説明

ブレーキ開放装置及びエレベータ

【課題】ブレーキに対してその制動部毎に個別に操作することができ、かつ小さな力で簡易にブレーキを開放できるブレーキ開放装置を提供することを目的とする。
【解決手段】その一端が衝止され、他端によってブレーキレバーを付勢するブレーキばね5aの他端側に配設され、ブレーキばね5aの付勢力に抗する第1のブラケット部11と、ブレーキばね5aの一端側に配置され、第1のブラケット部11に対向する第2のブラケット部12と、第1及び第2のブラケット部間の距離を固定する支持部13と、第2のブラケット部12に取り付けられ、第1のブラケット部11と第2のブラケット部が対向する方向に移動可能な可動部14bを有するアクチュエータ14を備える。そして、第1のブラケット部11と可動部14bとの間でブレーキばね5aを挟み込み、可動部14bが第1のブラケット部11に接近することにより、ブレーキばね5aを圧縮させるブレーキ開放装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータにブレーキをかけるブレーキレバーを開放するブレーキ開放装置及びこれを用いたエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの昇降を行う巻上機に取り付けられるブレーキ装置においては、例えば保守点検等のために、ブレーキ装置のブレーキレバーを強制的に開放することが行われる。
ブレーキレバーを強制的に開放させるための開放装置としては、エレベータの運転時においてブレーキの駆動を行う電磁マグネット部を直接操作するものがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、電磁石の駆動によって開放レバーを押圧し、ブレーキレバーを動作させる作動杵に対して、作動杵を直接押圧する操作杵を設けることが記載されている。この場合、作業者はこの操作杵を把持して押下することにより、作動杵を介して開放レバーを押圧し、ブレーキレバーを強制的に開放させる。
【0004】
また、下記特許文献2では、ある特定の形式の電磁ブレーキに対して、ブレーキの正動力を解除させる装置が記載されている。この電磁ブレーキでは、電磁石の励磁によって駆動するプランジャと、ブレーキの主レバーとがL字レバーによって連結されている。プランジャの動きは、L字レバーの回動によって主レバーに伝達され、主レバーを解放させる。
下記特許文献2に記載の開放装置は、この形式の電磁ブレーキにおいて、L字レバーと主レバーの上端とを挟み込むことにより、強制的にL字レバーを回動させ、主レバーを解放させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−59585号公報
【特許文献2】特開2000−219464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2に記載の電磁ブレーキでは、作動杵やプランジャの動作によって一対のブレーキレバーが同時に制動される構成となっている。したがって、上記特許文献1のように作動杵の動作を直接操作するブレーキ開放装置では、結局一対のブレーキレバーが同時に開放されることになる。
【0007】
ところが、近年においては、例えば故障等により一対のブレーキレバーのうち片方が動作しなくても、もう一方のブレーキレバーのみでエレベータに十分なブレーキをかけ、制止できることが安全上求められている。
したがって、保守点検時等には、片方のブレーキを開放させて、ブレーキレバーを個別に作動させた時の制動力を検査可能なブレーキ開放装置が用意されていることが望ましい。しかし、上記特許文献1のブレーキ開放装置では、一対のブレーキレバーを同時に開放させてしまうため、個々のブレーキレバーの制動力を点検することができない。
【0008】
また、上記特許文献2では、L字レバーと主レバーの上端を挟む構成となっている。このブレーキ開放装置は、L字レバーを強制的に回動させることで主レバーを開放させるものであるので、L字レバーを有し、かつL字レバーと主レバーの両側から挟むことが可能に構成されたブレーキ装置のみにしか適用することができない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み、ブレーキ装置に対してその制動部毎に個別に操作することができ、L字レバーを有していないブレーキ装置にも適用可能なブレーキ開放装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明によるブレーキ開放装置は、その一端が衝止され、他端によってブレーキレバーを付勢するブレーキばねの他端側に配設され、ブレーキばねの付勢力に抗する第1のブラケット部と、ブレーキばねの一端側に配置され、第1のブラケット部に対向する第2のブラケット部と、を備える。
また、第1及び第2のブラケット部間の距離を固定する支持部と、第2のブラケット部に取り付けられ、第1のブラケット部と第2のブラケット部が対向する方向に移動可能な可動部を有するアクチュエータを備える。
そして、第1のブラケット部と可動部との間でブレーキばねを挟み込み、可動部が第1のブラケット部に接近することにより、ブレーキばねを圧縮させるものである。
【0011】
本発明によれば、ブレーキレバーをそれぞれ付勢するブレーキばねを挟み込むことにより、直接ブレーキばねを圧縮させる。このため、本発明によるブレーキ開放装置を取り付ける際には、ブレーキ装置の構成の制約を受けず、様々なタイプのブレーキ装置に対して適用できる。
また、個々のブレーキばねを直接圧縮するので、ブレーキレバーを個別に開放させることが可能である。
【0012】
また、本発明によるエレベータは、昇降路内を昇降する乗りかごと、乗りかごに対して主索を介して連結された釣り合い錘と、主索を巻き掛けることにより乗りかごを昇降させる巻上機と、を備える。そして、このエレベータには、上述のブレーキ開放装置が備え付けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のブレーキ開放装置によれば、個々のブレーキばねを挟み込むことにより、直接圧縮する。このため、ブレーキばね毎にブレーキレバーを別個に開放させることが可能である。また、ブレーキ装置の構成の制約を受けず、様々なタイプのブレーキ装置に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ開放装置を用いたエレベータを示す概略構成図である。
【図2】ブレーキ装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ開放装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ開放装置をブレーキ装置に取り付けた様子を示す説明図である。
【図5】図4におけるブレーキ装置、及びブレーキ開放装置の断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ開放装置によってブレーキを開放する様子を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るブレーキ開放装置によってブレーキを開放する様子を示す説明図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るブレーキ開放装置をブレーキ装置に取り付けた様子を示す説明図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ開放装置を用いて、2つのブレーキレバーを同時に開放させる様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を実施するための最良の形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(ロッドを押圧することによって、ブレーキばねを挟み込む例)
2.第2の実施の形態(ブレーキばねの両端を直接押圧して挟み込む例)
3.第3の実施の形態(ブレーキレバーと共にブレーキばねを挟み込む例)
4.第4の実施の形態(2つのブレーキレバーを同時に開放させる例)
【0016】
1.第1の実施の形態(ロッドを押圧することによって、ブレーキばねを挟み込む例)
図1に、第1の実施の形態によるブレーキ開放装置100を用いたエレベータ1の概略構成図を示す。
本実施の形態によるエレベータ400は、建築構造物内に形成された昇降路220内を昇降する乗りかご230と、乗りかご230に対して主索240を介して連結された釣り合い錘250を備える。
また、昇降路220の頂部に配設され、主索240を巻き掛けることにより乗りかご230を昇降させる巻上機210と、巻上機210の近傍に配設され、主索240が装架される反らせ車260を備える。
また、巻上機210のブレーキ装置には、本実施の形態によるブレーキ開放装置100が設置される。
【0017】
図2に、この巻上機210に配設されたブレーキ装置270の概略正面図を示す。ブレーキ装置270は、例えば巻上機210のブレーキドラム1の側面を挟むように配設された一対のブレーキレバー2a,2bと、ブレーキレバー2a,2bにそれぞれ配設され、ブレーキドラム1に押し付けられることにより、エレベータに制動力を与えるブレーキシュー3a,3bを備える。
また、ブレーキレバー2a,2bの上端部に挿通されるブレーキロッド6a,6bと、ブレーキロッド6a,6bの端部に接続され、ブレーキレバー2a,2bをブレーキばね5a、5bのばね力に逆らって駆動する駆動部10と、を備える。
【0018】
ブレーキレバー2a,2bの下端は軸ピン4a,4bによって回転自在に枢結されている。ブレーキレバー2a,2bに配設されたブレーキシュー3a,3bは、ブレーキレバー2a,2bの回動によってブレーキドラム1に押圧され、制動力を発生させる。
【0019】
また、ブレーキレバー2a,2bの上端には、ブレーキロッド6a,6bが挿通されている。このブレーキロッド6a、6bの端部には、ナット等のフランジ部7a,7bが設けられており、フランジ部7a,7bのブレーキドラム1側に配設されたばね座金8a、8bを衝止している。
【0020】
ばね座金8aとブレーキレバー2aの間、及びばね座金8bとブレーキレバー2bの間には、ブレーキばね5a、5bが配設されている。ブレーキロッド6a,6bは、このブレーキばね5a,5b内に挿通されている。
ブレーキばね5a,5bにおいて、ブレーキドラム1から遠い側の端部は、ばね座金8a,8bによって衝止されている。ブレーキばね5a,5bは、ブレーキレバー2a,2bを駆動部10側へ付勢する。これにより、ブレーキシュー3a,3bは、ブレーキドラム1に押し付けられる。
【0021】
ブレーキロッドの6a,6bのブレーキドラム1側の端部は、ブレーキレバー2a,2bを回動させる駆動部10に接続される。駆動部10は、例えばブレーキレバー2a,2bをブレーキドラム1から離れる側に押圧するプランジャ部9a,9bと、プランジャ部9a,9bを作動させる電磁マグネット部10aを備える。
電磁マグネット部10aは、例えばコイルの励磁によってプランジャ部9a,9bを出入可能なものであれば特に限定されるものではなく、既知の種々の構成が用いられる。
【0022】
ブレーキレバー2a,2bをは、プランジャ部9a、9bの動作に合わせて矢印A1,A2に示す方向に移動する。これにより、ブレーキばね5a,5bの付勢力が調整され、エレベータ運転時における制動力が制御される。
【0023】
図3は、こうしたブレーキ装置270のブレーキを開放する本実施の形態のブレーキ開放装置100を示す概略構成図である。
本実施の形態によるブレーキ開放装置100は、ブレーキばね5aの付勢力に抗する第1のブラケット部11と、第1のブラケット部11に対向する第2のブラケット部12と、を備える。第2のブラケット部12は、ブレーキばね5aの一端側に配置され、第1のブラケット部11は、ブレーキばね5aの他端側に配置される。
また、第1のブラケット部11と第2のブラケット部12の間の距離を固定する支持部13と、第2のブラケット部12に取り付けられたアクチュエータ14と、を備える。
アクチュエータ14は、第1のブラケット部11と第2のブラケット部12が対向する方向に移動可能な可動部14bを有している。
本実施の形態のブレーキ開放装置100は、後述するように、第1のブラケット部11と可動部14bとの間でブレーキばね5aを挟み込むことによりブレーキばね5aを圧縮させ、ブレーキを開放するものである。
【0024】
第1のブラケット部11、第2のブラケット部12及び支持部13の形状や材料は、ブレーキを圧縮する際に受ける抗力に対して耐え得る強度を有するものであれば、特に限定されない。
また、本実施の形態において、支持部13は第1のブラケット部11及び第2のブラケット部12を挿通している。支持部13には、ナット16が螺合されており、ナット16によって第1のブラケット部11及び第2のブラケット部12が衝止され両者間の距離が一定に保持される。
ナット16を回すことにより、第1のブラケット部11及び第2のブラケット部12の間の距離を変更可能することが可能である。
このように、第1のブラケット部11及び第2のブラケット部12の間の距離を変更する調整機構を設けておくことで、ブレーキばねをその長さに関わらず挟み込むことができ、各種形態のブレーキ装置に対して本実施の形態によるブレーキ開放装置100を適用することができる。
【0025】
第1のブラケット部11には、切欠き部17が設けられている。切欠き部17には、後述するように例えばブレーキレバー2aやブレーキロッド6a等が挿通される。
アクチュエータ14は、第2のブラケット部12の第1のブラケット部11と対向する側の面に配設されている。このアクチュエータ14は、第2のブラケット部12に取り付けられるアクチュエータ本体14aと、このアクチュエータ本体14aによって第1のブラケット部11と第2のブラケット部12が対向する方向に移動される可動部14bから構成されている。
アクチュエータ14は、例えば、シリンダ装置を適用することができる。アクチュエータ本体14aは、例えば、油圧装置等の動力源15によって駆動され、可動部14bを出し入れする。可動部14bは、例えばプランジャであり、第1のブラケット部11と第2のブラケット部12が対向する方向に移動可能になっている。すなわち、可動部14bは、ブレーキばね5aの付勢力(ばね力)に抗して移動可能になっている。
【0026】
このブレーキ開放装置100をエレベータのブレーキ装置270(図2参照)に取り付けた状態を図4、図5に示す。図4はブレーキ装置270に取り付けられたブレーキ開放装置100の側面図であり、図5は、図4のA−A’断面図である。
【0027】
第1のブラケット部11の切欠き部17には、ブレーキレバー2aの上端が挿通され、第1のブラケット部11は、ブレーキレバー2aの上端に被せるようにして配設されている。なお、第1のブラケット部11は、切欠き部17においてブレーキレバー2aに摺接しており、矢印A3に示す方向に摺動可能とされている。
また、ブレーキばね5aのブレーキドラム1(図2参照)側の端部51aは、第1のブラケット11とブレーキレバー2aに当接している。
【0028】
アクチュエータ14の可動部14bは、ブレーキレバー2a及びブレーキばね5aを挿通するブレーキロッド6aのブレーキドラム1から遠い側の端部に当接される。
ブレーキばね5aの端部51bは、ばね座金8aによって衝止されており、ばね座金8aはブレーキロッド6aに固定されたフランジ部7aによって衝止されている。すなわち、第1のブラケット部11と可動部14bは、ブレーキロッド6a,フランジ部7a,ばね座金8aを介して、ブレーキばね5aを両端から挟持するようにして配置されている。
【0029】
ブレーキ開放装置100が自重によって下方にずれ、ブレーキロッド6aの端部と可動部14bとが外れるのを抑制するための、第2のブラケット部12側を支える手段については、特に限定するものではなく、種々の形態を採ってよい。例えば、可動部14bのブレーキロッド6aの端部との接触部分に凹部を設けてもよいし、第2のブラケット部12を移動可能に支える支持部を設け、この支持部を周囲に固定するようにしてもよいし、単に台を準備して第2のブラケット12を載せるだけでもよい。
【0030】
次に、本実施の形態によるブレーキ開放装置100の動作について図6を用いて説明する。
図6Aは、本実施の形態によるブレーキ開放装置100をブレーキばね5aに取り付けた時の初期状態を示す側面図である。この時、ブレーキばね5aのブレーキドラム1側(図2参照)の端部51aは、第1のブラケット部11とブレーキレバー2aの両方に当接している。また、ブレーキばね5aの端部51aは、ブレーキレバー2aを駆動部10側に付勢し、エレベータにブレーキをかけている。
【0031】
図6B、図6Cは、動力源15(図示を省略)によって可動部14bを駆動し、第1のブラケット部11に向かって可動部14bを距離d1だけ移動させた状態を示す説明図である。
矢印A4に示すように、可動部14bがアクチュエータ本体14aから突出して、第1のブラケット部11に距離d1だけ接近しようとすると、可動部14bは、当接しているブレーキロッド6aの端部を押圧する。
一方、ブレーキロッド6aの反対側の端部は、エレベータの通常運転時においてブレーキレバー2a,2bを駆動する駆動部10に固定されている。このため、ブレーキロッド6aは、可動部14bにより押圧されても、押圧方向に移動しない。
【0032】
可動部14bがブレーキロッド6aの端部を押圧してもブレーキロッド6aは動かないので、可動部14bが配設されている第2のブラケット部12が、矢印A5に示す方向に押し出され、距離d1だけ移動する。
一方、第1のブラケット部11は、支持部材13によって第2のブラケット部12と連結固定されており、第1のブラケット部11と第2のブラケット部12間の距離は一定に保持される。したがって、第2のブラケット部12が矢印A5に示す方向に距離d1移動するのに伴って、第1のブラケット部11も、矢印A5に示す方向と同一の矢印A6に示す方向に距離d1だけ移動する。
【0033】
ブレーキばね5aの端部51aは第1のブラケット部11に当接しているので、第1のブラケット部11が矢印A6に示す方向に距離d1移動するのに伴って、ブレーキばね5aはその移動量d1だけ圧縮されることになる。
すなわち、本実施の形態では、可動部14bがブレーキロッド6aを押圧する力が、第2のブラケット部12及び支持部材13を介することにより、第1のブラケット部11がブレーキばね5aを押圧する力に変換されている。
【0034】
ブレーキばね5aが距離d1だけ圧縮されることにより、ブレーキばね5aはブレーキレバー2aからその圧縮距離分だけ離間する。これによって、ブレーキレバー2aは、ブレーキばね5aの付勢から開放される。
ブレーキレバー2aは、例えばその重心がブレーキレバー2aを枢結している軸ピン4a(図2参照)に対して、ブレーキドラム1から遠い側に位置するように構成されることが好ましい。ブレーキばね5aが圧縮されることによりブレーキばね5aがブレーキレバー2aから距離d1離間すると、図6Cに示すようにブレーキレバー2aは自重によって矢印A7に示す方向に距離d1だけ移動する。これにより、ブレーキレバー2aが開放される。
【0035】
なお、図6Bでは、ブレーキばね5aが圧縮された際に、第1のブラケット部11がブレーキレバー2aの上端から外れているが、これは説明上距離d1を大きくしたためである。実際には、可動部14bが微小量Δdだけ移動することによりブレーキばね5aが距離Δd圧縮されると、ブレーキレバー2aが微小量Δdだけ回動していくことが繰り返される。このため、第1のブラケット部11はブレーキレバー2aの上端から外れること無く、ブレーキレバー2a上を摺動する。
【0036】
また、可動部14bを急激に移動させるような場合には、例えばレール状のガイド部をブレーキレバー2aの上端に配置し、このガイド部上を第1のブラケット部11が摺動するようにしてもよい。また、このガイド部を第1のブラケット部11側に固定して設け、ガイド部がブレーキレバー2aの上端を摺動するようにしてもよい。これにより、第1のブラケット部11の落下が確実に抑制される。
【0037】
このように、本実施の形態によるブレーキ開放装置100では、ブレーキばねを直接押圧して圧縮するので、ブレーキばねを有する構成のブレーキ装置であれば、様々なタイプのブレーキ装置に対して本発明によるブレーキ開放装置100を適用することができる。
また、本発明によるブレーキ開放装置は、個々のブレーキレバーを付勢するブレーキばね毎に取り付けることができる。したがって、個々のブレーキレバー毎にブレーキを開放することができ、ブレーキレバーの制動力を個別に検査、評価することができる。
【0038】
2.第2の実施の形態(ブレーキばねの両端を直接押圧して挟み込む例)
第1の実施の形態においては、可動部によってブレーキロッドを押圧し、ブレーキばねを挟み込む例を挙げたが、ブレーキばねの端部を可動部によって直接押圧するようにしてもよい。
【0039】
図7Aは、第2の実施の形態によるブレーキ開放装置200をブレーキ装置270(図2参照)に取り付けた状態を示す説明図である。
本実施の形態によるブレーキ開放装置200は、ブレーキばね5aの付勢力に抗する第1のブラケット部21と、第1のブラケット部21に対向する第2のブラケット部22と、を備える。第2のブラケット部22は、ブレーキばね5aの一端側に配置され、第1のブラケット部21は、ブレーキばね5aの他端側に配置される。
また、第1のブラケット部21と第2のブラケット部22の間の距離を固定する支持部23と、第2のブラケット部22に取り付けられたアクチュエータ24と、を備える。
アクチュエータ24は、第1のブラケット部21と第2のブラケット部22が対向する方向に移動可能な可動部24bを有している。
【0040】
第1のブラケット部21、第2のブラケット部22、支持部23、調整機構26等の構成は、第1の実施の形態と同じであってよい。第1のブラケット部21には切欠き部27が設けられており、第1の実施の形態同様に、切欠き部27内にブレーキレバー2aの上端が挿入されている。また、ブレーキばね5aの端部51aは、第1のブラケット部21及びブレーキレバー2aの両方に当接している。
ただし、本実施の形態においては、可動部24bの形状が例えば円筒状とされており、可動部24bは、ばね座金8aに当接されている。
【0041】
アクチュエータ24は、例えば、シリンダ装置を適用することができる。アクチュエータ本体24aは、例えば、油圧装置等の動力源によって駆動され、可動部24bを出し入れする。可動部24bは、例えばプランジャであり、第1のブラケット部21と第2のブラケット部22が対向する方向に移動可能となっている。すなわち、可動部24bは、ブレーキばね5aの付勢力(ばね力)に抗して移動可能になっている。
【0042】
図7Bは、可動部24bを第1のブラケット部21に向かって距離d2だけ移動させた状態を示す説明図である。
可動部24bは矢印A8に示す方向に移動することにより、ばね座金8aを介してブレーキばね5aを押圧する。ブレーキばね5aの端部51aは、第1のブラケット部21に当接することにより衝止されている。このため、ブレーキばね5aは可動部24bと第1のブラケット部21との間で挟み込まれて、圧縮される。
【0043】
ブレーキばね5aが圧縮されることにより、ばね座金8aとブレーキロッド6aのフランジ部7aとの間には、圧縮した距離d2だけ隙間が生じる。
この時、本実施の形態によるブレーキ開放装置200と、ばね座金8aと、ブレーキばね5aと、ブレーキレバー2aとを一つの系として捉えると、この系は、ブレーキロッド6aに対してその軸方向における拘束を受けず、フリーな状態となっている。
【0044】
一方、既述のように、ブレーキレバー2aの重心は、図示しない枢結ピン4a(図2参照)に対してブレーキドラム1から遠い側に位置する。したがって、ブレーキレバー2aは自重によって図7Cに示す矢印A9の方向に回動しようとする。
すると、ブレーキ開放装置200と、ばね座金8aと、ブレーキばね5aと、ブレーキレバー2aとの系は、ブレーキロッド6aに対してその軸方向にフリーな状態となっているので、この系ごと一緒に矢印A10に示す方向に移動する。そして、ばね座金8aがフランジ部7aに当接する位置において止まる。これにより、ブレーキレバー2aは距離d2だけ移動し、ブレーキが開放される。
本実施の形態では、可動部24bがブレーキばね5aを直接押圧するため、確実にその押圧力をブレーキばね5aの圧縮のためのみに作用させることが可能である。
【0045】
3.第3の実施の形態(ブレーキレバーと共にブレーキばねを挟み込む例)
また、ブレーキレバーとブレーキばねを共に挟みこむようにして、ブレーキを開放させてもよい。図8は、第3の実施の形態に係るブレーキ開放装置300をブレーキ装置270(図2参照)に取り付けた状態を示す説明図である。
【0046】
本実施の形態によるブレーキ開放装置300は、ブレーキばね5aの付勢力に抗する第1のブラケット部31と、第1のブラケット部31に対向する第2のブラケット部32と、を備える。第2のブラケット部32は、ブレーキばね5aの一端側に配置され、第1のブラケット部31は、ブレーキばね5aの他端側に配置される。
また、第1のブラケット部31と第2のブラケット部32の間の距離を固定する支持部33と、第2のブラケット部32に取り付けられたアクチュエータ34と、を備える。
アクチュエータ34は、第2のブラケット部32に取り付けられるアクチュエータ本体34aと第1のブラケット部31と第2のブラケット部32が対向する方向に移動可能な可動部34bを有している。
【0047】
第2のブラケット部32、支持部33、調整機構36、アクチュエータ34等の構成は、第1の実施の形態と同じであってよい。ただし、第1のブラケット部31に設けられる切欠き部37内には、ブレーキロッド6aのみが挿通されている。
また、切欠き部37の幅は、ブレーキロッド6aの径よりも大きく、ブレーキレバー2aの幅よりも小さい。したがって、第1のブラケット部31の第2のブラケット部32に対向する面31aは、ブレーキレバー2aに当接している。このとき、第1のブラケット部31をブレーキレバー2aに対してボルト等によって固定してもよいし、第1のブラケット部31の面31aにおいて、第2のブラケット部32に向かって突出する凸部を設け、この凸部をブレーキレバー2aの上端に引っ掛けるようにしてもよい。
【0048】
可動部34bは、ブレーキロッド6aの端部に当接される。図示しない油圧装置等の駆動源により、可動部34bを第1のブラケット部31に向かって移動させると、第1の実施の形態(図6参照)と同様の原理にて、第1のブラケット部31は矢印A11に示す方向に移動しようとする。このとき、第1のブラケット部31の面31aは、ブレーキレバー2aに接しており、第1のブラケット部31は、ブレーキレバー2aを矢印A11に示す方向に押圧する。
ブレーキレバー2aは、第1のブラケット部31に押圧されることにより、当接するブレーキばね5aのブレーキドラム1(図示を省略。図2参照)側の端部を押圧する。ブレーキばね5aのもう一方の端部は、ばね座金に8aによって衝止されているので、これにより、ブレーキばね5aが圧縮される。
【0049】
このように、本実施の形態では、第1のブラケット部31と可動部34bとの間に、ブレーキレバー2aとブレーキばね5aとを配置している。つまり、本実施の形態によるブレーキ開放装置300をこのように取り付けることにより、ブレーキレバー2aとブレーキばね5aをともに挟み込んでブレーキばね5aを圧縮し、ブレーキを開放する。
【0050】
4.第4の実施の形態(2つのブレーキレバーを同時に開放させる例)
なお、本発明によるブレーキ開放装置を用いて、2つのブレーキレバーを同時に開放させることも可能である。
例えば、第1の実施の形態(図3参照)によるブレーキ開放装置100を用いて2つのブレーキレバーを同時に開放する例を図9に示す。
図9に示すブレーキ装置280は、例えば巻上機のブレーキドラム1aの側面を挟むように配設された一対のブレーキレバー2c,2dと、ブレーキレバー2c,2dにそれぞれ配設され、ブレーキドラム1aに押し付けられることにより、エレベータに制動力を与えるブレーキシュー3c,3dを備えている。
【0051】
また、ブレーキレバー2c,2dの上端部を貫通するブレーキロッド6cを備える。なお、ブレーキロッド6cとブレーキレバー2dは固着されている。ブレーキレバー2c,2dの下端は軸ピン4c,4dによって回転自在に枢結されている。
ブレーキレバー2c側には、ブレーキばね5cが配設されており、ブレーキドラム1aから遠い側のブレーキばね5cの端部は、ブレーキロッド6cに設けられたフランジ部7cによって、ばね座金8cを介して衝止されている。また、ブレーキばね5cのブレーキドラム1に近い側の端部は、ブレーキレバー2cに当接している。
【0052】
このブレーキ装置280では、ブレーキばね5cのブレーキドラム1に近い側の端部がブレーキレバー2cを押圧することで、ブレーキレバー2cに設けられたブレーキシュー3cをブレーキドラムに押し付ける。
また、ブレーキばね5cのもう一方の端部がブレーキロッド6cのフランジ部7cを押圧することにより、ブレーキロッド6cを矢印A12に示す方向に押し出す。ブレーキロッド6cとブレーキレバー2dは固着されているので、ブレーキロッド6cが押し出されることにより、ブレーキレバー2dは矢印A12に示す方向に回動し、ブレーキレバー2dに配設されたブレーキシュー3dをブレーキドラム1aに押し付ける。これにより、エレベータにブレーキをかける制動力を生じさせる。
【0053】
このブレーキ装置280のブレーキばね5cに対して、第1の実施の形態によるブレーキ開放装置100が取り付けられている。
ブレーキ開放装置100を取り付ける態様は、第1の実施の形態と同様である(図5参照)。すなわち、第1のブラケット部に設けられた切欠き部内には、ブレーキレバー2cの上端とブレーキロッド6cが挿通されており、ブレーキばね5cのブレーキドラム1側の端部は、第1のブラケット部11とブレーキレバー2cの両方に当接している。
また、ブレーキ開放装置100の可動部14bは、ブレーキロッド6cの端部に当接している。
【0054】
可動部14bを第1のブラケット部11に近接する方向に移動させることにより、第1の実施の形態と同様の原理にて、第1のブラケット部11がブレーキばね5cのブレーキドラム1a側の端部を押圧する。ブレーキばね5cは可動部14bと第1のブラケット部11の間で挟みこまれることにより圧縮され、ブレーキレバー2cが例えば自重により矢印A11に示す方向に回動し、ブレーキが開放される。
【0055】
一方、可動部14bが第1のブラケット部11に向かって近接することによりブレーキロッド6cの端部が押圧され、ブレーキロッド6cは、矢印A13に示す方向に押し出される。
ブレーキレバー2dは、ブレーキロッド6cに固着されているので、ブレーキロッド6cが押し出されるのに伴って矢印A13に示す方向に回動する。これにより、ブレーキレバー2dが開放される。
【0056】
このブレーキ装置280のように、ブレーキロッドが一つのブレーキレバーに対して固着され、一つのブレーキばねによって同時に2つのブレーキレバーを付勢する場合には、本発明によるブレーキ開放装置を用いることで、2つのブレーキレバーを同時に開放させることも可能である。
なお、ここでは第1の実施の形態によるブレーキ開放装置100を用いる例を示したが、第2の実施の形態(図7参照)、第3の実施の形態(図8参照)において示したブレーキ開放装置200,300を用いることも可能である。
【0057】
以上、本発明によるブレーキ開放装置の実施の形態について説明した。本発明は上記実施の形態にとらわれることなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、考えられる種々の形態を含むものである。また第1から第3の実施の形態においては、ブレーキばね5a側にブレーキ開放装置を取り付けた例を挙げて動作の説明を行ったが、ブレーキばね5b側にブレーキ開放装置を取付けた場合であっても同様に動作するものである。
【0058】
1,1a・・・ブレーキドラム、2a,2b,2c,2d・・・ブレーキレバー、3a,3b,3c,3d・・・ブレーキシュー、4a,4b,4c,4d・・・軸ピン、5a,5b,5c・・・ブレーキばね、6a,6b,6c・・・ブレーキロッド、7a,7b,7c・・・フランジ部、8a,8b,8c・・・ばね座金、9a,9b・・・プランジャ、10・・・駆動部、10a・・・電磁マグネット部、11,21,31・・・第1のブラケット部、12,22,32・・・第2のブラケット部、13,23,33・・・支持部、14,24,34・・・可動部、15・・・駆動源、16,26,36・・・ナット、17,27,37・・・切欠き部、100,200,300・・・ブレーキ開放装置、210・・・巻上機、220・・・昇降路、230・・・乗りかご、240・・・主索、250・・・釣り合い錘、260・・・反らせ車、270,280・・・ブレーキ装置、400・・・エレベータ、




【特許請求の範囲】
【請求項1】
その一端が衝止され、他端によってブレーキレバーを付勢するブレーキばねの他端側に配設され、前記ブレーキばねの付勢力に抗する第1のブラケット部と、
前記ブレーキばねの前記一端側に配置され、前記第1のブラケット部に対向する第2のブラケット部と、
前記第1及び第2のブラケット部間の距離を固定する支持部と、
前記第2のブラケット部に取り付けられ、前記第1のブラケット部と前記第2のブラケット部が対向する方向に移動可能な可動部を有するアクチュエータと、を備え、
前記第1のブラケット部と前記可動部との間で前記ブレーキばねを挟み込み、前記可動部が前記第1のブラケット部に接近することにより、前記ブレーキばねを圧縮させる
ブレーキ開放装置。
【請求項2】
前記第1のブラケット部の前記第2のブラケット部に対向する面は、前記ブレーキばねの他端に当接する請求項1に記載のブレーキ開放装置。
【請求項3】
前記可動部は、前記ブレーキレバーに挿通されるブレーキロッドの端部を押圧する請求項2に記載のブレーキ開放装置。
【請求項4】
前記可動部は、前記ブレーキばねの前記一端を押圧する請求項2に記載のブレーキ開放装置。
【請求項5】
前記第1のブラケット部は、前記ブレーキレバーまたは前記ブレーキロッドの少なくとも一方が挿通される切欠き部を有する請求項1〜4に記載のブレーキ開放装置。
【請求項6】
前記第1のブラケット部と前記第2のブラケット部の間の距離を変更する調整機構を備える請求項1〜5に記載のブレーキ開放装置。
【請求項7】
前記可動部は、油圧装置により構成される請求項1〜6に記載のブレーキ開放装置。
【請求項8】
前記第1のブラケット部の前記第2のブラケット部に対向する面は、前記ブレーキばねの前記他端との間に前記ブレーキレバーを挟んで配設される請求項1に記載のブレーキ開放装置。
【請求項9】
昇降路内を昇降する乗りかごと、
前記乗りかごに対して主索を介して連結された釣り合い錘と、
前記主索を巻き掛けることにより前記乗りかごを昇降させる巻上機と、
その一端が衝止され、他端によってブレーキレバーを付勢するブレーキばねの他端側に配設され、前記ブレーキばねの付勢力に抗する第1のブラケット部と、前記ブレーキばねの前記一端側に配置され、前記第1のブラケット部に対向する第2のブラケット部と、前記第1及び第2のブラケット部間の距離を固定する支持部と、前記第2のブラケット部に取り付けられ、前記第1のブラケット部と前記第2のブラケット部が対向する方向に移動可能な可動部を有するアクチュエータと、を備え、前記第1のブラケット部と前記可動部との間で前記ブレーキばねを挟み込み、前記可動部が前記第1のブラケット部に接近することにより、前記ブレーキばねを圧縮させるブレーキ開放装置と、
を含む
エレベータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−232814(P2012−232814A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101255(P2011−101255)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】