説明

フロントアタッチメントの連結方法と連結装置

【課題】フロントアタッチメントの構成部材のピン連結作業における省力化が可能になると共に、油圧ホースへの無理な力がかかることを防止することが可能となるフロントアタッチメントの連結方法と連結装置を提供する。
【解決手段】フロントアタッチメントの互いに連結される構成部材の一方の固定の油圧配管に油圧ホース38を、回転継手40を介して接続対象の構成部材に前記油圧ホースが近接、離反する方向に回動可能に取付ける。構成部材の連結時には、油圧ホース38を回動させて油圧ホース38を接続した側の連結部30から退避させておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例ば油圧ショベル、解体機あるいはスクラップ処理機等の建設機械のフロントアタッチメントにおいて、フロントアタッチメントが複数の分割された構成部材により着脱可能にピン結合されると共に、構成部材間に橋渡し状に添設される油圧ホースを備える場合の連結方法と連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の建設機械においては、異なる作業現場の高さや深さあるいは作業内容等に対応するため、種々の長さや構造のフロントアタッチメントを共通の建設機械本体に交換可能に取付ける作業が行なわれる。このようにフロントアタッチメントの交換を行なうものとして、特許文献1に記載のように、ブームシリンダにより旋回フレームに起伏可能に取付けられる基端ブームを旋回フレームに取付けたままとし、その先に交換するフロントアタッチメント部分を連結ピンにより着脱するものがある。このような構造とすれば、基端ブームの先にピン連結するフロントアタッチメント部分は台あるいはクレーンによって支持しておき、オペレータがブームシリンダを操作して基端ブームの先端の連結部をその先のフロントアタッチメントの連結部の高さに合わせることができるので、連結作業を行なう際のピン位置調整が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−2018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように、フロントアタッチメントの交換取付けにおいて、基端ブームにその先のフロントアタッチメント部分をピン連結する方法を採用する場合、フロントアタッチメントの関節部や作業具に備える油圧シリンダ等の油圧アクチュエータに作動油を供給するために、連結部に橋渡し状に添設している油圧ホースの接続も行なう必要がある。この油圧ホースの接続作業は、基端ブームにその先のフロントアタッチメント部分をピンにより連結した後に行なわれる。
【0005】
しかしながら、図9に示す従来の連結装置において、基端ブーム70にその先のフロントアタッチメント部分71を連結する際には、連結されるフロントアタッチメント部分71に固定された油圧配管72に接続した油圧ホース73は、連結部71a側に垂れているので、ピン連結作業の邪魔になる。このため、従来は作業員が連結されるフロントアタッチメント部分71上に乗り、連結部71aに垂れ下がっている油圧ホース73を持ち上げて連結部71aから退避させておき、基端ブーム70を近接させ、位置合わせを行なってピン連結を行なう必要があった。このため、フロントアタッチメント部分の連結作業に2人以上の人員を要し、作業効率の観点から問題があった。
【0006】
また、作業員が垂れた油圧ホース73を連結部71aから退避させるように動かす場合、必要以上の力で油圧ホース73を扱う虞があり、その際には油圧ホース73と固定の油圧配管72との接続部74等に無理な力がかかり、この接続部74等が損傷する虞があるという問題点もあった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑み、フロントアタッチメントの構成部材の連結作業における省力化が可能になると共に、油圧ホースに無理な力がかかることを防止できるフロントアタッチメントの連結方法と連結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のフロントアタッチメントの連結方法は、
建設機械の上部旋回体の旋回フレームに取付けるフロントアタッチメントが複数の構成部材の連結によって構成され、互いに連結される基端側構成部材と先端側構成部材にそれぞれ添設された固定の油圧配管が油圧ホースにより接続され、前記基端側構成部材と前記先端側構成部材との連結時に、前記油圧ホースは一端が基端側構成部材または前記先端側構成部材のいずれか一方の固定の油圧配管に接続された状態で連結されるフロントアタッチメントの連結方法において、
前記フロントアタッチメント組立時に前記固定の油圧配管に接続される前記油圧ホースを、回動可能な回転継手を介して前記固定の油圧配管に接続しておき、
前記基端側構成部材と前記先端側構成部材との連結時には、前記油圧ホースをその油圧ホースを接続した側の構成部材の連結部から離反する方向に回動させることにより、その油圧ホースを接続した側の構成部材の連結部から退避させておいて前記基端側構成部材と前記先端側構成部材との連結を行なうことを特徴とする。
【0009】
請求項2のフロントアタッチメントの連結装置は、
建設機械の上部旋回体の旋回フレームに取付けるフロントアタッチメントが複数の構成部材の連結によって構成され、互いに連結される基端側構成部材と先端側構成部材にそれぞれ添設された固定の油圧配管が油圧ホースにより接続され、前記基端側構成部材と前記先端側構成部材との連結時に、前記油圧ホースは一端が基端側構成部材または前記先端側構成部材のいずれか一方の固定の油圧配管に接続された状態で連結されるフロントアタッチメントの連結装置において、
前記固定の油圧配管に接続される前記油圧ホースを、その油圧ホースを接続した側の構成部材の連結部から前記油圧ホースが近接、離反する方向に回動可能なように回転継手を介して前記固定の油圧配管に接続したことを特徴とする。
【0010】
請求項3のフロントアタッチメントの連結装置は、請求項2に記載のフロントアタッチメントの連結装置において、
前記基端側構成部材は前記建設機械の旋回フレームにブームシリンダにより起伏可能に取付けられた基端ブームであり、前記先端側構成部材は前記基端ブームに連結されるブームであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、構成部材どうしの連結の際には油圧ホースはその油圧ホースを接続した側の構成部材の連結部から回動させて退避させておくため、連結の際に、油圧ホースを把持して連結部から退避させておく作業員が不要となり、連結作業における省力化が可能となる。また、構成部材上に作業員が上っておく必要がないので、安全性が向上する。
【0012】
請求項2の発明によれば、構成部材どうしの連結の際には油圧ホースはその油圧ホースを接続した側の構成部材の連結部から回動させて退避させておくことが可能となるため、請求項1の効果を奏することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、基端ブームに対してその先の各種フロントアタッチメント部分を交換する構成を採用した建設機械において、高い頻度で油圧ホースの退避を行なうこととなるので、より使用頻度のある重要な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)〜(D)は本発明を適用する各種のフロントアタッチメントをそれぞれ備えた建設機械を示す側面図である。
【図2】(A)〜(D)は図1に示す各種フロントアタッチメントの構成部材間の接続作業状態を示す側面図である。
【図3】本発明による連結装置の一実施の形態を、基端ブームとその次段ブームとの連結部について示す側面図である。
【図4】図3の実施の形態におけるブーム上面部の油圧ホースの配置構造を一部省略して示す平面図である。
【図5】この実施の形態の油圧ホースの継手部分を示す側面図である。
【図6】この実施の形態の油圧ホースの継手部分を示す平面図である。
【図7】この実施の形態の油圧ホースのブーム連結前の垂れた状態を示す側面図である。
【図8】この実施の形態の油圧ホースを連結部から退避させた状態を示す側面図である。
【図9】従来のブーム連結部の連結前の油圧ホースの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1(A)〜(D)は本発明を適用する各種のフロントアタッチメントをそれぞれ備えた建設機械を示す側面図である。図1(A)〜(D)において、1は各種フロントアタッチメントに共通に使用される建設機械の本体である。この本体1は、下部走行体2上に旋回フレーム3を設置し、旋回フレーム3上に運転室4や油圧パワーユニット5等を設置して上部旋回体6を構成したものである。7は旋回フレーム3にブームシリンダ8により起伏可能に取付けられた基端ブームであり、この基端ブーム7とブームシリンダ8はこれらに対して取付けられる各種フロントアタッチメント9A〜9Dに対して共通に使用される。
【0016】
図1(A)に示すフロントアタッチメント9Aは、作業具として解体用の鋏状の構造を有する破砕具10をフロントアタッチメント9Aの先端に取付けた例を示すものであり、高所での解体作業を可能にしたものである。このフロントアタッチメント9Aは、第1段ブーム11Aと第2段ブーム12Aと第3段ブーム13Aとで構成され、これらの間の関節部に回動用の油圧シリンダ15,16が取付けられ、先端には破砕具10を回動させる油圧シリンダ17が取付けられる。
【0017】
図1(A)の第1段ブーム11Aは基端ブーム7に2本の継ぎ足し用分割ブーム19とこれらより長い上ブーム20とにより構成される。また第2段ブーム12Aは短い中継ブームからなる。第3段ブーム13Aは下ブーム21とこれより長い上ブーム22とにより構成される。
【0018】
図1(B)は図1(A)より低い解体対象物の解体を行なう場合のフロントアタッチメントを示しており、第1段ブーム11Bは継ぎ足し用分割ブーム19を図1(A)のものより1本少なくし、第3段ブーム13Bは上ブーム24として前記上ブーム22より短いブームを使用しており、他の構成は図1(A)のものと同様である。
【0019】
図1(C)は作業具としてバックホウバケット25を使用するもので、第1段ブーム11Cは基端ブーム7に短い上ブーム26を連結し、第2段ブーム12Cはこれらのブーム7,26のトータルの長さと同程度の長さのブームにより構成し、第3段ブーム13Cも第2段ブーム12Cよりやや短いブームを使用したものである。
【0020】
図1(D)は図1(C)の第1段ブーム11Cの上ブーム26と第2段ブーム12Cの代わりに基端ブーム7に固定して連結されるブーム27を取付けたものである。
【0021】
図2(A)〜(D)は図1に示す各種フロントアタッチメント9A〜9Dの連結作業状態を示す側面図である。図2(A)〜(D)に示すように、フロントアタッチメント9A〜9Dは連結部30を台31上に載せ、本体1を走行、旋回させると共に、ブームシリンダ8により基端ブーム7側連結部32の高さを向きを調整してピンによる連結を行なう。
【0022】
図3はフロントアタッチメントの連結装置の本発明の一実施の形態を示す側面図、図4はブーム上面部の油圧ホースの配置を一部省略して示す平面図である。図3、図4に示す実施の形態においては、図1、図2におけるフロントアタッチメント9A,9Bの基端ブーム7と継ぎ足し用分割ブーム19との連結部30,32について示しているが、他のフロントアタッチメント9C,9Dの基端ブーム7との連結部の構造についても同様の構造が採用される。33,34は基端ブーム7の連結部32と継ぎ足し用分割ブーム19の連結部30とを連結するピンである。36は基端ブーム7上および側面に取付けた鋼管製の固定の油圧配管、37は継ぎ足し用分割ブーム19上および側面に固定して取付けた鋼管製の固定の油圧配管であり、これらはフロントアタッチメントの関節部の油圧シリンダ15〜17や破砕具10に備える油圧シリンダに作動油を供給するものである。
【0023】
38はこれらの固定の油圧配管36,37の間を接続する油圧ホースである。この油圧ホース38の端部のうち、継ぎ足し用分割ブーム19の上面に取付けられた固定の油圧配管37に接続される側の端部は、回転継手40を介して油圧配管37に接続される。油圧ホース38と基端ブーム7側油圧配管36とは継手41を介して接続される。
【0024】
図5、図6はそれぞれ前記回転継手40の構成を説明する側面図、平面図である。図5、図6において、42は回転継手40を継ぎ足し用分割ブーム19の上面にボルト43(図4参照)によって取付ける取付け板である。この取付け板42には継手本体44が溶着され、この継手本体44には中心に円孔44aを有する。継手本体44には、この円孔44aに連通する油路44bが外部に向けて形成され、この油路44bは、継手45を介して固定の油圧配管37に接続される。
【0025】
46は継手本体44に設けた円孔44aに回動可能に嵌合した円柱体である。この円柱体46は外周に周方向に形成した油溝46aを有し、この油溝46aは円柱体46の中心の油路46bに対し、円柱体46に半径方向に設けた油路46cにより連通する。この円柱体46の端部にはその油路46bに連通する油路47aを有する端部ブロック47を溶接し、この端部ブロック47は継手48を介して油圧ホース38に接続される。従って、油圧ホース38内は、継手48、端部ブロック47内の油路47a、円柱体46の中心の油路46b、円柱体46の半径方向に設けた油路46c、円柱体46の周囲に設けた油溝46a、継手本体44に設けた油路44b、継手45を介して固定の油圧配管37に連通する。
【0026】
図7はこの実施の形態の継ぎ足し用分割ブーム19の基端ブーム7に対する連結前の状態を示す図であり、回転継手40を介して油圧配管37に接続された油圧ホース38は、継ぎ足し用分割ブーム19の基端ブーム7に対する連結ピン孔30a,30bを有する連結部30側に垂れ下がった状態となる。このように油圧ホース38が連結部30側に垂れ下がった状態から作業員が継ぎ足し用分割ブーム19上に上り、図8に示すように油圧ホース38を引き上げて継ぎ足し用分割ブーム19側に回して連結部30から退避させておくことにより、図2に示したように基端ブーム7に接続する場合に、油圧ホース38が連結の邪魔になることがない。
【0027】
このように、この実施の形態においては、油圧配管36に回転継手40を介して油圧ホース38を回動可能に取付けておき、継ぎ足し用分割ブーム19を基端ブーム7に連結する際には、油圧ホース38を基端ブーム7から離反する側に回動させて退避させておくため、連結作業の間、油圧ホース38を把持して連結部30から退避させておく作業員が不要となり、連結作業における省力化が可能となる。また、継ぎ足し用分割ブーム19上に作業員が上っておく必要がないので、安全性が向上する。
【0028】
本発明は、例えば図1(A)に示した継ぎ足し用分割ブーム19,19間や継ぎ足し用分割ブーム19と上ブーム20との間、あるいは第1段ブーム11Aと第2段ブーム19Aとの間、もしくは第2段ブーム19Aと第3段ブーム13Aとの間、さらには第3段ブーム13Aの下ブーム21と上ブーム24との間の連結にも同様の油圧ホースの回転継手による回動構造を採用することも可能である。さらに図1(B)〜(D)における基端ブーム7のみならず他の連結部にも同様の構造が採用可能である。
【0029】
ただし、この実施の形態で示したように、基端ブーム7に対してその先のフロントアタッチメント部分を交換する構成を採用した建設機械においては、基ブーム7に対するその先のフロントアタッチメントは高い頻度で着脱されるので、より重要な効果を得ることができる。
【0030】
本発明を実施する場合、連結部に設ける油圧ホース38は、基端ブーム7等の基端側構成部材に対して回転継手を介して回動可能に取付ける構造としてもよい。また、回転継手40の構造は上記実施の形態に記載のもの以外に種々の構造が採用可能である。また、フロントアタッチメントに取付ける作業具は上記例示のものに限定されない。その他、本発明を実施する場合、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加を行なうことが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1:建設機械本体、2:下部走行体、3:旋回フレーム、4:運転室、5:油圧パワーユニット、6:上部旋回体、7:基端ブーム、8:ブームシリンダ、9A〜9D:フロントアタッチメント、10:破砕具、11A〜11D:第1段ブーム、12A〜12D:第2段ブーム、13A〜13C:第3段ブーム、15〜17:油圧シリンダ、19:継ぎ足し用分割ブーム、20:上ブーム、21:下ブーム、22:上ブーム、24:上ブーム、25:バックホウバケット、26:上ブーム、27:ブーム、30,32:連結部、31:台、33,34:連結ピン、36,37:固定の油圧配管、38:油圧ホース、40:回転継手、42:取付け板、44:継手本体、45,48:継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の上部旋回体の旋回フレームに取付けるフロントアタッチメントが複数の構成部材の連結によって構成され、互いに連結される基端側構成部材と先端側構成部材にそれぞれ添設された固定の油圧配管が油圧ホースにより接続され、前記基端側構成部材と前記先端側構成部材との連結時に、前記油圧ホースは一端が基端側構成部材または前記先端側構成部材のいずれか一方の固定の油圧配管に接続された状態で連結されるフロントアタッチメントの連結方法において、
前記フロントアタッチメント組立時に前記固定の油圧配管に接続される前記油圧ホースを、回動可能な回転継手を介して前記固定の油圧配管に接続しておき、
前記基端側構成部材と前記先端側構成部材との連結時には、前記油圧ホースをその油圧ホースを接続した側の構成部材の連結部から離反する方向に回動させることにより、その油圧ホースを接続した側の構成部材の連結部から退避させておいて前記基端側構成部材と前記先端側構成部材との連結を行なうことを特徴とするフロントアタッチメントの連結方法。
【請求項2】
建設機械の上部旋回体の旋回フレームに取付けるフロントアタッチメントが複数の構成部材の連結によって構成され、互いに連結される基端側構成部材と先端側構成部材にそれぞれ添設された固定の油圧配管が油圧ホースにより接続され、前記基端側構成部材と前記先端側構成部材との連結時に、前記油圧ホースは一端が基端側構成部材または前記先端側構成部材のいずれか一方の固定の油圧配管に接続された状態で連結されるフロントアタッチメントの連結装置において、
前記固定の油圧配管に接続される前記油圧ホースを、その油圧ホースを接続した側の構成部材の連結部から前記油圧ホースが近接、離反する方向に回動可能なように回転継手を介して前記固定の油圧配管に接続したことを特徴とするフロントアタッチメントの連結装置。
【請求項3】
請求項2に記載のフロントアタッチメントの連結装置において、
前記基端側構成部材は前記建設機械の旋回フレームにブームシリンダにより起伏可能に取付けられた基端ブームであり、前記先端側構成部材は前記基端ブームに連結されるブームであることを特徴とするフロントアタッチメントの連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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