説明

ブラインド

【課題】低コストで暑熱環境緩和効果を効率的に奏することができるブラインドを提供する。
【解決手段】太陽光線や視線を遮断するブラインド100は、並置された複数のスラットを備える。各スラットは、水を吸収する吸水性を有し、具体的には、水を鉛直方向上方へ揚水する揚水性を有する揚水材、及び水を保持する保水性を有する保水材の少なくとも一方から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドに関し、特に、所定方向からの光線を少なくとも部分的に遮断可能なブラインドに関する。
【背景技術】
【0002】
建物などの窓部の屋外側に配設されるブラインドは、例えば図15に示すように、水平方向に沿って並置された板状部材から成る複数のスラット(slat)を備える。これにより、屋内へ入射する太陽光線を遮断したり、屋外から屋内への視線又は屋内から屋外への視線を遮断したりすることができる。
【0003】
また、図15に示すブラインド500は、チューブ状の導水管で構成された給水部520と、断面コ字形をなす集水部530と、集水部530及び給水部520を接続するポンプ540とを備える(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
給水部520の内部には、所定の水源(図示せず)から供給された水が通過する通水孔が形成されており、この導水管の下部には、通水孔に連通する多数のノズル(散水孔)が形成されている。集水部530の上部には、スラット510の長手方向の長さに対応する開口部が形成されている。
【0005】
このブラインド500では、図15に示すように、スラット510の鉛直方向上方に配置された給水部520のノズルを介して散水が行われる。この散水によりスラット510の表面に水が供給される。したがって、給水部520に形成すべきノズルの数は、通常、散水時に全てのスラット510の全表面に水が配分される程度に設定される。ここで、特許文献1記載の技術では、超親水性を有する二酸化チタン(TiO2)などの光触媒をスラット510の表面にコーティングすることにより、散水性を向上させている。
【0006】
このようにして散水を行うことにより、太陽光線によってスラット510が高温になるのを防止することができるだけでなく、スラット510間の間隙を通過した空気、即ち風は、スラット510の表面の水分の水温や該水分の蒸発による気化熱により冷却される。したがって、ブラインド500は、屋外から屋内へ流入する高温の空気などの暑熱環境を緩和することができる(暑熱環境緩和効果)。
【0007】
また、給水部520が供給した散水時の水は、スラット520の鉛直方向下方に配置された集水部530に貯蓄され、集水部530に貯蓄された水は、集水部530に接続されたポンプ540により給水部520に供給される。これにより、散水時の水が循環されて再供給されるので、水源から給水部520に供給すべき水の供給量を低減させることができる。
【特許文献1】特開2004−360292号公報(請求項3,段落0028〜0034)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記ブラインド500において、給水部520のノズルを介して散布された水は、その流下する方向がスラット510の表面上で変化したり、強風によりスラット510の表面以外の場所に流下したりする。このため、ブラインド500の下部に配置されたスラット510の全表面に水を供給することは困難である。換言すれば、ブラインド500が複数のスラット510を備えているために、スラット510の全表面に対する散水の均一性を維持することが困難である。結果として、上記ブラインド500では、暑熱環境緩和効果を十分に奏することができない。
【0009】
また、スラット510の全表面に光触媒による超親水性を付与した場合には、スラット510の全表面に対する散水の均一性が向上するものの、一方で、スラット510の表面における水の保水性が低下する。保水性の低下により、水はスラット510の表面で保持されずに流下しやすくなるので、スラット510の表面に十分な量の水を常時供給するためには、大量の水を使用する必要がある。また、スラット510の表面を光触媒でコーティングするのは、コストがかかる。
【0010】
また、上記ブラインド500では、散水時の水を再供給することにより水源からの水の供給量を低減させることができるが、集水部530で貯蓄した水をスラット510の上方に配置された給水部520に再供給するためにはポンプ540を配設する必要がある。このため、ポンプ540の分だけコストが高い。
【0011】
本発明は、上述したような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、低コストで暑熱環境緩和効果を効率的に奏することができるブラインドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載のブラインドは、所定方向からの光線を少なくとも部分的に遮断可能なブラインドであって、水を吸収する吸水性を有する少なくとも1枚の板状部材を備えることを特徴とする。
請求項1記載のブラインドによれば、板状部材が効率的に吸水するので、少なくともその表面に湿潤性を付与することができる。
【0013】
請求項2記載のブラインドは、請求項1記載のブラインドにおいて、前記板状部材はその長手方向が鉛直方向と実質的に平行となるように配置されていることを特徴とする。
請求項2記載のブラインドによれば、板状部材は、雨水などの流下する水を効率的に吸収することができる。
【0014】
請求項3記載のブラインドは、請求項2記載のブラインドにおいて、水を貯蓄する貯水部を備え、前記吸水性を有する板状部材は、水を鉛直方向上方へ揚水する揚水性を有する揚水材から構成され、当該揚水材は前記貯水部に貯蓄された水を揚水することを特徴とする。
請求項3記載のブラインドによれば、板状部材は下方の水を効率的に吸収することができる。
【0015】
請求項4記載のブラインドは、請求項3記載のブラインドにおいて、前記吸水性を有する板状部材は、水を保持する保水性を有する保水材をさらに含むように構成されており、当該保水材は、前記揚水材に当接するように配置されており、当該揚水材が揚水した水を保持することを特徴とする。
請求項4記載のブラインドによれば、板状部材は下方から吸収した水を長い時間に亘って保持することができる。
【0016】
請求項5記載のブラインドは、請求項2記載のブラインドにおいて、前記板状部材に水を供給する給水部を備え、前記吸水性を有する板状部材は、水を保持する保水性を有する保水材から構成され、当該保水材は前記給水部から供給された水を保持することを特徴とする。
請求項5記載のブラインドによれば、板状部材は給水部からの水を効率的に保持することができるので、給水部からの水の供給量を削減することができる。
【0017】
請求項6記載のブラインドは、請求項5記載のブラインドにおいて、前記保水材は、前記給水部から供給された水を流入可能にする中空部が形成されていることを特徴とする。
請求項6記載のブラインドによれば、中空部に水が充満することにより、板状部材は内面及び外面の双方から水を吸収することができる。
【0018】
請求項7記載のブラインドは、請求項1記載のブラインドにおいて、前記板状部材はその長手方向が水平方向と実質的に平行となるように配置されていることを特徴とする。
請求項7記載のブラインドによれば、太陽光線などの上方からの光線の遮断を効率的に行うことができる。
【0019】
請求項8記載のブラインドは、請求項7記載のブラインドにおいて、前記板状部材に水を供給する給水部を備え、前記板状部材は、前記給水部から供給された水を流入可能にする中空部が形成されていることを特徴とする。
請求項8記載のブラインドによれば、板状部材は、雨水などに曝されることにより外面から水を吸収することができ、一方、中空部に水が充満することにより内面から水を吸収することができる。
【0020】
請求項9記載のブラインドは、請求項7記載のブラインドにおいて、前記板状部材に水を供給する給水部を備え、前記吸水性を有する板状部材は、水を拡散させる導水材から構成され、当該導水材は前記給水部から供給された水を前記長手方向に拡散することを特徴とする。
請求項9記載のブラインドによれば、板状部材は給水部からの水を効率的にその長手方向に拡散させることができるので、給水部からの水の供給量を削減することができる。
【0021】
請求項10記載のブラインドは、請求項9記載のブラインドにおいて、前記吸水性を有する板状部材は、水を保持する保水性を有する保水材をさらに含むように構成されており、前記導水材は、前記保水材に当接するように配置されており、当該導水材が拡散した水を保持することを特徴とする。
請求項10記載のブラインドによれば、板状部材は導水材が拡散した水を保水材により長い時間に亘って保持することができる。
【0022】
請求項11記載のブラインドは、請求項7乃至10のいずれか1項に記載のブラインドにおいて、前記長手方向に沿って配置された非吸水材をさらに備え、当該非吸水材は前記板状部材の下面に当接することを特徴とする。
請求項11記載のブラインドによれば、雨水などの流下する水が非吸収材の上面に保持され、板状部材により吸収されるので、水の使用量を削減することができる。
【0023】
請求項12記載のブラインドは、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のブラインドにおいて、通風可能な開口部を規定する部材において当該開口部の内部又はその前方に配置されることを特徴とする。
請求項12記載のブラインドによれば、板状部材の表面に付与されている湿潤性により変化した環境、即ち暑熱環境緩和効果が通風方向下流の空間に付与される。
【0024】
請求項13記載のブラインドは、請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のブラインドにおいて、前記板状部材の長手方向を軸として当該板状部材を回転可能に支持する支持部材を備えることを特徴とする。
請求項13記載のブラインドによれば、板状部材を回転させることにより光線や通気を遮断する程度を変化させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のブラインドによれば、板状部材の吸水性によりその表面に湿潤性が効率的に付与されるので、周囲の暑熱環境を緩和する暑熱環境緩和効果を低コストで奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るブラインドが配設された建物の構成を概略的に示す正面図である。
【0027】
図1に示す建物1は、当該建物1の内部(屋内)に入射する太陽光線を遮断すべく配置された外壁10を備える。また、建物1は、例えば、庭園に設置された東屋又は公園に設置された洗面所であり、したがって、外壁10は、視線を遮断する目隠し壁としても機能する。
【0028】
外壁10の中央部には、屋内と屋外との間での空気の循環、即ち通気を確保するための開口部を形成する枠体11が配置されている。本実施の形態では、枠体11に、太陽光線や所定方向からの視線などの光線を少なくとも部分的に遮断可能なブラインド100が内嵌されている。したがって、ブラインド100も外壁10の一部をなす。
【0029】
なお、図1において、枠体11をサッシとして窓ガラスを構成した場合、ブラインド100は、例えば、建物1の屋外側であって窓ガラスの前方に配置される。
【0030】
図2は、図1におけるブラインド100の外観を示す斜視図である。また、図3は、図2における線III−IIIに沿う断面図である。
【0031】
図2に示すように、ブラインド100は、鉛直方向に並置された複数の、例えば12本のスラット110を備える縦型ブラインドであって、さらに、該スラット110の下方に配置された貯水部120を備える。
【0032】
貯水部120の長手方向の長さは、図1における枠体11の水平方向の長さに一致する。また、図3に示すように、貯水部120の断面形状は略コ字形である。したがって、貯水部120の上部には内面121で画成された開口部が形成されており、この開口部には、図2及び図3に示すように水が貯蓄可能である。このため、貯水部120の内面121は、貯蓄されている水を吸収しないように非吸水性を有することが好ましい。なお、貯水部120に貯蓄される水は、上方から流下してきた水であればいかなるものであってもよく、例えば雨水であってもよい。
【0033】
なお、ブラインド100は、さらに、貯水部120に水を補給する給水部(不図示)を備えてもよい。例えば給水部は水道などから構成される。これにより、貯水部120に貯蓄されている水が不足するのを確実に防止することができる。
【0034】
各スラット110は、中実の単一材料から成る板状部材で構成され、その長手方向が鉛直方向と実質的に平行である。また、スラット110の底部は、図2及び図3に示すように貯水部120に貯蓄された水に接触するように配置される。
【0035】
また、スラット110は、その長手方向を軸として、不図示の支持部材によって回転可能に支持されている。スラット110を回転させると、スラット110は、上記通気を確保するための開放位置、又は上記光線を実質的に完全に遮断するための遮断位置に位置する。ここで、互いに隣接する一対のスラット110,110の双方が遮断位置にある場合には、それらの間に間隙が形成されることがない。一方、スラット110が開放位置にあるときには、スラット110の回転角度に応じて、隣接するスラット110との間に間隙が形成され、これにより、通気が確保される。したがって、スラット110は、その回転角度に応じて通気の風向きを調整又は規制する風向規制板としても機能する。なお、スラット110の回転角度を所定の部材により規制してもよく、これにより、スラット110が自由に回転するのを防止することができる。
【0036】
次に、スラット110を構成する材料について説明する。
スラット110は、水を吸収する吸水性を有し、本実施の形態では、鉛直方向上方に水を揚水する揚水性を有する揚水材から成る。したがって、図3に示すスラット110は、貯水部120に貯蓄されている水を揚水することにより、スラット110の表面に湿潤性が付与される。また、スラット110の長手方向が鉛直方向と実質的に平行となるように配置されているので、雨水などの流下する水を効率的に吸収することができる。
【0037】
スラット110を構成する揚水材としては、多数の微細な孔(毛管)が形成された多孔質材料を用いることが好ましい。このような多孔質材料としては、例えば、株式会社栗本鐵工所製のバイオボード(登録商標)がある。バイオボード(登録商標)は、約30質量%のシリカ(SiO2)と、約30質量%のアルミナ(Al23)と、約30質量%の酸化カルシウム(CaO)とを含むセラミック材料であり、例えば、かさ比重が0.32〜0.4の範囲内であり、且つ水の保水率が25%である。なお、保水率とは、多孔質材料の全体積に対する当該多孔質材料が吸収・保水可能な水の最大量(体積)の割合、即ち体積比を示す。
【0038】
また、スラット110を構成する揚水材としては、不織布、織布、及び細管から選択された1種類以上の材料を用いることもできる。
【0039】
ここで、不織布としては、例えば、市販されている吸水テープなどの吸水材や吸湿材を用いることができる。細管としては、ビニル(plastic)製のものや、セラミックチューブを用いることができる。セラミックチューブとしては、アルミナを主成分とする多孔質材料をチューブ状に成形したもの(例えば、株式会社ニッカトーの商品番号「SSA−S」)を挙げることができる。このような細管は、外径が小さいものを複数用いてもよく、これにより、スラット110の保水性を向上させることができる。
【0040】
不織布、織布、及び細管から選択された1種類以上の材料を揚水材として用いた場合、例えばパンチングメタル(perforated metal)などの金網で構成された補強材で揚水材を包囲することが好ましい。これにより、スラット110の強度を向上させることができる。また、補強剤として金網を用いているので、スラット110の表面に付与した湿潤性の低下を抑制することができる。
【0041】
図4は、図2におけるスラット110の変形例を示す部分斜視図である。
図4に示すスラット110aは、図2及び図3のスラット110に代えて使用されるものであるが、スラット110と同様に、水を吸収する吸水性を有する。
【0042】
このスラット110aは、水を保持する保水性を有する保水材111と、鉛直方向上方に水を揚水する揚水性を有する揚水材112とから構成されている。ここで、保水材111の保水性は揚水材112の保水性よりも高い。これにより、保水材111は揚水材112よりも長い時間に亘って水を保持することが可能である。また、スラット110aは、揚水材112を含むので、下方の水、即ち貯水部120に貯蓄された水を効率的に吸収することができる。
【0043】
保水材111は、図4に示すように、中空部を有するように成形されており、保水材111の内面と揚水材112の外面とが長手方向にわたって互いに接触している。したがって、スラット110aにおいて、揚水材112が揚水した水を保水材111で保持することにより、保水材111の表面即ちスラット110の表面に湿潤性が付与される。
【0044】
保水材111としては、中空のチューブ状に成形したセラミック材料、例えば素焼きの土管を用いることができる。このような素焼きの土管は、多孔質であるため、高い保水性を有する。素焼きの土管としては、外側表面に多数の溝(ストライプ)が長手方向に沿って形成されたストライプ土管(古川製陶有限会社製)を用いることが好ましい。このように、保水材111の外側表面にストライプを形成することにより、湿潤性が付与されるスラット110aの外側表面の面積を拡大させることができる。
【0045】
揚水材112は、保水材111の中空部に充填される。揚水材112としては、シリカ(SiO2)を主成分とするケイ砂などの砂を用いることが好ましい。より好ましくは、スラット110aの長手方向の長さが長いほど小さい平均粒径及び透水係数の砂を選択的に用いる。また、ケイ砂に代えて、不織布、織布、細管、及び砂から選択された材料を揚水材112として用いてもよい。さらには、不織布、織布、細管、及び砂から選択された2種類以上の材料を任意の割合で混合したものを揚水材112として用いてもよい。
【0046】
なお、本変形例では、保水材111の内面と揚水材112の外面とを互いに接触させるために、保水材111の中空部に揚水材112を充填したが、これに代えて、揚水材112の外面を保水材111が包囲してもよい。すなわち、揚水材112が揚水した水を保水材111が保持することができるように、揚水材112が保水材111に当接していればよい。
【0047】
以上詳細に説明したように、第1の実施の形態及びその変形例によれば、ブラインドが備えるスラットは吸水性を有する。したがって、スラットが水を効率的に吸収することにより、スラットの少なくともその表面に湿潤性が付与される。その結果、周囲の暑熱環境を緩和する暑熱環境緩和効果を低コストで奏することができる。
【0048】
また、ブラインドが縦型ブラインドであるので、スラットが雨水などの流下する水を吸収する場合にも流下する水の流下方向が変化しにくい。さらには、スラットの揚水材は、スラットの表面に湿潤性を付与するために必要最小限度の水を貯水部120に貯蓄された水から揚水するだけでよい。したがって、スラットは、その全表面において効率的に水を吸収することができるように構成されているので、水の使用量を大幅に削減することができる。
【0049】
また、揚水材が自動的に揚水するので、ポンプなどを配設する必要がなく、コストを大幅に削減することができる。ユーザにとっては、貯水部120内の水が少なくなったときに補水するだけでよいので、ユーザの手間を大幅に削減することができる。また、この補水を自動給水により行うことで、ユーザの手間をなくしてもよい。
【0050】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
本実施の形態に係るブラインドも図1におけるブラインド100と同様に、図1の建物1などに配設される。
【0051】
図5は、第2の実施の形態に係るブラインドの外観を概略的に示す斜視図である。また、図6は、図5における線VI−VIに沿う断面図である。
【0052】
図5に示すように、ブラインド200は、鉛直方向に並置された複数の、例えば12本のスラット210を備える縦型ブラインドであって、さらに、該スラット210の上方に配置された給水部220と、給水部220に接続する水源250とを備える。
【0053】
水源250は、建物1又はその近傍に設けられた貯水槽や建物1に設けられた雨樋などであり、給水部220に水を供給する。
【0054】
給水部220の長手方向の長さは、図1における枠体11の水平方向の長さに一致する。また、図6に示すように、給水部220には、その内面221によって画成される通水孔と、当該通水孔に連通するノズルとが形成されている。ノズルは、給水部220の下部においてスラット210の上面に対面する位置に形成されており、孔面222によって画成される。
【0055】
図5において、水源250から供給された水は、給水部220の通水孔を通過しており、該通水孔を通過する水の一部は、給水部220のノズルを介してスラット210へ向かって散布される。
【0056】
各スラット210は、中実の単一材料から成る板状部材で構成され、その長手方向が鉛直方向と実質的に平行となるように配置されている。
【0057】
また、スラット210は、その長手方向を軸として、不図示の支持部材によって回転可能に支持されている。スラット210を回転させると、スラット210は、上記通気を確保するための開放位置、又は上記光線を実質的に完全に遮断するための遮断位置に位置する。ここで、互いに隣接する一対のスラット210,210の双方が遮断位置にある場合には、それらの間に間隙が形成されることがない。一方、スラット210が開放位置にあるときには、スラット210の回転角度に応じて、隣接するスラット210との間に間隙が形成され、これにより、通気が確保される。したがって、スラット210は、その回転角度に応じて通気の風向きを調整又は規制する風向規制板としても機能する。なお、スラット210の回転角度を所定の部材により規制してもよく、これにより、スラット210が自由に回転するのを防止することができる。
【0058】
なお、ブラインド200において、さらに、水を貯蓄する貯水部(不図示)がスラット210の下方に配設されてもよい。この貯水部は、例えば図2における貯水部120と同様に構成される。より好ましくは、ブラインド200は、貯水部に貯蓄した水を給水部220に再供給する。これにより、上方から流下してきた水、例えば余剰水や雨水の効率的な活用を図ることができる。
【0059】
次に、スラット210を構成する材料について説明する。
スラット210は、水を吸収する吸水性を有し、本実施の形態では、水を保持する保水性を有する保水材から成る。したがって、図5及び図6に示すスラット210は、給水部220から供給された水を効率的に保持することにより、スラット210の表面に湿潤性が付与される。また、スラット210の長手方向が鉛直方向と実質的に平行となるように配置されているので、雨水などの流下する水を効率的に吸収することができる。これらにより、給水部220からの水の供給量を大幅に削減することができる。
【0060】
スラット210を構成する保水材としては、多数の微細な孔(毛管)が形成された多孔質材料を用いることが好ましい。より好ましくは、この保水材は、上述した第1の実施の形態に使用される多孔質材料よりも高い浸水性(透水性)即ち低い保水率を有することが好ましい。これにより、スラット210は、鉛直方向上方から供給された水を内部において鉛直方向下方へ浸透させることができ、スラット210の下部表面の湿潤性を向上させることができる。
【0061】
このような多孔質材料としては、例えば、株式会社ストーンワークス製のシラスブロック(商品名)がある。このシラスブロックは、シラスを主成分とした加圧成形品であって、他の成分として水硬化性セメントを含むセラミック材料である。上記シラスは、火砕流堆積物(火山灰)の一種であって、例えば、シリカ成分を70質量%、及びアルミナ成分を14質量%の割合で含有している。
【0062】
上記シラスブロックは、高い浸水性と保水性を有することが知られている。具体的には、成分であるシラスや水硬化性セメントの含有率によって異なるが、シラスブロックは、かさ比重が0.6〜2.2の範囲内であり、吸水率が20〜80%の範囲内であり、且つ保水率が2〜20%の範囲内である。
【0063】
図7は、図5のブラインド200の変形例を示す断面図である。
図7に示すブラインド200aは、図5のブラインド200のスラット210に代えて使用されるスラット210aを含む点を除いて、図5のブラインド200と同様に構成されている。このため、図5の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0064】
スラット210aは、例えば図5のブラインド200のスラット210と同一の材料で構成されるが、スラット210aは、図7に示すように、内面211によって画成された中空部215を有する点が異なる。
【0065】
この中空部215は、給水部220の孔面222に向かって開口している。したがって、給水部220から供給された水は、スラット210aの中空部215に向かって直接的に流入し、やがて、中空部215全体に水が充満する。したがって、本実施の形態では、中空部215に充満した水は、スラット210aの内面211から吸水性により吸収され、さらにスラット210aの浸水性によりスラット210aの内部を浸透することにより、スラット210の表面に湿潤性が付与される。
【0066】
また、中空部215に水が充満した後、給水部220から供給された水は、中空部215を循環して間接的に又は直接的にスラット210aの外側表面を伝わって流下し、この水は、スラット210aの外側表面から吸水性により吸収される。これにより、スラット210aの外側表面への湿潤性の付与を確実に行うことができる。したがって、スラット210aは、中空部215に水が充満した後には、内面及び外面の双方から水を効率的に吸収することができる。このため、中空部215に水が充満した後には、給水部220からの水の供給量を最小限度に制限することが好ましい。これにより、水の使用量を大幅に削減することができる。
【0067】
スラット210aを構成する保水材としては、上述したスラット210と同様に、多数の微細な孔(毛管)が形成された多孔質材料を用いることが好ましい。
【0068】
このような多孔質材料としては、中空のチューブ状に成形したセラミック材料、例えば素焼きの土管であって、下端の開口を封止したものを用いることができる。このような素焼きの土管は、多孔質であるため、高い保水性を有する。素焼きの土管としては、外側表面に多数の溝(ストライプ)が長手方向に沿って形成されたストライプ土管(古川製陶有限会社製)を用いることが好ましい。ストライプを形成することにより、湿潤性が付与されるスラット210aの外側表面の面積を拡大させることができる。
【0069】
また、多孔質材料として、上述した株式会社ニッカトー製のセラミックチューブ、透水性のゴムをチューブ状に成形したもの、又は透水性のプラスチックをチューブ状に成形したものを用いてもよい。透水性のゴムとしては、例えばシヤチハタ株式会社製の刻印装置に用いられている耐油性ゴムを用いることが好ましい。
【0070】
なお、スラット210aは、チューブ状に成形したものに、同一材料で成形した蓋で下端の開口を覆うか、又は下端から内孔用の保護管(挿入筒)を挿入することにより製造されることが好ましい。これにより、スラット210aを容易に製造することができる。これに代えて、金型を用いた圧縮成形などの方法により直接的に製造してもよく、この場合には、蓋又は保護管を製造する手間を省略することができる。
【0071】
なお、本変形例において、スラット210aの中空部215の下部に対して、少なくとも底面212の浸水性を抑制するための処理、例えば撥水処理を施してもよい。これにより、中空部215全体に水を満たし易くすることができ、水の使用量をさらに削減することができる。
【0072】
また、本変形例において、スラット210aの中空部215に例えば上述したバイオボード(登録商標)などの材料を充填してもよい。ここで、充填すべき材料としては、スラット210aを構成する保水材よりも浸水性の低い材料であることが好ましい。これにより、スラット210aの中空部215における水の保水性を向上させることができる。この結果、スラット210aの外側に付与した湿潤性を長い時間に亘って維持することができる。
【0073】
さらには、本変形例において、スラット210aの中空部215の上部に形成した開口と同様の開口を下部にも形成してもよい。この場合には、スラット210aは、給水部220から供給された水がスラット210aの内面211のほぼ全面に接触するように構成される。これにより、中空部215は貫通孔で構成されるので、スラット210aを容易に製造することができる。また、蓋や保護管を製造する必要がないので、コストを低減することができる。
【0074】
以上詳細に説明したように、第2の実施の形態及びその変形例によれば、ブラインドが備えるスラットは吸水性を有する。したがって、スラットが水を効率的に吸収することにより、スラットの少なくともその表面に湿潤性が付与される。その結果、周囲の暑熱環境を緩和する暑熱環境緩和効果を低コストで奏することができる。
【0075】
また、ブラインドが縦型ブラインドであるので、スラットが雨水などの流下する水を吸収する場合にも流下する水の流下方向が変化しにくい。さらには、スラットの保水材は、スラットの表面に湿潤性を付与するために必要最小限度の水が吸水部220を介して給水されればよい。これにより、水の使用量を大幅に削減することができる。また、水の使用量を大幅に削減することができるので、水を再供給するほどの水が必要となることがない。このため、ポンプなどを配設するために必要なコストをなくすことができる。
【0076】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係るブラインドも図1におけるブラインド100に代えて、図1の建物1などに配設される。
【0077】
図8は、第3の実施の形態に係るブラインドの外観を概略的に示す斜視図である。また、図9は、図8における線IX−IXに沿う断面図である。
【0078】
図8に示すように、ブラインド300は、水平方向に並置された複数の、例えば12本のスラット310を備える横型ブラインドであって、さらに、該スラット310の端部側面に当接するように配置された給水部320と、給水部320に接続する水源350とを備える。
【0079】
水源350は、建物1又はその近傍に設けられた貯水槽や建物1に設けられた雨樋などであり、給水部320に水を供給する。したがって、水源350は、給水部320よりも上方に配置し給水部320の上部と接続することによって、ポンプなどを配設する必要をなくすことができる。これにより低コストで水を効率的に供給することができる。
【0080】
給水部320の長手方向の長さは、図1における枠体11の鉛直方向の長さに一致する。また、図9に示すように、給水部320には、その内面321によって画成される通水孔と、当該通水孔に連通するノズルとが形成されている。ノズルは、給水部320の側面においてスラット310の端部側面に対面する位置に形成されており、孔面322によって画成される。
【0081】
図8において、水源350から供給された水は、給水部320の通水孔を通過しており、該通水孔を通過する水の一部は、給水部320のノズルを介してスラット310の内部に注水される。このため、本実施の形態における給水部320がスラット310へ供給する水の水圧は、上記第2の実施の形態(図5)における給水部220がスラット210へ供給する水の水圧よりも高い方が好ましい。また、スラット310の端部側面が給水部320のノズルに当接するように配置されているので、給水部320のノズルから流出した水が確実に内部に注水される。
【0082】
各スラット310は、単一材料から成る板状部材で構成され、その長手方向が水平方向と実質的に平行となるように配置されている。これにより、太陽光線などの上方からの光線の遮断を効率的に行うことができる。
【0083】
また、スラット310は、その長手方向を軸として、不図示の支持部材によって回転可能に支持されている。スラット310を回転させると、スラット310は、上記通気を確保するための開放位置、又は上記光線を実質的に完全に遮断するための遮断位置に位置する。ここで、互いに隣接する一対のスラット310,310の双方が遮断位置にある場合には、それらの間に間隙が形成されることがない。一方、スラット310が開放位置にあるときには、スラット310の回転角度に応じて、隣接するスラット310との間に間隙が形成され、これにより、通気が確保される。したがって、スラット310は、その回転角度に応じて通気の風向きを調整又は規制する風向規制板としても機能する。なお、スラット310の回転角度を所定の部材により規制してもよく、これにより、スラット310が自由に回転するのを防止することができる。
【0084】
次に、スラット310を構成する材料について説明する。
スラット310は、水を吸収する吸水性を有し、本実施の形態では、水を保持する保水性を有する保水材から成り、図9に示すように、内面311によって画成された中空部315を有する。この中空部315は、スラット310の孔面322に向かって開口している。したがって、給水部320から供給された水は、スラット310の中空部315に向かって直接的に流入し、やがて、中空部315全体に水が充満する。したがって、本実施の形態では、中空部315に充満した水がスラット310の吸水性により吸水され、さらにスラット310の浸水性(透水性)によりスラット310の内部を浸透することにより、スラット310の表面に湿潤性が付与される。また、スラット310は、雨水などに曝されることにより外面から水を吸収する。
【0085】
また、中空部315に水が充満した後、給水部320から供給された水は、中空部315を循環して間接的に又は直接的に流下する。
【0086】
スラット310を構成する保水材としては、多数の微細な孔(毛管)が形成された多孔質材料を用いることが好ましい。
【0087】
このような多孔質材料としては、中空のチューブ状に成形したセラミック材料、例えば素焼きの土管であって、一端の開口を封止したものを用いることができる。このような素焼きの土管は、多孔質であるため、高い保水性を有する。素焼きの土管としては、外側表面に多数の溝(ストライプ)が長手方向に沿って形成されたストライプ土管(古川製陶有限会社製)を用いることが好ましい。ストライプを形成することにより、湿潤性が付与されるスラット310の外側表面の面積を拡大させることができる。
【0088】
また、多孔質材料として、上述した株式会社ニッカトー製のセラミックチューブ、透水性のゴムをチューブ状に成形したもの、又は透水性のプラスチックをチューブ状に成形したものを用いてもよい。透水性のゴムとしては、例えばシヤチハタ株式会社製の刻印装置に用いられている耐油性ゴムを用いることが好ましい。
【0089】
なお、スラット310は、チューブ状に成形したものに、同一材料で成形した蓋で一端の開口を覆うか、又は一端の側面から内孔用の保護管(挿入筒)を挿入することにより製造されることが好ましい。これにより、スラット310を容易に製造することができる。これに代えて、金型を用いた圧縮成形などの方法により直接的に製造してもよく、この場合には、蓋又は保護管を製造する手間を省略することができる。
【0090】
なお、本実施の形態において、スラット310の一端側面に形成した開口と同様の開口を他端側面にも形成してもよい。この場合には、スラット310は、給水部320から供給された水がスラット310の内面311のほぼ全面に接触するように構成される。これにより、中空部315は貫通孔で構成されるので、スラット310を容易に製造することができる。また、蓋又は挿入筒を製造する必要がないので、コストを低減することができる。
【0091】
また、本実施の形態において、スラット310の中空部315に例えば上述したバイオボード(登録商標)などの材料を充填してもよい。ここで、充填すべき材料としては、スラット310を構成する保水材よりも浸水性の低い材料であることが好ましい。これにより、スラット310の中空部315における水の保水性を向上させることができる。この結果、スラット310の外側に付与した湿潤性を長い時間に亘って維持することができる。
【0092】
図10は、図8におけるスラット310の第1の変形例を示す部分斜視図である。
図10に示すスラット310aは、図8及び図9のスラット310に代えて使用されるものであるが、スラット310と同様に、水を吸収する吸水性を有する。
【0093】
このスラット310aは、水を保持する保水性を有する保水材311と、水を拡散させる導水材312とから構成されている。ここで、保水材311の保水性は導水材312の保水性よりも高い。これにより、保水材311は導水材312よりも長い時間に亘って水を保持することが可能である。
【0094】
保水材311は、図10に示すように、中空部を有するように成形されており、保水材311内面と導水材312の外面とが互いに接触している。したがって、保水材311は、導水材312がその長手方向に拡散した水を保持することにより、スラット310a即ち保水材311の表面に湿潤性が付与される。
【0095】
保水材311としては、上述した中空のチューブ状に成形したセラミック材料、例えば素焼きの土管を用いることができる。
【0096】
導水材312は、保水材311の中空部に充填される。導水材312としては、シリカ(SiO2)を主成分とするケイ砂などの砂を用いることが好ましい。より好ましくは、スラット310aの長手方向の長さが長いほど小さい平均粒径及び透水係数の砂を選択的に用いる。また、ケイ砂に代えて、不織布、織布、細管、及び砂から選択された材料を導水材312として用いてもよい。さらには、不織布、織布、細管、及び砂から選択された2種類以上の材料を任意の割合で混合したものを導水材312として用いてもよい。
【0097】
なお、本変形例では、保水材311の内面と導水材312の外面とを互いに接触させるために、保水材311の中空部に導水材312を充填したが、これに代えて、揚水材3112の外面を保水材311が包囲してもよい。すなわち、導水材312が揚水した水を保水材311が保持することができるように、導水材312が保水材311に当接していればよい。
【0098】
図11は、図8におけるスラット310の第2の変形例を示す部分斜視図である。
図11に示すスラット310bは、図8及び図9のスラット310に代えて使用されるものである。スラット310と同様に、水を吸収する吸水性を有する。
【0099】
このスラット310bは、スラット310と同様に、水を吸収する吸水性を有する板状部材315と、板状部材315の下面に内面316aが当接するように当該板状部材315の長手方向に沿って配置された非吸水材316とから構成されている。
【0100】
板状部材315は、吸水性を有する多孔質材料から構成されており、上述した多孔質材料のいずれかが用いられる。好ましくは、板状部材315は、水を鉛直方向上方に揚水する揚水性を有する揚水材、例えば上記バイオボード(登録商標)、又は不織布、織布、及び細管から選択された1種類以上の材料を金網で補強したものを用いる。
【0101】
非吸水材316の断面形状は、図11に示すように、略L字形である。これにより、例えば雨水などの流下する水を内面316a上において効率的に貯蓄することができる。この貯蓄された水は、内面316aに当接する板状部材315により直接的に吸収される。したがって、板状部材315は鉛直方向上方に水を揚水する揚水性を有する揚水材から構成されることが好ましい。
【0102】
なお、本変形例では、板状部材315を構成する材料は、揚水材であることが好ましいとしたが、これに代えて、水を保持する保水性を有する保水材、例えば上記シラスブロックであってもよい。
【0103】
また、本変形例において、非吸収材316の断面形状は、略L字形であるとしたが、好ましくは略コ字形(略凹字形)である。これにより、その内面に貯蓄される水が板状部材315の回転によりこぼれるのを防止することができる。また、本変形例における非吸水材316は、上述したスラット310やスラット310aにも適用することができる。
【0104】
以上詳細に説明したように、第3の実施の形態並びにその第1及び第2変形例によれば、ブラインドが備えるスラットは吸水性を有する。したがって、スラットが水を効率的に吸収することにより、スラットの少なくともその表面に湿潤性が付与される。その結果、周囲の暑熱環境を緩和する暑熱環境緩和効果を低コストで奏することができる。
【0105】
また、スラットの保水材は、スラットの表面に湿潤性を付与するために必要最小限度の水が吸水部320を介して給水されればよい。これにより、水の使用量を大幅に削減することができる。また、水の使用量を大幅に削減することができるので、水を再供給するほどの水が必要となることがない。このため、ポンプなどを配設するために必要なコストをなくすことができる。
【0106】
なお、本明細書に記載のブラインドは、日除け、鎧戸、ルーバ(louver)、簾、カーテン、及びジャロジ(jalousie)などの総称であり、これらのいずれにも、上述した第1乃至第3の実施の形態に係るブラインドを適用することができる。
【0107】
また、ブラインドは、外壁10の枠体11に内嵌されるとしたが、これに限られることはない。
【0108】
具体的には、図12に示すように、図2のブラインド100の周囲に、例えば鋼鉄製の枠体11aを設けることにより、1つのブラインドアセンブリ2を構成して、これを任意の場所に配置することが可能である。なお、この場合には、ブラインド100が備えるスラットの長手方向に垂直な方向に関する断面形状は、略矩形に限られることはなく、略円形、略楕円形、又は略三角形などであってもよく、通風状態に応じて適宜選択される。また、ブラインドアセンブリ2の構成要素であるブラインドは、図2のブラインド100に限られることはなく、図5のブラインド200、図7のブラインド200a、又は図8のブラインド300であってもよい。
【0109】
例えば、図12のブラインドアセンブリ2は、屋外に配置される空調装置用の空調室外機の前方に配置することができる。これにより、ブラインドのスラット表面に付与した湿潤性を用いて、空調室外機から排気される温風を冷風に変換することができる。
【0110】
また、図12のブラインドアセンブリ2を空調装置内部又はダクト部分の前方若しくは後方に配置することも可能である。これにより、ブラインドのスラット表面に付与した湿潤性を用いて、空調装置から排出される空気を加湿することができる。
【0111】
さらには、図13に示すように、図2のブラインド100を大型にしたブラインド100aや、図12のブラインドアセンブリ2を立体駐車場などの建物3に配置してもよい。これにより、建物3の外観に意匠性を付与することができるだけでなく、自動車などの車両からの熱気を冷却することができる。この結果、ヒートアイランドを緩和することができる。
【0112】
上記ブラインド100aのスラットは、建物3の構造の一部をなすことが好ましい。これにより、外壁に用いる壁材の使用量を大幅に削減することができる。なお、スラットはその長手方向を軸として回転可能に構成されている必要はない。
【0113】
また、図14に示すモニュメント4は、図12のブラインドアセンブリ2を長尺化したブラインドアセンブリ5を支柱10aから放射状になるように複数個配置することにより構成されたものである。このモニュメント4は、公園を含む屋外遊技場などに配置され、日陰を提供すると共に防風する人工樹木として機能する。また、モニュメント4により、屋外遊技場の意匠性を向上させることができる。
【0114】
また、このモニュメント4では、ブラインドアセンブリ5が放射状になるように配置されているので、任意の方向からの通気に対して暑熱環境緩和効果を発揮して、その下流に、ユーザにとって快適な環境を提供することができる。
【0115】
なお、上述した第1乃至第3の実施の形態において、スラットは、鉛直方向又は水平方向と実質的に平行となるように配置されるとしたが、上述した効果を奏することができる範囲内で任意の方向に配置することが可能である。また、1つのブラインドが備えるスラットの本数は、12本であるとしたが、12本に限られることはなく、1本以上の任意の本数であればよい。
【0116】
また、ブラインドは、所定の収納場所、例えば外壁10の枠体11内の収納スペースに移動可能に構成されていることが好ましい。より好ましくは、スラットを支持する支持部材が所定方向に移動可能なスライダにより構成される。さらに好ましくは、収納時の複数のスラットが省スペースとなるようにブラインドは折りたたみ可能に構成される。このようにしてブラインドを収納することにより、光線の入射スペースや通気のスペースを容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るブラインドが配設された建物の構成を概略的に示す正面図である。
【図2】図1におけるブラインドの外観を示す斜視図である。
【図3】図2における線III−IIIに沿う断面図である。
【図4】図2におけるスラットの変形例を示す部分斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るブラインドの外観を概略的に示す斜視図である。
【図6】図5における線VI−VIに沿う断面図である。
【図7】図5におけるスラットの変形例を含むブラインドを示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るブラインドの外観を概略的に示す斜視図である。
【図9】図8における線IX−IXに沿う断面図である。
【図10】図8におけるスラットの第1の変形例を示す部分斜視図である。
【図11】図8におけるスラットの第2の変形例を示す部分斜視図である。
【図12】図2のブラインドを含むブラインドアセンブリの外観を概略的に示す斜視図である。
【図13】図1のブラインドと同様に構成されたブラインド及び図12のブラインドアセンブリが配設された建物の外観を示す斜視図である。
【図14】図12のブラインドアセンブリと同様に構成されたブラインドアセンブリを含むモニュメントの外観を示す斜視図である。
【図15】従来のブラインドの外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0118】
1,3 建物 2,5 ブラインドアセンブリ
4 モニュメント 10 外壁
11,11a 枠体 100 ブラインド
110,110a スラット 111 保水材
112 揚水材 120 貯水部
200,200a ブラインド 210,210a スラット
220 給水部 250 水源
300 ブラインド 310,310a,310b スラット
311 保水材 312 導水材
315 板状部材 316 非吸水材
320 給水部 350 水源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向からの光線を少なくとも部分的に遮断可能なブラインドであって、
水を吸収する吸水性を有する少なくとも1枚の板状部材を備えることを特徴とするブラインド。
【請求項2】
前記板状部材はその長手方向が鉛直方向と実質的に平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1記載のブラインド。
【請求項3】
水を貯蓄する貯水部を備え、前記吸水性を有する板状部材は、水を鉛直方向上方へ揚水する揚水性を有する揚水材から構成され、当該揚水材は前記貯水部に貯蓄された水を揚水することを特徴とする請求項2記載のブラインド。
【請求項4】
前記吸水性を有する板状部材は、水を保持する保水性を有する保水材をさらに含むように構成されており、当該保水材は、前記揚水材に当接するように配置されており、当該揚水材が揚水した水を保持することを特徴とする請求項3記載のブラインド。
【請求項5】
前記板状部材に水を供給する給水部を備え、前記吸水性を有する板状部材は、水を保持する保水性を有する保水材から構成され、当該保水材は前記給水部から供給された水を保持することを特徴とする請求項2記載のブラインド。
【請求項6】
前記保水材は、前記給水部から供給された水を流入可能にする中空部が形成されていることを特徴とする請求項5記載のブラインド。
【請求項7】
前記板状部材はその長手方向が水平方向と実質的に平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1記載のブラインド。
【請求項8】
前記板状部材に水を供給する給水部を備え、前記板状部材は、前記給水部から供給された水を流入可能にする中空部が形成されていることを特徴とする請求項7記載のブラインド。
【請求項9】
前記板状部材に水を供給する給水部を備え、前記吸水性を有する板状部材は、水を拡散させる導水材から構成され、当該導水材は前記給水部から供給された水を前記長手方向に拡散することを特徴とする請求項7記載のブラインド。
【請求項10】
前記吸水性を有する板状部材は、水を保持する保水性を有する保水材をさらに含むように構成されており、前記導水材は、前記保水材に当接するように配置されており、当該導水材が拡散した水を保持することを特徴とする請求項9記載のブラインド。
【請求項11】
前記長手方向に沿って配置された非吸水材をさらに備え、当該非吸水材は前記板状部材の下面に当接することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載のブラインド。
【請求項12】
通風可能な開口部を規定する部材において当該開口部の内部又はその前方に配置されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のブラインド。
【請求項13】
前記板状部材の長手方向を軸として当該板状部材を回転可能に支持する支持部材を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のブラインド。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図2】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−208563(P2008−208563A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44302(P2007−44302)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】