説明

ブレード部材

【課題】 鳴きを防止し、高耐久性のブレード部材を提供する。
【解決手段】 被接触体に当接するエッジ層と、エッジ層の裏面に設けられた背面層との二層からなり、エッジ層は、ポリオール、イソシアネート化合物、及び架橋剤を少なくとも含むポリウレタン組成物を硬化・成形して得たポリウレタン部材からなり、背面層は、ポリオール、イソシアネート化合物、及び架橋剤を少なくとも含むポリウレタン組成物100質量部に対して、比重が2.0以上且つ薄板状でアスペクト比が3以上の無機充填剤を1〜30質量部配合して成形したポリウレタン部材からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレード部材に関し、特に、電子写真法において感光体や転写ベルトなど、トナー像が形成され且つその後当該トナー像を被転写材に転写するトナー像担持体上のトナーを除去するクリーニングブレード部材、及び印刷用スキージー等として用いるのに好適なブレード部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真プロセスでは、電子写真感光体あるいは転写ベルト等を繰り返し使用するために、トナーを除去するクリーニングブレードが用いられる。クリーニングブレードは、長期間に亘って感光体に当接させるものであるため、耐摩耗性が良好であることが求められる。また、感光体に当接させる際の感光体との摩擦による振動により、ブブブ、キューという異音、いわゆる鳴き現象が生じるという点が問題になっている。
【0003】
このため、従来鳴き対策として、種々の検討がなされている。例えば、厚さ方向に沿って特性の異なる材料を複数の層状に積層して構成し、クリーニングエッジ側の層を構成する材料を高硬度の樹脂としたクリーニングブレード(特許文献1参照)や、ゴム成分(A)と充填剤(B)と架橋剤(C)とを含む熱硬化性エラストマー組成物からなり、充填剤(B)及び架橋剤(C)を調整することにより鳴きを抑制したクリーニングブレード(特許文献2参照)などが提案されている。
【0004】
従来のブレードは、製造工程が多くコストがかかる、ブレードとしての特性が不十分であるなどの問題があった。
【0005】
さらに、近年、ユニットのロングライフ化が進むにつれて感光体が高耐久品となっており、それに伴ってブレードにも高耐久性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−184462号公報
【特許文献2】特開2007−41454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、鳴きを防止し、高耐久性のブレード部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、被接触体に接触させて用いられるブレード部材であって、前記被接触体に当接するエッジ層と、前記エッジ層の裏面に設けられた背面層との二層からなり、前記エッジ層は、ポリオール、イソシアネート化合物、及び架橋剤を少なくとも含むポリウレタン組成物を硬化・成形して得たポリウレタン部材からなり、前記背面層は、ポリオール、イソシアネート化合物、及び架橋剤を少なくとも含むポリウレタン組成物100質量部に対して、比重が2.0以上且つ薄板状でアスペクト比が3以上の無機充填剤を1〜30質量部配合して成形したポリウレタン部材からなることを特徴とするブレード部材にある。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のブレード部材において、前記ブレード部材は、40℃の貯蔵弾性率(1Hz)が2.0×10Pa以上であることを特徴とするブレード部材にある。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載のブレード部材において、前記無機充填剤が雲母又は珪灰石であることを特徴とするブレード部材にある。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1〜3のいずれか一つの態様に記載のブレード部材において、前記ブレード部材は、10℃の貯蔵弾性率(1Hz)を(G’10)Pa、50℃の貯蔵弾性率(1Hz)を(G’50)Paとしたときの(G’10)/(G’50)が3以下であることを特徴とするブレード部材にある。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1〜4のいずれか一つの態様に記載のブレード部材において、前記背面層のポリウレタン部材の10℃及び50℃の反発弾性をそれぞれRbmT10及びRbmT50としたときの下記式で表されるΔRbm(%)と、前記背面層のポリウレタン組成物のみを硬化・成形した弾性体の10℃及び50℃の反発弾性をそれぞれRbnT10及びRbnT50としたときの下記式で表されるΔRbn(%)とが、100(ΔRbm−ΔRbn)/ΔRbn≧14の関係を満たすことを特徴とするブレード部材にある。
【0013】
【数1】

【0014】
【数2】

【発明の効果】
【0015】
本発明のブレード部材は、エッジ層と背面層の二層からなり、背面層は、ポリウレタン組成物に対してアスペクト比が3以上の無機充填剤を所定量配合することにより、鳴きを防止し、さらに耐摩耗性に優れた高耐久性のブレード部材を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ヘタリ率の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のブレード部材は、エッジ層と背面層の二層からなり、背面層は、ポリウレタン組成物に対し、比重が2.0以上且つ薄板状でアスペクト比が3以上の無機充填剤を所定量配合することにより、鳴きを防止し、耐摩耗性にも優れたものである。無機充填剤を配合することにより、振動に起因する摩耗を防止することができるためである。また、無機充填剤がスリップ運動を抑制するためか、フィルミングの発生がないものとなる。
【0018】
本発明のブレード部材において、エッジ層は、被接触体に当接する側の層であり、ポリオール、ポリイソシアネート、及び架橋剤を含むポリウレタン組成物を硬化・成形したポリウレタン部材からなるものである。一方、背面層は、エッジ層の裏面に設けられる層であり、ポリオール、イソシアネート化合物、及び架橋剤を少なくとも含むポリウレタン組成物100質量部に対して、比重が2.0以上且つ薄板状でアスペクト比が3以上の無機充填剤を1〜30質量部配合して成形したポリウレタン部材からなるものである。この構成により、エッジ層の機械的強度等の特性を維持しつつ、背面層により、ブレード部材の鳴きを防止し且つ耐摩耗性を向上させることができる。すなわち、例えばクリーニング特性などの所望のブレード特性を維持しつつ、鳴きを防止し、高耐久性のものとすることができる。本発明では、背面層のみに所定量の無機充填剤を配合しているので、被接触体を傷つけたり膜の剥がれを発生させたりすることがなく、鳴きを防止し、耐摩耗性に優れたものを実現することができる。
【0019】
エッジ層は、ポリオール、ポリイソシアネート、及び架橋剤を含むポリウレタン組成物を硬化・成形したポリウレタン部材からなるものである。詳細は後述するが、ポリオール、ポリイソシアネート、及び架橋剤の種類や配合を調整することにより、破断伸びや引張強度等の機械的強度が高く、高硬度で耐摩耗性に優れたものとするのが好ましい。
【0020】
背面層は、ポリオール、イソシアネート化合物、及び架橋剤を少なくとも含むポリウレタン組成物100質量部に対して、比重が2.0以上でアスペクト比が3以上の無機充填剤を1〜30質量部配合、好ましくは5〜15質量部配合して成形したポリウレタン部材からなるものである。これにより、ブレード部材は、鳴きを防止し、耐摩耗性に優れたものとなる。また、無機充填剤がスリップ運動を抑制するためか、ブレード部材は、フィルミングの発生がないものとなる。なお、無機充填剤の配合量が1質量部未満であると無機充填剤による効果が十分には得ることができず、無機充填剤の配合量が30質量部より多くなると、ウレタン結合量が減り、耐ヘタリ特性が低下してしまい経時的に線圧が低下したり、硬度が著しく上昇したりしてしまう。
【0021】
ここで、無機充填剤は、比重が2.0以上且つ薄板状でアスペクト比が3以上のものであり、好ましくは、アスペクト比が3〜20である。かかる無機充填剤の比重は2.0以上であればよいが、例えば、2.0以上4.0以下のものが挙げられる。ここで、薄板状とは、フレーク状等、板状の形状をいい、層状化合物を含むものである。無機充填剤は、平面視した際の形状は特に限定されず、アスペクト比が3以上となっていればよい。アスペクト比とは、厚さを除いた長手寸法/短手寸法をいう。なお、比重が2.0未満又は/及びアスペクト比が3未満の無機充填剤を配合しても、鳴きを防止する効果が得られない。比重が2.0以上且つ薄板状でアスペクト比が3以上の無機充填剤としては、雲母、珪灰石、石英等が挙げられ、フレーク径、比重、アスペクト比の変更により機能調整が容易にできるため特に雲母が好ましい。
【0022】
本発明のブレード部材は、背面層に所定の無機充填剤を配合したものであり、エッジ層には無機充填剤を配合していない。これにより、ブレード部材が、被接触体を傷つけたり膜の剥がれを発生させたりすることがない。ブレード部材は、エッジ層に無機充填剤を含まず、肉厚方向全体における無機充填剤の存在領域の比率が10〜98%であればよく、好ましくは50〜90%である。なお、ブレード部材の肉厚方向全体における無機充填剤の存在領域の比率が10%未満であると無機充填剤による鳴き防止効果が十分に発揮されず、98%より大きいとヘタリによりブレード特性が低下してしまう虞がある。無機充填剤は、背面層のいずれの領域に存在していてもよく、例えば、背面層のブレード部材の接触面とは反対側の面、いわゆる裏面側に偏った状態で存在していても、背面層の全体に均一に分散した状態で存在していてもよい。
【0023】
エッジ層と背面層の厚さの割合は特に限定されないが、エッジ層の厚さ/背面層の厚さ
が0.05〜3となるようにするのが好ましい。
【0024】
本発明のブレード部材は、ポリウレタン組成物に対して所定量の無機充填剤を配合した背面層を具備することにより、貯蔵弾性率が上昇する。貯蔵弾性率は、ブレード部材の振動能力の指標とすることができるものであり、貯蔵弾性率が高いブレード部材はウレタン結合から伝わる振動を減衰する能力が高い。本発明のブレード部材は、従来のブレード部材に比べて貯蔵弾性率が高くなることにより、鳴きの防止やトナーや外添剤のフィルミング防止に優れたものとなる。ブレード部材は、40℃の貯蔵弾性率(1Hz)が1.0×107Pa以上であることが好ましく、2.0×10Pa以上であるのがさらに好ましく、特に3.0×107Pa以上であることが好ましい。この条件を満たすブレード部材は、より厳しい条件においても鳴きが防止される。
【0025】
また、ブレード部材は、10℃の貯蔵弾性率(1Hz)を(G’10)Pa、50℃の貯蔵弾性率(1Hz)を(G’50)Paとしたときの(G’10)/(G’50)が3以下であるのが好ましい。3以下となることにより、環境依存性の小さいものとなり、環境が変化しても十分に安定したクリーニング性を維持することができるためである。
【0026】
また、本発明にかかる背面層は、所定量の無機充填剤が配合されていることにより温度依存性が低下し、環境が変化しても機械的特性等が安定したものとなる。背面層のポリウレタン部材は、例えば、ポリウレタン部材の10℃及び50℃の反発弾性をそれぞれRbmT10及びRbmT50としたときの下記式で表されるΔRbm(%)と、背面層のポリウレタン組成物のみを硬化・成形した弾性体の10℃及び50℃の反発弾性をそれぞれRbnT10及びRbnT50としたときの下記式で表されるΔRbn(%)とが、100(ΔRbm−ΔRbn)/ΔRbn≧14の関係を満たすものとなる。
【0027】
【数3】

【0028】
【数4】

【0029】
背面層のヘタリ率は7.0%以下であるのが好ましい。ここでいうヘタリ率とは、以下の方法により求められるものである。背面層は、耐ヘタリ性に優れたポリウレタン組成物を選択して成形すればよい。ヘタリ率が7.0%以下である背面層を設けることにより、ブレード部材は耐ヘタリ性に優れたものとなる。ブレード部材のヘタリ率は10%未満であるのが好ましい。
【0030】
図1(a)に示すように、テストサンプル10(背面層又はブレード部材)に、ホルダ部材20Aを固着したブレードを、押し付け用土台30に、初期設定角度θを25°、食い込み量yを1.7mmで押し付け、放置環境(温度45℃×湿度95%)に72時間放置し、さらに放置環境から取り出して6時間変形状態で常温放置し、押し付け用土台30から解除後30分常温放置する。その後、図1(b)に示すようにホルダ部材20Aを固定治具40に固定し、ハイトゲージを使用してピックテスターにより倒れ込み量hを測定し、試験前の倒れ込み量hと比較してヘタリ量(h−h)を求め、以下の式からヘタリ率を求める。
【0031】
【数5】

【0032】
背面層のポリウレタン組成物は、ポリオールとポリイソシアネートに、架橋剤等を配合させたものである。
【0033】
ポリオールとしては、ジオールと二塩基酸との脱水縮合で得られるポリエステルポリオール、ジオールとアルキルカーボネートの反応により得られるポリカーボネートポリオール、カプロラクトン系のポリオール、ポリエーテルポリオール等を挙げることができ、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)が好ましい。ポリオールは1種でも、2種以上を併用してもよい。また、ポリオールは、分子量が1000〜3000であることが好ましい。なお、分子量が1000〜1500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を用いた場合は、比較的容易に貯蔵弾性率を高くすることができる。
【0034】
ポリオールと反応させるポリイソシアネートは、分子構造が比較的剛直でないものであることが好ましく、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、1,6−ヘキサンジイソシアネート(HDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)等を挙げることができる。特に、好適なものはMDIである。ポリイソシアネートは1種でも、2種以上を併用してもよい。ポリイソシアネートの配合割合は、ポリウレタン中に30〜80質量%であることが好ましい。30質量%未満では引張強さが不十分になる場合があるからであり、80質量%より多いと永久伸びが大きくなりすぎるためである。
【0035】
架橋剤としては、ジオール(2官能)、トリオール(3官能)、テトラオール(4官能)等が挙げられ、これらは勿論、併用してもよい。また、架橋剤としてアミン系化合物を用いてもよい。
【0036】
ジオールは特に限定されないが、例えば、プロパンジオール(PD)、ブタンジオール(BD)が挙げられる。また、トリオールも特に限定されないが、分子量が120〜2500のトリオールが好ましく、さらに好ましくは120〜1000のトリオールである。具体的には、トリメチロールエタン(TME)、トリメチロールプロパン(TMP)等の短鎖トリオールや、分子量がそれらよりも大きい下記式(1)で表されるカプロラクトン系トリオール(εカプロラクトンから合成されるトリオール)等を挙げることができる。なお、トリオールはクリープや応力緩和などの特性を改良するために添加されるものである。
【0037】
【化1】

【0038】
架橋剤の配合割合は特に限定されないが、架橋剤中の3官能架橋剤の割合が0〜60%であることが好ましく、より好ましくは5〜40%である。なお、2官能架橋剤も3官能架橋剤もそれぞれ二種以上混合して用いてもよい。
【0039】
エッジ層のポリウレタン組成物は、ポリオールとポリイソシアネートに、架橋剤等を配合させたものである。ポリオール、ポリイソシアネート、及び架橋剤は、それぞれ背面層で挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0040】
また、エッジ層のポリウレタン部材、及び背面層のポリウレタン部材は、いずれもα値が0.7〜1.0であることが好ましい。α値とは、下記式で表される値である。α値が、1.0より大きいと架橋剤の官能基(水酸基やアミノ基等)が残存するため当接する感光体等を汚染してしまい、0.7未満では架橋密度が少なすぎて強度が不十分となったり、残存イソシアネートの失活に時間がかかり感光体等を汚染する場合がある。
【0041】
【数6】

【0042】
本発明にかかるエッジ層及び背面層は、それぞれ上述したポリオールに、ポリイソシアネート質量部、架橋剤の質量部及び比率等を調整して配合し、背面層の場合はさらに所定量の無機充填剤を配合して、これらを反応させることにより製造することができる。
【0043】
被接触体に接触するエッジ層を高硬度にし、エッジ層の裏面に設けられた背面層をエッジ層に比べて低硬度とするのが好ましく、具体的には、エッジ層の硬度はJIS Aで70〜90°、背面層の硬度はJIS Aで60〜80°であることが好ましい。被接触体に接触するエッジ層を高硬度にし、エッジ層の裏面に設けられた背面層をエッジ層に比べて低硬度とすることで、耐摩耗性及び耐ヘタリ性に優れた高耐久性のブレード部材となる。
【0044】
本発明にかかるブレード部材は、プレポリマー法やワンショット法などのポリウレタンの一般的な製造方法を用いることができるが、遠心成形により形成するのが好ましい。遠心成形機の回転ドラムの回転数の制御により、背面層の無機充填剤の分散状態を容易に調整することができるためである。また、エッジ層と背面層を一体的に成形することができるためである。
【0045】
遠心成形法で製造する場合には、まず、遠心成形機の回転ドラムを所定の回転数で回転しながらエッジ層及び背面層の成形材料を順次投入して成形する。ドラム内に例えば背面層の材料をまず投入し、背面層を成形した後、エッジ層の材料を投入し、背面層上にエッジ層を成形する。このとき、先に成形する層が完全に硬化しないうちに次に成形する層の材料を投入するのが好ましい。これにより二層を一体的に成形することができる。また、エアー面、すなわち後に成形する層の表面の方が金型面より平坦となるので、エアー面側が被帯電体と接触するように用いるのが望ましい。
【0046】
ただし、ブレード部材の成形方法はこれに制限されるものではなく、例えば注型などにより成形した背面層上に、別途、注型してエッジ層を成形する方法、又はディッピング処理やスプレー処理によりエッジ層を成形する方法などが挙げられる。
【0047】
このようにして製造したポリウレタンを切断等して、所定の寸法のブレード部材とし、これを接着剤等で支持部材に接着すればブレードとなる。
【0048】
本発明のブレード部材は、上述したように、エッジ層を破断伸びや引張強度等の機械的強度が高く、高硬度で耐摩耗性に優れたものとし、背面層により鳴きを防止し、耐摩耗性に優れたものとすることにより、所望のブレード特性を維持しつつ、鳴きを防止した高耐久性のものとなる。
【0049】
本発明のブレード部材は、電子写真感光体、転写プロセスに用いる転写ドラム及び転写ベルト、又は中間搬送ベルトのクリーニングに用いられるクリーニングブレード部材に用
いて好適なものであるが、これに限定されず、例えば、トナー規制ブレード、金属性クリーニングロール等に用いて好適なものである。
【0050】
以下、本発明のブレード部材を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
<ポリウレタンA>
1,9−ノナンジオールとアジピン酸とから得た分子量2000の1,9NDアジペート100質量部に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)40質量部、架橋剤として1,4−ブタンジオール/トリメチロールプロパン混合液(モル比:85/15)を8.1質量部とし、ポリウレタン組成物とした。
【0052】
<ポリウレタンa>
1,9−ノナンジオールとアジピン酸とから得た分子量2000の1,9NDアジペート100質量部に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)40質量部、架橋剤として1,4−ブタンジオール/トリメチロールプロパン混合液(モル比:85/15)を8.1質量部としたポリウレタン組成物に、雲母(クラライトマイカ;比重2.85、アスペクト比20,株式会社クラレ社製)1質量部を配合した。
【0053】
<ポリウレタンb>
クラライトマイカを5質量部とした以外は、ポリウレタンaと同様にした。
【0054】
<ポリウレタンc>
クラライトマイカを15質量部とした以外は、ポリウレタンaと同様にした。
【0055】
<ポリウレタンd>
クラライトマイカを30質量部とした以外は、ポリウレタンaと同様にした。
【0056】
<ポリウレタンe>
クラライトマイカを0.5質量部とした以外は、ポリウレタンaと同様にした。
【0057】
<ポリウレタンf>
クラライトマイカを33質量部とした以外は、ポリウレタンaと同様にした。
【0058】
<ポリウレタンg>
クラライトマイカの代わりに、珪灰石(NYAD400;比重2.90、アスペクト比3.0,NYCO社製)10質量部とした以外は、ポリウレタンaと同様にした。
【0059】
<ポリウレタンh>
クラライトマイカの代わりに、炭化チタン(Ti9100;比重3.90、アスペクト比1.1,NYCO社製)10質量部とした以外は、ポリウレタンaと同様にした。
【0060】
<ポリウレタンi>
クラライトマイカの代わりに、珪酸アルミニウム(Dellite43B;比重1.60、アスペクト比14,LAVIOSA CHIMICA MINERARIA S.p.A社製)30質量部とした以外は、ポリウレタンaと同様にした。
【0061】
(試験例1)
ポリウレタンA及びa〜iを硬化・成形したポリウレタン部材のテストサンプルを形成し、各ポリウレタンからなるテストサンプルについて、ゴム硬度をJIS K6301に準拠して、23℃におけるヤング率をJIS K6254で25%伸長により、100%伸張時の引張強度(100%Modulus)、引張強度、及び切断時の伸び(破断伸び)をJIS K6251に準じて、引裂強度をJIS K6252、永久伸びをJIS K6262に準拠して測定した。また、10℃〜50℃の反発弾性(Rb)をJIS K6255に準拠したリュプケ式反発弾性試験装置により測定して、温度依存性についても評価した。各ポリウレタンの測定結果を、表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
(実施例1)
ポリウレタンa及びポリウレタンAを順次遠心成形機に投入して遠心成形することにより、ポリウレタンAを硬化・成形した肉厚0.2mmのポリウレタン部材からなるエッジ層と、ポリウレタンaを硬化・成形した肉厚1.8mmのポリウレタン部材からなる背面層とからなるブレード部材を成形した。これを板金(支持部材)に接着させて実施例1のブレードを成形した。なお、ブレード部材の肉厚方向全体における雲母の存在領域の比率は89%であった。
【0064】
(実施例2)
ポリウレタンb及びポリウレタンAを順次遠心成形機に投入して遠心成形することにより、ポリウレタンAを硬化・成形した肉厚0.2mmのポリウレタン部材からなるエッジ層と、ポリウレタンbを硬化・成形した肉厚1.8mmのポリウレタン部材からなる背面層とからなるブレード部材を成形した。これを板金(支持部材)に接着させて実施例2のブレードを成形した。なお、ブレード部材の肉厚方向全体における雲母の存在領域の比率は89%であった。
【0065】
(実施例3)
ポリウレタンc及びポリウレタンAを順次遠心成形機に投入して遠心成形することにより、ポリウレタンAを硬化・成形した肉厚0.5mmのポリウレタン部材からなるエッジ層と、ポリウレタンcを硬化・成形した肉厚1.5mmのポリウレタン部材からなる背面層とからなるブレード部材を成形した。これを板金(支持部材)に接着させて実施例3のブレードを成形した。なお、ブレード部材の肉厚方向全体における雲母の存在領域の比率は67%であった。
【0066】
(実施例4)
ポリウレタンd及びポリウレタンAを順次遠心成形機に投入して遠心成形することにより、ポリウレタンAを硬化・成形した肉厚0.6mmのポリウレタン部材からなるエッジ層と、ポリウレタンdを硬化・成形した肉厚1.4mmのポリウレタン部材からなる背面層とからなるブレード部材を成形した。これを板金(支持部材)に接着させて実施例4のブレードを成形した。なお、ブレード部材の肉厚方向全体における雲母の存在領域の比率は57%であった。
【0067】
(実施例5)
ポリウレタンg及びポリウレタンAを順次遠心成形機に投入して遠心成形することにより、ポリウレタンAを硬化・成形した肉厚0.5mmのポリウレタン部材からなるエッジ層と、ポリウレタンgを硬化・成形した肉厚1.5mmのポリウレタン部材からなる背面層とからなるブレード部材を成形した。これを板金(支持部材)に接着させて実施例5のブレードを成形した。なお、ブレード部材の肉厚方向全体における珪灰石の存在領域の比率は67%であった。
【0068】
(比較例1)
ポリウレタンAを遠心成形機に投入して遠心成形することにより、ポリウレタンAを硬化・成形した肉厚2.0mmのポリウレタン部材からなるブレード部材を成形した。これを板金(支持部材)に接着させて比較例1のブレードを成形した。
【0069】
(比較例2)
ポリウレタンe及びポリウレタンAを順次遠心成形機に投入して遠心成形することにより、ポリウレタンAを硬化・成形した肉厚0.2mmのポリウレタン部材からなるエッジ層と、ポリウレタンeを硬化・成形した肉厚1.8mmのポリウレタン部材からなる背面層とからなるブレード部材を成形した。これを板金(支持部材)に接着させて比較例2のブレードを成形した。ブレード部材の肉厚方向全体における雲母の存在領域の比率は89%であった。
【0070】
(比較例3)
ポリウレタンf及びポリウレタンAを順次遠心成形機に投入して遠心成形することにより、ポリウレタンAを硬化・成形した肉厚0.2mmのポリウレタン部材からなるエッジ層と、ポリウレタンfを硬化・成形した肉厚1.8mmのポリウレタン部材からなる背面層とからなるブレード部材を成形した。これを板金(支持部材)に接着させて比較例3のブレードを成形した。ブレード部材の肉厚方向全体における雲母の存在領域の比率は89%であった。
【0071】
(比較例4)
ポリウレタンh及びポリウレタンAを順次遠心成形機に投入して遠心成形することにより、ポリウレタンAを硬化・成形した肉厚0.5mmのポリウレタン部材からなるエッジ層と、ポリウレタンhを硬化・成形した肉厚1.5mmのポリウレタン部材からなる背面層とからなるブレード部材を成形した。これを板金(支持部材)に接着させて比較例4のブレードを成形した。ブレード部材の肉厚方向全体における炭化チタンの存在領域の比率は67%であった。
【0072】
(比較例5)
ポリウレタンi及びポリウレタンAを順次遠心成形機に投入して遠心成形することにより、ポリウレタンAを硬化・成形した肉厚0.2mmのポリウレタン部材からなるエッジ層と、ポリウレタンiを硬化・成形した肉厚1.8mmのポリウレタン部材からなる背面層とからなるブレード部材を成形した。これを板金(支持部材)に接着させて比較例5のブレードを成形した。ブレード部材の肉厚方向全体における珪酸アルミニウムの存在領域の比率は89%であった。
【0073】
(試験例2)
各実施例及び各比較例のブレード部材で背面層に用いたポリウレタン組成物を硬化・成形したポリウレタン部材のテストサンプルを作製し、反発弾性(Rb)をJIS K6255に準拠したリュプケ式反発弾性試験装置により、10℃及び50℃で測定し、各実施例及び各比較例のブレード部材の背面層の温度依存性について評価した。
【0074】
また、ブレード部材の10℃、40℃及び50℃の貯蔵弾性率(1Hz)をEXSTAR6000(SII社製)により測定した。結果を表2及び表3に示す。
【0075】
(試験例3)
各実施例及び各比較例のブレード部材をクリーニングブレードとして実機(コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社製:magicolor5430)に取り付け、温度30℃×湿度90%の環境下で、トナー印字率5%のチャートにより、線速80mm/secで1枚完結運転を行い、1000枚印刷後に、印刷時の鳴きの有無の確認を聴覚により行った。鳴きが確認されなかった場合を○、鳴きが確認された場合を×とした。結果を表2及び表3に示す。この試験に用いたブレードの摩耗量をマイクロスコープにより確認を行い、摩耗量が10μm未満の場合を○、10μm以上の場合を×とした。結果を表2及び表3に示す。
【0076】
(試験例4)
各実施例及び各比較例のブレード部材のテストサンプル10にホルダ部材20Aを固着し、押し付け用土台30に、食い込み量1.7mm、25degの初期設定角度の倒れ込み量となるように取り付けた(図1(a)参照)。放置環境(温度45℃×湿度95%)に72時間放置し、さらに放置環境から取り出して6時間変形状態で常温放置し、押し付け用土台30から解除後30分常温放置した。その後、図1(b)に示すようにホルダ部材20Aを固定治具40に固定し、ハイトゲージを使用してピックテスターにより倒れ込み量hを測定し、ヘタリ率を求めた。ヘタリ率が10%未満を○、ヘタリ率が10%以上を×として耐ヘタリ性を評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
(結果のまとめ)
実施例1〜5のブレード部材はいずれも、40℃の貯蔵弾性率(1Hz)が2.1×10Pa以上であり、(G’10)/(G’50)が1.23以下であり、100(ΔRbm−ΔRbn)/ΔRbn≧15であった。これらのブレード部材は、鳴きが発生することなく、耐ヘタリ性及び耐摩耗性に優れるものであった。
【0080】
これに対し、無機充填剤を配合していないポリウレタン部材のみからなる比較例1のブレード部材は、耐ヘタリ性に優れていたが、40℃の貯蔵弾性率(1Hz)が0.7×10Paと低く、鳴きが発生し、耐摩耗性に劣るものであった。
【0081】
背面層に無機充填剤を0.5質量部配合した比較例2のブレード部材は、40℃の貯蔵弾性率(1Hz)が1.2×10Paと低く、鳴きが発生し、耐摩耗性に劣るものであった。
【0082】
背面層に無機充填剤を33質量部配合した比較例3のブレード部材は、ヘタリ率が10%以上であった。
【0083】
背面層にアスペクト比が1.1の無機充填剤を配合した比較例4のブレード部材は、耐ヘタリ性に優れていたが、40℃の貯蔵弾性率(1Hz)が1.3×10Paと低く、鳴きが発生し、耐摩耗性に劣るものであった。
【0084】
また、背面層に比重が1.6の無機充填剤を配合した比較例5のブレード部材は、(G’10)/(G’50)が3より大きく、耐摩耗性に劣るものであった。
【符号の説明】
【0085】
10 テストサンプル
20A ホルダ部材
30 押し付け用土台
40 固定治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接触体に接触させて用いられるブレード部材であって、
前記被接触体に当接するエッジ層と、前記エッジ層の裏面に設けられた背面層との二層からなり、
前記エッジ層は、ポリオール、イソシアネート化合物、及び架橋剤を少なくとも含むポリウレタン組成物を硬化・成形して得たポリウレタン部材からなり、
前記背面層は、ポリオール、イソシアネート化合物、及び架橋剤を少なくとも含むポリウレタン組成物100質量部に対して、比重が2.0以上且つ薄板状でアスペクト比が3以上の無機充填剤を1〜30質量部配合して成形したポリウレタン部材からなることを特徴とするブレード部材。
【請求項2】
請求項1に記載のブレード部材において、前記ブレード部材は、40℃の貯蔵弾性率(1Hz)が2.0×10Pa以上であることを特徴とするブレード部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブレード部材において、前記無機充填剤が雲母又は珪灰石であることを特徴とするブレード部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のブレード部材において、前記ブレード部材は、10℃の貯蔵弾性率(1Hz)を(G’10)Pa、50℃の貯蔵弾性率(1Hz)を(G’50)Paとしたときの(G’10)/(G’50)が3以下であることを特徴とするブレード部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のブレード部材において、前記背面層のポリウレタン部材の10℃及び50℃の反発弾性をそれぞれRbmT10及びRbmT50としたときの下記式で表されるΔRbm(%)と、前記背面層のポリウレタン組成物のみを硬化・成形した弾性体の10℃及び50℃の反発弾性をそれぞれRbnT10及びRbnT50としたときの下記式で表されるΔRbn(%)とが、100(ΔRbm−ΔRbn)/ΔRbn≧14の関係を満たすことを特徴とするブレード部材。
【数1】

【数2】


【図1】
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【公開番号】特開2011−39505(P2011−39505A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160056(P2010−160056)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】