説明

フローセンサ及びフローセンサの製造方法

【課題】消費電力の低いフローセンサを提供する。
【解決手段】裏面に第1の凹部11が設けられ、第1の凹部11の上方の表面に第2の凹部12が設けられた基板1と、第2の凹部12を覆うように基板1の表面上に配置された膜2と、膜2の裏面に配置され、第2の凹部12に格納された、第1の測温素子32、発熱素子31、及び第2の測温素子33と、を備えるフローセンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計測技術に関し、特にフローセンサ及びフローセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業炉、ボイラ、及び空調熱源機器等においては、適切な流量の流体が供給されることが求められている。そのため、流量を正確に計測するための流量計に用いられるフローセンサが種々開発されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−133829号公報
【特許文献2】特開2009−92475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の環境意識の高まりに応じて、フローセンサの消費電力についても、削減されることが望まれている。そこで、本発明は、消費電力の低いフローセンサ及びフローセンサの製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、(a)裏面に第1の凹部が設けられ、第1の凹部の上方の表面に第2の凹部が設けられた基板と、(b)第2の凹部を覆うように基板の表面上に配置された膜と、(c)膜の裏面に配置され、第2の凹部に格納された、第1の測温素子、発熱素子、及び第2の測温素子と、を備えるフローセンサが提供される。
【0006】
また、本発明の態様によれば、(a)第1の基板の裏面に第1の凹部を形成し、第1の基板の第1の凹部の上方の表面に第2の凹部を形成することと、(b)第2の基板の裏面に、第1の測温素子、発熱素子、及び第2の測温素子を形成することと、(c)第2の凹部を覆うように第1の基板の表面上に第2の基板を配置し、第1の測温素子、発熱素子、及び第2の測温素子を第2の凹部に格納することと、(d)第2の基板の表面から厚みを減じ、膜とすること、を含むフローセンサの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消費電力の低いフローセンサ及びフローセンサの製造方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係るフローセンサの上面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る図1に示したフローセンサのII−II方向から見た断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る図1に示したフローセンサのIII−III方向から見た断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るフローセンサの工程上面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る図4のV−V方向から見たフローセンサの工程断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るフローセンサの工程上面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る図6のVII−VII方向から見たフローセンサの工程断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る図6のVII−VII方向から見たフローセンサの工程断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る図6のIX−IX方向から見たフローセンサの工程断面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るフローセンサの工程上面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る図10のXI−XI方向から見たフローセンサの工程断面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る図10のXII−XII方向から見たフローセンサの工程断面図である。
【図13】本発明の実施の形態に係るフローセンサの工程裏面図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る図13のXIV−XIV方向から見たフローセンサの工程断面図である。
【図15】本発明の実施の形態に係るフローセンサの工程裏面図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る図15のXVI−XVI方向から見たフローセンサの工程断面図である。
【図17】本発明の実施の形態に係るフローセンサの工程上面図である。
【図18】本発明の実施の形態に係る図17のXVIII−XVIII方向から見たフローセンサの工程断面図である。
【図19】本発明の実施の形態に係る図17のXIX−XIX方向から見たフローセンサの工程断面図である。
【図20】本発明の実施の形態に係るフローセンサの工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
図1乃至図3に示す実施の形態に係るフローセンサは、裏面に第1の凹部11が設けられ、第1の凹部11の上方の表面に第2の凹部12が設けられた基板1と、第2の凹部12を覆うように基板1の表面上に配置された膜2と、膜2の裏面に配置され、第2の凹部12に格納された、第1の測温素子32、発熱素子31、及び第2の測温素子33と、を備える。実施の形態に係るフローセンサは、例えば、流路を流れる流体の流速及び流量等を計測するために使用される。なお、流体は、気体であっても、液体であってもよい。
【0011】
図2及び図3に示す基板1の厚みは、例えば0.5mm程度である。また、基板1の縦横の寸法は、例えばそれぞれ2mm程度である。基板1の材料としては、石英(SiO2)、サファイア等の耐食性材料が使用可能である。例えば、第1の凹部11は第2の凹部12より深い。第2の凹部12の深さは、例えば10μm程度である。また、例えば、基板1の第1の凹部11の底面と、第2の凹部12の底面と、で挟まれた部分は、厚さ10μm程度の薄膜をなしている。
【0012】
膜2の厚みは、例えば10μm程度である。膜2の材料としては、石英(SiO2),サファイア等の耐食性材料が使用可能である。発熱素子31は、例えば抵抗器であり、電力を与えられて発熱し、膜2表面を流れる流体を加熱する。図2に示す第1の測温素子32及び第2の測温素子33は、例えば抵抗器等の受動素子等の電子素子であり、膜2表面を流れる流体の温度に依存した電気信号を出力する。第1の測温素子32は発熱素子31より例えば上流側の流体の温度を検出するために用いられ、第2の測温素子33は発熱素子31より例えば下流側の流体の温度を検出するために用いられる。発熱素子31、第1の測温素子32、及び第2の測温素子33のそれぞれの材料には白金(Pt)等の導電性材料が使用可能である。
【0013】
第1の測温素子32、発熱素子31、及び第2の測温素子33と、基板1の凹部12の底面と、の間には、幅10μm程度の空間が設けられている。
【0014】
図2に示す膜2表面に接する流体が静止している場合、発熱素子31から流体に加えられた熱は、上流方向と下流方向へ対称的に伝播する。したがって、第1の測温素子32及び第2の測温素子33の温度は等しくなり、白金等からなる第1の測温素子32及び第2の測温素子33の電気抵抗は等しくなる。これに対し、第1の測温素子32が配置された側から第2の測温素子33が配置された側に向かって流体に流れている場合、発熱素子31から流体に加えられた熱は、第2の測温素子33が配置された側に運ばれる。したがって、第1の測温素子32の温度よりも、第2の測温素子33の温度が高くなる。そのため、第1の測温素子32の電気抵抗と、第2の測温素子33の電気抵抗と、に差が生じる。第2の測温素子33の電気抵抗と、第1の測温素子32の電気抵抗と、の差は、膜2表面に接する流体の速度と相関する。そのため、第2の測温素子33の電気抵抗と、第1の測温素子32の電気抵抗と、の差から、膜2表面に接する流体の流量が求められる。
【0015】
図1及び図3に示すように、膜2の裏面には、電極41、42、43、51、52、53がさらに配置されている。電極41は発熱素子31の一方の端部に電気的に接続されており、電極51は発熱素子31の他方の端部に電気的に接続されている。電極42は第1の測温素子32の一方の端部に電気的に接続されており、電極52は第1の測温素子32の他方の端部に電気的に接続されている。電極43は第2の測温素子33の一方の端部に電気的に接続されており、電極53は第2の測温素子33の他方の端部に電気的に接続されている。基板1には、電極41、42、43を露出させるための配線用貫通孔13と、電極51、52、53を露出させるための配線用貫通孔14と、が設けられている。
【0016】
さらに、図1及び図2に示すように、フローセンサには、膜2の表面から基板1の第1の凹部11に貫通する流体連通孔21、22が、基板1の第2の凹部12に隣接して設けられている。これにより、膜2表面に加わる圧力と、第1の凹部11の底面に加わる圧力と、をほぼ等しくすることが可能となる。また、流体連通孔21、22のそれぞれの開口面積を適宜設定することにより、流体連通孔21から第1の凹部11内部に流入し、流体連通孔22から流出する流体の速度をほぼゼロにすることが可能となる。
【0017】
以上説明した実施の形態に係るフローセンサにおいては、図2に示すように、第1の測温素子32、発熱素子31、及び第2の測温素子33が基板1の第2の凹部12に格納されており、第1の測温素子32、発熱素子31、及び第2の測温素子33と、基板1の凹部12の底面と、の間に、空間が設けられている。空間は断熱効果を有するため、発熱素子31が発した熱が、測定対象である流体に接する膜2表面に効率よく伝播する。そのため、発熱素子31に加えられた電力が効率良く消費されるため、無駄な消費電力を削減することが可能となる。また、流体が発熱素子31で効率よく加熱されるため、第1の測温素子32及び第2の測温素子33による温度変化の検出時間を短縮することが可能となる。さらに、第1の測温素子32、発熱素子31、及び第2の測温素子33を第2の凹部12に格納することにより、第1の測温素子32、発熱素子31、及び第2の測温素子33が流体にさらされない。そのため、実施の形態に係るフローセンサは、SOx、NOx、Cl2、BCl3などを含有するガス(気体)や、硫酸や硝酸を含む薬液(液体)などの腐食性を有する流体の測定にも適応可能となる。
【0018】
次に、図4乃至図20を参照して、実施の形態に係るフローセンサの製造方法について説明する。
(a)まず、図4及び図5に示すように、平坦な第1の基板1を用意する。次に、図6及び図7に示すように、第1の基板1に、サンドブラスト加工法、超音波加工法、ドリル加工法、レーザー加工法、又はエッチング法等により、配線用貫通孔13、14を設ける。その後、図8及び図9に示すように、第1の基板1の裏面に、サンドブラスト加工法、超音波加工法、ドリル加工法、レーザー加工法、又はエッチング法等により、第1の凹部11を設ける。さらに、図10乃至図12に示すように、第1の基板1の表面に、エッチング加工等により、第2の凹部12を設ける。なお、配線用貫通孔13、14、第1の凹部11、及び第2の凹部12を設ける順序は任意である。
【0019】
(b)また、図13及び図14に示すように、平坦な第2の基板102を用意し、第2の基板の裏面に、スパッタリング法、真空蒸着法等の方法により、白金などの金属を付着させ、第1の測温素子32、発熱素子31、及び第2の測温素子33を形成(パターニング)する。次に、図15及び図16に示すように、第2の基板の裏面に、同様の方法により、電極41、42、43、51、52、53を形成(パターニング)する。なお、図14及び図16は、裏面を上側にして第2の基板102を描いている。
【0020】
(c)図10乃至図12に示した配線用貫通孔13、14、第1の凹部11、及び第2の凹部12が設けられた第1の基板1と、図15及び図16に示した第1の測温素子32、発熱素子31、第2の測温素子33、及び電極41、42、43、51、52、53が設けられた第2の基板102と、を、図17乃至図19に示すように、第1の測温素子32、発熱素子31、及び第2の測温素子33が第2の凹部12に格納され、電極41、42、43、51、52、53が配線用貫通孔13、14から露出するよう、常温活性化接合等の手法により接合する。
【0021】
(d)第2の基板102の厚みを、研削法、研磨法、又はエッチング法等により減じて、図20に示すように、膜2とする。その後、サンドブラスト加工法、超音波加工法、ドリル加工法、レーザー加工法、又はエッチング法等により、図2に示す基板1及び膜2を貫通する流体連通孔21、22を形成し、実施の形態に係るフローセンサの製造方法を終了する。なお、第2の基板102及び第1の基板1を貫通する流体連通孔21、22を形成後、第2の基板102の厚みを減じて、膜2としてもよい。
【0022】
以上説明した製造方法により、図1乃至図3に示した実施の形態に係るフローセンサを製造可能である。
【0023】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図2に示す第1の測温素子32、発熱素子31、及び第2の測温素子33と、基板1の凹部12の底面と、の間の空間を真空にしてもよい。これにより、空間の断熱効果をさらに向上させることが可能となる。また、上述した実施の形態では、3つの電極41、42、43に対して1つの配線用貫通孔13が設けられ、3つの電極51、52、53に対して1つの配線用貫通孔14が設けられる例を示したが、例えば6つの電極41、42、43、51、52、53のそれぞれに対して6つの配線用貫通孔を個別に設け、貫通電極をさらに形成してもよい。また、発熱素子31、第1の測温素子32、及び第2の測温素子33に対する電極41、42、43、51、52、53の配置、接続方法は、上述した実施の形態に限定されない。例えば、電42と、電極43と、は、配線により電気的に接続されていてもよい。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0024】
1 基板(第1の基板)
2 膜
11 第1の凹部
12 第2の凹部
13、14 配線用貫通孔
21、22 流体連通孔
31 発熱素子
32 第1の測温素子
33 第2の測温素子
41、42、43、51、52、53 電極
102 第2の基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に第1の凹部が設けられ、前記第1の凹部の上方の表面に第2の凹部が設けられた基板と、
前記第2の凹部を覆うように前記基板の表面上に配置された膜と、
前記膜の裏面に配置され、前記第2の凹部に格納された、第1の測温素子、発熱素子、及び第2の測温素子と、
を備えるフローセンサ。
【請求項2】
前記第2の凹部の底面と、前記第1の測温素子、前記発熱素子、及び前記第2の測温素子と、の間に空間が設けられている、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項3】
前記膜の表面から前記基板の第1の凹部に貫通する流体連通孔が、前記第2の凹部の隣に設けられている、請求項1又は2に記載のフローセンサ。
【請求項4】
前記第1の凹部が、前記第2の凹部より深い、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフローセンサ。
【請求項5】
前記基板の前記第1の凹部の底面と、前記第2の凹部の底面と、で挟まれた部分が、薄膜をなしていている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフローセンサ。
【請求項6】
前記第1の測温素子、前記発熱素子、及び前記第2の測温素子のそれぞれに接続された電極を更に備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のフローセンサ。
【請求項7】
前記電極を露出させる配線用貫通孔が前記基板に設けられている、請求項6に記載のフローセンサ。
【請求項8】
第1の基板の裏面に第1の凹部を形成し、前記第1の基板の前記第1の凹部の上方の表面に第2の凹部を形成することと、
第2の基板の裏面に、第1の測温素子、発熱素子、及び第2の測温素子を形成することと、
前記第2の凹部を覆うように前記第1の基板の表面上に前記第2の基板を配置し、前記第1の測温素子、前記発熱素子、及び前記第2の測温素子を前記第2の凹部に格納することと、
前記第2の基板の表面から厚みを減じ、膜とすること、
を含むフローセンサの製造方法。
【請求項9】
前記第2の凹部の底面と、前記第1の測温素子、前記発熱素子、及び前記第2の測温素子と、の間に空間が設けられるように、前記第1の測温素子、前記発熱素子、及び前記第2の測温素子を前記第2の凹部に格納する、請求項8に記載のフローセンサの製造方法。
【請求項10】
前記膜の表面から前記第1の基板の第1の凹部に貫通する流体連通孔を、前記第2の凹部の隣に形成することを更に含む、請求項8又は9に記載のフローセンサの製造方法。
【請求項11】
前記第1の凹部が、前記第2の凹部より深い、請求項8乃至10のいずれか1項に記載のフローセンサの製造方法。
【請求項12】
前記第1の基板の前記第1の凹部の底面と、前記第2の凹部の底面と、で挟まれた部分が、薄膜をなすよう、前記第1の凹部と、前記第2の凹部と、を形成する、請求項8乃至11のいずれか1項に記載のフローセンサの製造方法。
【請求項13】
前記第1の測温素子、前記発熱素子、及び前記第2の測温素子のそれぞれに接続された電極を形成することを更に含む、請求項8乃至12のいずれか1項に記載のフローセンサの製造方法。
【請求項14】
前記電極を露出させる配線用貫通孔を前記第1の基板に形成することをさらに含む、請求項13に記載のフローセンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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