説明

ブレード部材及びその製造方法、ブレード部材の評価方法並びにブレード部材装置

【課題】 ブレードの使用状態を精密に評価することができるブレード部材及びその製造方法、ブレード部材の評価方法並びにブレード部材装置を提供する。
【解決手段】 ゴム状弾性層12に変形検出手段13が埋設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレード部材及びその製造方法、ブレード部材の評価方法並びにブレード部材装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真プロセスでは、電子写真感光体に対して、少なくとも帯電、露光、現像、転写およびクリーニングの各プロセスが実行される。かかる電子写真プロセスでは、転写感光体ドラム及び転写ベルト、又は中間搬送ベルトの帯電・除電・クリーニングに用いられるクリーニングブレード、並びに現像プロセスに用いられて電荷平坦化、除電及び帯電をするための現像ブレード、さらにはトナー規制ブレード等の複数のブレードが用いられている。
【0003】
従来、これらのブレードの評価は、実際にブレードが使用される装置(実機)や試験機にブレードを搭載し、ブレードを実際の被当接体に当接させて所定時間使用した後、ブレードの摩耗状態を観察して、摩耗量を比較することにより行われていた。
【0004】
かかる評価方法では、耐摩耗性を評価することはできるが、ブレードの使用時の特性を評価することができないという課題があった。
【0005】
ところで、ブレードの表面にひずみゲージを取付けたクリーニング装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載されたクリーニング装置は、ブレードが感光体の回転方向にわん曲変形する状態が生じたときに、わん曲変形を検出し、ブレードを元の状態に復帰させるというものである。
【0006】
なお、特許文献1に記載のブレードは、わん曲変形を検出するには好適なものであるが、ブレードの使用時の特性を評価するには不適切なものである。具体的には、ブレード表面にひずみゲージを接着剤により貼り付けているため、接着剤の影響によりブレード自体の変形を適切に観察することができないという問題や、被接触体と接触するエッジ近傍の変形を観察することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−230239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、ブレード部材の使用時の特性を精密に評価することができるブレード部材及びその製造方法、ブレード部材の評価方法並びにブレード部材装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、被接触体と当接するゴム状弾性層を備えるブレード部材であって、前記ゴム状弾性層に変形検出手段が埋設されていることを特徴とするブレード部材にある。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記変形検出手段がひずみゲージであり、前記ひずみゲージの本体が前記ゴム状弾性層に埋設され、前記本体に接続する配線を前記ゴム状弾性層の表面に露出させたものであることを特徴とする第1の態様に記載のブレード部材にある。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記変形検出手段は、前記被接触体と当接するエッジ面側に埋設されていることを特徴とする第1又は第2の態様に記載のブレード部材にある。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記ゴム状弾性層はエッジ層と背面層とからなり、前記エッジ層と前記背面層との境界面に前記変形検出手段が設けられていることを特徴とする第1〜3のいずれか一つの態様に記載のブレード部材にある。
【0013】
本発明の第5の態様は、成形金型にゴム状弾性層を形成するゴム材料を投入し、前記ゴム材料の少なくとも一部が硬化した状態で変形検出手段を載置し、さらに前記ゴム材料と同一又は異なるゴム材料を投入して硬化させることにより、ゴム状弾性層からなるブレード部材を形成することを特徴とするブレード部材の製造方法にある。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1〜4のいずれか一つの態様に記載のブレード部材を被接触体に当接させ、前記変形検出手段によりブレード部材の変形を連続的に計測して、前記ブレード部材を評価することを特徴とするブレード部材の評価方法にある。
【0015】
本発明の第7の態様は、第1〜4のいずれか一つの態様に記載のブレード部材と、このブレード部材を被接触体に所定の当接圧で当接させて保持する保持手段と、前記ブレード部材と前記被接触体との当接圧を検出する接圧検出手段と、を具備することを特徴とするブレード部材装置にある。
【0016】
本発明の第8の態様は、前記接圧検出手段により検出された検出結果を表示する表示手段をさらに具備することを特徴とする第7の態様に記載のブレード部材装置にある。
【0017】
本発明の第9の態様は、前記接圧検出手段が検出する検出信号が予め設定した値に達した際に通報する通報手段をさらに具備することを特徴とする第7又は第8の態様に記載のブレード部材装置にある。
【0018】
本発明の第10の態様は、前記接圧検出手段が検出する検出信号が予め設定した所定範囲内となるように前記保持手段の保持状態を調整する制御手段をさらに具備することを特徴とする第7〜9のいずれか一つの態様に記載のブレード部材装置にある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ゴム状弾性層に変形検出手段を埋設させることにより、ブレード部材の使用時の特性を精密に評価することができるブレード部材及びその製造方法、ブレード部材の評価方法並びにブレード部材装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るブレードの横断面図及び分解横断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るブレード部材の概略斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るブレード部材装置の説明図である。
【図4】試験例1の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るブレードの横断面図であり、図1(b)は、本発明の一実施形態に係るブレードの分解横断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係るブレード部材の概略斜視図である。
【0023】
図示するように、ブレード10は、ゴム状弾性層12からなるブレード部材11を備えており、ゴム状弾性層12の一端側に支持部材20が接着されている。そして、ブレード部材11は、ゴム状弾性層12の内部に変形検出手段であるひずみゲージ13が埋設されている。
【0024】
ひずみゲージ13は、ひずみゲージ本体13Aと、ひずみゲージ本体13Aに接続される配線13Bとからなり、ひずみゲージ本体13Aがゴム状弾性層12に埋設されている。そして、ひずみゲージ本体13Aに接続する配線13Bは、ブレード部材11の表面に露出し、図示しない変形検出装置に接続できるようになっている。本実施形態では、ブレード部材11と支持部材20は、絶縁性の接着部材14を介して固着されており、ブレード部材11の背面側に露出した配線13Bは、この絶縁性の接着部材14及び図示しない保護テープにより支持部材20と接触しないように構成されている。これにより、配線13Bを、支持部材20と導通させることなくゴム状弾性層12の基端部側に露出させている。
【0025】
このブレード10は、実機や試験機に搭載することにより、ブレード部材11の実機での使用時の特性を精密に評価することができる。ブレード部材11を評価する際には、ブレード部材11のひずみゲージ本体13Aに接続される配線13Bを検出装置に接続し、ブレード部材11を感光体等の被接触体に当接させた後、ひずみゲージ13によりブレード部材11の変形を計測することにより、ブレード部材11の特性を評価する。ひずみゲージ13により検出されるブレード部材11のひずみ量から、ブレード部材11の使用時の特性、具体的には、変形量、当接圧等を推測することができる。これにより、ブレード部材11の摩擦特性等を評価することもできる。例えば、基準となるひずみ量と摩擦の関係を予め計測しておくことにより、ひずみゲージ13により検出されるひずみ量からブレード部材11の摩擦特性を評価することができる。
【0026】
ブレードに接着剤によりひずみゲージ13を固着した場合は、接着剤が剛体となりブレード部材11の変形量に影響を与えてしまうが、本実施形態では、接着剤等を使用することなくゴム状弾性層12に変形検出手段を設けていることにより、ブレード部材11を構成するゴム状弾性層12自体の使用状態を適切に評価することができる。
【0027】
また、本実施形態のブレード部材11は、任意の位置に変形検出手段であるひずみゲージ13を設けることができ、ブレード部材11の所望の位置の変形を精密に検出することができる。また、ブレード部材11ではひずみゲージ13を埋設させていることにより、ひずみゲージ13が周辺部品と接触する虞がない。ひずみゲージをブレード部材表面に設けた場合は、ひずみゲージが周辺部品と接触する虞があるだけではなく、ブレード部材の変形を適切に検出することができなくなってしまう。例えば、被接触体と接触するエッジ面に変形検出手段を設けた場合は、被接触体と接触しない位置にひずみゲージを設けることになるため、エッジ近傍の変形を計測することができない。一方、被接触体と接触するエッジ面とは反対側の背面に変形手段を設けた場合は、エッジ近傍の変形を適切に計測することができない。
【0028】
本実施形態では、変形検出手段としてひずみゲージ13を用いていることにより、ひずみを電気信号として検出することができ、客観的にひずみ量を評価することができる。
【0029】
ゴム状弾性層12のひずみゲージ13を埋設する位置は特に限定されず、変形を計測したい部位に設ければよい。言い換えれば、本発明によれば、ブレード部材11の任意の位置の変形を精密に評価することができる。特に、本実施形態にかかるブレード部材11は、ブレード部材11のエッジ近傍の変形を精密に計測するのに好適なものである。
【0030】
エッジ近傍の変形を計測する際には、ひずみゲージ13は、ゴム状弾性層12のエッジ近傍に設ければよく、例えば、ゴム状弾性層12の被接触体と当接するエッジ面からその反対側の面である背面までの肉厚を100%とした場合、ゴム状弾性層12の肉厚のエッジ面側から50%以下の領域で且つゴム状弾性層12の先端部側に設ければよい。言い換えれば、ひずみゲージ13が近い面をエッジ面として用いればよい。また、肉厚のエッジ面側から10〜40%の領域に埋設することにより、ブレード部材11のゴム状弾性層12の最大変形部分の変形を計測することができる。
【0031】
本実施形態では、ゴム状弾性層12は単層からなるものとしたが、エッジ層と背面層との二層からなるものであってもよい。エッジ層と背面層との二層の場合は、エッジ層と背面層との境界面にひずみゲージ13を設けることにより、エッジ層と背面層の境界面における変形を計測することができる。すなわち、本発明の構成によれば、エッジ近傍の変形だけでなく、複数層の界面における変形を計測することができる。
【0032】
本実施形態では、ブレード部材11の背面側に、ひずみゲージ13の配線13Bを露出させたが、配線13Bは、被接触体と当接するエッジ近傍から離れていれば、エッジ面側に露出させてもよい。
【0033】
本実施形態では、ゴム状弾性層12にひずみゲージ13を1つ設けたが、ひずみゲージ13は複数設けてもよく、向きも特に限定されるものではない。例えば、ひずみゲージ13を長手方向端部及び中央に埋設して、各部位の変形を計測することもできる。
【0034】
ここで、本発明のブレード部材の製造方法について詳細に説明する。
まず、遠心成形機の回転感光体ドラムを所定の回転数で回転させながら、ゴム材料の一部(第1ゴム材料)を遠心成形機に投入して、感光体ドラムを所定の回転数で回転させながら硬化させる。
【0035】
そして、第1ゴム材料の少なくとも一部が硬化した状態、すなわち、第1ゴム材料が完全に硬化する前に、ひずみゲージ13を第1ゴム材料の表面に載置する。このとき、ひずみゲージ13の配線13Bはエアー面側へ屈曲させておく。
【0036】
次に、ゴム材料の残り(第2ゴム材料)を投入して硬化させる。
第2ゴム材料が硬化したところで、感光体ドラムの回転を停止し、脱型及び冷却を行う。そして、一端を切断してシート状にし、必要に応じて熟成させた後、ブレード部材の長手方向が円周方向又は遠心成形金型の奥行き方向に沿うように切断することで、ブレード部材を得ることができる。なお、エアー面、すなわち後に成形した第2ゴム材料の表面が、ブレード部材の背面側となり、図2に示すように、ゴム状弾性層12の背面側にひずみゲージ13の配線13Bが露出したブレード部材11となる。
【0037】
上述した製造方法では、第1ゴム材料が完全に硬化しないうちに、第2ゴム材料を投入することにより一体的に成形して、単層のゴム状弾性層12を形成することができる。
【0038】
本発明のブレード部材の製造方法は、上述したように、遠心成形法によりゴム状弾性層12にひずみゲージ13を埋設したブレード部材11を容易に製造することができるものである。このように、本発明のブレード部材の製造方法は、容易にブレード部材の使用時の特性を精密に評価することができるブレード部材を成形することができる。
【0039】
また、本発明のブレード部材の製造方法は、感光体ドラムに投入する第1ゴム材料及び第2ゴム材料の量をコントロールすることで、ひずみゲージ13の位置を容易に制御することができる。具体的には、第1ゴム材料の量を少なくすることで、エッジ近傍にひずみゲージ13を埋設することができる。すなわち、本発明の製造方法によれば、任意の位置にひずみゲージ13を埋設させたブレード部材を成形することができる。
【0040】
上述した製造方法では、第2ゴム材料の表面が背面側となるようにしたが、第2ゴム材料の表面がエッジ層となるようにしてもよい。この場合は、ブレード部材11のエッジ面側にひずみゲージ13の配線13Bが露出したものとなる。
【0041】
また、本実施形態では、第1ゴム材料と第2ゴム材料を同一のものとすることにより、単層のゴム状弾性層12を形成したが、第1ゴム材料と第2ゴム材料が異なるものとしてもよい。これにより、エッジ層と背面層の二層からなり、エッジ層と背面層との境界面に変形検出手段が設けられているブレード部材を製造することができる。この場合は、第1ゴム材料としてエッジ層を形成するゴム材料を用い、第2ゴム材料として背面層を形成するゴム材料を用いるのが好ましい。
【0042】
ブレード部材の製造方法として、遠心成形機を使用する製造方法を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。遠心成形機以外の他の成形金型を使用して製造する際、例えば、プレス成形の場合も同様に、成形金型にゴム状弾性層を形成するゴム材料の一部を投入し、ゴム材料の少なくとも一部が硬化した状態で変形検出手段を載置した後、ゴム材料の残りを投入して積層状態で硬化させることにより、ゴム状弾性層からなるブレード部材を形成することができる。
【0043】
本実施形態では、変形検出手段としてひずみゲージ13を設けたがこれに限定されず、ゴム状弾性層12の変形を検出できるものであればよい。
【0044】
本発明のブレード部材は、ブレード部材の評価に用いるのに好適なものである。本発明のブレード部材を用いれば、ブレード部材の実機における使用時の特性を精密に評価することができる。このブレード部材を用いることにより、異なるシステム、評価条件、環境下においても使用時の特性を精密に且つ客観的に評価することができる。
【0045】
また、本発明のブレード部材を用いることにより、評価設備を容易に実機と同様の評価条件・環境条件とすることもできる。例えば、試験機において実機の条件を再現する際に、予め実機におけるブレード部材の出力値を計測しておけば、試験機でその出力値となるように条件を合わせることで、実機の再現をすることができる。
【0046】
さらに、本発明のブレード部材を用いれば、所望の摺動状態となるようにブレード部材を設置することができる。ブレード部材の設置方法としては、ゴム状弾性層に変形検出手段が埋設されている測定ブレード部材を被接触体に当接させて、変形検出手段により測定ブレード部材の変形を計測し、計測結果に基づいて被接触体と当接する測定ブレード部材の摺動状態を把握して、測定ブレード部材又は非測定ブレード部材を所定の摺動状態となるように設置する方法が挙げられる。
【0047】
まず、ゴム状弾性層に変形検出手段が埋設されている測定ブレード部材を被接触体に当接させて、変形検出手段により作動時の測定ブレード部材の変形を連続的に計測する。
【0048】
次に、この計測結果から、測定ブレード部材の実機における使用時(被接触体との当接時)の摺動状態を把握する。変形検出手段としてひずみゲージを用いることにより、測定ブレード部材の変形の大きさや変形の経時変化を数値化して観察することができ、ブレード部材の摺動状態を精密且つ客観的に把握することができる。これにより、接触角、当接圧等の設置条件を変更して、ブレード部材が所定の変形となる(すなわち、所定の摺動状態となる)条件を見つけることができる。
【0049】
得られた条件に基づいて、ブレード部材が所定の摺動状態となるように装置に設置する。装置に設置するブレード部材は、測定ブレード部材でも、非測定ブレード部材でもよい。非測定ブレード部材としては、測定ブレード部材と同材質からなり且つ変形検出手段が埋設されていないものが挙げられる。なお、測定ブレード部材を装置に設置する場合は、設置後に変形検出手段によりブレード部材の変形を計測し、所定の出力値が得られるか否かを判断することにより、設置条件が適切か否かを判断することができる。
【0050】
本発明のブレード部材は、上述したように、評価試験用のブレード部材として好適に用いることができるものであるが、勿論、通常のブレード部材と同様の使用をしてもよい。例えば、本発明のブレード部材は、電子写真感光体、転写プロセスに用いる転写感光体ドラム及び転写ベルト、又は中間搬送ベルトのクリーニングに用いられるクリーニングブレード部材に用いて好適なものであるが、これに限定されず、例えば、トナー規制ブレード等に用いて好適なものである。
【0051】
(実施形態2)
図3を用いて、本発明の一実施形態に係るブレード部材装置について説明する。
【0052】
図3に示すように、本実施形態のブレード部材装置100は、ブレード部材11を具備するブレード10と、ブレード部材11を保持する保持手段30と、制御部40と、表示部50と、通報部60と、を備えている。
【0053】
ブレード部材11は、実施形態1で説明したものと同様のものを用いることができる。具体的には、ブレード10は、ゴム状弾性層12に変形検出手段であるひずみゲージ13が埋設されたブレード部材11と、ゴム状弾性層12の一端側に設けられた支持部材20とからなる。なお、実施形態1のブレード部材11と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0054】
このブレード部材11は、被接触体である感光体ドラム200に所定の圧力で当接するように保持手段30により保持されている。本実施形態では、保持手段30は、アクチュエーターを具備しており(図示なし)、アクチュエーターの駆動によりブレード10の保持状態を調整できるようになっている。具体的には、アクチュエーターが駆動することにより、ブレード部材11の感光体ドラム200との距離やブレード部材11の傾きが変化して、保持手段30の保持状態の調整ができるようになっている。
【0055】
ブレード部材11のひずみゲージ13は、配線を介して制御部40の接圧検出手段41に電気的に接続されている。制御部40は、CPU機能を含むものであり、ブレード部材装置100の全体の作動を制御する。本実施形態では、制御部40は、ブレード部材11の感光体ドラム200との当接圧を検出する接圧検出手段41と、保持手段30の保持状態を調整する制御手段42とを有している。
【0056】
表示部50は、接圧検出手段41で検出した検出結果を表示するものである。なお、検出結果の表示方法は、検出結果等を視覚的に表示できるものであればよく、特に限定されない。
【0057】
ブレード部材11が感光体ドラム200に接触して変形すると、ひずみゲージ13が出力信号S1を接圧検出手段41へ送信する。そして、接圧検出手段41は、予め計測した出力信号S1と当接圧との関係に基づいて、出力信号S1から当接圧(接圧)を検出する。本実施形態では、接圧検出手段41は、当接圧を検出すると、検出信号S2を生成し、生成した検出信号S2を表示部50及び制御手段42に送信する。これにより、表示部50は、接圧の検出結果を表示する。
【0058】
一方、制御手段42は、検出信号S2が、予め設定した所定範囲外である場合は、必要に応じて所定の信号を生成する。検出信号S2が予め設定した範囲S<S2<Sの場合は、信号を生成しないが、S≦S2<Sの場合は、アクチュエーターを駆動するための駆動信号S3を生成する。このとき、駆動信号S3は、予め制御手段42が有するテーブルデータに応じて、検出信号S2の値から所定の駆動信号が選択されるようになっている。また、S≦S2の場合は、駆動信号S4を生成する。言い換えれば、制御手段42は、検出信号S2が、予め設定した値Sに達した際に駆動信号S4を生成する。
【0059】
駆動信号S3が生成されると、保持手段30のアクチュエーターに送信される。これにより、アクチュエーターが駆動する。これにより、検出信号S2が予め設定した所定範囲内となるように、保持手段30の位置が所定方向に移動したり、所定向きに傾いたりして、保持手段30の保持状態が調整される。
【0060】
一方、駆動信号S4が生成されると、通報部60に送信される。通報部60は、駆動信号S4が入力された際、すなわち、検出信号S2が予め設定した値に達した際に、通報をするようになっている。通報の方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ランプの点灯、警報音の発生が挙げられる。かかる通報手段により、使用者はブレード部材11の当接圧の変化を感知して、感光体ドラム200等の駆動を停止することができるようになっている。なお、本実施形態では、制御手段42は検出信号S2が予め設定した値に達したか否かを判断する機能を備えており、「通報手段」は、制御手段42と通報部60とから構成されている。
【0061】
本実施形態では、ブレード10のゴム状弾性層12の内部にひずみゲージ13が埋設されているため、ブレード部材11と感光体ドラム200との接圧を高精度に検出することができ、接圧の微調整をすることができる。ブレードの表面にひずみゲージを設けたブレードを用いた場合、ひずみゲージをエッジ近傍に設けることができず、また、かかるひずみゲージの変形量はブレードのゴム状弾性層内部の変形量と同一ではないため、ブレードの変形を正確に検出することができず、接圧を正確に求めることができない。これに対し、本実施形態では、ブレード10のゴム状弾性層12にひずみゲージ13が埋設されていることにより、ひずみゲージ13をブレード10のエッジ近傍に埋設することができ、さらに、ひずみゲージ13がブレード10のゴム状弾性層12と共に変形をする、すなわち、ゴム状弾性層12と同一の変形をする。これにより、ブレード10のゴム状弾性層の変形を正確に検出することができ、ブレード10の接圧を正確に求めることができる。
【0062】
上述したように、本実施形態では、接圧検出手段41の検出結果に基づいて、ブレード部材11の感光体ドラム200との当接圧が予め設定した所定範囲内となるように、保持手段30の保持状態が調整できるようになっている。ブレード部材11を長期間に亘って使用すると、へたりが発生して感光体ドラム200との接圧が弱くなるが、本実施形態では、保持手段30を感光体ドラム200方向へ移動させるように調整することにより、ブレード部材11の接圧を所定範囲内に維持することができる。したがって、ブレード部材11の感光体ドラム200との接触不良を抑制することができる。従来は、ブレード部材11は、バネ等により感光体ドラム200に所定の当接圧で当接させていたため必要以上に高い当接圧で当接させていたが、本実施形態によれば、当接圧を高精度に制御することができるため、適切な当接圧で当接させることができる。これにより、ブレード部材11の摩耗やへたりを抑制することができ、ブレード部材を長期間に亘って使用することができるようになる。
【0063】
また、本実施形態では、通報手段を備えていることにより、ブレード部材11の摩耗等の不具合により予め設定した値に達した場合、すなわち、保持手段30の調整によりブレード部材11と感光体ドラム200との当接圧を制御することができなくなった場合には、操作者がブレード部材11の不具合を発見することができる。したがって、ブレード部材11のメクレの発生を事前に防ぐことができる。また、ブレード部材11の寿命を正確に判断することができ、適切な交換時期を判別することができる。
【0064】
なお、通報手段は設けなくてもよい。通報手段を設けない場合は、接圧検出手段41の検出結果を表示する表示部50の表示に基づいて、検出結果が所定範囲内であるか否かを確認すればよい。
【0065】
また、通報部60を設けずに、表示部50が通報手段の一部を構成するようにしてもよい。例えば、検出信号S2が予め設定した値に達した際に、制御手段42が生成する駆動信号S4を表示部50に送信するようにし、表示部50は、駆動信号S4が入力されると、「異常」等の通報に関する情報が表示されるようにしてもよい。なお、通報に関する表示は、操作者が視覚的に認識しやすい表示方法であればよく、特に限定されない。
【0066】
また、制御手段42は設けなくてもよい。制御手段42及び通報手段を設けない場合は、接圧検出手段41の検出結果を表示する表示部50の表示に基づいて、保持手段30の位置を調整し、調整後に接圧検出手段41が検出する検出結果が所定範囲内であるか否かを確認すればよい。
【0067】
また、表示部50を設けなくてもよい。表示部50を設けない場合も、制御手段42により、ブレード部材装置100の全体の作動を制御することができ、また、制御手段42及び通報部60により、接圧検出手段41が検出する検出信号S2が予め設定した値に達した際に操作者が感知することができる。
【0068】
以下、本発明のブレード部材を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
遠心成形機の回転感光体ドラムを所定の回転数で回転させながら、ポリウレタン組成物の一部(第1ゴム材料)を遠心成形機に投入して、感光体ドラムを所定の回転数で回転させながら硬化させた。そして、第1ゴム材料が完全に硬化する前に、ひずみゲージ(共和電業社製)を第1ゴム材料の表面に載せて固定した。第1ゴム材料が完全に硬化する前にポリウレタン組成物の残り(第2ゴム材料)を投入して硬化させた。その後、脱型及び冷却を行い、所定形状に切断することで、実施例1のブレード部材を得た。これに、支持部材を固着して、実施例1のブレードとした。
【0070】
(実施例2)
実施例1のブレード部材表面に潤滑剤を塗布した以外は実施例1と同様にして、実施例2のブレードを得た。
【0071】
(試験例1)
各実施例のブレード部材をクリーニングブレードとして感光体とブレードを備えた試験機において、温度25℃×湿度60%の環境下で、感光体を静止させている状態から線速353mm/secで約8〜10sec回転させたときのひずみを測定した。結果を図4に示す。
【0072】
(結果のまとめ)
図4に示すように、当接させた感光体ドラムの回転開始及び回転停止時には、実施例1及び2のブレード部材のひずみゲージのひずみが0となっており、ブレードのひずみに対応して出力値が変化していることが確認された。
【0073】
また、潤滑剤を表面に塗布した実施例2のブレード部材は、実施例1のブレード部材よりも出力変化が小さくなることが確認された。これより、変形検出手段であるひずみゲージの出力変化により、ブレード部材の摩擦の違いが的確に判断できることが確認された。
【符号の説明】
【0074】
10 ブレード
11 ブレード部材
12 ゴム状弾性層
13 ひずみゲージ
13A ひずみゲージ本体
13B 配線
20 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接触体と当接するゴム状弾性層からなるブレード部材であって、前記ゴム状弾性層に変形検出手段が埋設されていることを特徴とするブレード部材。
【請求項2】
前記変形検出手段がひずみゲージであり、前記ひずみゲージの本体が前記ゴム状弾性層に埋設され、前記本体に接続する配線を前記ゴム状弾性層の表面に露出させたものであることを特徴とする請求項1に記載のブレード部材。
【請求項3】
前記変形検出手段は、前記被接触体と当接するエッジ面側に埋設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレード部材。
【請求項4】
前記ゴム状弾性層はエッジ層と背面層とからなり、前記エッジ層と前記背面層との境界面に前記変形検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のブレード部材。
【請求項5】
成形金型にゴム状弾性層を形成するゴム材料を投入し、前記ゴム材料の少なくとも一部が硬化した状態で変形検出手段を載置し、さらに前記ゴム材料と同一又は異なるゴム材料を投入して硬化させることにより、ゴム状弾性層からなるブレード部材を形成することを特徴とするブレード部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のブレード部材を被接触体に当接させ、前記変形検出手段によりブレード部材の変形を連続的に計測して、前記ブレード部材を評価することを特徴とするブレード部材の評価方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のブレード部材と、このブレード部材を被接触体に所定の当接圧で当接させて保持する保持手段と、前記ブレード部材と前記被接触体との当接圧を検出する接圧検出手段と、を具備することを特徴とするブレード部材装置。
【請求項8】
前記接圧検出手段により検出された検出結果を表示する表示手段をさらに具備することを特徴とする請求項7に記載のブレード部材装置。
【請求項9】
前記接圧検出手段が検出する検出信号が予め設定した値に達した際に通報する通報手段をさらに具備することを特徴とする請求項7又は8に記載のブレード部材装置。
【請求項10】
前記接圧検出手段が検出する検出信号が予め設定した所定範囲内となるように前記保持手段の保持状態を調整する制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のブレード部材装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−68502(P2012−68502A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214096(P2010−214096)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】