説明

ブリーザ装置

【課題】部品点数を削減でき、水滴等の進入防止作用を向上させることができるブリーザ装置を提供する。
【解決手段】本発明は、ブリーザ装置であって、ケースの内部空間に通じるブリーザ空間2aを形成する筒部材2と、弁部材3と、弁部材3を覆うカバー部材4と、を備え、弁部材3は、上端部全周に亘って配置されたシール部31と、平面視における一方向が長手方向となるようにブリーザ空間2aの上方でシール部31から上方に延び、シール部31とともに筒部材2の上端開口を塞ぎ、長手方向に沿って延び且つ上端がカバー空間4aに面し下端が上端開口より上方でブリーザ空間2aに面するスリット32aが設けられたスリット形成部32と、を有し、弁部材3又はカバー部材4は、スリット32aの上方にカバー空間4aの一部を形成する空間形成部33を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機のケースに対して用いられるブリーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリーザ装置は、車両に搭載される変速機に設けられている。ブリーザ装置は、いわゆる逆止弁の機能を持ち、変速機のケース内部の圧力が上昇した場合にケース内部の空気を外部に放出する。そして、ブリーザ装置は、ブリーザ装置を介して水滴等がケース内に進入しないように、弁で開口(呼吸孔)が塞がれ、さらにカバー部材により弁の開閉部分が覆われている。このようなブリーザ装置としては、例えば特開2005−082125号公報(特許文献1)や特開平6−117521号公報(特許文献2)に記載されている。
【0003】
例えば従来のブリーザ装置は、上下に開口した筒部材と、カバー部材の上壁内面にバネ及び支持部材で支持された蓋部材(弁)と、を備えている。当該蓋部材は、筒部材の上端開口を塞ぐようにバネにより上方から付勢され、筒部材上端に押し付けられている。ケース内部の圧力が上昇した場合、内部圧力により蓋部材がバネの付勢力に逆らって押し上げられ、ケース内部と外部とが連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−082125号公報
【特許文献2】特開平6−117521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなブリーザ装置は、カバー内部にバネや蓋部材等を設置しなければならず、部品点数が多く、製造作業が繁雑であった。また、上記ブリーザ装置は、構造上、ケース内部と外部とを連通させる位置が筒部材の上端開口位置であるため、水滴等の進入防止の観点で問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて完成したものであり、部品点数を削減でき、水滴等の進入防止作用を向上させることができるブリーザ装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する請求項1に記載の変速機の特徴は、変速機の変速機構が収容されたケースの内部圧力の上昇に応じて前記ケース内部の空気を外部に放出するブリーザ装置であって、
上下に開口し、下方で前記ケースの内部空間に通じるブリーザ空間を形成する筒部材と、
前記筒部材の上端開口を塞ぐように前記筒部材の上端部に設けられた弾性材料からなる弁部材と、
前記弁部材を覆い、前記弁部材との間にカバー空間を形成するとともに、前記カバー空間と前記外部とを連通させる隙間を形成するカバー部材と、
を備え、
前記弁部材は、
前記筒部材の前記上端部に配置されたシール部と、
平面視における一方向が長手方向となるように前記ブリーザ空間の上方で前記シール部から上方に延び、前記シール部とともに前記筒部材の上端開口を塞ぎ、前記長手方向に沿って延び且つ上端が前記カバー空間に面し下端が前記上端開口より上方で前記ブリーザ空間に面するスリットが設けられたスリット形成部と、
を有し、
前記弁部材又は前記カバー部材は、前記スリットの上方に前記カバー空間の一部を形成する空間形成部を有し、
前記スリットは、前記ケースの内部圧力の上昇に応じて開口し、前記ブリーザ空間と前記カバー空間とを連通させることである。
【0008】
ここで、本明細書において「平面視」とは、上方から下方を見ることを意味し、見えるものは対象の平面図(図4など)に相当する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によると、ケースの内部圧力の上昇に応じて開口するスリットを有する弁部材が逆止弁の役割を果たす。つまり、本発明によれば、1つの弁部材で逆止弁機能を発揮できるため、従来のように蓋部材、バネ部材、及びバネ支持部材等の複数の部材をカバー部材内に取り付ける必要がない。これにより、部品点数の削減及び製造作業の簡素化が可能となる。また、本発明によれば、ブリーザ空間とカバー空間とを連通させるスリットが、筒部材の上端開口よりも上方に位置しており、水滴等がより進入しにくい構成となっている。このように、本発明によれば、部品点数を削減でき、水滴等の進入防止作用を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のブリーザ装置を示す部分断面図である。
【図2】本実施形態のブリーザ装置を示す図1におけるA−A線断面図である。
【図3】本実施形態の弁部材を示す斜視図である。
【図4】本実施形態の弁部材を示す平面図である。
【図5】本実施形態のブリーザ装置の変形態様を示す図1におけるA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のブリーザ装置について代表的な実施形態に基づき以下詳細に説明を行う。ブリーザ装置は、変速機(図示せず)の変速機構が収容されたケース(図示せず)の内部空間と外部とを、ケースの内部圧力の上昇に応じて連通させる装置である。また、ブリーザ装置は、ケース内への水滴等の進入を防止するものでもある。なお、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0012】
本実施形態のブリーザ装置1は、図1及び図2に示すように、筒部材2と、弁部材3と、カバー部材4と、を備えている。筒部材2は、上下に開口した略円筒状の金属部材であって、下方がケースの内部空間に通ずるブリーザ空間2aを有している。換言すると、筒部材2は、外部(後述するカバー空間4aを介した外部)とケースの内部空間とを連通させるブリーザ空間2aを形成している。筒部材2は、ブリーザ空間2aを区画している。
【0013】
弁部材3は、筒部材2の上端開口を塞ぐように筒部材2の上端部21(上端開口を形成する上方部位)に設けられている。弁部材3は、ゴム材料により一体的に形成されている。弁部材3は、筒部材2の上端部21に圧入されている。より具体的に、弁部材3は、シール部31と、スリット形成部32と、空間形成部33と、を有している。
【0014】
シール部31は、筒部材2の上端部21全周に配置されている。具体的に、シール部31は、環状に形成されており、環状のベース部311と、ベース部311の内周縁全周から下方に突出した突出部312と、を有している。ベース部311は、筒部材2の上端部21の上端面全周に当接している。突出部312は、筒部材2の上端部21の内周面全周に当接している。突出部312の外径は、筒部材2の上端部21の内径(上端開口の径)よりも大きく形成されている。シール部31は、筒部材2の上端部21に圧入されて固定され、上端部21に対して開口縁をシールするように、全周に亘って密着している。
【0015】
スリット形成部32は、平面視(図4参照)における一方向が長手方向となるようにブリーザ空間2aの上方でシール部31から上方に延びている。「平面視における一方向」とは、換言すると、筒部材2の軸方向(上下方向)に直交する一方向とも言える。本実施形態では、図3及び図4に示すように、スリット形成部32は、略直方体形状であって、シール部31の上部内周側から連続的に上方に延びている。筒部材2の上端開口は、スリット形成部32とシール部31により塞がれている。
【0016】
スリット形成部32は、中央に、長手方向に沿って延びた(切られた)スリット32aを有している。つまり、スリット形成部32の中央には、上端から下端までつながる切り込みが入っている。換言すると、スリット32aは、スリット形成部32の上端から下端まで連続して延在している。さらに具体的には、スリット32aの上端は後述するカバー空間4aに面し、スリット32aの下端は筒部材2の上端開口より上方でブリーザ空間2aに面している。スリット32aが開口すると、ブリーザ空間2aとカバー空間4aとがスリット32aを介して連通する。
【0017】
空間形成部33は、2つの突出部位からなり、スリット形成部32の長手方向両側面及びシール部31上部から上方に向けて突出している。空間形成部33は、長手方向の一側面がそれぞれ凸弧状となった略直方体形状である。空間形成部33の上端面は、スリット形成部32の上端面よりも上方に位置している。
【0018】
空間形成部33は、スリット32aを長手方向に挟むように、スリット32aの長手方向両端側に位置している。空間形成部33は、後述するカバー部材4の上壁内面に当接し、カバー部材4を支持している。空間形成部33は、カバー部材4と当接することで、スリット32aの上方に、後述するカバー空間4aの一部を形成している。つまり、空間形成部33は、スリット32aを含むスリット形成部32の上端面とカバー部材4とが当接することを防止している。なお、空間形成部33は、シール部31及びスリット形成部32の少なくとも一方に形成されれば良い。
【0019】
カバー部材4は、有底筒状の部材であって、筒部材2の上端部21と弁部材3とを覆っている。本実施形態では、カバー部材4は、筒部材2の形状に合わせて有底円筒状に形成されている。カバー部材4は、筒部材2の上端部21と弁部材3とを覆うように、筒部材2の上端部21の外周側に配置されている。ただし、カバー部材4は、弁部材3の上端開口を覆うように配置されれば良い。
【0020】
カバー部材4は、内部空間(カバー空間)4aを有している。カバー空間4aは、カバー部材4と弁部材3により区画されている。カバー空間4aは、主にスリット32a上方と、スリット形成部32及び空間形成部33の短手方向(平面視において長手方向に直交する方向)両側に延在している。換言すると、カバー空間4aは、スリット32aの上方とシール部31の上方に形成されている。
【0021】
また、カバー部材4は、筒部材2の上端部21の外周面との間に、カバー空間4aと外部とを連通させる隙間4bを形成している。つまり、カバー部材4の内周面と上端部21の外周面の間に隙間4dが形成されている。なお、カバー部材4の下端部の一部は、内側に屈曲しており、筒部材2の上端部21の径方向外方に突出した部位と上下方向に係合する。弁部材3は、例えば、一体成形された後、切り込み(スリット32a)を入れることで製造可能である。
【0022】
本実施形態のブリーザ装置1によれば、変速機のケースの内部圧力が上昇した場合、ケースの内部空間に通じるブリーザ空間2aの圧力も上昇し、スリット32aを開口させる。スリット32aが開口すると、ブリーザ空間2aとカバー空間4aが連通し、ケース内部の空気がブリーザ空間4a及びスリット32aを介してカバー空間4aに放出される。カバー空間4aは、隙間4bを介して外部に連通しており、外部と同視することができる。つまり、ケース内部の空気は、外部に放出されることとなる。
【0023】
一方、通常時(ケースの内部圧力が上昇していないとき)、スリット32aは、閉じた状態である。そして、短手方向両側からスリット形成部32側面に大気圧(カバー空間4aの圧力)が加わっている。したがって、スリット32aの開口は、ケースの内部圧力による開口方向への力が、スリット形成部32の閉口状態を維持しようとする力(スリット形成部32の弾性力及びスリット形成部32側面に加わる大気圧)に打ち勝った場合に起こる。開口するためのケースの内部圧力上限値は、スリット32aの長手方向及び上下方向の長さ、スリット形成部32の形状(厚み等)、及び弁部材3の材料などによって調節可能である。
【0024】
本実施形態のブリーザ装置1によれば、カバー部材4の内側に複数の部品で構成された逆止弁を取り付ける必要がなく、弁部材3を筒部材2に取り付けるだけで良い。つまり、ブリーザ装置1によれば、部品点数を削減でき、且つ、製造作業や製造工程を簡素化することができる。
【0025】
また、ブリーザ装置1によれば、筒部材2の上端開口を弁部材3のシール部31がシールしており、且つ、ブリーザ空間2aにつながる連通路の開口位置(スリット32aの上端)が筒部材2の上端開口よりも上方に位置している。従来では、筒部材2の上端開口を、下方に付勢された蓋部材により塞いでいたため、開口位置は筒部材2の上端開口位置と同じ高さとなっていた。本実施形態のブリーザ装置1によれば、開口位置が高いため水滴等の進入はさらに防止される。このように、ブリーザ装置1によれば、水滴等の進入防止作用を向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態のブリーザ装置1では、空間形成部33がスリット32aを挟む位置に形成されている。これにより、水滴等が重力に逆らって飛び跳ねた場合でも、長手方向からの進入に対しては空間形成部33が防壁の役割を果たし、水滴等の進入は防止される。つまり、空間形成部33は、スリット32a上方に空間を確保するとともに、長手方向からの水滴進入に対する防壁機能も発揮する。
【0027】
なお、仮に水滴等がスリット32a上に飛散しても、通常時においてスリット32aは閉じており、水滴等の進入は防止される。また、スリット32aの開口は瞬間的なものであるため、スリット32aから内部への進入はほぼ防止できる。
【0028】
以上、本実施形態のブリーザ装置1によれば、部品点数が削減でき、製造作業の簡素化が図れ、水滴等の進入防止作用を向上させることができる。
【0029】
なお、本発明のブリーザ装置は、上記実施形態に限られない。例えば、弁部材3(シール部31)は、圧入の有無に関わらず、筒部材2の上端部21に対して接着されていても良い。また、シール部31は、筒部材2の上端部21における外周面全周、上端面全周、及び内周面全周の少なくとも1つに配置される構成であれば良い。つまり、シール部31は、上端開口を外部に対してシールするように、上端部31に配置されていれば良い。また、筒部材2と弁部材3を一体的に形成しても良い。
【0030】
また、空間形成部33は、少なくともスリット32a上方に空間(カバー空間4a)を確保できればよく、例えば1つの突出部位あるいは3つ以上の突出部位で構成されても良い。また、空間形成部33の形状も限定されない。
【0031】
また、カバー部材4の内面の一部が突出し、突出した一部が弁部材3と当接してスリット32a上に空間を形成している場合、カバー部材4の一部である当該突出部位が空間形成部33となる。例えば、カバー部材4の内面に凹凸を設け、凸部分と弁部材3の一部とを当接させる構成でも良い。この場合、空間形成部33は、カバー部材4に形成された凸部分となる。つまり、空間形成部は、弁部材3及びカバー部材4のうち一方に形成されれば良い。
【0032】
また、スリット形成部32は、図5に示すように、短手方向の側面に短手方向に突出したフランジ部321を設けても良い。これにより、水滴等の短手方向下方からの進入をさらに防止することができる。例えばフランジ部321を当該側面の上縁部全域に設けることでより効果的に進入を防ぐことができる。また、筒部材2は、上下に開口したブリーザ空間を有すればよく、円筒状でも角筒状でも良い。また、弁部材3は、ゴム材料に限らず、内部圧力の上昇により弾性変形可能な材料(弾性材料)で形成されれば良い。
【符号の説明】
【0033】
1:ブリーザ装置、
2:筒部材、2a:ブリーザ空間、21:上端部、
3:弁部材、31:シール部、311:ベース部、312:突出部、
32:スリット形成部、32a:スリット、321:フランジ部、
33:空間形成部、
4:カバー部材、4a:カバー空間、4b:隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機の変速機構が収容されたケースの内部圧力の上昇に応じて前記ケース内部の空気を外部に放出するブリーザ装置であって、
上下に開口し、下方で前記ケースの内部空間に通じるブリーザ空間を形成する筒部材と、
前記筒部材の上端開口を塞ぐように前記筒部材の上端部に設けられた弾性材料からなる弁部材と、
前記弁部材を覆い、前記弁部材との間にカバー空間を形成するとともに、前記カバー空間と前記外部とを連通させる隙間を形成するカバー部材と、
を備え、
前記弁部材は、
前記筒部材の前記上端部に配置されたシール部と、
平面視における一方向が長手方向となるように前記ブリーザ空間の上方で前記シール部から上方に延び、前記シール部とともに前記筒部材の上端開口を塞ぎ、前記長手方向に沿って延び且つ上端が前記カバー空間に面し下端が前記上端開口より上方で前記ブリーザ空間に面するスリットが設けられたスリット形成部と、
を有し、
前記弁部材又は前記カバー部材は、前記スリットの上方に前記カバー空間の一部を形成する空間形成部を有し、
前記スリットは、前記ケースの内部圧力の上昇に応じて開口し、前記ブリーザ空間と前記カバー空間とを連通させることを特徴とするブリーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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