説明

ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法

【課題】本発明は、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型を解析し、多型をブタ育種のための遺伝マーカーとして利用し、その遺伝マーカーに基づき、所望の形質(肉質)のブタを選択しうるブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明は、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子近傍に存在し、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のエクソン2におけるヌクレオチド配列に存在する連続したT(チミン)の反復回数が、5回である対立遺伝子、もしくは6回である対立遺伝子に対して、強い連鎖不平衡にあるゲノム配列上の多型を解析し、間接的にブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型を解析することを特徴とするブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型、遺伝子型を解析し、ブタの形質を診断(予測)することに関する。更に詳しくは、エクソン2の20番目の塩基(A又はT)、即ちTの繰り返し数に基づき、肉質(ロース面積の大きさ)を診断する方法に関する。更には、所望の遺伝子型のブタを選択し、所望の形質のブタを育種する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アドレナリン、ノルアドレナリンなどカテコールアミンによる神経分泌系、エネルギー代謝系などの調節又は制御は、アドレナリンレセプターと呼ばれる膜結合(膜貫通)性タンパク・ファミリーにより介在される。
【0003】
ADRB3(ベータ3アドレナリンレセプター)は、ヒトでは1989年Emorineらによりクローニングされ、その後、2つのエクソンからなる遺伝子であり、Gタンパク共役型の7回膜貫通型レセプターであること、ヒトの場合は8番染色体に座していることが示された。ベータ3アドレナリンレセプター遺伝子は主に脂肪細胞で発現しており、脂質代謝と熱産生の制御に関与しているといわれている。
【0004】
また、ヒトADRB3遺伝子の多型として、64番目のアミノ酸がTrpからArgに置換されたものが報告され、基礎代謝量の減少と肥満傾向を示すことが報告されている。しかし、ブタにおいて、基礎代謝或いは肥満形質と相関のあるベータ3アドレナリンレセプター遺伝子多型はこれまで報告されていない。
【0005】
ブタにおいてもベータ3アドレナリンレセプターの全コード領域の配列が決定され、図1(A)に示すような2つのエクソンからなるものであったが、多型の報告はされていなかった。なお、エクソン1は1196bpであり、エクソン2は28bpであった。エクソン2が22bpである多型は、非特許文献1において、本発明者等が初めて報告したものである。
【0006】
家畜の成長とエネルギー代謝制御は、家畜生産において最も重要な形質の一つである。家畜の形質は、環境的要因(例えば飼養管理)と、遺伝的要因の双方が関与している。
【0007】
家畜の形質を左右する遺伝的要因(遺伝情報)については、家畜の生産性の向上を目指し、多くの研究者によって研究されている。例えば、非特許文献2では、ブタメラノコルチン−4レセプター(MC4R)遺伝子中にある遺伝マーカーが、ブタの背脂肪量に関与することが示されている。
【特許文献1】特表2002−521068号公報
【0008】
成長・飼料の利用性・代謝エネルギー・および脂肪蓄積は、ブタの経済形質を決める重要な要因である。ブタはイノシシから家畜化されたものであり、現在においても両者を自由に交配することが可能である。しかし、家畜ブタとイノシシの間では行動学的にも形態学的にも大きな差異がある。これらの差異は遺伝的要因によると考えられるが、原因となる遺伝的変異は、これまで報告されている遺伝子多型では十分に説明できない。
【0009】
家畜化されたブタとイノシシの間には、多くの形質の違いが存在する。両者の表現型における最も大きな違いの1つに脂肪量がある。ブタとイノシシ間に存在する遺伝子変異を探索すれば、ブタの経済形質に関与する遺伝子マーカーが開発できると考えられた。
【0010】
そこで、発明者等は、非特許文献1にあるように、ヒトで肥満との関連が示唆されている遺伝子のホモログについて、数種のブタ、イノシシのベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の塩基配列、推定アミノ酸配列
クラウンミニブタ: 登録番号AB252778/配列番号5、6
ミャンマー産イノシシ:登録番号AB252779/配列番号7、8
メイシャン: 登録番号AB252780/配列番号9、10
ニホンイノシシ: 登録番号AB252781/配列番号11、12
リュウキュウイノシシ:登録番号AB252782/配列番号13、14
を解析し、既知のブタベータ3アドレナリンレセプター:登録番号AF274007/配列番号15、16の遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列を比較した。
【0011】
なお、配列を決定したメイシャン種(1頭)は、AB252780(配列番号9)とAB252779(配列番号7) のヘテロ接合体であった。ニホンイノシシのAB252781(配列番号11)はランドレース(1頭)でも見出された。また、推定アミノ酸配列12、14は同一配列であり、推定アミノ酸配列6と8も同一の配列である。
【0012】
その結果、アミノ酸配列に翻訳した場合においても、図1(B)に示すように、既知の配列と全ての個体が多型を示し、6ヶ所のアミノ酸置換が生じていた(黒丸、なお*はストップコドンを示す、)。その中1つとして、塩基配列において、エクソン2領域における一塩基挿入によるフレームシフト変異を発見した。
【0013】
この変異は既知の配列におけるエクソン2の20塩基目にT(チミン/下線)が挿入されており(図2)、コドンの読み枠がずれること406番目のコドンがアルギニン(R)をコードするAGGから終止コドン(*)であるTGAに変化してしまい、結果として通常型よりも2残基少ないアミノ酸をコードしていた。以下、Tが挿入された変異型をT6型、以前から知られていた挿入のないものをT5型という。なお、配列番号5、7がT6型であり、配列番号9、11、13がT5型であった。
【非特許文献1】井脇吉淳、田中和明、他11名、日本畜産学会105回大会 (2005年9月9日)学会発表要旨「ブタとイノシシにお けるADRB遺伝子の多型とその分布」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、T5型、T6型の遺伝子を持つブタについて、どのような形質の差異があるか知られていなかった。そこで、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型である対立遺伝子のT5型、T6型とブタの形質との関係を解析し、対立遺伝子のT5型、T6型である多型をブタ育種のための遺伝マーカーとして利用し、その遺伝マーカーに基づき、所望の形質(肉質)のブタを選択しうるブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するために、ブタベータ3アドレナリンレセプターのC末端部を解析し、アミノ酸残基数の違いに基づいて、ブタ(個体)のロース面積が大きい若しくは小さい形質を判断することを特徴とするブタ形質診断方法の構成とし、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型を解析し、ブタ(個体)の形質を判断することを特徴とするブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とし、前記多型の位置が、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のエクソン2の20番目の塩基配列であることを特徴とするブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とし、前記20番目が、T又はAであるかを解析することを特徴とするブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とし、前記多型の解析が、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のエクソン2におけるヌクレオチド配列に存在する連続したTの反復回数が5回であるか6回であるかに基づくことを特徴とするブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とし、前記多型の解析に、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする前記何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とし、又は前記解析が、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子、又はRNAを増幅し、制限酵素で消化し、アガロースゲル電気泳動法により、増幅遺伝子の切断パターン基づく解析であることを特徴とする前記に何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とし、前記増幅に、配列番号1及び配列番号2のプライマーペアー、又は配列番号3及び配列番号4のプライマーペアーを用いることを特徴とするブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とし、或いは前記解析が、単鎖コンホーメーション多形分析法(SSCP)、又は変性勾配ゲル電気泳動法(DGGE)、或いは飛行時間型質量分析装置(TOF−MS)による核酸断片の質量分析法であることを特徴とする前記何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とし、さらに前記解析が、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子近傍に存在し、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のエクソン2におけるヌクレオチド配列に存在する連続したT(チミン)の反復回数が、5回である対立遺伝子、もしくは6回である対立遺伝子に対して、強い連鎖不平衡にあるゲノム配列上の多型を解析し、間接的にブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型を解析することを特徴とする前記何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とし、前記形質が、ロース面積が大きい若しくは小さいことを特徴とする前記何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とし、加えて前記何れかに記載のブタ形質診断方法に基づき、所定の形質のブタを選択し、育成、又は繁殖することを特徴とするブタの育種方法の構成とし、さらに前記何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法に用いられるプライマーペアー、DNA複製酵素、制限酵素を必須とするブタの遺伝子型解析診断キットの構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上の構成であるから以下の効果が得られる。先ず、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型であるT5型、T6型の解析をすることで、簡易にブタの形質(ロース面積)を予測でき、市場ニーズにあったブタ肉を的確選択し提供することができる。また、所望の形質のブタを選択的に飼育することもでき経済的である。
【0017】
さらに、T5型のホモ接合体、T6型のホモ接合体、T5/T6型のヘテロ接合体を選択し、繁殖させることで、所定の形質(ロース面積)のブタの品種改良を可能にし、より形質を顕著に表す新品種の作出を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ブタベータ3アドレナリンレセプター、その遺伝子の多型を解析し、所望の形質(肉質)のブタを選択しうるブタ形質診断方法を提供する目的を、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子近傍に存在し、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のエクソン2におけるヌクレオチド配列に存在する連続したT(チミン)の反復回数が、5回である対立遺伝子、もしくは6回である対立遺伝子に対して、強い連鎖不平衡にあるゲノム配列上の多型を解析し、即ち、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子、又はRNAを(請求項8)配列番号1及び配列番号2のプライマーペアー、又は配列番号3及び配列番号4のプライマーペアーを用い増幅し、制限酵素で消化し、アガロースゲル電気泳動法により、増幅遺伝子の切断パターン基づき、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型を解析し、ブタ(個体)のロース面積が大きい若しくは小さいことを判断することを特徴とするブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法の構成とすることで実現した。
【実施例1】
【0019】
以下、添付図面に基づき、本発明であるブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法について詳細に説明する。
【0020】
[診断に供したブタ]
全国農業協同組合連合会所有のデュロック種。
【0021】
[染色体DNAの抽出]
ブタの尾の肉片よりDNesay
Blood & Tissue Kit(販売:株式会社キアゲン)を用いて染色体DNAを抽出した。なお、染色体DNAは、PCRに供することができれば、特に抽出用の組織、抽出方法は限定されない。一旦ベクターなどにクローニングされたDNA、mRNA、cDNAを用いてもよい。
【0022】
[PCR(Polymerase Chain Reaction)反応溶液]
PCRは、一反応あたり40μLで行った。耐熱性DNAポリメラーゼには、TaKaRa Taq(登録商標/タカラバイオ株式会社製品コードR001A)を用い、一反応あたりの使用量は1ユニットとした。また、プライマーは、Aasl解析の場合は配列番号1のフォワードプライマー40pmol、配列番号2のリバースプライマー40pmol、Xagl解析の場合は、配列番号3のフォワードプライマー40pmol、配列番号4のリバースプライマー40pmolを添加した。その他の反応組成は、前記TaKaRa Taq(登録商標)に添付の10×PCRBuffer(Mg2+plus)、dNTP Mixtureを所定量、遺伝子型解析を行う個体より抽出したゲノムDNA試料約200ngを添加し、最後に滅菌超純水を加え合計40μLになるように調製した。なお、耐熱性DNAポリメラーゼは特に限定されない。
【0023】
[プライマー]
なお、多型の解析には、T5型と、Tの挿入によるT6型を判別するため、ミスマッチプライマーPCR法とRFLP(Restriction
Fragment Length Polymorphism;制限酵素断片長多型)法を組み合わせた判別を行った。ミスマッチプライマーPCR法においては、制限酵素Aasl及びXaglが(以下、それぞれ単にAasl及びXaglという)T5型、T6型部位を認識できるようプライマーを合成した。
【0024】
Aaslを用いて遺伝子型解析を行うためのプライマー
・フォワードプライマー
TTTGTGGCTGGGTGAATCCCGGAAG・・・配列番号1
・リバースプライマー
ATCAACAGAGCTGTTTCTTCAAGGACT・・・配列番号2
この2つのプライマーで増幅される増幅産物(約175bp)をAasl(GACNNNN↓NNGTC)の消化に供するとT6型は切断されず、T5型は切断され約20bpと約155bpの断片となる。下線がミスマッチ部である。
【0025】
Xaglを用いて遺伝子型解析を行うための
・フォワードプライマー
CCATTTTCAGGGCTTCCTGGGGCCTT・・・配列番号3
・リバースプライマー
GCCACTTGGTAAGGAATTCCCCCTT・・・配列番号4
この2つのプライマーで増幅される増幅産物(約185bp)をXagl(CCTNN↓NNNAGG)で消化するとT6型は切断され約20bpと約165bpの断片となるが、T5型は切断されない。下線がミスマッチ部である。
【0026】
[PCR反応条件(Aasl)]
アプライドバイオシステムジャパン株式会社製 GeneAmp(登録商標)PCR System9700を用いて、次の温度、時間で30サイクル行った。
1)94℃ 60秒
2)56℃ 30秒
3)72℃ 45秒
【0027】
[PCR反応条件(Xagl)]
アプライドバイオシステムジャパン株式会社製 GeneAmp(登録商標)PCR System9700を用いて、次の温度、時間で30サイクル行った。
1)94℃ 60秒
2)54℃ 30秒
3)72℃ 45秒
【0028】
[制限酵素反応]
前記PCRによる増幅産物を、増幅用前記プライマーセットによって決まるAasl(コスモ・バイオ株式会社;コードFER ER1721)又はXagl(コスモ・バイオ株式会社;コードFER ER1301)の使用説明書に従い、3時間反応させた。
【0029】
[RFLP法]
3%アガロースゲルを用いてアガロースゲル電気泳動を行った。RFLP法による遺伝子型の解析方法の概要を図3、図4に示す。具体的結果を図5、図6に示す。
【0030】
図3は、遺伝子型解析方法の一例(ミスマッチ・プライマー法/Aasl)を示す概略図である。ここでは、AaslでPCR増幅産物を消化し、T5型の対立遺伝子を切断する場合について説明する。
【0031】
図3(A)は、配列番号2のリバースプライマーが染色体DNA(対立遺伝子の一方)アニールした様子を示している。 図3(B)は、上記条件で、PCR増幅を行った後の塩基配列を示している。リバースプライマーの3’末端から3番がAであるため、増幅産物はGがT(下線)に置換(ミスマッチ)される。これによって、Aaslの認識配列(GACNGTC)を増幅産物の配列中に作り出すことができる。
【0032】
図3(C)は、Aaslの消化位置(一点鎖線)を示す。対立遺伝子がT5型であれば、図3(C)の配列上でGACとGTCの配列の間に存在する塩基対の数が6塩基となるため、Aaslによって約155bpと約20bpに切断される。一方、対立遺伝子がT6型であれば、図3(C)の配列上でGACとGTCの配列の間に存在する塩基対の数が7塩基となるため消化されない。
【0033】
従って、配列番号1、2のプライマーセットを用いて増幅したPCR産物を、Aaslの消化反応に供すれば、アガロースゲル電気泳動法によって、容易に対立遺伝子がT5型か、T6型かを解析することができる。
【0034】
図4は、遺伝子型解析方法の一例(ミスマッチ・プライマー法/Xagl)を示す概略図である。ここでは、XaglでPCR増幅物を消化し、T6型の対立遺伝子を切断する場合について説明する。
【0035】
図4(A)は、配列番号3のフォワードプライマーが染色体DNA(対立遺伝子の一方)にアニールした様子を示している。 図4(B)は、上記条件で、PCR増幅を行った後の塩基配列を示している。フォワードプライマーの3’末端から4番がCであるため、増幅産物はTがG(下線)に置換(ミスマッチ)される。これによって、Xaglの認識配列(CCTNAGG)を増幅産物の配列中に作り出すことができる。
【0036】
図4(C)は、Xaglの消化位置(一点鎖線)を示す。対立遺伝子がT6型であれば、図4(C)の配列上でCCTとAGGの配列の間に存在する塩基対の数が5塩基となるため、Xaglによって約165bpと約20bpに切断される。一方、対立遺伝子がT5型であれば消化されない。
【0037】
従って、配列番号3、4のプライマーセットを用いて増幅したPCR産物を、Xaglの消化反応に供すれば、アガロースゲル電気泳動法によって、容易に対立遺伝子がT5型か、T6型かを解析することができる。
【0038】
図5は、RFLP法(Xagl)により、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子エクソン2の多型を解析した結果を示す図である。
【0039】
図5に示す写真は、個別の豚(15頭)から上記方法にて抽出したゲノムDNAを基質に、上記Xagl用プライマーセット、上記反応条件でPCR増幅したブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の部分配列約185bp増幅産物の上記反応条件にてXagl消化し、3%アガロースゲル電気泳動法の結果である。定法にしたがい臭化エチジウム(EtBr)液に浸漬し染色した後、紫外線光下で撮影を行ったものである。
【0040】
レーン1がサイズマーカー(M)で、100bp間隔で1kb〜100bpを示す。レーン2〜16の被検体である。T5/T5はそれぞれの対立遺伝子がT5型のホモ接合型、T5/T6型は対立遺伝子がT5型とT6型のヘテロ接合型、T6/T6はそれぞれの対立遺伝子がT6型のホモ接合型であることを意味する(図6において同じ)。
【0041】
Xaglの切断パターンによって遺伝子型が解析できる。即ち、対立遺伝子がT5型の場合切断されず約185bp(左向矢印)の位置にのみバンドが確認できる。一方、対立遺伝子がT6型の場合は切断され約165bp(左向矢印)及び約20bpの位置にバンドが確認できる。
【0042】
従って、対立遺伝子がそれぞれT5型であるホモ接合の場合は、約185bpの位置のみにバンドが確認され、対立遺伝子がそれぞれT6型であるホモ接合の場合は、約165bp及び約20bpの位置にバンドが確認される。また対立遺伝子がT5/T6型のヘテロ接合の場合は、約185bp、約165bp及び約20bpの位置にそれぞれバンドが確認できる。
【0043】
レーン2〜16を上記に従い遺伝子型を解析すると、レーン2〜16の上部に記載さいた遺伝子型であることが分かる。即ち、レーン2〜4がT6型のホモ接合、レーン5〜13がT5/T6型のヘテロ接合、レーン14、15がT5型のホモ接合である。
【0044】
なお、約20bpのバンドは、DNA長が短くEtBrの発色が弱いため確認が困難である。また、レーン2〜16の全てでマーカー100bpの下方に確認できる低分子のバンドはプライマーダイマーであると思われ、多型解析には関係ない。
【0045】
また、制限酵素処理に供するPCR産物の量が過剰の場合は、例えばT6型のホモ接合であっても、レーン4のように未切断の断片がわずかに残ることがある。このような分離像の場合には、再試験を行うことが好ましい。しかし、レーン5〜13のT5/T6型のヘテロ接合の分離像とは、バンドの濃淡が異なるので熟練した術者ならこの程度であれば区別できる。
【0046】
T5/T6型のヘテロ接合の場合、切断されないT5型由来の約185bpは、切断されて生じるT6型由来の約165bpに比べ、バンドのシグナル強度が常に強い。これは切断後のDNAの長さに起因していることに加え、T6型をテンプレートする場合何らかの理由でPCR増幅効率に差があることも考えられる。
【0047】
再試験として、Xaglによる再消化及びアガロースゲル電気泳動法によってもよいが、後述のAasl用プライマーセットによるPCR増幅、及びAasl消化及びアガロースゲル電気泳動法による解析をすることで、より精度よく解析できる。
【0048】
図6は、RFLP法(Aasl)により、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子エクソン2の多型を解析した結果を示す図である。
【0049】
図6に示す写真は、個別の豚(図5の豚とは異なる10頭)から上記方法にて抽出したゲノムDNAを基質に、上記Aasl用プライマーセット、上記反応条件でPCR増幅したブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の部分配列約175bp増幅産物の上記反応条件にてAasl消化し、3%アガロースゲル電気泳動法の結果である。定法にしたがい臭化エチジウム(EtBr)液に浸漬し染色した後、紫外線光下で撮影を行ったものである。
【0050】
レーン1がサイズマーカー(M)で、100bp間隔で1kb〜100bpを示す。レーン2〜11が被検体である。Aaslの切断パターンによって遺伝子型が解析できる。即ち、対立遺伝子がT5型の場合切断され約155bp(左向矢印)及び約20bpの位置にバンドが確認できる。一方、対立遺伝子がT6型の場合は切断されず約175bp(左向矢印)の位置にのみバンドが確認できる。
【0051】
従って、対立遺伝子がそれぞれT5型であるホモ接合の場合は、約155bp(左向矢印)及び約20bpの位置にバンドが確認され、対立遺伝子がそれぞれT6型であるホモ接合の場合は、約175bpの位置にのみバンドが確認される。また対立遺伝子がT5/T6型のヘテロ接合の場合は、約175bp、約155bp及び約20bpの位置にそれぞれバンドが確認できる。
【0052】
レーン2〜11を上記に従い遺伝子型を解析すると、レーン2〜11の上部に記載さいた遺伝子型であることが分かる。即ち、レーン2〜7、9〜11がT5/T6型のヘテロ接合、レーン8がT6型のホモ接合である。
【0053】
なお、約20bpのバンドは、DNA長が短くEtBrの発色が弱いため確認が困難である。また、レーン2〜11の全てでマーカー100bpの下方に確認できる低分子のバンドはプライマーダイマーであると思われ、多型解析には関係ない。
【0054】
また、レーン2においては、解析に供するPCR産物量が不足気味で泳動バンドが不明瞭になり判定が困難になっている。しかし、この程度までであれば判断をすることはでき、解析を信頼できる。
【0055】
レーン3では、解析に供するPCR産物量が不足しているため遺伝子型解析を保留した。その後、試料量を増やして電気泳動を行った結果、レーン3は約175bp及び約155bpのバンドが確認でき、T5/T6型のヘテロ接合であることが判明した。なお、高感度カメラ等、核酸の検出感度のよい装置を利用すれば、用いる試料の量を減らすことができる。
【0056】
以上のように、遺伝子型解析には、検出効率においてどちらも大差がないことから、Xagl反応単独でもAasl反応単独でも構わない。また、Aasl、Xaglそれぞれ単独による解析でなく、両酵素による解析を行うことでより精度が増す。或いは、一方の制限酵素でRFLP法解析を行い、結果が不明瞭なときに誤判定を避けるためさらに他方の制限酵素によるRFLP法解析を行ってもよい。
【0057】
このことから、ミスマッチプライマーPCR法で、目的の部位を増幅し、RFLP法と組み合わせることで、アガロースゲル電気泳動によって、簡易にブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型が解析できることが分かる。
【0058】
なお、多型解析として、ここではミスマッチプライマーPCR法とRFLP法を組み合わせる多型の解析方法について説明したが、ミスマッチプライマーPCR法とRFLP法を組み合わせる多型の解析方法でなくとも、エクソン2の20番目にTが挿入されているか、いないかを解析するために、染色体の塩基配列を直接シーケンスしてもよく、一旦ベクター等にクローニングしたものを用いて塩基配列を決定し解析してもよい。
【0059】
或いは、 多型を解析する方法として、RFLP法の他、単鎖コンホーメーション多形分析法(SSCP)、変性勾配ゲル電気泳動法(DGGE)、及び、飛行時間型質量分析装置(TOF−MS)による核酸断片の質量分析法などが例示できる。
【0060】
例えば、TOF−MSによる核酸断片の質量分析法においては、エクソン2における連続したTの繰り返し(5回又は6回)部分を含むDNA断片をPCRにより増幅し、TOF−MSを用いて質量を分析すれば、Tの繰り返し数(5回又は6回)の違いを質量の差として容易に検出することが可能である。
【0061】
要は、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のエクソン2におけるヌクレオチド配列に存在する連続したTの反復回数が5回であるか6回であるかに基づき、あるいはエクソン2の20番目にTが挿入されているかいないかを解析できれば、如何なる方法を採用してもよい。従って、アガロースゲル電気泳動法によるRFLP法でなく、他の方法が採用できる。
【0062】
当然、プライマーについても、ここに記載したプライマーに限定することをなく、Tが挿入されるエクソン2の20番目を含む近傍を増幅できれば、特に限定されない。
【0063】
また、塩基配列を決定せず、抗原交配反応、アミノ酸配列を解析し、T6型のように、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のC末端にアミノ酸残基がT5型に比べ少ない(2アミノ酸残基)があることを判断できればそれでもよい。
【0064】
例えば、ブタベータ3アドレナリンレセプターのアミノ酸配列における398番目のアミノ残基がAsnであるかAspであるかを解析することで、間接的にアミノ酸残基の数を推測することができる。即ち、T6型であれば翻訳産物における398番目のアミノ産残基がAspであるが、T5型ではAsnである。このように目的とするエクソン2におけるTの繰り返し数の多型と強固に連鎖し連鎖不平衡にある多型部位を解析することで、結果としてブタの形質を診断することができる。
【0065】
次に、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型と、ブタの形質の関係について述べる。
【0066】
上記のミスマッチプライマーPCR法で、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のエクソン2の20番目を含む領域を増幅し、RFLP法と組み合わせ、診断したブタ(デュロック種)の遺伝子型(T5/T5、T5/T6、T6/T6)と形質(肉質)として、ロース面積に着目し、前記遺伝子型と相関があるか調べた。
【0067】
図7は、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型と、ロース面積の関係を示す図表である。図7(A)が統計値、図7(B)が(A)をグラフ化したものである。
【0068】
測定対象は、全国農業協同組合連合会所有のデュロック種、雄323頭、雌359頭である。雄・雌毎のロース面積をブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型別に3群に分類し、それぞれの平均値を図7(A)に示した。
【0069】
ロース面積は、Bモード超音波診断装置(販売:アロカ株式会社 製品番号SSD500EV)を用いて、豚の体重が凡そ90〜100kg到達時に、体長の1/2の部位に位置するロース部分の画像を撮影し、ロース部分の面積をイメージ解析ソフトウェア(販売:株式会社ヒューリンクス ソフトウェア名:SigmaScan Pro)を用いて測定した。
【0070】
その結果、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型の違いにより、ロース面積にも違いが確認された。即ち、T5/T5型、T5/T6型、T6/T6型の順にロース面積は大きくなる傾向があった。よって、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の対立遺伝子の遺伝型にT5型を有するブタのロース面積は小さい傾向にあると言える。また、その差は雄より雌の方がより顕著であった。
【0071】
図8は、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型と、ロース面積の育種価の関係を示す図表である。図8(A)が統計値、図8(B)が(A)をグラフ化したものである。
【0072】
ロース面積の育種価の算出対象は、全国農業協同組合連合会所有のデュロック種、雄323頭、雌359頭である。雄・雌毎のロース面積の育種価をブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型別に3群に分類し、それぞれの平均値を図8(A)に示した。
【0073】
ロース面積の育種価は、他の形質の測定値(例えば背脂肪厚、検定時体重等)及び豚の血統情報を基に、多形質アニマルモデルBLUP(Best Linear Unbiased Predictor)法で算出した。この時、育種価算出のプログラムとしてPESTを用いた。
【0074】
育種価とは、当該個体が持つ量的形質に働く各対立遺伝子の相加的遺伝子効果の総和のことであり、当該個体の育種価はその個体の子の平均値の集団平均からの偏差の2倍としても定義される。家畜の育種改良の中で最も重要な値である。
【0075】
BLUP法とは、育種価を求める方法の1つであり、測定年次等の母数効果を取り除き、さらに個体の血縁情報を加味することで、最も正確かつ偏りがない育種価を予測する方法である。BLUP法は家畜の育種改良において、育種価を求める際、一般的に使われている手法である。
【0076】
その結果、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型の違いにより、ロース面積の育種価にも違いが確認された。即ち、T5/T5型、T5/T6型、T6/T6型の順にロース面積の育種価は大きくなる傾向があった。よって、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の対立遺伝子の遺伝子型にT5型を有するブタのロース面積の育種価は小さい傾向にあると言える。また、その差は雄より雌の方がより顕著であった。
【0077】
図9は、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型間におけるロース面積の平均値及びロース面積の育種価の平均値の検定を分散分析で行った結果を示した表である。
【0078】
上記分散分析を行うに当たり、一般的に、ロース面積の大きさは測定時の体重と相関があるため、測定時の体重を共変量として使用した。すなわち、ロース面積の分散分析による検定方法として、遺伝子型を独立変数とし、共変量としてロース面積測定時の体重を用いた共分散分析を行った。ロース面積の育種価の場合、育種価算出時に測定時体重が既にBLUP法のモデルに含まれている。そのため、ロース面積の育種価の検定方法として遺伝子型を独立変数とした一元配置の分散分析を行った。
【0079】
その結果、雌のロース面積においてブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型間で有意差(p=0.002)、さらに雄・雌のロース面積の育種価(それぞれp<0.001、<0.001)でもブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型間で有意差があった。しかし、各遺伝子型間において測定時の体重の平均に有意差は存在しなかった(p>0.3図9)。すなわち、図7、図8に示した遺伝子型によるロース面積の平均及びロース面積の育種価の増減は、体重の増減を伴っていない。
【0080】
次いで、遺伝子型間で有意差が認められた雌のロース面積及び雄・雌のロース面積の育種価について、Tukey検定を用いて群間比較検定を行い、図9において、数値の後に符号(a、ab、b)を付してそれぞれの群間の有意差の有無を表した。5%未満の危険率で有意差がある遺伝子型に数値の後に異符号(a、b)を付した。例えば、図9(B)の雌のロース面積(cm)の平均においては、T5/T5型(b)、T5/T6(ab)、T6/T6(a)であるので、T5/T5型()とT5/T6(a)間では、同符号()が付されているので有意差がないことを意味する。同様に、T5/T6(ab)とT6/T6(a)間では、同符号()が付されているので有意差はない。また、T5/T5型(b)とT6/T6(a)間では、異符号のみであるので、有意差があることを意味する。
【0081】
図9から明らかなように、雄雌(A)(B)の両方においてT6/T6型のロース面積の育種価の平均値は、T5/T6型、T5/T5型のロース面積の育種価の平均に対して有意差が認められた。また、雌(B)の表現型であるロース面積(cm)の平均値においてもT6/T6型はT5/T6型、T5/T5型に対して有意差が認められた。
【0082】
以上のように、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型と、ブタのロース面積に関係があることが見いだされた。従って、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子を遺伝マーカーとすることで、所望の形質(ロース面積が大きいもしくは小さい)を持つ豚を予測することが幼少期の段階で可能となるため、効率的に所望の形質(ロース面積が大きいもしくは小さい)を持つ系統を作出する手段として有用である。
【0083】
所定の形質のブタを選択し、育成、又は繁殖するブタの育種方法として、例えば、雄T6/T6型、雌T6/T6型を掛け合わせると、よりロース面積の大きいブタの系統が造成可能である。逆に、ロース面積が大きすぎる系統に対しては、T5/T5型、T5/T6型を導入することで、他の形質(体型や筋肉内脂肪等)を維持しつつ、ロース面積の低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の構造及びいくつかのイノシシ、ブタのベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のアミノ酸配列を比較した図である。
【図2】図1のベータ3アドレナリンレセプター遺伝子末端部である。
【図3】遺伝子型解析方法の一例(ミスマッチ・プライマー法/Aasl)を示す概略図である。
【図4】遺伝子型解析方法の一例(ミスマッチ・プライマー法/Xagl)を示す概略図である。
【図5】RFLP法(Xagl)により、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子エクソン2の多型を解析した結果を示す図である。
【図6】RFLP法(Aasl)により、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子エクソン2の多型を解析した結果を示す図である。
【図7】ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型と、ロース面積の関係を示す図表である。
【図8】ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型と、ロース面積の育種価の関係を示す図表である。
【図9】ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の遺伝子型とロース面積及びロース面積の育種価の有意差判定結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタベータ3アドレナリンレセプターのC末端部を解析し、アミノ酸残基数の違いに基づいて、ブタ(個体)のロース面積が大きい若しくは小さい形質を判断することを特徴とするブタ形質診断方法。
【請求項2】
ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型を解析し、ブタ(個体)の形質を判断することを特徴とするブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法。
【請求項3】
前記多型の位置が、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のエクソン2の20番目の塩基配列であることを特徴とする請求項2に記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法。
【請求項4】
前記20番目が、T又はAであるかを解析することを特徴とする請求項3に記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法。
【請求項5】
前記多型の解析が、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のエクソン2におけるヌクレオチド配列に存在する連続したTの反復回数が5回であるか6回であるかに基づくことを特徴とする請求項2に記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法。
【請求項6】
前記多型の解析に、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする請求項2〜請求項5の何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法。
【請求項7】
前記解析が、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子、又はRNAを増幅し、制限酵素で消化し、アガロースゲル電気泳動法により、増幅遺伝子の切断パターン基づく解析であることを特徴とする請求項2〜請求項6に何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法。
【請求項8】
前記増幅に、配列番号1及び配列番号2のプライマーペアー、又は配列番号3及び配列番号4のプライマーペアーを用いることを特徴とする請求項7に記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法。
【請求項9】
前記解析が、単鎖コンホーメーション多形分析法(SSCP)、又は変性勾配ゲル電気泳動法(DGGE)、或いは飛行時間型質量分析装置(TOF−MS)による核酸断片の質量分析法であることを特徴とする請求項2〜請求項5に何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法。
【請求項10】
前記解析が、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子近傍に存在し、ブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子のエクソン2におけるヌクレオチド配列に存在する連続したT(チミン)の反復回数が、5回である対立遺伝子、もしくは6回である対立遺伝子に対して、強い連鎖不平衡にあるゲノム配列上の多型を解析し、間接的にブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型を解析することを特徴とする請求項2〜請求項5に何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法。
【請求項11】
前記形質が、ロース面積が大きい若しくは小さいことを特徴とする請求項2〜10の何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法。
【請求項12】
前記請求項1〜請求項10の何れかに記載のブタ形質診断方法に基づき、所定の形質のブタを選択し、育成、又は繁殖することを特徴とするブタの育種方法。
【請求項13】
前記請求項2〜請求項8の何れかに記載のブタベータ3アドレナリンレセプター遺伝子の多型に基づくブタ形質診断方法に用いられるプライマーペアー、DNA複製酵素、制限酵素を必須とするブタの遺伝子型解析診断キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−301718(P2008−301718A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149480(P2007−149480)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(502341546)学校法人麻布獣医学園 (17)
【出願人】(000201641)全国農業協同組合連合会 (69)
【Fターム(参考)】