説明

フロンの再生装置

【課題】ヒータを用いずに被回収機器から排出される回収フロンの気化を安定して行なわせると共にフロン中の不純物の除去率を向上させたフロンの再生装置を提供すること。
【解決手段】被回収機器から排出される回収フロンを貯留するフロン気化装置部と、フロン気化装置部と電気式集塵装置とを接続する第1管路にニードルバルブを介装し、電気式集塵装置とコンプレッサーとをフィルタを介して接続し、コンプレッサーによって圧縮されたフロンをフロン気化装置部の熱交換器に送るように設けた再生装置本体とからなり、前記熱交換器と再生フロン用ボンベとを第3管路により接続し、フロン気化装置部から排出される回収フロンに含まれる不純物がニードルバルブを通過することにより帯電して電気式集塵装置によって除去され、コンプレッサーにより圧縮されたフロンが前記熱交換器内を通過することによってフロン気化装置部内の回収フロンを加温するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収フロンに含まれる油分等の不純物を除去するフロンの再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気に放出されたフロンは、オゾン層の破壊や地球温暖化の要因となることから、使用済みのフロンを回収して分解処理するとか、回収したフロンを冷凍機油や水分等の不純物の除去処理をした上で再利用することが行なわれている。
【0003】
特許文献1には、回収フロンを充填した回収フロンボンベを加熱する湯煎装置と、ガス化したフロンに含有する油分を分離する油分離器と、油分が分離されたフロンを圧縮するコンプレッサーと、圧縮されたフロンを冷却し液化させる冷却器と、液化されたフロンを充填する再生フロンボンベと、フロンに含有される水分を除くフィルタドライヤを工程途中に配置し、回収フロンを再生フロンに精製するフロン再生装置が開示されている。
【0004】
因みに、フロンは低沸点であり、回収フロンに含有する不純物たる油分や水分よりも先に気化するので、気化させるだけで殆どの油分や水分を除去することができるが、気化したフロンに含まれる僅かなオイルミストや水分を除去することができない。
【0005】
上記フロン再生装置のような簡易再生装置では、フロンに含有する油分を油分離器で除去し、水分をフィルタドライヤで除去しているが、1回の処理では油分や水分が十分に除去されないために同じ処理を2回施すことが行なわれており、再生時間が長くなるという不都合がある。また、油分離器、冷却器やフィルタドライヤ等により再生装置が大型化し、広い設置スペースを要していた。
【0006】
特許文献2には、タンク内に縦向きに配置された二重スパイラル管の外管の下方より(再生処理前の)オイルを含む冷媒を通し、他方、タンク内で気化した冷媒をコンプレッサーで圧縮してから凝縮器を経由して液化された冷媒を二重スパイラル管の中心管に上方から通すように構成したオイルセパレータが開示されている。このオイルセパレータでは、凝縮器から送られる液体冷媒で加温されたスパイラル管によりオイルを含む冷媒を加温側へ熱交換し、他方、液体冷媒は中心管を通る際に、オイルを含む冷媒との熱交換作用によって二重スパイラル管を冷却するため、凝縮器を経由した液体冷媒は冷却方向に熱交換されることになり、相互に熱交換を行なうことにより多くの気体冷媒をコンプレッサーに送ることができるとされている。
【0007】
ところが、上記オイルセパレータにおいては、コンプレッサーで圧縮されたフロンが凝縮器を経由してから二重スパイラル管の中心管に通されているため、スパイラル管が温度の低下した液体冷媒により高い温度に保持されることは難しい。このことは、タンクの底部に設けたヒータによって下層の液体冷媒を加熱する構成とされている点からも、ヒータがなければ熱交換を効率よく行なうことはできないのではないか、と言えよう。
【0008】
本件出願人は特許文献3に示す電気式集塵装置を利用する新たな方式のフロン再生装置を開発して提案を行なっている。そのフロン再生装置は、油分(オイルミスト)等の不純物を含むガス化した回収フロンを螺旋形に巻かれた4弗化エチレン樹脂製チューブ内を通過させることによって不純物を摩擦作用により帯電させ、その帯電させた不純物を電気式集塵装置の集塵電極に付着させることにより除去してフロンを再生する構造である。その後、本願発明者の研究によれば、フロン中の不純物の帯電量が増えれば不純物の除去処理がさらに容易となり、集塵電極に約2kvの電圧がかけられているが、それよりも低い電圧を使用できれば安全性が向上することが知見された。加えて、従来、空調装置等の被回収機器から排出される液化フロンはヒータを使用して気化を促進させるのが一般的であったが、コンプレッサーにより圧縮された高温度のフロンの熱を利用することにより従来のヒータを不要とすることが可能となることに着目して新たな装置を提案するに至った。
【特許文献1】特開2001−26559号公報
【特許文献2】特開2003−269826号公報
【特許文献3】特開2007−144319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ヒータを用いることなく被回収機器から排出される回収フロンの気化を安定して行なわせると共にフロン中の不純物の除去率を向上させたフロンの再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために請求項1に記載した発明は、被回収機器から排出される液化した回収フロンを貯留するタンクの内部に熱交換器を備えたフロン気化装置部と、
そのフロン気化装置部のガス出口と電気式集塵装置のガス流入口とを接続する第1管路にニードルバルブを介装し、その電気式集塵装置のガス排出口とコンプレッサーとをフィルタを介して接続し、そのコンプレッサーによって圧縮されたフロンを前記熱交換器に第2管路により送るように設けた再生装置本体とからなり、
前記フロン気化装置部の熱交換器の液出口と再生フロン用ボンベの液出入口とを第3管路により接続するように設け、
前記フロン気化装置部から排出されるガス化した回収フロンを前記ニードルバルブ内の狭い通路を通過させることによって当該フロンに含まれる不純物を帯電させ、その帯電させた不純物を前記電気式集塵装置によって除去し、前記フィルタによって水分を除去されたフロンを前記コンプレッサーにより圧縮し、その圧縮されたフロンが前記熱交換器内を通過することによって前記フロン気化装置部内の回収フロンを加温するようになし、前記熱交換器による熱交換作用によってガス状態から液化されたフロンを再生フロン用ボンベに収容するように設けたことを特徴とする。
【0011】
同様の目的を達成するために請求項2に記載した発明は、請求項1に記載のフロンの再生装置において、前記第3管路に凝縮器を介装したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1の発明)
このフロンの再生装置は、コンプレッサーにより圧縮された高温のフロンが熱交換器内を通過することによって被回収機器から排出される回収フロンを加温して同フロンの気化を促進させ、ニードルバルブによってガス化した回収フロンに含まれる油分(オイルミスト)等の不純物に多くの帯電量を生じさせる構成とし、電気式集塵装置によって不純物を短時間で効率よく除去することが可能である。加えて、この装置では、電気式集塵装置の使用電圧が従来の1/2程度に低下し、装置全体が小型化し安全性が向上する。
【0013】
さらには、コンプレッサーにより圧縮された高温度のフロンの熱を利用して回収フロンを気化させる構成により、従来装置で必要とされたヒータが不要となり、省電力化を図ることができる。
【0014】
(請求項2の発明)
このフロンの再生装置は、第3管路に介装した凝縮器により再生フロンの温度が低下するので、再生フロン用ボンベ内の圧力も低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の最良の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るフロンの再生装置の説明図、図2は電気式集塵装置の説明図、図3はニードルバルブの概要構成を示す模式図、図4は第2管路内と第3管路内のフロンの温度とを比較して示すグラフである。
【0016】
図1に示すように、本発明に係るフロンの再生装置Rは、被回収機器1から排出される液化した回収フロンを貯留するフロン気化装置部5と、気化した状態の回収フロンに含まれる油分等の不純物を除去する再生装置本体10とからなる。
【0017】
フロン気化装置部5は、被回収機器1から配管2を通って排出される液化した回収フロンを貯留するタンク6の内部に熱交換器8を備えている。タンク6には、図示しない開閉バルブを夫々備えた液入口7a及びガス出口7bを設けている。
【0018】
再生装置本体10は、電気式集塵装置15、電気式集塵装置15のガス流入口側に介装されるニードルバルブ25、フィルタ35、コンプレッサー40及び凝縮器45とから構成されている。
【0019】
電気式集塵装置15は、図2に示すように、円筒形の胴部16に底蓋17と上蓋20を取り付けて密閉された処理室15aが設けられ、その処理室15a内にステンレス製の平板が所定間隔で縦向きに並設された集塵電極22を配置し、それらの平板に直流電源の+極と−極を交互に接続して電極間に約1kvの電圧を印加する構造とされている。18は底蓋17に設けられたガス流入口、19は底蓋17のドレン口17aに螺着された埋栓、21は上蓋20に設けられたガス排出口である。
【0020】
ニードルバルブ25は、電気式集塵装置15のガス流入口18とフロン気化装置部5のガス出口7bを接続する第1管路9に介装されるが、この実施形態では、ガス流入口18に直接に取り付けられている。詳しくは、ニードルバルブ25は、図3に示すように、金属製バルブ本体26に入口孔27と出口孔28とを直交させて連通するように設けると共に該入口孔27の出口孔28に連通する箇所の奥部27aを小径に形成し、その出口孔28の一端側に螺合されたニードル29をナット33で固定可能に設けられている。ニードル29の先端部29aは、入口孔27の奥部27aに臨む位置にて進退するように設けられており、ニードル29の頭部30を回転操作することにより通路の大きさ、言い換えると隙間31を調節可能に設けている。
【0021】
電気式集塵装置15のガス排出口21とフィルタ35とは、配管34により接続されている。フィルタ35とコンプレッサー40とは、配管36により接続されている。41はコンプレッサー40によって圧縮されたフロンを熱交換器8に送る第2管路である。
【0022】
回収フロンに含まれる水分については、氷の微粒子の状態であれば、ニードルバルブ25を通過する際に生ずる摩擦により帯電するので電気式集塵装置15によって除去することが可能である。しかし、モレキュラシーブ等の吸着剤を内蔵したフィルタ35を備えれば、より水分の除去率を高めることができる。
【0023】
42はフロン気化装置部5の熱交換器8の液出口8aと再生フロン用ボンベ50の液出入口50aとを接続する第3管路である。第3管路42には、小型の凝縮器45を介装している。46は凝縮器50の冷却用ファンである。
【0024】
なお、再生フロン用ボンベ50の液出入口50aには、図示しない開閉バルブを設ける。
【0025】
以上により、フロン気化装置部5から排出されるガス化した回収フロンをニードルバルブ25内の狭い通路を通過させることによって当該フロンに含まれる不純物を帯電させ、その帯電させた不純物を電気式集塵装置15によって除去し、フィルタ35によって水分を除去されたフロンをコンプレッサー40により圧縮し、その圧縮されたフロンが熱交換器8内を通過することによってフロン気化装置部5内の回収フロンを加温するようになし、熱交換器8による熱交換作用によってガス状態から液化されたフロンを再生フロン用ボンベ50に収容するという本発明に係るフロンの再生装置Rが構成される。
【0026】
つぎに、上記構成になる本発明に係るフロンの再生装置Rの作用について述べる。
(1)フロン気化装置部5において、ガス出口7bの開閉バルブを開放すると、タンク6の内部に収容された回収フロンは内外の圧力差によってガス化し、ガス化した回収フロンが第1管路9を通ってニードルバルブ25の内部に導かれる。
(2)回収フロンに含まれるオイルミストは、ニードル29の先端部29aに衝突することにより帯電しつつ隙間31を通過する。ついで、帯電した回収フロンは、電気式集塵装置15のガス流入口18から処理室15aに流入する。
(3)処理室15aにおいて、フロン中のオイルミストは集塵電極22に付着することによって除去され、フロンはガス排出口26からフィルタ35を通過してコンプレッサー40に向かう。フィルタ35では、フロンに含まれる水分が除去される。
(4)ついで、フロン(ガス)はコンプレッサー40により圧縮され、圧縮されて高温になったフロンは第2管路41を通ってフロン気化装置部5の熱交換器8内に送られる。
(5)フロン気化装置部5内の未処理の回収フロンは、熱交換器8内を通過するフロンの保有熱によって加温されるので、気化の際に周囲から熱を奪って気化作用が低下するのが防止される。他方、前記圧縮後の高温になったフロンとタンク6に貯留された回収フロンとの熱交換作用によって、熱交換器8内を通過するフロンは冷却されて温度が低下する。
(6)熱交換器8を経由したフロンは凝縮器45で冷却されて液状態となり、液化された再生フロンが再生フロン用ボンベ50に収容される。
【0027】
(実験1)
本発明に係るフロンの再生装置Rにおいて、第2管路41内の(コンプレッサー40により圧縮された)フロンの温度と、第3管路42内の(フロン気化装置部5から排出される)フロンの温度とを比較する実験を下記条件にて行なった。その結果を図4のグラフに示す。
フロンの種類:R22
処理速度 :13.5kg/時間
処理量 :5kg
【0028】
実験により、第3管路42内のフロンの温度は、第2管路41内のフロンの温度よりも20℃程度低くなり、コンプレッサーにより圧縮されたフロンとタンク6に貯留された回収フロンとの熱交換作用が安定して行なわれることが確認された。また、タンクの外周面の温度については、フロンの気化当初に一旦低下するが、その後ほぼ平行に推移する。
【0029】
(実験2)
本発明に係るフロンの再生装置Rのニードルバルブ30による帯電量を、前述した従来のフロン再生装置(比較例)に用いるコイル形状の4弗化エチレン樹脂製チューブの帯電量と比較する実験を下記条件にて行なった。その結果を表1に示す。
ニードルバルブ : ニードルの直径4mm
4弗化エチレン樹脂製チューブ: 大きさ外径6mm×内径4mm×長さ1m
ただし、冷凍機油10%を含むフロンの流量を1時間当たり10kgとし、帯電量を1分間測定した。
【0030】
【表1】

【0031】
また、本発明に係るフロンの再生装置Rの性能を上記比較例の再生装置と比較する実験を行なった。その結果を表2に示す。ただし、再生装置の稼働時間は約30分間とした。
【0032】
【表2】

【0033】
実験の結果、オイルミストの帯電量について、本発明装置は比較例よりも約30倍多いことが確認された。また、本発明装置は、集塵電極の電圧が比較例の1/2であっても、蒸発残分(フロン中に含まれるオイルの割合)が低く、フロン中のオイルミスト(不純物)の除去率が高いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るフロンの再生装置の説明図
【図2】電気式集塵装置の説明図
【図3】ニードルバルブの概要構成を示す模式図
【図4】第2管路内と第3管路内のフロンの温度とを比較して示すグラフ
【符号の説明】
【0035】
R・・・フロンの再生装置
1・・・被回収機器
5・・・フロン気化装置部
8・・・熱交換器
9・・・第1管路
10・・・再生装置本体
15・・・電気式集塵装置
18・・・ガス流入口
21・・・ガス排出口
25・・・ニードルバルブ
35・・・フィルタ
40・・・コンプレッサー
41・・・第2管路
42・・・第3管路
45・・・凝縮器
50・・・再生フロン用ボンベ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被回収機器から排出される液化した回収フロンを貯留するタンクの内部に熱交換器を備えたフロン気化装置部と、
そのフロン気化装置部のガス出口と電気式集塵装置のガス流入口とを接続する第1管路にニードルバルブを介装し、その電気式集塵装置のガス排出口とコンプレッサーとをフィルタを介して接続し、そのコンプレッサーによって圧縮されたフロンを前記熱交換器に第2管路により送るように設けた再生装置本体とからなり、
前記フロン気化装置部の熱交換器の液出口と再生フロン用ボンベの液出入口とを第3管路により接続するように設け、
前記フロン気化装置部から排出されるガス化した回収フロンを前記ニードルバルブ内の狭い通路を通過させることによって当該フロンに含まれる不純物を帯電させ、その帯電させた不純物を前記電気式集塵装置によって除去し、前記フィルタによって水分を除去されたフロンを前記コンプレッサーにより圧縮し、その圧縮されたフロンが前記熱交換器内を通過することによって前記フロン気化装置部内の回収フロンを加温するようになし、前記熱交換器による熱交換作用によってガス状態から液化されたフロンを再生フロン用ボンベに収容するように設けたことを特徴とするフロンの再生装置。
【請求項2】
前記第3管路に凝縮器を介装したことを特徴とする請求項1に記載のフロンの再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−215224(P2009−215224A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60646(P2008−60646)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度、経済産業省、中部経済産業局、中小企業地域新生コンソーシアム研究開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(591124400)アサダ株式会社 (8)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】