説明

フロントパネル脱落防止機構及びフロントパネルを備える電子機器

【課題】前面側開口からフロントパネルを完全に離脱させた状態と同等にしつつ、そのフロントパネルを保持すると共に、必要に応じて簡易に完全に取り外すことができるようにする。
【解決手段】フロントパネル脱落防止機構は、筐体11の前面側開口11a内に固設される受け金具19と、前記筐体の前面側開口に着脱して開閉するフロントパネルに固設されて該開閉方向に延在した後に先端側で屈曲する引き出し金具29との2部品からなり、前記引き出し金具は、前記受け部材19に係合して、延在部分で前記開閉方向に相対移動自在に案内されると共に、前記フロントパネルが前記前面側開口から所定距離離隔するときに、屈曲部分で前記相対移動を制限される一方、上方への移動で該受け部材との係合が解消されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントパネル脱落防止機構及びフロントパネルを備える電子機器に係り、詳しくは、着脱可能に取り付けられているフロントパネルの不用意な脱落を防止することができるフロントパネル脱落防止機構及びフロントパネルを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、フロントパネルを着脱して前面側開口を開閉する構造を採用する場合がある。例えば、図8に示すように、放送事業などで棚内に収納されて利用されているスタジオ用の単体機器100では、誤操作を防止するために、フロントパネル110を筐体101から外して前面側開口101a内の電源スイッチ102をオン/オフするようになっている。
【0003】
また、前面側開口を開閉する構造としては、所謂、フリッパ扉がある。このフリッパ扉は、鉛直下方に垂下されている扉本体(フロントパネル)の下端部を持上げて90度回動させ水平にした後に、その回動自在に支持する部材と共に前面側開口内にスライドさせることにより、その前面側開口を開口状態にすることができる(特許文献1)。また、車載のオーディオシステムなどのフロントパネルでは、前面側開口内のスライダベース上を前後方向にスライド可能なスライダと共に下端部が移動する一方、同時に、上端部が前面側開口の両側方の溝内を上下動することにより、前面側開口を開閉することができる(特許文献2)。
【0004】
これら特許文献1、2では、フロントパネルが筐体の前面側開口側に相対移動可能に連結されていると共に、離脱不能に係合されていることから、そのフロントパネル自体を外すことができない。
【0005】
ところで、前面側開口内に挿脱する記録紙カセットでは、前面側開口内の側面に固設したレールに載置するように係合させて前後方向にスライド可能にすると共に、前面側開口の端部付近に固設したストッパに後端部を係止させることで、不用意に脱落してしまうことを防止することも行われている。この記録紙カセットは、前面側開口内から引き出して上方に引き上げることで、ストッパとの係合を解除して外すことができるようになっている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平07−043212号公報
【特許文献2】特開2004−175346号公報
【特許文献3】特開2002−068491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スタジオ単体機器100のフロントパネル110などのように、電源スイッチ102をオン/オフする度に、筐体101の前面側開口101a側から外す必要がある。このときには、外した状態のフロントパネル110を片手で保持しつつ、電源スイッチ102などの別操作を行わなければならない。このような状況では、フロントパネル110を落としかねず、また、別操作をし難く、作業性が悪い、という課題があった。
【0008】
また、このようなフロントパネル110にも、液晶表示部111や各種操作ボタン112などを備えることから、機器本体側の回路基板にケーブル105が接続されている。このことから、フロントパネル110を落下させると、ケーブル105に引っ張りのストレス(負荷)を無用に与えて断線させてしまう可能性がある。また、そのケーブル105に気が付かないでフロントパネル110を勢い良く外した場合にも、無用な引っ張り負荷を与えて断線させてしまう可能性がある。
【0009】
そこで、特許文献1、2に記載のフロントパネルの取付構造の採用を検討すると、いずれも複雑な機構で組み付けられており、単に着脱するだけの構造としては不向きである。また、このフロントパネルは、完全に筐体の前面側開口側から取り外す構造にはなっておらず、スタジオ単体機器の前面側開口をフロントパネルで開閉する構造に採用することはできない。
【0010】
すなわち、特許文献1、2に記載のフロントパネルでは、いずれもレールなど規定のルートを往復移動するように駆動力を付与されるだけで、前面側開口を開閉することができる。このため、このフロントパネルでは、前面側開口の開閉を実現するために、水平方向などに案内するレールや回動自在に支持する部材など複雑な構成部品が必要である。また、このフロントパネルは、筐体の前面側開口側から簡易に外すことができず、要求されている完全離脱が不可能である。
【0011】
また、全く異なる技術分野ではあるが、仮に、特許文献3に記載の技術(レール)を適用しようとしたとしても、水平方向にスライド可能に支持するだけであり、さらに、その水平方向でも前面側開口の内部に向かってスライドさせるだけである。また、ストッパは、レールと別部材であり、単純に衝止するだけの機能しかない。すなわち、特許文献3に記載の技術では、スライド機能とストッパ機能との2種類を具備させる必要があり、簡易かつ容易に、スタジオ単体機器の前面側開口をフロントパネルで開閉するような電子機器に採用することができない。
【0012】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、前面側開口からフロントパネルを完全に離脱させた状態と同等にしつつ、そのフロントパネルを保持すると共に、必要に応じて簡易かつ容易に完全に取り外すことができる、フロントパネル脱落防止機構及びフロントパネルを備える電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明の構成は、前面側が開口する機器筐体に固設される筐体側部材と、前記機器筐体の前面側開口に着脱して該前面側開口を開閉するフロントパネルに固設されて当該開閉方向に延在した後に先端側で屈曲するパネル側部材との2部品からなり、前記筐体側部材は、前記パネル側部材の延在部に係合して前記開閉方向への移動を案内する案内部と、前記フロントパネルが前記前面側開口から所定距離離隔するときに、前記パネル側部材の屈曲部の当該離隔方向への移動を制限する制限部とを備えて、前記案内部は、上部が開口して、前記パネル側部材の前記延在部を上方から挿脱可能に収容して案内することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この発明の構成によれば、筐体側部材とパネル側部材の2部品を前面側開口付近の機器筐体とフロントパネルにそれぞれ固設するだけで、パネル側部材を筐体側部材に案内させつつフロントパネルを開閉方向に進退させることができる。また、前面側開口を開放している状態でフロントパネルが所定距離以上離隔しようとするときにパネル側部材がさらに離隔しようとするのを筐体側部材が制限して完全に離脱し落下してしまうことを回避することができる。そして、フロントパネルと共にパネル側部材を上方に移動させるだけで、筐体側部材から完全に取り外すこともできる。したがって、フロントパネルを機器筐体側から完全に離脱させた状態と同等の状態で保持して、フロントパネルを落下させるなどして無理な負荷をケーブルなどに与えてしまうことを回避することができると共に、操作者が保持することなく各種操作を行うことができる一方、必要に応じて完全に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態であるスタジオ単体機器の概略全体構成を示す斜視図である。
【図2】同スタジオ単体機器に取り付けるフロントパネル脱落防止機構を示す斜視図である。
【図3】同フロントパネル脱落防止機構を構成する部品を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図4】同フロントパネル脱落防止機構を構成する図3と異なる部品を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】同フロントパネル脱落防止機構の他の第1の態様を示す図3(c)に対応する側面図である。
【図6】同フロントパネル脱落防止機構の他の第2の態様を示す模式図である。
【図7】同フロントパネル脱落防止機構の他の第3の態様を示す図であり、(a)はその側面図、(b)はその一部断面正面図である。
【図8】この発明の関連技術品としての、スタジオ単体機器の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前面側が開口する機器筐体の該前面側開口内の両側方に固設される筐体側部材と、前記機器筐体の前面側開口に着脱して該前面側開口を開閉するフロントパネルの背面側の両側方に固設されて該開閉方向に延在するパネル側部材との2部品からなり、前記パネル側部材は、前記機器筐体の前記前面側開口の開閉方向に延在する延在部と、前記開閉方向に対して屈曲して直交する屈曲部とを一体に備える一方、前記筐体側部材は、前記開閉方向に移動する前記パネル側部材の前記延在部を収容して案内する案内部と、前記フロントパネルが前記前面側開口から所定距離離隔したときに前記パネル側部材の前記屈曲部に対面して衝止する制限部とを一体に備えており、前記筐体側部材の前記案内部は、上部が開口して、前記パネル側部材の前記延在部を上方から挿脱可能に収容して案内するようになっている。
【実施形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明の一実施形態について詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態であるスタジオ単体機器の概略全体構成を示す斜視図、図2は、同スタジオ単体機器に取り付けるフロントパネル脱落防止機構を示す斜視図、図3は、同フロントパネル脱落防止機構を構成する部品を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、図4は、同フロントパネル脱落防止機構を構成する図3と異なる部品を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0018】
この実施形態のスタジオ単体機器(電子機器)10は、例えば、図1に示すように、放送事業所のスタジオ内の棚内に筐体11の側面側の係合レール12を係合させて水平にスライドさせることにより収納される。スタジオ単体機器10は、筐体11の前面側が開口しており、その前面側開口11aの両側方の外側面に固設されているL字金具13のネジ孔13aに不図示のネジを差し込んで上記の棚側にネジ止めして固定するようになっている。
【0019】
スタジオ単体機器10は、筐体11の前面側にフロントパネル21が取り付けられており、フロントパネル21の前面側に配設されている液晶表示部22の表示を確認しつつ各種操作ボタン23を操作するようになっている。フロントパネル21は、背面側に取り付けられているフラットケーブル24を介して筐体11内の本体側回路基板に電気的に接続されており、筐体11の前面側に着脱して前面側開口11aを開閉することができる。このスタジオ単体機器10は、フロントパネル21を外した状態にして、前面側開口11a内の電源スイッチ14をオン/オフするようになっており、誤操作で電源をオフされてしまうことを未然に回避するようになっている。
【0020】
スタジオ単体機器10は、フロントパネル21を筐体11の前面側開口11a側に取り付けて着脱を制限するロック機構として、フロントパネル21の両端側に、所定距離だけ左右にスライド可能なスライドブロック25が取り付けられている。スライドブロック25は、L字金具13の板金部13bが不図示の板厚分のスリット内に入り込んで、外側に向ってスライドされたときに、フロントパネル21を取付状態にロックする一方、内側に向ってスライドされたときに、そのロックを解除する。なお、フロントパネル21のロック機構としては、スライドブロック25に限らず、単にネジ止めする構造を採用しても良い。
【0021】
スタジオ単体機器10は、フロントパネル21が筐体11側から脱落して落下してしまうことを防止する機構として、筐体11の前面側開口11aの下面11b側両端部に、受け金具19が固設される一方、フロントパネル21の背面側両端部に、引き出し金具29が固設されている。
【0022】
受け金具19は、図2及び図3に示すように、金属製の板状材料を切断・折曲などの機械加工をすることにより、固設部31、対面部32、平行部33を備える一体形状に作製されている。固設部31は、概略四角形状に形成されて、リベット31aで筐体11の前面側開口11aの下面11bに固設されている。なお、リベット31aは、他のネジ止めなどの固定手段に代えても良いことは言うまでもない。
【0023】
対面部32は、筐体11の前面側開口11aの開口面と平行な固設部31の一端辺が延長されて折り曲げることにより、フロントパネル21の背面に対面するように立ち上げられている。平行部33は、筐体11の前面側開口11aの開口面と直交する方向、言い換えると、フロントパネル21の移動方向(筐体11の前面側開口11aの開閉方向)と平行な固設部31の他端辺が延長されて折り曲げることにより、前面側開口11aの内側面11cに対面するように立ち上げられている。
【0024】
この受け金具19の対面部32と平行部33は、互いに直交する位置関係になるように固設部31に一体形成されていると共に、後述する引き出し金具29の延在部36の厚さよりも大き目の間隔で、その対面部32の一方の端辺32aから平行部33の内面33aが離隔するように形成されている。
【0025】
引き出し金具29は、図2及び図4に示すように、金属製の板状材料を切断・折曲などの機械加工をすることにより、延在部36、固定部37、直交部38を備える一体形状に作製されている。
【0026】
延在部36は、電源スイッチ14をオン/オフするのに十分な距離だけ筐体11の前面側開口11aからフロントパネル21を離隔させる程度の長さに延長形成されて延在している。延在部36は、延長方向に平行で長尺な一側辺側を直角に折り曲げたフランジ部36aが形成されて強度が向上されている。固定部37は、延在部36の延長方向の基端部を直角のフランジ形状に折り曲げられており、フロントパネル21の背面側に不図示のネジ止めなどの固定手段で固定されている。すなわち、延在部36は、フロントパネル21の背面側から筐体11の前面側開口11aの開閉方向に延在している。
【0027】
直交部38は、延在部36の他端側が延長方向に対して直交する方向に屈曲されている。すなわち、直交部38は、屈曲部を構成して、筐体11の前面側開口11aを開閉するフロントパネル21の移動方向(開閉方向)に対して直交して、前面側開口11aの開口面と平行になって対面する。
【0028】
このため、引き出し金具29は、延在部36を受け金具19の対面部32の端辺32aと平行部33の内面33aの間の上部の開口側から容易に挿入して収容させる係合状態にすることができる。この状態では、引き出し金具29は、延在部36を固設部31上で支持されて受け金具19の対面部32と平行部33の間で案内されつつ、筐体11の前面側開口11aに向かって近接・離隔する方向に自由に摺接移動することができ、フロントパネル21が筐体11の前面側開口11aを開閉する方向にスライドすることができる。一方、そのフロントパネル21が筐体11の前面側開口11aから延在部36の長さ程度に離隔したときには、引き出し金具29の直交部38は、受け金具19の対面部32に衝止されてそれ以上のスライドが制限される。また、引き出し金具29は、延在部36を開閉方向に対して直交する上方に移動させることで、受け金具19の対面部32と平行部33の上部開口から簡単に離脱させることができ、フロントパネル21を筐体11側から完全に容易に外すことができる。すなわち、受け金具19は、対面部32と平行部33とで第1、第2の折曲部からなる案内部を構成しており、対面部32は、制限部も兼ねている。ここで、受け金具19は、固設部31の直交する隣接端辺に対面部32と平行部33がそれぞれ形成されていることから、その対面部32と平行部33が直接対向する位置関係にない。しかるに、筐体11の前面側開口11aの正面から見たときには、対面部32の端辺32aと平行部33の内面33aとが対向して離隔する位置関係になって、その間に引き出し金具29の延在部36を収容する対向部を構成する。
【0029】
また、受け金具19は、対面部32の先端部32bが固設部31の内方に向かって屈曲しており、対面衝止する引き出し金具29の直交部38が上方にずれようとするのを制限することができる。このため、引き出し金具29が受け金具19から不用意に外れて、フロントパネル21が脱落してしまうことを回避する。
【0030】
また、引き出し金具29は、延在部36の他端側の先端部36bが直交部38側に向かう方向の板厚程度に屈曲されており、その先端部36bの内面を受け金具19の対面部32の端辺32aに摺接させて変位しつつその対面部32に直交部38を対面衝止させることができる。このため、引き出し金具29は、筐体11の前面側開口11aからフロントパネル21を離隔させて、受け金具19の対面部32に直交部38を対面衝止させている状態を安定させることができ、フロントパネル21を安定して保持することができる。また、引き出し金具29は、筐体11の前面側開口11aにフロントパネル21を接近させる際には、受け金具19の平行部33を延在部36の先端側の屈曲面から摺接させるように案内することができる。
【0031】
したがって、スタジオ単体機器10は、引き出し金具29の延在部36を受け金具19の対面部32と平行部33の間に挿入してスライド自在な状態にして、フロントパネル21を筐体11の前面側開口11aに接近させ閉塞することができる。
【0032】
一方、電源スイッチ14を操作するときには、引き出し金具29の延在部36を受け金具19の対面部32と平行部33の間で案内スライドさせつつ、フロントパネル21を手前に引いて筐体11の前面側開口11aから離隔させることができ、引き出し金具29の直交部38が受け金具19の対面部32に衝止される程度まで十分に離隔させることができる。
【0033】
このときには、受け金具19の対面部32と引き出し金具29の直交部38は、フロントパネル21を必要以上に引き出すことを制限するストッパとして機能して、フラットケーブル24に過大な負荷(引っ張りストレス)を与えて損傷させてしまうことを回避することができる。また、受け金具19と引き出し金具29は、対面部32と直交部38とが互いに対面衝止されて引っ掛けている状態を維持することができ、手を離しても、フロントパネル21が不用意に脱落してしまうことなく、安定した状態で保持することができる。
【0034】
また、フロントパネル21は、上方に移動させるだけで、受け金具19から引き出し金具29を簡易かつ容易に離脱させることができ、必要に応じて筐体11から容易に外すことができる。
【0035】
このように、この実施形態によれば、筐体11の前面側開口11a内に受け金具19を固設すると共に、フロントパネル21の背面側に引き出し金具29を固設するだけで、フロントパネル21をスムーズにスライドさせて筐体11の前面側開口11aを開閉することができる一方、そのフロントパネル21を引き過ぎたり脱落させるなどしてフラットケーブル24等を損傷させてしまうことをなくすことができる。また、フロントパネル21を上方に引き上げるだけで容易に筐体11から外すこともできる。
【0036】
また、この実施形態の他の第1の態様として、図5に示すように、引き出し金具29の延在部36は、固定部37が連設される基端部41側を本体部42側に対して回動軸43を中心にして回動自在に連結する構造にしても良い。この場合には、上述の実施形態では、フロントパネル21の姿勢に応じて引き出し金具29の延在部36が上昇して受け金具19の対面部32と平行部33の間から離脱するような状況でも、基端部41に対して本体部42が自重で回動して降下する。このため、フロントパネル21の姿勢の変化をある程度吸収して、引き出し金具29の延在部36が受け金具19の対面部32と平行部33の間に位置して係合する状態を維持することができる。
【0037】
この実施形態の他の第2の態様として、図6に示すように、受け金具19には、平行部33に代えて、対面部32の反対側で対向する位置に、同一形状に形成されて同様に機能する対面部52を形成すると共に、引き出し金具29にも、延在部36の直交部38の反対側に延在して同一形状で同様に機能する直交部58を形成してもよい。この場合には、引き出し金具29の延在部36の両側の対向する位置に、受け金具19の対面部32、52が存在することから、引き出し金具29が左右にずれることを制限することができ、また、その引き出し金具29の直交部38、58を同時に対面・衝止して安定した状態で保持することができる。
【0038】
この実施形態の他の第3の態様として、図7に示すように、受け金具19に代えて、筐体11の前面側開口11aの側面11cに受け金具61を固設する一方、引き出し金具29に代えて、フロントパネル21の背面側に引き出し金具65を固設する。受け金具61は、段差形状に形成されて、筐体11の側面11c側に固定される固定部62と、この固定部62から直交方向に屈曲した後に上方に延長されている受け部63とを備えている。引き出し金具65は、引き出し金具29の延在部36に代わるように延在する棒状の延在部66と、直交部38に変わるように延在部66の先端を直交方向に屈曲させている直交部68と、延在部66の基端側に連設されて直交方向に屈曲すると共に平板形状に形成されてフロントパネル21の背面側に固定される固定部67とを備えている。また、受け金具61の受け部63は、前面側開口11aの奥側の下側(固定部62側)が切り欠かれて斜辺63aを有すると共に、先端部63bが前面側開口11aの側面11cから離隔する方向に屈曲して開口側を大きめに拡開している。
【0039】
この場合にも、上述の実施形態と同様に、受け金具61の受け部63が前面側開口11aの側面11cとの間に引き出し金具65の延在部66を上方の大きく開口する先端部63b側から容易に挿入して収容させる係合状態にすることができる。この状態では、引き出し金具65は、延在部66を受け金具61の受け部63で受け取って案内されつつ、筐体11の前面側開口11aに向かって近接・離隔する方向に自由に摺接移動することができ、フロントパネル21が筐体11の前面側開口11aを開閉する方向にスライドすることができる。一方、そのフロントパネル21が筐体11の前面側開口11aから延在部66の長さ程度に離隔したときには、引き出し金具65の直交部68は、受け金具61の受け部63の斜辺63a側に衝止されてそれ以上のスライドや上方への移動が制限される。また、引き出し金具65は、延在部66を開閉方向に対して直交する上方に移動させることで、受け金具61の受け部63の上部開口側から簡単に離脱させることができ、フロントパネル21を筐体11の前面側開口11aから容易に外すことができる。したがって、このような簡易構造でも、同様に、引き出し金具65が受け金具61から不用意に外れて、フロントパネル21が脱落してしまうことを回避することができる。
【0040】
以上、この発明の一実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、この発明は、筐体の前面側開口内に電源スイッチを配設するスタジオ単体機器に限らず、他のスイッチを配設する電子機器でもよく、また、単にフロントパネルを着脱可能に構築する電子機器にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、放送事業所のスタジオ内の棚内に設置するスタジオ単体機器に限らず、他の電子機器にも広く適用することができ、棚内に設置されることのない、単独で他の装置に搭載される電子機器や、独立して利用される電子機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 スタジオ単体機器
11 筐体(機器筐体)
11a 前面側開口
11c 側面(対向部の一方)
19、61 受け金具(筐体側部材)
21 フロントパネル
29、65 引き出し金具(パネル側部材)
31 固設部
32、52 対面部(案内部を構成する第1、第2の折曲部の一方、制限部)
32a 端辺(対向部の一方)
33 平行部(案内部を構成する第1、第2の折曲部の他方)
33a 内面(対向部の他方)
36、66 延在部
38、58、68 直交部(屈曲部)
63 受け部(案内部、制限部、対向部の一方)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側が開口する機器筐体に固設される筐体側部材と、前記機器筐体の前面側開口に着脱して該前面側開口を開閉するフロントパネルに固設されて当該開閉方向に延在した後に先端側で屈曲するパネル側部材との2部品からなり、
前記筐体側部材は、前記パネル側部材の延在部に係合して前記開閉方向への移動を案内する案内部と、前記フロントパネルが前記前面側開口から所定距離離隔するときに、前記パネル側部材の屈曲部の当該離隔方向への移動を制限する制限部とを備えて、
前記案内部は、上部が開口して、前記パネル側部材の前記延在部を上方から挿脱可能に収容して案内することを特徴とするフロントパネル脱落防止機構。
【請求項2】
前記筐体側部材の前記案内部は、前記機器筐体の前記前面側開口に向って見たときに、互いに対向する位置関係にあって上部が開口する一対の対向部を有しており、該対向部間の上部開口から前記パネル側部材の前記延在部を収容して案内する一方、該延在部を当該上部開口から挿脱させることを特徴とする請求項1記載のフロントパネル脱落防止機構。
【請求項3】
前記一対の対向部は、前記パネル側部材の前記延長部を収容して前記開閉方向に案内すると共に、少なくとも一方が前記パネル側部材の前記屈曲部に対面して衝止する前記制限部を兼ねることを特徴とする請求項2記載のフロントパネル脱落防止機構。
【請求項4】
前記筐体側部材及び前記パネル側部材は、それぞれ前記機器筐体の前記前面側開口内と前記フロントパネルの背面側の両側方に固設されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のフロントパネル脱落防止機構。
【請求項5】
前記筐体側部材は、板状材料からなり、
前記機器筐体の前記前面側開口内に固設される固設部と、該固設部に隣接する箇所を直角に折り曲げた第1の折曲部と、前記固設部と前記第1の折曲部の双方に隣接する箇所を直角に折り曲げて当該双方に対して平面方向が直交する第2の折曲部とを有して、
前記第1の折曲部及び第2の折曲部は、前記機器筐体の前記前面側開口に向って見たときに、一方の平面に対して他方の端辺が離隔するように作製されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1に記載のフロントパネル脱落防止機構。
【請求項6】
前記パネル側部材は、板状材料からなり、
前記延在部は、前記開閉方向に延在する長尺形状に形成される一方、
前記屈曲部は、前記延在部の一端側が直角に屈曲されて形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1に記載のフロントパネル脱落防止機構。
【請求項7】
前面側が開口する機器筐体と、該機器筐体の前面側開口に着脱して該前面側開口を開閉するフロントパネルと、前記機器筐体の前記前面側開口内に固設される筐体側部材と、前記フロントパネルに固設されて該フロントパネルの開閉方向に延在した後に先端側で屈曲するパネル側部材とを備えており、
前記筐体側部材は、前記パネル側部材の延在部に係合して前記開閉方向への移動を案内する案内部と、前記フロントパネルが前記前面側開口から所定距離離隔するときに、前記パネル側部材の屈曲部の当該離隔方向への移動を制限する制限部とを備えて、
前記案内部は、上部が開口して、前記パネル側部材の前記延在部を上方から挿脱可能に収容して案内することを特徴とするフロントパネルを備える電子機器。
【請求項8】
前記筐体側部材の前記案内部は、前記機器筐体の前記前面側開口に向って見たときに、互いに対向する位置関係にあって上部が開口する一対の対向部を有しており、該対向部間の上部開口から前記パネル側部材の前記延在部を収容して案内する一方、該延在部を当該上部開口から挿脱させることを特徴とする請求項7記載のフロントパネルを備える電子機器。
【請求項9】
前記一対の対向部は、前記パネル側部材の前記延長部を収容して前記開閉方向に案内すると共に、少なくとも一方が前記パネル側部材の前記屈曲部に対面して衝止する前記制限部を兼ねることを特徴とする請求項8記載のフロントパネルを備える電子機器。
【請求項10】
前記筐体側部材及び前記パネル側部材は、それぞれ前記機器筐体の前記前面側開口内と前記フロントパネルの背面側の両側方に固設されていることを特徴とする請求項7、8又は9記載のフロントパネルを備える電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−199102(P2010−199102A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38699(P2009−38699)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】