説明

フロートガラスのための徐冷装置及び方法

【課題】ガラスリボンの底面とレアローラーとの間の摩擦を減らしてガラスリボンの表面で発生する欠陥を減らすために、レアハウジングの内部に亜硫酸ガスを供給する徐冷炉において亜硫酸ガスの外部への排出を防止する方法を提供する
【解決手段】フロート槽で成形されたガラスリボンGを連続的に徐冷させるためのフロートガラス徐冷装置100において、ガラスリボンGのための入口及び出口を有するレアハウジング130と、レアハウジング130の幅方向に回転自在に設けられた多数のレアローラー132と、レアハウジング130内部に供給される亜硫酸ガスの外部への排出を防止するためにレアハウジング130の側壁134とそれぞれのレアローラー132との間に設けられたラビリンスシール150と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロートガラスのための徐冷装置及び方法に関し、より詳しくは、フロートガラス法(float glass process)によって連続生産されるガラスリボンを徐冷させるための徐冷炉(annealing lehr)のレアローラー(lehr roller)の密封構造が改善されたフロートガラスのための徐冷装置及び方法に関する。
【0002】
本出願は、2010年5月31日出願の韓国特許出願第10−2010−0050872号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
一般に、フロートガラスの製造装置は、フロート槽(float bath)に貯蔵されて流動する溶融金属(溶融錫など)上に溶融ガラスを連続的に供給し、溶融金属上に溶融ガラスを浮遊した状態で進行させながら、一定幅及び厚さを有する帯(リボン)状のガラスリボンを成形し、フロート槽の出口に隣接した徐冷炉に向けて溶融ガラスリボンを引っ張ることで、フロートガラスを製造する装置である。
【0004】
ここで、溶融金属は、例えば、溶融錫または溶融錫合金を含んでおり、溶融ガラスより比重が大きく、還元性水素(H)及び/または窒素(N)ガスで充填されたフロートチャンバー(float chamber)内に収容されている。また、溶融金属を収容するフロート槽は特殊耐火材料が内蔵された、長さ方向に延びた構造になっている。溶融ガラスはフロート槽の上流側から下流側に向けて移動しながら、溶融金属の表面でガラスリボンとして成形され、フロート槽の下流側に設定された離隔位置(以下、テイクオフポイント(take off point)とする)で、ドロスボックス(dross box)に設けられたリフト‐アウトローラー(lift−out roller)によって溶融金属から離されて引き上げられ、ドロスボックスを通って次の工程の徐冷炉に向けて送られる。一方、所定幅の連続したガラスリボンが所定大きさで切断されたものを「ガラスシート」という。
【0005】
フロート槽内部の揮発錫を含有するガスは、フロート槽内部の陽圧によってフロート槽の下流側、すなわち、ドロスボックス方向に流れる。このようにドロスボックス側に流れるガスは、ドロスボックスの付近及びフロート槽の下流側内部の低い温度区域で凝縮し、移動するガラスの表面及び溶融錫の表面に不良を発生させる(通常、780℃以下でドロスが発生する)。また、フロート槽の内部が陽圧状態に保持されても、錫を含有するガスはドロスボックスからフロート槽の下流側に流入され得る。この過程で外部空気に含有された酸素が相対的に低い温度区域でフロート槽内部の揮発錫と反応して凝縮すれば、錫由来の浮遊性異物が錫表面に発生する。すると、リフト‐アウトローラーによってリボン状のガラスが引き上げられてフロート槽の外部へ引き出される過程で、溶融錫の表面に付いていた錫由来の浮遊性異物が移動し、外部へ引き出されるガラスリボンの底面に沿ってともに引き出されることで、ドロスボックス及び徐冷工程ローラーの表面を汚染させるだけでなく、フロート槽及び徐冷工程を経るガラス底面の異物発生の潜在的な原因になる。これにより、作業安全性が低下し、生産される最終的なガラス製品の品質及び工程安定性が低下するという問題が生じた。
【0006】
また、従来のフロートガラスの製造装置では、徐冷炉内部に亜硫酸ガスが供給される。このような亜硫酸ガスは、ガラスリボンの底面とレアローラーとの間の摩擦を減らして生産されるガラス製品の欠陥を防止するためのものである。しかし、レアローラーとレアローラーが設けられた徐冷炉の筐体との間の空間が広過ぎ、このような空間から亜硫酸ガスが漏れて人体に被害を及ぼす危険が存在した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、徐冷炉のレアハウジングの密封構造が改善されたフロートガラス徐冷装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するため、本発明によるフロートガラス徐冷装置は、フロート槽で成形されたガラスリボンを連続的に徐冷させるためのフロートガラス徐冷装置において、前記ガラスリボンのための入口及び出口を有するレアハウジングと、前記レアハウジングの幅方向に回転自在に設けられた多数のレアローラーと、前記レアハウジングの内部に供給される亜硫酸ガスの外部への排出を防止するために、前記レアハウジングの側壁とそれぞれの前記レアローラーとの間に設けられたラビリンスシール(labyrinth seal)と、を備える。
【0009】
望ましくは、前記フロートガラス徐冷装置は、前記ラビリンスシールを通って排出される亜硫酸ガスを捕集するために前記ラビリンスシールに設けられた捕集ノズルをさらに備える。
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明によるフロートガラス徐冷方法は、フロート槽で成形されたガラスリボンをレアローラーが設けられたレアハウジングの内部で徐冷させる方法において、前記ガラスリボンの底面と前記レアローラーとの間の摩擦を減らして前記ガラスリボンの表面で発生する欠陥を減らすために、前記レアハウジングの内部に亜硫酸ガスを供給する段階と、前記レアハウジングの内部に供給された亜硫酸ガスが前記レアローラーと前記レアハウジングとの間の隙間から排出されるとき、前記レアローラーの外周面に設けられたラビリンスシールを介してシールする段階と、を含む。
【0011】
望ましくは、前記フロートガラス徐冷方法は前記ラビリンスシールによってシールされた前記亜硫酸ガスを捕集する段階をさらに含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフロートガラス徐冷装置及び方法によれば、レアローラーとハウジングとの間にラビリンスシールを適用することで漏出され得るガスの捕集設備を設け、レアハウジング内の亜硫酸ガスが作業場に漏出することを最小化させ、亜硫酸ガスの絶対使用量を減少させて環境汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図1】本発明の望ましい実施例によるフロートガラスの製造装置を示した概略側面図である。
【図2】図1のフロートガラス徐冷装置を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例によるフロートガラス徐冷装置及び方法を詳しく説明する。
【0015】
本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0016】
図1は本発明の望ましい実施例によるフロートガラスの製造装置を示した概略側面図であり、図2は図1のフロートガラス徐冷装置を示した概略断面図である。
【0017】
図1及び図2を参照すれば、本実施例によるフロートガラス徐冷装置100は、フロート槽110で成形されたガラスリボンGを引き出すためのドロスボックス120に隣接して設けられ、多数のレアローラー132が設けられたレアハウジング130を備える。
【0018】
フロート槽110は、溶融錫、溶融錫合金などの溶融金属Mを貯蔵する。このような溶融金属Mは、フロート槽110の上流側(図面の左側)から供給されて下流側(図面の右側)に移動する。この過程で、リボン状のガラスリボンが成形される。また、溶融金属Mはフロート槽110内部の温度勾配によって比較的高温に保持されるフロート槽110の上流側から下流側に流動すると同時に、フロート槽110の中心から両側面に流動する。溶融ガラスGは上流側から下流側に向けて移動した後、テイクオフポイントTOで溶融金属Mの浴面から離れてフロートチャンバーの天井側に引き上げられ、次の工程のドロスボックス120に向けて引き出される。
【0019】
前記フロート槽110内の雰囲気は窒素と水素との混合気体からなる。このような混合気体は外部大気より少し高い圧力で維持される。溶融金属M及びリボン状の溶融ガラスGは、電気ヒーター(図示せず)によって約800から1300℃程度に保持される。溶融ガラスGは無アルカリガラスまたはソーダ石灰ガラスなどである。フロート槽110の内部における溶融金属Mの流動発生原理と構造、及び溶融ガラスGの投入、リボン化、移動及び排出などは一般的なフロートガラス法で公知されているため、本実施例ではその詳細な説明を省く。
【0020】
ドロスボックス120は、フロート槽110の下流側終端に隣接して配置される。ドロスボックス120の内部には、3つのリフト‐アウトローラー122が配置される。このようなリフト‐アウトローラー122は、フロート槽110の上流側から供給されてフロート槽110の下流側に向けて溶融金属Mの表面上で移動する溶融ガラスGを、下流側に設定された離隔位置で溶融金属から引き上げてドロスボックス120の出口側に配置されたレアハウジング130に供給するためのものである。リフト‐アウトローラー122は図示されていないそれぞれのモーターによって所定速度で回転され、それぞれのリフト‐アウトローラー122は溶融ガラスGを引き出しやすくなるように、相互異なる水平位置で離隔して配置される。
【0021】
レアハウジング130は、フロート槽110で成形されて連続的に供給されるガラスリボンGを徐冷させるためのものであり、ガラスリボンGが供給される入口131と冷却されたガラスリボンGを排出するための出口133を有し、その内部は密閉された構造である。レアハウジング130の幅方向に多数のレアローラー132が設けられる。また、レアハウジング130の内部はパイプまたはホース状の亜硫酸ガス供給部材140によって亜硫酸ガスが充填される。それぞれのレアローラー132の回転軸136の両終端は密閉されたレアハウジング130の側壁134を貫通し、軸受135を介してフレームに支持されて回転する。ここで、レアローラー132は図示されていないモーターなどのような駆動源によって回転することが望ましい。
【0022】
レアハウジング130の側壁134とレアローラー132の回転軸136との間にはラビリンスシール150が設けられる。ラビリンスシール150は、レアハウジング130内部に供給される亜硫酸ガスがレアハウジング130の外部へ排出されることを防止するためのものである。ラビリンスシール150は流体の移動距離を細密且つ複雑に拡張形成することで流体の直接的漏出を防止するための構造であって、本実施例ではレアローラー132の回転軸136に平行に設けられた凹凸構造を有するラビリンス型の流路152を採用する。レアハウジング130の側壁134に隣接したラビリンスシール150の第1面154には第1O‐リング155が設けられ、レアローラー132の回転軸136に面するラビリンスシール150の第2面156には第2O‐リング157を設けることもできる。なお、レアハウジング130は特に言及されない限り、一般的なフロート工程の「徐冷炉」を意味する。
【0023】
本発明の変形された実施例において、ラビリンスシール150に形成された流路152はシール本体151を貫通する如何なる流路をも含み得、現在周知されているか又は今後周知される如何なるラビリンス流路構造をも採用し得る。
【0024】
本実施例によれば、本発明によるフロートガラス徐冷装置100において、ラビリンスシール150は、レアハウジング130の側壁134の開口から排出され得る亜硫酸ガスがラビリンスシール150の流路152を通過するとき、その漏出速度を低下させるか又は封鎖して捕集し、捕集された亜硫酸ガスを別の貯蔵所(図示せず)に貯蔵するための捕集ノズル160をさらに備える。捕集ノズル160には、ラビリンスシール150の流路152に連通され、選択的に開閉可能な栓(図示せず)を設けることができる。また、捕集ノズル160は、別の経路(図示せず)に連通されて貯蔵所と連結される構造であり得る。図2にはレアハウジング130の一側端のみを示したが、レアローラー132の両端にラビリンスシール150が設けられることは当業者にとっては自明である。さらに、ラビリンスシール150はシール本体151を貫通して捕集ノズル160と流路152とを連通させる連結流路153を備える。
【0025】
以下、本発明の望ましい実施例によるフロートガラス製造方法を説明する。
【0026】
まず、フロート槽110で成形されたフロートガラスリボンGはレアローラー132が設けられたレアハウジング130に移動する。この過程で、レアハウジング130の下部に設けられた亜硫酸ガス供給部材140を通じて亜硫酸ガスが供給される。このような亜硫酸ガスは、フロートガラスリボンGの底面とレアローラー132との間の摩擦を減らし、フロートガラスリボンGの表面で発生する欠陥を減らすためのものである。
【0027】
レアハウジング130の内部に供給された亜硫酸ガスは、レアローラー132とレアハウジング130の側壁134との間の隙間から排出され得るが、このように排出される亜硫酸ガスはレアローラー132の外周面に設けられたラビリンスシール150によって密封されることで、外部へ自由に排出されることが防止される。
【0028】
また、ラビリンスシール150によって密封され、シール本体151の流路152を通って漏れる亜硫酸ガスは、捕集ノズル160により捕集されて貯蔵所(図示せず)に送られる。
【0029】
本発明の変形された実施例によれば、ラビリンスシール150をドロスボックス120に設けられたリフト‐アウトローラー122とドロスボックスの外壁との間に設けることもできる。
【0030】
以上、本発明を限定された実施例と図面に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロート槽で成形されたガラスリボンを連続的に徐冷させるためのフロートガラス徐冷装置において、
前記ガラスリボンの入口及び前記ガラスリボンの出口を有するレアハウジングと、
前記レアハウジングの幅方向に回転自在に設けられた複数のレアローラーと、
前記レアハウジング内部に供給される亜硫酸ガスの外部への排出を防止するために、前記レアハウジングの側壁と前記複数のレアローラーのそれぞれとの間に設けられたラビリンスシールと
を備えることを特徴とするフロートガラス徐冷装置。
【請求項2】
前記ラビリンスシールを通って排出される亜硫酸ガスを捕集するために、前記ラビリンスシールに設けられた捕集ノズルをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のフロートガラス徐冷装置。
【請求項3】
フロート槽で成形されたガラスリボンをレアローラーが設けられたレアハウジングの内部で徐冷させるフロートガラス徐冷方法において、
前記ガラスリボンの底面と前記レアローラーとの間の摩擦を減らして前記ガラスリボンの表面で発生する欠陥を減らすために、前記レアハウジングの内部に亜硫酸ガスを供給する段階と、
前記レアハウジングの内部に供給され、前記レアローラーと前記レアハウジングとの間の隙間から排出された亜硫酸ガスを、前記レアローラーの外周面に設けられたラビリンスシールを介してシールする段階と
を含むことを特徴とするフロートガラス徐冷方法。
【請求項4】
前記ラビリンスシールによってシールされた前記亜硫酸ガスを捕集する段階をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のフロートガラス徐冷方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のフロートガラス徐冷方法によって製造されたフロートガラス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−251893(P2011−251893A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122340(P2011−122340)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】