説明

ブロック施工法

【課題】水中におけるブロックの設置作業を正確かつ安全に行うことのできるブロック施工法を提供する。
【解決手段】ブロック吊り具10の支持部材11のワイヤ係止部に係止されたワイヤ20を、クレーン60の昇降部材22のフック22aに引っ掛け、ブロック吊り具10全体が昇降及び移動できるようにする。そして、ブロック吊り具10の複数の吊り下げ部材21に対して複数のブロック30を一つずつ連結した後、クレーン60の昇降部材22を上昇させれば、ブロック吊り具10とともに複数のブロック30が持ち上げられる。次に、クレーン60を操作して複数のブロック30を設置予定面Pの水面W1上まで移動させた後、昇降部材22を繰り出してブロック吊り具10を徐々に水中に向かって下降させれば、複数のブロック30を水W中の設置予定面P上の正確な位置に設置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川堤防の護岸工事等において、水中の設置予定面にブロックを設置する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
河川堤防の護岸工事等におけるブロック施工法としては、従来、施工区域である護岸前面に仮仕切工を設け、護岸と仮仕切工との間に滞留する水をポンプで仮仕切工の外へ排出し(水替え)、当該施工区域内を陸上と同じ状態に保ちながらブロック設置等の作業を行うというのが一般的である。
【0003】
一方、河川堤防や海岸等の浸食を防止するため、従来、様々な方式の護岸工事が施工されているが、近年は浸食防止のみを目的とした護岸工事は敬遠され、優れた浸食防止機能を備え、且つ、自然環境との調和性に優れた護岸技術が求められている。このような要請に応えるべく、本出願人は、相互に連結可能な連結部を有する複数のブロックを使用した護岸技術を提案している(例えば、特許文献1,2。)。
【0004】
特許文献1,2に記載された護岸技術を施工することにより、曲がりの多い河川堤防等においても、浸食を有効に防止するとともに自然環境や水辺の生態系との調和性にも優れた護岸構造を構築することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−3962号公報
【特許文献2】特開平11−315527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のブロック施工法の場合、施工現場の地形や水流等の状況により仮仕切工の設置が極めて困難であったり、「水替え」に起因して現場周辺の井戸水が涸れたりすることがある。また、「水替え」が施工現場周辺の地域や水域の生態系へ及ぼす影響も無視できないことがある。さらに、仮仕切工の設置、撤収等には多大な資材と労力が費やされている。このため、「水替え」の不要なブロック施工法の要請が高まっている。
【0007】
一方、特許文献1,2に記載されたコンクリートブロックを用いて護岸工事を施工する場合、特許文献1の図4に記載された吊具5を利用してコンクリートブロックの敷設作業が行われている。この吊具5は、I形鋼材等で形成された支持枠41と、支持枠41に所定間隔で設けられた複数のブロック挟着具42と、を備えている。コンクリートブロック2の重心部を複数のブロック挟着具でそれぞれ把持し、ワイヤを介して吊具5全体をクレーン車によって吊り上げて搬送することにより、複数のコンクリートブロック2を施工現場に設置することができる。
【0008】
吊具5に設けられた複数のブロック挟着具42はそれぞれコンクリートブロック2を動かないように把持する開閉機構を備えているため、強固な把持機能を有する点において優れている。しかしながら、コンクリートブロック2の設置予定面に凹凸等があって、吊り下げた複数のコンクリートブロック2が略水平に同時接地しないような場合、傾斜姿勢で接地したコンクリートブロック2は重力の作用で低い方へ傾こうとする。このとき、コンクリートブロックに生じた傾動力がブロック挟着具42に作用すると、ブロック挟着具42の開放動作に支障が生じ、接地後のコンクリートブロック2からの挟着具42の離脱が困難となる。
【0009】
従って、陸上から凹凸の状況などを目視確認できない水中の接地予定面に、吊具5を用いてコンクリートブロック2を設置するのは極めて困難である。また、吊具5で把持した複数のコンクリートブロック2が水中に没すると、それぞれのコンクリートブロック2の正確な位置は陸上から目視確認できなくなるため、設置予定面上の正確な位置にコンクリートブロック2を接地させることは不可能に近い。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、水中におけるブロックの設置作業を正確かつ安全に行うことのできるブロック施工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のブロック施工法は、クレーンなどの昇降装置で保持して移動可能な支持部材と、複数のブロックを一つずつ着脱可能に吊り下げるため前記支持部材に並列状に設けられた可撓性を有する複数の吊り下げ部材と、を備えたブロック吊り具を使用し、
前記吊り下げ部材に吊り下げられたブロックを水中の設置予定面に設置することを特徴とする。
【0012】
このような構成において、クレーンなどの昇降装置で保持された支持部材に設けられた複数の吊り下げ部材にそれぞれブロックを吊り下げると、可撓性を有する吊り下げ部材はブロックの重さにより鉛直方向に延びた状態に保たれる。このため、吊り下げられた複数のブロックを水没させても、水面から出ている各吊り下げ部材を目視することにより、水中における各ブロックの位置を陸上から把握することができる。従って、各吊り下げ部材の位置を目視確認しながら、クレーンなどの昇降装置を作動させれば、それぞれのブロックを水中の設置予定面に正確に設置することができる。また、作業者は、水中における各ブロックの位置を常に目視確認できるため、作業中の安全性も確保することができる。
【0013】
ここで、前記設置予定面と前記ブロックとの間に敷設されるシート材を、前記吊り下げ部材に吊り下げられたブロックに貼着した状態で前記設置予定面に設置することが望ましい。
【0014】
このような構成とすれば、浸食防止などの目的で、設置予定面とブロックとの間に敷設されるシート材を、ブロックの設置作業と同時に敷設することができるため、作業効率が大幅に向上する。
【0015】
この場合、前記設置予定面に敷設された前記シート材同士を繋ぐための接合手段を当該シート材に設けることが望ましい。このような構成とすれば、シート材同士を繋ぐための接着剤などを塗布する作業を行う手間が省けるため、省力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、水中におけるブロックの設置作業を正確かつ安全に行うことのできるブロック施工法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて、説明する。図1は本発明の実施の形態であるブロック施工法におけるブロック吊り具の使用状態を示す斜視図、図2は図1に示すブロック吊り具の使用状態の正面図、図3は本実施形態のブロック施工法で使用するコンクリートブロックの斜視図である。
【0018】
図1,図2に示すように、ブロック吊り具10の支持部材11のワイヤ係止部16に係止されたワイヤ20を、クレーン60(図13参照)の昇降部材22のフック22aに引っ掛けて吊り下げれば、ブロック吊り具10全体が昇降及び移動できる状態となる。そして、複数の連接部材12をそれぞれ支持部材11の適切な位置に配置し、固定ボルト15を締め付けて固定する。次に、複数の連接部材12から垂下された吊り下げ部材21下端のブロック連結具25(図4参照)を、図3に示すブロック30のアンカー35の頭部35aにそれぞれ連結する。
【0019】
図1,図2に示すように、複数のブロック30はそれぞれ透水性、通気性を有するシート材40上に接着剤を用いて接着されている。また、ブロック30が接着された側のシート材40の辺縁部と対向する側の辺縁部のシート材40上面には、後工程において、複数のブロック30とともに敷設されるシート材40を接着するための接着剤層41が設けられている。
【0020】
図3に示すように、ブロック30は、平面視形状が略T字状のコンクリート製のブロックであり、T字の垂直部分に回転支承用溝部31が形成され、T字の水平部分の左右両端下面にそれぞれ回転支承用突起32が形成されている。また、T字の垂直部分と水平部分との交差部分の上面及び下面にそれぞれ段差部36,33が形成されている。段差部36におけるブロック30の重心上に位置する部分に擂り鉢状の凹部34が形成され、この凹部34の底部にアンカー35が埋設されている。アンカー35は、その軸部35bがブロック30内に起立状に埋設され、その頭部35aが凹部34内に突出した状態にある。図1に示す吊り下げ部材21下端のブロック連結具25(図4参照)を、アンカー35の頭部35aに着脱可能に連結することができる。
【0021】
ブロック吊り具10の複数の吊り下げ部材21に対して複数のブロック30を一つずつ連結した後、クレーン60(図13参照)を作動させて昇降部材22を上昇させれば、ブロック吊り具10とともに複数のブロック30が持ち上げられる。そして、クレーン60を操作して、複数のブロック30を設置予定面P(図13参照)の上方まで移動させた後、昇降部材22を下降させ、後述する施工手順に沿って、複数のブロック30を水中に降ろせば、設置予定面Pに設置することができる。
【0022】
ここで、図4〜図10に基づいてブロック吊り具10の構造、機能について説明する。図4(a)は図1に示すブロック吊り具の平面図、同(b)は前記ブロック吊り具の正面図、図5は図4に示すブロック吊り具の一部省略側面図、図6〜図8はそれぞれ図4(b)に示すブロック吊り具の一部省略拡大図、図9は図2に示すブロック吊り具の使用状態を示す一部拡大正面図、図10はブロック吊り具のその他の実施形態を示す一部拡大正面図である。
【0023】
図4に示すように、ブロック吊り具10は、ワイヤ20で吊り下げられ水平保持される直線状の支持部材11と、支持部材11の下面側にその長手方向に沿って隙間を隔てて配列された複数の連接部材12と、連接部材12の下面側に垂下された吊り下げ部材21と、を備えている。支持部材11はI形鋼材等で形成され、その上方のフランジ11fに、ワイヤ係止部16、フォーク係合部17及びフック18がそれぞれ左右一対ずつ設けられている。
【0024】
支持部材11の下方のフランジ11gには複数の連接部材12が、支持部材11の長手方向に沿ってスライド可能に装着され、これらの連接部材12には、吊り下げ部材21を係止するための係止具13と、連接部材12を支持部材11の所定位置に固定するためのY字状の固定ボルト15と、連接部材12の位置を示すためのカーソル14と、吊り下げ部材21を一時的に引っ掛けるためのJ字状フック26と、が設けられている。ブロック吊り下げ部材21の下端にはブロック連結具25が取り付けられている。連接部材12を支持部材11の長手方向に沿ってスライドさせ、その固定位置を変更することにより、ブロック吊り下げ部材21に吊り下げられたブロック30の間隔を調整することができる。このため、複数のブロック30の間隔を施工条件に適した寸法に設定することができる。
【0025】
図5,図6に示すように、固定ボルト15は連接部材12から支持部材11のウェブ11wに向かって螺合されている。図6中の円弧状の矢線で示す正転・逆転方向に固定ボルト15を回転させると、その先端部15aがウェブ11wに接触、離隔し、連接部材12が支持部材11に係止、解除される。また、連接部材12の下面の係止具13には係止孔13aが設けられ、この係止孔13aに着脱可能な連結具27を介して吊り下げ部材21が垂下状に取り付けられている。本実施形態では吊り下げ部材21としてチェーンを使用しているが、これに限定するものではないので、可撓性を有するワイヤ、線材、紐状体等を使用することもできる。
【0026】
図6に示すように、フォーク係合部17には、フォークリフト(図示せず)の昇降フォークを挿入係合させるための四角筒状の係合孔17aが設けられている。図7に示すように、ワイヤ係止部16にはそれぞれワイヤ20(図1参照)を係止するためのワイヤ係止孔16aが設けられている。図2,図5及び図8に示すように、支持部材11の左右両端の上方のフランジ11fには、ロープ37(図1参照)やワイヤ等を係止するための一対のU字状フック18が起立状に設けられている。
【0027】
一方、図9に示すように、吊り下げ部材21で吊り下げられた複数のブロック30に着脱可能に係合する整列部材50を使用することもできる。整列部材50は、円筒状の主軸52と、主軸52の長手方向に沿って移動可能に取り付けられた複数のストッパ51と、で構成されている。ストッパ51は、リング状の係止部51aと、係止部51aの外周にその半径方向に突設されたバー部材51cと、係止部51aを主軸52に係脱させるための係止ボルト51bと、で構成されている。複数のストッパ51の係止部51aに主軸52を挿通させることにより整列部材50が構成されている。
【0028】
図9に示すように、吊り下げ部材21で吊り下げられた複数のブロック30上に、係止ボルト51bを緩めた状態で整列部材50を載置し、複数のバー部材51cをそれぞれ各ブロック30の側面に当接させ、所定間隔に調整した後、各係止ボルト51bを締め付ければ、ストッパ51が主軸52に固定され、複数のブロック30は所定間隔に配列された状態に保持される。この場合、図9に示すように、一つのブロック30の側面を二つのバー部材51cで挟持するようにセットすることが望ましいが、これに限定するものではない。また、係止ボルト51bを緩めれば、ストッパ51の位置を変更したり、整列部材50をブロック30から離脱させたりすることができる。
【0029】
図9に示すように、整列部材50を使用すれば、吊り下げ部材21で吊り下げられた複数のブロック30に整列部材50を係合させるだけで、複数のブロック30を一定の整列状態に保持することが可能となるため、複数のブロック30を水平な設置面に直列状に設置する場合の作業性が向上する。また、整列部材50を使用することにより、吊り下げ状態にあるブロック30同士が接触するのを回避することもできる。
【0030】
また、図10に示すように、吊り下げ部材21に吊り下げられたブロック30に係脱可能に係合する姿勢保持部材23をブロック吊り具10に装着することもできる。姿勢保持部材23は、連接部材12に支持部材11と平行に設けられた支軸23aと、支軸23aに回動自在に軸支された一対の回動アーム23bと、回動アーム23bの先端に設けられた複数の係止部材23cに挟持された弾性体23dと、を備えている。弾性体23dの先端周縁部はブロック30上面の段差部36に係合する形状となっている。
【0031】
図10に示すように、姿勢保持部材23の支軸23aを中心に回動アーム23bを回動させることにより、係止部材23cの弾性体23dをブロック30の段差部36に係合、離脱させることができる。従って、必要に応じて、弾性体23dをブロック30の段差部36に係合させれば、吊り下げ部材21に吊り下げられたブロック30が搬送中に揺動したり、回動したりするのを防止することができる。このため、搬送中の作業性、安全性を高め、ブロック30同士の接触による損傷を防止することができる。また、姿勢保持部材23はブロック30に係脱可能であるため、ブロック30の接地前に姿勢保持部材23をブロック30から離脱させれば、ブロック30は揺動及び傾動可能な状態に復帰する。従って、設置予定面に沿った姿勢で接地でき、設置作業に支障はない。
【0032】
図10においては、姿勢保持部材23は、一つの連接部材12のみに取り付けられているが、これに限定するものではないので、二つ以上の連接部材12(例えば、両端に位置する連接部材12)にそれぞれ姿勢保持部材23を取り付けることもできる。また、必要に応じて、図9で示した整列部材50と姿勢保持部材23とを併用することもできる。
【0033】
次に、図1,図2及び図11〜図18に基づいて、ブロック施工法について説明する。なお、図11〜図18において図1〜図10に記載された符号と同符号を付した部分は、前述したブロック吊り具10等の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0034】
本実施形態のブロック施工法を実施する場合、その前段階として、図11,図12に示すように、施工現場である法面R1の整形が行われる。図11に示すように、バックホウ70のバケット70aを用いて法面R1および川底R2の荒整形が行われる。この場合、水深や法長に応じてロングアームのバックホウ70を使用することがある。また、荒整形作業中に河川の水Wが土砂などで濁るのを防止するため、施工現場を包囲するように汚濁防止フェンス(図示せず)を設けることが望ましい。
【0035】
バックホウ70による荒整形が終わったら、施工領域を囲むように立設された複数の支柱71,72と、法面R1および川底R2とに沿って単管丁張73,74が設けられる。そして、水W中の潜水士75が手に持った単管76を単管丁張73,74に沿って移動させながら法面R1の凹凸を探り、潜水士75とバックホウ70との共同作業により、仕上げ整形が行われる。
【0036】
次に、図1,図2及び図13に示すように、クレーン60に保持されたブロック吊り具10の支持部材11に垂下状に設けられた複数の吊り下げ部材21にそれぞれブロック30を一つずつ吊り下げると、可撓性を有する吊り下げ部材21はブロック30の重さにより鉛直方向に延びた状態に保たれる。従って、図13に示すように、吊り下げられた複数のブロック30を施工現場の水Wの中に没入させても、水面W1から出ている各吊り下げ部材21を目視することにより、水中における各ブロック30の位置を陸上から把握することができる。従って、各吊り下げ部材21の位置を目視確認しながら、クレーン60の昇降部材22を繰り出してブロック吊り具10を徐々に下降させれば、それぞれのブロック30を水W中の設置予定面Pに正確に設置することができる。
【0037】
ブロック吊り具10が水没するまで下降し、図14に示す水面W1が水面W2の位置にきたときは、水面W1から上方へ突出する標示部材19及びその目盛19aを見ることにより、ブロック30の存在位置と深さとを確認しながら、設置予定面Pに設置することができる。
【0038】
複数のブロック30が設置予定面Pに設置されたら、吊り下げ部材21が撓む程度までブロック吊り具10を下降させた後、ブロック連結具25(図4参照)をそれぞれブロック30のアンカー35の頭部35a(図3参照)から離脱させれば設置作業が完了する。このとき、図13に示すように、水Wの中で待機している潜水士Sが、新たに設置したブロック30と既設のブロック30との連結作業等を行う。
【0039】
ブロック吊り具10の吊り下げ部材21に吊り下げられた複数のブロック30はそれぞれ揺動及び傾動可能な状態に保たれるため、ブロック30の設置予定面Pに傾斜や凹凸等の不陸があっても、吊り下げられた複数のブロック30はそれぞれ設置面に沿った傾斜姿勢で接地させることができる。また、傾斜姿勢で接地したブロック30から吊り下げ部材21に加わる傾動力は、吊り下げ部材21の撓みによって解消されるため、ブロック30から吊り下げ部材21が離脱不能となることもない。従って、ブロック30の設置作業を効率良く、安全に行うことができる。
【0040】
ブロック吊り具10においては、支持部材11に沿って連接部材12を移動させることにより、複数の吊り下げ部材21の間隔を変更することができるため、それぞれの吊り下げ部材21に吊り下げられた複数のブロック30の間隔も変更可能である。このため、施工条件に適したブロック間隔に設定することができ、施工現場への適応性に優れている。なお、図1,図2に示すように、本実施形態においてはブロック吊り具10に六個のブロック30を吊り下げているが、これに限定しないので、施工条件に応じて、連接部材12の個数を増減したり、支持部材11の長さを変更したりすることにより、ブロック30の吊り下げ個数を変更することができる。
【0041】
また、図1,図2に示すように、ブロック吊り具10には、支持部材11より上方に起立する標示部材19が支持部材11の左右両端に設けられている。従って、図14に示すように、支持部材11が水W中に没しても、これより上方に起立する標示部材19が水面W1から突出するため、水W中における支持部材11の位置を目視確認することにより、複数のブロック30を正確な位置に配置することができる。また、図14に示すように、標示部材19には複数の目盛19aが付設されているため、水W中における支持部材11の深さ方向の位置も目視確認することができる。
【0042】
一方、図1,図13に示すように、支持部材11両端のフック18に係止されたロープ37を、陸上に居る作業者Tが手で持って操作することにより、水平方向の位置や姿勢の微調整を行うこともできる。このように、クレーンの運転士(図示せず)や陸上に居る作業者Tは、吊り下げ部材21及び標示部材19を目視することにより、水W中における各ブロック30の位置を確認しながら設置作業を行うことができるため、ブロック30を設置予定面P上の正確な位置に設置することができ、作業中の安全性も優れている。
【0043】
本実施形態においては、図13,図15に示すように、河川堤防Rの高い位置に設置したブロック30b,30cを止め杭61で地山に係止し、ブロック30cから水W中に向かって順番にブロック30を設置して互いに連結していくことにより、ブロック連結体30Xを形成している。即ち、図15,図16に示す矢線62方向に沿ってブロック30を設置していくことによってブロック連結体30Xが構築されている。
【0044】
そして、図15,図16に示すブロック連結体30Xにおいて、河川堤防Rから最も離れた水W中には図17に示すブロック30eを設置し、ブロック連結体30Xの矢線62に沿った側縁部分には図18に示すブロック30s,30tを設置している。これにより、矢線62,63方向の周縁部分の凹凸を少なくすることができる。なお、ブロック30を設置していく方向は前述の方向に限定するものではないので、図19,図20の矢線64の方向に設置していくことによってブロック連結体30Yを構築することもできる。この場合、図20に示すように、ブロック30,30s,30tの配置姿勢は、図14に示す形態から180度回転させた状態となる。
【0045】
本実施形態においては、図1,図13に示すように、浸食防止の目的で、設置予定面Pとブロック30との間に敷設されるシート材40を、吊り下げ部材21に吊り下げられたブロック30の底面に予め貼着した状態で設置予定面Pに設置している。これにより、シート材40の敷設作業を、ブロック30の設置作業と同時に行うことができるため、作業効率が大幅に向上する。
【0046】
また、図1に示すように、設置予定面Pに敷設されたシート材40同士を繋ぐための接合手段である接着剤層41を当該シート材40の辺縁部に設けているため、シート材40同士を繋ぐための接着剤などの塗布作業が不要となり、省力化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のブロック施工法は、河川堤防の護岸工事等に伴う水中へのブロック設置作業において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態であるブロック施工法におけるブロック吊り具の使用状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すブロック吊り具使用状態の正面図である。
【図3】本実施形態のブロック施工法で使用するコンクリートブロックの斜視図である。
【図4】(a)は図1に示すブロック吊り具の平面図、(b)は前記ブロック吊り具の正面図である。
【図5】図4に示すブロック吊り具の一部省略側面図である。
【図6】図4(b)に示すブロック吊り具の一部省略拡大図である。
【図7】図4(b)に示すブロック吊り具の一部省略拡大図である。
【図8】図4(b)に示すブロック吊り具の一部省略拡大図である。
【図9】図2に示すブロック吊り具の使用状態を示す一部拡大正面図である。
【図10】ブロック吊り具のその他の実施形態を示す一部拡大正面図である。
【図11】本発明の実施の形態であるブロック施工法を実施する前の法面整形工程を示す垂直断面図である。
【図12】図11に示す法面整形工程の斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態であるブロック施工法を示す模式図である。
【図14】水中における施工状態を示す正面図である。
【図15】施工後のブロック配列状態を示す断面図である。
【図16】施工後のブロック配列状態を示す平面図である。
【図17】図16に示すエンドブロックの斜視図である。
【図18】図16に示すサイドブロックの斜視図である。
【図19】ブロック施工法のその他の実施形態を示す断面図である。
【図20】図19に示すブロック配列状態の平面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 ブロック吊り具
11 支持部材
11f,11g フランジ
11w ウェブ
12 連接部材
13 係止具
13a 係止孔
14 カーソル
15 固定ボルト
15a 先端部
16 ワイヤ係止部
16a ワイヤ係止孔
17 フォーク係合部
17a 係合孔
18,22a フック
19 標示部材
19a 目盛
20 ワイヤ
21 吊り下げ部材
22 昇降部材
23 姿勢保持部材
23a 支軸
23b 回動アーム
23c 係止部材
23d 弾性体
25 ブロック連結具
26 J字状フック
27 連結具
30,30a,30b,30c,30e,30s,30t ブロック
30X,30Y ブロック連結体
31 回転支承用溝部
32 回転支承用突起
33,36 段差部
34 凹部
35 アンカー
35a 頭部
35b 軸部
37 ロープ
40 シート材
41 接着剤層
50 整列部材
51 ストッパ
51a 係止部
51b 係止ボルト
51c バー部材
52 主軸
60 クレーン
61 止め杭
62,63,64 矢線
70 バックホウ
70a バケット
71,72 支柱
73,74 単管丁張
76 単管
P 設置予定面
R 河川堤防
R1 法面
R2 川底
75,S 潜水士
T 作業者
W 水
W1,W2 水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンなどの昇降装置で保持して移動可能な支持部材と、複数のブロックを一つずつ着脱可能に吊り下げるため前記支持部材に並列状に設けられた可撓性を有する複数の吊り下げ部材と、を備えたブロック吊り具を使用し、
前記吊り下げ部材に吊り下げられたブロックを水中の設置予定面に設置することを特徴とするブロック施工法。
【請求項2】
前記設置予定面と前記ブロックとの間に敷設されるシート材を、前記吊り下げ部材に吊り下げられたブロックに貼着した状態で前記設置予定面に設置することを特徴とする請求項1記載のブロック施工法。
【請求項3】
前記設置予定面に敷設された前記シート材同士を繋ぐための接合手段を当該シート材に設けたことを特徴とする請求項2記載のブロック施工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−52206(P2009−52206A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217369(P2007−217369)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(391024984)水工技研株式会社 (6)
【Fターム(参考)】