説明

ブレーキ液リザーバタンク

【課題】ブレーキ液リザーバタンクの蓋を開けた際、該蓋を注ぎ口にすることで、ブレーキフルード缶からのブレーキ液を補充し易いようにしたブレーキ液リザーバタンクを提供する。
【解決手段】注入口12aは、該注入口12aの開口縁部12bに連結された蓋部材10により開閉可能になっており、該蓋部材10は、該蓋部材10を開状態としたときブレーキ液を注ぐことのできる注ぎ面10aと、注がれたブレーキ液を注入口12aへ導くガイド部10bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のエンジンルーム内に配設され、マスタシリンダにブレーキ液を供給するブレーキ液リザーバタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルームの小型化に伴い、該エンジンルーム内に部品が密集し、ブレーキ液リザーバタンクのブレーキ液注入口を、カウルの下方に配設せざるを得ないことがある。
【0003】
そのため前記ブレーキ液リザーバタンクへブレーキ液をブレーキフルード缶から補充する場合に、前記カウルが邪魔になって、前記フルード缶内のブレーキ液を全て注入することは困難という問題がある。
【0004】
前記問題点の解決方法として、例えば、特許文献1には、カウルの下方に配設されているブレーキ液リザーバタンクにブレーキ液を補充し易いように、前記カウルを取り外し可能な構造としたものが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、カウルの下方に配設されているブレーキ液リザーバタンクにブレーキ液を補充し易いように、ブレーキ液注入口を、前方に張り出した前記カウルを回避しながら上方へ延長した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−83783号公報
【特許文献2】特開2002−120712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記特許文献1の構造では、カウルを分割しているために、該カウルの構造が複雑になり、部品点数の増加による価格の上昇や生産組付け性の低下を招くおそれがある。
【0008】
また、前記特許文献2の構造では、リザーバタンクの形状が歪になり、特にブレーキ液注入口部分の成形性の悪化、及びブレーキ液リザーバタンクの搬送性の悪化を招く問題がある。
【0009】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、構造の複雑化や成形性,搬送性の悪化を招くことなくブレーキフルード缶からブレーキ液を補充し易いようにしたブレーキ液リザーバタンクを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、エンジンルーム内に配設され、マスタシリンダにブレーキ液を供給するブレーキ液リザーバタンクであって、前記ブレーキ液リザーバタンクの上部にはブレーキ液の注入口が形成され、該注入口は、該注入口の開口縁部に連結された蓋部材により開閉可能になっており、該蓋部材は、該蓋部材を開状態としたときブレーキ液を注ぐことのできる注ぎ面と、注がれたブレーキ液を注入口へ導くガイド部とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、注入口の蓋部材を注入口の開口縁部に開閉可能に連結し、該蓋部材に、該蓋部材を開状態としたときブレーキ液を注ぐことのできる注ぎ面と、注がれたブレーキ液を注入口へ導くガイド部とを備えたものとしたので、注入口がカウルの下方に位置している場合でも、蓋部材を開状態とすることで注ぎ面をカウルの前方へ位置させることができ、前記ブレーキフルード缶からブレーキ液を補充し易くなる。そのため、補充専用のカウル分割構造や、注入口を延長するような複雑なタンク構造とする必要がない。
【0012】
また、エンジンルーム内のレイアウトに応じて、蓋部材を開状態にする場合のパターンを適宜選択することにより、蓋部材を開状態にしたとき、注ぎ面やガイド部が、作業者側に露出するように形成するだけで良く、近年益々狭くなっているエンジンルーム内に前記リザーバタンクを、空きスペースを有効に使って容易に配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1によるブレーキ液リザーバタンクの位置関係を示す車両前部の斜視図である。
【図2】前記ブレーキ液リザーバタンクの位置関係を示す側面図である。
【図3】前記ブレーキ液リザーバタンクの蓋部材の開状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例2によるブレーキ液リザーバタンクを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施例3によるブレーキ液リザーバタンクを示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例4によるブレーキ液リザーバタンクを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
図1ないし図3は、本発明の実施例1によるブレーキ液リザーバタンクを説明するための図である。
【0015】
図において、1は車両前部を示しており、該車両前部1はダッシュパネル9により、エンジンルーム20と車室21とに画成されている。前記ダッシュパネル9の上端部には、カウル2が接合配設されている。該カウル2は横断面樋状をなし、車幅方向に延び、かつ前記エンジンルーム20側に張り出すように形成されている。
【0016】
前記カウル2には、フード7が前記エンジンルーム20を開閉自在に配設されており、またカウル2の後縁にはフロントガラス3の下縁が接続されている。また、前記カウル2の上部開口はカウルトップパネル8によって覆われている。
【0017】
前記ダッシュパネル9の前記エンジンルーム20側には、前記車室21側に配設されたブレーキペダル(不図示)の踏力を増大させるためのブレーキブースタ4が固定されている。該ブレーキブースタ4の前記エンジンルーム20側には、前記ブレーキブースタ4によって増大された前記ブレーキペダルの踏力を液圧に変換するためのマスタシリンダ5が接続されている。
【0018】
前記マスタシリンダ5の上面には、ブレーキ液を貯留し、必要に応じてマスタシリンダ5に供給するためのブレーキ液リザーバタンク6が配設されている。このブレーキ液リザーバタンク6は前記カウル2の下方に位置している。
【0019】
前記リザーバタンク6は、例えば樹脂製であり、中空の略直方体形状に形成されたタンク本体13と、該タンク本体13の上面に形成された注入部12と、該注入部12の注入口12aを開閉する蓋部材10とによって構成されている。
【0020】
前記蓋部材10は、前記注入部12の開口縁部12bにヒンジ15を介して上下方向に回動可能に連結されている。前記蓋部材10は、該蓋部材10が開状態の時にブレーキ液を注ぐことのできる注ぎ面10aと、注がれたブレーキ液を前記注入口12aへ導くためのガイド部10bとを備えている(図3参照)。なお、前記蓋部材10を前記カウル2の下方位置から前方に回動させることにより、蓋部材10の天面及び側面がそのまま前記注ぎ面10a及びガイド部10bとなる。
【0021】
即ち、前記蓋部材10を開状態にすると前記注ぎ面10aは、前記カウル2より前方に位置することとなり、また前記注ぎ面10a及びガイド部10bの少なくとも一部が、作業者から目視可能となるように前記エンジンルーム20側に露出する。
【0022】
本実施例によれば、前記蓋部材10を、前記注入口12aの開口縁部12bに開閉可能に連結し、前記蓋部材10に注ぎ面10a及びガイド部10bを形成するとともに、前記蓋部材10を開状態にすると、前記注ぎ面10aが前記カウル2の前方へ位置するように構成したので、前記ブレーキフルード缶16内のブレーキ液を、補助具を用いることなく容易に前記注ぎ面10aに注ぐことができる。この場合に、構造の複雑化、及び成形性や搬送性の悪化を招くこともなく、空きスペースを簡易な構造で有効利用してブレーキ液リザーバタンク6を狭いエンジンルーム20内に配設できる。
【実施例2】
【0023】
図4は本発明の実施例2によるブレーキ液リザーバタンク26を説明するための図である。図中、図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0024】
前記実施例1では、蓋部材10を回動可能としたが、本実施例2では蓋部材10を水平方向にスライド移動させて、前記注入部12の注入口12aを開閉するように構成している。このとき、前記蓋部材10の天面が、ブレーキ液が注がれる注ぎ面10aとなっており、該注ぎ面10aの上面に、ブレーキ液を注入口12aに導くためのガイド部10bが形成されている。
【実施例3】
【0025】
図5は本発明の実施例3によるブレーキ液リザーバタンク36を説明するための図である。前記実施例1,2では、タンク本体13に注入部12が形成されていたが、本実施例3のブレーキ液リザーバタンク36は注入部を備えていない。本実施例3のブレーキ液リザーバタンク36のタンク本体13は上部開口(注入口)13aを有し、該上部開口13aは水平方向にスライド移動可能に配設された蓋部材18により開閉される。ここで前記蓋部材18の天面が注ぎ面18aとなっており、これの上面には、ブレーキ液を前記タンク本体13に導くためのガイド部18bが形成されている。
【実施例4】
【0026】
図6は本発明の実施例4によるブレーキ液リザーバタンク46を説明するための図である。本実施例4では、タンク本体13は上部開口(注入口)13bを有し、該上部開口13bは、前記タンク本体13の開口縁部13cに、ヒンジ15によって上下方向に回動可能に連結された蓋部材28によって開閉される。前記蓋部材10は、これが開状態にある時の天面を注ぎ面28aとしており、該注ぎ面28aには、ブレーキ液を前記タンク本体13へ導くためのガイド部28bが形成されている。
【0027】
なお、前記各実施例では、ブレーキ液リザーバタンクが、マスタシリンダ5の上面に配設されている場合を説明したが、本発明のブレーキ液リザーバタンクはマスタシリンダから分離されているものでもよい。
【符号の説明】
【0028】
5 マスタシリンダ
6 ブレーキ液リザーバタンク
10,18,28 蓋部材
10b,18b,28b ガイド部
12a,13a,13b 注入口
10a,18a,28a 注ぎ面
12b,13c 開口縁部
20 エンジンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内に配設され、マスタシリンダにブレーキ液を供給するブレーキ液リザーバタンクであって、
前記ブレーキ液リザーバタンクの上部にはブレーキ液の注入口が形成され、
該注入口は、該注入口の開口縁部に連結された蓋部材により開閉可能になっており、
該蓋部材は、該蓋部材を開状態としたときブレーキ液を注ぐことのできる注ぎ面と、注がれたブレーキ液を注入口へ導くガイド部とを備えている
ことを特徴とするブレーキ液リザーバタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−37302(P2011−37302A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183646(P2009−183646)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】