部とを軸線方向に相対的に抜け止めするべく前記係合部に係合しかつ当該他方の半径方向に弾性的に変位し得るようにされた係合凸部が設けられているものとした。
【0007】
これによれば、ピン部材とキャップ部材との各外向フランジ部間に組み付け対象としてのカーペットを挟持することができると共に、ピン部材の軸部がキャップ部材の筒状部に挿入されることから、軸部と筒状部とが軸線方向に重なり合う部分が多い二重筒構造となり、軸部及び筒状部の曲げ変形に対するクリップ全体としての高い強度が確保される。また、軸部と筒状部との軸線方向抜け止めがそれぞれに設けられた係合部と係合凸部との係合により行われると共に、フロアマットがずれるような荷重が生じて筒状部が軸部に対して半径方向(軸線に直交する向き)に近付く変位が生じた場合でも、軸部と筒状部との二重筒構造により軸部で荷重を受けることができ、筒状部からの荷重を係合凸部が受けることにならず、係合凸部の変形や破損が防止される。また、係合凸部は弾性的に変位することから、変位した状態でも係合部へ係合する向きの復元力が生じており、常に良好な係合状態が確保される。
【0008】
特に、前記クリップ挿入孔に挿入される第2キャップ部材を有し、前記第2キャップ部材が、前記キャップ部材の前記筒状部が挿入可能でありかつ少なくとも軸線方向一端側が開口した筒状胴部を有していると良い。これによれば、第2キャップ部材をクリップ挿入孔に挿入してフロアマットに一体的に取り付けることができ、フロアマットに開けたクリップ挿入孔を第2キャップ部材により補強する構造となり、クリップ挿入孔に直接的にキャップ部材の筒状部を挿入してフロアマットを固定する場合よりも高い強度で固定することができる。
【0009】
また、前記キャップ部材の前記筒状部が、前記筒状胴部に挿入した状態で前記第2キャップ部材から前記フロアマットの上面側に突出しない軸線方向長さに形成されていると良く、これによれば、ピン部材の軸部がキャップ部材の筒状部に覆われ、キャップ部材の筒状部が第2キャップ部材により覆われると共に、その筒状部が第2キャップ部材からフロアマットの上面側に突出しないことから、フロアマット上面の平坦性が得られ、美観が損なわれることがない。また、前記筒状部と前記筒状胴部とに、前記筒状部の前記筒状胴部への挿入状態で前記筒状胴部が抜け止めされるように互いに係合する係合手段が設けられていると良く、これによれば、第2キャップ部材をキャップ部材に組み付けた状態で第2キャップ部材が抜け止めされるため、フロアマットの固定状態が安定化する。
【0010】
また、前記軸部に軸線方向に延在する弾性係合片が設けられ、該弾性係合片の遊端部に前記係合凸部が設けられていると良く、これによれば、フロアマットがずれるような外力により、軸部の軸線に直交する向きである半径方向に筒状部から軸部に荷重が作用した場合に、軸部により筒状部からの荷重を受けることができるため、係合凸部に荷重が直接的に作用せず、係合凸部の変形や破損が防止される。
【0011】
また、前記複数の係合部が、前記筒状部の内周面に設けられかつ軸線方向に並ぶように配置された多条の周方向溝からなると良く、これによれば、フロアマットの厚さ違いに容易に対応でき、汎用性が高いクリップを提供し得る。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、軸部と筒状部とが軸線方向に重なり合う部分が多い二重筒構造となり、軸部の曲げ変形に対するクリップ全体としての高い強度が確保されると共に、フロアマットがずれるような外力により、軸部の軸線に直交する向きである半径方向に筒状部から軸部に荷重が作用した場合に、軸部で荷重を受けることができ、それにより係合凸部の変形や破損が防止されるため、長期の使用に対して抜け止めのための係合状態が低下することが無く、フロアマットの確実な固定状態を維持し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用されたフロアマット用クリップを用いたフロアマットの固定要領の概略を示す斜視図である。
【図2】フロアマット用クリップの構成を示す斜視図である。
【図3】フロアマット用クリップの組み付け要領を示す断面図である。
【図4】(a)はカーペットにピン部材及びキャップ部材を組み付けた状態を示す断面図であり、(b)はマットキャップを組み付けてフロアマットを固定した状態を示す断面図である。
【図5】カーペットの厚さ違いに対応した図4(b)に対応する図である。
【図6】第2の実施形態を示す図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用されたフロアマット用クリップを用いたフロアマット1の固定要領の概略を示す斜視図である。図1には、車両のフロアパネル2の車室内側となる上面に組み付け対象としての例えば防音用のカーペット3が載置され、そのカーペット3の上面にフロアマット1が載置されるものが示されている。カーペット3はゴム材のベースの表面に表皮が形成されているものであって良い。なお、以下の説明における上下方向は、フロアパネル2側を下とする車両の上下方向に準ずるものとする。
【0015】
カーペット3の適所(図では2箇所)にはピン挿入孔3aが設けられ、フロアマット1には、載置状態で各ピン挿入孔3aに対応する位置に各クリップ挿入孔1aが設けられている。本図示例におけるフロアマット用クリップは、図2に併せて示されるように、カーペット3側から配置される順番で、ピン部材4と、キャップ部材5と、第2キャップ部材としてのマットキャップ6とにより構成されている。なお、各部材は合成樹脂材の成形品であって良い。
【0016】
図3に併せて示されるように、ピン部材4は、ピン挿入孔3aよりも拡径されかつカーペット3の下面(裏面)側に配置される外向フランジ部4aと、外向フランジ部4aに同軸に立設されかつピン挿入孔3aに挿入された状態でカーペット3の上面(表面)側に所定長突出する軸線方向長さの軸部4bとを有する形状に形成されている。軸部4bは、図3に示されるようにフロアパネル2への設置状態で外向フランジ部4aの中央部に開口しかつ立設方向端が閉じられた有底円筒状に形成されている。なお、外向フランジ部4aの上面の適所には複数(図示例では2つ)の先鋭凸部4dが突設されている。
【0017】
軸部4bの外向フランジ部4a側となる下端部分には、図示例では周方向に90度間隔で配設された4つのリブ4cがピン挿入孔3aに嵌り合う径方向長さとなるように設けられている。また、軸部4bの軸線方向中間部分には、その周壁に垂下状態になるように切り込みを入れた形状に形成された弾性係合片7が、軸部4bの径方向に対称に一対設けられている。弾性係合片7の遊端部となる図3における下部には軸部4bの外周面より半径方向外向きに突出する係合凸部7aが、図示例では軸線方向に所定のピッチで2個設けられている。
【0018】
キャップ部材5は、ピン挿入孔3aよりも拡径されかつカーペット3の上面(表面)側に配置される外向フランジ部5aと、軸部4bが図3の矢印Aに示されるように同軸的に挿入可能に、軸線方向一端となる外向フランジ部4aの下面中央に開口しかつ外向フランジ部5aに同軸に立設された有底筒状部5bとを有する形状に形成されている。なお、外向フランジ部5aの下面の適所には複数(図示例では2つ)の先鋭凸部5dが突設されている。
【0019】
筒状部5bの内周面には、筒状部5bの軸線方向に並べられた複数の係合部としての複数の周方向溝8が設けられている。その筒状部5bによる軸線方向孔は、軸部4bが挿入可能でありかつ軸部4bと略同一径の内径に形成されている。また、軸部4bが同軸に挿入された状態で、係合凸部7aは周方向溝8に弾性係合片7の弾性復元力により押し当てられて係合する。なお、図示例では周方向溝8は雌ねじ状に形成されており、キャップ部材5を外す場合には軸線方向に大きな力で引き抜くことなく、ねじを緩める方向にキャップ部材5を回すことにより簡単に外すことができるようになっている。また、上記係合凸部7aと周方向溝8とは、互いに概ね補完的形状をなす台形や三角形状の断面を有するように形成されている。
【0020】
マットキャップ6は、クリップ挿入孔1aに挿入可能な略同一径の外径の円筒状に形成された筒状胴部6aと、筒状胴部6aの軸線方向一端となる上端に設けられた大径つば部6bと、筒状胴部6aの軸線方向他端となる下端に設けられた小径つば部6cとを有する形状に形成されている。筒状胴部6aの軸線方向長さすなわち両つば部6b・6c間の間隔はフロアマット1の厚さと略同一にされており、筒状胴部6aをクリップ挿入孔1aに挿入した状態で両つば部6b・6cによりフロアマット1を挟持し得るようにされている。
【0021】
一方、キャップ部材5の筒状部5bの軸線方向上部には、筒状部5bよりは拡径されかつ筒状胴部6aの内径よりは縮径された小径フランジ部5cが設けられている。なお、筒状胴部6aの内径は、小径フランジ部5cがほぼ隙間無く没入し得るように、小径フランジ部5cの外径と略同一にされている。また、キャップ部材5の筒状部5bの外向フランジ部5a側には拡径段部5fが設けられていると共に、マットキャップ6の小径つば部6cの下面には拡径段部5fと略同一径の凹部6dが設けられている。
【0022】
筒状胴部6aには、その周壁に立設状態になるように切り込みを入れた形状に形成された組み付け用係止片9が、径方向に対称に一対設けられている。組み付け用係止片9の遊端部である図における上端部には、半径方向内向きに突出する内向凸部9aが形成されている。
【0023】
次に、このようにして構成されたフロアマット用クリップの組み付け要領について説明する。先ず、フロアパネル2の上面に載置する前のカーペット3のピン挿入孔3aに、カーペット3の下面側からピン部材4の軸部4bを挿入し、さらにピン挿入孔3aに各リブ4cが嵌り合った状態でカーペット3をフロアパネル2の上面に載置する(図3の下部)。これにより、ピン部材4の外向フランジ部4aがカーペット3によりフロアパネル2に面接触するように押し付けられた状態になり、軸部4bの立設状態が固定される。また、この状態で先鋭凸部4dがカーペット3に食い込むことになり、ピン部材4のずれが抑制される。
【0024】
その立設状態の軸部4bに対して、キャップ部材5を図3の矢印Aに示される向きに被せるように組み付ける(筒状部5bに軸部4bが挿入される)ことにより、図4(a)に示されるように軸部4bと筒状部5bとが軸線方向に互いに重なった状態(二重筒状態)になる部分が生じる。係合凸部7aは、上記したように弾性係合片7に形成されており、弾性係合片7は軸部4bの半径方向に弾性変形し得ることから、軸部4bの挿入量が増大する方向へ筒状部材5が押し込まれると、弾性係合片7は軸部4bの半径方向内側に変形し、係合凸部7aが隣り合う周方向溝8間の山を乗り越えることができる。このようにして、複数の周方向溝8のいずれかに係合凸部7aを係合させることができる。
【0025】
また、フロアマット1には、そのクリップ挿入孔1aに筒状胴部6aを挿入した状態でマットキャップ6を取り付けておく。その状態では両つば部6b・6cによりフロアマット1を挟持し得ると共に、大径つば部6bがフロアマット1の上面側に位置することから、マットキャップ6が抜け落ちることが無い。
【0026】
そして、フロアマット1と一体化されているマットキャップ6をキャップ部材5に対して図3の矢印Bに示される向きに被せるように組み付ける(筒状胴部6aに筒状部5bが挿入される)。この場合、組み付け用係止片9の内向凸部9aが、組み付け用係止片9の弾性変形により小径フランジ部5cを乗り越えるまで、マットキャップ6を押し込む。
【0027】
これにより、図4(b)に示されるように小径フランジ部5cの下側に係合凸部9aが係合し、キャップ部材5にマットキャップ6が結合される。この結合状態では、拡径段部5fと凹部6dとが隙間無く嵌り合い、かつ小径フランジ部5cと筒状胴部6aとが隙間無く嵌り合うようにされており、キャップ部材5とマットキャップ6とは同軸的に一体化される。
【0028】
このようにして、フロアマット用クリップの各部材4・5・6が互いに結合され、カーペット3上にフロアマット1が固定される。また、キャップ部材5の上面とマットキャップ6の大径つば部6bの上面とが互いに連続する一面となり、フロアマット1の設置状態における美観が良い。
【0029】
このようにして設置されたフロアマット1には、使用においてカーペット3の面に沿う方向にずれる向きの外力が加わる場合がある。その外力は、マットキャップ6とキャップ部材5とが同軸的に一体化されていることから、キャップ部材5からのピン部材4に対する半径方向の荷重(図4(a)のF)として作用する。
【0030】
上記荷重Fによりキャップ部材5をその軸線に直交する方向である半径方向に移動させようとする力は、ピン部材4とキャップ部材5との相対的に近付く側では周方向溝8が係合凸部7aを押圧する方向になる。この場合、筒状部5bの内周部分5eと軸部4bの外周部分4eとが当接する。また、係合凸部7aと周方向溝8とが係合しているピン部材4とキャップ部材5との係合状態において、キャップ部材5の内周部分5eまたは周方向溝8に対するねじ山部の頂部5gが軸部4bの外周部分4eに当接する。このため、荷重Fによりキャップ部材5を上記半径方向に移動させようとする力が作用した場合であっても、周方向溝8が係合突部7aを押圧して局部的に弾性係合片7が撓むことが無いため、筒状部5bからの荷重を軸部4bの全体で受けることができる。これにより、係合凸部7aと周方向溝8とに荷重Fによる押圧力が発生することが防止され、係合凸部7aが変形したり破損したりすることによるフロアマット用クリップの係合力が低下することが防止され、耐久性が向上する。
【0031】
また、従来のクリップにおいて係合凸部と溝との係合部分で荷重を受ける構造の場合にはその係合部分に集中荷重が生じるため、クリップ全体として大きな曲げモーメントが生じることになる。これにより、軸線方向(立設方向)に長いクリップの場合にはその軸部に曲げ変形が生じる虞がある。
【0032】
それに対して、本クリップでは、キャップ部材5のピン部材4に対する半径方向の荷重が作用した場合には、筒状部5bの内周部分5eを軸部4bの外周部分4eとが当接すると共に、荷重Fを軸部4bの筒状部5bとの二重筒状態部分により受けることができ、上記したような集中荷重による曲げ変形は生じないため、クリップの確実な係合状態が保持され、フロアマット1の固定状態が低下することが無い。なお、筒状部5bの内径と軸部4bの外径とを略同一径とすることにより、上記軸部4bにより荷重を受ける状態がより一層確実となる。
【0033】
また、本クリップはカーペット3の厚さ違いに対応可能であり、その一例を図5に示す。上記したように、複数の周方向溝8が軸線方向に並べて設けられており、複数の周方向溝8が配設された軸線方向の範囲で係合凸部7aが任意の位置で周方向溝8に係合可能であり、それによりピン部材4に対するキャップ部材5の軸線方向高さが調整可能である。上記図4では厚さの厚いカーペット3の例を図示したが、図5に示されるように薄いカーペット13にも適用可能である。この場合には、カーペット13の厚さに応じた位置まで、すなわち外向フランジ部5aがカーペット3の上面に当接するまでキャップ部材5を押し込み、その当接状態に対応する位置の周方向溝8に係合凸部7aが係合し得る。このようにして、カーペット3の厚さ違いに対応し得る。
【0034】
なお、本発明によれば、マットキャップ6は必須ではなく、図4(a)の状態での使用も可能である。その場合には、フロアマット1のクリップ挿入孔1aをキャップ部材5の筒状部5bの外径に対応する大きさに形成し、クリップ挿入孔1aを筒状部5bに嵌め込むことにより、フロアマット1の位置が固定される。なお、クリップ挿入孔1aには鳩目を設ける等しておくと良い。
【0035】
また、マットキャップ6の組み付け用係止片9に設けた内向凸部9aは、小径フランジ部5cを乗り越えて係合するようにされており、図示例では、組み付け方向側には緩やかに後傾するガイド面と、乗り越えてから小径フランジ部5cに係合する側には外れ難くするために角度の大きい係合面とを有するように形成されている。これにより、組み付け時にはマットキャップ6を軸線方向に押し込むだけの簡単な作業で組み付けることができ、内向凸部9aの小径フランジ部5cに対する係合状態では容易に外れないようになる。なお、フロアマット1を洗浄等で外す場合には、フロアマット1すなわちマットキャップ6を軸線方向に引き抜くことになるが、その抜去力ではキャップ部材5とピン部材4との係合が外れないように、その抜去力以上の係合力となるように係合凸部7aと周方向溝8との形状が設計されている。
【0036】
また、周方向溝8は雌ねじ状に形成されているとしたが、1本ずつ独立した複数の周方向溝としても良い。その場合には、キャップ部材5を回してピン部材4から取り外すことはできないが、例えば外向フランジ部5bをめくるように変形させることにより係合凸部7aと周方向溝8との係合を浅くすることができ、その状態でキャップ部材5を引き抜くようにすれば比較的容易に取り外すことが可能である。
【0037】
また、図示例では、係合凸部7aを弾性係合片7に形成して設け、弾性係合片7の弾性変形により係合凸部7aの弾性変位を可能としたが、係合凸部の弾性変位構造としてはこれに限られるものではない。例えば係合凸部をブロック状に形成し、軸部4bに一端部を固設した板ばね等のばね部材の遊端部に係合凸部を固着するようにしても良い。この場合には、部品点数は増えるが、板ばねをモールド成形により一体的に設けたり、後から固着することができ、板ばねによる強い弾性復元力が長期に亘って確保される。
【0038】
また、上記図示例では軸部4に弾性係合片7及び係合凸部7aを設け、筒状部5bに周方向溝8を設けたが、逆であっても良い。この場合の一例となる第2実施形態を、図3に対応する図6を参照して説明する。なお、図3と同様の部分には同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。図6に示されるように、軸部4bの外周面に周方向溝18を設け、筒状部5bの周壁に切り込みを入れて互いに対称位置となる一対の弾性係合片17を形成し、弾性係合片17の遊端部に筒状部5bの内周面から突出する係合凸部17aを設ける。このようにしても、上記と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0039】
1 フロアマット
2 フロアパネル
3 カーペット、3a ピン挿入孔
4 ピン部材、4a 外向フランジ部、4b 軸部、4e 外周部分
5 キャップ部材、5a 外向フランジ部、5b 筒状部、5e 内周部分
6 マットキャップ、6a 筒状胴部
7 弾性係合片、7a 係合凸部
8 周方向溝
9 組み付け用係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルに敷設されたカーペットの上面に載置されるフロアマットを固定するためのフロアマット用クリップであって、
前記カーペットに設けられたピン挿入孔に挿入されるピン部材と、前記フロアマットに設けられたクリップ挿入孔に受容されるキャップ部材とを有し、
前記ピン部材は、前記カーペットの下面に当接可能に前記ピン挿入孔よりも拡径された外向フランジ部と、前記ピン挿入孔を介して前記カーペットの上方に突出するように前記外向フランジ部に突設された軸部とを有し、
前記キャップ部材は、前記クリップ挿入孔に挿入されかつ前記軸部が同軸的に挿入される筒状部と、当該筒状部に前記軸部が挿入されることにより前記ピン部材の外向フランジ部との間に前記カーペットを挟持するべく前記筒状部の軸線方向端部に形成された外向フランジ部とを有し、
前記軸部と前記筒状部との一方に、当該一方の軸線方向に並べられた複数の係合部が設けられ、
前記軸部と前記筒状部との他方に、前記軸部と前記筒状部とを軸線方向に相対的に抜け止めするべく前記係合部に係合しかつ当該他方の半径方向に弾性的に変位し得るようにされた係合凸部が設けられていることを特徴とするフロアマット用クリップ。
【請求項2】
前記クリップ挿入孔に挿入される第2キャップ部材を有し、
前記第2キャップ部材が、前記キャップ部材の前記筒状部が挿入可能でありかつ少なくとも軸線方向一端側が開口した筒状胴部を有していることを特徴とする請求項1に記載のフロアマット用クリップ。
【請求項3】
前記キャップ部材の前記筒状部が、前記筒状胴部に挿入した状態で前記第2キャップ部材から前記フロアマットの上面側に突出しない軸線方向長さに形成されていることを特徴とする請求項2に記載のフロアマット用クリップ。
【請求項4】
前記筒状部と前記筒状胴部とに、前記筒状部の前記筒状胴部への挿入状態で前記筒状胴部が抜け止めされるように互いに係合する係合手段が設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のフロアマット用クリップ。
【請求項5】
前記軸部に軸線方向に延在する弾性係合片が設けられ、該弾性係合片の遊端部に前記係合凸部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフロアマット用クリップ。
【請求項6】
前記複数の係合部が、前記筒状部の内周面に設けられかつ軸線方向に並ぶように配置された多条の周方向溝からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のフロアマット用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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