説明

ブルーインク、インクカートリッジ、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置

【課題】発色性、耐光性及び耐ガス性に優れる画像が得られるブルーインク及び、前記ブルーインクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】特定構造の色材、及び、フタロシアニン骨格を有するシアン色材を含有することを特徴とするブルーインク。前記インク中の、特定構造の色材の含有量が、前記シアン色材の含有量に対して、質量比率で、0.20倍以上5.00倍以下であるブルーインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用にも好適な、ブルーインク、インクカートリッジ、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法における高画質化の手段のひとつとして、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの基本色のインクの他に、レッド、グリーン、ブルーなどのいわゆる特色インクを使用することが挙げられる(特許文献1参照)。近年、このような特色インクについても基本色インクと同様に、これまで以上に得られる画像の発色性や、耐ガス性及び耐光性などの画像保存性を向上することが要求されている。これらを達成するためのひとつの手法として、インクに含有させる染料の発色性及び堅牢性の向上があり、このような特性を有する染料についての提案がある。例えば、マゼンタ色材に関して、特定のアントラピリドン系色材により堅牢性の向上が図られることや、発色性に優れるという特性を有するキサンテン系色材について堅牢性の向上が図られることについて開示している提案がある(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−176605号公報
【特許文献2】特開2005−008868号公報
【特許文献3】特開平9−241553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、インクジェット記録方法により得られる画像について、今まで以上に高いレベルの性能を達成することが要求されている。そこで、本発明者らは、上記で挙げたような従来の技術について検討を行った。しかし、従来の技術の多くは基本色インクについてのものであり、高画質化のために重要である特色インク、その中でもブルーインクについては、近年要求されるレベルの画像の発色性、耐光性及び耐ガス性を達成することができていないことがわかった。例えば、特許文献1に記載されたブルーインクに、特許文献2に記載されたマゼンタ色材を適用しても、得られる画像の発色性及び耐光性は不十分である。また、特許文献3に記載された色材を適用しても、得られる画像の耐光性及び耐ガス性は不十分である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、発色性、耐光性及び耐ガス性に優れる画像が得られるブルーインクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記ブルーインクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される色材、及び、フタロシアニン骨格を有するシアン色材を含有することを特徴とするブルーインクである。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(1)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立にアルキル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(2)で表されるアシルアミノ基を表し、R、R、R及びRの少なくともひとつは下記一般式(2)で表されるアシルアミノ基である。Zは、SOH基、SOM基又はスルファモイル基を表し、Mはアンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表し、Zは芳香環の少なくともひとつの水素原子の位置に置換している。R、R、R、R、R及びRの少なくともひとつがイオン性基で置換されている場合にはnは0乃至3の整数を表し、イオン性基で置換されていない場合にはnは1乃至3の整数を表す。)
【0009】
【化2】

【0010】
(一般式(2)中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基を表す。*は前記一般式(1)における芳香環との結合部位を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発色性、耐光性及び耐ガス性に優れる画像が得られるブルーインクを提供することができる。また、本発明の別の実施態様によれば、前記ブルーインクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】色材(8)のH NMR分析の結果を示すグラフ。
【図2】色材(11)のH NMR分析の結果を示すグラフ。
【図3】色材(14)のH NMR分析の結果を示すグラフ。
【図4】色材(15)のH NMR分析の結果を示すグラフ。
【図5】各種の色材のUV/Vis分光分析の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明者らは、発色性、耐光性及び耐ガス性に優れる画像が得られるブルーインクの構成について検討を行った。具体的には、C.I.アシッドレッド289と同等のマゼンタ領域の発色性を有し、かつ、耐光性及び耐ガス性を向上することができる色材についての検討を行った。特には、C.I.アシッドレッド289の弱点である低い耐光性及び耐ガス性を改善することができる色材の構造について検討を行った。その結果、後述する一般式(1)で表される色材を見出した。さらに、ブルーインクの色材として、この一般式(1)で表される色材と、フタロシアニン骨格を有するシアン色材とを用いることで、発色性、耐光性及び耐ガス性に優れる画像が得られるという知見を得て、本発明に至った。
【0015】
このような構成のブルーインクとすることで、上記効果が得られる理由を、本発明者以下のように推測している。一般式(1)におけるキサンテン骨格は高い発色性を示し、かつ、一般式(1)の構造中に電子求引性基があることにより色材分子から電子が失われづらく、このため、光やガスによる色材の劣化が生じづらく、耐光性や耐ガス性が優れる。さらに、対称性に優れる構造に起因して、記録媒体に付与された際に一般式(1)で表される色材は規則的に積層するため、フタロシアニン骨格を有するシアン色材との相互作用が発揮され、また、該シアン色材を保護する作用も生じると考えられる。このような理由から、本発明のブルーインクにより、発色性、耐光性及び耐ガス性に優れる画像が得られると考えられる。
【0016】
<ブルーインク>
本発明のブルーインクは、後述する一般式(1)で表される色材及びフタロシアニン骨格を有するシアン色材を含有し、インクジェット用に特に好適に使用することができるインクである。本発明におけるブルーインクとは、インクや、該インクによって記録された画像について測定された色相角(H°)が、200°以上345℃以下、さらには250°以上320°以下、特には260°以上310°以下の範囲にあるようなインクのことである。なお、なお、色相角は一般的な分光光度計により測定することができ、測定対象としてはインクを2,000倍(質量基準)に希釈した水溶液とすることができる。
【0017】
以下、本発明のブルーインクに含有させる成分などについて説明する。なお、以下の記載において、ブルーインクのことをインク、一般式(1)で表される色材のことを一般式(1)の色材、フタロシアニン骨格を有するシアン色材のことをシアン色材と記載することがある。
【0018】
(一般式(1)で表される色材)
本発明のインクには、下記一般式(1)の色材(染料)を含有させる。
【0019】
【化3】

【0020】
(一般式(1)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立にアルキル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(2)で表されるアシルアミノ基を表し、R、R、R及びRの少なくともひとつは下記一般式(2)で表されるアシルアミノ基である。Zは、SOH基、SOM基又はスルファモイル基を表し、Mはアンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表し、Zは芳香環の少なくともひとつの水素原子の位置に置換している。R、R、R、R、R及びRの少なくともひとつがイオン性基で置換されている場合にはnは0乃至3の整数を表し、イオン性基で置換されていない場合にはnは1乃至3の整数を表す。)
【0021】
【化4】

【0022】
(一般式(2)中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基を表す。*は前記一般式(1)における芳香環との結合部位を表す。)
一般式(1)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立にアルキル基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。中でも、合成上の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素原子数1乃至3のアルキル基が特に好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、合成上の観点から、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子などが好ましい。R、R、R及びR10が置換基を有する場合は、発色性、色相、透明性などの分光反射特性、色相、合成上の点で、置換基が全て同一であることが好ましい。
【0023】
一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、3−カルボキシプロポキシ基などが挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、o−メトキシフェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフトキシ基などが挙げられる。アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、イオン性基などが挙げられる。イオン性基としては、例えば、トリエチルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基などのカチオン性基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などのアニオン性基が挙げられる。本発明においては、耐光性の点で、R及びRが、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましい。また、合成上の点で、R及びRが置換基を有する場合は、置換基が全て同一であることが好ましい。
【0024】
一般式(1)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は上記一般式(2)で表されるアシルアミノ基を表し、R、R、R及びRの少なくともひとつは上記一般式(2)で表されるアシルアミノ基である。C.I.アシッドレッド289と同様に、一般式(1)の色材が高い発色性を有しながらも、高い耐光性及び耐ガス性を有するためには、R、R、R、Rの少なくともひとつが上記一般式(2)で表されるアシルアミノ基であることが必要である。本発明においては、発色性、耐光性の点で、一般式(2)のアシルアミノ基の数が2乃至4であることが好ましい。また、一般式(1)の色材が一般式(2)のアシルアミノ基を複数個有する場合、合成上の点で、それぞれのアシルアミノ基が同一であることが好ましい。さらに、合成上の点で、一般式(1)におけるRとR、RとR、RとR、RとR、RとR10の組み合わせが、それぞれ同一であることが好ましい。
【0025】
一般式(2)中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル基、m−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル基などが挙げられる。アリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−フェネチル基などが挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基などが挙げられる。ヘテロ環基としては、例えば、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾピラゾリル基、トリアゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピロリル基、ベンゾピロリル基、インドリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、トリアジニル基などが挙げられる。
【0026】
11の各基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シアノ基、アルキルアミノ基、スルホアルキル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニルアミノ基、ハロゲン原子、イオン性基などが挙げられる。イオン性基は、例えば、トリエチルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基などのカチオン性基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などのアニオン性基が挙げられる。本発明においては、発色性の点で、R11が、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基であることが好ましく、合成上の点で、アルキル基、アリール基であることが特に好ましい。中でも、特に優れた耐光性が得られる点で、R11が、直鎖のアルキル基、イオン性基が置換したアリール基であることが好ましい。
【0027】
一般式(1)中、Zは、SOH基、SOM基又はスルファモイル基を表し、Mはアンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表し、Zは芳香環の少なくともひとつの水素原子の位置に置換している。スルファモイル基としては、例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基などが挙げられる。SOM基におけるMはカウンターイオンであり、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、非置換のアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、n−プロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、n−ブチルアンモニウム、テトラn−ブチルアンモニウム、イソブチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウムなどが挙げられる。中でも、水に対する溶解性が良好である点で、Mがリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオンであることが好ましい。本発明においては、一般式(1)の色材の水性媒体に対する溶解性に優れることから、ZがSOM基であることが好ましい。なお、インク中でSOM基の少なくとも一部はイオン解離を生じてカウンターイオンとなるため、本発明においては「カウンターイオンである」と記載しているが、イオン解離を生じていない場合も勿論本発明に含まれる。
【0028】
一般式(1)中、R、R、R、R、R及びRの少なくともひとつがイオン性基で置換されている場合にはnは0乃至3の整数を表し、イオン性基で置換されていない場合にはnは1乃至3の整数を表す。水に対する溶解性が良好である点で、nが1乃至2であることが好ましい。
【0029】
一般式(1)におけるZの置換位置は、一般式(1)におけるその他の置換基の置換位置及びスルホン化又はクロロスルホン化の条件によって決定される。R、R、R、R、R及びRのいずれかが水素原子である場合、そのうちのいずれかの水素原子かキサンテン骨格の水素原子に置換する。R11が芳香環を有し、芳香族性の水素原子が存在する場合、その水素原子に置換してもよい。R、R、R、R、R及びRのいずれもが水素原子ではなく、R11の置換基に芳香族性の水素原子が存在しない場合、キサンテン骨格の水素原子にのみ置換する。
【0030】
以下、一般式(1)におけるR及びRが一般式(2)で表されるアシルアミノ基である場合(下記一般式(1’)で表される構造)を例に挙げて、代表的なジスルホン化の位置を示す。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
【化5】

【0032】
【表1】

【0033】
〔一般式(1)で表される色材の合成方法〕
一般式(1)の色材は、公知の製造方法に基づいて合成することができる。合成スキームの一例を以下に示す。合成スキーム中の(1)及び(4)〜(7)におけるR〜R10、Z、nは、一般式(1)におけるR〜R10、Z、nと同義である。
【0034】
【化6】

【0035】
上記に例示した合成スキームでは、1段目に示した第1の縮合工程、2段目に示した第2の縮合工程、3段目に示したスルホン化又はスルファモイル化工程を経て、一般式(1)の色材を合成する。ただし、R、R、R、R、R及びRの置換基としてスルホン酸基やカルボキシ基などのイオン性基が存在する場合、3段目に示したスルホン化又はスルファモイル化工程は行わなくてもよい。
【0036】
先ず、第1の縮合工程では、化合物(3)と化合物(4)とを、有機溶剤や縮合剤の存在下で加熱し、縮合させることにより、化合物(5)を得る。次に、第2の縮合工程では、化合物(6)と第1の縮合工程で得られた化合物(5)とを、加熱し、縮合させることにより、化合物(7)を得る。最後に、第3の縮合工程で、第2の縮合工程で得られた化合物(7)を、スルホン化剤を用いてスルホン化することにより、Zがスルホン酸基である一般式(1)の色材が得られる。また、化合物(7)を後述する方法によりスルファモイル化することにより、Zがスルファモイル基である一般式(1)の色材が得られる。
【0037】
上記に例示した合成スキームの縮合工程において用いる有機溶媒について説明する。第1の縮合工程では、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどを単独又は混合して使用することが好ましい。第2の縮合工程では、例えば、エチレングリコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼンなどを単独で又は混合して使用することが好ましい。
【0038】
第1の縮合工程における反応温度は60℃乃至100℃であることが好ましく、さらには70℃以上、また、90℃以下であることがより好ましい。第2の縮合工程における反応温度は、120℃乃至220℃であることが好ましく、さらには180℃以下であることがより好ましい。
【0039】
一般式(1)中におけるR〜RとR〜R10が同一の基である色材を合成する場合には、上記スキーム中の化合物(4)と(6)とは同一のものを用いることができる。したがって、この場合は、化合物(3)から一段階の縮合工程を行うことにより化合物(7)を得ることができる。その際における反応温度は、120℃乃至220℃であることが好ましく、さらには180℃以下であることがより好ましい。縮合剤としては、例えば、酸化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどを用いることが好ましい。
【0040】
上記に例示した合成スキームのスルホン化工程において用いるスルホン化剤としては、例えば、「新実験化学講座 第14巻」、丸善出版株式会社、1978年、1776−1784頁に記載されているような、公知のスルホン化剤をいずれも使用することができる。具体的には、例えば、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、アミド硫酸などが挙げられ、本発明においては、反応性の点やスルホン化剤の取り扱いの容易さから、発煙硫酸を用いることが好ましい。また、上記に例示した合成スキームのスルファモイル化工程としては、スルファモイル化により所望の化合物が得られる方法であればどのように行ってもよい。例えば、クロロスルホン酸などを用いて上記化合物(7)をクロロスルホン化し、対応するアミンでスルファモイル化する方法が挙げられる。また、上述のスルホン化工程により予めスルホン化を行い、さらにハロゲン化チオニルなどでハロゲン化した後、対応するアミンでスルファモイル化する方法などが挙げられる。これらのスルファモイル化工程において用いるアミンとしては、例えば、濃アンモニア水、アルキルアミン、アリールアミンなどが挙げられる。本発明においては、合成の工程数の点で、クロロスルホン化を経る工程を採用することが好ましい。
【0041】
スルホン化工程やスルファモイル化工程は溶媒を用いることなく行うこともできるが、反応の急激な進行を抑制するためには溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒は反応を阻害しないものであればいずれのものも使用することができる。具体的には、例えば、硫酸、酢酸、無水酢酸などの酸類、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素などの脂肪族ハロゲン化物、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼンなどの芳香族ハロゲン化物、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、2−ニトロトルエン、3−ニトロトルエン、4−ニトロトルエン、2−クロロニトロベンゼン、4−フルオロニトロベンゼンなどの芳香族ニトロ化合物、メチルスルホン、エチルスルホン、フェニルスルホン、スルホラン、2,4−ジメチルスルホランなどのスルホン類などが挙げられ、1種類又は2種類以上の溶媒を用いることができる。
【0042】
スルホン化工程やスルファモイル化工程における反応温度は通常−20℃乃至150℃であることが好ましく、さらには−5℃乃至50℃、特には0℃乃至40℃が好ましい。スルホン化工程やスルファモイル化工程の反応は通常24時間以内に完結する。
【0043】
上記合成スキームによって得られる最終生成物である色素化合物(染料)は、通常の有機合成反応の後処理方法にしたがって処理した後、精製を行うことで、インクの色材として用いることができる。
【0044】
〔一般式(1)で表される色材の例示化合物〕
一般式(1)の色材の好適な例示化合物としては、下記表2に示す色材(8)〜(26)が挙げられる。勿論、本発明は、前記一般式(1)の構造及びその定義に包含されるものであれば、下記の色材に限られるものではない。本発明においては、下記の色材の中でも、色材(8)、(11)、(14)及び(15)を用いることが特に好ましい。なお、表2中、「Me」はメチル基、「Et」はエチル基、「n−Pr」はノルマルプロピル基、「i−Pr」はイソプロピル基、「*」は置換基の結合部位を表す。
【0045】
【表2】

【0046】
(その他のマゼンタ色材)
本発明においては、本発明の効果が損なわれない限り、一般式(1)の色材以外のマゼンタ色材をインクに含有させてもよい。以下に、本発明において、一般式(1)の色材と共に使用することができる好適なマゼンタ色材(染料)の具体例を挙げるが、これらのマゼンタ色材に限定されるものではない。
【0047】
先ず、C.I.ナンバーを有するマゼンタ色材としては以下のものが挙げられる。C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230など。C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289など。C.I.フードレッド:87、92、94など。
【0048】
また、特開平8−73791号公報、特開2006−143989号公報、国際公開2004/104108号パンフレット、特開2003−192930号公報などに記載されているようなマゼンタ色材が挙げられる。具体的には、遊離酸の形で、下記の構造を有する色材が好ましい。
【0049】
【化7】

【0050】
【化8】

【0051】
【化9】

【0052】
【化10】

【0053】
(フタロシアニン骨格を有するシアン色材)
本発明のインクには、フタロシアニン骨格を有するシアン色材(染料)を含有させる。本発明において好適に用いることができるシアン色材としては、以下のようなものが挙げられる。例えば、シアン色材の水溶液や、色材としてシアン色材のみを含有するインクによって記録された画像について測定された色相角(H°)が、175°以上255°以下の範囲にあるような色材が挙げられる。上記色相角は、好ましくは180°以上250°以下であり、特に好ましくは190°以上240°以下である。なお、色相角は一般的な分光光度計により測定することができ、測定対象の水溶液中の色材の含有量は0.002%程度とすることができる。また、本発明のインクに含有させるシアン色材は発色性が良好であるものが好ましく、水中での極大吸収波長が、570〜680nm、さらには580〜640nm、特には590nm〜620nmの範囲にあるものが好ましい。
【0054】
以下に、本発明のインクに含有させることができる、フタロシアニン骨格を有するシアン色材の具体例を挙げる。勿論、本発明は、フタロシアニン骨格を有するシアン色材を用いることが重要であるので、この要件を満たせば、下記に挙げるシアン色材に限られるものではない。本発明においては、中心元素が、銅、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケルなどであるフタロシアニン骨格を有する色材を用いることが好ましい。また、フタロシアニン骨格を有する色材におけるフタロシアニン骨格の最外殻の芳香環の少なくともひとつがヘテロ環、より好適には含窒素芳香環(例えば、ピリジン環、ピラジン環など)であることが特に好ましい。このような構造を有する色材は、得られる画像の発色性、耐光性及び耐ガス性をバランスよく向上させることができるために特に好ましい。
【0055】
・C.I.ダイレクトブルー:6、22、25、71、78、86、87、90、106、189、199、262、264、276、282、314など
・C.I.アシッドブルー:9、22、40、59、93、102、104、113、117、120、167、185、197、224、228、229、234、242、243、249、254、275、279、283、310、357など。
【0056】
・下記一般式(27)で表される化合物(特開2004−323605号公報に記載のもの)
【0057】
【化11】

【0058】
(一般式(27)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、スルホン酸基、又はカルボキシ基を表すが、R及びRが同時に水素原子となることはない。Yは、塩素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基を表す。Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。l(エル)、m、及びnは、0≦l(エル)≦2.0、1.0≦m≦3.0、1.0≦n≦3.0であり、かつ、l(エル)+m+n=2.0乃至4.0を表す。
【0059】
一般式(27)で表される色材の好ましい具体例を遊離酸の形として示すと、下記のシアン色材1が挙げられる。
【0060】
【化12】

【0061】
・下記一般式(28)で表される色材(特許第3851569号公報に記載のもの)
【0062】
【化13】

【0063】
(一般式(28)中、X、X、X、及びXはそれぞれ独立に、−SO−Z、−SO−Z、−SONR、スルホン酸基、−CONR、又は−COである。ここで、Zはそれぞれ独立に、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換の複素環基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換の複素環基である。また、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y、及びYはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、シアノ基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、置換若しくは非置換のカルバモイル基、置換若しくは非置換のスルファモイル基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、カルボキシ基、又はスルホン酸基であり、a、a、a、及びaはそれぞれ、X、X、X、及びXの置換基の数を示し、それぞれ独立に1又は2の整数である。)
本発明においては、一般式(28)におけるX、X、X、及びXはそれぞれ独立に、−SO−Z、−SO−Z、−SONR、−CONR、又は−COであることが好ましい。また、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y、及びYが水素原子であることが好ましい。このような置換基とすることで、耐ガス性及び耐光性に優れた画像を得ることができる。
【0064】
一般式(28)で表される構造の好ましい具体例を遊離酸の形として示すと、下記のシアン色材2が挙げられる。
【0065】
【化14】

【0066】
・下記一般式(29)で表される色材(国際公開2007/091631号パンフレットに記載のもの)
【0067】
【化15】

【0068】
(一般式(29)中、A、B、C、及びDはそれぞれ独立に、芳香性を有する6員環を表す。Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。Eはアルキレン基を表す。Xは、スルホ置換アニリノ基、カルボキシ置換アニリノ基、又はホスホノ置換アニリノ基であり、該置換アニリノ基はさらに、スルホン酸基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン、アルキルスルホニル基、及びアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくともひとつの置換基を1乃至4個有してもよい。Yはヒドロキシ基又はアミノ基を表す。l(エル)、m、及びnは、0≦l(エル)≦2.0、0≦m≦3.0、0.1≦n≦3.0であり、かつ、l(エル)+m+n=1.0乃至4.0を表す。)
本発明においては、耐ガス性及び耐光性に優れた画像が得られるため、一般式(29)のAからDのうち少なくともひとつがピリジン環又はピラジン環であることが好ましい。また、一般式(29)において、Eは炭素数2乃至6のアルキレン基、Xはスルホ置換アニリノ基、Yはアミノ基であることが好ましい。さらに、l(エル)=0、m=0.5〜3.0、n=0.1〜1.0であることが好ましい。
【0069】
一般式(29)で表される色材の好ましい具体例を遊離酸の形として示すと、下記のシアン色材3が挙げられる。なお、下記のシアン色材3において、含窒素芳香環の位置は各構造式に示されるものに限定されず、上記一般式(29)のA〜Dのいずれかの位置にあることを意味し、含窒素芳香環における窒素原子の位置も各構造式に示される位置に限定されない。また、シアン色材3における、l(エル)、m、及びnの値は、混合物における平均値を示す。
【0070】
【化16】

【0071】
(色材の含有量)
本発明においては、インク中の一般式(1)の色材の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下、さらには0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中のフタロシアニン骨格を有するシアン色材の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下、さらには0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0072】
本発明においては、インク中の色材の合計含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、10.0質量%以下であることが好ましい。さらには、合計含有量が、1.0質量%以上10.0質量%以下、特には1.5質量%以上7.0質量%以下であることが好ましい。合計含有量が1.0質量%未満であると、画像の発色性、耐光性及び耐ガス性が十分に高いレベルで得られない場合があり、合計含有量が10.0質量%を超えると、固着回復性などのインクジェット特性が十分に得られない場合がある。
【0073】
また、本発明のインクにおいては、インクに含有させる一般式(1)の色材及びフタロシアニン骨格を有するシアン色材は、これらの各含有量の質量比率が特定の範囲内にあることが好ましい。これは、ブルーインクとして好ましい色相角を有するインクとすることができ、さらには発色性、耐光性及び耐ガス性に特に優れた画像が得られるためである。このため、インク中の、一般式(1)の色材の含有量が、フタロシアニン骨格を有するシアン色材の含有量に対して、質量比率で、0.20倍以上5.00倍以下、さらには0.40倍以上2.50倍以下であることが好ましい。なお、この場合の含有量は、インク全質量を基準とした値である。
【0074】
(水性媒体)
本発明のインクには、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下、さらには15.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が3.0質量%未満であると、インクの吐出安定性などのインクジェット特性が十分に得られない場合があり、含有量が50.0質量%を超えると、インクの粘度が高く、記録ヘッドへのインクの供給が十分に円滑に行われない場合がある。
【0075】
水溶性有機溶剤としては、インクジェット用のインクに一般的に用いることができるものであれば、特に制限はなく、従来公知のいずれのものも用いることができ、また、1種類又は2種類以上の水溶性有機溶剤を組み合わせてインクに含有させることができる。具体的には、1価又は多価のアルコール類、アルキレン基の炭素数が1〜4程度のアルキレングリコール類、平均分子量200〜2,000程度のポリエチレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などを用いることができる。
【0076】
(その他の添加剤)
本発明のインクには、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体類、糖類及びその誘導体類などの常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、本発明のインクセットを構成する各インクには必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び樹脂など、種々の添加剤を含有させてもよい。本発明においては、アセチレングリコール系の界面活性剤を用いることが好ましく、中でも、水性媒体への溶解性に優れるため、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が特に好適である。
【0077】
(インクの物性)
本発明のインクの25℃における静的表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下、さらには20mN/m以上60mN/m以下、特には30mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。本発明のインクセットを構成する各インクは、その表面張力を上記した範囲内とすることで、インクジェット方式に適用した際に吐出口近傍の濡れによる吐出ヨレ(インクの着弾点のズレ)などの発生を有効に抑制することが可能となる。インクの表面張力の調整は、インク中における界面活性剤などの含有量を適宜決定することで行うことができる。また、本発明のインクは、インクジェット記録装置に適用する際に良好な吐出特性が得られるよう、所望のpHに調整することが好ましい。本発明のインクセットを構成する各インクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましい。
【0078】
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部を備えてなり、前記インク収容部に、上記で説明した本発明のインクが収容されてなるものである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、液体のインクを収容するインク収容室、及び負圧によりその内部にインクを保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室で構成されるものが挙げられる。または、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容量の全量を負圧発生部材により保持する構成のインク収容部であるインクカートリッジであってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
【0079】
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドにより上記で説明した本発明のインクを吐出して、記録媒体に画像を記録する画像記録工程を有する。そして、画像記録工程に、上記で説明した本発明のインクを用いることを特徴とする。また、本発明のインクジェット記録装置は、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えてなる装置である。そして、前記インク収容部に収容されたインクが、上記で説明した本発明のインクであることを特徴とする。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法や記録装置の工程及び構成は、公知のものとすればよい。
【0080】
本発明のインクを用いて画像を記録する記録媒体としては一般的なインクジェット用に使用可能ないずれのものも用いることができる。このような記録媒体としては、例えば、光沢紙、コート紙、光沢フィルムなどの支持体上に多孔質層を有するインクジェット用の記録媒体や、表面の少なくとも一部に繊維が露出した、いわゆるコピー用紙などの普通紙が挙げられる。
【0081】
また、本発明のインクには、さらに別のインクを組み合わせてインクジェット記録方法に使用してもよい。このようなインクとしては、例えば、色材として染料を含有する、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーンなどの各インク(濃インク)が挙げられる。また、色材として染料を含有する、淡シアン、淡マゼンタ、淡イエロー、グレーなどの各インク(淡インク)が挙げられる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例、参考例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、特に指定のない限り、「%」とあるものは、質量基準である。
【0083】
<色材の準備>
(一般式(1)の色材の同定)
下記で合成した一般式(1)の色材の同定は、下記の各装置を用いて行った。
[1]H NMR分析:H核磁気共鳴分光分析(ECA−400;日本電子製)
[2]LC/MS分析:LC/TOF MS(LC/MSD TOF;Agilent Technologies製)。なお、LC/TOF MSにおけるイオン化法としては、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)を採用した。
[3]UV/Vis分光分析:UV/Vis分光光度計(UV−36000形分光光度計;島津製作所製)。
【0084】
(色材(8)の合成)
下記の構造を有する色材(8)を以下の手順で合成した。
【0085】
【化17】

【0086】
3−アセチルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリン(7.3g)と、上記合成スキームにおける化合物(3)(7.4g)とを、スルホラン(20mL)中、塩化亜鉛(4.1g)の存在下、150℃で3時間加熱して反応させた。この溶液を冷却した後、2規定の塩酸50mL中に添加して、析出した結晶をろ別、水洗した後、乾燥させた。この乾燥物6gを、氷冷下で発煙硫酸30g中に添加した後、20〜25℃で4時間撹拌した。反応液を氷100g上に排出し、析出したスルホン化物をろ別した後、冷水で洗浄し、析出物を得た。得られた析出物を水50mL中に懸濁させ、2規定の水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0として溶解させた後、アセトンで晶析して、色材(8)を得た。
【0087】
得られた色材(8)が上記構造を有することを、H NMR分析、LC/TOF MS分析及びUV/Vis分光分析で確認した。分析結果を下記に示す。
[1]H NMR分析(400MHz、DMSO−d、室温)の結果(図1参照):
δ[ppm]=11.26(s、2H)、9.35(d、2H)、7.92(d、1H)、7.57(t、1H)、7.49(t、1H)、7.16(d、1H)、7.11(d、2H)、7.01(m、2H)、6.29(dd、2H)、3.38(s、18H)、2.09(s、6H)
[2]LC/TOF MS分析(溶離液:0.1%酢酸水溶液−メタノール、ESI)の結果:
保持時間 5.0分:純度=23.6面積%、m/z=795.21(n=1、[M−Na]
保持時間 6.4分:純度=75.0面積%、m/z=897.15(n=2、[M−Na])、875.16(n=2、[M−2NaH]
[3]UV/Vis分光分析の結果(図5参照):
λmax=527nm、ε=95594M−1cm−1(溶剤:HO、25℃)。
【0088】
(色材(11)の合成)
下記の構造を有する色材(11)を以下の手順で合成した。
【0089】
【化18】

【0090】
3−イソブチリルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリン(8.4g)と、上記合成スキームにおける化合物(3)(7.4g)とを、スルホラン(20mL)中、塩化亜鉛(4.1g)の存在下、150℃で3時間加熱して反応させた。この溶液を冷却した後、2規定の塩酸50mL中に添加して、析出した結晶をろ別、水洗した後、乾燥させた。この乾燥物6gを、氷冷下で発煙硫酸30g中に添加した後、20〜25℃で4時間撹拌した。反応液を氷100g上に排出し、析出したスルホン化物をろ別した後、冷水で洗浄し、析出物を得た。得られた析出物を水50mL中に懸濁させ、2規定の水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0として溶解させた後、アセトンで晶析して、色材(11)を得た。
【0091】
得られた色材(11)が上記構造を有することを、H NMR分析、LC/TOF MS分析及びUV/Vis分光分析で確認した。分析結果を下記に示す。
[1]H NMR分析(400MHz、DMSO−d、室温)の結果(図2参照):
δ[ppm]=11.27(s、2H)、9.35(s、1H)、9.25(s、1H)、8.02(d、1H)、7.70(t、1H)、7.61(t、1H)、7.56(s、2H)、7.31(m、1H)、7.13(m、2H)、5.98(s、2H)、2.64(m、2H)、2.15(m、6H)、2.09(m、12H)、1.13(m、12H)
[2]LC/TOF MS分析(溶離液:0.1%酢酸水溶液−メタノール、ESI)の結果:
保持時間 10.2分:純度=97.0面積%、m/z=931.1(n=2、[M−2NaH]
[3]UV/Vis分光分析の結果(図5参照):
λmax=530nm、ε=78967M−1cm−1(溶剤:HO、25℃)。
【0092】
(色材(14)の合成)
下記の構造を有する色材(14)を以下の手順で合成した。
【0093】
【化19】

【0094】
3,5−ジアセチルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリン(6.7g)と、上記合成スキームにおける化合物(3)(7.4g)とを、スルホラン(20mL)中、塩化亜鉛(4.1g)の存在下、150℃で3時間加熱して反応させた。この溶液を冷却した後、2規定の塩酸50mL中に添加して、析出した結晶をろ別、水洗した後、乾燥させた。この乾燥物5gを、氷冷下で濃硫酸30g中に添加した後、25〜30℃で4時間撹拌した。反応液を氷100g上に排出し、析出したスルホン化物をろ別した後、冷水で洗浄し、析出物を得た。得られた析出物を水50mL中に懸濁させ、6規定の水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0として溶解させた後、アセトンで晶析して、色材(14)を得た。
【0095】
得られた色材(14)が上記構造を有することを、H NMR分析、LC/TOF MS分析及びUV/Vis分光分析で確認した。分析結果を下記に示す。
[1]H NMR分析(400MHz、DMSO−d、室温)の結果(図3参照):
δ[ppm]=10.19(brs、2H)、9.49(m、4H)、8.02(d、1H)、7.67(t、1H)、7.59(t、1H)、7.55(m、1H)、7.29(d、2H)、7.16(m、1H)、5.92(s、1H)、5.80(s、1H)、3.38(s、18H)、2.05(m、12H)
[2]LC/TOF MS分析(溶離液:0.1%酢酸水溶液−メタノール、ESI)の結果:
保持時間 3.8分:純度=86.0面積%、m/z=909.26(n=1、[M−Na]
保持時間 6.4分:純度=8.4面積%、m/z=1011.19(n=2、[M−H]
[3]UV/Vis分光分析の結果(図5参照):
λmax=528nm、ε=85888M−1cm−1(溶剤:HO、25℃)。
【0096】
(色材(15)の合成)
下記の構造を有する色材(15)を以下の手順で合成した。
【0097】
【化20】

【0098】
上記で得られた色材(8)15.0gを濃塩酸中で30時間還流し冷却した後、冷水200mL中に排出した。この排出液を20〜30℃で、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0とした後、30分撹拌した。その後、結晶をろ別、水洗した後、乾燥させて、色材(8)の脱アセチル化物を得た。得られた色材(8)の脱アセチル化物(2.5g)と、無水フタル酸(1.4g)とを、N,N−ジメチルホルムアミド20mL中で、50〜60℃で6時間反応させた。反応液を冷却した後、2規定の塩酸50mL中に添加して、析出した結晶をろ別した。得られた結晶を水洗し、2規定の水酸化ナトリウム水溶液で溶解させた後、エタノールで晶析して、色材(15)を得た。
【0099】
得られた色材(15)が上記構造を有することを、H NMR分析、LC/TOF MS分析及びUV/Vis分光分析で確認した。分析結果を下記に示す。
[1]H NMR分析(400MHz、DMSO−d、室温)の結果(図4参照):
δ[ppm]=12.37(brm、2H)、10.04(brs、2H)、8.00(dd、2H)、7.84(brm、2H)、7.62(brm、4H)、7.39(brd、4H)、7.23(d、2H)、7.11(brm、4H)、5.96(s、2H)、2.22(brs、6H)、2.11(brs、6H)、2.00(brs、6H)
[2]LC/TOF MS分析(溶離液:0.1%酢酸水溶液−メタノール、ESI)の結果:
保持時間 19.4分:純度=99.1面積%、m/z=949.24([M−Na])、927.26([M−2NaH]
[3]UV/Vis分光分析の結果(図5参照):
λmax=530nm、ε=111574M−1cm−1(溶剤:HO、25℃)。
【0100】
<インクの調製>
表3〜5の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌して溶解した後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。なお、表3〜5中、色材について括弧内に示してあるのは対イオンの種類である。表3〜5の下段には、インク中の、一般式(1)の色材の含有量A(%)、フタロシアニン骨格を有するシアン色材の含有量B(%)、A/Bの値(倍)を示した。また、以下の各インクの調製に使用したアセチレノールE100は川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。
【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
<記録物の作製>
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、インクジェット記録装置(PIXUSiP8600;キヤノン製)に搭載した。そして、温度23℃、相対湿度55%の条件で、光沢紙(キヤノン写真用紙・光沢プロ〔プラチナグレード〕;キヤノン製)及び普通紙(PB PAPER GF‐500;キヤノン製)の2種の記録媒体に、記録デューティが100%であるベタ画像を記録した。なお、上記記録装置は解像度が600dpi×600dpiであり、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴あたりの吐出量が2.5pLであるインク滴を8滴付与して記録する画像の記録デューティを100%と定義するものである。また、色材の総含有量が10.0%を超えるインクついては、RDSバーコーター#8(R.D.Specialties製)を用いて、上記の各記録媒体に塗工し画像を得た。得られた記録物を、温度23℃、相対湿度55%の環境に24時間放置して、画像を十分に乾燥させた。以下の画像の評価は、CIE(国際照明委員会)により規定されたL表色系におけるL、a、bを、反射濃度計(Spectrolino;GretagMacbeth製)を用いて、光源:D50、視野:2°の条件で測定して行った。
【0105】
<評価>
下記の各項目の評価を行った。本発明においては、下記の各評価項目における評価基準で、Cが許容できないレベル、B以上が許容できるレベルとした。評価結果を表6に示す。
【0106】
(色相角)
光沢紙を用いて得られた記録物について測定したL、a、bの値から、下記の各式に基づいて色相角(H°)をそれぞれ求め、色相角の評価を行った。
≧0、b≧0(第一象現)では、H°=tan−1(b/a
≦0、b≧0(第二象現)では、H°=180+tan−1(b/a
≦0、b≦0(第三象現)では、H°=180+tan−1(b/a
≧0、b≦0(第四象現)では、H°=360+tan−1(b/a)。
【0107】
色相角の評価基準は以下の通りである。
A:H°が260°以上310°未満であった
B:H°が250°以上260°未満であるか、又は、H°が310°以上320°以下であった
C:H°が250°未満であるか、又は、320°より大きかった。
【0108】
(光沢紙における発色性)
光沢紙を用いて得られた記録物について測定したL、a、bの値から、C=(a*2+b*21/2の式に基づいて彩度(C)をそれぞれ求め、光沢紙における発色性の評価を行った。光沢紙における発色性の評価基準は以下の通りである。
AA:Cが100以上であった
A:Cが85以上100未満であった
B:Cが75以上85未満であった
C:Cが75未満であった。
【0109】
(普通紙における発色性)
普通紙を用いて得られた記録物について測定したL、a、bの値から、C=(a*2+b*21/2の式に基づいて彩度(C)をそれぞれ求め、普通紙における発色性の評価を行った。普通紙における発色性の評価基準は以下の通りである。
AA:Cが50以上であった
A:Cが40以上50未満であった
B:Cが35以上40未満であった
C:Cが35未満であった。
【0110】
(耐光性)
光沢紙を用いて得られた記録物をスーパーキセノン試験装置(SX−75;スガ試験機製)に投入し、温度を24℃、相対湿度を60%、照度を100klxとして50時間キセノン光を画像に照射した。そして、曝露後の光学濃度を測定した(「試験後の光学濃度」とする)。そして、暴露試験前後のL、a、b、の変化(ΔL、Δa、Δb)から、ΔE=((ΔL+(Δa+(Δb1/2の式に基づいて色変化(ΔE)を求め、耐光性の評価を行った。耐光性の評価基準は以下の通りである。
AA:ΔEが5未満であった
A:ΔEが5以上10未満であった
B:ΔEが10以上15未満であった
C:ΔEが15以上であった。
【0111】
(耐ガス性)
光沢紙を用いて得られた記録物をオゾン試験装置(OMS−H:スガ試験機製)に投入し、温度を23℃、相対湿度を50%、オゾン濃度を10ppmとして画像を4時間オゾンに暴露した。そして、暴露試験前後のL、a、b、の変化(ΔL、Δa、Δb)から、ΔE=((ΔL+(Δa+(Δb1/2の式に基づいて色変化(ΔE)を求め、耐ガス性の評価を行った。耐ガス性の評価基準は以下の通りである。
AA:ΔEが5未満であった
A:ΔEが5以上15未満であった
B:ΔEが15以上30未満であった
C:ΔEが30以上であった。
【0112】
(固着回復性)
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、インクジェット記録装置(PIXUSiP8600;キヤノン製)に搭載した。そして、吸引回復動作(上記記録装置における「プリントヘッドのクリーニング」)を行うことで、記録ヘッドの吐出口にまでインクを導入した後、記録装置から記録ヘッドを取り出した。この記録ヘッドを温度30℃、相対湿度10%の恒温槽中に14日間保存した。その後、記録ヘッドを再度上記記録装置に装着した。吐出が可能となるまでに要した吸引回復動作の回数と、3回の吸引回復動作を行った時点での各吐出口からのインクの吐出の状態を確認し、固着回復性の評価を行った。固着回復性の評価基準は以下の通りである。なお、色材の合計含有量が10.0%を超えるインクについての固着回復性の評価は行わなかった。
A:吸引3回以下で、全ての吐出口が問題なく吐出できる状態に回復する。
B:吸引3回実施した後、僅かなノズルで吐出不良が発生するが、許容できる範囲である。
C:吸引3回実施した後、多くのノズルで吐出不良が発生した。
【0113】
【表6】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される色材、及び、フタロシアニン骨格を有するシアン色材を含有することを特徴とするブルーインク。
【化1】


(一般式(1)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立にアルキル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(2)で表されるアシルアミノ基を表し、R、R、R及びRの少なくともひとつは下記一般式(2)で表されるアシルアミノ基である。Zは、SOH基、SOM基又はスルファモイル基を表し、Mはアンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表し、Zは芳香環の少なくともひとつの水素原子の位置に置換している。R、R、R、R、R及びRの少なくともひとつがイオン性基で置換されている場合にはnは0乃至3の整数を表し、イオン性基で置換されていない場合にはnは1乃至3の整数を表す。)
【化2】


(一般式(2)中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基を表す。*は前記一般式(1)における芳香環との結合部位を表す。)
【請求項2】
前記インク中の、前記一般式(1)で表される色材の含有量が、前記シアン色材の含有量に対して、質量比率で、0.20倍以上5.00倍以下である請求項1に記載のブルーインク。
【請求項3】
前記シアン色材におけるフタロシアニン骨格の最外殻の芳香環の少なくともひとつが、ヘテロ環である請求項1又は2に記載のブルーインク。
【請求項4】
前記インク中の色材の合計含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、10.0質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のブルーインク。
【請求項5】
インクを収容するインク収容部を有するインクカートリッジであって、前記インク収容部に収容されたインクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のブルーインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項6】
インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に画像を記録する画像記録工程を有するインクジェット記録方法であって、前記画像記録工程に、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のブルーインクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項7】
インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に収容されたインクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のブルーインクであることを特徴とするインクジェット記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−193309(P2012−193309A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59551(P2011−59551)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】