説明

ブロックポリマー化合物、それを含有するポリマー含有組成物、インク組成物、該インク組成物を用いた液体付与方法および液体付与装置

【課題】 染料又は顔料からなる機能性物質を溶媒に良好に分散できるブロックポリマー化合物、及び印刷画像の裏写りが抑制され、耐水性に優れたインク組成物を提供する。
【解決手段】 少なくとも2つ以上のブロックセグメントを有するブロックポリマーであって、該ブロックポリマーの少なくとも1つのブロックセグメントが、側鎖に多環芳香族からなる有機酸または有機酸誘導体を有する繰り返し単位と、単環芳香族または脂肪族からなる有機酸または有機酸誘導体を有する繰り返し単位とを含有するブロックポリマー化合物。前記ブロックポリマー化合物と、溶媒または分散媒、および色材を含有するインク組成物。本発明のインク組成物はインクジェット装置用に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機能材料として有用で、新規なブロックポリマー化合物、それを含有するポリマー含有組成物、インク組成物、該インク組成物を用いた液体付与方法および液体付与装置に関する。特に本発明は、機能性物質分散組成物が水性分散材料であり、好ましくはプリンターやディスプレイ等に利用されうる画像形成材料のインク組成物として有用であり、該インク組成物を用いた液体付与方法および液体付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状固体を含有する水性分散材料には、従来から機能性材料として、除草剤、殺虫剤等の農薬、抗がん剤、抗アレルギー剤、消炎剤等の医薬、または粒状固体として着色剤を有するインク、トナー等の色材が良く知られている。近年、デジタル印刷技術は非常な勢いで進歩している。このデジタル印刷技術は、電子写真技術、インクジェット技術と言われるものがその代表例であるが、近年オフィス、家庭等における画像形成技術としてその存在感をますます高めてきている。
【0003】
インクジェット技術はその中でも直接記録方法として、コンパクト、低消費電力という大きな特徴がある。また、ノズルの微細化等により急速に高画質化が進んでいる。インクジェット技術の一例は、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱して蒸発発泡させ、インクを吐出させて記録媒体に画像を形成させるという方法である。他の例はピエゾ素子を振動させることでノズルからインクを吐出させる方法である。
【0004】
これらのインクジェット方法に使用されるインクは水に可溶な通常染料水溶液が用いられるため、裏側へと染み出す(以下これを裏写りとする)現象が現れる場合があったり、耐水性の向上が求められていた。例えば、裏写りが少ないと、普通紙の両面に画像印刷が可能となり、紙数の削減、省資源に有用である。これらを改善する目的で、樹脂分散型顔料あるいは色材粒子含有インクにアルギン酸塩類等を添加する方法が提案されている。
【0005】
しかし、これらの方法は非水系溶媒を多く使用しており、ヘッド構成材料等に親和性が高いため、膨潤や溶解等を引き起こし、インクを長時間、安定に分散させたり、色味や発色性といった点において更なる改善が望まれている。また、印刷後、インクの裏写りが見られたり、耐水性の点において更なる改善が望まれている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−109430号公報(第2〜3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、機能性物質を溶媒に良好に分散することができるブロックポリマー化合物を提供するものである。
また、本発明は、機能性物質が顔料または染料で、溶媒が水で、顔料または染料の分散性が良好であり、また、被記録媒体への定着性に優れたインク組成物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、溶媒中における顔料または染料の機能性物質の分散性安定性が高く、裏写りがなく、耐水性が良好なインクジェット用のインク組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記のインク組成物を用いた液体付与方法およびそれに使用する液体付与装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、以下の本発明により解決される。
本発明の第一は、少なくとも2つ以上のブロックセグメントを有するブロックポリマー化合物であって、該ブロックポリマー化合物の少なくとも1つのブロックセグメントが疎水性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造と、親水性を示し非イオン性である少なくとも1種類の繰り返し単位構造を含有することを特徴とするブロックポリマー化合物である。
【0009】
前記ブロックポリマー化合物が両親媒性であることが好ましい。
前記ブロックポリマー化合物が疎水性を示すブロックセグメントと親水性を示すブロックセグメントを含有することが好ましい。
【0010】
前記ブロックポリマー化合物が3種以上のブロックセグメントを有することが好ましい。
前記ブロックポリマーがポリアルケニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有するのが好ましく、さらにポリビニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有するのがより好ましい。
【0011】
前記疎水性を示す繰り返し単位構造が下記の一般式(1)で表され、前記親水性を示し非イオン性である繰り返し単位構造が下記の一般式(2)で表される繰り返し単位であるのが好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R1 は炭素数1から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−(CH(R2 )−CH(R3 )−O)p −R4 および−(CH2m −(O)n −R4 から選ばれ、芳香族環中の水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基と、また芳香族環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。pは1から18の整数、mは1から36の整数、nは0または1である。R2 、R3 はそれぞれ独立に水素原子もしくはCH3 である。R4 は炭素数4から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CO−CH=CH2 または−CO−C(CH3 )=CH2 、−CH2 COOR5 であり、炭素原子に結合している水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香族環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。また、R4は炭素数3の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基であり、pは1から3の整数であり、炭素原子に結合している水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香族環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。R5 は炭素数1から4のアルキル基である。また、−Phはフェニル基、−Pyrはピリジル基、−Ph−Phはビフェニル基、および−Ph−Pyrはピリジルフェニル基を表す。ピリジル基、ビフェニル基およびピリジルフェニル基については、可能な位置異性体のいずれのものであってもよい。)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R6 は水素原子あるいは−(CH(R7 )−CH(R8 )−O)p −R9 および−(CH2m −(O)n −R9 から選ばれる。pは1から18の整数、mは1から36の整数、nは0または1である。R7 、R8 はそれぞれ独立に水素原子もしくは−CH3 である。R9 は水素原子、炭素数1から2までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を表す。またR9は炭素数3の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基であり、pは4から18の整数である。)
【0016】
前記疎水性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造と、前記親水性を示し非イオン性である少なくとも1種類の繰り返し単位構造を含有するブロックセグメントにおいて、非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量が50mol%以上であることことが好ましい。
【0017】
また、本発明の第二は、前記本発明の第一のブロックポリマー化合物、溶媒または分散媒、および機能性物質を含有することを特徴とするポリマー含有組成物である。
前記機能性物質が前記ブロックポリマーに内包されているのが好ましい。
【0018】
前記機能性物質が色材であるのが好ましい。
また、そのポリマー含有組成物はインク組成物として利用し得るものとなる。
前記インク組成物がインクジェット用インク組成物であるのが好ましい。
【0019】
また、本発明の第三の発明は、上記のインク組成物を使用することを特徴とする液体付与方法である。
インク吐出部からインクを吐出して被記録媒体上に付与して記録を行う液体付与方法において、前記インクが上記のインク組成物であるのが好ましい。
【0020】
前記インク吐出部からのインクの吐出はインクに熱エネルギーを作用させて行うのが好ましい。
また、本発明の第四の発明は、上記の液体付与方法に用いることを特徴とする液体付与装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、機能性物質を溶媒に良好に分散することができるブロックポリマー化合物を提供することができる。
また、本発明は、該ブロックポリマー化合物を用いて、機能性物質が顔料または染料で、溶媒が水で、顔料または染料の分散性が良好インク組成物を提供することができる。また、本発明は、被記録媒体へ印字した際、裏写りや抑制され、耐水性が向上したインク組成物を提供することができる。
【0022】
また、本発明は、溶媒中における顔料または染料の機能性物質の分散性安定性がよいインクジェット用のインク組成物を提供することができる。
また、本発明は、上記のインク組成物を用いた液体付与方法およびそれに使用する液体付与装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一は、少なくとも2つ以上のブロックセグメントを有するブロックポリマー化合物であって、該ブロックポリマー化合物の少なくとも1つのブロックセグメントが疎水性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造と、親水性を示し非イオン性である少なくとも1種類の繰り返し単位構造を含有することを特徴とするブロックポリマー化合物である。
【0024】
好ましくは、前記ブロックポリマー化合物が両親媒性であることを特徴とするブロックポリマー化合物である。
本発明のブロックポリマー化合物中の少なくとも一つのブロックセグメントが疎媒性で、少なくとも一つのブロックセグメントが親媒性であることで両親媒性が発現する。疎媒性、親媒性の対象としては、水性溶媒が好ましい。言い換えれば本発明のブロックポリマー化合物は疎水セグメントと親水セグメントをそれぞれ少なくとも一つ持つことが好ましい。さらに好ましくは3種以上のブロックセグメントを有することが好ましい。前記ブロックポリマー化合物はABA、ABC、ABCD型、ABCA型等のブロック形態がより好ましい。
【0025】
なお、ブロックポリマーとは、異なる複数種のポリマーセグメントがポリマー鎖に連結した共重合体であり、ブロック共重合体、ブロックポリマーとも呼ばれる。また、ブロックセグメントとは、少なくとも1種類の繰り返し単位構造からなるブロックポリマーの部分構成成分を示す。
【0026】
本発明に用いることができるブロックポリマー化合物として、具体的な例をあげると、アクリル、メタクリル系ブロックポリマー、ポリスチレンと他の付加重合系または縮合重合系のブロックポリマー、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンのブロックを有するブロックポリマー化合物等を用いることもできる。
【0027】
本発明では、ポリアルケニルエーテル構造を含むブロックポリマー化合物が好ましく用いられ、さらにはポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー化合物がより好ましく用いられる。また、本発明では、ブロックポリマー化合物がポリビニルエーテル構造を含むグラフトポリマー化合物であってもよいし、ブロックポリマー化合物のあるセグメントが共重合セグメントであってもよいし、グラジエントセグメントであってもよい。
【0028】
本発明に好ましく用いられるポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー化合物について説明する。ポリビニルエーテル構造を含むポリマーの合成法は多数報告されているが(例えば特開平11−080221号公報)、青島らによるカチオンリビング重合による方法(特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)が代表的である。カチオンリビング重合でポリマー合成を行うことにより、ホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロックポリマー化合物、グラフトポリマー化合物等の様々なポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。
【0029】
例えば、1種類のビニルエーテルモノマーの重合進行中にもう1種類のビニルエーテルモノマーを徐々に添加することにより、ポリマー連鎖に沿ってモノマー組成が徐々に変化しているポリマー(グラジエントコポリマー)が合成され、ブロックポリマー化合物の場合と比較し、モノマーシークエンス分布の違いが熱刺激応答性に及ぼす影響が報告されている(Polymer Preparints,Japan Vol.51,No.7(2002))。また、ポリビニルエーテルは、その側鎖に様々な官能基を導入することができる。カチオン重合法は、他にHI/I2 系、HCl/SnCl4 系等で行うこともできる。
【0030】
また、ポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマー化合物の構造は、ビニルエーテルと他のポリマーからなる共重合体であってもよい。
本発明に用いられる疎水性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造が、下記の一般式(1)で表される繰り返し単位を含有するのが好ましい。
【0031】
【化3】

【0032】
式中、R1 は炭素数1から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−(CH(R2 )−CH(R3 )−O)p −R4 および−(CH2m −(O)n −R4 から選ばれ、芳香族環中の水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基と、また芳香族環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。
【0033】
pは1から18の整数、mは1から36の整数、nは0または1である。
2 、R3 はそれぞれ独立に水素原子もしくはCH3 である。
4 は炭素数4から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CO−CH=CH2 または−CO−C(CH3 )=CH2 、−CH2 COOR5 であり、炭素原子に結合している水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香族環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。
【0034】
また、R4は炭素数3の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基であり、pは1から3の整数であり、炭素原子に結合している水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香族環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。
【0035】
5 は炭素数1から4のアルキル基である。
本発明で、−Phはフェニル基、−Pyrはピリジル基、−Ph−Phはビフェニル基、および−Ph−Pyrはピリジルフェニル基を表す。ピリジル基、ビフェニル基およびピリジルフェニル基については、可能な位置異性体のいずれのものであってもよい。
【0036】
一般式(1)で表される繰り返し単位構造の具体例を以下に挙げるが、何ら限定されるものではない。
【0037】
【化4】

【0038】
(Rは水素原子あるいは炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基をあらわす。)
また、本発明に用いられる両親媒性ブロックポリマーの疎水性ブロックセグメントが、上記の一般式(1)で表される繰り返し単位を含有するのが好ましい。
【0039】
本発明に用いられる非イオン性を示す繰り返し単位構造が親水性を示すことによって、機能性物質が前記ブロックポリマー化合物に内包し分散した場合、より安定して分散させることが可能となる。
【0040】
本発明に用いられる親水性を示し非イオン性である少なくとも1種類の繰り返し単位構造が、下記の一般式(2)で表される繰り返し単位を含有するのが好ましい。
【0041】
【化5】

【0042】
式中、R6 は水素原子あるいは−(CH(R7 )−CH(R8 )−O)p −R9 および−(CH2m −(O)n −R9 から選ばれる。
pは1から18の整数、mは1から36の整数、nは0または1である。
【0043】
7 、R8 はそれぞれ独立に水素原子もしくは−CH3 である。
9 は水素原子、炭素数1から2までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を表す。またR9は炭素数3の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基であり、pは4から18の整数である。
【0044】
一般式(2)で表される親水性を示す繰り返し単位構造の具体例を以下に挙げるが、何ら限定されるものではない。
【0045】
【化6】

【0046】
本発明において、一般式(1)で表される少なくとも1種類の疎水性を示す繰り返し単位と、一般式(2)で表される少なくとも1種類の親水性を示し非イオン性である繰り返し単位構造を含有するセグメント中に、非イオン性を示し、親水性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量が50mol%以上であることが好ましい。非イオン性を示し、親水性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量が50mol%以上であることによって、機能性物質が前記ブロックポリマー化合物に内包し分散した場合、より安定して分散させることが可能であり、好ましい。また、前記ブロックポリマー化合物を含むポリマー含有組成物をインク組成物として適用し熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式等によって被記録媒体に記録に記録する場合、より安定な吐出が得られることにより、好ましい。
【0047】
また、一般式(1)で表される少なくとも1種類の疎水性を示す繰り返し単位と、一般式(2)で表される少なくとも1種類の親水性を示し非イオン性である繰り返し単位構造を含有するセグメントが、親水性を示すことが好ましい。親水性を示すことによって、機能性物質が前記ブロックポリマー化合物に内包し分散した場合、より安定して分散させることが可能となるため、より好ましい。
【0048】
本発明のブロックポリマー化合物は、好ましくは3種以上のブロックセグメントを有することが好ましく、前記一般式(1)で表される少なくとも1種類の繰り返し単位構造を有する疎水性のブロックセグメントと、前記一般式(1)で表される疎水性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造と、親水性を示し非イオン性である前記一般式(2)で表される少なくとも1種類の繰り返し単位構造を有する親水性のブロックセグメント、そしてアニオン性を示すブロックセグメントを有していることが好ましい。疎水性のブロックセグメント、親水性のブロックセグメント、アニオン性のブロックセグメントを有するブロックポリマー化合物は、水系溶媒中において、コア部に疎水性セグメント、シェル部に親水性セグメントからなるミセル粒子を形成し、ミセル粒子は機能性物質をコア部に内包させることが可能である。さらにシェル部にアニオン性を示すセグメントを有することから、ミセル粒子間の電気的反発により、安定に分散可能である。よって、例えば機能性物質が色材の場合、色材内包型のインク組成物を形成することが可能となる。
【0049】
また、本発明における疎水性とは水に対する親和性が低い、すなわち水に溶けにくい、あるいは水と混じりにくい物質または分子(の一部分)の性質をいう。本発明における親水性とは極性または電荷を有することにより、水に溶けやすいまたは混じりやすいという性質を示す。
【0050】
前記アニオン性を示す繰り返し単位構造とは、特に限定されないが、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等を重合することによって得られるポリマーのように側鎖にカルボン酸を有する繰り返し単位構造である。
【0051】
上記の側鎖にアニオン性を示す、例えばカルボン酸を有する繰り返し単位構造において、側鎖と記した意味は、高分子の主鎖に直結する形でなく、何らかの連結基を介してカルボン酸が存在することを意味する。例えば、アクリル酸やメタクリル酸の重合体高分子のように主鎖に直結してカルボン酸が存在するのではなく、アルキレン基、アルキレンオキシ基等の連結基を介してカルボン酸が存在する形を言う。
【0052】
連結基は好ましくは主鎖から3原子以上あるものが好ましい。さらに好ましくは5原子以上あるものであり、主鎖から充分にカルボン酸が離れることが好ましい。あまりに主鎖に近く直結するような構造では、カルボン酸の運動性が制限されることで、分子間、分子内の働くべき相互作用が充分に発揮できない場合があるからである。従って、よりそれら相互作用が働くものとしてフリーのカルボン酸構造が好ましい形として挙げられる。
【0053】
本発明に用いられる両親媒性ブロックポリマー化合物のアニオン性を示す繰り返し単位構造が下記の一般式(3)であるのが好ましい。
【0054】
【化7】

【0055】
式中、R10は−X−COO- を表す。Xは炭素数1から20までの直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、または−(CH(R11)−CH(R12)−O)p −(CH2m −もしくは−(CH2m −(O)n −(CH2q −または、それらのメチレン基の少なくとも一つがカルボニル基または芳香環構造で置換された構造を表す。
【0056】
pは1から18までの整数を表す。mは1から36までの整数を表す。
nは1または0を表す。qは1から18の整数を表す。
11、R12はアルキル基を表す。R11、R12は同じでも又は異なっていてもよい。
【0057】
一般式(3)で表されるアニオン性を示す繰り返し単位構造の具体例を以下に挙げるが、何ら限定されるものではない。
【0058】
【化8】

【0059】
(Phはフェニレン基をあらわす。)
本発明のブロックポリマー化合物の数平均分子量(Mn)は、200以上10000000以下であり、好ましく用いられる範囲としては1000以上1000000以下である。10000000を越えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。200未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。各ブロックセグメントの好ましい重合度は3以上10000以下である。さらに好ましくは5以上5000以下である。さらに好ましくは10以上4000以下である。
【0060】
本発明で用いられるブロックポリマー化合物の分子量分布Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は2.0以下であることが好ましい。更に好ましくは1.6以下である。
【0061】
また、分散安定性向上、内包性向上のためにはブロックポリマーの分子運動性がよりフレキシブルであることが機能性物質表面と物理的に絡まり親和しやすい点を有しているため好ましい。このためにはブロックポリマーの主鎖のガラス転移温度Tgは、好ましくは20℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。この点でもポリビニルエーテル構造を有するポリマーは、一般にガラス転移点の低い柔らかい特性を有するため、好ましく用いられる。
【0062】
次に本発明の第二の発明について説明する。
本発明の第二の発明は、溶媒または分散媒、機能性物質および前記本発明の第1のブロックポリマー化合物を含有することを特徴とするポリマー含有組成物である。上記のポリマー化合物と色材などの有用な所定の機能を奏する機能性物質を含有し、該ポリマー化合物は機能性物質等を良好に分散するのに好適に用いることができる。
【0063】
前記機能性物質とは、所定の機能を有する物質であり、例えば化合物、混合物、固体、液体、その他の形態の物質を含むが、例えば除草剤、殺虫剤等の農薬に利用可能な物質、抗がん剤、抗アレルギー剤、消炎剤等の医薬として利用可能な物質、口紅、ファンデーション、頬紅、保湿クリーム等の化粧品に利用可能な物質、染料、顔料、着色顔料等の色材、その組成物をあげることができる。本発明においては、染料、顔料、着色顔料等の色材が好ましく用いられる。
【0064】
本発明においては、機能性物質とブロックポリマー化合物とが粒子となって溶媒に分散しているが、前記溶媒に分散している粒子としては、所定の機能を有する機能性物質が単独に分散している粒子、ブロックポリマー化合物の親水部に該機能性物質が吸着して分散している粒子、機能性物質がブロックポリマー化合物に内包されている粒子、ブロックポリマー化合物単独で形成している粒子が挙げられる。所定の機能を有する機能性物質は全てブロックポリマー化合物に内包されている状態が好ましい。機能性物質がブロックポリマー化合物に内包されている状態としては、ブロックポリマー化合物が形成する高分子ミセル中に機能性物質が内包されている状態が好ましいものとして挙げられる。
【0065】
本発明のポリマー含有組成物に含有される所定の機能を有する機能性物質の含有量としては、0.1質量%以上70質量%以下である。好ましくは0.5質量%以上50質量%以下である。さらに好ましくは1質量%以上30質量%以下である。0.1質量%未満の場合、所定の機能を発揮できない場合があり、70質量%を越える場合、組成物としての粘度が高くなりすぎる場合がある。
【0066】
本発明のポリマー含有組成物は、安定して水系溶媒中に分散可能である。
これは、本発明に使用する両親媒性ブロックポリマー化合物は、コア部に色材を内包させ、シェル部は親水性を有するブロックセグメントからなるミセルを形成し、色材を水性溶媒中に分散することができる。すなわち、色材内包型のインク組成物を形成することが可能となる。
【0067】
さらに、ミセルのシェル部はアニオン性繰り返し単位構造も同時に有していることから、色材を内包しているポリマーミセル粒子もアニオン性を示す。よってポリマーミセル粒子間では、電気的反発により凝集が抑制され溶媒中で安定に分散でき、また、その分散組成物の粒子の粒径も非常に揃った均一なものとすることも可能である。さらには、色材をポリマーで内包することは、その耐環境安定性を向上することが可能である点でも好ましい。機能性物質がポリマーミセル中に内包されていることは、例えば高分子ミセル非存在下では機能性物質が溶媒中に分散しないため、何らかの方法で高分子ミセルを崩壊させると機能性物質が溶媒中に分離してくることで確認することができる。また、電子顕微鏡等によっても確認することができる。
【0068】
本発明のポリマー含有組成物をインク組成物に適用した色材分散インクの分散安定性には粒子間の相互作用、分散粒子の粒径及び粒径の均一さが大きく影響を及ぼす。すなわち溶媒中に分散した粒子間で凝集が生じると粒子が大きく成長し、結果沈殿してしまい、安定したインク分散組成物が得られない。
【0069】
また、本発明のポリマー含有組成物は、インク組成物として用いて、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式等によって被記録媒体に記録させた際に、裏写りがなく、耐水性に優れた画像が得られる。
【0070】
インク組成物が被記録媒体に着弾した際に水性溶媒は紙へ浸透していく。一方、本発明のブロックポリマー化合物が水性溶媒中で形成するミセルは、シェル部に疎水性を示す繰り返し単位構造を有していることから、水性溶媒への親和性が抑制され、よって水性溶媒と共に紙へ浸透することが抑制され裏写りが生じない。また、画像形成後、外部より水性溶媒を添加した際、画像のにじみが抑制される。これは、親水性を示すブロックセグメント中に疎水性を示す繰り返し単位構造を有するため、水性溶媒に対しての溶解性が抑制され滲みが生じない。
【0071】
また、カルボシキル基等のアニオン性を示す官能基のアニオン化を図るために水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等の塩基性添加物を添加するが、その結果、ポリマーミセル粒子も十分にアニオン化され、電気的反発により凝集が抑制され溶媒中で安定に分散できる。また、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式等によって本発明のインク組成物を被記録媒体に記録させる際にも、沈殿・凝集することなく、ノズルの目詰まりせずに安定した吐出が可能となる。さらに、吐出をしばらく中止した時のインクの吐出不良もなく、安定した画像形成を行うことができる。
【0072】
ブロックポリマーミセル粒子の平均粒径は光子相関法等で測定可能である。本発明は主に光子相関法である動的光散乱法による測定を用いる。粒径の均一さの指標としては一般的に、Gulariらが示した分散度指数μ/G2 (μ:キュムラント展開の二次の係数、G:減衰定数)が用いられる(The Journal of Chemical Physics、70巻、3965頁、1979年)。この値も動的光散乱法によって求められる。動的光散乱法による粒径測定装置としては、大塚電子(株)のDLS7000等の装置がある。
【0073】
さらに、本発明におけるポリビニルエーテル構造を有するブロックポリマーは、主鎖のガラス転移温度が20℃以下であり分子運動性がフレキシブルである。よって被記録媒体に吐出・画像形成した際、本発明のインク組成物は、色材や被記録媒体と良好に絡み合い、色材は十分にポリマーミセルに内包された状態で画像形成し、被記録媒体に対し高い定着性を示すのである。
【0074】
本発明の組成物に含まれる機能性物質に染料、顔料、着色顔料等の色材が用いられた組成物は、インク組成物として好ましく用いられる。
本発明のインク組成物について説明する。
【0075】
以下にインク組成物に用いられる染料、有機顔料および無機顔料の具体例を示す。
また、本発明で使用しうる染料は、公知のものでよく、以下に述べるような直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素の水溶性染料又は分散染料の不溶性色素等を用いることができる。
【0076】
例えば、油溶性染料としては、C.I.ソルベントブルー,−33,−38,−42,−45,−53,−65,−67,−70,−104,−114,−115,−135;
C.I.ソルベントレッド,−25,−31,−86,−92,−97,−118,−132,−160,−186,−187,−219;
C.I.ソルベントイエロー,−1,−49,−62,−74,−79,−82,−83,−89,−90,−120,−121,−151,−153,−154等が挙げられる。
【0077】
また、水溶性染料としては、C.I.ダイレクトブラック,−17,−19,−22,−32,−38,−51,−62,−71,−108,−146,−154;
C.I.ダイレクトイエロー,−12,−24,−26,−44,−86,−87,−98,−100,−130,−142;
C.I.ダイレクトレッド,−1,−4,−13,−17,−23,−28,−31,−62,−79,−81,−83,−89,−227,−240,−242,−243;
C.I.ダイレクトブルー,−6,−22,−25,−71,−78,−86,−90,−106,−199;
C.I.ダイレクトオレンジ,−34,−39,−44,−46,−60;
C.I.ダイレクトバイオレット,−47,−48;
C.I.ダイレクトブラウン,−109;
C.I.ダイレクトグリーン,−59等の直接染料、
C.I.アシッドブラック,−2,−7,−24,−26,−31,−52,−63,−112,−118,−168,−172,−208;
C.I.アシッドイエロー,−11,−17,−23,−25,−29,−42,−49,−61,−71;
C.I.アシッドレッド,−1,−6,−8,−32,−37,−51,−52,−80,−85,−87,−92,−94,−115,−180,−254,−256,−289,−315,−317;
C.I.アシッドブルー,−9,−22,−40,−59,−93,−102,−104,−113,−117,−120,−167,−229,−234,−254;
C.I.アシッドオレンジ,−7,−19;
C.I.アシッドバイオレット,−49等の酸性染料、
C.I.リアクティブブラック,−1,−5,−8,−13,−14,−23,−31,−34,−39;
C.I.リアクティブイエロー,−2,−3,−13,−15,−17,−18,−23,−24,−37,−42,−57,−58,−64,−75,−76,−77,−79,−81,−84,−85,−87,−88,−91,−92,−93,−95,−102,−111,−115,−116,−130,−131,−132,−133,−135,−137,−139,−140,−142,−143,−144,−145,−146,−147,−148,−151,−162,−163;
C.I.リアクティブレッド,−3,−13,−16,−21,−22,−23,−24,−29,−31,−33,−35,−45,−49,−55,−63,−85,−106,−109,−111,−112,−113,−114,−118,−126,−128,−130,−131,−141,−151,−170,−171,−174,−176,−177,−183,−184,−186,−187,−188,−190,−193,−194,−195,−196,−200,−201,−202,−204,−206,−218,−221;
C.I.リアクティブブルー,−2,−3,−5,−8,−10,−13,−14,−15,−18,−19,−21,−25,−27,−28,−38,−39,−40,−41,−49,−52,−63,−71,−72,−74,−75,−77,−78,−79,−89,−100,−101,−104,−105,−119,−122,−147,−158,−160,−162,−166,−169,−170,−171,−172,−173,−174,−176,−179,−184,−190,−191,−194,−195,−198,−204,−211,−216,−217;
C.I.リアクティブオレンジ,−5,−7,−11,−12,−13,−15,−16,−35,−45,−46,−56,−62,−70,−72,−74,−82,−84,−87,−91,−92,−93,−95,−97,−99;
C.I.リアクティブバイオレット,−1,−4,−5,−6,−22,−24,−33,−36,−38;
C.I.リアクティブグリーン,−5,−8,−12,−15,−19,−23;
C.I.リアクティブブラウン,−2,−7,−8,−9,−11,−16,−17,−18,−21,−24,−26,−31,−32,−33等の反応染料;
C.I.ベーシックブラック,−2;
C.I.ベーシックレッド,−1,−2,−9,−12,−13,−14,−27;
C.I.ベーシックブルー,−1,−3,−5,−7,−9,−24,−25,−26,−28,−29;
C.I.ベーシックバイオレット,−7,−14,−27;
C.I.フードブラック,−1,−2等が挙げられる。
【0078】
なお、これら上記の色材の例は、本発明のインク組成物に対して特に好ましいものであるが、本発明のインク組成物に使用する色材は上記色材に特に限定されるものではない。
本発明では、顔料および染料を併用してもよい。
【0079】
本発明のインク組成物に用いられる染料は、インクの重量に対して、0.1〜50質量%が好ましい。染料の量が、0.1質量%未満であると、より十分な画像濃度を得られない場合があり、50質量%を超えると粘性が大きくなりすぎたりする場合がある。さらに好ましい範囲としては0.5質量%から30質量%の範囲である。
【0080】
顔料は、有機顔料および無機顔料のいずれでもよく、インクに用いられる顔料は、好ましくは黒色顔料と、シアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料を用いる。なお、上記に記した以外の色顔料、無色または淡色の顔料、または金属光沢顔料等を使用してもよい。また、本発明において、市販の顔料を用いてもよいし、あるいは新規に合成した顔料を用いてもよい。
【0081】
以下に、黒、シアン、マゼンタ、イエローにおいて、市販されている顔料を例示する。
黒色の顔料としては、Raven1060、Raven1080、Raven1170、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven3500、Raven5250、Raven5750、Raven7000、Raven5000 ULTRA II、Raven1190 ULTRA II(以上、コロンビアン・カーボン社製)、Black Pearls L、MOGUL−L、Regal400R、Regal660R、Regal330R、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW200、Color Black 18、Color Black S160、Color Black S170、Special Black 4、Special Black 4A、Special Black 6、Printex35、PrintexU、Printex140U、PrintexV、Printex140V(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0082】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:2、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−5、C.I.Pigment Red−7、C.I.Pigment Red−12、C.I.Pigment Red−48、C.I.Pigment Red−48:1、C.I.Pigment Red−57、C.I.Pigment Red−112、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、C.I.Pigment Red−168、C.I.Pigment Red−184、C.I.Pigment Red−202、C.I.Pigment Red−207等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
イエローの顔料としては、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本発明のインク組成物に用いられる顔料は、インクの重量に対して、0.1〜50質量%が好ましい。顔料の量が、0.1質量%未満となると、より十分な画像濃度を得られない場合があり、50質量%を超えるとであると粘性が大きくなりすぎる場合がある。さらに好ましい範囲としては0.5質量%から30質量%の範囲である。
【0086】
本発明のインク組成物に含まれる溶媒は、特に限定されないが、インク組成物に含まれる成分を溶解、懸濁、分散できる媒体を意味する。本発明では、直鎖、分岐鎖、環状の各種脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、複素芳香族炭化水素などの有機溶媒、水性溶媒、水などが溶媒として含まれる。
【0087】
特に、本発明のインク組成物では水および水性溶媒を好適に使用することができる。
水性溶媒の例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒等を挙げることができる。また、インクの用途としては、紙での乾燥を速めることを目的として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。
【0088】
本発明のインク組成物における、上記水および水性溶媒の含有量は、水性分散物の全重量に対して、20〜95質量%の範囲で用いるのが好ましい。さらに好ましくは30〜90質量%の範囲である。また、本発明のポリマー含有組成物中には、上記以外の成分を含有することを妨げず、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤等の添加剤を含有することも可能である。
【0089】
本発明のインク組成物中に含有される前記ブロックポリマー化合物の含有量は、0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%が望ましい。ブロックポリマー化合物の量が0.1質量%未満となると、本発明のインク組成物中に含まれる染料または顔料を十分に分散させることができない場合があり、50質量%を超えると粘性が大きくなりすぎる場合がある。
【0090】
また、本発明の好ましい一形態は、pH値が5以上であり、物質とブロックポリマーが粒子となって溶媒に分散している機能性物質分散組成物である。さらに好ましくは、pH値が7以上である。
【0091】
また、上記インク組成物は刺激に対する応答性を有することができる。その刺激応答性によって、画像を形成する過程で刺激を与えることにより、インク特性を増粘したりすることで良好な定着性を付与する。与える刺激種としては、温度変化、電磁波への暴露、pHの変化、濃度の変化等のなかから画像を形成する上で適当なものが選択される。
【0092】
本発明の機能性物質分散組成物は、種々の刺激に応答してその状態(特性)を変化させることができる。本発明では、「刺激」としては、温度の変化;電場の印加;紫外線、可視光線または赤外線のような光(電磁波)への暴露;組成物のpHの変化;化学物質の添加;および組成物の濃度変化などを挙げることができる。
【0093】
本発明における好ましい刺激は以下に挙げるものがある。その第1は温度変化であり、温度変化の範囲が、組成物の相転移温度の前後に渡る範囲である。第2に電磁波への暴露であり、電磁波の波長範囲が100から800nmであることが好ましい。第3に組成物のpH変化であり、pH変化の範囲がpH3からpH12の範囲であることが好ましい。第4に組成物の濃度の変化であり、たとえば、組成物の溶媒が蒸発または吸収されることにより、または組成物中の溶解されたポリマーの濃度を変化することにより、組成物の濃度が変化するような場合を挙げることができる。前記濃度の変化は、前記組成物が相転移を起こす濃度の前後に渡る範囲であることが好ましい。本発明においては、2種以上の刺激を組合わせて付与してもよい。
【0094】
本発明における刺激に応答した状態の変化としては、ゾル状態からゲル状態への相変化、溶液状態から固体状態への相変化、化学構造の変化などを挙げることができる。また、本発明における「刺激応答性」とは、上記のような刺激に対して本発明の組成物がその性質を変化することを意味する。すなわち、刺激応答性とは、温度変化、電場印加、電磁波への暴露、pH変化、化学物質の添加、組成物の濃度変化などの刺激を組成物に対して付与することにより、この刺激(環境変化)に応じて組成物の形状や物性が著しく変化することを意味する。
【0095】
本発明の組成物において変化する性質(状態、特性)は、本発明の組成物の使用目的に応じて種々選択することができる。たとえば、刺激により組成物が相変化(例えばゾルからゲルへの変化)を起こし、被記録媒体への定着性を向上させることが挙げられる。
【0096】
本発明のインク組成物には、必要に応じて、種々の添加剤、助剤等を添加することができる。また、親水性疎水性両部を持つ樹脂を使用することも可能である。親水性疎水性両部を持つ樹脂としては、例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合体が挙げられる。親水性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、または前記カルボン酸のモノエステル類、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート等を含む。疎水性モノマーは、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類等を含む。もちろん、親水性、疎水性モノマーとも、前記に示したものに限定されない。
【0097】
本発明の組成物中に含まれてもよい添加剤の例としては、熱または電磁波の印加により活性化される架橋剤、酸発生剤、重合開始剤等を挙げることができる。
本発明において組成物中に添加することができるその他の添加剤は、インクの安定化と記録装置中のインクの配管との安定性を得るためのpH調整剤;記録媒体へのインクの浸透を早め、見掛けの乾燥を早くする浸透剤;インク内での黴の発生を防止する防黴剤;インク中の金属イオンを封鎖し、ノズル部での金属の析出やインク中で不溶解性物の析出等を防止するキレート化剤、記録液の循環、移動、あるいは記録液製造時の泡の発生を防止する消泡剤、酸化防止剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤等を含む。
【0098】
以下に本発明のインク組成物の好ましい実施形態であるインクジェット用インク組成物の具体的内容について記載する。本発明のインクジェット用インク組成物の作成方法としては、水および水溶性溶剤に、ブロックポリマーと色材を添加し、分散機を用いて分散させた後、遠心分離等により粗大粒子を除去し、次いで水または溶剤および添加剤等を添加し、攪拌、混合、濾過を行うことにより作成することができる。
【0099】
分散機としては、例えば、超音波ホモジナイザー、ラボラトリーホモジナイザー、コロイドミル、ジェットミル、ボールミル等があり、これらを単独もしくは組み合せて用いてもよい。
【0100】
次に、本発明の液体付与方法について説明する。
[液体付与方法]
本発明のインク組成物は、各種印刷法、インクジェット法、電子写真法等の様々な画像装置や半導体プロセス等のパターン形成装置に使用でき、この装置を用いた液体付与方法により描画することができる。本発明のインク組成物は、インクジェット法において用いることが特に好ましい。用いられるインクジェット法は、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式のような周知の方法であってもよい。また、コンティニュアス型またはオンデマンド型のいずれの方法を用いてもよい。また、本発明のインク組成物は、中間転写体にインクを印字した後、紙等の最終被記録媒体に転写する記録方式に用いることもできる。
【0101】
本発明の刺激応答性を有するインク組成物をインクジェット用インクとして用いる場合、本発明では、例えば、以下のような態様で使用することができる。以下の(a)から(d)の刺激によりインクを凝集することができる。
【0102】
(a)温度刺激に応答するインクとして用いる場合
インクタンク内のインクの温度と、吐出により付着した記録媒体上でのインクの温度との差による温度刺激により、本発明のインクジェット用インク組成物が相変化を起こし、急激に増粘あるいは不溶成分の凝集が起こる。
【0103】
(b)電磁波刺激に応答するインクとして用いる場合
インクタンク内を暗室とし、吐出により可視光にさらす方法、またはインクジェット記録装置内に設けた電磁波照射部から電磁波を照射する方法により電磁波刺激を与えることができる。その電磁波刺激により、本発明のインクジェット用インク組成物に含まれる重合官能基が重合し、増粘あるいは不溶成分の凝集が起こる。
【0104】
(c)pH変化による刺激に応答するインクとして用いる場合
インクが記録媒体に付着することにより、記録媒体の影響を受けてインクのpHが変化し、そのpH変化により、本発明のインクジェット用インク組成物が相変化を起こし、増粘あるいは不溶成分の凝集が起こる。
【0105】
(d)濃度変化による刺激に応答するインクジェット用インク組成物を用いた場合
インクタンク内のインクの濃度と、吐出されたインクに含まれる水および水性溶剤が蒸発または被記録媒体に吸収された後の濃度との差によるインクの濃度変化により、本発明のインクジェット用インク組成物が相変化を起こし、増粘あるいは不溶成分の凝集が起こる。
【0106】
これらのインクの特性の変性により、色にじみやフェザリングを改善することが可能であったり、優れた定着性を発現させることが可能である。なおインクの変性は上述した増粘あるいは不溶成分の凝集に限定されるものではない。
【0107】
また、刺激を与える方法については、様々な方法が適用し得る。好ましい一つの方法としては、刺激となる刺激付与物質を前述してきた刺激応答性のインクと混合または接触させる方法がある。例えば前記(c)のpH応答性インクに対して、相当するpHの組成物を混合する方法として、インクジェット法を適用することが可能である。特開昭64−63185号公報に記載されているように、インクジェットヘッドにより画像を形成する領域全面にわたって刺激となる刺激付与物質を打ち込むようにすることもできるし、特開平8−216392号公報に記載の方法のように刺激となる刺激付与物質の量を制御して、より優れた画像を形成することもできる。
【0108】
また、刺激となる刺激付与物質を染料あるいは顔料を含有するインクと兼用することも可能である。例えば、カラーインクジェット法において用いられるシアン−マゼンタ−イエロー−ブラック(CMYK)インクのいずれかに刺激を与えるインクを用い、CMYKインクの他のいずれかに刺激に応答するインクを使用することで色にじみを改善することが可能である。CMYKのいずれに刺激応答性インクを用い、他のいずれに刺激を与えるインクを用いるかについては、様々な組合せが可能であるが、本発明ではそのいずれの組合せを用いてもよく、組み合わせの選択を限定するものではない。また、刺激を与える組成物と刺激応答インクの種類としては前述した刺激応答のパターン全てで行なうことが可能であり、特に限定されるものではない。
【0109】
次に、本発明の液体付与装置について説明する。
[液体付与装置]
本発明のインクジェット用インク組成物を用いるインクジェット記録装置は、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式等のようなインクジェット記録装置を含む。
【0110】
図1に、インクジェット記録装置の概略的機能図を示す。50はインクジェット記録装置の中央処理ユニット(CPU)である。CPU50を制御するためのプログラムは、プログラムメモリ66に記憶されていてもよいし、あるいはいわゆるファームウェアとしてEEPROM(不図示)等の記憶手段に記憶されていてもよい。インクジェット記録装置は、記録データ作成手段(不図示、コンピュータなど)から、プログラムメモリ66に記録データを受容する。記録データは、記録すべき画像あるいは文字の情報そのものでもよいし、それら情報の圧縮されたものでもよいし、または符号化された情報であってもよい。圧縮または符号化された情報を処理する場合には、CPU50に伸長または展開を行わせて記録すべき画像あるいは文字の情報を得ることができる。Xエンコーダ62(例えば、X方向または主走査方向に関する)およびYエンコーダ64(例えば、Y方向または副走査方向に関する)を設けて、被記録媒体に対するヘッドの相対位置をCPU50に通知することができる。
【0111】
CPU50は、プログラムメモリ66、Xエンコーダ62およびYエンコーダ64の情報に基づいて、画像を記録するための信号をXモータ駆動回路52、Yモータ駆動回路54およびヘッド駆動回路60に送信する。Xモータ駆動回路52はX方向駆動モータ56を、Yモータ駆動回路54はY方向駆動モータ58をそれぞれ駆動し、ヘッド70を被記録媒体に対して相対的に移動させ、記録位置に移動させる。ヘッド駆動回路60は、ヘッド70が記録位置に移動した時点で、各種インク組成物(Y、M、C、K)あるいは刺激となる刺激付与物質の吐出を行わせるための信号をヘッド70に送信し、記録を行う。ヘッド70は、単色のインク組成物を吐出するためのものであってもよいし、複数種のインク組成物を吐出するためのものであってもよいし、あるいは刺激となる刺激付与物質を吐出する機能を併せて有していてもよい。
【0112】
また、本発明のインク組成物は、被記録媒体に直接インクを付着させる直接記録方式を用いる装置に用いることもできるし、潜像を形成した中間転写体にインクにより像形成した後、紙等の最終被記録媒体に転写する記録方式等を用いた間接記録装置にも用いることができる。また、直接記録方式による中間転写体を利用した装置にも適用することができる。
【0113】
次に、本発明の被記録媒体について説明する。
[被記録媒体]
前述のように刺激となる刺激付与物質を刺激応答性インクと混合または接触させることもできるが、あらかじめ被記録媒体の方に刺激を与える仕組みを施しておくことも可能である。例えば、pH応答性インクとして酸性応答性インクを用いて、酸性紙に記録を行う方法;刺激応答性インクとしてpH応答性インクを用い、熱、電磁波あるいは圧力の印加に応答してpHを変化させる物質を放出する被記録媒体に記録を行う方法;架橋または重合可能な官能基を含有する刺激応答性インクを用い、熱、電磁波あるいは圧力の印加に応答して架橋剤または重合開始剤を放出する被記録媒体に記録を行う方法などを挙げることができる。本発明では、被記録媒体はいずれの公知の形態であってもよい。例えば、普通紙、感熱紙、酸性紙等を挙げることができる。
【0114】
直接記録方式を用いる場合には、上記の被記録媒体を最終被記録媒体として用いる。一方、間接記録方式を用いる場合には、上記の被記録媒体を中間転写体として用いてもよいし、あるいは最終被記録媒体として用いてもよい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1
<イソブチルビニルエーテルとビフェニルオキシエチルビニルエーテル(IBVE−r−VEEtPhPh:Aブロック)と、ビフェニルオキシエチルビニルエーテルと2−メトキシエチルビニルエーテル(VEEtPhPh−r−MOVE:Bブロック)と、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチル(VEEtPhCOOEt:Cブロック)からなるトリブロックポリマー・ポリ[(IBVE−r−VEEtPhPh)−b−(VEEtPhPh−r−MOVE)−b−VEEtPhCOOEt]]の合成>(ここで、bはブロックポリマー、rはランダムポリマーであることを示す記号である)。
【0116】
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃に加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、IBVE2.5mmol(ミリモル)、VEEtPhPhを2.5mmol、酢酸エチル16mmol、1−イソブトキシエチルアセテート0.05mmol、及びトルエン11mlを加え、反応系を冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を0.2mmol加え重合を開始した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、Aブロックの重合の完了を確認した。
【0117】
次いで、Bブロック成分としてVEEtPhPh1.5mmol(ミリモル)、MOVEを1.0mmolのトルエン溶液を添加して、重合を続行した。GPCを用いるモニタリングによって、Bブロックの重合の完了を確認した後、5.0mmolの4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルをCブロック成分として添加して、重合を続行した。3時間後、重合反応を停止した。重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行った。反応混合物溶液をジクロロメタンにて希釈し、0.6mol/L塩酸で3回、次いで蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレーターで濃縮・乾固したものを真空乾燥させたものを、セルロースの半透膜を用いてメタノール溶媒中透析を繰り返し行い、モノマー性化合物を除去し、目的物であるトリブロックポリマーを得た。
【0118】
化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。Mn=19800、Mw/Mn=1.34であった。重合比はA:B:C=100:50:10であった。Aブロック内の2種のモノマーの重合比は50:50であった。Bブロック内の2種のモノマーの重合比は30:20であった。すなわち、疎水性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造と、前記非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造を含有するブロックセグメントにおいて、非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量が40mol%であった。
【0119】
さらにここで得られたトリブロックポリマーをジメチルフォルムアミドと水酸化ナトリウム水混合溶液中で加水分解することで、Cブロック成分中の4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルが加水分解され、ナトリウム塩化されたトリブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。
【0120】
さらに水分散液中で0.1Nの塩酸で中和してC成分中の4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸がフリーのカルボン酸になったトリブロックポリマー、ポリ[(IBVE−r−VEEtPhPh)−b−(VEEtPhPh−r−MOVE)−b−VEEtPhCOOH]]を得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。
【0121】
また、上記Bブロック成分のVEEtPhPhおよびMOVEの添加量を1.5mmol/1.0mmolを、1.25mmol/1.25mmol、0.5mmol/4.5mmol(VEEtPhPh/MOVE)に代えて重合を行った。その他の合成条件は上記と同様である。化合物の同定はGPCとNMRにより行った。その結果、VEEtPhPhおよびMOVEの添加量が1.25mmol/1.25mmolの場合、Mn=21900、Mw/Mn=1.32、0.5mmol/4.5mmolの場合、Mn=26300、Mw/Mn=1.36であった。重合比は順にA:B:C=100:50:10、A:B:C=100:100:10であった。Bブロック内の2種のモノマーの重合比は順に25/25、10/90(VEEtPhPh/MOVE)であった。すなわちBブロック内の非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量は順に50mol%、90mol%であった。
【0122】
実施例2
実施例1で得た3種類ブロックポリマー化合物をそれぞれ26質量部と脂溶性染料オイルブルーN(商品名と同じ、アルドリッチ社製)を10質量部をジメチルフォルムアミドに共溶解し、蒸留水400質量部を用いてそれぞれ水相へ変換しインク組成物を得た。これに0.1N水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ0.1ml加えさらに超音波ホモジナイザーに10分間かけて、1時間放置した。pH試験紙ではいずれもpHが12であった。この分散液はいずれも非常に透明で青い色を呈していた。10日間放置したが、脂溶性染料は分離沈殿しなかった。
【0123】
以上の方法で得られた染料分散組成物中の分散粒子の平均粒径dおよび分散度指数μ/G2 を動的光散乱装置(DLS−7000、大塚電子株式会社製)を用いて測定した。pHを変えないため、同濃度の水酸化ナトリウム水溶液で100倍に薄めて測定した。動的光散乱装置(DLS−7000、大塚電子株式会社製)を用いて測定した場合、Bブロック内の2種のモノマーの重合比が30/20、25/25、10/90(VEEtPhPh/MOVE)であるブロックポリマー化合物の順(すなわちBブロック内の非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量は順に40mol%、50mol%、90mol%)に、平均粒径は83.4nm、87.0nm、93.8nm、分散度指数μ/G2 は0.08、0.08、0.09であった。
【0124】
比較例1
スチレンとエチレンオキサイドジブロック共重合体(数平均分子量10600、数平均分子量比36:70)、脂溶性染料としてオイルブルーNを用い、実施例2と同様の操作方法で、分散インクを作成した。青い色を呈しているものの強い白濁状態が観察された。平均粒径dは312nm、分散度指数μ/G2 が0.9であった。また、10日間放置したところ、脂溶性染料が一部分離沈殿した。
【0125】
実施例3
実施例2で得られたインク組成物をインクジェットプリンタ(BJF800、キヤノン社製)の印刷ヘッドに充填し、普通紙に100mm×100mmの正方形をベタで印字した。その際の裏写りを下記の基準で評価した。
◎:印字した画像の裏写りが全く観察されなかった。
○:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、裏写りの割合が5%未満。
△:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、裏写りの割合が5%以上30%未満。
×:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、裏写りの割合が30%以上100%以下。
【0126】
実施例2で得られたインク組成物に関して評価を行ったところ、Bブロック内の2種のモノマーの重合比30/20、25/25、10/90(VEEtPhPh/MOVE)であるブロックポリマー化合物の順(すなわちBブロック内の非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量は順に40mol%、50mol%、90mol%)に、評価結果は◎、◎、◎であった。
【0127】
比較例2
比較例1において脂溶性染料としてオイルブルーNを選択し調製したインク組成物を用いて、裏写りの評価を行った。インクジェットプリンタ(BJF800、キヤノン社製)の印刷ヘッドに充填し、前記インクジェットプリンタを用いて普通紙に記録した。評価基準は実施例3と同様に行った。その結果、評価結果は×であった。
【0128】
実施例4
実施例2で得られたインク組成物をインクジェットプリンタ(BJF800、キヤノン社製)の印刷ヘッドに充填し、普通紙に100mm×100mmの正方形をベタで印字した。その後、印字物を水に10秒浸した後、印字された画像について下記の基準で耐水性の評価を行った。
◎:画像にまったく滲みが観察されない。
○:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、滲みの割合が5%未満。
△:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、滲みの割合が5%以上30%未満。
×:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、滲みの割合が30%以上100%以下。
【0129】
実施例2で得られたインク組成物に関して評価を行ったところ、Bブロック内の2種のモノマーの重合比30/20、25/25、10/90(VEEtPhPh/MOVE)であるブロックポリマー化合物の順(すなわちBブロック内の非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量は順に40mol%、50mol%、90mol%)に、評価結果は◎、◎、◎であった。
【0130】
比較例3
比較例1において脂溶性染料としてオイルブルーNを選択し調製したインク組成物を用いて、耐水性の評価を行った。インクジェットプリンタ(BJF800、キヤノン社製)の印刷ヘッドに充填し、前記インクジェットプリンタを用いて普通紙に記録した。評価基準は実施例3と同様に行った。その結果、評価結果は×であった。
【0131】
実施例5
実施例2で得られたインク組成物をそれぞれインクジェットプリンタ(BJF800、キヤノン社製)の印刷ヘッドに充填し、50mm×50mmの正方形をベタで3分間連続して印字した。その後キャップ等をしない状態で10分間放置し、次いで再び50mm×50mmの正方形をベタで印字した際の、画像のかすれ、欠け等の割合を下記の基準で評価した。
◎:全くかすれ、欠けが無い。
○:50mm×50mmの正方形全体画像に対し、かすれ、欠けの割合が5%未満。
△:50mm×50mmの正方形全体画像に対し、かすれ、欠けの割合が5%以上30%未満。
×:50mm×50mmの正方形全体画像に対し、かすれ、欠けの割合が30%以上100以下。
【0132】
実施例2で得られたインク組成物に関して評価を行ったところ、Bブロック内の2種のモノマーの重合比30/20、25/25、10/90(VEEtPhPh/MOVE)であるブロックポリマー化合物の順(すなわちBブロック内の非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量は順に40mol%、50mol%、90mol%)に、評価結果は○、◎、◎であった。
【0133】
実施例6
実施例1で合成された3種類のブロックポリマー化合物におけるA成分のモノマーおよびB成分のVEEtPhPhの代わりに、20℃以下で親水性を示し20℃(水和する上限の温度)より高い温度で疎水性を示す2−エトキシエチルビニルエーテル(EOVE)をそれぞれ等モル用い、それぞれ合成を行った。合成した化合物の同定は、GPCとNMRより行った。
【0134】
Bブロック内の2種のモノマーの重合比が30/20、25/25、10/90(VEEtPhPh/EOVE)の順(すなわちBブロック内の非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量は順に40mol%、50mol%、90mol%)に、それぞれ、Mn=21700、23800、28000、Mw/Mn=1.38、1.36、1.34であった。重合比は順に、A:B:C=100:50:10、A:B:C=100:50:10、A:B:C=100:100:10であった。
【0135】
また得られたトリブロックポリマー26質量部と脂溶性染料オイルブルーN(商品名同じ、アルドリッチ社製)10質量部をそれぞれジメチルフォルムアミドに共溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換しインク組成物を得た。10日間放置したが、すべてのインク組成物においてオイルブルーは分離沈殿しなかった。
【0136】
また、この染料分散組成物をそれぞれ10℃に冷却し、高分子ミセルを崩壊させ、高分子を水に溶解させたところ、すべての染料分散組成物において染料と染料溶液が分離し、水層は無色化した。このことにより色材が内包されていたことを確認した。
【0137】
実施例7
<2−(4−メチルベンゼンオキシ)エチルビニルエーテル(TolOVE:Aブロック)と、2−(4−メチルベンゼンオキシ)エチルビニルエーテルとジエチレングリコールメチルビニルエーテル(TolOVE−r−MOEOVE:Bブロック)と、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチル(VEEtPhCOOEt:Cブロック)からなるトリブロックポリマー・ポリ[TolOVE−b−(TolOVE−r−MOEOVE)−b−VEEtPhCOOEt]]の合成>(ここで、bはブロックポリマー、rはランダムポリマーであることを示す記号である)。
【0138】
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃に加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、TolOVE5.0mmol(ミリモル)、酢酸エチル16mmol、1−イソブトキシエチルアセテート0.05mmol、及びトルエン11mlを加え、反応系を冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を0.2mmol加え重合を開始した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、Aブロックの重合の完了を確認した。
【0139】
次いで、Bブロック成分としてTolOVE1.5mmol(ミリモル)、MOEOVEを1.0mmolのトルエン溶液を添加して、重合を続行した。GPCを用いるモニタリングによって、Bブロックの重合の完了を確認した後、5.0mmolの4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルをCブロック成分として添加して、重合を続行した。3時間後、重合反応を停止した。重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行った。反応混合物溶液をジクロロメタンにて希釈し、0.6mol/L塩酸で3回、次いで蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレーターで濃縮・乾固したものを真空乾燥させたものを、セルロースの半透膜を用いてメタノール溶媒中透析を繰り返し行い、モノマー性化合物を除去し、目的物であるトリブロックポリマーを得た。
【0140】
化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。Mn=24100、Mw/Mn=1.27であった。重合比はA:B:C=100:50:10であった。Bブロック内の2種のモノマーの重合比は30:20であった。すなわち、疎水性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造と、前記非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造を含有するブロックセグメントにおいて、非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量が40mol%であった。
【0141】
さらにここで得られたトリブロックポリマーをジメチルフォルムアミドと水酸化ナトリウム水混合溶液中で加水分解することで、Cブロック成分中の4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルが加水分解され、ナトリウム塩化されたトリブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。
【0142】
さらに水分散液中で0.1Nの塩酸で中和してC成分中の4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸がフリーのカルボン酸になったトリブロックポリマー、ポリ[TolOVE−b−(TolOVE−r−MOEOVE)−b−VEEtPhCOOH]]を得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。
【0143】
また、上記Bブロック成分のTolOVEおよびMOEOVEの添加量を1.5mmol/1.0mmolを、1.25mmol/1.25mmol、0.5mmol/4.5mmol(TolOVE/MOEOVE)に代えて重合を行った。その他の合成条件は上記と同様である。化合物の同定はGPCとNMRにより行った。その結果、TolOVEおよびMOEOVEの添加量が1.25mmol/1.25mmolの場合、Mn=24600、Mw/Mn=1.25、0.5mmol/4.5mmolの場合、Mn=31500、Mw/Mn=1.28であった。重合比は順に、A:B:C=100:50:10、A:B:C=100:100:10であった。Bブロック内の2種のモノマーの重合比は順に25/25、10/90(TolOVE/MOEOVE)であった。
【0144】
実施例8
実施例7で得た3種類ブロックポリマー化合物をそれぞれ26質量部と脂溶性染料オイルブルーN(商品名と同じ、アルドリッチ社製)を10質量部をジメチルフォルムアミドに共溶解し、蒸留水400質量部を用いてそれぞれ水相へ変換しインク組成物を得た。これに0.1N水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ0.1ml加えさらに超音波ホモジナイザーに10分間かけて、1時間放置した。pH試験紙ではいずれもpHが12であった。この分散液はいずれも非常に透明で青い色を呈していた。10日間放置したが、脂溶性染料は分離沈殿しなかった。
【0145】
以上の方法で得られた染料分散組成物中の分散粒子の平均粒径dおよび分散度指数μ/G2 を動的光散乱装置(DLS−7000、大塚電子株式会社製)を用いて測定した。pHを変えないため、同濃度の水酸化ナトリウム水溶液で100倍に薄めて測定した。動的光散乱装置(DLS−7000、大塚電子株式会社製)を用いて測定した場合、Bブロック内の2種のモノマーの重合比が30/20、25/25、10/90(TolOVE/MOEOVE)であるブロックポリマー化合物の順(すなわちBブロック内の非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量は順に40mol%、50mol%、90mol%)に、平均粒径は81.2nm、80.5nm、85.0nm、分散度指数μ/G2 は0.08、0.08、0.09であった。
【0146】
実施例9
実施例8で得られたインク組成物をインクジェットプリンタ(BJF800、キヤノン社製)の印刷ヘッドに充填し、普通紙に100mm×100mmの正方形をベタで印字した。その際の裏写りを下記の基準で評価した。
◎:印字した画像の裏写りが全く観察されなかった。
○:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、裏写りの割合が5%未満。
△:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、裏写りの割合が5%以上30%未満。
×:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、裏写りの割合が30%以上100%以下。
【0147】
実施例8で得られたインク組成物に関して評価を行ったところ、Bブロック内の2種のモノマーの重合比30/20、25/25、10/90(TolOVE/MOEOVE)であるブロックポリマー化合物の順(すなわちBブロック内の非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量は順に40mol%、50mol%、90mol%)に、評価結果は◎、◎、◎であった。
【0148】
実施例10
実施例8得られたインク組成物をインクジェットプリンタ(BJF800、キヤノン社製)の印刷ヘッドに充填し、普通紙に100mm×100mmの正方形をベタで印字した。その後、印字物を水に10秒浸した後、印字された画像について下記の基準で耐水性の評価を行った。
◎:画像にまったく滲みが観察されない
○:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、滲みの割合が5%未満。
△:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、滲みの割合が5%以上30%未満。
×:100mm×100mmの正方形全体画像に対し、滲みの割合が30%以上100%以下。
【0149】
実施例8で得られたインク組成物に関して評価を行ったところ、Bブロック内の2種のモノマーの重合比30/20、25/25、10/90(TolOVE/MOEOVE)であるブロックポリマー化合物の順(すなわちBブロック内の非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量は順に40mol%、50mol%、90mol%)に、評価結果は◎、◎、◎であった。
【0150】
実施例11
実施例8で得られたインク組成物をそれぞれインクジェットプリンタ(BJF800、キヤノン社製)の印刷ヘッドに充填し、50mm×50mmの正方形をベタで3分間連続して印字した。その後キャップ等をしない状態で10分間放置し、次いで再び50mm×50mmの正方形をベタで印字した際の、画像のかすれ、欠け等の割合を下記の基準で評価した。
◎:全くかすれ、欠けが無い。
○:50mm×50mmの正方形全体画像に対し、かすれ、欠けの割合が5%未満。
△:50mm×50mmの正方形全体画像に対し、かすれ、欠けの割合が5%以上30%未満。
×:50mm×50mmの正方形全体画像に対し、かすれ、欠けの割合が30%以上100以下。
【0151】
実施例8で得られたインク組成物に関して評価を行ったところ、Bブロック内の2種のモノマーの重合比30/20、25/25、10/90(TolOVE/MOEOVE)であるブロックポリマー化合物の順(すなわちBブロック内の非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量は順に40mol%、50mol%、90mol%)に、評価結果は○、◎、◎であった。
【0152】
実施例12
実施例7で合成された3種類のブロックポリマー化合物におけるA成分のモノマーおよびB成分のTolOVEの代わりに、20℃以下で親水性を示し20℃(水和する上限の温度)より高い温度で疎水性を示す2−エトキシエチルビニルエーテル(EOVE)をそれぞれ等モル用い、それぞれ合成を行った。合成した化合物の同定は、GPCとNMRより行った。Bブロック内の2種のモノマーの重合比が30/20、25/25、10/90(EOVE/MOEOVE)の順(すなわちBブロック内の非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量は順に40mol%、50mol%、90mol%)に、それぞれ、Mn=18100、18600、27900、Mw/Mn=1.32、1.30、1.35であった。重合比は順に、A:B:C=100:50:10、A:B:C=100:50:10、A:B:C=100:100:10であった。
【0153】
また得たトリブロックポリマー26質量部と脂溶性染料オイルブルーN(商品名同じ、アルドリッチ社製)10質量部をそれぞれジメチルフォルムアミドに共溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換しインク組成物を得た。10日間放置したが、すべてのインク組成物においてオイルブルーは分離沈殿しなかった。
【0154】
また、この染料分散組成物をそれぞれ10℃に冷却し、高分子ミセルを崩壊させ、高分子を水に溶解させたところ、すべての染料分散組成物において染料と染料溶液が分離し、水層は無色化した。このことにより色材が内包されていたことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明のブロックポリマー化合物は、色材を溶媒に良好に分散することができるので、該ブロックポリマー化合物を用いて、機能性物質が顔料または染料で、溶媒が水で、顔料または染料の分散性が良好なインク組成物に利用することができる。
【0156】
本発明のインク組成物は、被記録媒体へ印字した際、裏写りが抑制され、耐水性が向上し、溶媒中における顔料または染料の機能性物質の分散性安定性がよいインクジェット用記録方法および記録装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明の画像記録装置の概略の機構を示す図である。
【符号の説明】
【0158】
20 インクジェット記録装置
50 CPU
52 Xモータ駆動回路
54 Yモータ駆動回路
56 X方向駆動モータ
58 Y方向駆動モータ
60 ヘッド駆動回路
62 Xエンコーダ
64 Yエンコーダ
66 プログラムメモリ
70 ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つ以上のブロックセグメントを有するブロックポリマー化合物であって、該ブロックポリマー化合物の少なくとも1つのブロックセグメントが疎水性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造と、親水性を示し非イオン性である少なくとも1種類の繰り返し単位構造を含有することを特徴とするブロックポリマー化合物。
【請求項2】
前記ブロックポリマー化合物が両親媒性であることを特徴とする請求項1に記載のブロックポリマー化合物。
【請求項3】
前記ブロックポリマー化合物が、疎水性を示すブロックセグメントと親水性を示すブロックセグメントを含有することを特徴とする請求項1または2に記載のブロックポリマー化合物。
【請求項4】
前記ブロックポリマー化合物が3種以上のブロックセグメントを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のブロックポリマー化合物。
【請求項5】
ポリアルケニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有する請求項1乃至4のいずれかの項に記載のブロックポリマー化合物。
【請求項6】
ポリビニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有する請求項1乃至5のいずれかの項に記載のブロックポリマー化合物。
【請求項7】
前記疎水性を示す繰り返し単位構造が下記の一般式(1)で表され、前記親水性を示し非イオン性である繰り返し単位構造が下記の一般式(2)で表される繰り返し単位である請求項1乃至6のいずれかの項に記載のブロックポリマー化合物。
【化1】

(式中、R1 は炭素数1から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−(CH(R2 )−CH(R3 )−O)p −R4 および−(CH2m −(O)n −R4 から選ばれ、芳香族環中の水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基と、また芳香族環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。pは1から18の整数、mは1から36の整数、nは0または1である。R2 、R3 はそれぞれ独立に水素原子もしくはCH3 である。R4 は炭素数4から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CO−CH=CH2 または−CO−C(CH3 )=CH2 、−CH2 COOR5 であり、炭素原子に結合している水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香族環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。また、R4は炭素数3の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基であり、pは1から3の整数であり、炭素原子に結合している水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香族環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。R5 は炭素数1から4のアルキル基である。また、−Phはフェニル基、−Pyrはピリジル基、−Ph−Phはビフェニル基、および−Ph−Pyrはピリジルフェニル基を表す。ピリジル基、ビフェニル基およびピリジルフェニル基は位置異性体であってもよい。)
【化2】

(式中、R6 は水素原子あるいは−(CH(R7 )−CH(R8 )−O)p −R9 および−(CH2m −(O)n −R9 から選ばれる。pは1から18の整数、mは1から36の整数、nは0または1である。R7 、R8 はそれぞれ独立に水素原子もしくは−CH3 である。R9 は水素原子、炭素数1から2までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を表す。またR9は炭素数3の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基であり、pは4から18の整数である。)
【請求項8】
前記疎水性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造と、前記親水性を示し非イオン性である少なくとも1種類の繰り返し単位構造を含有するブロックセグメントにおいて、非イオン性を示す少なくとも1種類の繰り返し単位構造の含有量が50mol%以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかの項に記載のブロックポリマー化合物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のブロックポリマー化合物、溶媒または分散媒、および機能性物質を含有することを特徴とするポリマー含有組成物。
【請求項10】
前記機能性物質が前記ブロックポリマー化合物に内包されている請求項9記載のポリマー含有組成物。
【請求項11】
前記機能性物質が色材である請求項9または10に記載のポリマー含有組成物。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかに記載のポリマー含有組成物からなることを特徴とするインク組成物。
【請求項13】
前記インク組成物がインクジェット用インク組成物である請求項12に記載のインク組成物。
【請求項14】
請求項12または13に記載のインク組成物を使用することを特徴とする液体付与方法。
【請求項15】
インク吐出部からインクを吐出して被記録媒体上に付与して記録を行う液体付与方法において、前記インクが請求項12または13に記載のインク組成物であることを特徴とする液体付与方法。
【請求項16】
前記インク吐出部からのインクの吐出はインクに熱エネルギーを作用させて行う請求項15に記載の液体付与方法。
【請求項17】
請求項14乃至16のいずれかの項に記載の液体付与方法に用いる液体付与装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−307066(P2006−307066A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132954(P2005−132954)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】