説明

ブロー成形品およびその製造方法

【課題】穴部周辺の壁面の平滑度を良好に保つブロー成形品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ブロー成形品である衝撃吸収体10は、凸部31を有する平面部20と、ブロー成形後の型内で刃付工具により、凸部31上の略中央に開けられる凸部31より小さな穴部30とを備える。穴部30は、凸凹がなく平滑な平面部20上に設けられ、平面部20から凸形状となるように設けられた凸部31を有する。穴部30には、凸部31上に凸部31の外周より小さい透孔32が設けられる。衝撃吸収体10は、樹脂をブロー成形して製造される。樹脂としては、例えばオレフィン系の樹脂が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側壁部などに穴部を有するブロー成形品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に衝撃吸収体の一例を示す。車両用衝撃吸収体2は、バンパーフェイシア3とバンパービーム4の間に備えられ、バンパーフェイシア3側から受けた衝撃を吸収する構成となっている。なお、図5は、車両用衝撃吸収体2の断面図である。
【0003】
このような樹脂製の衝撃吸収体においては、中空成形(ブロー成形)により製造されている。以下、ブロー成形について図6,7を参照して説明する。
【0004】
押出ヘッド5からパリソン6が射出され始め、分割金型7の下端に達してから分割金型を型締めする。この時点ではパリソン6は、両側に配置された金型から押さえつけられただけの状態なので、特に凹凸付近などが分割金型7に密着していない。次に、この状態からパリソン内部にエアーを吹き込むことによって該パリソンを膨張させて型に沿うようにして成形される。
【0005】
上記の如く成形された成形品は、全体を略均等な肉厚に形成することができ、良好な衝撃吸収性を得ることができる。
【0006】
このような成形品において、水抜けのためや各種部品を取り付けるための透孔を有するものがある。ブロー成形品に透孔を形成するためには、ブロー成形後、凸部先端の切除やドリルなどを用いた2次加工にて穴を開けていた。これにより、穴の周囲の良好な面粗度を得ていた。しかしながら、ブロー成形後に2次加工を行う方法では、製造工程が多く、時間およびコストを浪費することになっていた。
【0007】
そこで、他の方法としてはブロー成形時に穴あけ加工を行う技術が知られている。しかしながら、ブロー成形時にそのまま穴をあけると面粗度が悪化するという問題がある。
【0008】
そこで例えば特許文献1には、ブロー成形により製造されるタンクにおいて、ブロー成形によって成形する際に、面粗度を悪化させることなく、ブロー成形の型内で成形とともに穴あけを行う技術について開示されている。
【0009】
特許文献1では、穴を設ける部分の型を凸部形状としており、型締め後にパリソンを膨張させたときに該凸部形状により形成される中空体の凹部を、刃付工具によって穴あけをすることによって、平面部にそのまま穴あけを行ったときにおこる面粗度悪化を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−170351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に示された技術では、ブロー成形により得られた中空体の凹部形状の部分に穴あけを行うことで、穴部周囲の面粗度悪化を防止できるが、穴あけを行う際の刃付工具の押圧力によって凹部周囲の樹脂が引張られることになり、所望する良好な形状を得ることが困難である。
【0012】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、穴部周辺の壁面の平滑度を良好に保つブロー成形品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明におけるブロー成形品は、凸部を有する平面部と、ブロー成形後の型内で刃付工具により、前記凸部上の略中央に開けられる前記凸部より小さな穴部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
前記穴部は、前記凸部外周の形状を縮小した形状であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明におけるブロー成形品の製造方法は、凸部を有する平面部を有するブロー成形品の前記凸部より小さな穴部を前記凸部上の略中心部に、ブロー成形後に型内で刃付工具により開けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、側壁面の平滑度に影響を与えずに穴を開けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る衝撃吸収体の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る衝撃吸収体の製造方法を示す断面図である。
【図3】B−B断面図である。
【図4】バンパーの構成図である。
【図5】衝撃吸収体の断面図である。
【図6】ブロー成形の説明図(その1)である。
【図7】ブロー成形の説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態における衝撃吸収体10の断面図である。なお、図1(b)は、図1(a)に示す衝撃吸収体10のA−A断面図を示す。衝撃吸収体10は、樹脂をブロー成形して製造される。樹脂としては、例えばオレフィン系の樹脂が用いられるが、特に限定されることなく、各樹脂を適宜用いることができる。
【0020】
衝撃吸収体10は、エアーを吹き込んだ穴などから進入した水を排出するための穴部30を複数有して構成される。また、穴部30は、凸凹がなく平滑な平面部20上に設けられる。
【0021】
穴部30は、平面部20から凸形状となるように設けられた凸部31を有し、該凸部31上に凸部31の外周より小さい透孔32が設けられる。また、透孔32は、好ましくは凸部31の外周における形状と同様の形状にて、凸部31の略中央に設けられる。
【0022】
このように、平面部20上に刃付工具70を前進させる向きと反対方向に突出した凸部31を形成し、凸部31上に透孔32をあけることで、刃付工具70を前進させる際に凸部31がリブの役割を果たし、穴部30の周囲の平面部20が刃付工具70の押圧力に引張られることを防止することができる。また、凸部が金型キャビティに保持され、周囲のパリソンの変形を抑えることができる。
【0023】
なお、透孔32の形状を凸部31の外周と同様の形状とすることにより、穴部30を最小面積に抑えることが可能である。
【0024】
次に、図2及び図3を参照して本発明の実施形態における衝撃吸収体10の穴部30の製造方法について詳細に説明する。図2は、押出ヘッド40から押し出されたパリソン50を分割金型60で型締めし、エアブローを行った後の模式的な断面図である。また、図3は、図2のB−B断面図である。
【0025】
分割金型60は、平面部20を形成するための平面形状61と、凸部31を形成するための凹形状62と、透孔32を形成する刃付工具70のための工具孔63と、を有して構成される。なお、工具孔63と刃付工具70との径は、隙間がないように略同一であることが好ましい。
【0026】
型締めされたパリソン50は、分割金型60の壁面に押圧されて密着するようにエアブローされ中空体(衝撃吸収体10)が形成される。なお、このときのエアブロー時間は、衝撃吸収体10が完全に冷え固まらない程度である。
【0027】
その後、図3に示すような刃先部71を有する刃付工具70を中空体内部方向へと前進させる。これにより、衝撃吸収体10に透孔32があけられる。
【0028】
刃付工具70を衝撃吸収体10内部へと前進させて、凸部31に透孔32を形成した後は、刃付工具70を衝撃吸収体10の内部に突き刺した状態のままエアーを吹き込むなどして樹脂が冷え固まるまで冷却を行う。
【0029】
冷却後、先ほどとは逆方向へと刃付工具70を後退させ、衝撃吸収体10から離脱させる。
【0030】
なお、透孔32をあけるための刃先部71の刃先の角度は、好ましくは30°未満である。本構成により、凸部31の形状を崩すことなく、良好に透孔32をあけることができる。
【0031】
また、ブロー前の刃付工具70の初期位置は、図2に示すようにキャビティより外側にあっても良いし、より好ましくは、キャビティより内部に少し突出させておくことが良い。キャビティより内部に突出させた位置で待機させておくことで、ブローされた中空体は、凸部31の中央部が刃付工具70に沿って凹部形状となり、刃付工具70による穴あけ時に抵抗力が小さくなり穴あけが容易となり、周囲の樹脂が穴あけ時に引張られることをさらに防止することができる。
【0032】
また、刃先部71の形状は円錐形に限定されることはなく、例えば刃付工具の外周円に沿って刃を設けて樹脂を切除するような構成にしても良い。
【0033】
本発明の実施形態における衝撃吸収体によれば、平面部に凸部を形成し、ブロー成形時に該凸部上に穴をあけることにより、平面部の平滑度に影響を与えることなく、透孔を設けることができる。
【0034】
また、2次加工にて穴あけを行うのに比べて工数を減らすことができるため、時間及びコストを削減することができる。さらには、2次加工にてブロー成形品の凸部を切除して透孔を形成するような方法を行っている場合には、既存の金型を改良して用いることができる。
【0035】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、上記以外の様々な形態へ適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
ブロー成形品において、特に自動車のバンパーに備えられる衝撃吸収体、衝撃時の変形による内部の空気圧の変化を利用して衝撃の程度を検知する圧力検知センサ、などのブロー成形品に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 衝撃吸収体
20 平面部
30 穴部
31 凸部
32 透孔
40 押出ヘッド
50 パリソン
60 分割金型
70 刃付工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部を有する平面部と、
ブロー成形後の型内で刃付工具により前記凸部上の略中央に開けられる前記凸部より小さな穴部と、を備えることを特徴とするブロー成形品。
【請求項2】
前記刃付工具は、ブロー成形前の初期位置が前記型のキャビティ内部に位置することを特徴とする請求項1記載のブロー成形品。
【請求項3】
前記穴部は、前記凸部外周の形状を縮小した形状であることを特徴とする請求項1又は2記載のブロー成形品。
【請求項4】
凸部を有する平面部を有するブロー成形品の前記凸部より小さな穴部を前記凸部上の略中心部に、ブロー成形後に型内で刃付工具により開けることを特徴とするブロー成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−51181(P2011−51181A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201080(P2009−201080)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】