説明

ブロックトメルカプトシランカップリング剤を含むゴム組成物

【課題】タイヤの製造に使用し得る、亜鉛を含まない或いは0.5 phr未満の亜鉛を含有するゴム組成物を提供する。
【解決手段】以下の成分に基づく: 少なくとも1つのジエンエラストマー; 少なくとも1つの硫黄ベースの架橋系; 少なくとも1つの補強性充填剤としての無機充填剤; 少なくとも1つの下記一般式Iのブロックトメルカプトシラン: (RO) R R- Si - Z - S - C (= O) - A (式中、R及びRは、同一か又は異なり、炭素原子1〜18個を有する直鎖又は分枝鎖アルキル、シクロアルキル、又はアリールより選ばれる一価の炭化水素基であり; Rは、炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分枝鎖アルキルより選ばれる一価の炭化水素ベースの基であり; Aは、炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基であり; Zは、炭素原子1〜18個を含む二価の結合基である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、タイヤ又はトレッドのようなタイヤ用半製品の製造に使用し得る、シリカのような無機充填剤で補強されたジエンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄によるジエンエラストマーの加硫は、ゴム工業において、特にタイヤ工業において広く用いられている。ジエンエラストマーを加硫するために、硫黄に加えて、種々の加硫促進剤及び1つ以上の加硫活性化剤、具体的には、酸化亜鉛(ZnO)のような亜鉛誘導体又はステアリン酸亜鉛のような脂肪酸の亜鉛を含む比較的複雑な加硫系が用いられている。
タイヤ製造業者の中期の目的は、これらの化合物の比較的毒性のある性質が、特に水及び水産生物に関して知られているために、そのゴム配合物から亜鉛又はその誘導体を除去することである(1996年12月9日の欧州指令67/548/EECに準じる分類R50)。
しかしながら、酸化亜鉛を排除すると、詳しくはシリカのような無機充填剤で補強されたゴム組成物においては、工業観点から許容され得ないスコーチ時間の低下によって、生状態におけるゴム組成物の加工性特性が非常に著しく低下することがわかる。“スコーチ”現象は、ゴム組成物の調製中に、内部ミキサーにおいて、早期加硫("スコーチング")において、生状態における非常に高い粘度において、最終的には工業的に作業し且つ処理することがほぼ不可能であるゴム組成物において急速に生じることが思い起される。
亜鉛排除の問題に応じるために、酸化亜鉛を他の金属酸化物、例えばMgOに、或いは元素周期律表のIIA、IVA、VA、VIA、VIIA又はVIIIA族に属している遷移金属の塩又は酸化物に、特にコバルト又はニッケルに置き換えることが当然提唱された(特許文献の米国特許第6,506,827号明細書及び国際公開第2003/054081号パンフレットを参照のこと)。
このような解決方法は、無機充填剤で補強されたゴム組成物の要求を満たさないという事実の他に、少なくともこれらの一部が、一方の金属を他の金属に置き換えることを提唱する限りにおいては、大部分が、制動、加速及びコーナリング力による種々の摩擦から必然的に生じるタイヤの摩耗破片、特にトレッドの摩耗破片による環境に最終的には分散するように半ば決まっている、“持続可能な開発”や環境保護の観点から長期的には実際に許容され得ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
補強性無機充填剤とジエンエラストマーの間の結合を生じる多くの既存のカップリング剤の中で、出願人は、驚くべきことに、亜鉛を他の金属に置き換えることなく且つゴム組成物をその生産加工の間の早期スコーチングの問題から保護しつつ、ある種の特定のカップリング剤が、シリカのような無機充填剤で補強されたゴム配合物の亜鉛を非常に著しく減少させるか、或いは完全に排除することさえ可能にすることを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
その結果として、本発明の第1の目的は、タイヤを製造するために用いられるゴム組成物であって、亜鉛を含まないか或いは亜鉛をほとんど含まない(即ち、0.5 phr未満の亜鉛を含有する)、少なくとも1つのジエンエラストマー、主に無機充填剤からなる少なくとも1つの補強用充填剤、少なくとも1つの硫黄ベースの架橋系及び少なくとも1つの下記一般式Iのブロックトメルカプトシランからなるカップリング剤に基づくことを特徴とする、前記組成物に関する:

(R3O) R2 R1− Si − Z − S − C (= O) − A

(式中、
- R1及びR2は、同一か又は異なり、炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- R3は、炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分枝鎖アルキルより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Aは、水素又は炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Zは、炭素原子1〜18個を含む二価の結合基を表す)。
【0005】
有利には、ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群より選ばれる。
好ましくは、補強性無機充填剤は、主な補強用充填剤であり; より好ましくは、シリカ質充填剤又はアルミニウム充填剤である。
本発明は、また、亜鉛を含まないか或いは0.5 phr未満の亜鉛を含有する組成物を調製する方法であって、(i) 少なくとも1つのジエンエラストマーに、(ii) 少なくとも1つの補強用充填剤としての無機充填剤、(iii) 少なくとも1つの以下の一般式Iのブロックトメルカプトシラン:

(R3O) R2 R1− Si − Z − S − C (= O) − A

(式中、
- R1及びR2同一か又は異なり、炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- R3は、炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分枝鎖アルキルより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Aは、水素又は炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Zは、炭素原子1〜18個を含む二価の結合基を表す)、
及び(iv) 少なくとも1つの硫黄ベースの加硫系を、少なくとも混練することによって組み入れることを特徴とする、前記方法に関する。
【0006】
本発明は、更に、亜鉛を含まないか或いは亜鉛をほとんど含まない(即ち、0.5 phr未満の亜鉛を含有する)、少なくとも1つのジエンエラストマー、主に無機充填剤からなる少なくとも1つの補強用充填剤、少なくとも1つの硫黄ベースの架橋系及び少なくとも1つの下記一般式Iのブロックトメルカプトシランからなるカップリング剤に基づくことを特徴とする、ゴム組成物を含む、タイヤ又は半製品、特にトレッドに関する:

(R3O) R2 R1− Si − Z − S − C (= O) − A

(式中、
- R1及びR2は、同一か又は異なり、炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- R3は、炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分枝鎖アルキルより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Aは、水素又は炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Zは、炭素原子1〜18個を含む二価の結合基を表す)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
I. 使用される測定及び試験
以下に示されるように、キュアリングの前後のゴム組成物を評価する。
I-1. ムーニー可塑性
仏国規格NF T 43-005(1991)に記載されている振動粘稠度計を使用する。ムーニー塑性は、以下の理論に従って測定する: 生状態(即ち、キュアリング前)の組成物を100℃に加熱した円筒容器内で成型する。1分間予熱した後、2rpmで試験片内でローターを回転させ、4分間回転した後、この運動を維持する作動トルクを測定する。ムーニー塑性(ML 1+4)は、“ムーニー単位” (MU、ここで、1MU = 0.83ニュートンメートル)で表される。
I-2. スコーチ時間
仏国規格NF T 43-005に準じて130℃で測定する。時間の関数として粘稠度測定指数(consistometric index)の変化は、分で表されるパラメーターT5(大ローターの場合)によって上記標準に対して評価し、且つこの指数について測定した最低値よりも5単位高い粘稠度測定指数(MUで表される)の増加を得るのに必要な時間として定義される、ゴム組成物のスコーチ時間を求めることを可能にする。
I-3. 引張試験
この引張試験は、弾性応力及び破断時特性を求めることを可能にする。特に示されない限り、1988年9月の仏国規格NF T 46-002に準じて行う。公称セカントモジュラス(又は見掛け応力、MPa)を、10%伸び(M10と示される)、100%伸び(M100と示される)、300%伸び(M300と示される)で測定する。引張強さ(MPa)と破断時伸び(%)も測定する。
I-4. 動的特性
動的特性ΔG*とtan(δ)maxを、ASTM規格D 5992-96に準じて粘土分析計(Metravib VA4000)により測定する。10Hzの周波数で標準温度(23℃)条件下交互の単一剪断の正弦応力を受けた加硫組成物の試料(厚さ4mm、断面積400mm2の円筒状試験片)の応答を規格ASTM D 1349-99に準じて記録する。0.1〜50%(フォワードサイクル)、次に50%〜0.1%(リターンサイクル)の範囲にあるひずみ振幅による走査を行う。使用する結果は、複合動的剪断モジュラス(G*)と損失因子(tanδ)である。リターンサイクルでは、実測されるtanδの最大値(tan(δ)max)、及び0.1%ひずみと50%ひずみの値間(Payne効果)の複合モジュラスの差(ΔG*)が示される。
【0008】
II. 発明の詳細な説明
それ故、本発明の組成物は、少なくとも: (i)1つの(少なくとも1つの)ジエンエラストマー、(ii) 1つの(少なくとも1つの)補強用充填剤としての無機充填剤、(iii) 1つの(少なくとも1つの)無機充填剤/ジエンエラストマーカップリング剤としての一般式(I)の特定のブロックトメルカプトシランに基づく(phr =エラストマー100質量部当たりの質量部)。
語句“に基づく組成物”は、本出願において、反応生成物及び/又は用いられる種々の成分の混合物を含む組成物を意味するように理解されなければならず、これらのベース成分(例えばカップリング剤)の一部は、少なくとも部分的には、組成物の各相の製造の間に、特にその加硫(キュアリング)の間に、反応することができるか又は相互に反応することを意図している。
本説明において、特に示されない限り、示されたすべての割合(%)は質量%である。
【0009】
II-1. ジエンエラストマー
“ジエン”エラストマー又はゴムは、一般に、ジエンモノマーから少なくとも部分的に(即ち、ホモポリマー又はコポリマー)得られるエラストマーを意味するように理解される(モノマーは共役であっても又は共役でなくてもよい2つの炭素-炭素二重結合をする)。
ジエンエラストマーは、既知の方法で、2つの部類: “本質的に不飽和” であると言われているものと“本質的に飽和”であると言われているものに分類することができる。語句“本質的に不飽和のジエンエラストマー”は、15%(モル%)より多いジエン由来(共役ジエン)の単位の含量を有する共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に得られるジエンエラストマーを意味するように理解される。従って、例えば、ブチルゴム又はEPDMタイプのジエン/α-オレフィンコポリマーのようなジエンエラストマーは、この定義には包含されず、これに反して、“本質的に飽和のジエンエラストマー”として記載される(低含量又は非常に低い含量のジエン由来単位、常に15%未満)。“本質的に不飽和の”ジエンエラストマー部類の中で、語句“高度に不飽和のジエンエラストマー”は、特に、50%より大きい含量のジエン由来単位(共役ジエン)を有するジエンエラストマーを意味するように理解される。
これらの定義を示したことにより、より具体的には、本発明の組成物に使用し得るジエンエラストマーは、以下を意味することが理解されるであろう:
(a) - 炭素原子4〜12個を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られるホモポリマー;
(b) - 1つ以上の共役ジエンを相互に又は炭素原子8〜20個を有する1つ以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られるコポリマー;
(c) - エチレンと、炭素原子3〜6個を有するα−オレフィンと、炭素原子6〜12個を有する非共役ジエンモノマーとを共重合することによって得られる三元コポリマー、例えば、エチレンと、プロピレンと、上記タイプの非共役ジエンモノマー、例えば、特に1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン又はジクロロペンタジエンとから得られるエラストマー;
(d) - イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、及びハロゲン化、特に塩素化又は臭素化されたこのタイプのコポリマーの変形。
【0010】
本発明はどのタイプのジエンエラストマーにもあてはまるが、タイヤ技術の当業者は、好ましくは、特に上記(a)又は(b)タイプの本質的に不飽和のジエンエラストマーと用いられることを理解するであろう。
適切な共役ジエンは、特に、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、例えば、2,3-ジ(C1-C5)アルキル-1,3-ブタジエン、例えば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン又は2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン又は2,4-ヘキサジエンである。適切なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン、オルト-、メタ-及びパラ-メチルスチレン、市販の“ビニルトルエン”混合物、パラ-(tert-ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン及びビニルナフタレンである。
コポリマーは、99質量%〜20質量%のジエン単位と1質量%〜80質量%のビニル芳香族単位を含み得るる。エラストマーは、いずれのミクロ構造も持つことができ、用いられる重合条件、特に変性剤及び/又はランダム化剤の有無及び使われる変性剤及び/又はランダム化剤の量に左右される。エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、連続又はミクロ連続エラストマーであることになり且つ、分散液又は溶液として調製することができ; カップリング剤及び/又は星型分岐剤或いは官能基化剤とカップリング及び/又は星型分岐或いは官能基化され得る。カーボンブラックとカップリングする場合、例えば、C-Sn結合を含む官能基又はアミノ化された官能基、例えばベンゾフェノンを挙げることができる; シリカのような補強性無機充填剤とカップリングする場合、例えば、シラノール官能基又はシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、仏国特許発明第2 740 778号明細書又は米国特許第6 013 718号明細書に記載されている)、アルコキシシラン基(仏国特許発明第2 765 882号明細書又は米国特許第5 977 238号明細書に記載されている)、カルボキシル基(例えば、国際公開第01/92402号パンフレット又は米国特許第6 815 473号明細書、国際公開第2004/096865号パンフレット又は米国特許第2006/0089445号明細書に記載されている)或いはポリエーテル基(例えば、欧州特許第1 127 909号明細書又は米国特許第6 503 973号明細書に記載されている)を挙げることができる。官能基化エラストマーの他の例として、エポキシ化タイプのエラストマー(例えば、SBR、BR、NR又はIR)を挙げることができる。
【0011】
ポリブタジエンは、特に、1,2-単位の含量(モル%)が4%〜80%を有するもの又は80%を超えるシス-1,4単位の含量(モル%)を有するもの、ポリイソプレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、特にTg(ガラス転移温度、Tg、ASTM D3418に準じて測定した)が0℃〜-70℃、より具体的には-10℃〜-60℃、スチレン含量が5質量%〜60質量、より具体的には20%〜50%、ブタジエン部分の1,2-結合の含量が4%〜75%且つトランス-1,4結合の含量が10%〜80%のもの、ブタジエン/イソプレンコポリマー、特にイソプレン含量が5質量%〜90質量%とTgが-40℃〜-80℃を有するもの、又はイソプレン-スチレンコポリマー、特にスチレン含量が5質量%〜50質量%とTgが-25℃〜-50℃を有するものが適切である。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合、スチレン含量が5質量%〜50質量%、より具体的には10%〜40%、イソプレン含量が15質量%〜60質量%、より具体的には20質量%〜50質量%、ブタジエン含量が5質量%〜50質量%、より具体的には20%〜40%、ブタジエン部分の1,2-単位の含量(モル%)が4%〜85%、ブタジエン部分のトランス1,4-単位含量(モル%)が6%〜80%、イソプレン部分の1,2-単位と3,4-単位の含量が5%〜70%、イソプレン部分のトランス1,4-単位含量が10%〜50%であるもの、より一般的にはTgが-20℃〜-70℃のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが特に適している。
要するに、本発明の組成物のジエンエラストマーは、特に好ましくは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる(高度に不飽和の)ジエンエラストマーの群より選ばれる。このようなポリマーは、より好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)及びこのようなコポリマーの混合物からなる群より選ばれる。
【0012】
具体的な一実施態様によれば、ジエンエラストマーは、主に(即ち、50 phrを超える場合)、エマルジョンにおいて調製されたSBR(“ESBR”)又は溶液において調製されたSBR(“SSBR”)にしても、SBR/BR、SBR/NR(又はSBR/IR)、BR/NR(又はBR/IR)或いはSBR/BR/NR(又はSBR/BR/IR)ブレンド(混合物)にしてもSBRである。SBR(ESBR又はSSBR)エラストマーの場合、特に、中程度のスチレン含量、例えば、20質量%〜35質量%、又は高スチレン含量、例えば、35〜45%、ブタジエン部分のビニル結合の含量が15%〜70%、トランス-1,4-結合の含量(モル%)が15%〜75%、且つTgが-10℃〜-55℃のSBRが使用され; このようなSBRは、有利には、シス-1,4-結合が好ましくは90%(モル%)を超えるBRとの混合物として使用し得る。
他の具体的な実施態様によれば、用いられるジエンエラストマーは、主に(50 phrを超える)イソプレンエラストマーである。これは、特に本発明の組成物が、タイヤにおいて、ある種のトレッド(例えば、産業車両用)、クラウン補強プライ(例えば、ワーキングプライ、プロテクティブプライ又はフーププライ)、カーカス補強プライ、サイドウォール、ビーズ、プロテクター、サブレーヤ、ゴムブロックのゴムマトリックス及び上述のタイヤゾーンの間の境界面を示す他のインナーライナを構成することを意図する場合の例である。
語句“イソプレンエラストマー”は、既知の方法で、イソプレンホモポリマー又はコポリマー、言い換えれば天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群より選ばれるジエンエラストマーを意味するように理解されている。特に、イソプレンコポリマーの中で、イソブテン/イソプレン(ブチルゴム - IIR)、イソプレン/スチレン(SIR)、イソプレン/ブタジエン(BIR)又はイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマーが挙げられであろう。このイソプレンエラストマーは、好ましくは天然ゴム又は合成シス-1,4-ポリイソプレンであり; 好ましくは、これらの合成ポリイソプレンの中で、シス-1,4-結合の含量(モル%)が90%を超え、より好ましくは更に98%を超えるポリイソプレンが使用される。
【0013】
他の具体的な実施態様によれば、特にタイヤサイドウォールを意図する場合、チューブレスタイヤの気密インナーライナ(又は他の空気不透過性要素)用に、本発明の組成物は、少なくとも1つの本質的に飽和されたジエンエラストマー、特に少なくとも1つのEPDMコポリマー又はブチルゴム(必要により塩素化或いは臭素化されていてもよい)をこれらのコポリマーが単独で又は以前に述べたような高度に不飽和のジエンエラストマー、特にNR又はIR、BR又はSBRとの混合物として用いられるとしても含有することができる。
本発明の他の好ましい実施態様によれば、ゴム組成物は、Tgが70℃〜0℃を示す(1つ以上の)“高Tg” ジエンエラストマーとTgが-110℃〜-80℃、より好ましくは-105℃〜-90℃を示す(1つ以上の)“低Tg”ジエンエラストマーのブレンドを含む。高Tgエラストマーは、好ましくは、S-SBR、E-SBR、天然ゴム、合成ポリイソプレン(シス-1,4-結合の含量(モル%)が好ましくは95%を超える)、BIR、SIR、SBIR及びこれらのエラストマーの混合物からなる群より選ばれる。低Tgエラストマーは、好ましくは、ブタジエン単位を少なくとも70%に等しい含量(モル%)で含み; 好ましくは、シス-1,4-結合の含量(モル%)が90%を超えるポリブタジエン(BR)からなる。
本発明の他の具体的な実施態様によれば、ゴム組成物は、例えば、30〜100 phr、特に50〜100 phrの高Tgエラストマーを0〜70 phr、特に0〜50 phrの低Tgエラストマーとのブレンドとして含み; 他の例によれば、100 phr全体として、溶液において調製された1つ以上のSBRを含む。
本発明の他の具体的な実施態様によれば、本発明の組成物のジエンエラストマーは、シス-1,4-結合の含量(モル%)が90%を超えるBR(低Tgエラストマーとして)と、1つ以上のS-SBR又はE-SBR(高Tgエラストマー)とのブレンドを含む。
本発明の組成物は、単一のジエンエラストマー又はいくつかのジエンエラストマーの混合物を含有することができ、ジエンエラストマーがジエンエラストマー以外のいずれのタイプの合成エラストマー、又はエラストマー以外のポリマー、例えば熱可塑性ポリマーとさえも組み合わせて用いることが可能である。
【0014】
II-2. 補強性無機充填剤
語句“補強性無機充填剤”は、ここでは、既知の方法で、色と由来(天然又は合成)が何であっても、カーボンブラックとは対照的に、“白色充填剤”、“透明充填剤”又は“非ブラック充填剤”としてさえも知られる無機充填剤又は鉱物充填剤を意味するように理解されなければならず、この無機充填剤は、それ自体のみで、中間カップリング剤以外の手段を含まずに、タイヤトレッドの製造を意図したゴム組成物を補強することができ、言い換えれば、特にトレッド用の、従来のタイヤ-グレードカーボンブラックを、その補強性役割において、置き換えることができ; このような充填剤は、既知の方法で、表面のヒドロキシル(-OH)基の存在によって一般に確認される。
好ましくは、補強性無機充填剤は、シリカ質充填剤又はアルミニウム充填剤である又は、これらの2つのタイプの充填剤の混合物である。
用いられるシリカ(SiO2)は、当業者に既知の補強性シリカ、特にBET表面積とCTAB比表面積がいずれも450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gである沈降シリカ又は焼成シリカであり得る。特に本発明が転がり抵抗が小さいタイヤの製造のために用いられる場合、高分散性沈降シリカ(“HDS”と呼ばれる)が好ましい。特に、このようなシリカの例として、Degussa製のUltrasil 7000シリカ、Rhodia製のZeosil 1165MP、1135MP及び1115MPシリカ、PPG製のHi-Sil EZ150Gシリカ、Huber製のZeopol 8715、8745又は8755シリカを挙げることができる。
用いられる補強性アルミナ(Al2O3)は、好ましくは、BET表面積が30〜400m2/g、より好ましくは60〜250m2/gの範囲にあり、平均粒子径が最大でも500nm、より好ましくは最大でも200nmに等しい高分散性アルミナである。特に、このような補強性アルミナの限定されない例として、“Baikalox A125”又は“CR125”(Baikowski)、“APA-100RDX”(Condea)、“Aluminoxid C”(Degussa)又は“AKP-G015”(Sumitomo Chemicals)アルミナを挙げることができる。
【0015】
本発明のトレッドのゴム組成物に用いることができる無機充填剤の他の例として、水酸化(酸化)アルミニウム、アルミノケイ酸塩、酸化チタン、炭化ケイ素又は窒化ケイ素、例えば、国際公開第99/28376号パンフレット、同第00/73372号パンフレット、同第02/053634号パンフレット、同第2004/003067号パンフレット、同第2004/056915号パンフレットに記載される補強性タイプのすべてを挙げることができる。
本発明のトレッドが転がり抵抗の小さいタイヤを意図する場合、用いられる補強性無機充填剤は、特にそれがシリカである場合、好ましくは60〜350m2/gのBET表面積を有する。本発明の有利な一実施態様は、130〜300m2/gの高BET比表面積を有する補強性無機充填剤、特にシリカを、このような充填剤の補強力が大きいことが認められているために用いることからなる。本発明の他の好ましい実施態様によれば、BET比表面積が130m2/g未満、好ましくは60〜130m2/gである補強性無機充填剤、特にシリカを使うことができる(例えば、国際公開第03/002648号パンフレット及び同第03/002649号パンフレットを参照のこと)。
補強性無機充填剤が供給される物理的状態は、それが粉末、マイクロビーズ、顆粒、ボールの形又は他の適切な高密度化形態であるにしても重要ではない。勿論、語句“補強性無機充填剤”は、種々の補強性無機充填剤の混合物、特に上記の高分散性シリカ質充填剤又はアルミニウム充填剤の混合物を意味するようにも理解される。
用いられる無機充填剤の種類に従って、また、関係するタイヤのタイプ、例えば、オートバイ用、乗用車用又は実用車、例えばバン又は大型車用のタイヤに従って、補強性無機充填剤をの含量をどのように調整するかを当業者は知っているであろう。好ましくは、補強性無機充填剤のこの含量は、20〜200 phr、より好ましくは30〜150 phr、特に50 phrを超え、より好ましくは更に60〜140 phrより選ばれることになる。
この説明において、BET比表面積は、"The Journal of the American Chemical Society", Vol. 60, page 309, February 1938に記載されるブルナウアー-エメット-テラー法を用いたガス吸着による既知の方法で、より詳しくは1996年12月の仏国規格NF ISO 9277に準じて決定される(多点容積法(5つの点)-ガス: 窒素 - 脱ガス: 160℃で1時間 - 相対圧範囲p/po: 0.05〜0.17)。CTAB比表面積は、1987年11月の仏国規格NF T 45-007(方法B)に準じて求められる外部表面である。
【0016】
最後に、他の種類の補強性充填剤、特に有機充填剤が本項に記載される補強性無機充填剤と等価な充填剤として用いることができるが、この補強性充填剤が無機層、例えばシリカで覆われるか、或いはその表面に、機能部位、特にヒドロキシル部位を含み、充填剤とエラストマーの間の結合を確立するためにカップリング剤の使用が必要であることを当業者は理解するであろう。このような有機充填剤の例として、例えば、国際公開第2006/069792号パンフレット、同第2006/069793号パンフレットに記載されている、官能基化ポリビニル芳香族有機充填剤を挙げることができる。
補強性無機充填剤は、また、通例タイヤ、特にタイヤトレッドに用いられる、有機補強性充填剤、特にカーボンブラック、例えば、HAF、ISAF又はSAFタイプのブラックと組み合わせて用いることもできる(例えば、N115、N134、N234、N330、N339、N347又はN375ブラック、或いは目標用途によっては、高級シリーズのブラック、例えば、N660、N683又はN772)。これらのカーボンブラックは、単離された状態で、市販されて、又は他の形態で、例えば、用いられるゴム添加剤の一部の支持体として用いることができる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形でエラストマーにすでに組み入れられている場合がある(例えば、国際公開第97/36724号パンフレット又は同第99/16600号パンフレットを参照のこと)。
全補強性充填剤に存在するカーボンブラックの量は、かなりの程度まで異なってもよいが、好ましくは補強性無機充填剤が主な補強性充填剤である。有利には、カーボンブラックは、非常に少ない割合で、10 phr未満の好ましい含量で用いられる。示される範囲において、カーボンブラックの着色特性(ブラック顔料着色剤)及びUV安定化特性は、補強性無機充填剤によって示される典型的な性能に更に悪影響を与えずに有益である。勿論、本発明の組成物は、それ自体カーボンブラックを完全に含まなくてもよい。
【0017】
II-3. カップリング剤
ここでは、語句"カップリング剤"は、既知の方法で、無機充填剤とジエンエラストマーの間の化学的性質及び/又は物理的性質の充分な結合を確立することができる物質を意味するように理解されることが思い起される; 少なくとも二官能性であるこのようなカップリング剤は、例えば、簡単にされた一般式"Y-Z-X"を有する: 式中、
- Yは、無機充填剤に物理的に及び/又は化学的に結合することができる官能基("Y"官能基)を表し、このような結合は、おそらく、例えば、カップリング剤のシリコン原子と無機充填剤の表面ヒドロキシル(OH)基(例えば、シリカである表面シラノール)の間で確立されている;
- Xは、ジエンエラストマーに物理的に及び/又は化学的に、例えば硫黄原子を介して、結合することができる官能基"X"官能基)を表し;
- Zは、YをXに結合することができる二価の基を表す。
カップリング剤、特にシリカ/ジエンエラストマーカップリング剤は、多くの文献に記載されており、"Y"官能基としてアルコキシ官能基を有する二官能性オルガノシラン(即ち、定義により"アルコキシシラン")及び"X"官能基として、ジエンエラストマーと反応することができる官能基、例えばポリスルフィド官能基が最も良く知られている。
既知のアルコキシシラン-ポリスルフィド化合物の中で、ポリスルフィドSx (ここで、xの平均値は約4である)の市販の混合物の形で、Degussaから"Si69"(又はこれがカーボンブラックに50wt%担持されている場合"X50S")の名前で特に販売されている、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(“TESPT”と略記される)を特に挙げなければならない。
【0018】
非常に長い間知られているTESPTは、シリカのような補強性無機充填剤で補強されたゴム組成物について、スコーチ安全性、ヒステリシス及び補強力に関して最良の妥協を与える製品として今日でもなおみなされている。この点で、転がり抵抗が小さいシリカ充填タイヤの当業者の基準カップリング剤であり、エネルギーの節約をすることができる"グリーンタイヤ"(又は"省エネルギーグリーンタイヤ")としてしばしば記載されている。
このTESPTカップリング剤は、亜鉛を含まないか或いは亜鉛をほとんど含まない(即ち、0.5 phr未満、好ましくは0.3 phr未満の亜鉛を含有する)本発明の組成物に適さず、本発明は本発明の組成物が特定のブロックトメルカプトシランの使用を必要とすることが分かった。
ここで、当業者に周知であるブロックトメルカプトシランが、ゴム組成物の調製中にメルカプトシランを形成することができるシランの前駆物質であることが思い起される(例えば、米国特許出願公開第2002/0115767 A1号明細書又は国際公開第02/48256号パンフレットを参照のこと)。以下ブロックトメルカプトシランと呼ばれるこれらのシラン前駆物質の分子は、対応するメルカプトシランの水素原子の代わりに保護基を有する。ブロックトメルカプトシランは、炭素原子に結合した少なくとも1つのチオール(-SH)(メルカプト-)基と少なくとも1つのシリコン原子を含有する分子構造を有するシランとして定義された、より反応性のメルカプトシランを形成することになるように、配合及びキュアリングの間、保護基を水素原子に置き換えることによって保護されないことが可能である。これらのブロックトメルカプトシランカップリング剤は、単独で又はブロックトメルカプトシラン活性化剤の存在下に用いることができ、その活性化剤の役割は、ブロックトメルカプトシランの反応性を開始するか、加速するか又は上昇させることである。
【0019】
一般式(I)に対応する特定のブロックトメルカプトシランが使われる:

(R3O) R2 R1− Si − Z − S − C (= O) − A

(式中、
- R1及びR2は、同一か又は異なり、炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- R3は、炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分枝鎖アルキルより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Aは、水素又は炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Zは、炭素原子1〜18個を含む二価の結合基を表す)。
Zは、O、S及びNより選ばれる1つ以上のヘテロ原子を含有し得る。
好ましくは:
- R1及びR2は、メチル、エチル、n-プロピル及びイソプロピル、好ましくはメチル及びエチルより選ばれ;
- R3はメチル及びエチルより選ばれ;
- Aは、炭素原子1〜18個を有するアルキル及びフェニル基より選ばれ;
- Zは、C1-C18アルキレン及びC6-C12アリーレンより選ばれる。
【0020】
一実施態様によれば、ZはC1-C10アルキレンより選ばれ、より好ましくはZはC1-C4アルキレンより選ばれる。
他の実施態様によれば、R1及びR2は、メチルである。
好ましくは、Aは、炭素原子1〜7個を有するアルキル及びフェニル基より選ばれる。
特に適している一カップリング剤は、S-オクタノイルメルカプトプロピルエトキシジメチルシランであり、その式(I)は、R1及びR2がメチルであり、Aがヘプチルであり、R3がエチルであり、Zがプロピレンである。
上記一般式(I)に対応するこのような化合物は、補強性充填剤としてシリカを含む組成物のためのカップリング剤として知られ、その合成は、特に国際公開第2008/055986号パンフレットに記載されている。
当業者は、本発明の具体的な実施態様の関数として、特に用いられる補強性無機充填剤の量の関数として式(I)のブロックトメルカプトシランの含量をどのように調整するかを知っており、好ましい含量は補強性無機充填剤の量に相対して2質量%〜20質量%であり; より具体的には15%未満の含量が好ましい。
上で示された量を考慮すると、一般にブロックトメルカプトシラン含量は、好ましくは2〜15 phrである。示された最小限より少ないと、影響リスクが不十分であるが、推奨された最大より多いと、一般に改善は更に認められないが、組成物のコストは増大する。これらの種々の理由で、この含量は、なおより好ましくは4〜12 phrである。
【0021】
II-5. 種々の添加剤
本発明のゴム組成物は、また、タイヤ、特にトレッドの製造を意図したエラストマー組成物において習慣的に用いられる通常の添加剤、例えば、可塑剤又は芳香族性にして非芳香族性にしてもエキステンダー油、顔料、保護剤、例えば抗オゾンワックス、化学的オゾン劣化防止剤、抗酸化剤、抗疲労物質、補強性樹脂、例えば、国際公開第02/10269号パンフレットに記載される、メチレン受容体(例えば、フェノール-ノボラック樹脂)又はメチレン供与体(例えば、HMT又はH3M)、硫黄又は硫黄供与体及び/又はペルオキシド及び/又はビスマレイミドに基づく架橋系、加硫促進剤、加硫活性化剤、勿論、亜鉛ベースの活性化剤を除くもの(又は組成物中0.5 phr未満の亜鉛、好ましくは0.3 phr未満に従って)の全部又は一部を含むことができる。
好ましくは、これらの組成物は、好ましい非芳香族性又は非常に弱い芳香族性可塑剤として、ナフテン油、パラフィン油、MES油、TDAE油、グリセロールエステル(特にトリオレエート)、Tgが高い、好ましくは30℃を超える炭化水素ベースの可塑性樹脂及びこのような化合物の混合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含む。
これらの組成物は、また、カップリング剤に加えて、カップリング活性化剤、補強性無機充填剤を被覆するための被覆剤(例えば唯一のY官能基を含む)又はより一般的には、既知の方法で、ゴムマトリックス中の無機充填剤の分散の改善、また、組成物の粘度の低下によって、生状態で加工される能力を改善することができる加工助剤を含有することができ、これらの物質は、例えば、加水分解性シラン、例えば、アルキルアルコキシシラン(特にアルキルトリエトキシシラン)、ヒドロキシシラン、ポリオール、ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール)、第一、第二又は第三アミン(例えばトリアルカノールアミン)、ヒドロキシル化又は加水分解性POS、例えばα,ω-ジヒドロキシポリオルガノシロキサン(特に、α,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサン)、脂肪酸、例えばステアリン酸である。
【0022】
II-6. ゴム組成物の製造
本発明のゴム組成物は、適切なミキサーにおいて当業者に周知の一般手順に従って2つの連続調製相を用いて製造される: 高温、130℃〜200℃の最高温度、好ましくは145℃〜185℃で熱機械的作業又は混練の第1の相(“非生産”相としばしば記載される)に続いてより低い温度、典型的には120℃未満の温度、例えば、60℃〜100℃機械的作業の第2の相(“生産”相としばしば記載される)、架橋系又は加硫系が組み入れられる仕上げ相。
本発明の好ましい一実施態様によれば、加硫系を除く本発明の組成物のベース成分すべて、即ち、補強性無機充填剤、式(I)のカップリング剤及びカーボンブラックが、ジエンエラストマーにいわゆる第1の非生産相の間に混練することによって緊密に組み入れられる。即ち、少なくともこれらの種々のベース成分がミキサーに導入され、1つ以上の工程で、130℃〜200℃、好ましくは145℃〜185℃の最高温度に達するまで熱機械的に混練される。
一例として、第1の(非生産)相が単一の熱機械的段階で行われ、その間に、加硫系を除く、すべての必要な成分、選択できる補足的被覆剤又は加工助剤及び他の種々の添加剤が適切なミキサー、例えば標準内部ミキサーに導入される。本非生産相の全混練時間は、好ましくは1〜15分間である。このようにして第1の非生産相の間に得られた混合物を冷却した後、次に、一般的にはオープンミルのような外部ミキサーにおいて、加硫系が低温で組み入れられる。次に、すべての成分が、数分間、例えば、2〜15分間混合される(生産相)。
【0023】
被覆剤が用いられる場合、完全に非生産相の間、無機充填剤と同時に、或いは完全に生産相の間、加硫系と同時に、或いは部分的に2つの連続相にわたって組み入れられ得る。
被覆剤の全部又は部分を本化合物に対応する化学構造と適合する固体上に支持された形態(予め支持体上に配置されている)で導入することが可能であることは留意するべきである。例えば、上の2つの連続相の間で分割される場合、その組み入れ及びその分散を促進させるために支持体上に配置された後に、外部ミキサーに被覆剤の第2の部分を導入することは有利であり得る。
加硫系それ自体は、好ましくは硫黄及び一次加硫促進剤、特にスルフェンアミドタイプの促進剤に基づく。この加硫系に、亜鉛及びZnOのような亜鉛誘導体を除外するか又は0.5 phr未満、好ましくは0.3 phr未満の組成物の亜鉛含量と対応する、種々の既知の加硫活性化剤又は第二促進剤、例えば、ステアリン酸のような脂肪酸、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)等が添加され得る。硫黄含量は、好ましくは0.5〜3.0 phrであり、一次促進剤の含量は、好ましくは0.5〜5.0 phrである。
このようにして得られた最終組成物は、次に、例えば、フィルム又はシートの形で、特に研究室評価のために、カレンダー仕上されるか或いは例えば乗用車のタイヤトレッドとして使用し得るゴム形状要素の形で押出される。
加硫(又はキュアリング)は、既知の方法で、一般的には130℃〜200℃の温度で、特にキュアリング温度、選ばれる加硫系及び問題の組成物の加硫速度論によっては、例えば、5〜90分間変動してもよい充分な時間行われる。
本発明は、“生”状態(即ち、キュアリング前)と“キュア”又は加硫状態(即ち、架橋又は加硫後)双方における上で記載されたゴム組成物に関する。本発明の組成物は、単独で又はタイヤの製造に使用し得る他のいかなるゴム組成物とのブレンド(即ち、混合物として)として用いることができる。
【0024】
III. 本発明の例示的実施態様
III-1 CAS No.[1024594-66-8]を有するS-オクタノイルメルカプトプロピルエトキシジメチルシランの合成
【0025】
【化1】

【0026】
この化合物の合成は、仏国特許発明第2 908 410号明細書(国際公開第2008/055986 A2号パンフレット)の実施例No. 10に記載されている。この手順に純度の表示はない(しかしながら著者は黄色の油状物を記載しているが、純度99.5%の生成物は無色である)。前の特許出願に記載されるようにクロロシランから直接に、アルコキシシランからではなく開始する手順を用いて生成物を調製することが可能である。モル純度99.5%を有する最終製品を分離することが可能である。
一般スキーム:
【0027】
【化2】

【0028】
a) CAS No.[1024594-63-5]を有するS-(エタノイル)メルカプトプロピルエトキシジメチルシラン Cの合成
【0029】
【化3】

【0030】
アルゴン下、チオ酢酸(25.5 g、0.335モル)をCAS No.[4028-23-3](45.1g、0.335モル)を有するアリルジメチルクロロシランAに周囲温度で添加する。反応は、発熱である。反応媒体を85-95℃で3.5時間撹拌する。周囲温度に戻した後、分離されていない中間シランBを無水エタノール(200 ml)中のトリエチルアミン(51.2 g、0.506モル)の溶液にアルゴン下に0℃で15-20分かけて添加する。周囲温度で15時間撹拌した後、トリエチルアミン塩酸塩Et3N・HClの沈殿をろ過する。溶媒を減圧下に40℃で蒸発させた後、得られた混合物をヘプタン(200 ml)中の溶液に戻し、Et3N・HClの残留物をろ過によって除去する。溶媒を減圧下に45℃で蒸発させた後、CAS No.[1024594-63-5](47.2g、0.215モル)を有するS-(エタノイル)メルカプトプロピルエトキシジメチルシランCを64%の収率で得る。
NMR分析によって、モル純度94%で得られた生成物の構造が確認される。
b) CAS No.[141137-15-7]を有する3-メルカプトプロピルエトキシジメチルシランDの調製:
【0031】
【化4】

【0032】
アルゴン下、固体エチル酸ナトリウム(2.02 g、0.030モル)を無水エタノール(230 ml)中のS-(エタノイル)メルカプトプロピルエトキシジメチルシランC(65.4 g、0.297モル)の溶液に周囲温度で添加する。反応媒体を2.5時間還流する。周囲温度に戻した後、NaClの沈殿をろ過し、ヘプタン(350 ml)で洗浄する。溶媒を減圧下に45℃で蒸発させた後、得られた油状物を減圧蒸留(60℃/10 mbar)によって精製する。CASNo.[141137-15-7](34.7 g、0.195モル)を有する3-メルカプトプロピルエトキシジメチルシランDを収率66%で得る。
NMR分析によって、モル純度99.5%で得られた生成物の構造が確認される。
c) CAS No.[1024594-66-8]を有するS-オクタノイルメルカプトプロピルエトキシジメチルシランEの調製
【0033】
【化5】

【0034】
アルゴン下、5℃のトリエチルアミン(19.2 g、0.191モル)とシクロヘキサン(400 ml)中の3-メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン(34.0 g、0.191モル)の溶液に塩化オクタノイル(31.0 g、0.191モル)を8℃で15分かけて滴下する。反応媒体を周囲温度で15時間撹拌する。トリエチルアミン塩酸塩Et3N・HClの沈殿をろ過する。得られた混合物をフラッシュクロマトグラフィ(溶離剤:石油エーテル、500-600 ml)で精製する。減圧下に24℃で溶媒を蒸発させた後、CAS No.[1024594-66-8](45.0g、0.148モル)を有するS-オクタノイルメルカプトプロピルエトキシジメチルシランEを収率78%で無色の液体として得る。
NMR分析によって、モル純度99.5%で得られた生成物の構造が確認される。
III-2 化合物オクチルメチルジヒドロキシシランの合成
この実施例は、下記式のオクチルメチルジヒドロキシシランの調製を示すものである:
【0035】
【化6】

【0036】
ジメチルジヒドロキシシラン(又はジメチルシランジオール)の調製のための、J.A. Cella & J.C. Carpenter, "Procedures for the preparation of silanols", Journal of Organometallic Chemistry, 480 (1994), 23-26, に記載される手順を適合することによって、この化合物(CAS No. 156218-16-5)の合成を行った。
合成スキームは、以下の通りである:
【0037】
【化7】

【0038】
すべての反応成分をSigma Aldrichから購入し、精製せずに用いる。
手順は、より詳しくは以下の通りである。炉内で予め乾燥した滴下漏斗における無水ジエチルエーテル(300 ml)中の溶液においてジクロロオクチルメチルシラン(CAS No. 14799-93-0)(50.0 g、即ち、0.22モル)を、トリエチルアミン(45.4 g、0.45モル、2.04当量)、水(8.6 g、0.48モル、2.2当量)、ジエチルエーテル(700 ml)及び均一な媒体を有するのに充分なアセトン(約70 ml)の溶液を含有する機械的スターラを備えた2リットルの丸底フラスコに窒素雰囲気下に0℃で滴下する。ジクロロオクチルメチルシランの添加を約1時間かけて行い、得られた懸濁液を0℃で更に30分間撹拌する。トリエチルアミン塩酸塩沈殿をろ過によって除去し、エーテル(約100 ml)で1回洗浄する。この溶液を、最初の容積の約1/10まで周囲温度で回転蒸発器により濃縮する。過剰量のペンタン(約50-100 ml)を添加し、蒸発を続ける。沈殿をろ過によって集め、微量のトリエチルアミンを除去するためにペンタンで2回洗浄する。
減圧下に残留溶媒を蒸発させた後、白色固形物を得る(31.7 g、76%、融点58℃)。洗浄液を再び蒸発させ、得られた固形物をペンタンで1回洗浄する。減圧下に残留溶媒を除去した後、オクチルメチルシランジオールの第2の部分を得る(4.9 g、12%、融点57℃)。1H及び29Si NMR分析によって、得られた生成物が実際に上記式に対応することが示される; この合成実施例によれば、得られた純度は、精製段階を追加せずに99%を超える。
【0039】
III-3 ゴム組成物の調製
以下の試験を次のようにして行う: ジエンエラストマー(SBRとBRのブレンド)、少量のカーボンブラックで補充したシリカ、カップリング剤、次に、1〜2分間の混練りした後、加硫系を除く種々の他の成分を、70%充填され且つ約90℃の最初の容器温度を有する内部ミキサーに導入する。次に、熱機械的作業(非生産相)を一段階で(混練りの合計持続時間約5分に等しい)約165℃の最大“低下”温度に達するまで行う。このようにして得られた混合物を回収し、冷却し、次に、被覆剤(存在する場合)と加硫系(硫黄及びスルフェンアミド促進剤)を外部ミキサー(homofinisher)に70℃で添加し、合わせた混合物を約5〜6分間混合する(生産相)。
その後、このようにして得られた組成物を、物理的性質又は機械的性質測定用に、シート(厚み2〜3mm)又はゴムの薄膜の形で、又は望ましい寸法に、例えば、タイヤ用の半製品として、特にタイヤトレッドとして切断及び/又は組み立てた後、直接使用し得る形状要素の形でカレンダー仕上する。
【0040】
III-4 ゴム組成物の評価
本試験の目的は、亜鉛を含まないが補強性充填剤としてシリカを有するタイヤトレッド用のゴム組成物に通例用いられるカップリング剤を用いるゴム組成物と比較して本発明の亜鉛を含まないゴム組成物の改善された特性を示すことである。
このために、高分散性シリカ(HDS)で補強されたジエンエラストマー(SBR/BRブレンド)に基づく6つの組成物を調製し、これらの組成物は、本質的に以下の技術特性が異なっている:
- 組成物C1は、カップリング剤として亜鉛(1.5 phrのZnO)及び化合物TESPT(商品名:“Si69”)を含有する“従来の”対照組成物である;
- 組成物C2は、組成物C1に対応するが、亜鉛を含まない;
- 組成物C3は、亜鉛を含まず且つカップリング剤として、タイヤトレッドにしばしば用いられる化合物MESPT(商品名:“RP74”)を含む;
- 組成物C4は、亜鉛を含まず且つカップリング剤として本発明と異なるブロックトメルカプトシラン(商品名:“シランNXT”)を含む;
- 本発明の組成物C5は、亜鉛を含まず且つカップリング剤としてS-オクタノイルメルカプトプロピルエトキシジメチルシランを含む;;
- 本発明の組成物C6は、亜鉛を含まず且つカップリング剤としてS-オクタノイルメルカプトプロピルエトキシジメチルシラン及び被覆剤、オクチルメチルジヒドロキシシランを含む。
それ故、組成物C5及びC6のみ本発明である。
これらの組成物の特性が比較できるように、組成物C2〜C6のカップリング剤は、対照組成物C1と比較されるシリコン中に等モルである含量で用いられる。
対照組成物C1において用いられる従来のカップリング剤は、TESPTである。TESPTが構造式(Et =エチル)を有するビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドであることが思い起される:
【0041】
【化8】

【0042】
組成物C3において用いられるカップリング剤は、MESPTである。MESPTが構造式(Et = エチル)を有するビス(3-ジメチルエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド であることが思い起される:
【0043】
【化9】

【0044】
組成物C4に用いられるカップリング剤は、シランNXTである。NXTが構造式(Et = エチル)を有するS-オクタノイルメルカプトプロピルトリエトキシシランであることが思い起される:
【0045】
【化10】

【0046】
表1及び表2は、種々の組成物の配合(表1 - 種々の製品の含量はphr又はエラストマー100部に対する質量部で表される)及びキュアリング(150℃で約40分)の前後のこれらの特性を示す; 加硫系は、硫黄とスルフェンアミドとからなる。
キュアリングの前の特性に関する表2から結果を調べると、第一に、亜鉛の従来用いられる含量を含有する対照組成物C1と比較して、一般式(I)のブロックトメルカプトシランを含む本発明の組成物、C5とC6のみが、組成物の加工性を著しく改善しつつ(組成物C1よりムーニー値が非常に小さい)、いずれも許容され得るスコーチ時間T5(C1のそれに近いか又は同一)を維持することが可能であることがわかる。
タイヤにおける使用が許容され得ない特性を有するその他の組成物C2、C3又はC4は、スコーチ時間が非常にあまりに短い(C2及びC4)ことによるか、又は未キュア状態の粘度があまりに高いことによる(C3、ムーニー値が非常に高い)。
更に、キュアリング後のこれらの組成物の特性の所見から、破断時伸びの改善が著しい、対照組成物C1に比較して、本発明のC5及びC6による特性として、摩耗に耐える本発明の組成物の非常に良好な適性の当業者に対する明らかな指標を補強指数(M300/M100比)が維持することがわかる。更に、非常に意外なことに本発明の組成物C5及びC6について、対照組成物C1に比較して、ヒステリシスの実質的な低下が、非常に大幅に低下しているtan(δ)maxとΔG*の値によって証明されるようにわかる。これは、タイヤの転がり抵抗の低下、及びその結果としてこのようなタイヤを取り付けた自動車のエネルギー消費の低下の認識された指標である; 本発明のカップリング剤と被覆剤のいずれもを含む組成物C6にとってはなおさらである。
【0047】
本発明でない組成物C4もまた、組成物C1に相対して低ヒステリシスを有するが、この特性がタイヤに使用できない組成物C4の非常に短いスコーチ時間を示すこの場合には用いることができないことがわかる。
カップリング剤として、式(I)のブロックトメルカプトシランを含む本発明の組成物が、亜鉛を用いずに、他のカップリング剤を含む組成物と異なり、封鎖されているが、本発明のそれと異なる式を有するメルカプトシランを含む、従来の対照組成物に相対して等価であるか、又は更に改善される特性(加工性、破断時伸び、ヒステリシス)を得ることを可能にすることが明らかにわかる。
更に、本発明のブロックトメルカプトシランの使用が環境の観点から特に有利であることがわかる。ゴム組成物自体の製造の間にもこれらの組成物を組み入れているゴム製品のキュアリングの間にも、亜鉛を除去することによる問題を克服するとともに放出されるVOC(揮発性有機化合物)の量を減少させることを可能にする。実際に、本発明のブロックトメルカプトシランは、シリコン原子に対して単一のアルコキシ官能基のみを有するが、TESPTは、シリコン原子に対して3つのアルコキシ官能基を有する; 官能基は、S-オクタノイルメルカプトプロピルエトキシジメチルシランやTESPTの場合にはエタノールのようなアルコールを遊離させることができる。
【0048】
表 1


(1)乾燥SBR(9%のMES油による油展SBR、即ち、SSBR + 76 phrに等しい油の合計)として表される25%のスチレン、59%の1,2-ポリブタジエン単位及び20%のトランス-1,4-ポリブタジエン単位(Tg =-24℃)含量を有するSSBR;
(2) 0.7%の1,2-; 1.7%のトランス-1,4; 98%のシス-1,4-(Tg =-105℃)を有するBR(Nd);
(3) マイクロパールの形のRhodia製"ZEOSIL 1165 MP"シリカ(BET及びCTAB: 約150-160m2/g);
(4) TESPT(Degussa製"SI69");
(5) MESPT(Rhodia製"RP74");
(6) S-オクタノイルメルカプトプロピルトリエトキシシラン(GE Silicones製"シランNXTTM");
(7) S-オクタノイルメルカプトプロピルエトキシジメチルシラン(合成生成物);
(8) オクチルメチルジヒドロキシシラン(合成生成物);
(9) N234(Degussa);
(10) MES油(Shell製"Catyte L120enex SNR");
(11) ポリリモネン樹脂(DRT製"Dercolyte L120");
(12) ジフェニルグアニジン(Flexsys製Perkacit DPG);
(13) マクロクリスタリンとミクロクリスタリン抗オゾンワックスの混合物;
(14) 酸化亜鉛(工業グレード - Umicore );
(15) N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン(Flexsys製"Santoflex 6-PPD");
(16) ステアリン("Pristerene 4931"- Uniqema);
(17) N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(Flexsys製"Santocure CBS")。
【0049】
表 2



【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの製造に使用し得る亜鉛を含まないか或いは0.5 phr未満の亜鉛を含有するゴム組成物であって、下記に基づく、前記組成物:
- 少なくとも1つのジエンエラストマー;
- 少なくとも1つの硫黄ベースの架橋系;
- 少なくとも1つの補強性充填剤としての無機充填剤;
- 少なくとも1つの下記一般式Iのブロックトメルカプトシラン:

(R3O) R2 R1− Si − Z − S − C (= O) − A

(式中、
- R1及びR2は、同一か又は異なり、炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- R3は、炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分枝鎖アルキルより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Aは、水素又は炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Zは、炭素原子1〜18個を含む二価の結合基を表す)。
【請求項2】
Zが、O、S及びNより選ばれる1つ以上のヘテロ原子を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
- R1及びR2が、メチル、エチル、n-プロピル及びイソプロピル、好ましくはメチル及びエチルより選ばれ;
- R3が、メチル及びエチルより選ばれ;
- Aが、炭素原子1〜18個を有するアルキル及びフェニル基より選ばれ;
- Zが、C1-C18アルキレン及びC6-C12アリーレンより選ばれる
請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
Zが、C1-C10アルキレンより選ばれる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
Zが、C1-C4アルキレンより選ばれる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
R1及びR2が、メチルである、請求項3〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
Aが炭素原子1〜7個を有するアルキル及びフェニル基より選ばれる、請求項3〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
R1及びR2がメチルであり、Aがヘプチルであり、R3がエチルであり、Zがプロピレンである、請求項3〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群より選ばれる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
補強性無機充填剤が、主な補強性充填剤である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
補強性無機充填剤が、シリカ質充填剤又はアルミニウム充填剤である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
補強性無機充填剤の量が、50 phrを超え、好ましくは60〜140 phrである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
カップリング剤の含量が、補強性無機充填剤の量に対して2質量%〜20質量%であり; 好ましくは、この含量が15%未満である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
カップリング剤の含量が、2〜15 phr、好ましくは4〜12 phrである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
亜鉛を含まないか或いは0.5 phr未満の亜鉛を含有する組成物を調製する方法であって、
(i)少なくとも1つのジエンエラストマーに、
(ii) 少なくとも1つの補強性充填剤としての無機充填剤、
(iii) 少なくとも1つの下記一般式Iのブロックトメルカプトシラン:
(R3O) R2 R1− Si − Z − S − C (= O) − A
(式中、
- R1及びR2は、同一か又は異なり、炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- R3は、炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分枝鎖アルキルより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Aは、水素又は炭素原子1〜18個を有する、直鎖又は分枝鎖であるアルキル、シクロアルキル又はアリールより選ばれる一価の炭化水素ベースの基を表し;
- Zは、炭素原子1〜18個を含む二価の結合基を表す)
及び
(iv) 少なくとも1つの硫黄ベースの加硫系が少なくとも混練りによって組み入れられることを特徴とする、前記方法。
【請求項16】
下記工程を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法:
- 第1の相において、ミキサー内のジエンエラストマーに補強性充填剤及びブロックトメルカプトシランをすべての成分を熱機械的に混練りすることによって1回以上、最高温度が130℃〜200℃に達するまで組み入れる工程;
- 混合物を100℃より低い温度に冷却する工程;
- 次に、第2の相において、加硫系を組み入れる工程;
- 120℃以下の最高温度まですべてのものを混練する工程; 及び
- このようにして得られたゴム組成物を押出すか又はカレンダー仕上する工程。
【請求項17】
被覆剤が、第1の相の間、完全に又は部分的に導入される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
被覆剤が、第2の相の間、完全に又は部分的に導入される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のゴム組成物を含むタイヤ又は半製品。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のゴム組成物を含むタイヤトレッド。

【公表番号】特表2012−513514(P2012−513514A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542789(P2011−542789)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067550
【国際公開番号】WO2010/072682
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】