説明

ブラシの製造方法及びブラシ

【課題】ブラシ繊維の繊維密度を大幅に高めることができ、かつ、ブラシを製造する際の生産効率を向上させることが可能なブラシの製造方法、及び、該ブラシの製造方法を用いて得られるブラシを提供する。
【解決手段】ブラシ繊維用糸条11を整経する工程、整経したブラシ繊維用糸条11の垂直方向にブラシ基体用テープ12を貼り付ける工程、ブラシ基体用テープ12を加熱してブラシ繊維用糸条11に融着させる工程、ブラシ繊維用糸条11を交互に折りたたむ工程、ブラシ基体用テープ12を加熱しながら、水平方向に加圧してブラシ基体用テープ12を積層し、ブラシ基体用テープ12同士を融着させる工程、及び、ブラシ基体用テープ12の厚み方向の中心を水平方向にカットする工程を有し、ブラシ基体用テープ12は、引張伸度が100〜900%の伸縮弾性エラストマー樹脂からなり、かつ、ブラシ繊維用糸条11よりも1/2法溶融温度の低い材質からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ブラシ繊維の繊維密度を大幅に高めることができ、かつ、ブラシを製造する際の生産効率を向上させることが可能なブラシの製造方法、及び、該ブラシの製造方法を用いて得られるブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシ基体とブラシ繊維とからなるブラシは、種々の分野で使用されており、特に、洗浄、清掃、帯電、塗布、研削、研磨等の各種処理を行うブラシ等として好適に使用されている。例えば、製造工程において、異物の清掃、除去等に使用されるクリーニングブラシでは、クリーニングが不充分であると、異物の存在によって、得られる製品の品質が低下するという問題があった。
【0003】
これに対して、一般的に使用される帯電ブラシを用いた例としては、特許文献1や特許文献2に示すように、荷電性能や除電性能に優れた導電性繊維とブラシ基体とからなる導電性ブラシを金属製の丸棒からなる支軸に螺旋状に巻き付け、接合することによって形成されたものが開示されている。
【0004】
しかしながら、近年の技術革新に伴い、従来の導電性ブラシでは、除去能力が不充分であった。また、従来の導電性ブラシは、使用するにつれ、導電性繊維(ブラシ繊維)にへたりが生じ、帯電性能やクリーニング性能を長期にわたり維持することが困難であるという問題もあった。
更に、従来の導電性ブラシは、ブラシ基体が支軸から剥がれ易くなっており、導電性ブラシとしての役割を充分に果たせないだけでなく、機器自体を破壊してしまう可能性があった。
【0005】
また、従来の導電性ブラシは、ブラシ繊維の一端部に接着剤を塗布してブラシ基体に固定する方法や、ブラシ繊維をパイル織りにより起毛してブラシ基体に織り込むことにより作製する方法が行われている。
しかしながら、接着剤で固定する方法では、ブラシ繊維の繊維密度を高めることができないという問題や、ブラシ繊維が抜け易いという問題があった。
また、パイル織りにより起毛する方法では、ブラシ繊維の繊維密度が低くなるだけでなく、織り込み工程が煩雑となり、作業効率が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−56538号公報
【特許文献2】特開2004−93948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、ブラシ繊維の繊維密度を大幅に高めることができ、かつ、ブラシを製造する際の生産効率を向上させることが可能なブラシの製造方法、及び、該ブラシの製造方法を用いて得られるブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ブラシ繊維用糸条を整経する工程、整経したブラシ繊維用糸条の垂直方向にブラシ基体用テープを貼り付ける工程、前記ブラシ基体用テープを加熱して前記ブラシ繊維用糸条に融着させる工程、前記ブラシ繊維用糸条を交互に折りたたむ工程、前記ブラシ基体用テープを加熱しながら、水平方向に加圧して前記ブラシ基体用テープを積層し、前記ブラシ基体用テープ同士を融着させる工程、及び、前記ブラシ基体用テープの厚み方向の中心を水平方向にカットする工程を有し、前記ブラシ基体用テープは、引張伸度が100〜900%の伸縮弾性エラストマー樹脂からなり、かつ、前記ブラシ繊維用糸条よりも1/2法溶融温度の低い材質からなるブラシの製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
従来、ブラシを製造する方法としては、ブラシ繊維の一端部に接着剤を塗布してブラシ基体に固定する方法や、ブラシ繊維をパイル織りにより起毛してブラシ基体に織り込むことにより作製する方法が用いられていたが、ブラシ繊維の繊維密度を高めることができないという問題や、作業効率が低下するという問題があった。
本発明のブラシの製造方法では、上述の方法を用いることで、ブラシ繊維の繊維密度を大幅に高めることができ、かつ、ブラシを製造する際の生産効率を向上させることが可能となる。また、得られるブラシは、ブラシ繊維が脱離しにくいものとなる。
【0010】
本発明のブラシの製造方法の一例について、図1〜5を使って説明する。
なお、図1及び図2(a)は、上方向からの模式図であり、図2(b)〜図5は、横方向からの断面図である。
本発明では、まず、ブラシ繊維用糸条11を適当な間隔で整経する(図1)。
次いで、整経したブラシ繊維用糸条11の垂直方向にブラシ基体用テープ12を適当な間隔で貼り付ける(図2(a))。更に、ブラシ基体用テープ12を加熱して上記ブラシ繊維用糸条11に融着させる(図2(b))。
そして、ブラシ繊維用糸条11を交互に折りたたみ、ブラシ基体用テープ12を加熱しながら、水平方向に加圧して上記ブラシ基体用テープ12を積層し、上記ブラシ基体用テープ同士を融着させる(図3)。次いで、ブラシ繊維用糸条11を適度な長さに切断する工程を行う。(図4)。
最後に、ブラシ基体用テープの厚み方向の中心を水平方向にカットする(図5)。これにより、ブラシ基体2とブラシ繊維1とを有するブラシが作製される。
【0011】
本発明のブラシの製造方法では、まず、ブラシ繊維用糸条を整経する工程を行う。
上記ブラシ繊維用糸条の整経密度は、得られるブラシの繊維密度に応じて決定されるため、特に限定されないが、15〜200本/cmが例示できる。
【0012】
上記ブラシ繊維用糸条としては、綿糸、ポリエステル繊維、ポリアミド系繊維、導電性繊維等を用いることができる。
上記ブラシ繊維用糸条はフィラメントであってもよい。上記フィラメントとしては、モノ又はマルチフィラメントを用いることができるが、マルチフィラメントを用いることが好ましい。
【0013】
上記ポリエステル繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートや、それらにジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカルボン酸成分が共重合されたもの、あるいはそれらポリエステルをブレンドしたポリエステル等からなるものが挙げられる。さらには、生分解性ポリエステルとして知られるポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリε−カプロラクタム等の脂肪族ポリエステルでもよい。
【0014】
上記ポリアミド繊維としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン46,ナイロン610,ナイロン12、ポリメタキシレンアジパミドやこれら各成分を共重合したものやブレンドしたものからなる繊維等が挙げられる。
【0015】
上記導電性繊維としては、炭素繊維の他、ナイロン系、アクリル系、ポリエステル系等の合成繊維にカーボンブラックを練り込んだ複合繊維、表面がカーボンブラックでコーティングされた合成繊維等が挙げられる。
上記導電性繊維の具体例としては、導電性レーヨン繊維REC−B、REC−C、REC−M1、REC−M10(ユニチカ社製)、SA−7(東レ社製)、サンダーロン(日本蚕毛社製)、ベルトロン(KBセーレン社製)、クラカーボ(クラレ社製)、ローバル(三菱レーヨン社製)等の市販品がある。
【0016】
上記ブラシ繊維用糸条の太さは特に限定されないが、繊維径が5〜300μmであることが好ましい。上記ブラシ繊維用糸条の繊維径が5μm未満であると、繊維の腰が弱くなり、繊維の反発弾性を利用したブラッシング効果を得がたく、連続使用による繊維のへたりも早くなる傾向がある。
上記ブラシ繊維用糸条の繊維径が300μmを超えると、ブラッシング対象への均一接触が得がたくなる傾向があり、好ましくない。上記ブラシ繊維用糸条の太さを上記範囲内とすることで、ブラッシングによる均一接触性に優れたブラシとなる。
【0017】
本発明のブラシの製造方法では、次いで、整経したブラシ繊維用糸条の垂直方向にブラシ基体用テープを貼り付ける工程を行う。
上記ブラシ基体用テープを貼り付ける際の間隔は、得られるブラシ繊維の長さに応じて決定されるため、特に限定されないが、4〜70mm毎とすることが好ましい。上記ブラシ基体用テープを貼り付ける際の間隔を上記範囲内とすることで、ブラッシングによる均一接触性に優れたブラシとなる。
【0018】
上記ブラシ基体用テープとしては、例えば、伸縮弾性エラストマー樹脂からなる基材に粘着剤を塗工したテープ等が挙げられる。
なお、上記ブラシ基体用テープは、厚みが5〜50μm、幅が1〜10mm程度が好ましい。
【0019】
上記伸縮弾性エラストマー樹脂(以下、単にエラストマー樹脂ともいう)は、伸長してもほぼ元の長さに戻る(伸長可能な範囲で降伏点を有しない)性質、すなわちゴム弾性(ヒステリシス曲線において10%以内に戻る)を有する熱可塑性エラストマーであれば特に限定はない。上記エラストマー樹脂としては、ポリウレタン、ポリスチレンブタジエン系ブロックコポリマー等が例示され、特に、ポリウレタンエラストマーが好適である。
【0020】
上記エラストマー樹脂は、引張伸度が100〜900%である。上記引張伸度を上記範囲内とすることで、支軸に確実に固定することができる。上記引張伸度は100〜600%であることが好ましい。
なお、上記引張伸度は、JIS K 7311に準拠した方法で測定することができる。
【0021】
また、上記エラストマー樹脂の引張強度(JIS K 7311)は、30〜60MPa程度、さらに45〜60MPa程度の高強度のものが好ましい。また、表面硬度A(JIS K 6253)は、A70〜98程度、さらにA80〜90が好ましい。表面硬度Aが、A70未満であると強度の確保が難しくなり、A98を越えると伸度及び伸縮性が極端に悪くなる傾向にある。
【0022】
上記エラストマー樹脂の具体例としては、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマーであるクラミロンU(クラレ社製)3195、8175等、パンデックス(ディーアイシーバイエルポリマー社製)T−1185N、1190N、1195N等が挙げられる。
【0023】
上記エラストマー樹脂の製法の一例として、ポリウレタンエラストマー樹脂の製法を以下に示す。ポリウレタンエラストマー樹脂は、例えば、芳香族ポリイソシアネートとポリオールから、ワンショット法、プレポリマー経由法等の公知の方法を用いて製造できる。
【0024】
上記芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、これらの芳香族ジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有するジイソシアネート変性物);及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0025】
上記芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどが挙げられる。このうちで、特に好ましいものはMDIである。
【0026】
上記ポリオールとしては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、脂肪族系ポリオール等が挙げられ、特にポリエーテル系又はポリエステル系ポリオールが好適である。
上記ポリオールの数平均分子量は、弾性の観点から好ましくは300以上、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは2000以上であり、好ましくは4000以下、より好ましくは3500以下、さらに好ましくは3000以下である。
【0027】
上記ブラシ基体用テープは、上記ブラシ繊維用糸条よりも1/2法溶融温度[T1/2]の低い材質からなる。
これにより、後述する工程において、ブラシ基体用テープのみを溶融させることが可能となる。上記ブラシ繊維用糸条よりも1/2法溶融温度[T1/2]が高いと、ブラシ繊維用糸条も溶融してしまい、所望のブラシを製造できないことがある。
【0028】
上記ブラシ基体用テープは、1/2法溶融温度[T1/2]が100〜200℃であることが好ましい。上記1/2法溶融温度[T1/2]が100℃よりも低いと、ブラシの保管環境によっては90℃を超える高温になることもあるため、メルトダウンの危険性があり好ましくない。上記1/2法溶融温度[T1/2]が200℃を超えると製造装置に特殊な耐熱部品が必要になったり、製造段階でブラシ繊維の物性や寸法に悪影響を与えてしまう傾向があり好ましくない。上記ブラシ基体用テープの1/2法溶融温度のより好ましい範囲は100〜180℃、さらに好ましくは100〜160℃である。
なお、1/2法溶融温度は、従来からフローテスターでの昇温法において試料の溶融特性を評価する目安として、多くの分野において温度特性の測定に利用されているものである。
上記1/2法溶融温度は、定荷重押出し式細管式レオメーター(フローテスター)により測定することができる。具体的な測定方法としては、フローテスター((株)島津製作所製、CFT−100D)を用いて、2cmの試料を80℃にて180秒間予熱した後、6.0℃/分の速度で昇温させながら、ピストン圧力:5.884×10Paで、ダイ(穴径1.0mm、穴ストレート部長さ2.0mm)から押し出すようにし測定した。図6に、フローテスターの測定により得られる流動曲線を、横軸に温度、縦軸にピストンストロークをとり模式的に示した。該流動曲線において、流出終了点Smaxと最低点Sminの差の1/2の値Xを求め((X=Smax−Smin)/2)、XとSminを加えた点Aの位置における温度が、すなわち1/2法溶融温度である。
【0029】
本発明では、次いで、ブラシ基体用テープを加熱して上記ブラシ繊維用糸条に融着させる工程を行う。
上記融着を行う際の温度は、使用するブラシ基体用テープの種類に応じて決定されるため、特に限定されないが、120〜200℃が好ましい。上記温度のより好ましい範囲は120〜190℃、さらに好ましくは120〜180℃である。上記融着を行う際の温度を上記範囲内とすることで、ブラシ繊維の物性や寸法に悪影響を与えずに強固に融着することが可能となる。
【0030】
本発明では、次いで、上記ブラシ繊維用糸条を交互に折りたたむ工程を行う。
上記ブラシ繊維用糸条を交互に折りたたむ方法としては、例えば、基材用テープの両端を把持し、隣接する基材用テープと重ね合わせる方法や、隣接する基材用テープ間に細い金属棒を配置し、それらを操作することで基材用テープを重ね合わせる方法等が挙げられる。
【0031】
本発明では、次いで、ブラシ基体用テープを加熱しながら、水平方向に加圧して上記ブラシ基体用テープを積層し、上記ブラシ基体用テープ同士を融着させる工程を行う。
このような工程を行うことで、ブラシ基体用テープを互いに融着させ、同時にブラシ繊維用糸条を起毛させることが可能となる。
その後、必要に応じて、上記ブラシ繊維用糸条切断する工程を行う。
【0032】
上記工程において、加熱を行う際の温度は、使用するブラシ基体用テープの種類に応じて決定されるため、特に限定されないが、120〜200℃が好ましい。上記温度のより好ましい範囲は120〜190℃、さらに好ましくは120〜180℃である。上記加熱の際の温度を上記範囲内とすることで、ブラシ繊維の物性や寸法に悪影響を与えずに強固に融着することが可能となる。
【0033】
上記水平方向に加圧する際の圧力は、使用するブラシ基体用テープの種類に応じて決定されるため、特に限定されないが、100〜10000Paが好ましい。上記水平方向に加圧する際の圧力を上記範囲内とすることで、ブラシ全体が変形することなく一体化が可能となる。
【0034】
本発明では、最後に、ブラシ基体用テープの厚み方向の中心を水平方向にカットする工程を行う。これにより、ブラシ基体とブラシ繊維とを有するブラシを作製することができる。
【0035】
上記ブラシ基体用テープの厚み方向の中心を水平方向にカットする方法としては、例えば、カッターを用いてカットする方法、ワイヤーを用いてカットする方法等が挙げられる。
【0036】
本発明のブラシの製造方法を用いることで、従来のブラシの製造方法と比較して、ブラシ繊維の繊維密度を高めることができるとともに、支軸に確実に固定することが可能なブラシを製造することができる。このようなブラシも本発明の1つである。
【0037】
本発明のブラシは、ブラシ基体とブラシ繊維とを有する。
【0038】
また、上記ブラシの繊維の長さは2〜30mmが好ましい。上記ブラシ繊維の長さが2mm未満であると、繊維の弾性を利用したブラッシング対象への均一接触が得がたくなる。上記ブラシ繊維の長さが30mmを超えると、繊維の反発弾性を利用したブラッシング効果を得がたく、連続使用による繊維のへたりも早くなる傾向があり、好ましくない。上記ブラシの繊維の長さを上記範囲内とすることで、ブラッシングによる均一接触性に優れたブラシとなる。
【0039】
更に、上記ブラシ繊維の繊維密度は1万〜20万本/cmであることが好ましい。上記ブラシ繊維の繊維密度を上記範囲内とすることで、ブラシとブラッシング対象との均一接触が、前記ブラシとブラッシング対象間の位置精度の影響を受けにくくなり、組み付け精度によらず均一接触性が優れたブラシとなる。
【0040】
本発明のブラシの形状としては、特に限定されないが、ブラシ基体が円筒形状であり、かつ、上記ブラシ基体の円筒外表面にブラシ繊維を有するものが好ましい。このような形状を有することで、種々の径の主軸に適合させることが容易となり、熱処理による主軸への固定も容易となる。
【0041】
本発明のブラシは、洗浄用ブラシとして好適に用いることができる。また、ブラッシング、ポリッシングが必要な用途に利用可能である。更に、帯電ブラシ、除電ブラシにも好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明のブラシの製造方法を用いることで、従来のブラシの製造方法と比較して、ブラシ繊維の繊維密度を高めることができるとともに、ブラシ作製の作業効率を大幅に改善することができる。本発明のブラシは、例えば、クリーニングブラシ、帯電ブラシ、除電ブラシ、転写ブラシ等に使用した場合、クリーニング性、帯電性等の性能に優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のブラシの製造方法の一例を模式的に示す図面である。
【図2】本発明のブラシの製造方法の一例を模式的に示す図面である。
【図3】本発明のブラシの製造方法の一例を模式的に示す図面である。
【図4】本発明のブラシの製造方法の一例を模式的に示す図面である。
【図5】本発明のブラシの製造方法の一例を模式的に示す図面である。
【図6】フローテスターの測定により得られる流動曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
ポリエステル糸(シャッぺスパン#90、1/2法溶融温度[T1/2]255℃)を整経密度20本/12mmで整経した後、図2(b)に示すように、垂直方向にポリウレタンテープ(幅6mm、厚み50μm、1/2法溶融温度[T1/2]105℃、引張伸度100%)を3cm毎に貼り付けた。次いで、ポリウレタンテープを180℃に加熱された非粘着加工金型で静かに融着させた。
なお、引張伸度はJIS K 7311に準拠した方法で測定した。
その後、整経した綿糸を交互に折りたたみ、180℃で加熱を行いながらポリウレタンテープを水平方向に積層させた。
折りたたんだ綿糸を切断した後、ポリウレタンテープの厚み方向の中心部をセンターカットすることで、ブラシを作製した。
なお、得られたブラシは、繊維密度が10万本/cmであり、ブラシ毛の長さは13mmであった。また、ブラシ基体の厚みは2mm、幅は12mm、長さは20mmであった。
【0046】
(実施例2)
ポリエステル糸(シャッぺスパン#90、1/2法溶融温度[T1/2]255℃)に代えて、導電性ナイロン系繊維(ベルトロン、KBセーレン社製、88dtex/12f、1/2法溶融温度220℃)を用いた以外は実施例1と同様にしてブラシを作製した。
なお、得られたブラシは、繊維密度が12万5千本/cmであり、ブラシ毛の長さは12mmであった。また、ブラシ基体の厚みは2mm、幅は12mm、長さは20mmであった。
【0047】
(比較例1)
ポリウレタンテープに代えて、ポリエチレンテープ(幅6mm、厚み50μm、1/2法溶融温度[T1/2]105℃、引張伸度15%)を使用した以外は実施例1と同様にしてブラシを作製した。
なお、得られたブラシは、繊維密度が12万本/cmであり、ブラシ毛の長さは12mmであった。また、ブラシ基体の厚みは2mm、幅は12mm、長さは20mmであった。
【0048】
(比較例2)
実施例2と同様の方法で、導電性ナイロン系繊維(ベルトロン、KBセーレン社製、88dtex/12f、1/2法溶融温度220℃)を整径した後、引出し保持手段、押圧手段、折曲・接着ガイドを有する植毛装置(特開平6−305088号公報の図6と同様の装置、押圧手段として1mm厚平板を使用)を用いて、表面に接着剤が塗布されたポリウレタンシート(厚み2mm、1/2法溶融温度[T1/2]105℃)に、導電性ナイロン系繊維を折曲、押圧した後、ブラシ毛の長さが12mmとなるように切断することにより、導電性ナイロン系繊維を植毛した。
なお、得られたブラシは、繊維密度が5万本/cmであった。
【0049】
(評価)
(1)支軸への装着性
実施例2で得られたブラシを47.5mm幅で切り出し、その両端を180℃に加熱された非粘着加工金型で予備加熱した後、外径15.5mmのSUS304シャフトに巻きつけながら、前記両端を相互に融着させ、ブラシ被覆ロール体を得た。
【0050】
その結果、実施例2で得られたブラシから作製したブラシ被覆ロール体は、容易に被覆加工が可能であった。また、120℃5分間の加熱処理を行い、常温まで冷却することによって、前記ブラシとSUSシャフト間は強固に固定された。
【0051】
これに対して、比較例1で得られたブラシを47.5mm幅で切り出し、その両端を180℃に加熱された非粘着加工金型で予備加熱した後、外径15.5mmのSUS304シャフトに巻きつけながら、前記両端を相互に融着させ、ブラシ被覆ロール体を得ることを試みたが、ブラシが伸びにくく、両端を突合せることが困難であり、SUSシャフトに装着することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、ブラシ繊維の繊維密度を大幅に高めることができ、かつ、ブラシを製造する際の生産効率を向上させることが可能なブラシの製造方法、及び、該ブラシの製造方法を用いて得られるブラシを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ繊維用糸条を整経する工程、
整経したブラシ繊維用糸条の垂直方向にブラシ基体用テープを貼り付ける工程、
前記ブラシ基体用テープを加熱して前記ブラシ繊維用糸条に融着させる工程、
前記ブラシ繊維用糸条を交互に折りたたむ工程、
前記ブラシ基体用テープを加熱しながら、水平方向に加圧して前記ブラシ基体用テープを積層し、前記ブラシ基体用テープ同士を融着させる工程、及び、
前記ブラシ基体用テープの厚み方向の中心を水平方向にカットする工程を有し、
前記ブラシ基体用テープは、引張伸度が100〜900%の伸縮弾性エラストマー樹脂からなり、かつ、前記ブラシ繊維用糸条よりも1/2法溶融温度の低い材質からなる
ことを特徴とするブラシの製造方法。
【請求項2】
伸縮弾性エラストマー樹脂は、ポリウレタンエラストマーであることを特徴とする請求項1記載のブラシの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のブラシの製造方法を用いて製造されたブラシ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−100757(P2012−100757A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249948(P2010−249948)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】