説明

ブッシング端子カバー

【課題】塩害が生じたときに電気機器のケースに漏洩電流が流れるのを防ぐことができるようにしたブッシング端子カバーを提供する。
【解決手段】ヒンジ部400により開閉自在に連結された第1及び第2のカバー半部401及び402により、ブッシング端子1の端子導体103の端子部103aと該端子部に接続された電線3の端子部寄りの部分とを覆うカバー主部403aと、端子導体のフランジ部の外周を取り囲む環状のカバー端末部403bと、端子導体のフランジ部103bの軸線方向端面に係合して位置決めを図る位置決め部403cと、カバー主部403aより外方に導出される電線3の外周を覆う電線被覆部403dとを一体に有するカバー403を構成する。カバー端末部403bとブッシングの先端の傘部101aとの間に隙間が形成されるようにカバー端末部の軸線方向長さを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動電圧調整器等の電気機器のケースに取り付けられるブッシング端子の充電部を覆うブッシング端子カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動電圧調整器等の電気機器においては、作業員が誤ってブッシング端子の充電部に触れて感電事故を起こしたり、鳥や樹木の枝等がブッシング端子の充電部に触れて地絡事故が発生したりするおそれがある。そのため、特許文献1に示されているように、ブッシング端子にカバーを取り付けて、その充電部を覆うようにしている。
【0003】
図5は、従来のブッシング端子カバーを示したもので、同図において1は電気機器のケース2に後端部が取り付けられたブッシング端子、3はブッシング端子1に接続された絶縁被覆電線、4′はブッシング端子カバーである。
【0004】
ブッシング端子1は、軸線方向に並ぶ複数の傘部101aを外周に有して、後端部に設けられた管状の首下部101bが電気機器のケース2を貫通して該ケースに固定される絶縁性のブッシング101と、ブッシング101の軸心部を貫通している中心導体102と、中心導体102の先端に接続された端子導体103とにより構成されている。端子導体103は、電線3が接続される端子部103aと端子部103aの基部に設けられたフランジ部103bとを有して、フランジ部103bがブッシング101の先端側で中心導体102に接続されている。電線3の芯線の一端に端子金具5が接続され、端子金具5がボルト6とナット7とにより端子導体103の端子部103aに接続されている。電線3の芯線の他端は、図示しない充電部に接続されている。
【0005】
ブッシング端子カバー4′は、ブッシング端子の端子導体103と、電線3と端子導体103との接続部とを含む充電部を電線3の一部とともに内部に収容して覆うように形成された筒状体からなっていて、その軸線方向の一端には、端子導体103のフランジ部103bの外周に嵌合されるように径が縮小された縮径部4a′が形成され、軸線方向の他端には、端子導体103から外部に引き出される電線3を被覆する電線被覆部4b′が形成されている。
【0006】
従来のこの種のブッシング端子カバー4′は、図示のように、その軸線方向の一端に設けられた縮径部4a′の先端をブッシング101の先端に設けられた傘部101aに接触させた状態で軸線方向に位置決めされてブッシング端子1に取り付けられる。ブッシング端子カバー4′は、その縮径部4a′が傘部101aに突き当てられることにより、ブッシング端子の軸線方向に位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−357438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5に示された従来のブッシング端子カバー4′は、その一端の縮径部4a′をブッシングの傘部101aに接触させた状態でブッシング端子1に取り付けられていたため、電線3の外面と、ブッシング端子カバー4′の外面及びブッシング101の外面とに導電性の皮膜が形成されたときに、ブッシング端子カバー4′が、電線3の外面とブッシング101の外面との間をつなぐ漏洩電流通路を形成するおそれがあり、これによりブッシング端子の絶縁性能が低下するおそれがあった。
【0009】
例えば、図5に示されたケース2が自動電圧調整器のケースであって、ブッシング端子1が、ケース内の自動電圧調整器に接続され、高圧配電線から引き込まれた電線3がブッシング端子1の端子導体103に接続されている場合に、ブッシング端子1の充電部を覆うために、図示のブッシング端子カバー4′がブッシング端子1に取り付けられているとする。この場合、塩害により、電線3の絶縁被覆の外面と、ブッシング端子カバー4′の外面と、ブッシング101の外面とに塩分を含んだ導電性の皮膜が形成されると、高圧配電線と電線3との接続部から電線3の外面と、ブッシング端子カバー4′の外面と、ブッシング101の外面とを通して接地電位にあるケース2に至る連続した漏洩電流通路が形成され、この漏洩電流通路を通して漏洩電流が継続的に流れる状態になる。このような状態を放置すると、やがて地絡事故が発生して停電が生じるおそれがある。
【0010】
また従来のブッシング端子カバーは、その内部に侵入した水を抜くための手段を備えていなかったたため、端子カバー内に水が溜りやすく、このことが、上記のような現象が起こるのを助長するという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、電線の外面とブッシングの外面との間に漏洩電流通路を形成することがなく、ブッシング端子の絶縁性能を低下させるおそれがないブッシング端子カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、軸線方向に並ぶ複数の傘部を外周に有して後端部が電気機器に取り付けられる絶縁性のブッシングと、ブッシングの軸心部を貫通している中心導体と、電線が接続される端子部と該端子部の基部に設けられたフランジ部とを有して該フランジ部がブッシングの先端側で中心導体に接続された端子導体とを備えたブッシング端子の前記端子導体と該端子導体の端子部に接続された電線の少なくとも一部とを要被覆部として覆うブッシング端子カバーを対象とする。
【0013】
本発明に係わるブッシング端子カバーは、ヒンジ部により開閉自在に連結された絶縁樹脂製の第1及び第2のカバー半部からなっていて、第1及び第2のカバー半部を閉じて突き合わせた際に前記要被覆部を内側に収容して覆う筒状のカバーが形成されるように構成されている。第1及び第2のカバー半部には、互いに弾撥的に結合し合って両カバー半部を閉じた状態に保持する第1及び第2の結合部がそれぞれ設けられている。
【0014】
第1及び第2のカバー半部を閉じた際に形成されるカバーは、端子導体の端子部と該端子部に接続された電線の該端子部寄りの部分とを覆うことができるように形成されたカバー主部と、端子導体のフランジ部の外周を取り囲んだ状態で配置される環状のカバー端末部と、端子導体のフランジ部の端子部側の軸線方向端面に係合して筒状のカバーをブッシングの軸線方向に位置決めする位置決め部と、端子部に接続された電線のカバー主部により覆われた部分よりも更に端子部から離れた部分の絶縁被覆の外周に嵌合して該電線を覆う電線被覆部とを一体に有している。
【0015】
また環状のカバー端末部の内周部は、端子導体のフランジ部の外周に接した状態で配置されて該カバー端末部を該フランジ部に対して位置決めする凸部とフランジ部の外周との間に隙間を形成する凹部とを有する形状に形成され、位置決め部には、カバー主部の内側の空間をカバー端末部とフランジ部との間に形成された隙間に連通させる連通路が形成されている。そして、カバーで要被覆部を覆って該カバーを位置決め部により軸線方向に位置決めした際にカバー端末部と該カバー端末部に最も近い位置にあるブッシングの傘部との間に周方向に連続した隙間が形成されるようにカバー端末部の軸線方向長さが設定されていて、カバー端末部と傘部との間に形成される連続した隙間により、カバー端末部がブッシングから隔絶されるように(カバー端末部がブッシングに接触しないように)構成されている。
【0016】
上記のブッシング端子カバーは、第1のカバー半部と第2のカバー半部を電線が接続されたブッシング端子の充電部の側方に配置し、位置決め部をブッシング端子のフランジ部の端面に当てがった状態で、両カバー半部を閉じて第1及び第2の結合部を弾撥的に結合することにより、ブッシング端子に容易に取り付けることができる。ブッシング端子に取り付けられたカバーは、その位置決め部がブッシング端子の端子導体のフランジ部の端面に係合することにより、ブッシングの軸線方向に位置決めされるため、ブッシング端子にカバーを取り付けた後に該カバーに外力が作用したとしても、カバー端末部がブッシングの傘部に接触した状態になることはない。
【0017】
ブッシング端子カバーをブッシング端子に取り付けた状態では、カバー端末部とブッシングの先端に設けられた傘部との間にブッシングの周方向に連続する隙間が形成され、この隙間によりブッシング端子カバーがブッシングから隔絶されるため、塩害等により電線の外面と、ブッシング端子カバーの外面と、ブッシングの外面とに導電性を有する皮膜が形成された際に、電線の外面とカバーの外面とブッシングの外面とを通して電気機器のケースに至る連続した漏洩電流通路が形成されるのを防ぐことができる。
【0018】
また上記のように構成すると、カバー内に侵入した水は、位置決め部に設けられた連通路とカバー端末部の内側に形成された隙間とを通して外部に排出されるため、カバー内に水が溜まるのを防ぐことができる。
【0019】
本発明の好ましい態様では、電線被覆部が、異なる外径を有する電線に適合するように内径を異ならせた複数のセクションからなっていて、該複数のセクションがカバー主部側から内径が大きい順に並んだ状態で連結された構造を有し、電線被覆部の隣り合うセクション間の境界部で電線被覆部を切断し得るようになっている。
【0020】
上記のように電線被覆部を構成しておくと、ブッシング端子に種々の外径を有する電線が接続する場合に対応することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ブッシング端子カバーをブッシング端子に取り付けた状態で、カバー端末部とブッシングの先端に設けられた傘部との間にブッシングの周方向に連続する隙間が形成されるようにしたので、塩害等により電線の絶縁被覆の外面とブッシング端子カバーの外面とブッシングの外面とに導電性を有する皮膜が形成された際に、電線の外面からブッシング端子カバーの外面とブッシングの外面とを通して電気機器のケースに至る連続した漏洩電流通路が形成されるのを防いで、電気機器のケースに漏洩電流が流れるのを防ぐことができ、この状態が継続して地絡事故に発展するのを防ぐことができる。
【0022】
またブッシング端子に取り付けられた本発明に係わるブッシング端子カバーは、その位置決め部がブッシング端子の端子導体のフランジに係合することにより軸線方向に位置決めされるので、ブッシング端子に取り付けられたカバーが外力により軸線方向に動いて、カバー端末部がブッシングの傘部に接触した状態になるのを防ぐことができる。従って、カバー端末部とブッシングの傘部との間に隙間が形成された状態を維持して、漏洩電流通路の形成を防ぐ効果が得られる状態を維持することができ、信頼性を高めることができる。
【0023】
また本発明によれば、カバー主部の内部に侵入した水を、位置決め部に設けられた連通路とカバー端末部の内側に形成された隙間とを通して外部に排出することができるため、カバー内に水が溜まるのを防ぐことができ、カバー内に溜まった水により漏洩電流通路の形成が助長されてブッシング端子の絶縁性能が低下するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係わるブッシング端子カバーをブッシング端子に取り付けた状態を示した断面図である。
【図2】(A)は本発明の一実施形態に係わるブッシング端子カバーの正面図、(B)は同ブッシング端子カバーの右側面図である。
【図3】(A)は本発明の一実施形態に係わるブッシング端子カバーの上面図、(B)は同ブッシング端子カバーの底面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係わるブッシング端子カバーで用いる第1及び第2の結合部の構造を示した要部拡大断面図である。
【図5】従来のブッシング端子カバーをブッシング端子に取り付けた状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。本実施形態では、ブッシング端子が取り付けられている電気機器が自動電圧調整器であるとする。図1は本実施形態に係わるブッシング端子カバーをブッシング端子に取り付けた状態を示した断面図で、同図において1は電気機器(自動電圧調整器)のケース2に後端部が取り付けられたブッシング端子、3はブッシング端子1に接続された絶縁被覆電線、4は本発明に係わるブッシング端子カバーである。
【0026】
ブッシング端子1は、図5に示されたものと同様に、軸線方向に並ぶ複数の傘部101aを外周に有して、後端部に設けられた管状の首下部101bが電気機器のケース2を貫通して該ケースに固定される絶縁性のブッシング101と、ブッシング101の軸心部を貫通している中心導体102と、中心導体102の先端に接続された端子導体103とにより構成されている。ブッシング端子を電気機器のケース2に取り付けている取付部の詳細な図示は省略されている。
【0027】
端子導体103は、電線3が接続される板状の端子部103aと、端子部103aの基部に設けられた円板状のフランジ部103bとを有して、フランジ部103bがブッシング101の先端側で中心導体102に接続されている。端子導体103のフランジ部103bの外径は、ブッシング101の先端部(ブッシングの先端に最も近い位置にある傘部101aよりも更に先端側の部分)101cの外径よりも大きく設定されている。ブッシング端子1の中心導体102には、ケース2内に収容された自動電圧調整器から引出された口出し線が接続されている。
【0028】
ブッシング端子の端子導体103は、絶縁被覆電線3を通して図示しない高圧配電線に接続されている。図示の例では、電線3の芯線の一端に端子金具5に設けられた圧着端子部5aが接続され、端子金具5に設けられた端子板5bが端子導体103の端子部103aに重ねられて、端子部103aにボルト6とナット7とにより接続されている。
【0029】
本発明に係わるブッシング端子カバー4は、ブッシング端子1の端子導体103と、端子導体の端子部103aに接続された電線3の少なくとも一部とを要被覆部10として覆うものである。図2に示されているように、本実施形態に係わるブッシング端子カバー4は、ヒンジ部400により開閉自在に連結された絶縁樹脂製の第1のカバー半部401と第2のカバー半部402とからなっていて、第1及び第2のカバー半部401及び402を閉じて突き合わせた際に要被覆部10を内側に収容して覆う筒状のカバー403が形成されるように構成されている。
【0030】
ブッシング端子カバー4を構成する第1及び第2のカバー半部401及び402は、要被覆部10を収容し得る大きさの円筒体を中心軸線を含む平面の両側に2分割した形状を有している。第1及び第2のカバー半部401及び402の互いに突き合わされる部分には、板状の張出し部401a及び402aが形成され、第1及び第2のカバー半部401及び402が閉じられた際に張出し部401a及び402aが重なり合うようになっている。
【0031】
第1及び第2のカバー半部には、互いに弾撥的に結合し合って両カバー半部を閉じた状態に保持する第1の結合部401b及び第2の結合部402bがそれぞれ設けられている。第1及び第2の結合部は、スナップ式に結合される結合部で、本実施形態では、図4に示されているように、第1の結合部401bが張出し部401aに一体に形成された突起からなり、第2の結合部402bが張出し部402aに形成された孔からなっている。第1の結合部401bを構成する突起は先端に拡大頭部401b1を有していて、拡大頭部401b1が対応する第2の結合部402bを構成する孔に弾撥的に嵌合することにより第1の結合部401bと第2の結合部402bとが結合される。
【0032】
第1及び第2のカバー半部401及び402を閉じた際に形成されるカバー403は、端子導体103の端子部103aと該端子部に接続された電線3の端子部103a寄りの部分とを覆うことができるように形成されたカバー主部403aと、カバー主部403aのブッシング端子部1側の端部に連続して設けられて、端子導体103のフランジ部103bの外周を取り囲んだ状態で配置される環状のカバー端末部403bと、端子導体103のフランジ部103bの端子部103a側の軸線方向端面103b1に係合してカバー403をブッシング101の軸線方向に位置決めする位置決め部403cと、カバー主部403aのブッシング端子103と反対側に位置する端部に連続して形成されて端子部103に接続された電線3のカバー主部403aにより覆われた部分よりも更に端子部103aから離れた部分の絶縁被覆の外周に嵌合して該電線3を覆う電線被覆部403dとを一体に有している。
【0033】
即ち、第1及び第2のカバー半部401及び402は、両カバー半部を閉じた際に、上記カバー主部403aと、カバー端末部403bと、位置決め部403cと、電線被覆部403dとを有する筒状のカバー403が形成されるように、それぞれの形状が定められている。
【0034】
環状のカバー端末部403bは、図3(B)に示されているように、波形の形状を呈するように形成されていて、その内周部に、端子導体103のフランジ部103bの外周に接した状態で配置される凸部403b1と、フランジ部103bの外周との間に隙間を形成する凹部403b2とが交互に並んだ状態で形成されている。カバー端末部403bは、その内周の凸部403b1がフランジ部103bの外周に接することにより、フランジ部103bの径方向に位置決めされる。本実施形態では、カバー端末部403bが波形に形成されているため、カバー端末部403bの外周にも凸部と凹部とが周方向に交互に並んだ状態で形成されている。
【0035】
また位置決め部403cは、カバー端末部403bのブッシング101と反対側の端部の内周部から径方向の内側に張り出した状態で設けられた板状の部分からなっていて、カバー主部403aの内側の空間をカバー端末部403bとフランジ部103bとの間に形成された隙間gに連通させる連通路11が形成されるように、位置決め部403cを構成する板状部分の一部が切り欠かれている。
【0036】
そして本実施形態においては、カバー4で要被覆部10を覆って該カバーを位置決め部403cにより軸線方向に位置決めした際に、カバー端末部403bのブッシング101側の端面が、端子導体のフランジ部103bのブッシング側の端面の位置を越えてブッシング側に寄った位置に配置されるように、かつ、カバー端末部403bと該カバー端末部に最も近い位置にあるブッシングの傘部101aとの間にブッシング101の周方向に連続した隙間Gが形成されるように、カバー端末部403bの軸線方向長さが設定されている。またブッシング端末部403bは、その凸部403b1よりも更に内径側に突出した部分を有しないように形成されていて、ブッシング端子カバー4をブッシング端子1に取り付けた状態で、カバー端末部403bの内周とブッシング101の先端部101cの外周との間にも、ブッシング101の周方向に連続した隙間が形成されるようになっている。即ち、ブッシング端子カバー4がブッシング端子1に取り付けられて、位置決め部403cによりブッシング端子の軸線方向に位置決めされた状態にあるときに、カバー端末部403bが、上記隙間Gにより、ブッシング101から隔絶されるように(ブッシング101に接触する部分を一切有しないように)形成されている。
【0037】
電線被覆部403dは、ブッシング端子の端子部103に接続された電線3の、カバー主部403aにより覆われた部分よりも更に端子部103aから離れた部分の絶縁被覆の外周に嵌合して該電線を覆う電線被覆部とを一体に有している。図示の電線被覆部403dは、異なる外径を有する電線3に適合するように内径を異ならせた複数(図示の例では6個)のセクション403d1ないし403d6からなっていて、該複数のセクションがカバー主部403a側から内径が大きい順に並んだ状態で連結された構造を有している。電線被覆部403dは、隣り合うセクション間の境界部で切断し得るように形成されている。
【0038】
上記のブッシング端子カバー4をブッシング端子1に取り付けるに当っては、先ず、電線被覆部403dを構成するセクション403d1ないし403d6の内、端子金具103に接続された電線3の太さに適合する(電線3の外周に密接した状態で嵌合する)内径を有するセクションをブッシング端子カバー4の最先端に位置させるように、不要なセクションを切り離しておく。次いで、第1のカバー半部401と第2のカバー半部402を、電線3が接続されたブッシング端子1の充電部の側方に配置し、位置決め部403cをブッシング端子のフランジ部103bの端面に当てがった状態で、両カバー半部401、402を閉じ、第1及び第2の結合部402b及び402bを弾撥的に結合することにより、ブッシング端子カバー4をブッシング端子1に取り付ける。ブッシング端子に取り付けられたカバー4は、位置決め部403cがブッシング端子1の端子導体のフランジ部103bの端面103b1に係合することにより、ブッシング1の軸線方向に位置決めされるため、ブッシング端子1にカバー4を取り付けた後に該カバーに外力が作用したとしても、カバー端末部403bがブッシングの傘部101aに接触した状態になることはない。
【0039】
本実施形態のように、ブッシング端子の端子導体のフランジ部103bの外径を、ブッシング101の先端部101cの外径よりも大きく設定して、ブッシング端子カバー4をブッシング端子1に取り付けた状態で、フランジ部103bの外周に嵌合されたカバー端末部403bとブッシング101の先端に設けられた傘部101aとの間にブッシングの周方向に連続する隙間Gが形成されるようにしておくと、この隙間Gにより、カバー4とブッシング101との間が隔絶されるため、塩害等により電線3の外面とブッシング端子カバー4の外面とブッシング101の外面とに導電性を有する皮膜が形成された際に、電線3の外面とカバー4の外面とブッシング101の外面とを通して電気機器のケースに至る連続した漏洩電流通路が形成されることがない。従って、電気機器のケースに漏洩電流が流れる状態が生じるのを防ぐことができ、漏洩電流が流れる状態が継続して地絡事故に発展するおそれをなくすことができる。
【0040】
また本実施形態のように、カバー端末部とブッシング端子の端子金具のフランジ部との間に隙間gを形成し、位置決め部403cに切り欠きを形成して、カバー主部403a内と隙間gとを連通させる連通路11を設けておくと、カバー4内に侵入した水を、連通路11及び隙間gを通して外部に排出することができるため、ブッシング端子カバー4内に水が溜まるのを防ぐことができる。
【0041】
また本実施形態のように、電線被覆部403dを、異なる外径を有する電線に適合するように内径を異ならせた複数のセクションにより構成して、電線の外径よりも小さい内径を有する不要なセクションを切り離すようにしておくと、ブッシング端子1に種々の外径を有する電線3が接続される場合に対応することができる。
【0042】
上記の実施形態では、カバー端末部403b全体を波形の形状にして、カバー端末部403bの内周に凸部403b1と凹部403b2とが形成されるようにしたため、カバー端末部403bの外周にも凸部と凹部とが交互に形成されているが、カバー端末部403bの外周面は滑らかな円筒面状とし、内周部のみを凸部403b1と凹部403b2とが交互に並ぶ形状としてもよい。
【0043】
上記の実施形態では、第1及び第2のカバー半部401及び402の、電線被覆部403dを形成する部分の突き合わせ部に、両カバー半部を結合する結合部を設けてないが、第1及び第2のカバー半部401及び402の、電線被覆部403dを形成する部分の突き合わせ部にも結合部を設けるようにしてもよい。
【0044】
ブッシング端子カバー4を硬質の絶縁樹脂により形成する場合には、上記の実施形態のように、電線被覆部403dを形成する部分に結合部を設けなくても特に問題はないが、カバー4を軟質の樹脂により形成する場合には、第1及び第2のカバー半部403を閉じた状態で、電線被覆部が開くおそれがある。このように、電線被覆部403dが開くおそれがある場合には、カバー4をブッシング端子1に取り付けた後、第1及び第2のカバー半部401及び402の、電線被覆部403dを形成する部分の突き合わせ部に接着剤を施して該突き合わせ部を接着するか、または電線被覆部403dの外周にテーピングを施すことにより、電線被覆部403dが開くのを防止するようにすればよい。
【0045】
上記の実施形態では、電線被覆部403dを内径が異なる多数のセクションにより構成したが、対象とするブッシング端子1の端子導体103に接続される電線3の外径が一定である場合には、電線被覆部403dを電線の外径に適合した内径を有する単一のセクションにより構成することができる。
【0046】
上記の説明では、自動電圧調整器のケースに取り付けられるブッシング端子に取り付けるブッシング端子カバーを例にとったが、他の電気機器のケースに取り付けられるブッシング端子に装着するブッシング端子カバーにも本発明を適用できるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
1 ブッシング端子
101 ブッシング
101a 傘部
102 中心導体
103 端子導体
2 電気機器のケース
3 電線
4 ブッシング端子カバー
400 ヒンジ部
401 第1のカバー半部
402 第2のカバー半部
403 筒状のカバー
403a カバー主部
403b カバー端末部
403c 位置決め部
403d 電線被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に並ぶ複数の傘部を外周に有して後端部が電気機器に取り付けられる絶縁性のブッシングと、前記ブッシングの軸心部を貫通している中心導体と、電線が接続される端子部と該端子部の基部に設けられたフランジ部とを有して該フランジ部が前記ブッシングの先端側で前記中心導体に接続された端子導体とを備えたブッシング端子の前記端子導体と該端子導体の端子部に接続された電線の少なくとも一部とを要被覆部として覆うブッシング端子カバーであって、
ヒンジ部により開閉自在に連結された絶縁樹脂製の第1及び第2のカバー半部からなっていて、前記第1及び第2のカバー半部を閉じて突き合わせた際に前記要被覆部を内側に収容して覆う筒状のカバーが形成されるように構成され、
前記第1及び第2のカバー半部には、互いに弾撥的に結合し合って両カバー半部を閉じた状態に保持する第1及び第2の結合部がそれぞれ設けられ、
前記第1及び第2のカバー半部を閉じた際に形成される前記カバーは、前記端子導体の端子部と該端子部に接続された電線の該端子部寄りの部分とを覆うことができるように形成されたカバー主部と、前記端子導体のフランジ部の外周を取り囲んだ状態で配置される環状のカバー端末部と、前記端子導体のフランジ部の端子部側の軸線方向端面に係合して前記筒状のカバーを前記ブッシングの軸線方向に位置決めする位置決め部と、前記端子部に接続された電線の前記カバー主部により覆われた部分よりも更に前記端子部から離れた部分の絶縁被覆の外周に嵌合して該電線を覆う電線被覆部とを一体に有し、
前記環状のカバー端末部の内周部は、前記端子導体のフランジ部の外周に接した状態で配置されて該カバー端末部を該フランジ部に対して位置決めする凸部と前記フランジ部の外周との間に隙間を形成する凹部とを有する形状に形成され、
前記位置決め部には、前記カバー主部の内側の空間を前記カバー端末部とフランジ部との間に形成された隙間に連通させる連通路が形成され、
前記カバーで要被覆部を覆って該カバーを前記位置決め部により軸線方向に位置決めした際に前記カバー端末部と該カバー端末部に最も近い位置にある前記ブッシングの傘部との間にブッシングの周方向に連続した隙間が形成されるように前記カバー端末部の軸線方向長さが設定されていて、前記連続した隙間により前記カバー端末部が前記ブッシングから隔絶されるように構成されていることを特徴とするブッシング端子カバー。
【請求項2】
前記電線被覆部は、異なる外径を有する電線に適合するように内径を異ならせた複数のセクションからなっていて、該複数のセクションが前記カバー主部側から内径が大きい順に並んだ状態で連結された構造を有し、
前記電線被覆部の隣り合うセクション間の境界部で電線被覆部を切断し得るように形成されていることを特徴とするブッシング端子カバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−185906(P2012−185906A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46131(P2011−46131)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】