説明

フロー電池の電極

フロー電池の電極を提供する。この電極は黒鉛フェルト(1)から構成されている。黒鉛フェルト(1)には、電解液を輸送する多くの回路(2)がある。回路(2)は直流回路(2)で、かつ等間隔の回路である。回路(2)の幅、深さと回路(2)間の間隔はいずれも黒鉛フェルト(1)の厚さの半分で、黒鉛フェルト(1)はポリアクリロニトリル製である。このフロー電池の電極は構造が簡単で、加工と組み立てが簡単である。フロー電池が薄く、電気抵抗が小さいため、電解液の輸送・拡散効果もよい。そして、この電極が用いられるフロー電池はパワー密度が大きく、能率が高く、寿命も長いため、ハイパワーあるいはスーパーパワーのフロー電池が作れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフロー電池の分野にあり、フロー電池の電極、とりわけバナジウム電池の電極にかかわっている。
【背景技術】
【0002】
フロー電池にはたくさんの種類はあり、バナジウム電池を代表とするフロー電池は異なる原子価の電解液が多孔質拡散電極で電気化学反応を行うことにより、化学エネルギーと電気エネルギーの相互交換を実現できる。これは世界で最も規模が大きく、最も技術が優れており、そして最も産業化されている高効率可逆性燃料電池である。ハイパワーで大容量、そして高効率、低コスト、長寿命かつ環境にやさしいという独特な特徴を備えるため、太陽光発電、風力発電、点在発電所、送電網のピーク負荷調節、通信ステーション、UPS電源、交通機関、軍用電気など幅広い分野で応用される見通しで、近い将来で人類の新しいエネルギー技術革命を引き起こすことになるでしょう。
【0003】
一般的には、フロー電池は、表面が平らで細孔のある黒鉛フェルトを電極とし、電解液が循環ポンプの作動により、黒鉛フェルトを縦方向に下から上へ流動し、細孔を通じ繊維の表面まで拡散し、電極反応を行う。電極反応が続けられるように、反応が必要とする材料は絶えず速やかに供給しなければならず、そして生産物は速やかに移送しなければならない。もし電解液が速やかに輸送できる主要回路がなく、黒鉛フェルト自身の細孔を通じて拡散する場合、電解液の拡散スピードが非常に緩やかになり、電極反応により拡散の分極化が深刻化し、フロー電池のパワー密度、能率と寿命も大きく低下することになる。ハイパワーフロー電池が必要とする、面積が大きく縦方向の黒鉛フェルト電極の場合はとりわけ注意しなければならない。
【0004】
フロー電池の電解液が黒鉛フェルト電極での輸送・拡散スピードを速めるため、一般的には、イオン交換膜と黒鉛フェルト電極の間にディバージョン回路と急流回路などを設置するが、その構造が複雑で、加工が難しく、そして組み立ても不便である。また、フロー電池が厚く、電気抵抗が大きいため、電解液は順調に輸送できず、パワー密度が小さく、能率が低く、寿命が短いという様々な欠陥もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の欠陥に鑑み、この発明が提供するフロー電池の電極は以下のような特徴を備えることを目的とする。即ち、構造が簡単で、加工と組み立てが容易であること。またフロー電池が薄く、電気抵抗が小さく、電解液は順調に輸送できること。パワー密度が大きく、能率が高く、寿命が長いため、ハイパワー或いはスーパーパワーのフロー電池が作れることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は以下のような方法により達成した。
【0007】
フロー電池の電極の一種であり、その電極は黒鉛フェルトから構成されている。黒鉛フェルトには、電解液を輸送する多くの回路がある。
【0008】
黒鉛フェルトはアクリロニトリル製である。
【0009】
回路は直流回路である。
【0010】
回路は等間隔で分布する。
【0011】
黒鉛フェルトの厚さは2〜10mmである。回路は幅1〜5mmで、深さ1〜5mmである。回路間の間隔は1〜5mmである。
【0012】
回路の幅、深さと回路間の間隔はいずれも黒鉛フェルトの厚さの半分である。
【0013】
研究によると、黒鉛フェルトの厚さが2mm以下の場合、電極反応の活性部位が少なく、電極の電気化学反応の分極化が深刻なうえ、回路の切断面積が小さいため、電解液が回路を縦方向に流動するときの抵抗力が大きく、電極拡散の分極化が深刻になる。それによりフロー電池のパワー密度と能率が低くなる。10mm以上の場合、電極の電気抵抗が大きく、オームの分極化が深刻になるため、フロー電池のパワー密度と能率の低下につながる。黒鉛フェルトの電極は厚さ6mm前後が一番良いと多くの研究から証明されている。
【0014】
回路はフローで電池が速やかに輸送できる主要回路に当たるもので、循環ポンプの電力消費を増やさないまま電解液の流量を拡大することができる。循環ポンプの作動により、電解液は回路を縦方向に下から上へ流動する。この過程において、電解液は黒鉛フェルトの細孔を通じ横方向と奥行き方向へと拡散し輸送する。
【0015】
研究によると、回路の幅と深さがいずれも厚さの半分以下の場合、回路の切断面積が小さいため、電解液が回路を縦方向に流動するときの抵抗力が割りと大きい。回路の深さが厚さの半分以下の場合、電解液が回路を奥行き方向に流動するときの抵抗力が割りと大きい。隣接回路間の間隔が厚さの半分以上の場合、電解液が回路を横方向に流動するときの抵抗力が割りと大きい。
【発明の効果】
【0016】
この発明は以下のようなメリットがある。すなわち、構造が簡単で、加工と組み立てが容易であること。またフロー電池が薄く、電気抵抗が小さいため、電解液は順調に輸送できること。パワー密度が大きく、能率が高く、寿命も長いため、ハイパワー或いはスーパーパワーのフロー電池が作れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施例に関する構造図である。
【図2】図1のAの部分の拡大図である。
【図3】図2の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1、2、3をご参照ください。この発明はバナジウム電池の電極の1種である。この電極は黒鉛フェルト1から構成され、黒鉛フェルト1はポリアクリロニトリル製である。黒鉛フェルト1は正方形で、厚さはHで表示する。表面には電解液を輸送する縦方向の回路2が多く設置している。回路2はいずれも直流回路で、幅はCで、深さはDで表示する。回路2はいずれも等間隔で、Lで表示する。
【0019】
下記の三つの実施例は、いずれも黒鉛フェルトを電極とし、フッ素イオン膜とバナジウム電池に組み立て、濃度が2mol/Lのバナジウム電解液で充放電試験を行った。試験の結果の以下のとおりである。
【0020】
【表1】

【0021】
上記の三つの実施例において、黒鉛フェルトの厚さHはそれぞれ2mm、6mm、10mmで、回路2の幅C、深さDと間隔Lはいずれも黒鉛フェルト1の厚さの半分である。電解液が回路2を縦方向、横方向と奥行き方向に拡散する効果がよく、電極の分極化が小さく、フロー電池の平均の放電電圧、パワー密度と能率もいずれも高い。
【0022】
黒鉛フェルトの厚さが2mm以下の場合、電極反応の活性部位が少なく、電極の電気化学反応の分極化が深刻なうえ、回路の切断面積が小さいため、電解液が回路を縦方向に流動するときの抵抗力が大きく、電極拡散の分極化が深刻になる。それによりフロー電池のパワー密度と能率が低くなる。10mm以上の場合、電極の電気抵抗が大きく、オームの分極化が深刻になるため、フロー電池のパワー密度と能率の低下につながる。上記試験の結果からわかるように、黒鉛フェルトの最適厚さは6mmの場合、電解液が黒鉛フェルトでの輸送・拡散が最もよい。電極の分極化が小さく、フロー電池の平均の放電電圧、パワー密度と能率も最も高い。
【0023】
今回発明したフロー電池の電極は構造が簡単で、加工と組み立てが容易である。そして、フロー電池が薄く、電気抵抗が小さいため、電解液は順調に輸送・拡散できる。パワー密度が大きく、能率が高く、寿命も長いため、ハイパワー或いはスーパーパワーのフロー電池が作れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロー電池の電極の一種であって、黒鉛フェルトから構成されており、黒鉛フェルトには、電解液を輸送する多くの回路があるフロー電池の電極。
【請求項2】
請求項1で述べたフロー電池の電極について、黒鉛フェルトはポリアクリロニトリル製であるフロー電池の電極。
【請求項3】
請求項1で述べたフロー電池の電極について、回路は直流回路であるフロー電池の電極。
【請求項4】
請求項1で述べたフロー電池の電極について、回路は等間隔であるフロー電池の電極。
【請求項5】
請求項1で述べたフロー電池の電極について、黒鉛フェルトの厚さは2〜10mm、回路の幅は1〜5mm、深さは1〜5mm、回路間の間隔は1〜5mmであるフロー電池の電極。
【請求項6】
請求項5で述べたフロー電池の電極について、回路の幅、深さと回路間の間隔はいずれも黒鉛フェルトの厚さの半分であるフロー電池の電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−517078(P2012−517078A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548519(P2011−548519)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/CN2010/070198
【国際公開番号】WO2010/088847
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(509040455)北京金能燃料電池有限公司 (2)
【氏名又は名称原語表記】GOLDEN ENERGY FUEL CELL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】1−418 Building B,12 Hongda North Road BDA,Beijing 100176 China
【Fターム(参考)】