説明

フロー加熱器

フロー加熱器は、発熱素子(48;248)と、中を流れる液体を沸点未満の第1の温度まで加熱するための、発熱素子(48;248)によって加熱される第1の加熱領域(18、20;218、220)とを含む。フロー加熱器は、液体を沸点未満の第2の温度まで加熱するための第2の加熱領域(22;222)も含む。第2の領域(22;222)は、加熱された液体とは別に蒸気が出ていくのを許容する手段(25;225)を有する。フロー加熱器は、第2の領域(22;222)で液体のバルク沸騰が起こるようには動作できない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水などの液体を加熱するためのフロー加熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭で消費するための湯または沸騰水を提供するいくつもの方法が知られている。従来は、例えば熱い飲み物を作るためのある量の水を沸騰させるために電気ケトルまたは電気ポットが用いられている。
【0003】
最近になって、少量の湯を直ちに提供することを約束する製品が販売されている。これらは、まとまった量の水を一括して加熱するのではなく、片側に厚膜プリント素子を備えた狭い通路を水が通過するときにその水を加熱するフロー加熱器に基づいている。しかしながら、このような技術には重大な欠点がある。そのうちの1つは、発熱素子が過熱する危険性が従来のバッチ式加熱器よりも高く、それによって水を加熱できる効率が限定されることである。
【0004】
従来のケトルで水を沸騰させる際、水のバルク(bulk)は実質的に同じ温度であり、その温度は加熱が進むにつれて徐々に上昇する。加熱される表面に近い境界層だけが、著しくより高温になる。熱は、伝導によって被加熱表面から境界層へ伝達され、少なくとも最初は対流によって境界層からバルクへ伝達される。表面温度の高い加熱器においては、境界層の水は、バルク水が比較的低温のうちに100℃に達して沸騰し得る。蒸気の泡は、最初のうちは、より低温のバルク水との接触により凝縮し、崩壊する。
【0005】
加熱が続くと、蒸気の泡は、周囲の水よりも軽いため、加熱器表面から浮かび上がってくる。泡は、浮かび上がってくるときに、より低温の周囲の水へ熱を伝導し、その結果起こる凝縮が最終的にそれらの泡を崩壊させる。しかしながら、水のバルクが沸騰温度に近づくと、浮かび上がってくる泡の十分な凝縮を起こさせなくなり、これらの泡は表面へと浮かび上がり、逃げ出す。このことが、水が沸騰していることを示すと一般に考えられている。実際には、バルク水温度はこの段階では完全には100℃ではない。従来、家庭用のポットおよびケトルは、液体のバルク水が100℃に極めて近い温度に均一に達することを可能にする「ぐらぐら沸き立つ状態」を数秒間維持する。だが、完全にそこまで到達することはなく、しかも、実際の沸点は大気圧および水中に溶解している物質の存在などの他の要因によって左右される。
【0006】
フロー加熱器は、それに比べると、要求に応じて水を加熱することと、所要量の水を提供するのに必要な間のみ動作させることとが可能であるという利点を有する。しかしながら、消費者は、事実上瞬時、つまり確かに数秒以下であるように思われる起動時間を期待する。小型の家庭用製品に関しては、電力量は、壁のコンセントから利用可能な電力量によって定められ(典型的には1500W〜3000W)、増やすことができない。定常状態条件下では、水の流量は熱力学の基本法則によって加熱器出力電力に合わせられる(3kWの加熱器については、およそ0.5リットル/分から1リットル/分までの流量によって沸点付近から約65℃までの温度範囲の水が提供される)。加熱器の種類と熱交換機構はほとんど影響しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
起動が非常に早いフロー加熱器を設計する場合、加熱器自体の熱質量とそれが加熱されなければならない温度とを最小化することが重要である。水と加熱器との接触面積を最大化することも重要である。これらの要件は、最近の先行技術においては、中間電気絶縁層を介してステンレス鋼製熱交換器に固着された厚膜加熱器を用いることによって対応されている。この熱交換器は、接触面積を最大化させるために、加熱器に対向する複雑な室(chamber)を備えるように設計されている。しかしながら、本出願人は、加熱器表面の上の水流の分布に配慮しなければならないことに気付いた。該表面と接触する水のいずれかの部分を停滞させると、その部分はすぐに沸騰し、蒸気のポケットを生じさせる。蒸気のポケットは、もはや素子表面を冷却しなくなる。この影響により、該表面が急速に局所加熱され、通常は加熱器トラックと加熱器基板表面との間の絶縁に不具合が生じる。したがって、これを回避するために、水を曲がりくねった狭い流路を流れさせて、停滞箇所を回避する。
【0008】
本出願人は、狭い水流路の使用に別の問題が生じることも分かった。水が加熱器の端に近づくと、最高温度、例えば85℃になる。水流路は、小さいが、それでもなお境界層とバルク水流路とからなり、しばしば境界層の水が沸騰して蒸気の泡を生じさせる。この構成においては、蒸気の泡は、非常に小さい流路内に現れるため伝導および凝縮によって熱を伝達できない。これは、その表面領域を周囲の水にさらすことができないためである。その代わり、膨張する泡はその前方にある残りの水を単に押しのける。流路に沿った通り道の例えば80%においてこの泡が発生すると、実際に流路の最後の20%にある水のすべてを激しく噴出させることが分かる。使用者の視点からの「噴き出し(spitting)」という望ましくない影響に加えて、加熱器の端部においてそれを覆う水が欠乏することは、しばしば早すぎる素子故障を招き得る。
【0009】
局所的な高温点と噴き出しの問題は、加熱時間を最小限に抑えるために必要である、加熱器表面積と液体体積との比を最大化するためにフロー加熱器の設計を最適化できる程度に制約を加える。さらに、過熱防止のために素子温度を適切に感知する必要があることも、加熱器の設計に支障をきたす。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の局面から見ると、本発明は、発熱素子と、中を流れる液体を沸点未満の第1の温度まで加熱するための、上記発熱素子によって加熱される第1の加熱領域と、上記液体を沸点未満の第2の温度まで加熱するための第2の加熱領域とを含み、該第2の領域は加熱された液体とは別に蒸気が出ていくのを許容する手段を有するフロー加熱器であって、上記第2の領域で上記液体のバルク沸騰(bulk boiling)が起こるようには動作できないフロー加熱器を提供する。
【0011】
第2の局面から見ると、本発明は、中の液体を沸点未満の第1の温度まで加熱するための被加熱流導管(heated flow conduit)と、上記液体を沸点未満の第2の温度まで加熱するための最終加熱室とを含むフロー加熱器であって、上記加熱室が蒸気を液体表面から逃がすための空間を液体表面上方に含み、上記最終加熱室で上記液体のバルク沸騰が起こるようには動作できないフロー加熱器を提供する。
【0012】
本出願に関しては、フロー加熱器を、加熱器の内外を液体が流れている間にその液体を加熱することが可能なものと定義する。
【0013】
当業者には、本発明によると、フロー加熱器が、蒸気が加熱された水を追い出すことなく水の表面から出ることを可能にする第2の加熱領域または最終加熱室を備えること、すなわち、噴き出しの現象が低減または回避されることが分かるであろう。また、蒸気が出ることが容易であることによって、加熱器表面が水に浸ったままとなり、よって局所的な高温点(hot spot)を回避することが可能になる。上記に説明したように、たとえ第2の加熱領域が液体のバルク温度(bulk temperature)を沸点までは上昇させないとしても、バルク温度が上がるため、加熱器表面では局所的な蒸気の発生につながるミクロ沸騰(micro-boiling)が起こりやすい。
【0014】
標準のフロー加熱器は、使用時に流れの方向に沿って温度勾配が存在しているものと考えることができる。本発明は、加熱された水を作ることを可能にするが、第2の領域内の水だけが最終温度に達し、ケトルまたはその他の「バッチ式」加熱器の場合のように加熱器の内容物全体をその温度まで加熱する必要がない。例えば、20℃の低温水を第1の領域で80℃まで予め加熱すると、50℃の平均温度にしかならない。
【0015】
本発明によると、第2の加熱領域または最終加熱室は、水が第1の領域(例えば、第1の領域は従来のフロー加熱器に類似したものである)から出て行く温度から、より高いがバルク沸騰には至らない温度まで、水を加熱し続ける。このために別個の加熱器を設けてもよい。しかしながら、一組の好適な実施形態によると、第2の加熱領域または最終加熱室の中まで延びる単一の加熱器が設けられる。
【0016】
以下では第1の加熱領域と第2の加熱領域のそれぞれについてのみ言及する。しかしながら、これらの言及は、本発明の第2の局面により記載される被加熱流導管と最終加熱室のそれぞれにも等しく当てはまることが理解されなければならない。これら後者2つの用語を省略するのは単に簡潔化のためであり、他の結論が引き出されるべきではない。
【0017】
第1および第2の加熱領域間の移行の形態は本発明にとって本質的であるとは考えられず、いくつかの可能性が想定される。例えば、第1の加熱領域がその下流端において徐々に広がり、第2の加熱領域を形成してもよい。このような場合、第1および第2の加熱領域間の移行点は比較的任意に定義され得る。例えば、この移行は、加熱されている液体が流れる流路の寸法によって定義されてもよく、この流路の断面が拡大し始める点や、十分に拡大したときや、途中の点などである。あるいは、線流速度による定義を想定してもよく、例えば、線流速度が第1の領域における速度の半分まで低下した所である。機能的には、移行が起こるのは、蒸気の泡が残りの液体を押しのけることなく液体表面から出ることが可能になる時である。
【0018】
第1の領域においては、制御されるパラメータは水の速度であり(良好な熱伝達と速い速度および許容可能な水圧低下とのバランスをとる)、第2の領域においては、制御されるパラメータは水位であって、確実に加熱器が覆われるようにすることによる熱伝達と、確実に水位が可能な限り低くなるようにすることによる水量の最小化とのバランスをとる。第1および第2の領域において水量を最小化することにより、最短起動時間が維持される。
【0019】
本発明の第2の局面によると、被加熱流導管は、いくつもの方法で加熱され得る。一組の実施形態においては、本発明の第1の局面によるのと同様に、被加熱流導管は中の液体を加熱するための電気発熱素子を備える。しかしながら、このことは必須ではない。代わりに、例えば、より高温の液体または気体が一方の側を通過する熱交換器の他方の側によって提供されてもよい。
【0020】
第1の領域、または被加熱流導管が発熱素子を備える場合は被加熱流導管のための発熱素子は、任意の便利な形態を有し得る。一組の実施形態において、発熱素子は、第1の加熱領域を形成する流路または導管の外側に設けられる。該素子は、いわゆる厚膜プリント素子(thick film printed element)の形態をとってもよい。このような素子は、従来はプレーナ型(planar)であるが、非プレーナ型基板(non-planar substrate)で製造してもよい。あるいは、家庭用ケトル用のいわゆる床下加熱器に一般に見られるような中間の金属製熱拡散板を備えるかまたは備えない被覆抵抗発熱素子(sheathed resistance heating element)を含み得る。素子が流路の外側にあることの利点は、製造が比較的容易であることと、流路内に水が無い状態で素子が通電された場合に素子をオフにするために過熱保護を素子と熱的に密接させて設けることが可能になることである。
【0021】
別の一組の実施形態において、第1の加熱領域を形成する流路または導管内に浸漬素子が設けられる。したがって、好適な実施形態において、第1の加熱領域は、液体を加熱するための被覆発熱素子(sheathed heating element)が内部に配設された、液体を搬送するための流路を含む。この素子は、一組の好適な実施形態においては液体が素子の周囲全面にわたって素子と接触するように流路内部に配設されるが、流路の壁にまたは壁と接触して取り付けられてもよい。一組の好適な実施形態において、第1の加熱領域は、発熱素子の周りに好ましくは管状の被覆(tubular jacket)を、素子と該被覆との間を液体が流れることが可能なように含む。このことは、液体と加熱器表面との間で大きな表面接触面積を得るのに有益であり、また、1つの泡が流路の断面全体を占めることができないため、たとえ泡が形成されたとしても噴き出しの発生しやすさを最小化するのにも役立つ。通常動作時、すなわちバルク水温度が85℃または90℃を超えない状態では、泡が形成されると、残りの流れにおける水の速度が速くなり、熱伝達が向上し、泡が周囲方向に成長する可能性が最小化される。
【0022】
被覆は、発熱素子と輪郭形状が一致していてもよい(例えば、発熱素子の断面が円形である場合は断面が円形である)が、このことは必須ではない。素子とその周りの液体とを収容するために内部に流路が画定されたブロックの形態であってもよい。
【0023】
被覆(jacket)には任意の適切な材料が用いられ得る。一組の好適な実施形態において、被覆は、ステンレス鋼を含む。このことによって、加熱器全体の頑丈さが得られ、特に、例えば液体と接触せずに動作させられることによる過熱に対して耐性を有することが確実になる。被覆は、理想的には熱質量が低くなければならず、つまり、ステンレス鋼製の被覆の場合には、好適な実施形態において、比較的薄くなければならない。ステンレス鋼製または他の金属製の被覆が設けられる場合、被覆の厚さは0.7mm未満であることが好ましく、約0.4〜0.6mmであることがより好ましい。本出願人は、当該技術分野において一般的な知識に反して、実際は、上記に概略を述べたような薄いステンレス鋼製被覆(stainless steel jacket)を備えた標準の被覆浸漬素子(sheathed immersed element)(例えば、35W/cm2で動作する直径6.6mmのもの)は、実際には典型的な対応する厚膜発熱素子構成よりも熱質量が低いことを見出した。
【0024】
発熱素子の断面は円形であることが好ましい。流路または被覆(jacket)(または少なくともその内壁)の断面は円形であることが好ましい。発熱素子の断面が円形でない場合、被覆または流路の断面(または少なくともその内壁)は同じ形状であることが好ましい。
【0025】
本発明によりフロー加熱器の動作を適切に制御可能なことが重要である。このことの一局面は、加熱器が誤って液体なしで動作したときに加熱器の深刻な過熱を防止することである。当然ながら、これを実施し得るいくつもの方法がある。第2の領域に過熱保護が設けられていることが有利である。これは、流路内に配設され液体に囲まれた被覆発熱素子を含むフロー加熱器に空の状態でスイッチが入れられることによる過熱に対する保護を設けることの根本的な問題、つまり、流路の存在がセンサを素子と良好に熱接触させて設置することを物理的に妨げることに対処するものである。特に便利な実施形態においては、被覆浸漬発熱素子(sheathed immersed heating element)が使用され、その一部が金属製の「ヘッド」プレートに固着されて、従来の浸漬ケトル素子に関してよく知られているのと全く同じ方法でホットリターン(hot return)を形成する。このことの利点は、従来の浸漬素子用制御装置、例えば本出願人の非常に評判が良く成功しているR7シリーズの制御装置を、素子の一次的および二次的な過熱保護の両方を得るために用いることが可能になることである。このような制御装置の詳細はGB−A−2181598に記載されている。さらに好ましくは、このような制御装置は、直接または間接的に素子への電気接触を提供するためにも用いられる。
【0026】
熱センサは、例えば、サーミスタや熱電対などの電子センサであってもよく、形状記憶金属アクチュエータやバイメタルアクチュエータのような熱機械センサであってもよい。熱センサは、直接に物理的に接触していてもよいが、上記良好な熱接触は、第2の領域の熱伝導性を有する壁を介して達成されることが好ましい。例えば前述の従来のヘッドとホットリターンとによる構成である。
【0027】
素子の、熱センサと良好に熱接触する部分は、素子の残りの被加熱部分よりも高い位置にあることが好ましい。
【0028】
さらにまたはもしくは、加熱器内の液体または加熱器から出て行く液体の温度を計測することが望ましい場合がある。このことは、例えば、過熱の検出に役立ったり、加熱器を通過する水の流量を制御するためにフィードバック制御システムの一部として用いられたりし得る。加熱された水が要求される場合、加熱器の正確な能力、設けられているポンプの性能、供給電圧、および流入する周囲の水の温度によって最適な流量が決定されるため、流量を制御できることは有利である。これらの要因のうちの最初の2つは製造公差の影響を受けやすく、後の2つは使用時に変動し得る。
【0029】
一組の好適な実施形態においては、加熱器によって供給される液体の温度を制御するための手段が設けられる。本出願人は、液体の出力温度が加熱器の能力および流量の両方の関数であることが分かった。したがって、これらの2つのパラメータのどちらかを変化させればよい。一組の実施形態において、温度を制御するための手段は、加熱器を流れる液体の流量を変更するための手段を含む。例えば、典型的な3キロワットの発熱素子に関して、本出願人は、加熱器を流れる流量が1分当たり約590mlである場合、水を約90℃で供給できる(約17℃から始めるとすると)ことを見出した。流量を1分当たり1000mlまで増加させた場合、水は約60℃の温度で供給される。
【0030】
液体が流れ始める(例えば、ポンプの起動または弁の開放によって)のは、発熱素子の通電直後であってもよい。しかしながら、好適な実施形態においては、加熱器は、発熱素子の通電に対して遅延間隔を置いてから水を流れ始めさせるように構成される。本出願人は、意図的な遅延を導入することによって、液体の実質的にすべてが所望の温度で注出されること、すなわち、注出動作の開始時に最初に低温の液体が出てくるという事が起こらないことを確実にできることが分かった。この遅延は、一定であってもよいが、好ましくは、加熱器内に存在する液体の温度の関数として決定され、それにより、加熱器内の液体が温かければ、遅延が場合によってはゼロ(遅延なし)またはそれどころかマイナス(すなわち、例えば、システムが短い「休止」時間の後に再始動される場合であって、かつ、より低い所望温度が選択された場合、ポンプは加熱器よりも先に始動され得る)まで短縮されるようにする。
【0031】
同様に、発熱素子をオフにするのと同時に流れを止めてもよいが、一組の好適な実施形態においては、流れを止めるよりも先に発熱素子をオフにする。このことによって、素子および他の構成要素に蓄積された熱が部分的に回収されて水を加熱する。これは、よりエネルギー効率が優れているだけでなく、その後により低温の液体を注出するために加熱器をより早く使用できることを意味している。
【0032】
液体が注出される時間は、一定であってもよく、無期限、例えば、使用者がボタンを押している間中ずっとであってもよい。一組の好適な実施形態においては、液体は、使用者によって予め設定された時間にわたって注出される。この時間は、直接に設定されてもよいが、注出量制御装置を用いて設定されることが好ましく、その場合は、注出時間も流量の関数となり、そしてこれは、先に説明したような注出温度の関数となるかもしれない。液体が所定時間にわたって注出されることは、上記で概略を述べたように蓄積された熱を回収するために注出動作の終わりにかけて発熱素子の温度を下げるかまたは切ることを可能にするのに有益である。
【0033】
本出願人は、液体が加熱される温度が高い場合は、第2の領域の液体が乱流となって多くの蒸気の泡を含み得るため、液体の温度を正確に計測することが非常に難しく、そのため、サーミスタのようなポイント温度センサでは得られる結果が不正確で変動の大きいものになりがちであることが分かった。しかしながら、本出願人は、液体の出力温度のはるかに正確で安定した測定を可能にする構成を考案した。
【0034】
本発明の好適な実施形態によると、液体の出力温度を測定するために、温度感知手段が第1の加熱領域に設けられる。このため、これらの実施形態によると、液体の温度の計測は、液体の実際の出力温度を計測するのではなく、液体が最終的に注出される場所の上流で行われる。このことは、本出願人が第1の加熱領域内の既知の箇所における液体の温度と出力温度との間に強い相関関係があることに気付いたことによる。計測点の下流側の液体容量と発熱素子の加熱能力との両方が既知であるとすると、出力温度を計算することができる。第1の領域内で温度を計測することの利点は、その領域内では液体の流れの乱れがより少ないため、はるかに正確な温度計測を行うことができることである。
【0035】
第2の領域における水の温度の正確な知識(例えば、第1の領域における温度を計測することによって得られた)は、いくつもの方法で装置の制御を可能にするのに有益である。まず、当然ながら、水の出力温度を変化させることを可能にする。しかしながら、装置の以前の動作によって生じた非平衡状態を考慮に入れることも可能にする。例えば、装置が高温の水を注出するために用いられていて、その後で使用者がより低温の水を要求した場合は、液体を加熱器の通電よりも先に流れ始めさせてもよいし、それどころか、液体が冷めた程度によっては加熱器を通電させる必要がない場合すらある。
【0036】
第1の領域において温度を計測する場合、本出願人は、状況によっては流路または導管の長手方向軸の周りの旋回流成分を促すことが望ましいことに気付いた。これは、そのことによってより信頼性の高い一箇所での温度計測が確実になるためである。コスト上の理由から、多数のセンサを必要とするよりも温度を計測できる方が好ましい。一組の実施形態においては、流路内部の液体の混合を促進する所望の旋回を提供し、ひいてはより均一な温度分布を得るために、第1の領域を含む流路または導管は、流路または導管の中心軸からずれた方向に沿って液体を導入するように構成された導入口を含む。例えば、導入口は、流れの接線成分を有する液体を導入するように構成されていてもよい。
【0037】
別の、互いに相容れないものではない、一組の実施形態においては、第1の領域内の流路または導管が、旋回流を促進するように構成される。これを達成し得る考えられる方法は多くある。このような実施形態のうちの一部においては、流路の1つまたは複数の壁の内部表面に螺旋状の構成要素が設けられる。例えば、この表面に、旋回流を促すリブ、溝、またはその他の凸部もしくは凹部のパターンが設けられてもよい。この構成要素は、内部表面の周囲の一部に延びていても全面に延びていてもよく、かつ、流路の長さの全体に延びていても一部に延びていてもよい。この構成要素は、連続している必要はなく、一連の隆起部または他の凸部を含み得る。
【0038】
流路が、その内部に浸漬素子を備える場合は、螺旋状の構成要素を当該素子の外側表面に追加的にまたは代替的に設けてもよい。別の方法は、これもやはり上記に挙げた選択肢と互いに相容れないものではないが、独立した流れ整形素子(flow shaping element)を流路に導入することである。特に便利な一組の実施形態において、このような流れ整形素子は、流路内に浸漬された被覆発熱素子に巻き付けられたワイヤを含む。これは、製造が経済的なだけでなく、組立が比較的簡単でもある。同様の代わりの方法は、製造時に素子が挿入される間は素子に巻き付けられ、その後、伸長して流路の壁の内側表面に当たるように解放される弾性コイルを含み得る。いくつかの実施形態においては、ワイヤの厚さは、素子表面と流路の壁との間の隙間の幅よりもかなり小さい、例えば50%以下である。言い換えれば、ワイヤは、独立した個々の螺旋状流路を画定するのではなく、液体の境界層の旋回運動を生じさせることによってただ単に旋回流を促すだけである。いくつかのこのような実施形態においては、ワイヤの厚さは、上記隙間の幅の3分の1未満である。
【0039】
他の実施形態においては、ワイヤの幅は、ワイヤが水が流れる独立した個々の螺旋状流路を画定するように、上記隙間の幅の50%よりも大きく、例えば上記隙間の幅と略等しい。
【0040】
流れ整形手段、例えば前述の流れ整形素子は、導管の全長に延びていてもよいが、好適な一組の実施形態においては導管の長さの一部にのみ延びている。流れ整形手段の端が、流路または導管の出口から軸方向にずれているのがさらに好ましい。このことは、流路または導管における流れ整形手段の構造自体が、特に該手段が流路の流れの断面積の50%よりも多くを占める場合に、流路または導管を流れる液体の圧力および流れに局所的な線形変化(localised linear variations)を生じさせるため、有利であることが判明した。これは、流れが流れ整形手段の「前縁(leading edge)」に沿って集中しやすいためである。このことは、液体の感知温度のばらつきにつながり得る。流れ整形手段の端を流路または導管の出口からずらすことによって、温度の計測箇所(典型的には、流路または導管からの出口の近傍)において流れ整形手段が原因で液体に存在していた温度のばらつきが低減されるほど十分に、旋回する液体が混ざり合うことが可能になる。
【0041】
このことは、上記の実施形態においてだけではなく、それ自体で新規性および進歩性があると考えられ、したがって、さらなる局面からは、本発明は、導入口と出口とを有する液体を搬送するための流路と、該流路内または該流路上に配設された発熱素子とを含むフロー加熱器であって、該流路は、流路の長さの一部にのみ延びるように上記出口から軸方向にずれている端を有する流れ整形手段を含むフロー加熱器を提供する。
【0042】
好ましくは、流れ整形手段は、流路内の液体に旋回運動を導入するように構成される。流れ整形手段は、流路内に導入された流れ整形素子を含み得るが、これは不可欠ではない。上記のように、流れ整形手段は、流路の壁、または、設けられている場合には流路内に配設された被覆素子上の、リブや溝などのような構成要素を含み得る。
【0043】
流れ整形手段の端は、流路または導管への導入口からもずれていてもよい。このことは、温度の計測が端までは行われていない場合には通常は流れの最初の部分に旋回を導入する必要はないという本出願人の理解を反映している。このことによって、組立てが簡単になり、材料費がさらに低減する。
【0044】
一組の実施形態においては、流れ整形手段の端は、上記出口から、流路または導管の直径(もしくは、同様な意味合いで、最小断面寸法)を超える距離、例えば直径の2倍を超える距離、例えば直径の3倍を超える距離だけずれている。このことによって、液体は、温度計測が典型的に行われる流路または導管からの出口の近傍に到達する前に、いかなる温度ばらつきをも最小化するためによく混合されることが可能になる。さらに、流れ整形手段を流路または導管の長さの例えば30%だけ出口からずらすことによって、流れ整形手段の位置のバルク水温度が沸騰間近になることがなく、したがって、たとえ局所的な停滞または旋回の恐れがあるとしても、不測の局所的沸騰の恐れは低減する。
【0045】
好ましくは、流れ整形手段は、螺旋状の構成を有する。一組の実施形態においては、螺旋状の構成は、複数のターン(turn)を含み、該構成の長さの少なくとも一部にわたって、隣り合うターン間の距離が、導入口に最も近い端から離れるにつれて減少する。この構成の利点は、導入口から流れて来る液体は、最初のうちは流れ整形手段のよりなだらかな勾配に当たり、それによって乱流が最小限に抑えられるが、螺旋状の流れ整形手段の勾配が大きくなるにしたがって、液体の急速な回転ひいては混合が達成され、これにより流れ整形手段から出て来た液体の信頼性の高い温度計測を可能にすることである。
【0046】
このことは、それ自体で新規性および進歩性を有すると考えられ、したがって、さらなる局面から、本発明は、導入口と出口とを有する液体を搬送するための流路と、該流路内または該流路上に配設された発熱素子とを含むフロー加熱器であって、上記流路は、複数のターンを含む螺旋状の構成を有する流れ整形手段を含み、該構成の長さの少なくとも一部にわたって、隣り合うターン間の距離が、導入口に最も近い端から離れるにつれて減少するフロー加熱器を提供する。
【0047】
本発明のすべての局面によると、液体の貯蔵器を出口の上方に配置し、弁または栓を用いることによって達成される静水圧によって、液体流を駆動してもよい。しかしながら、好ましくは、液体をフロー加熱器を流れるように駆動するためのポンプが設けられる。
【0048】
本発明の第1の局面の一組の好適な実施形態においては、第1の領域は、第2の領域と連通する流体的に互いに平行な一対の流路を含む。これらの流路が少なくとも概略物理的にも平行であるように配置することによって、所与の総流体通路長さに対して加熱器アセンブリの全体寸法を低減でき、そのことにより、許容可能な工業デザインを生み出す際により大きな自由が得られる。流路のそれぞれに別個の発熱素子を設けてもよいが、単一の共通の素子を設けるのが好ましい。この素子が、略U字形に形成され、そのため、その各アームが流路のそれぞれに配設され、第2の領域に1つまたは複数の湾曲部が設けられるようになっている被覆発熱素子を含むのが有利である。本出願人は、このような構成において、素子の一方の部分が他方に比べて過熱するのを防止するために、各流路内の流れが適切に均衡していることを確実にすることが重要であると認識した。以下に説明するように、これを達成するいくつもの方法をさらに考案した。
【0049】
加熱器は、独立した流量フィードバック制御回路を備えるポンプを流路ごとに含み得るが、好適な一組の実施形態においては、加熱器は、両方の流路に供給する共通のポンプを含む。これは、このことによってコストおよび複雑さが低減されるためである。本出願人は、このような構成において、状況によっては、2つの流路間で流れが不均衡になる可能性があることに気付いた。これは、例えば、発熱素子管が一方の流路(このような構成を用いた場合)において他方と比較して中心から少しずれているか、湯垢が不均一に蓄積しているか、または、蒸気の泡が発生した場合であり得る。
【0050】
本出願人は、流路の流れ抵抗に不均等に影響を及ぼす要因が、対応する流量に重大な影響を与えるのを放っておくと、加熱器の温度の制御がきかなくなり、過熱の恐れが深刻になり得ることを認識した。しかしながら、加熱器システム全体を当該システムにおける全体の圧力降下に占める被加熱流路の割合が少ないように構成した場合は、このような不均等な要因の影響を低減できることがさらに認識された。したがって、一組の実施形態においては、加熱器システムは、被加熱流流路の上流に、該流路への液体の流れを制限するための手段であって、使用時に該流れ制限手段の両端間の圧力降下がポンプから流路の出口までの全圧力降下の50%を超えるように液体の流れを制限する流れ制限手段を含む。
【0051】
このことはそれ自体で新規性および進歩性を有すると考えられ、したがって、さらなる局面から見ると、本発明は、液体を加熱するための装置であって、中を流れる液体を加熱するための加熱手段をそれぞれが含み、導入口と出口とをそれぞれが有する2つの被加熱流流路(heated flow channel)と、被加熱流流路に液体を供給するための共通のポンプと、被加熱流流路の上流の、該流路への液体の流れを制限するための手段であって、使用時に該流れ制限手段の両端間の圧力降下がポンプから該流路の出口までの全圧力降下の50%を超えるように流れを制限する流れ制限手段とを含む装置を提供する。上記全圧力降下は、500mmを超える水頭と同等であってもよい。
【0052】
よって、上記に説明したように、2つの被加熱流流路への流れを制限するための手段が、当該2つの被加熱流流路間の抵抗の不均衡の影響を最小限に抑えるのに役立ち、したがって、加熱手段を過熱からある程度保護することが分かるであろう。
【0053】
上記2つの流路に対して共通の流れ制限手段を設けてもよいが、いくつかの好適な実施形態においては、流路ごとに個別の制限装置が設けられる。このような制限装置のそれぞれの抵抗を例えば工場で調整することによって、製造中に生じるそれらの流れ抵抗間のいかなる小さな不均衡をも補償することができる。
【0054】
流れを制限するための手段は、単に、管やマニホルドなどの成型加工または機械加工された形状によって提供されてもよいが、別個の制限された穴部品を用いるのが便利である。この選択肢は、上述のように流れ抵抗を調整するために、当該部品の長さの調整および/または穴径の異なる一連の部品からの選択のいずれによって行ってもよいという柔軟性を提供する。
【0055】
一組の実施形態においては、流れを制限するための手段の両端間の圧力降下が全圧力降下の75%を超え、例えば85%を超え、例えば90%を超える。理解されるように、制限手段の両端間の圧力降下が大きいほど、被加熱流流路の流れ抵抗の不均衡の影響の重大さが低下し、したがって、達成可能な信頼性の改善が大きくなる。しかしながら、これには、人為的に増加させた流れ抵抗を通じて設計流量を提供するために、より高い能力のポンプを設けなければならないという代償が伴う。
【0056】
流路間の流れ抵抗の不均衡に対処するための別の(互いに相容れないものではない)方法を提供する一組の実施形態においては、平行な流路のそれぞれが、対応する流路の流量に依存した流れ抵抗を呈するように構成された流れ調節手段であって、それにより、流路内の流量が例えば他方の流路内で閉塞によって流れが低減した結果として増加すると、該流れ調節手段の流れ抵抗が増加して補償するようになっている流れ調節手段を備える。このことは、2つの流路の総流量の全体的低下につながるが、流路の流量の均衡が崩れることよりも好ましい。流量の全体的低下は、例えば、ポンプの速度を増加させることによって補償することができる。
【0057】
このことはそれ自体で新規性および進歩性を有すると考えられ、したがって、さらなる局面から、本発明は、少なくとも2つの流体的に平行な流路を含むフロー加熱器であって、各流路が、
流路を流れる液体を加熱するために流路上または流路内に配設された発熱素子と、
対応する流路の流量に依存した流れ抵抗を呈するように構成された流れ調節手段であって、流路内の流量が増加すると、当該流れ調節手段による流れ抵抗が増加するように構成された流れ調節手段とを含むフロー加熱器を提供する。
【0058】
流れ調節手段は、いくつもの異なる形態をとり得、そのうちのいくつかは、当該技術分野において本質的に公知であり得る。しかしながら、特に便利な一組の実施形態においては、このような効果を、螺旋状に構成された、流路内の流れに旋回を導入するための上記の種類の流れ整形素子を用いて、当該素子を弾性材料で形成することによって、達成可能である。これは、流量が増加すると、素子をその弾性に反して縮ませ、隣り合うターン間の距離を減少させるためである。このことによって、液体が辿るように促される(または強制される)螺旋状通路の有効断面が小さくなり、流れ抵抗が増加する。不可欠ではないが、典型的には、このような流れ整形素子は、流路内に配設された被覆発熱素子の外方に、すなわち、素子と流路の内壁との間に設けられる。
【0059】
流れ整形素子が、その下流端で、例えば流路の壁にまたは流路内に設けられる場合には素子の壁に、固定され、上流端で移動可能にされる(必要な収縮を可能にするため)のが好ましい。
【0060】
このような流れ調節手段を採用することによって、ある程度の自己調節、ひいては2つの流路内の流れの均衡を達成できることが分かるであろう。この構成要素は、既に述べた流れ制限手段と併用できるのが有益であるが、流れ制限手段の抵抗をこのような自己調節がない場合の値と比較して低減させ得る。
【0061】
流路間の流れ抵抗の不均衡に対処するためのさらに別の(互いに相容れないものではない)方法を提供する一組の実施形態においては、上記装置が、液体をポンプから2つの被加熱流流路へ供給するための2つの導入流路を含み、これら2つの導入流路は、一方の導入流路内の流れ抵抗を他方の導入流路内の圧力の増加に応答して増加させるための手段を含む。このため、被加熱流流路の一方、ひいてはそれに関連付けられた導入流路の圧力が例えば閉塞によって当該被加熱流流路内の流れが減少した結果として増加すると、他方の導入流路内の抵抗を増加させて、2つの導入流路間で圧力を均衡させ、よって被加熱流流路の流量を均衡させることが分かるであろう。ここでもやはり、このことは、2つの被加熱流流路の総流量の全体的低下につながるが、流路内の流量の均衡が崩れるよりも好ましい。流量の全体的低下は、例えば、ポンプの速度を増加させることによって補償することができる。
【0062】
このことはそれ自体で新規性および進歩性を有すると考えられ、したがって、さらなる局面から、本発明は、液体を加熱するための装置であって、中を流れる液体を加熱するための加熱手段をそれぞれが含み、導入口と出口とをそれぞれが有する2つの被加熱流流路(heated flow channel)と、被加熱流流路に液体を供給するための共通のポンプと、液体をポンプから上記2つの被加熱流流路へ供給するための2つの導入流路とを含み、該2つの導入流路は、一方の導入流路内の流れ抵抗を他方の導入流路内の圧力の増加に応答して増加させるための手段を含む装置を提供する。
【0063】
一方の導入流路内の流れ抵抗を増加させるため手段を、前述の流れを調節または制限するための手段の代わりに用いてもよく、したがって、この一組の実施形態においては、流れ調節手段または流れ制限手段による抵抗に打ち勝つ必要がなく、流れを均衡させるのは可変の流れ抵抗だけであるため、より低い能力のポンプを用いることが可能になることも分かるであろう。しかしながら、本出願人は、流れ調節手段または流れ制限手段を、一方の流路内の流れ抵抗を増加させるための手段とより高圧力のポンプと組み合わせて用いるのが有利であることに気付いた。これは、そのことによって流路の流れの変化に対してより瞬時の応答を実現できるためである。
【0064】
一方の導入流路内の抵抗を他方の導入流路内の圧力に応答して変更するための手段は、2つの独立した導入流路間の機械的結合、例えば、可撓性の壁または変位可能な壁の間の、流体もしくはゲルで満たされた領域、支柱、リブ、またはその他の結合を含み得る。しかしながら、好適な一組の実施形態においては、導入流路は、それらの長さの少なくとも一部にわたって、変位可能な共通の壁を共有する。したがって、導入流路の一方の圧力が増加すると、共通の壁を変位させて当該導入流路の流れの断面積を増加させ、且つ、他方の流れ面積を減少させることにより、2つの導入流路間で圧力を均衡させ、よって被加熱流流路の流量を均衡させる。
【0065】
変位可能な共通の壁は、単に、2つの導入流路間の可撓性またはばね付きの壁を含み得る。しかしながら、好適な一組の実施形態においては、共通の壁は、分配プレナムブロック(distribution plenum block)内のダイヤフラムを含む。分配プレナムブロック内にダイヤフラムを設けることによって、双方の間に大面積の共通領域が得られ、それにより、流路間の流れの均衡に対する細かい制御が実現される。ダイヤフラムは、ダイヤフラムの弾性的な応答を制御できるように、ダイヤフラムを中央位置に付勢するための付勢手段、例えばばねを、ダイヤフラムのどちらかの側に含み得る。
【0066】
別段の記載がある場合を除いて、本発明のすべての局面によると、フロー加熱器を、例えば第2の領域において液体を沸点まで加熱することによって、沸騰した液体を作るために用いてもよい。
【0067】
明白には述べられていない場合は、本発明のすべての局面を、中を流れる液体を沸点未満の第1の温度まで加熱するための第1の加熱領域と、上記液体をさらに沸点または沸点未満の第2の温度まで加熱するための第2の加熱領域とを含むフロー加熱器であって、該第2の領域が加熱された液体とは別に蒸気が出ていくのを許容する手段を有するフロー加熱器において有利に採用することができる。
【0068】
本発明のすべての局面において、加熱された液体とは別に蒸気が出ていくのを許容する手段は、蒸気と加熱された液体とを同時にそれぞれの排出手段から出ていくように構成されているのが好ましい。
【0069】
本発明による第2の領域から加熱された液体を注出するための考えられる構成は多くある。1つの可能性は、第2の領域/最終加熱室から水を流出させるための簡単な弁または栓である。このような構成の問題は、このような弁または栓による流出量を、ポンプからの流入量と精度良く調和させなければならないことである。例えば、流出流量が導入流量よりわずかでも多ければ(または、流出開始が早過ぎたならば)、加熱器が空になる。流出流量がわずかに少なければ、流出室が溢れるか、または、水位が上昇するにつれて、当該室内でのミクロ沸騰の影響により水が噴き出す。これは、表面で生じた蒸気の泡が今度は水の中を垂直に移動しなければならないので、水滴を同伴し、高速で表面まで運ぶために発生する。ポンプによる流入は、上述のように不規則な時間に開始および停止し得、かつ、すべての入力変数、つまり所望の出口温度、導入口の水温、圧力変動、およびいかなる閉ループ制御システムにおいても発生し得る固有振動に応じて絶えず変化している。流出制御の難しさは、起動時に意図された作動液位までシステムを満たすのに十分な水が入るような時間まで流出を防止しなければならないことによってさらに増大する。
【0070】
したがって、一組の好適な実施形態においては、液体が所定の液位に達すると自動的に液体が流出するのを許容する手段が設けられる。このことは、ある一定の量の液体がとどめておかれることを確実にし、したがって、確実に、加熱器表面が過熱するのを防止するのに十分に覆われているようにすることができる。このような機能は、電子的に達成してもよく、フロートを用いて達成してもよいが、堰(weir)が設けられ、第2の領域/最終加熱室の中の水位が所定の高さ(堰の高さによって決まる)を超えると液体が堰を越えて当該領域/室から流出するようになっていることが好ましい。
【0071】
一組の実施形態においては、第2の領域に堰が設けられ、その高さはその周囲(perimeter)において変化する。このことにより、第2の領域内の所与の高さの液体に関して流出流量の制御を強化することが可能になり得る。
【0072】
一組の実施形態においては、第2の領域に出口が設けられ、該出口の表面積(surface area)が第2の領域内の液体の高さとともに増加する。このことによっても、第2の領域からの流出流量の制御を強化することが可能になり得る。特に、第2の領域内の液体がある範囲の流入流量にわたって発熱素子を適切に覆った状態を維持するのを可能にするように構成することができる。
【0073】
上記に概略を述べた2つの特徴が、第2の領域内に配設された発熱素子の一部分の形状と略合致するように成形された口を有し、そして例えばそれにより口が素子から略一定の間隔にあるようになっている出口を用いて達成可能であることが分かった。別の一組の実施形態においては、上記出口にわたって堰が設けられ、この堰の開口表面積が第2の領域内の液体の高さとともに増加する。
【0074】
好ましくは、第2の領域の出口は、流入流量が所定の閾値を下回ると、第2の領域内の発熱素子の一部分よりも下の高さになるまで液体を流出させるように構成される。このことによって、万一システム内の流れが劇的に遅くなるかまたは不意に止まった場合、第1の領域内の素子の部分が低流量の結果として過熱する前に、第2の領域の素子の当該部分が過熱して過熱保護を作動させることが確実になる。一組の実施形態においては、これは、出口の表面積、つまり出口にわたる堰を、第2の領域内の液体の高さとともに増加するように構成することによって達成される。高さに伴う表面積の増加は、線形であっても非線形であってもよい。
【0075】
本発明のすべての実施形態において、加熱室から出て行く加熱されたかまたは沸騰している液体を、例えば注ぎ口を通じて使用者の容器に直接注出してもよく、あるいは、さらに処理を行うために機器の別の部分に搬送してもよい。
【0076】
本発明の様々な局面によると、蒸気を、加熱された液体とは別に、第2の領域から排出する。蒸気は、通常の使用では使用者から離れた機器の部分から出て行くように向けられてもよく、例えば、機器の後方へ逃がされてもよい。他の実施形態において、蒸気を適切なトラップまたは雫受け(drip tray)などに捕らえ、凝縮させてもよい。これは、特別な雫受けであってもよいし、より便利には、注ぎ口の下の雫受けが用いられてもよい。
【0077】
一組の実施形態においては、蒸気出口は、蒸気を、第2の領域から、上記装置から注出される加熱された液体を受けるために置かれた容器へ向かわせるように構成される。これにはいくつかの利点がある。第1に、使用者は高温の流体が注ぎ口から出てくると予想しているだろうが、使用者が思いもよらないかもしれない機器の別の部分から蒸気が出てくるのを回避することによって安全性を高め、蒸気および水を容器に入れることができる。第2に、蒸気は、加熱された液体が注出される間の当該液体からの熱損失を限定し、ひいては必要な温度により近い液体を吐出するのに役立ち得る。第3に、特に、沸点近い水を吐出するように意図された機器または動作モードにおいては、出口近傍で蒸気が見えることによって、吐出中の水が沸騰していることを使用者がより強く認識する。
【0078】
上述の便利な一組の実施形態においては、第2の領域内へと延びる同軸状の管の構成によって、蒸気通路と被加熱液体通路とが設けられる。蒸気通路管の口は、第2の領域内で液体の予想される最大高さよりも上の高さに配設され、液体管の口は、この高さよりも下である。よって、この構成により、加熱された液体および蒸気/湯気(vapour)のための重要なはっきり区別された通路が維持され、そのことが、噴き出しを最小限に抑えるための鍵である。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、第2の領域/最終加熱室と大気との間の蒸気通路は、使用時にその両端間に0.1〜1バール、好ましくは0.2バール〜0.5バールの圧力差を生じさせるように、十分に制限されている。第2の領域/最終加熱室が使用時に大気と比較してわずかに加圧されるようにすることによって、水または他の液体の沸騰温度がわずかに上昇し、使用者の容器に実際に注がれる液体の温度を上げるのに役立つ。
【0080】
本明細書において「蒸気(steam)」に言及する場合は、この語は、顕著な沸騰つまりバルク沸騰が起こっていることを含意すると理解されるべきではなく、発生するかもしれない湯気(vapour)、湿潤空気、または厳密な意味での蒸気を示すものである。
【0081】
装置、特に第1の領域の向きは、加熱器が採用される機器の形態に合うように選択することができる。便利には、一組の実施形態においては、第1の領域における被加熱流導管は水平に延びるように配置されるが、いくつかの実施形態においては、流路または被加熱流導管は、例えばコーヒーメーカーで、省スペースにするために、垂直に延びるように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のある実施形態を単なる例示として説明する。添付図面において、
図1は、本発明を具体化する加熱水注出装置の斜視図であり、
図2は、上記装置の主な構成要素を示す上記装置の部分切欠図であり、
図3は、水貯蔵器および他の構成要素の断面図であり、
図4は、水導入口分配ブロックおよびフロー加熱器パイプの横断面図であり、
図5および図6は、フロー加熱器と加熱室と制御ユニットと一部変更した水分配ブロックとの斜視図であり、
図7は、一部変更した水分配ブロックの拡大図であり、
図8は、図7の一部変更した水分配ブロックの内部を示す縦断面図であり、
図9は、一方のフロー加熱器の内部を示す縦断面図であり、
図10は、他方のフロー加熱器の内部を示す縦断面図であり、
図11は、加熱管の非常に大きく拡大した断面図であり、
図12は、素子ヘッドおよび制御ユニットの正面から見た分解図であり、
図13は、素子ヘッドおよび制御ユニットの背面から見た分解図であり、
図14は、分かりやすくするために素子ヘッドを取り除いた状態の加熱室の図であり、
図15は、加熱室の内部を示す縦断面図であり、
図16および図17は、別の実施形態のフロー加熱器と加熱室と制御ユニットと水分配ブロックとの斜視図であり、
図18および図19は、図16および図17の加熱室の内部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図1は、熱い飲み物を作るためのカップ2に要求に応じて加熱された水を注出するために用いることができる本発明の一実施形態を示す。つまみ4を回すことによって水の温度を調節することもできる。注出温度は、例えば、65℃から100℃付近まで変化させることができる。水の注出量は、第2のつまみ(図示せず)によって制御される。装置の本体の上部には、使用者が時々満たさなければならない水タンク8がある。
【0084】
図2は、上記装置の主な内部構成要素のうちのいくつかを示し、他の部分は分かりやすくするために省略されている。同図からは、水タンク8を見ることができ、そこから下方に延びているのは、ポンプ12の導入口側に接続された出口パイプ10である。ポンプ12の出口側は、以下に図4〜図8を参照しながらより詳細に説明するように、入って来る水を、第1の加熱領域を一緒に形成する2つの平行なフロー加熱器部分18、20に分配する水分配プレナムブロック(water distribution plenum block)16に管14を介して接続されている。
【0085】
フロー加熱器部分18、20の下流端には第2の加熱領域を形成する加熱室(heating chamber)22がある。これは、略円形のステンレス鋼製素子ヘッド54(図3、図8、図9、図13および図14参照)に嵌合された深絞り加工されたステンレス鋼製カップ23によって形成されている。加熱室22は、加熱された水を使用者のカップ2に注出するための、該加熱室から下向きに突出する注ぎ出し口24を有する。
【0086】
図3の断面図は、水タンク8の内部を示す。この図から、水タンク8の基部が、水フィルタ、例えば本出願人のAqua Optima水フィルタを受け入れるように設計された円形開口26を有していることが分かる。このフィルタは、参照符号28で示された構成要素によって非常に模式的に表されている。水フィルタ28は、制限された出口開口(典型的には、4mm程度)を有し、これは、ちなみに、開口が非常に小さいためフィルタ内に水があるときは空気をフィルタに入らせないという追加的な利点を有する。そうでなければ、空気の泡がフィルタおよび貯蔵器に入り込み、水を連続的に流れさせてしまう。水フィルタ28の下部は、さらなる、中間保持室30の中に受け入れられ、この室の中央に、この室をポンプ12に接続するパイプ10に接続された出口がある。
【0087】
垂直な管32が、保持室30の上部から主な水タンク8の中へ延びており、水タンク8の最上部の窪んだ部分34のちょうど内側で終わっている。これによって、保持室30と水タンク8との間で圧力を同等にすることが可能になる。
【0088】
図4は、分配プレナムブロック16と2つの平行なフロー加熱器18、20とを通る横断面図の概略を示す。ポンプの出口側は、管(ここでは図示せず)を介して分配ブロック16内の垂直導入流路36と接続している。これは、ブロック内部で2つの横方向に延びる管38と接続し、これらの管は、当該横管38に対して直角を成す、より大きい穴径の円形断面の対応する円筒形室40、42の中に通じている。横管38のそれぞれの内部には、堅い締り嵌めを形成するように対応する横管38の内径と等しい外径を有するフェルール37(ferrule)が配設される。フェルール37の内径は管38よりも明らかに狭いため、意図的な追加の流れ抵抗となる。フェルール37の導入端が外側に向かって広がっていてもよい。フェルール37は、製造時に挿入される別個の構成要素であるため、製造時に生じているかもしれない2つのフロー加熱器管18、20の流れ抵抗の固有差を補償するために、若干異なる流れ抵抗を有するフェルールを両側で用いることが可能である。最も簡便にこれを達成する方法は、個々のフェルールの長さを切って所要の流れ抵抗を得ることである。
【0089】
円筒形室40、42は、それぞれ、2つのフロー加熱器部分18、20の端部を受け入れる。ここで分かるように、フロー加熱器部分18、20のそれぞれは、外部被覆(outer jacket)44、46と、図示はしないがステンレス鋼製ケーシングと酸化マグネシウム絶縁粉末に包み込まれたコイル抵抗ワイヤとを含む1本の被覆浸漬型発熱素子(sheathed immersion-type heating element)48とを含んでいる。浸漬素子のコールドテール(cold tail)50、52は、分配プレナムブロック16の後部に設けられた孔から出ている。
【0090】
2つのフロー加熱器スリーブ44、46は、対応する発熱素子48よりも直径が広いため、これらとの間に、対応する環状流路をフロー加熱器部分18、20のそれぞれについて画定する。この断面図から分かり得るように、スリーブ44、46は、ブロック16内の円形流路40、42の先端と封止接続するが、それらの流路において上記横流路38と合流する箇所の手前で止まり、それによって、フロー加熱器18、20のそれぞれの上記環状流路は、分配ブロック16内部に形成された円筒形室40、42に開いており、一方で、被覆素子48は、ブロックを貫通して延び、ブロックに対して封止されている。この結果、ブロック導入口36から横流路38とフェルール37と円筒形室40、42とを介して2つのフロー加熱器18、20の内部環状流路までの流体通路が存在している。
【0091】
図5および図6は、図1〜図4に示す実施形態を少し変更した実施形態の2つの異なる図を示し、構成要素の大半は同じである。主な相違点は、フロー加熱器18、20の導入端の間に設けられた形状の異なる分配プレナムブロック16’である。図1〜図4に示した特徴に加えて、管41が、一方のフロー加熱器18からの出口に隣接した加熱室22の下面から延びている。別の管43が、他方のフロー加熱器20の加熱室22への出口の直前の下側から延びている。これらの2つの管41、43の内部には、フロー加熱器18、20のそれぞれの箇所において水の温度を感知するために配置されたサーミスタ(図8および図9に示す)が収容されている。浸漬素子ヘッドプレート54の加熱室22とは反対の側に固定された標準の浸漬素子制御ユニット58も図示されている。
【0092】
図7は、横管38’およびフェルール37’に関して図4に示したものとは異なる構成を含む分配プレナムブロック16’の拡大図を示す。横管38’は、中にフェルール37’が配設されており、分配プレナムブロック16’の両側の表面から外向きに突出している。パイプ(図示せず)が横管38’のそれぞれに接続し、ポンプ12からの出口管14との流体接続を提供する。
【0093】
図8は、図7の分配プレナムブロックの縦断面図を示す。分配プレナムブロック16’の内側において、横管38’とそれらのフェルール37’は、ダイヤフラム100によって隔てられた2つの円形断面の円筒形室140、142の底へつながっている。シリコーンゴムのような可撓性材料からなるダイヤフラムは、周囲にリブを含み、該リブは、ダイヤフラムがぴんと張られて2つ別個の導入室140、142を作るように、分配プレナムブロック16’の2つの半体の間に挟んで固定される。
【0094】
円筒形室140、142は、分配プレナムブロック16’内部で、他の2つの横管102、104を介して、横管102、104と直角を成す他の2つの円形断面の円筒形室40’、42’ と接続する。円筒形室40’、42’は、2つのフロー加熱器部分18、20の端をそれぞれ受け入れる。この結果、導入横管38’、フェルール37’から、円筒形室140、142、他の横管102、104および他の円筒形室40’、42’を介して、2つのフロー加熱器18、20の内部環状流路までの流体通路が存在する。ダイヤフラムは、分配プレナムブロック16’から出ている2つの横管102、104に対向する、幅広の中央部も含み、この中央部は、分配プレナムブロック16’内の2つの円形断面の円筒形室140、142の一方の圧力が、例えば2つのフロー加熱器18、20の一方における完全な閉塞が原因で、大幅に上昇した場合には、他方の円筒形室140または142から出ている横管102または104の口を封止する働きをする。横管102、104の口が円筒形室140、142の縁からわずかに突出していることがこの助けになる。
【0095】
図9は、フロー加熱器18、20の全体を示す。同図からは、それらの各外側スリーブ44、46が他端で加熱室22に封着されていることが分かる。発熱素子48は、加熱室22内へと延び、元の方向へ曲げられて、2つのフロー加熱器18、20の一部をそれぞれが形成する2つの細長いアームを形成している。これは、図11および図13において、よりはっきりと分かる。図9には、一方のフロー加熱器18からの出口に隣接する加熱室22の下面から延びる管41も示されており、この管はサーミスタ45を収容する。サーミスタ45は、加熱室22の基部から加熱室22内へ少しの距離だけ突出している。
【0096】
図10は、図9と同様であるが、フロー加熱器18、20の反対側から見た図を示す。本図は、加熱室22への出口の直前で他方のフロー加熱器20の下側から延びる他方の管43を示し、その内部にはサーミスタ47が収容されている。サーミスタ47の先端は、フロー加熱器20の被覆46と同じ高さにある。
【0097】
図9および図10ならびに図11の拡大分離図において(そしてここでもやはり図12〜図14において)、被覆発熱素子48の2つのアームのそれぞれに螺旋状に巻き付けられたワイヤ96が図示されている。ワイヤ96は、フロー加熱器の環状流路の内部で水の旋回を促すように設計され、コールドテール50、52から被覆発熱素子48の各アームに沿って半分程度の位置を起点として螺旋状に巻き付けられている。ワイヤ96のターンは、被覆発熱素子の軸に対して浅い勾配で始まり、ワイヤ96のターン間の距離が1ターンごとに減少するように勾配が増加している。ワイヤ96は3ターン分螺旋状に巻回されており、この3ターンのターン間の距離は、dをフロー加熱器のスリーブ44、46の直径とすると、略3×d、2×d、およびdである。螺旋状の巻回は、フロー加熱器18、20の出口から略3×dの距離で終了している。
【0098】
ワイヤ96を螺旋状に巻回するのは、使用時に水が流れる環状流路が形成されるように、製造中に、素子48のアームを各スリーブ44、46(図9および図10参照)に挿入する前に行われる。ワイヤ96が例えば0.4mmの直径を有するステンレス鋼製であるのが便利であるが、ワイヤの材料、寸法およびピッチは特定の用途に合わせて選択してよい。但し、図11からは、少なくとも本特定の実施形態においては、素子48に巻き付けられたワイヤ96が素子48と外側スリーブ44との間に形成された環状流路を完全に塞ぐのに極めて十分に幅広であることに留意されるであろう。使用時にワイヤ96の存在によって各流路の内側の水の旋回運動が促され、そのことによって、上記に説明したように、より均一な周方向の温度分布が得られるため、温度計測が容易になることが分かった。螺旋状のワイヤ96のターン間の距離の減少は、発熱素子48の軸に対するワイヤ96の勾配が大きくなり過ぎて水の流れに破壊的影響を及ぼすことはないようなものであるが、ワイヤ96の端で勾配が増加する時までに、水の必ず高速な旋回運動を生じさせて水を適切に混合し、ワイヤの下流での信頼性の高い温度計測を可能にする。ワイヤ96は、フロー加熱器48の端の手前で止まり、そのことによって、水が温度センサ45、47に到達する時までに水の自由な混合を可能にし、感知温度がワイヤによる流れアーチファクト(flow artefact)の影響を受けることはない。
【0099】
2つの螺旋状ワイヤ96は、それぞれの下流端で、コイルの残りの部分が素子48に対して長手方向に自由に動くように、素子管48にスポット溶接される。このため、使用時に、ばね96によって、水が流れる螺旋状通路の横断面積に依存する管の流れ抵抗がある程度自己調節される。この断面積は、素子48と被覆44、46との間に、そしてワイヤコイル96の隣り合うターン間の距離によって、形成される環状空間全体の高さによって決まることが理解されるであろう。仮に一方のフロー加熱器部分18において部分的閉塞が生じたとすると、他方20がプレナム16からのより容易な通路であるため、その流量が増加する。しかしながら、このことによって当該第2の流路20内のばねコイル96が圧縮されやすくなり、この流路の流れ抵抗を2つの流路18、20が平衡状態に戻るまで増加させる。これには装置の総流量の低下という代償が伴うが、2つの流路の流量が不均衡であるよりも好ましい。総流量の低下は、ある一定の範囲内では、ポンプ速度を増加させることによって増加させることができる。
【0100】
図9、図10、および図12から分かるように、素子48の曲がり部分は、従来の浸漬素子ケトルに見られるような素子ヘッドプレートによく似た浸漬素子ヘッドプレート54に鑞付けされている。この構成は、ホットリターン(hot return)として知られており、図13から分かるように、ヘッドプレート54の反対側には、標準の浸漬素子制御ユニット58のスナップ動作式バイメタルアクチュエータ57を受け入れるために半円形の窪み56が形成されている。図13は、ホットリターンから延びる銅片60も示しており、これに、二次的なレベルの過熱保護を提供するための制御ユニット58のナイロン温度ヒューズ59(図12に示す)が当たる。あるいは、ニッケルめっきされた銅浸漬素子ヘッドにおいては、当該技術分野においてこれもやはりよく知られているように、銅片は不要である。
【0101】
図12および図13を見ると、素子のコールドテール50、52は、浸漬ケトル素子に関して従来そうであるように素子ヘッド54から突出するのではなく、分配プレナムブロック16(図12および図13では分かりやすくするために省略)から突出していることが当業者には理解されるであろう。その代わりに、2つのダミーコールドテール部品62、64が素子ヘッド54から突出して制御ユニット58と電気的に接触し、そして更に、フライングリード(flying leads)(図示せず)によって本物のコールドテール50、52に接続される。このことによって、標準生産の制御ユニット58を改造することなく使用することが可能になり、新しい専用の制御ユニットを設計および製造しなければならないことに比べてかなりの費用節約になる。素子ヘッドは、制御ユニット58用の3つの装着スタッド66を備えている。
【0102】
加熱室22の内部は、図14(素子ヘッド54が取り除かれている)および図15から最もよく分かる。同図からは、ステンレス鋼製カップ23によって形成された室22が、その内部容積は2つのダミーコールドテール62、64と、発熱素子48の曲がり部分と、加熱室22のほぼ最上部まで延び、注ぎ出し口24を通って同軸状に出て行く蒸気管25とによって限定されているが、大まかには背低幅広の円筒形状であることが分かる。蒸気管は、加熱された液体の出口とは別の、室22からの蒸気および湯気の出口を形成する。
【0103】
ステンレス鋼製カップ23を素子ヘッド54に固定するために、ボルト66も加熱室22(および蒸気管25)を貫通している。
【0104】
出口管の最上部24aは、平坦ではなく、熱素子48の曲がり部分を収容するために扇形に切り取られている。出口管24の中央を蒸気管25が通っていることに加え、このことによって、出口管24から出る水の流れが制限され、したがって、発熱素子48が適切に水で覆われたままであることが確実になるため、通常使用時の過熱が防止される。出口管の最上部24aの扇形に切り取られた形状によって、フロー加熱器18、20の流路から出てきた水が出口管24に直接流入することが防止され、この水が所望の温度まで正しく加熱されることが確実になる。この出口管24の最上部の形状の3つ目の機能は、加熱室の底近く、発熱素子48の高さよりも下方に、最も小さい部分を有することにより、フロー加熱器18、20からの水流が例えばフロー加熱器18、20における閉塞が原因で突然減少または停止した場合に、迅速に室22から排水されることである。この結果、加熱室22内の発熱素子48の露出部分が過熱するが、そのことはホットリターンを介して迅速に感知可能である。但し、出口管24の最上部の最も低い部分の高さは依然として加熱室22の底にいくらかの水が残るのに十分に高く、サーミスタ45、47から信頼性の高い温度計測値が得られる。蒸気管25および出口管24の直径は、動作時に加熱室22が少し加圧される(例えば、約1バールまで)ように選択される。このことは、例えば加熱器がドリップ式のコーヒーメーカーのような装置で用いられている場合には、加熱室から出力される水を加圧する働きをする。
【0105】
以下、本装置の動作について説明する。まず、使用者は、水タンク8を取り外し、逆さまにし、水フィルタ28を取り外し、蛇口から満たすことによって、水タンクに水を満たす。次いで、フィルタ28を元に戻し、タンクを再度逆さまにして装置に戻す。水はすぐに、公知のように水フィルタからの制限された出口によって決まる流量で水フィルタ28を通り始める。水がフィルタ28を通るにつれて、その水が接続パイプ10、次いで、下側の保持室30を満たし始め、空気を通気管32を通じて水タンク8の封止された上端部空間へ移動させる。保持室30内の水位が通気管32の下部に達すると、当該室から空気を追い出すことができなくなるため、水の流れが止まる。
【0106】
使用者は、水を注出したいときは、第1のつまみ4で必要な温度を設定し、その後、第2のつまみ(図示せず)を「オフ」位置から必要な量まで回す。まず、制御回路(図示せず)が発熱素子48を作動させる。1秒か2秒(加熱器内に既に存在している水の温度によって決まる)の遅延の後で、ポンプ12が動作し、下側の室30からパイプ10および14を通じて分配プレナムブロック16、16’内へ水を汲み出す。他の実施形態において、ポンプを加熱器よりも先に始動させてもよい。
【0107】
水がプレナムブロック内の流路38を流れているとき、流れは左右の流路間で均衡している。これらの流路38のフェルール37、37’の穴径は、フェルール37、37’の両端間の圧力降下が当該水力学系の残りの部分のすべてよりもはるかに大きくなるように選択される。このことは、下流の環状流路18、20に正確な流れを維持する上で非常に重要である。例えば、仮に一方の流路18または20に軽微な狭窄が生じ、他方には生じなかった場合、流量への影響はほとんどない。これは、支配的な圧力降下がフェルール37、37’によるためである。およそ10:1の圧力降下比率であれば所要の効果が得られる。例えば、管状加熱器18、20の両端間の圧力降下が100mmの水頭と同等であるとすると、プレナム流路38の両端間の圧力降下は1000mmの水頭と同等である。図5〜図15に示す実施形態においては、流れのさらなる均衡化が、分配プレナムブロック16’の中心から変位されるダイヤフラム100によって調節される。ダイヤフラム100の変位は、分配プレナムブロック16’の一方の側の流れの断面積を増加させながら他方の側の流れの断面積を減少させる働きをし、それにより、例えば閉塞が原因で流量が減少した側の流量を増加させ、他方の側の流量の減少によって均衡を取る。
【0108】
水が分配ブロック16、16’に汲み出されると、その水はこのブロックおよび以降の2つのフロー加熱器18、20のそれぞれの発熱素子48とそれに対応するステンレス鋼製の外側被覆44、46との間の環状流路を通って汲み出される。このことによって、水は流れて行くにつれて急速に加熱され、分配ブロック16、16’内の周囲温度(20℃程度)から、フロー加熱器18、20の下流端では出口管24における水の所望の温度に応じて50℃〜80℃になる。この所望の温度は、65℃〜ほとんど100℃の間で選択可能である。フロー加熱器18、20のそれぞれに螺旋状に配置されたワイヤ96は、水が環状流路に沿って通るときに水を旋回させる働きをする。ワイヤ96は、環状流路の端の手前で止まり、フロー加熱器18、20の端の近傍で温度が計測される前に旋回する水が十分に混ざり合うことを可能にする。これは前述のようにワイヤの存在が温度の空間的偏りを生じさせ得ることが判明しているためである。
【0109】
水の温度は、サーミスタ45、47によって監視され、当該サーミスタはそれぞれ管41、43を通り、加熱室22の近くで一方のフロー加熱器18の側面に突出し、また、他方のフロー加熱器20への出口で加熱室22の中へ突出している。水が沸騰しておらず、したがって相当な量の蒸気の泡を含んではいないため、かつ、螺旋状ワイヤ96が存在しないことにより、旋回する水を混ざり合わせていかなる温度差をも等しくすることができるので、温度を正確かつ確実に監視することができる。フロー加熱器18、20の両方の少し異なる箇所に上記2つのサーミスタ45、47を有することによって、水の温度の2つの独立した計測値が得られ、最終的に出て行く水の温度が何度と予測されるかについてのより正確な測定が可能になる。計測温度にいかなる変化が生じても、制御回路は、その変化を利用して、フロー加熱器18、20から出ていく水の温度をそれに応じて比較的一定にするためにポンプ12の速度を変更することができる。つまり、ポンプ速度を増加させて水の温度を下げるかまたはその逆を行う。
【0110】
次いで、水はフロー加熱器18、20から出て加熱室22の内部に入り、この室を満たし始め、それにより、加熱室22内に突出した素子48の湾曲部分を覆う(正常動作条件時)。発熱素子48の湾曲部は加熱室22内の水を加熱し続ける。加熱室22における水の加熱中にミクロ沸騰により発生するすべての蒸気は、最上部が開いている蒸気管25によって容易に出て行くことができる。蒸気は、蒸気管を通過して便利な出口へと流れるが、蒸気管は、水出口管24を通って同軸状に延びているため、加熱された水が加熱室22を通過して使用者のカップ2へ注がれるときにこの水を保温するのに有利に役立つ。
【0111】
特に図14および図15を参照すると、加熱室22内の水位が上昇して出口管24の最上部の最も低い部分の高さ以上になると、開口および出口管24を通って使用者のカップ2に注がれ始めることが分かる。汲み出される流量と素子48の能力とは、水が開口および出口管24を通って加熱室から出て行く時までに必要な温度になっているように合わせられる。出口管の最上部24aの高さと扇形に切り取られた形状とは、正常流量時は素子48が水に覆われたままであり、流量が低下した場合にはスナップ動作式バイメタルアクチュエータ57を迅速に作動させるために迅速に加熱室22から排水することを確実にするように選択される。
【0112】
加熱された水は、使用者によって設定された量が注出されるまで注出され続ける。使用者によって設定された量が注出された時点で、ポンプ12がオフにされる。装置のエネルギー効率を高めるために、発熱素子48はポンプがオフにされるよりも約2秒先にオフにされる。当該素子および他の構成要素には、確実に水を加熱し続けるのに十分なエネルギーが蓄えられている。
【0113】
万一水タンク8が空になった場合は、発熱素子48が過熱し始める。しかしながら、このことは、管41、43を通って一方のフロー加熱器18内と他方のフロー加熱器20への出口のすぐそばで加熱室22内とにそれぞれ突出する温度センサ45、47によって感知できる。バックアップとして、制御ユニット58上のバイメタルアクチュエータが素子48の過熱を感知し、スナップ動作で逆の方へ曲がり、それにより、周知の方法で制御ユニット内の一組の接点を開にする。二次的なバックアップ保護は、これもやはり当該技術分野において非常によく知られているように、制御ユニット58の温度ヒューズ59によって提供される。発熱素子48は、空焚きまたは空の状態でスイッチが入れられた場合に、ヘッド54に鑞付けされたホットリターン部分が確実に最初に乾くように構成される。このことは、第1の加熱器の2つの管18、20内の流れがいかなる悪条件下でも確実に均衡するようにし(先に説明したように)、かつ、素子48とそれを囲む管18、20とをやや傾斜させることによって確実にホットリターンが素子48の残りの部分よりもやや高い位置にあるようにすることによって、達成される。これにはさらなる利点があり、それは、空の状態からの起動時に、管18、20が自由に排気することが確実になり、かつ、流れる水が当初存在する空気を容易に押しのけ、エアロックを生じさせずに沸騰室22内へ押し出すことができることが確実になる。
【0114】
もしも使用者が異なる温度の水を注出したい場合は、使用者は機器の上面にあるつまみ4を用いて必要な温度を設定すればよく、それにより、ポンプ12がより高速または低速(選択されたのがより低い温度なのかまたはより高い温度なのかに依存する)で動作し、したがって、水がより高流量または低流量で装置を流れることになり、そのことは、水が注出されるまでに加熱される温度がより低くなるかまたはより高くなることを意味する。管41、43に突出する温度センサ45、47によって、注ぎ出し口24を通って注出されている水の温度を、温度センサの上流側の発熱素子48の割合とそれに対応する、温度センサの下流側の発熱素子48、すなわち加熱室内の湾曲部分の割合との知識から予測することが可能になる。これらのセンサは、使用者が要求した水の温度を考慮して、装置内に存在する(例えば、以前の動作の結果として)水の周囲温度に応じて、ポンプを動作させることと素子48をオンにすることとの間に相対遅延を導入するために用いることもできる。
【0115】
このため、上記の実施形態は、フロー加熱器の利点、すなわち、制御可能な量の水を要求に応じて注出することが可能であることを提供するが、素子ヘッド54を通るホットリターンを介して発熱素子48の過熱を容易に感知し、したがって安全で信頼性の高い装置を提供することが可能であるという重大な利点も有することが分かるであろう。加熱室と、水出口24から蒸気管25を通じて蒸気を分離することとによって、水の噴き出しを生じさせることなく、かつ、発熱素子上の局所的な高温点をミクロ沸騰させることなく、水を注出できるという別の利点も得られる。
【0116】
図16〜図19は、図5〜図15に示す実施形態と少し異なる実施形態の様々な図を示し、構成要素の大半は同じである。主な相違点は、フロー加熱器218、220が分配プレナムブロック216と加熱室222との間に垂直に延びていることである。分配プレナムブロック216はその内部のダイヤフラム(図示しないが図8に示すように配置される)の両側に2つの水平な導入口238を有する。フロー加熱器218、220は、分配プレナムブロック216から垂直に延出し、反対端で加熱室222に入る。加熱室222は、図5〜図15の実施形態で示した加熱室に比べて90度回転している。浸漬素子ヘッドプレート254の加熱室222とは反対の側に固定された標準の浸漬素子制御ユニット258も図示されている。本実施形態では、注ぎ出し口224が加熱室222から水平に延出し、内部に同軸状の蒸気管225を有している。
【0117】
加熱室222の内部は、図18および図19の図から最もよく分かる。同図からは、ステンレス鋼製カップ223によって形成された室222が、その内部容積は発熱素子248の曲がり部分によって限定されているが、大まかには背低幅広の円筒形状であることが分かる。水出口管224は、加熱室222の上部から延出し、堰226によって覆われた低くなった部分を有する。蒸気出口管225は、水出口管224の最上部の内側に口を有する。サーミスタ245が、加熱室222の基部を貫通して突出し、その先端は堰226の底と同じ高さにある。
【0118】
堰226は、上部で断面が広くなっており、下部で断面が狭くなっている(スリット)。このことによって、出口管224へ流入する水の流れが制限され、よって発熱素子248が適切に水に覆われたままであることが確実になるため、正常使用時の過熱が防止される。堰226の形状の2つ目の機能は、発熱素子248の底と同じ高さにある下部で断面が小さくなっていることにより、フロー加熱器218、220からの水流が例えばフロー加熱器218、220の閉塞が原因で突然低下または停止した場合に、加熱室222から迅速に排水されることである。この結果、発熱素子248の最も高い部分が過熱し、その過熱はホットリターンを介して迅速に感知可能である。但し、出口管224の最上部の最も低い部分の高さは、依然として、いくらかの水が加熱室222の底に残ってサーミスタ245からの信頼性の高い温度計測値が得られるのに十分に高い。前述の実施形態の場合と同様に、蒸気管225および出口管224の口の断面積は、動作時に加熱室222が少し加圧される(例えば、約1バールまで)ように選択される。
【0119】
図16〜図19に示す装置の実施形態の動作は、前述の実施形態について説明したものと非常に似ている。主な相違点は、加熱室222における堰の効果である。水がフロー加熱器218、220から出て来て加熱室222を満たし始めるとき、正常動作条件時に発熱素子248の湾曲部分は覆われている。
【0120】
加熱室222内の水の温度は、出口224付近で加熱室222内に突出するサーミスタ245によって監視される。発熱素子248の湾曲部は、加熱室222内の水を加熱し続ける。加熱室222内の水の加熱中にミクロ沸騰によっていかなる蒸気が発生しても、その蒸気は、最上部が開口している蒸気管225によって容易に出て行く。蒸気は、蒸気管225を通過して便利な出口へ流れるが、但し、蒸気管は、水出口管224を通って同軸状に延びているため、加熱された水が加熱室222から使用者のカップへ流れ込むときにその水を保温するのに有利に役立つ。
【0121】
特に図18および図19を参照すると、加熱室222内の水位が上昇して堰226の最も低い部分以上になると、堰226を越えて、出口管224を通って使用者のカップの中へ注がれ始める。汲み出される流量と素子248の能力とは、水が堰226を越えて出口管224を通って加熱室から出て行く時までに必要な温度になっているように合わせられる。堰226の高さおよび形状は、正常流量時は素子248が水に覆われたままであるが、流量が低下した場合には、ホットリターン(本実施形態では図示せず)の反対側に接続されたスナップ動作式バイメタルアクチュエータを迅速に作動させるために迅速に加熱室222から排水されるように選択される。
【0122】
前述の実施形態の場合と同様に、加熱室と、蒸気管225を通る蒸気を水出口224から分離していることとによって、噴き出しを生じさせることなく、かつ、発熱素子上の局所的な高温点をミクロ沸騰させることなく、水を注出できるという利点が得られる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱素子と、中を流れる液体を沸点未満の第1の温度まで加熱するための、前記発熱素子によって加熱される第1の加熱領域と、前記液体を沸点未満の第2の温度まで加熱するための第2の加熱領域とを含み、前記第2の領域は加熱された液体とは別に蒸気が出ていくのを許容する手段を有するフロー加熱器であって、前記第2の領域で前記液体のバルク沸騰(bulk boiling)が起こるようには動作できないフロー加熱器。
【請求項2】
中の液体を沸点未満の第1の温度まで加熱するための被加熱流導管(heated flow conduit)と、前記液体を沸点未満の第2の温度まで加熱するための最終加熱室とを含むフロー加熱器であって、前記加熱室が蒸気を液体表面から逃がすための空間を液体表面上方に含み、前記最終加熱室で前記液体のバルク沸騰(bulk boiling)が起こるようには動作できないフロー加熱器。
【請求項3】
前記被加熱流導管は、熱交換器の一方の側(one side of a heat exchanger)を含む、請求項2に記載のフロー加熱器。
【請求項4】
前記被加熱流導管は、電気発熱素子を含む、請求項2に記載のフロー加熱器。
【請求項5】
前記発熱素子は、前記第2の加熱領域または最終加熱室の中まで延びている、請求項1または4に記載のフロー加熱器。
【請求項6】
前記発熱素子は、前記被加熱流導管または前記第1の加熱領域を形成する流路の外側に設けられている、請求項1、4または5に記載のフロー加熱器。
【請求項7】
前記発熱素子は、被覆抵抗発熱素子(sheathed resistance heating element)を含む、請求項1、4、5または6のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項8】
前記被加熱流導管または第1の加熱領域は、液体を加熱するための被覆発熱素子(sheathed heating element)が内部に配設された、液体を搬送するための流路を含む、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項9】
前記発熱素子は、その周囲全面にわたって液体が接触するように前記流路内部に配設されている、請求項8に記載のフロー加熱器。
【請求項10】
前記被加熱流導管または第1の加熱領域は、前記発熱素子の周りに管状の被覆(jacket)を含み、前記被覆は液体が前記発熱素子と前記被覆との間を流れることができるように前記流路を形成する、請求項9に記載のフロー加熱器。
【請求項11】
前記被覆は、厚さが0.7mm未満であることが好ましいステンレス鋼を含む、請求項10に記載のフロー加熱器。
【請求項12】
前記発熱素子の一部は、金属製のヘッドプレートに固着されてホットリターン(hot return)を形成する、請求項8から11のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項13】
前記被加熱流導管または第1の領域は流路を含み、前記流路は液体を前記流路の中心軸からずれた方向に沿って導入するように構成された導入口を有する、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項14】
前記被加熱流導管または第1の領域は、旋回流を促進するように構成された流路を含む、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項15】
前記加熱器によって供給される液体の温度を制御するための手段を含む、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項16】
前記温度を制御するための手段は、前記加熱器を流れる液体の流量を変更するための手段を含む、請求項15に記載のフロー加熱器。
【請求項17】
前記発熱素子の通電に対して遅延間隔を置いてから水を流れさせるように構成されている、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項18】
前記加熱器を流れる液体の流れが止められる前に前記発熱素子がオフにされるように構成されている、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項19】
液体の出力温度を測定するために、前記第1の加熱領域または被加熱流導管内に、温度感知手段を含む、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項20】
液体を前記フロー加熱器を流れるように駆動するためのポンプを含む、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項21】
前記第2の領域または最終加熱室内の液体が所定の液位に達すると、前記第2の領域または最終加熱室から自動的に液体が流出するのを許容する手段を含む、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項22】
堰(weir)を含み、前記堰は前記第2の領域または最終加熱室内の水位が所定の高さを超えると液体が前記堰を越えて前記第2の領域または最終加熱室から流出するように構成されている、請求項21に記載のフロー加熱器。
【請求項23】
前記堰の高さがその周囲(perimeter)において変化する、請求項22に記載のフロー加熱器。
【請求項24】
前記第2の領域または最終加熱室が出口を含み、前記出口の表面積(surface area)が前記第2の領域または最終加熱室内の液体の高さとともに増加する、請求項21に記載のフロー加熱器。
【請求項25】
蒸気を、前記第2の領域または最終加熱室から、前記フロー加熱器または装置から注出される加熱された液体を受けるために置かれた容器内へ向かわせるように構成された蒸気出口を含む、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項26】
前記第2の領域または最終加熱室内へと延びる同軸状の管の構成の蒸気通路及び被加熱液体通路を含む、請求項25に記載のフロー加熱器。
【請求項27】
前記流路または被加熱流導管が垂直に延びるように構成された、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器。
【請求項28】
先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器を含む、加熱された水を要求に応じて提供するための機器。
【請求項29】
前記第2の領域または最終加熱室と大気との間に蒸気通路を提供するように構成され、前記蒸気通路は、使用時にその両端間に0.1〜1バール、好ましくは0.2バール〜0.5バールの圧力差を生じさせるように、十分に制限されている、請求項28に記載の機器。
【請求項30】
前記被加熱流導管または第1の領域は、前記最終加熱室または第2の領域と連通する流体的に互いに平行な一対の流路を含む、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器または機器。
【請求項31】
前記一対の流路は、単一の共通の素子を含む、請求項30に記載のフロー加熱器または機器。
【請求項32】
前記加熱器は、両方の流路に供給する共通のポンプを含む、請求項30または31に記載のフロー加熱器または機器。
【請求項33】
前記流路の上流に、前記流路への液体の流れを制限するための手段を含み、前記流れ制限手段は、使用時に前記流れ制限手段の両端間の圧力降下が前記ポンプから前記流路の出口までの全圧力降下の50%を超えるように流れを制限する、請求項30、31または32に記載のフロー加熱器または機器。
【請求項34】
前記被加熱流導管または第1の領域は、流れ整形手段を含む流路を含む、先行する請求項のいずれかに記載のフロー加熱器または機器。
【請求項35】
前記流れ整形手段は、前記流路に浸漬された被覆発熱素子に巻き付けられたワイヤを含む、請求項34に記載のフロー加熱器または機器。
【請求項36】
前記流れ整形手段は、前記流路の長さの一部にのみ延びている、請求項34または35に記載のフロー加熱器または機器。
【請求項37】
前記流れ整形手段の端は、前記流路または導管の出口から軸方向にずれている、請求項34、35または36に記載のフロー加熱器または機器。
【請求項38】
液体を加熱するための装置であって、中を流れる液体を加熱するための加熱手段をそれぞれが含み、導入口と出口とをそれぞれが有する2つの被加熱流流路(heated flow channel)と、前記被加熱流流路に液体を供給するための共通のポンプと、前記被加熱流流路の上流の、前記被加熱流流路への液体の流れを制限するための手段であって、使用時に前記流れ制限手段の両端間の圧力降下が前記ポンプから前記流路の出口までの全圧力降下の50%を超えるように流れを制限する流れ制御手段とを含む装置。
【請求項39】
各流路は、個別の流れ制限手段を含む、請求項33または38に記載のフロー加熱器、機器または装置。
【請求項40】
前記流れを制限するための手段の両端間の圧力降下は、前記全圧力降下の75%を超え、例えば85%を超え、例えば90%を超える、請求項33、38または39に記載のフロー加熱器、機器または装置。
【請求項41】
前記流路のそれぞれは、対応する流路の流量に依存した流れ抵抗を呈する流れ調節手段を備える、請求項33または38から40のいずれかに記載のフロー加熱器、機器または装置。
【請求項42】
少なくとも2つの流体的に平行な流路を含むフロー加熱器であって、各流路は、
流路を流れる液体を加熱するために流路上または流路内に配設された発熱素子と、
対応する流路の流量に依存した流れ抵抗を呈するように構成された流れ調節手段であって、流路内の流量が増加すると前記流れ調節手段による流れ抵抗が増加するように構成された流れ調節手段とを含む、フロー加熱器。
【請求項43】
前記流れ調節手段は、前記流路内の流れに旋回を導入するための、弾性材料からなる螺旋状に構成された流れ整形素子を含む、請求項41または42に記載のフロー加熱器、機器または装置。
【請求項44】
前記流れ整形素子は、その下流端で固定されている、請求項43に記載のフロー加熱器、機器または装置。
【請求項45】
液体を前記ポンプから前記2つの被加熱流流路へ供給するための2つの導入流路を含み、前記2つの導入流路は、一方の導入流路内の流れ抵抗を他方の導入流路内の圧力に応答して変更するための手段を含む、請求項30から33または38から44のいずれかに記載のフロー加熱器、機器または装置。
【請求項46】
液体を加熱するための装置であって、
2つの被加熱流流路(heated flow channel)であって、それぞれが中を流れる液体を加熱するための加熱手段を含み、それぞれが導入口と出口とを有する2つの被加熱流流路と、
前記被加熱流流路に液体を供給するための共通のポンプと、
液体を前記ポンプから前記2つの被加熱流流路へ供給するための2つの導入流路とを含み、
前記2つの導入流路は、一方の導入流路内の流れ抵抗を他方の導入流路内の圧力に応答して変更するための手段を含む装置。
【請求項47】
前記導入流路は、それらの長さの少なくとも一部にわたって、変位可能な共通の壁を共有する、請求項45または46に記載のフロー加熱器、機器または装置。
【請求項48】
前記共通の壁は、分配プレナムブロック(distribution plenum block)内のダイヤフラムを含む、請求項47に記載のフロー加熱器、機器または装置。
【請求項49】
導入口と出口とを有する液体を搬送するための流路と、前記流路内または前記流路上に配設された発熱素子とを含むフロー加熱器であって、前記流路は、前記流路の長さの一部にのみ延びるように、前記出口から軸方向にずれている端を有する流れ整形手段を含む、フロー加熱器。
【請求項50】
前記流れ整形手段は、前記流路内の液体に旋回運動を導入するように構成されている、請求項34から37または49のいずれかに記載のフロー加熱器、機器または装置。
【請求項51】
前記流れ整形手段は、螺旋状の構成を有する、請求項34から37、49または50のいずれかに記載のフロー加熱器、機器または装置。
【請求項52】
前記螺旋状の構成は、複数のターンを含み、前記構成の長さの少なくとも一部にわたって、隣り合うターン間の距離が、前記導入口に最も近い端から離れるにつれて減少する、請求項51に記載のフロー加熱器、機器または装置。
【請求項53】
導入口と出口とを有する液体を搬送するための流路と、前記流路内または前記流路上に配設された発熱素子とを含むフロー加熱器であって、前記流路は、複数のターンを含む螺旋状の構成を有する流れ整形手段を含み、前記構成の長さの少なくとも一部にわたって、隣り合うターン間の距離が、前記導入口に最も近い端から離れるにつれて減少する、フロー加熱器。

【公表番号】特表2013−515233(P2013−515233A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545442(P2012−545442)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052166
【国際公開番号】WO2011/077135
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(503052542)ストリックス リミテッド (7)
【Fターム(参考)】