説明

ブローバック機能を有するフィルタユニット

【課題】 簡易かつコンパクトな構造で、効率よくフィルタエレメントに付着したダストを除去することができるブローバック機能を有するフィルタユニットを提供すること。
【解決手段】 試料ガスを清浄化するフィルタ5を収容し、フィルタ5によって1次空間部4と2次空間部6に仕切られる収容体に、1次空間部4に試料ガスが導入される試料ガス導入部1と、フィルタ5を通過した試料ガスが2次空間部6を介して清浄ガスとして供出される清浄ガス供出部2と、2次空間部6にブローバック用ガスが導入されるブローバック用ガス導入部3と、清浄ガス供出部2から次第に広がる拡開部9と、が設けられるとともに、ブローバック用ガス導入部3からブローバック用ガスを導入する方向が収容体の内面9aに対して所定の傾斜角を有し、フィルタ5に向けて排出されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローバック機能を有するフィルタユニットに関し、特に試料ガス中のダストを除去し清浄化したガスを供出するためのブローバック機能を有するフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼ボイラ等の固定排出源や自動車等の移動排出源などからの排出ガスあるいは各種プロセスから試料ガス中の特定成分の測定においては、フィルタを用いて試料ガス中のダストを除去し、除湿器を用いて水分を除去するなどの所定の処理によって、クリーンな状態で試料ガスを測定部に導入することで、より正確な測定を行うことができる。しかしながら、長期間の使用に伴い、上記フィルタに蓄積したダストにより目詰まりが生じると、試料排気抵抗が増大するとともに、ダストへの水分や酸性物質などの付着によって、試料ガス流路の腐食や汚染が生じることから、これらを防止し、長期間安定した条件で測定できることができように、フィルタの再生を定期的に行う必要がある。
【0003】
例えば、図10(A)に示すように、排気通路104に配設された微粒子捕集浄化装置101のフィルタ112を取り外すことなく、適宜に清掃することが可能な微粒子捕集浄化装置101のフィルタ112の清掃方法が提案されている。具体的には、排気通路104に配設された円筒状容器121と、該容器121内に収納され排気ガス中の微粒子を捕集するフィルタ112とからなり、容器121のフィルタ下流側の一端がフィルタ112の下流側端面に臨んで開口し、他端が容器121外に開口するノズル122を複数設け、フィルタ112の清掃時に各ノズル122からフィルタ下流側端面に向けて高圧空気を吹き付けて逆洗することにより、フィルタ112内に堆積した微粒子をフィルタ上流側に吹き飛ばし、この吹き飛ばした微粒子を捕集することを特徴とするものである。ノズル122は、図10(B)に示すように、周方向に等間隔で複数例えば4個配設されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、図11(A)に示すように、フィルタ201全体に亘って逆洗再生を効率良く行い得るパティキュレートフィルタの逆洗再生装置が提案されている。具体的には、排気通路途中に設置されたパティキュレートフィルタ201の下流側に、噴射口224側へ向け開口が漸次拡がるノズル本体225と該ノズル本体内の軸心部に配設された整流素子227とを備え、圧力源207に対し制御弁210を介して接続された1つの逆洗エアノズル223を、その噴射口224がパティキュレートフィルタ201下流端面に対向するよう配設したものである。ここで、逆洗エアノズル223は、図11(B)に示す如く、噴射口224側へ向け内径が漸次増加する中空円錐状のノズル本体225と、ノズル本体225内の軸心部に支持部材26を介して配設され噴射口224側へ向け先細りとなるティアドロップ形の整流案子227とから構成されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平01−106915号公報
【特許文献2】特開平04−036008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法では、以下の示すいくつかの課題があった。
(i)上記の例においては、使用時のフィルタにほぼ均等に付着したダストを想定し、該フィルタに均一に空気を当てることによって効率よく逆洗することを目的とするが、実際の排気ガス中のダスト除去処理においては、排気ガスは、フィルタに対し均一に流れないため、あるいはダストの形状や分布のムラなどの要因のため、排ガス中のダストは、フィルタ全体に均一に付着せずにムラを作ってしまう。従って、ブローバック時に均一に供給された逆流用空気も、フィルタの圧力損失のムラによって、フィルタを透過する空気は均一にならない。このため、ブローバックの効果が十分に得られずダストの一部はフィルタに残留してしまう上、フィルタから剥がれ落ちたダストはサンプリング流路から排出されることなく残留するという課題があった。
【0007】
(ii)また、逆洗時の課題であるショートパスの形成に対しても、逆洗用空気を分散して均一に供給する方法は、効果的とはいえない。つまり、付着したダストが部分的あるいは局部的に吹き飛ばされた場合、その脱離した箇所に分散された逆洗用空気が流入し、形成されたショートパスが形成される。このとき、フィルタに対して上記のような均一に分散された逆洗用空気が当っても、ショートパスは解消されず、他の箇所での脱離が不十分となりダストが残留するという課題があった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、簡易かつコンパクトな構造で、効率よくフィルタエレメントに付着したダストを除去することができるブローバック機能を有するフィルタユニットを提供することにある。また、試料ガス中のダストの均一なフィルタエレメントへの付着を図り、さらに効率よくブローバック効果を得ることができるフィルタユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すブローバック機能を有するフィルタユニットによって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
つまり、本発明に係るブローバック機能を有するフィルタユニットは、試料ガスを清浄化するフィルタエレメントを収容し、該フィルタエレメントによって1次空間部と2次空間部に仕切られる収容体に、前記1次空間部に試料ガスが導入される試料ガス導入部と、前記フィルタエレメントを通過した試料ガスが前記2次空間部を介して清浄ガスとして供出される清浄ガス供出部と、前記2次空間部にブローバック用ガスが導入されるブローバック用ガス導入部と、前記清浄ガス供出部から次第に広がる拡開部と、が設けられるとともに、前記ブローバック用ガス導入部からブローバック用ガスを導入する方向が、前記収容体の内面に対して所定の傾斜角を有し、前記フィルタエレメントに向けて排出されることを特徴とする。
【0011】
ブローバック機能を有するフィルタユニットにおける理想の条件の1つは、使用時のフィルタの1次空間部側(試料ガス導入側)の試料ガスの流れが均一で、フィルタエレメントに均一にダストが付着するとともに、逆洗時のフィルタの2次空間部側(フィルタにより清浄化された試料ガス(清浄ガス)の供出側)からのブローバック用ガスの流れが均一で、かつフィルタエレメントに均一に透過することである。しかしながら、本発明は、逆洗時においては、単純にフィルタに対して垂直方向からブローバック用ガスを流しただけでは、フィルタエレメント内でのショートパスの防止は困難であることを見出したもので、ブローバック用ガスを導入する方向を、収容体の内面に対して所定の傾斜角を有するようにすることによって、
(i)収容体の内面に当たったブローバック用ガスが左右方向に分かれて旋回流を発生させ、
(ii)フィルタエレメント方向への渦流れを発生させる
ことによって、広く拡散しかつ乱流類似状態を形成させるものである。つまり、ブローバック用ガスの流れを一定の方向に絞り込むのではないが、フィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させることが好ましいことを見出したもので、こうした逆洗時のブローバック用ガスの流れを形成することによって、フィルタエレメントの表面に付着したダストを均等にかつ効率的に排除することができる。また、清浄ガス供出部から次第に広がる拡開部が設けられることによって、こうした機能をさらに増強することができる。つまり、直接的には清浄ガス供出部へのブローバック用ガスの流れはないものの、フィルタエレメントに対して傾斜角を有する拡開部に当たり反射する一部のブローバック用ガスは、前記のガスの流れに加わり、フィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させることとなる。さらに、こうしたブローバック用ガスの流れの形成は、ブローバック用ガスの圧力が高い場合には、ダストが付着したフィルタエレメントの多少の圧力損失の差は無視できるという技術的効果を得ることができた。こうした機能は、後述する検証実験(断面の流速分布)において確認された。
【0012】
本発明は、上記ブローバック機能を有するフィルタユニットであって、前記収容体の前記2次空間部側の形状が、前記清浄ガス供出部から次第に広がる略円錐形状を形成することを特徴とする。
【0013】
上記のように、ブローバック用ガスについてフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させることは、本発明の本質の1つである。ここで、上記拡開部を拡張して清浄ガス供出部から次第に広がる略円錐形状体を形成し、上記内面と一体化することによって、さらに大きな旋回流および渦流れを発生させ、さらに高い均一性を確保することが可能となる。また、こうした内面の構成は、フィルタユニットとして簡易かつコンパクトな構造を形成することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、上記ブローバック機能を有するフィルタユニットであって、前記収容体の前記1次空間部側の形状が、前記試料ガス導入部から次第に広がる略円錐形状を形成することを特徴とする。
【0015】
上記のように、使用時のフィルタの1次空間部側の試料ガスの流れが均一で、フィルタエレメントに均一にダストが付着することが好ましい。つまり、使用時の試料ガスの流れと逆洗時のブローバック用ガスの流れは、表裏一体の関係にあり、仮にいずれかにおいて均一性が崩れると、フィルタエレメントに付着したダストあるいは逆洗時に残留したダストにムラが発生し、次の試料ガスのダスト除去処理および逆洗時のダストパージ処理において、その影響がさらに増幅されることとなる。本発明は、かかる観点から、フィルタの1次空間部側において試料ガス導入部から次第に広がる略円錐形状体を形成することによって、簡易かつコンパクトな構造でフィルタの1次空間部側の試料ガスの流れの均一性を図ることができる。また、ダストは流速の大きな流れに集中することから、試料ガス導入部から導入された試料ガスは、当初その中心部に流速の大きな流れの形成し、次第に広がる形状によって分散し均一化するとともに、その流れの周辺部に相当する内面へのダストの付着を非常に少なくすることができる。従って、フィルタエレメントへの効率のよい均一なダストの付着を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明に係るブローバック機能を有するフィルタユニット(以下「本ユニット」という)は、試料ガスを清浄化するフィルタエレメント(以下「フィルタ」という)と、これを収容し該フィルタによって1次空間部と2次空間部に仕切られる収容体から構成される。
【0017】
<本ユニットの基本的な構成>
本ユニットの基本的な構成例(第1構成例)を、図1に示す。ここで、図1(A)は、本ユニット10の外観を例示し、試料ガス導入部1、清浄ガス供出部2、ブローバック用ガス導入部3を有している。図1(B)は、本ユニット10の内部のガス流路の鳥瞰図を例示し、フィルタ5によって、1次空間部4と2次空間部6に仕切られている。使用時において、試料ガスが、試料ガス導入部1から1次空間部4に導入され、フィルタ5を通過して清浄化された後、2次空間部6を経由して清浄ガスとして清浄ガス供出部2から供出される。また、逆洗時において、ブローバック用ガスが、ブローバック用ガス導入部3から2次空間部6に導入され、フィルタ5を逆洗した後、1次空間部4を経由してダストとともに試料ガス導入部1から排出される。
【0018】
図2は、フィルタ5の交換が可能な本ユニット10の構造を例示するもので、導入ユニット10aと供出ユニット10bから構成される。両ユニットは、フランジ7a,7bを介して接合されている。試料ガス導入部1が取合部1aに接合して1次空間部4と連結し、清浄ガス供出部2が取合部2aに接合して流路2bを介して2次空間部6と連結し、ブローバック用ガス導入部3が取合部3aに接合して流路3bを介して2次空間部6と連結し、各ガス流路間および外部とのシールは、Oリング8によって行う構成を例示している。導入ユニット10aと供出ユニット10bを隔離することによって、フィルタ5の交換および内部の清掃が可能である。
【0019】
〔2次空間部について〕
本ユニット10は、2次空間部について、清浄ガス供出部2から次第に広がる拡開部9が設けられるとともに、ブローバック用ガス導入部3からブローバック用ガスを導入する方向が内面に対して所定の傾斜角を有し、フィルタ5に向けて排出されることを特徴とする。逆洗時のフィルタ5に対するブローバック用ガスの流れを、フィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させることによって、フィルタ5の表面に付着したダストを均等にかつ効率的に排除することができる。このとき、傾斜角は特に限定されず、フィルタ5の大きさや2次空間部の大きさあるいはブローバック用ガスの流量などによって任意に設定されるが、通常30〜60°程度が好ましい。こうした機能は、拡開部9を設けることによって、さらに増強することができる。拡開部9は、ブローバック用ガスが当たり反射した流れがフィルタ5に向う機能を有するものであれば、略円錐形や楕円錐形あるいは角錐や笠状などの任意に形成することができる。また、その拡開角度(フィルタ5表面の垂直面に対する開口角度)は、特に限定されず、フィルタ5の大きさや2次空間部の大きさあるいはブローバック用ガスの流量などによって任意に設定されるが、通常20〜60°程度が好ましい。
【0020】
特に、拡開部9を拡張して清浄ガス供出部2から次第に広がる略円錐形状体を形成することが好ましい。内面と拡開部9を一体化した略円錐形状体を形成することによって、さらに大きな旋回流および渦流れを発生させ、さらに高い均一性を確保することが可能となる。また、略円錐形状体を内面の一部とし、2次空間部6の内容積を大きく確保することも好ましい。具体的な形体として、図3(A)〜(C)のような形体を挙げることができる。
【0021】
図3(A)は、2次空間部6全体が略円錐形状体を形成する場合を例示する。図上略水平方向に設けられたブローバック用ガス導入部3から導入されたブローバック用ガスは、拡散しながら略円錐形状体を形成する内面9aに当たる。このとき、その垂直断面である拡大図(A1)に示すように、その中心となる流れFoが、内面9aに対して所定の傾斜角αを有するように当たるとともに、拡散し所定幅の方向性を有する流れFa,Fb等も同様に傾斜角αよりも広角あるいは狭角を有して内面9aに当たる。内面9aで反射したこれらの流れは、さらに拡散しながらフィルタ5に向けてフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させて排出される。なお、ブローバック用ガス導入部3の取付け方向あるいはブローバック用ガスの導入方向は、内面9aに対して所定の傾斜角αを有するように当たるとともに、フィルタ5に向けてフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させて排出されるものであれば、図上略水平方向ではなく、任意の方向であっても構わない。
【0022】
一方、その水平断面であるf−f’断面図(A2)に示すように、上記流れFoは、内面9aに当たり、その曲面によって左右方向に分かれて旋回流を発生させるとともに、拡散し所定幅の方向性を有する流れFc,Fd等も同様にその旋回流の一部を形成する。これらの流れは、さらに拡散しつつ渦流れを発生させながら、フィルタ5に向けてフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させて排出される。このように、ブローバック用ガスは、あらゆる方向から、フィルタ5に向けてフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させて排出されることによって、フィルタ5の表面に付着したダストを均等にかつ効率的に排除することができる。なお、ブローバック用ガス導入部3の取付け方向あるいはブローバック用ガスの導入方向は、旋回流を発生させるとともに、さらに拡散しつつ渦流れを発生させながら、フィルタ5に向けてフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させて排出されるものであれば、f−f’断面図(A3)に示すように、図上の略中心軸方向ではなく、任意の方向であっても構わない。また、ここでは説明上ブローバック用ガスの流れを垂直・水平方向に分けたが、流れの方向がこれに限定されないことはいうまでもない。
【0023】
図3(B)は、2次空間部6の一部が略円錐形状体を形成する場合を例示する。上記図3(A)と同様、図上略水平方向に設けられたブローバック用ガス導入部3から導入されたブローバック用ガスは、拡散しながら略円錐形状体を形成する内面9aに当たるとともに、あらゆる方向から、フィルタ5に向けてフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させて排出されることによって、フィルタ5の表面に付着したダストを均等にかつ効率的に排除することができる。本構成は、さらに、内面9bを有する空間6aによってフィルタ5に向けた流れを有するブローバック用ガスが拡散され、よりフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させることができる。なお、内面9bは、必ずしもフィルタ5に対して垂直である場合に限定されるものではなく、内面9aの傾斜角と異なる傾斜角を有するものであり、内面9aよりも狭角の傾斜角を有することによって、フィルタ5の端部でのダストの残留を防止することができる。
【0024】
図3(C)は、上記図3(B)と同様、2次空間部6の一部が略円錐形状体を形成する構成であるが、ブローバック用ガス導入部3が内面9cに設けられ、図上水平ではない方向に設けられ、ブローバック用ガスが、拡散しながら内面9cに対して所定の傾斜角βを有するように当たる場合を例示する。その中心となる流れFoを含むブローバック用ガスが、内面9cに対して所定の傾斜角βを有するように当たる態様は、上記拡大図(A1)に示す態様と同様であり、g−g’断面におけるブローバック用ガスが内面9cに対して当たる態様は、2次空間部6の断面形状が楕円形となる以外において、上記f−f’断面(A2)または(A3)に示す態様と略同様である。従って、あらゆる方向から、フィルタ5に向けてフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させて排出されることによって、フィルタ5の表面に付着したダストを均等にかつ効率的に排除することができる。なお、内面9cは、必ずしもフィルタ5に対して垂直である場合に限定されるものではなく、内面9aの傾斜角と異なる傾斜角を有するものであり、内面9aよりも狭角の傾斜角を有することによって、フィルタ5の端部でのダストの残留を防止することができる。
【0025】
以上にように、「ブローバック用ガス導入部からブローバック用ガスを導入する方向(以下「BG導入方向」という)が、収容体の内面に対して所定の傾斜角を有し、フィルタエレメントに向けて」フィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させる場合とは、
(1)フィルタ面に対して傾斜を有する収容体の内面に対するBG導入方向が、フィルタ面に平行あるいはその傾斜角以下の傾斜を有する場合
(2)BG導入方向が収容体の内面によって反復する方向が、フィルタ面に対して垂直となる場合
をいい、例えば、BG導入方向が、収容体の内面の接線方向あるいはそれに近似される方向では、こうした機能を有しない。
【0026】
〔1次空間部について〕
1次空間部4は、図2に示すように、試料ガス導入部1(の取合部1a)から次第に広がる略円錐形状体を形成することが好ましい。こうした円錐形状の先端部からの試料ガスの導入によって、1次空間部4全体への試料ガスの拡散により、フィルタ5の1次空間部側の試料ガスの流れの均一性を図ることができるとともに、内面4aへのダストの付着を非常に少なくすることができ、フィルタ5への効率のよい均一なダストの付着を実現することができる。なお、こうした形体においてもフィルタ5中央部への流速が、その周辺に比較して多少大きい状態は残るが、フィルタ5中央部へのダストの付着量の増加は、中央部のフィルタ5の圧力損失の増加を招くことからその周辺部へのダストの付着を容易にし、徐々にダストの多く付着する部分が周辺へ拡散する。その結果、フィルタ全面にダストの均一な付着を形成することができる。こうした機能は、1次空間部4が試料ガスの拡散を可能とする形体、つまり次第に広がる略円錐形状体を形成することによって実現することが可能となる。このとき、略円錐形状体の開口角度(フィルタ5表面の垂直面に対する開度)は特に限定されず、フィルタ5の大きさや1次空間部の大きさあるいは試料ガスの流量などによって任意に設定されるが、通常20〜60°程度が好ましい。
【0027】
また、このとき、図4に例示するように、試料ガス導入部1と略円錐形状体を形成する内面4aとの接続部1aに、1次空間部4の中心側に凸状段部1bを有することが好ましい。凸状段部1bによる試料ガスの絞込み効果が生じ、後述するように、所定流量以上の試料ガスを導入した場合、内面4aに対してダストを含む流れとの接触がほとんどない状態を形成することができる。つまり、凸状段部1bのない接続部1aの付近において渦流が発生する可能性から、内面4aの一部にダストが付着し易くなることがあり、凸状段部1bによる試料ガスの絞込みによって、流速の大きな流れに集中するダストの特性を利用して、試料ガスの均一な流れと同時にダストの均一な分散に貢献し、内面4aへのダストの付着を軽減・防止することができる。また、これによって、フィルタ5へのダストの多く付着する部分が周辺へ拡散する機能を増大させ、より均一なダストの付着を可能となることができる。
【0028】
<本ユニットの第2構成例>
本ユニットの第2構成例の内部のガス流路の鳥瞰図を、図5(A)に示す。1次空間部4に第2のブローバック用ガス導入部32(以下「B2導入部」という)を設け、2次空間部6に設けられたブローバック用ガス導入部31(以下「B1導入部」という)からのブローバック用ガスの導入と関連させて、B2導入部32からブローバック用ガスを導入することを特徴とする。使用時に内面4aに付着したダストは、逆洗時のブローバック用ガスによって除去することは難しく、また、逆洗時にフィルタ5から脱離したダストの一部は内面4aに付着しやすいことから、1次空間部4に直接ブローバック用ガスを導入することによって、使用時に内面4aに付着したダストを除去し、逆洗時の脱離したダストの内面4aへの付着を未然に防止することができる。このとき、B2導入部32は、図5(B)に示すように、内面4aの接線方向、すなわちフィルタ外縁部に沿った方向に配置することによって、内面4aに沿う旋回流を形成し、内面4aに付着したダストの除去、および逆洗時の脱離したダストの内面4aへの付着の未然防止を効果的に行うことができる。なお、第2構成例では、1次空間部4に直接1つのブローバック用ガスを導入する構成を示したが、さらに複数のブローバック用ガス導入部を設け、いくつかの方向からブローバック用ガスを導入し、こうした機能性の高い流れを形成する構成とすることも可能である。
【0029】
<本ユニットの第3構成例>
本ユニットの第3構成例の内部のガス流路の鳥瞰図を、図6(A)に例示する。2次空間部6に、B1導入部31に対向するように、第3のブローバック用ガス導入部33(以下「B3導入部」という)を設け、B1導入部31からのブローバック用ガスの導入と関連させて、B3導入部からブローバック用ガスを導入することを特徴とする。1方向からのブローバック用ガスだけではなく、複数の方向からのブローバック用ガスの導入によって、B1導入部31からのブローバック用ガスの拡散を促進するとともに、この流れに合流し、フィルタ5に対してフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させることができる。
【0030】
このとき、図6(B)に示すように、B3ガス導入部33からのブローバック用ガスの流れが、内面9(上記図3における内面9a〜9cいずれかに相当)の接線方向、すなわちフィルタ外縁部に沿った方向となるように、B3ガス導入部33を配置することが好ましい。これによって、内面9に沿う旋回流を形成し、B1導入部31からのブローバック用ガスの拡散を促進するとともに、この流れに合流し、フィルタ5に対してよりフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させることができる。また、B3ガス導入部33からのブローバック用ガスの流れを、B1ガス導入部31からの流れと略平行かつ所定の距離乖離するように形成するによって、上記の流れを形成するとともに、さらに強力な旋回流を形成することができる。さらに、複数のブローバック用ガス導入部を設け、種々の方向から導入し、よりフィルタ面に対して垂直に近い流れをフィルタ面全体に発生させるブローバック用ガスの流れを形成する構成とすることも可能である。または、フィルタ5の中心部あるいは周辺部のみに集中したブローバック用ガスの流れを形成する構成とすることも可能である。また、第2構成例における2次空間部6に対するブローバック用ガスの流れを、第3構成例に適用することも可能である。
【0031】
<本ユニットにおけるブローバック用ガスおよび試料ガスの流れの検証>
〔検証1〕
本ユニットの第1構成例として、1次空間部4および2次空間部6全体が略円錐形状体を形成した場合のブローバック用ガスの流れを検証し、その技術的効果を確認した。
(1)検証方法
図7(A)および(B)に示すように、ブローバック用ガス導入部3(IN)からブローバック用ガスを導入する方向は、フィルタ5の表面と略平行かつその中心線に略沿う方向とした。内面9aに対して傾斜角αを有し、反射してフィルタ5に向けて流れ、1次空間部4を経由して試料ガス導入部1(OUT)から排出される。
【0032】
(2)検証結果
図7(A)〜(C)に、本ユニットのシミュレーション結果を示す。ガスの流速を濃淡で表わし、濃い色ほど流速が高いことを示す。図7(A)に示す縦断面は、ブローバック用ガスが分散されてフィルタ5に対して均一に流通し、1次空間部4において試料ガス導入部1に収束するような流れが形成されていることを示している。図7(B)に示すフィルタ5の2次空間部6側の表面近傍でのガスの流速分布図は、ブローバック用ガスが内面9a近傍から中央部近傍にかけて広い領域において流速が大きくなっていることを示し、従前の内面周辺あるいは局部の限定された領域でのばらついた分布からの改善が見られる。その結果、図7(C)に示すフィルタ5通過直後の1次空間部4側のガスの流速分布においては、2次空間部6側での分布の影響はみられるものの、均一性の高いガスの流速分布が見られ、高いブローバック効果を期待することができる結果であった。特に、図上略水平に導入されたブローバック用ガスは、フィルタ5の圧力損失によりフィルタ5に対して垂直方向にほぼ向きを変え、理想に近い均一な流速分布となっている。
【0033】
〔検証2〕
本ユニットの第3構成例として、複数のブローバック用ガスを導入した場合のブローバック用ガスの流れを検証し、その技術的効果を確認した。
(1)検証方法
図8(A)および(B)に示すように、上記〔検証1〕と同様B1導入部31(IN31)からのブローバック用ガスと同時に、これと略平行かつ乖離するように、B3導入部33(IN33)からのブローバック用ガスを内面9aに対して接線方向とするように導入した。両者は、合流してフィルタ5に向けて流れ、1次空間部4を経由して試料ガス導入部1(OUT)から排出される。
【0034】
(2)検証結果
図8(A)〜(C)に、本ユニットのシミュレーション結果を示す。図8(A)に示す縦断面は、2次空間部6でのブローバック用ガスの分散機能が大きくなりフィルタ5に対してより均一に流通し、1次空間部4での流速の均一性の高い流れが形成されていることを示している。また、図8(B)に示すフィルタ5の2次空間部6側の表面近傍でのガスの流速分布図でも、ブローバック用ガスがフィルタ5表面全体の広い領域において流速が均一になっていることを示している。その結果、図8(C)に示すフィルタ5通過直後の1次空間部4側において、非常に均一性の高いガスの流速分布が見られ、高いブローバック効果を期待することができる結果であった。また、上記〔検証1〕同様、フィルタ5の圧力損失によりフィルタ5に対して垂直方向にほぼ向きを変え、より均一な流速分布となっている。
【0035】
〔検証3〕
円錐形状の1次空間部を有する本ユニットにおいて、上記図4に示すような、1次空間部4の試料ガス導入部1近傍に凸状段部1bを設けた場合の試料ガスの流れを検証し、その技術的効果を確認した。
(1)検証方法
図9に示すように、試料ガス導入部1(IN)から導入された試料ガスは、凸状段部1bによって絞り込まれた状態で、1次空間部4、フィルタ5、2次空間部6および清浄ガス供出部2(OUT)を経由して供出される。このときの試料ガスの流れを、その流速分布としてシミュレートした。
【0036】
(2)検証結果
図9に、本ユニットのシミュレーション結果を示す。1次空間部4において、内面4aに対してほとんど接触がない状態の流れを形成することができる。内面4aへのダストの付着を回避することができる。また、フィルタ5での圧力損失によりa−a’断面図に示すように、フィルタ5の表面全体に試料ガスが分散し、略均一な流速分布を形成してフィルタ5を通過する。ただし、ガスの流れが絞り込まれた分、フィルタ5の周辺部では、流速が低下することから、ダストの付着も少なく、逆洗時に付着していたダストの内面4aへの付着も少なくなり、高いブローバック効果を期待することができる結果であった。フィルタ5によって清浄化された清浄ガスは、2次空間部6の形状に従い収束するとともに、中心部の流速が少し高い状態で清浄ガス供出部2への流れを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るブローバック機能を有するフィルタユニットの基本構成例を示す説明図。
【図2】本発明に係るフィルタユニットの基本構成例の構造を例示する説明図。
【図3】本発明に係るフィルタユニットの2次空間部の具体的な形体を例示する説明図。
【図4】試料ガス導入部に凸状段部を有する場合の1次空間部の形体を例示する説明図。
【図5】本発明に係るフィルタユニットの第2構成例の内部ガス流路の鳥瞰図を例示する説明図。
【図6】本発明に係るフィルタユニットの第3構成例の内部ガス流路の鳥瞰図を例示する説明図。
【図7】本発明に係るフィルタユニットの第1構成例におけるブローバック用ガスの流れを例示する説明図。
【図8】本発明に係るフィルタユニットの第3構成例におけるブローバック用ガスの流れを例示する説明図。
【図9】試料ガス導入部に凸状段部を有する場合の試料ガスの流れを例示する説明図。
【図10】従来技術に係る微粒子捕集浄化装置を示す説明図。
【図11】従来技術に係るパティキュレートフィルタの逆洗再生装置を示す説明図。
【符号の説明】
【0038】
1 試料ガス導入部
1a,2a,3a 取合部
2 清浄ガス供出部
3 ブローバック用ガス導入部
3b 流路
4 1次空間部
4a,9a 内面
5 フィルタエレメント(フィルタ)
6 2次空間部
7a,7b フランジ
8 Oリング
9 拡開部
10 本発明に係るフィルタユニット(本ユニット)
10a 導入ユニット
10b 供出ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスを清浄化するフィルタエレメントを収容し、該フィルタエレメントによって1次空間部と2次空間部に仕切られる収容体に、前記1次空間部に試料ガスが導入される試料ガス導入部と、前記フィルタエレメントを通過した試料ガスが前記2次空間部を介して清浄ガスとして供出される清浄ガス供出部と、前記2次空間部にブローバック用ガスが導入されるブローバック用ガス導入部と、前記清浄ガス供出部から次第に広がる拡開部と、が設けられるとともに、
前記ブローバック用ガス導入部からブローバック用ガスを導入する方向が、前記収容体の内面に対して所定の傾斜角を有し、前記フィルタエレメントに向けて排出されることを特徴とするブローバック機能を有するフィルタユニット。
【請求項2】
前記収容体の前記2次空間部側の形状が、前記清浄ガス供出部から次第に広がる略円錐形状を形成することを特徴とする請求項1記載のブローバック機能を有するフィルタユニット。
【請求項3】
前記収容体の前記1次空間部側の形状が、前記試料ガス導入部から次第に広がる略円錐形状を形成することを特徴とする請求項1または2記載のブローバック機能を有するフィルタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−155194(P2010−155194A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334307(P2008−334307)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】