説明

ブラシホルダの製造方法及びブラシホルダ

【課題】バリの発生を確実に防止できるブラシホルダの製造方法を提供する。
【解決手段】整流子が配置される円筒状の空洞を形成する金型本体11の上型12の円柱状の胴部12aに、一対のブラシ収容部22,22を形成する四角柱状の中子14の先端部14bを当接させ、上型の胴部と中子及び下型13間で形成されるキャビティK内に溶融樹脂Sを充填して各ブラシ収容部を樹脂成形するブラシホルダ20の製造方法において、中子を各ブラシ収容部の開口端22bより延長し、各ブラシ収容部の周壁に溝を形成する中子の周面14aの凸部14f,14eを各ブラシ収容部の後端22cから開口端の手前まで形成し、上型の胴部に形成された四角凹状の穴部12bに中子の四角柱形の先端部14bを嵌合した後で、一対のブラシ収容部を樹脂成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、射出成形金型等の成形用金型により樹脂成形されるブラシホルダの製造方法及びブラシホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のブラシホルダを製造する成形用金型として、図7〜図10に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この成形用金型1は、図7〜図10に示すように、図示しない整流子が配置される円筒状の空洞を形成する金型本体2を備えている。この金型本体2は、型締めされる上型3と下型4とから成り、この上型3の中央の円柱状の胴部3aに対向する側壁3bの左右両側に嵌入孔3c,3cを形成してある。
【0004】
そして、図9,図10に示すように、上型3と下型4を型締めした後、上型3の左右の嵌入孔3c,3cより横型としての中子5を嵌入して、その先端部5aを当接させる。次に、これら上型3の円柱状の胴部3aと中子5及び下型4との間で形成されるキャビティK内に上型3のゲート3dより溶融樹脂Sを充填すると、一対のブラシ収容部9,9を一体突出形成したブラシホルダ8が成形される。これにより、各ブラシ収容部9は四角筒状に形成される。また、各ブラシ収容部9の両側壁部9a,9aと底壁部9cには、中子5の両側の凸部6,6と下側の凸部7とでピグテールワイヤ挿入用の切欠溝9b,9bとブラシ冷却用溝9dがそれぞれ形成される。
【0005】
この場合、上型3の円柱状の胴部3aの周面に中子5の先端部5aの先端面5bを当接させているため、パーティングライン(型の分割面)PLは各ブラシ収容部9の開口端9eに位置する。また、ブラシホルダ8のブラシホルダ本体8aは金属板より成り、この金属板製のブラシホルダ本体8aに各ブラシ収容部9をアウトサート成形しているが、ブラシホルダ本体8aと各ブラシ収容部9を溶融樹脂Sによって同時に一体成形したものでも良い。
【0006】
【特許文献1】特開平8−130857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の成形用金型1によるブラシホルダ8の製造方法では、パーティングラインPLがブラシ収容部9の開口端9eに位置するため、ブラシ収容部9の精度向上や冷却等のために該ブラシ収容部9に溝9b,9dを形成する場合、上型3の円柱状の胴部3aの周面と中子5の先端部5aの先端面5bとの接触状態が難しく、また、両者の経時的な摩耗より、ブラシ収容部9の開口端9eの部分にバリが発生し易かった。これは、成形用金型1の中子5を放電加工で作製するため、浅い溝を作るための凸部6,7の寸法精度が出ないためである。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、バリの発生を確実に防止することができ、品質の向上を図ることができるブラシホルダの製造方法及びブラシホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、整流子が配置される円筒状の空洞を形成する金型本体の円柱状の胴部に、少なくとも一対のブラシ収容部を形成する四角柱状の中子の先端部を当接させ、これら金型本体の円柱状の胴部と中子との間で形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填して前記各ブラシ収容部を樹脂成形するブラシホルダの製造方法において、前記中子を前記各ブラシ収容部の開口端より延長して形成し、かつ前記各ブラシ収容部の周壁に溝を形成する前記中子の周面の凸部を該各ブラシ収容部の後端から開口端の手前まで形成すると共に、該中子の先端部を四角柱形に形成し、前記金型本体の円柱状の胴部に前記中子の四角柱形の先端部を嵌合する四角凹状の穴部を形成し、この四角凹状の穴部に前記中子の四角柱形の先端部を嵌合した後で前記各ブラシ収容部を樹脂成形することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、ブラシホルダ本体の中央部に整流子が挿通される円形の挿通孔を形成すると共に、該挿通孔を挾むように少なくとも一対のブラシ収容部を一体形成し、この各ブラシ収容部内にブラシを出没自在に収容したブラシホルダにおいて、前記各ブラシ収容部に該各ブラシ収容部の後端から開口端の手前まで延びる溝を形成すると共に、該各ブラシ収容部の開口端を貫通する金型中子で該各ブラシ収容部を成形したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、請求項1の発明のブラシホルダの製造方法によれば、中子の先端部を四角柱形にできるので、中子の先端部の寸法精度を向上させることができ、また、金型本体の円柱状の胴部に形成された四角凹状の穴部に中子の四角柱形の先端部を嵌合した後でブラシ収容部を樹脂成形することにより、ブラシ収容部の開口端の部分におけるバリの発生を確実に防止することができる。
【0012】
請求項2の発明のブラシホルダによれば、ブラシ収容部の開口端を貫通して突き抜ける金型中子でブラシ収容部を成形したので、バリが発生しない高品質のブラシホルダを大量生産することができ、全体の低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態のブラシホルダを製造する成形用金型の断面図、図2は図1中A−A線に沿う断面図、図3は図1中B−B線に沿う断面図、図4は同金型の型締め前の中子の斜視図、図5は同用金型で製造されたブラシホルダの正面図、図6は同金型で製造されたブラシホルダの断面図である。
【0015】
図1及び図6に示すように、成形用金型10は、アーマチュア軸30に固定されたコンミュテータ(整流子)31が配置される円筒状の空洞を形成する金型本体11を備えており、この金型本体11によりブラシホルダ20を樹脂成形するものである。即ち、金型本体11は、型締めされる上型12と下型13とから成り、この上型12の中央の円柱状の胴部12aに対向する側壁12bの左右両側に嵌入孔12c,12cをそれぞれ形成してある。この各嵌入孔12cには、四角筒状のブラシ収容部22を成形する四角柱状の中子(金型中子)14が嵌入されるようになっている。
【0016】
図1〜図4に示すように、中子14の周面(上下面及び両側面)14aには、ブラシ収容部22の周壁22aに各溝22d,22e,22f,22gを形成するための凸部14d,14e,14f,14gをブラシ収容部22の後端22cから開口端22bの手前までそれぞれ一体突出形成してある。また、中子14の先端部14bは、成形されるブラシ収容部22の開口端22bより所定長さ突出するように長く形成されている。さらに、中子14の先端部14bは四角柱形に形成されており、この四角柱形の先端部14bは上型12の円柱状の胴部12aに形成された四角凹状の穴部12dに嵌合されるようになっている。これにより、上型12と中子14の分割面であるパーティングラインPLは、ブラシ収容部22の開口端22bから離れた位置(中子14の先端部14bの四角形の先端面14c)となる。
【0017】
そして、図1に示すように、上型12と下型13を型締め(型閉じ)した後、上型12の左右両側の嵌入孔12c,12cより横型としての四角柱状の中子14を嵌入して、その先端部14bを上型12の円柱状の胴部12aの四角凹状の穴部12dに嵌合させる。次に、これら上型12の円柱状の胴部12aと中子14及び下型13との間で形成されるキャビティK内に上型12の図示しないゲートより溶融樹脂Sを充填すると、ブラシホルダ本体21上に一対のブラシ収容部22,22を一体突出形成したブラシホルダ20が樹脂成形される。
【0018】
これにより、図6に示すように、ブラシホルダ本体21の中央部にはコンミュテータ31が挿通される円形の挿通孔21aが形成される。そして、この挿通孔21aを挾むようにブラシホルダ本体21上には、図5及び図6に示すように、ブラシ32を出没自在に収容する一対のブラシ収容部22,22が四角筒状に一体形成される。また、各ブラシ収容部22の周壁22aには、中子14の周面14aの凸部14d,14e,14f,14gを介してピグテールワイヤ挿入用溝22dやブラシ冷却用溝22e,22f、ブラシを押圧するスプリング挿入用溝22gが各ブラシ収容部22の後端22cから開口端22bの手前まで延びるようにそれぞれ形成される。尚、ブラシを押圧するスプリングをブラシの背後に配置する場合は、このスプリング挿入用溝は不要となる。
【0019】
この場合、中子14の先端部14bが各ブラシ収容部22の開口端22bを貫通して突き抜けているため、即ち、上型12の円柱状の胴部12aの四角凹状の穴部12dに中子14の先端部14bを嵌合させているため、上型12と中子14の分割面であるパーティングラインPLはブラシ収容部22の開口端22bから離れた場所に位置する。
【0020】
このように、中子14の先端部14bを四角柱形にしたことにより、中子14の先端部14bの寸法精度を向上させることができる。また、上型12の円柱状の胴部12aに形成された四角凹状の穴部12dに中子14の四角柱形の先端部14bを嵌合した後で各ブラシ収容部22を樹脂成形したことにより、上型12と中子14のパーティングラインPLをブラシ収容部22の開口端22bから離れた場所に位置させることができ、各ブラシ収容部22の開口端22bの部分におけるバリの発生を確実に防止することができる。その結果、バリが発生しない高品質のブラシホルダ20を大量生産することができ、全体の低コスト化をより一段と図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態のブラシホルダを製造する成形用金型の断面図である。
【図2】図1中A−A線に沿う断面図である。
【図3】図1中B−B線に沿う断面図である。
【図4】上記成形用金型の型締め前の中子の斜視図である。
【図5】上記成形用金型で製造されたブラシホルダの正面図である。
【図6】上記成形用金型で製造されたブラシホルダの断面図である。
【図7】従来のブラシホルダを製造する成形用金型を一部断面で示す分解斜視図である。
【図8】上記従来の成形用金型の型締め前の中子の斜視図である。
【図9】上記従来の成形用金型の断面図である。
【図10】図9中C−C線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 成形用金型
11 金型本体
12 上型(金型本体)
12a 円柱状の胴部
12d 四角凹状の穴部
14 中子(金型中子)
14a 周面
14b 先端部
14d,14e,14f,14g 凸部
20 ブラシホルダ
21 ブラシホルダ本体
21a 挿通孔
22,22 一対のブラシ収容部
22a 周壁
22b 開口端
22c 後端
22d ピグテールワイヤ挿入用溝
22e,22f ブラシ冷却用溝
22g スプリング挿入用溝
31 コンミュテータ(整流子)
32 ブラシ
K キャビティ
S 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子が配置される円筒状の空洞を形成する金型本体の円柱状の胴部に、少なくとも一対のブラシ収容部を形成する四角柱状の中子の先端部を当接させ、これら金型本体の円柱状の胴部と中子との間で形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填して前記各ブラシ収容部を樹脂成形するブラシホルダの製造方法において、
前記中子を前記各ブラシ収容部の開口端より延長して形成し、かつ前記各ブラシ収容部の周壁に溝を形成する前記中子の周面の凸部を該各ブラシ収容部の後端から開口端の手前まで形成すると共に、該中子の先端部を四角柱形に形成し、前記金型本体の円柱状の胴部に前記中子の四角柱形の先端部を嵌合する四角凹状の穴部を形成し、この四角凹状の穴部に前記中子の四角柱形の先端部を嵌合した後で前記各ブラシ収容部を樹脂成形することを特徴とするブラシホルダの製造方法。
【請求項2】
ブラシホルダ本体の中央部に整流子が挿通される円形の挿通孔を形成すると共に、該挿通孔を挾むように少なくとも一対のブラシ収容部を一体形成し、この各ブラシ収容部内にブラシを出没自在に収容したブラシホルダにおいて、
前記各ブラシ収容部に該各ブラシ収容部の後端から開口端の手前まで延びる溝を形成すると共に、該各ブラシ収容部の開口端を貫通する金型中子で該各ブラシ収容部を成形したことを特徴とするブラシホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−181344(P2007−181344A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378240(P2005−378240)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】