説明

ブロー成形用のコア部材及びこれを用いた組立体

【課題】 延伸ブロー成形時におけるプリフォームの加熱時間の短縮と胴部部分の結晶化による白化防止とを簡単な構成で達成できるブロー成形用のコア部材及びこれを用いた組立体を創出することを課題とする。
【解決手段】 有底円筒形状に射出成形されたプリフォーム(P)を加熱して延伸ブロー成形する際にプリフォーム(P)で覆われたその内側に設置されるブロー成形用のコア部材であって、プリフォーム(P)の口筒部(P1)の内側に対向配置される円筒状の基部(3)と、基部(3)からプリフォーム(P)の底部(P3)方向に延びる細長円筒状の加熱筒体(4)とを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォームの延伸ブロー成形用のコア部材に関わり、特にはプリフォームを内側から加熱するためのブロー成形用のコア部材及びこれを用いた組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
PET製射出成形品であるプリフォームを2軸延伸ブロー成形して所定形状の壜体とするには、このプリフォームを延伸変形が可能な温度まで加熱する必要がある。壜体の2軸延伸ブロー成形に際するプリフォームの加熱は、例えば特許文献1に開示されているように、近赤外線を発生する赤外線ランプ(近赤外線ヒーター)を熱源とするのが一般であり、またこの近赤外線ヒーターの複数を、搬送されているプリフォームの軸心方向に沿って平行に並列配置し、各近赤外線ヒーターの出力を調整することにより、プリフォームを軸心に沿って所望する温度分布で加熱するようにしている。
【0003】
しかしながら、この方法はプリフォームをその外側から加熱するものであるから、どうしてもプリフォームの外面側の方が内面側に比べて昇温速度が速く、加熱されるプリフォームの外側と内側と間に温度差が発生することになる。この温度差が大きいと適正な2軸延伸ブロー成形操作が不能となるので、このプリフォームの内面側と外面側との加熱温度差を一定の範囲内に抑制するために、熱源の出力を制限する必要があり、このためプリフォームの加熱時間を充分に短縮することができない、と云う問題がある。
【0004】
また、プリフォームの加熱時間を短縮するために、例えば特許文献2に示されるように、近赤外線ランプと誘電加熱装置とを併用したものが開示されているが、両手段を前後して稼動させなければならず、このため充分な加熱時間の短縮を得ることができないと共に、加熱設備が大型で複雑となり、これにより大きな設置スペースと、割高な設備費とを要することになる、と云う問題があった。
【0005】
また、加熱時間を短縮するため赤外線ランプの出力を大きくしていくと、内側からの誘電加熱装置による加熱も相俟って外側の温度が上がり過ぎ、プリフォーム中の口筒部以外の部分、特にネックリング近傍の胴部に結晶化が生じて白化してしまうと云う問題もある。
【0006】
さらに、2軸延伸ブロー成形においては、軸方向への延伸を促進させるために、延伸ロッドを移動させてプリフォームの底部を強制的に延伸させるが、延伸ロッドが移動する間の芯出し精度を高精度に維持することが困難であると云う問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−42702号公報
【特許文献2】特開平8−142175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたものであり、延伸ブロー成形時におけるプリフォームの加熱時間の短縮、口筒部以外の胴部部分の結晶化による白化防止、さらには延伸ロッドの芯出し精度の向上を簡単な構成で達成できるブロー成形用のコア部材及びこれを用いた組立体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる構成は、
有底円筒形状に射出成形されたプリフォームを加熱して延伸ブロー成形する際にプリフォームで覆われたその内側に設置されるブロー成形用のコア部材であって、
プリフォームの口筒部の内側に対向配置される円筒状の基部と、基部からプリフォームの底部方向に延びる細長円筒状の加熱筒体とを有することを特徴とする、と云うものである。
【0010】
上記構成のブロー成形用のコア部材は、2軸延伸ブロー成形装置の加熱炉内を移動する保持部材に保持されており、プリフォームを保持部材に装着すると、コア部材がこのプリフォームに覆われる状態でその内部に設置される。このとき、加熱筒体はプリフォームの内側で、口筒部及び胴部などに接触しない程度の隙間を介して対向配置されている。そして、コア部材はこのような状態で加熱炉内を移動するが、その際に加熱筒体が加熱炉内のヒーターから得た熱エネルギーを余熱とし、さらにはプリフォーム加熱時にヒーターから出力されるエネルギー(主として熱エネルギー)とこの際に加熱筒体で反射されるエネルギー(主として光エネルギー)とを利用することによりプリフォームの内面加熱を達成する。
【0011】
また本発明の他の構成は、請求項1記載の発明において、加熱筒体の表面に、鏡面仕上げ又は金メッキ処理が施されている、と云うものである。
【0012】
上記構成では、加熱筒体の表面が、ヒーターから出力されたエネルギーのうち、主として光エネルギーの高効率反射によるプリフォームの内面加熱を達成する。
【0013】
また本発明の他の構成は、請求項1又は2記載の発明において、加熱筒体は、プリフォーム加熱時にヒーターから出力される熱エネルギーによる温度上昇と、ヒーターから出力される光エネルギーの表面反射とを利用してプリフォームの内側を加熱するものである、と云うものである。
【0014】
上記構成では、ヒーターから出力される熱エネルギーと光エネルギーを効率良く利用することにより、プリフォームの外面加熱と内面加熱を達成する。
【0015】
また本発明の他の構成は、請求項1乃至3のいずれか記載の発明において、基部と加熱筒体との連結部分に環状且つ傾斜状の肩部を形成し、該肩部に基部の内部に連通する小孔を穿設した、と云うものである。
【0016】
上記構成では、高圧空気をプリフォーム内に導く通気路の確保を達成する。
【0017】
また本発明の他の構成は、請求項4記載の発明において、複数の小孔が肩部に形成されている、と云うものである。
【0018】
上記構成では、肩部に形成された複数の通気孔により、高圧空気を中心側の加熱筒体から周囲の胴部に向かってほぼ放射状に噴出させることを達成する。
【0019】
また本発明の他の構成は、請求項4又は5記載の発明において、小孔を備えた肩部が、プリフォームのネックリング近傍の位置に配置されている、と云うものである。
【0020】
上記構成では、小孔を通過した高圧空気をプリフォームの口筒部と胴部との境界部分に効率的に導くことを達成する。
【0021】
また本発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のブロー成形用のコア部材を用いた組立体であって、台座と加熱筒体よりも筒身寸法の長い筒身部を有するロングガイド部材が、基部及び加熱筒体の内部に組み付けられている、と云うものである。
【0022】
上記構成では、加熱筒体よりも筒身寸法の長い筒身部が、延伸ロッドを軸方向に沿って直線的に導くガイドとしての機能を達成する。
【0023】
また本発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のブロー成形用のコア部材を用いた組立体であって、台座と加熱筒体よりも細く筒身寸法の短い筒身部を有するショートガイド部材が、コア部材の底部側に連結されている、と云うものである。
【0024】
上記構成では、ショートガイド部材の筒身部と、コア部材の加熱筒体とが、延伸ロッドを軸方向に沿って直線的に導くガイドとしての機能を達成する。
【0025】
また本発明の他の構成は、請求項7又は8記載の発明において、台座に、基部の外部と内部とを連通する貫通孔を形成した、と云うものである。
【0026】
上記構成では、高圧空気を、肩部に複数の小孔を有するコア部材の内部に確実に導くことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成においては、プリフォームを内側からも加熱することができるため、外側からの加熱作業との協働により、延伸ブロー成形時におけるプリフォームの加熱時間を短縮することができる。
【0028】
しかも加熱筒体は、ヒーターから発せられる熱エネルギーをプリフォームで覆われていないときに保持し、プリフォームで覆われたときには加熱炉内を移動中に保持した熱エネルギーを余熱として利用すると共に、ヒーターから出力されるエネルギーのうち加熱筒体の表面が反射する光エネルギーを利用してプリフォームを内側から加熱するようにした構成であり、プリフォームの内側加熱を他の物理的な熱源を用いて達成する構成ではないため、プリフォームの温度が必要とする加熱温度よりも高温となり、口筒部以外の部分、特に胴部部分の結晶化による白化を防止することができる。
【0029】
また簡単な構成で余熱とプリフォーム加熱時のヒーターエネルギーを有効利用することができるため、製造コストの高騰を抑えると共に装置の小型化を図ることができ、さらには余熱を有効利用することにより節電効果を高める効果も期待できる。
【0030】
また加熱筒体の表面に、鏡面仕上げ又は金メッキ処理が施されている構成にあっては、ヒーターの光エネルギーを効率良く反射してプリフォームの内面加熱が可能となるため、プリフォームの外面上昇温度と内面上昇温度との温度差を小さく維持した状態で加熱することができるようになり、適正な2軸延伸ブロー成形操作が可能となる。
【0031】
また加熱筒体は、プリフォーム加熱時にヒーターから出力される熱エネルギーによる温度上昇と、ヒーターから出力される光エネルギーの表面反射とを利用してプリフォームの内側を加熱するものであるとの構成にあっては、プリフォームを効率良く加熱することができるため、プリフォームの加熱時間を従来に比較して大幅に短縮することができ、これにより生産性の向上を図ることが可能となる。
【0032】
また基部と加熱筒体との連結部分に環状且つ傾斜状の肩部を形成し、該肩部に基部の内部に連通する小孔を穿設した構成としたものにあっては、傾斜状または平面状の小孔を通じて高圧空気をプリフォーム内の胴部側方に導くことにより、プリフォームの効率的な延伸を達成することができる。
【0033】
また複数の小孔が肩部に形成される構成にあっては、プリフォームへ高圧空気を略放射状に導くことができるため、プリフォームを中心軸(加熱筒体)からすべての半径方向外側に向かって均等に延伸させることができる。
【0034】
また小孔を備えた肩部が、プリフォームのネックリング近傍の位置に配置される構成にあっては、プリフォーム中の、特にネックリングと胴部との境界部分を積極的に延伸させることができるため、ネックリング近傍の胴部の薄肉化が達成され、場所による肉厚の偏りがなくなり、成形後の壜体全体の肉厚を均一なものとすることができる。
【0035】
また台座と加熱筒体よりも筒身寸法の長い筒身部を有するロングガイド部材が、基部及び加熱筒体の内部に組み付けられるコア部材を用いた組立体とした構成にあっては、延伸ロッドを軸方向に沿って高精度に直線移動させることが可能となるため、プリフォームをより高い精度で延伸させることができ、成形後の壜体全体の肉厚をより均一とすることができる。
【0036】
また台座と加熱筒体よりも細く筒身寸法の短い筒身部を有するショートガイド部材が、コア部材の底部側に連結されるコア部材を用いた組立体とした構成にあっても、ショートガイド部材の筒身部とコア部材の加熱筒体がガイドとして機能することにより、延伸ロッドを軸方向に沿って高精度に直線移動させることが可能となる。よって、プリフォームをより高い精度で延伸させることができ、成形後の壜体全体の肉厚をより均一とすることができる。
【0037】
さらに台座に、基部の外部と内部とを連通する貫通孔を形成した構成にあっては、高圧空気を、確実にコア部材を形成する基部の内部に導くことができるため、導いた高圧空気を肩部に形成された複数の小孔を通じてプリフォーム内に効率的に送り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明であるブロー成形用のコア部材の実施例を示し、Aはブロー成形用のコア部材の正面方向からの半断面図、Bは図1の平面図である。
【図2】コア部材と共に用いられるロングガイド部材を示し、Aはロングガイド部材の正面方向からの半断面図、Bはその底面図である。
【図3】コア部材とロングガイド部材との組立体が保持部材に保持された状態を示す断面図である。
【図4】プリフォームがコア部材に装着された状態を示す断面図である。
【図5】割り金型が組み付けられた状態を示す断面図である。
【図6】2軸延伸ブロー成形の一工程を示す断面図である。
【図7】プリフォームの加熱時間と加熱温度との関係を示すグラフである。
【図8】コア部材と共に用いられるショートガイド部材を示し、Aはショートガイド部材の正面方向からの半断面図、Bはその底面図である。
【図9】コア部材とショートガイド部材との組立体が保持部材に保持された状態を示す断面図である。
【0039】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。
図1乃至図6は本発明の第1実施例を示している。図1は本発明のブロー成形用のコア部材を示し、Aはブロー成形用のコア部材の正面方向からの半断面図、Bはその平面図、図2はコア部材と共に用いられるガイド部材の一例として、筒身の長いタイプのロングガイド部材を示し、Aはロングガイド部材の正面方向からの半断面図、Bはその底面図、図3はブロー成形用のコア部材とロングガイド部材との組立体が保持部材に保持された状態を示す断面図であると共に、プリフォームを装着する前の状態を示す図である。図4はプリフォームがコア部材に装着された状態を示す断面図、図5は割り金型が組み付けられた状態を示す断面図、図6は2軸延伸ブロー成形の一工程を示す断面図である。
【0040】
図1に示すように、本発明であるブロー成形用のコア部材1は、下から上に向かって順に台座2、基部3及び加熱筒体4を有して構成され、これらが金属材料で一体に形成されている。
台座2、基部3及び加熱筒体4はすべて円筒状に形成されており、台座2の底部から加熱筒体4の先端まで軸方向に貫ける貫通孔7が形成されている。基部3は、台座2よりも細い径寸法の円筒で形成され、加熱筒体4は基部3よりもさらに細く且つ筒身寸法の長い筒身(細長円筒状の筒身)で形成されている。
加熱筒体4の外表面は鏡面仕上げ又は金メッキ処理等の表面処理が施されており、熱源である赤外線ヒーターが発した熱や光のエネルギーを反射することが可能となっている。
【0041】
基部3と加熱筒体4との間には肩部5が形成されており、この肩部5には基部3の内側の空間と外部とを連通する複数の小孔6が穿設されている。この実施の形態では、肩部5が環状且つ傾斜状からなる構成を示しているが、肩部の構成は環状且つ平面状であってもよい。さらに12個の小孔6が、肩部5上に周方向一定の間隔を有して形成されているが、小孔6の個数は12個に限定されるものではない。
なお、コア部材1は金属棒を切削加工により形成してもよいし、径寸法の異なる円筒を溶接等の手段を用いて形成してもよい。
【0042】
図2に示すロングガイド部材10も金属またはPEEK樹脂などの材料により形成されており、基端側に設けられた円盤状の台座11に、細長円筒形状からなる筒身部12が一体に垂設されている。台座11の中心には、筒身部12の内部に続く連通孔14が形成され、その周囲には略円弧形状からなる複数の貫通孔13が穿設されている。連通孔14は台座11の板厚の中心から下端に向かって徐々に拡径するいわゆるホーン形状で形成されており、後述する延伸ロッドRを導入しやすくなっている。なお、この連通孔14と筒身部12の内面は延伸ロッドRが軸方向に移動する際に、直線的な移動を達成するための基準となるガイド15としての機能を有する。
【0043】
筒身部12の長さ寸法は、コア部材1側の基部3に加熱筒体4を加えた長さ寸法に略等しい寸法である。また筒身部12の外形寸法は、コア部材1の加熱筒体4の内径寸法と同じか、僅かに細い外径寸法で形成されており、筒身部12をそのまま加熱筒体4の貫通孔7内に挿入することが可能となっている(図3参照)
【0044】
図3に示すように、ブロー成形用のコア部材1は、その内部にロングガイド部材10の筒身部12を挿入して組立体Aとした状態で保持部材20に取り付けられる。
保持部材20は、ブロー成形用のコア部材1及びロングガイド部材10からなる組立体Aを支持固定するための固定部21と、プリフォームP保持する保持部22とを有して構成されている。
【0045】
組立体Aは保持部材20内に起立姿勢で固定された状態で2軸延伸ブロー成形装置に供給される。
【0046】
2軸延伸ブロー成形装置の図示は省略するが、例えばプリフォームP及びコア部材1とロングガイド部材10との組立体Aを保持した保持部材20を2軸延伸ブロー成形装置内の移動経路に導く供給部、移動経路内に配置されプリフォームPを外側及び内側から加熱する加熱炉、加熱状態にあるプリフォームPを保持部材20ごと成形装置に移送する移送テーブル、移送されたプリフォームPに金型を組み付ける金型組付け部、プリフォームPに高圧空気を送り込むと同時に延伸ロッドでプリフォームPの底部P3を引き伸す2軸延伸ブロー成形によって壜体を形成する成形部、金型を成形後の壜体から分離させると共に保持部材20から壜体を取り外す分離部などを有して構成されている。
【0047】
コア部材1とロングガイド部材10との組立体Aを保持する保持部材20は、コア部材1がプリフォームPで覆われた状態で2軸延伸ブロー成形装置を構成する各部を順に回転しながら周回移動している。加熱炉では赤外線ヒーター(熱源)Hにより、プリフォームPの外面を直接加熱する。このとき赤外線ヒーターHから出力されたエネルギー(熱及び光エネルギー)がプリフォームPを透過して加熱筒体4に達するため、加熱筒体4は主として熱エネルギーによって加熱される。加熱筒体4はこのときに加熱されて得た熱エネルギーを余熱として保持する。同時に、プリフォームPを透過したエネルギーのうちの主として光エネルギーが、加熱筒体4の表面に施されている鏡面仕上げ又は金メッキ処理によって反射させられ、これによりプリフォームPの内面が加熱される。
【0048】
加熱炉では、プリフォームPの外面は赤外線ヒーターHから出力されるエネルギー(熱及び光エネルギー)で直接加熱され、プリフォームPの内面は加熱筒体4が保持する余熱、赤外線ヒーターH加熱による加熱筒体4の温度上昇及び加熱筒体4の表面で反射される赤外線ヒーターの光エネルギーによって加熱される。このようにプリフォームPの外面と内面とは、赤外線ヒーターから出力されるエネルギーによって同時に加熱されるが、特に内面は加熱筒体4の余熱と、赤外線ヒーターHによるエネルギー加熱筒体4の温度上昇及び赤外線ヒーターHの光エネルギーの加熱筒体4における反射を利用して加熱される。
【0049】
従来のようにプリフォームPを内側から加熱するための専用の加熱装置を不要とすることができ、また簡単な構成で内側加熱を達成することが可能となるため、大きな設置スペースや割高な設備費を不要にできると共に節電効果も期待できる。
【0050】
次に、加熱状態にあるプリフォームPを保持した保持部材20は、移送テーブルにより金型組付け部に送られ、割り金型M1,M2が取り付けられる(図5参照)。同時に、延伸ロッドRが、保持部材20の下端側から組立体Aの内部に、すなわちロングガイド部材10の台座11に形成された連通孔14を通じて筒身部12の内部に挿入される。
【0051】
そして、プリフォームPは2軸延伸ブロー成形の成形部に送られ、図6に示すように、保持部材20の下端に連通された通気路23を通して高圧空気aが送られる。高圧空気aは、ロングガイド部材10の台座11に設けられた複数の貫通孔13を通じて筒身部12の外面と基部3の内面との間に筒状に形成された隙間S内に導かれ、さらにコア部材1の肩部5に形成された複数の小孔6を通じてプリフォームP内に導入される。
【0052】
同時に、延伸ロッドRが図示矢印方向(図5参照)に移動させられ、プリフォームPの底部P3を軸方向に延伸させる。これにより、プリフォームPが2軸延伸させられて所定形状の壜体に成形される。
【0053】
ロングガイド部材10の筒身部12の筒身寸法(台座11から先端までの長さ寸法)は、コア部材1の加熱筒体4の筒身寸法(肩部5から先端までの長さ寸法)よりも長い。このため、移動中の延伸ロッドRの芯出し精度を高精度に維持することができ、延伸ロッドRの先端でプリフォームPの底部P3をより正確に延伸させることができ、成形される壜体の肉厚をより高い精度で均一化することが可能となる。
【0054】
図6に示すように、コア部材1に形成された肩部5の高さ方向の位置は、プリフォームPがコア部材1に装着されたときに、複数の小孔6がネックリングP4の近傍に位置することができるように設定されている。これにより高圧空気aは、傾斜状に形成された小孔6を通過することにより、ネックリングP4と胴部P2との境界部分に直接当たるように方向付けられるため、この境界部分近傍の胴部P2を軸中心から半径方向外側に向かってより積極的に延伸させることが可能となる。よって、ネックリングP4近傍の胴部P2の薄肉化が達成され、場所による肉厚の偏りがなくなり、壜体全体の肉厚をより均一なものとすることが可能となる。
【0055】
成形後、割り金型M1,M2は壜体から取り外され、さらに壜体も保持部材20から取り外されるが、保持部材20に保持されているコア部材1、特に加熱筒体4は高温状態にある。そして、この状態において新たなプリフォームPが、コア部材1とロングガイド部材10との組立体Aを保持固定した保持部材20の保持部22内に装着され、供給部から2軸延伸ブロー成形装置内の移動経路に導かれ、上記同様の2軸延伸ブロー成形が繰り返される。したがって、2軸延伸ブロー成形装置内の移動する加熱筒体4は、常に高い熱エネルギー(余熱)を保持する状態が維持されている。
【0056】
ここで、図7はプリフォームの加熱時間と温度との関係を示すグラフである、図7中、実線G1は本発明の実施例としてのブロー成形用のコア部材を用いて加熱した場合のプリフォームの内面温度変化を示し、破線G2はこのときのコア部材の温度を示している。また一点鎖線G3は比較例としてブロー成形用のコア部材を用いない従来の方法で加熱した場合のプリフォームの内面温度変化を示している。
【0057】
図7に示すように、赤外線ヒーターHによってコア部材1を加熱すると、G2に示すように、コア部材1の温度を余熱時の温度158℃から所定の加熱温度である278℃まで加熱時間12secで上昇させることができた。このとき、プリフォームPの内面温度は30℃から102℃に上昇し、プリフォームPの内面側の昇温速度は6.0℃/secであった。
一方、コア部材1を用いない従来例では、プリフォームPの内面温度を27℃から101℃に上昇させるのに16sec要しており、従来例における昇温速度は4.6℃/secであった
このようにブロー成形用のコア部材1を用いた場合には、ブロー成形用のコア部材1を用いない従来例に比較して、加熱時間の短縮率を25パーセントと大幅に改善できたことが確認された。
【0058】
図8及び図9は、本発明の第2実施例を示しており、図8はブロー成形用のコア部材と共に用いられるガイド部材の他の一例として、筒身の短いタイプのショートガイド部材を示し、Aはショートガイド部材の正面方向からの半断面図、Bはその底面図である。図9はブロー成形用のコア部材とショートガイド部材との組立体が保持部材に保持された状態を示す断面図である。
【0059】
第2実施例が第1実施例と異なる点は、ガイド部材として筒身の長いロングガイド部材10の代わりに、筒身の短いショートガイド部材30を使用している点にあり、その他の構成及び作用は上記第1実施例と同様である。
【0060】
図8に示すように、ショートガイド部材30は円盤状の台座31と、その中心に一体に垂設された短めの円筒からなる筒身部32を有して構成される。台座31の中心には、筒身部32に続く連通孔34が形成され、その周囲には略円弧形状からなる貫通孔33が穿設されている。そして、この実施例では、コア部材1側の加熱筒体4の内面と、ショートガイド部材30側の筒身部32及び連通孔34の内面とが、コア部材1の加熱筒体4と共に延伸ロッドRの軸方向への直線的な移動を達成するための基準となるガイドとしての機能を有している。
【0061】
図9に示すように、第2実施例では、ショートガイド部材30が、筒身部32を保持部材20内の下端に設けられた通気路23方向に向けた状態で固定部21に載置され、さらにショートガイド部材30の台座31の底面にブロー成形用のコア部材1の台座2を載せた状態の組立体Bとして保持部材20に保持される。すなわち、コア部材1とショートガイド部材30とは互いの筒身を軸方向に一致させた状態で連結され、この状態で保持部材20に保持されている。
【0062】
第2実施例では、一方のガイドを構成するコア部材1の加熱筒体4と他方のガイドを構成するショートガイド部材30の筒身部32との軸方向における距離を離すことができるため、延伸ロッドRの芯出しの精度をより高精度とすることができる。なお、芯出し精度は少し落ちるが、筒身部32を加熱筒体4方向に向けた状態で固定部21に載置して組み付けた組立体とすることによっても、互いの筒身を軸方向に一致させて連結した状態とすることができ、延伸ロッドRの軸方向への直線的な移動を達成するための基準となるガイドとしての機能を発揮することが可能である。
【0063】
この実施例においても、高圧空気aは、その一部がショートガイド部材30の貫通孔33を通じてコア部材1の内部に導かれ、さらに肩部5に形成された複数の小孔6を通じてプリフォームPの内部に導かれるため、第1実施例同様に口筒部P1と胴部P2との境界部分の延伸を促進させることができる。
【0064】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0065】
例えば、上記第1実施例及び第2実施例では、コア部材1とガイド部材(ロングガイド部材10又はショートガイド部材30)との組立体A,Bを示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、プリフォームPを内側から加熱することのみを目的とする場合にはコア部材1のみで構成することが可能であり、さらにガイド部材を取り入れて組立体A,Bを構成することにより、延伸ロッドRの芯出し精度を高めることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のブロー成形用のコア部材は、簡単な構成でプリフォームの加熱時間の短縮を図ると共に口筒部以外の部分(特に胴部)の白化を防止することに優れ、さらには延伸ロッドの芯出し精度を高めてより均一肉厚からなる2軸延伸ブロー成形を提供できるものであり、特にはPETボトルを大量且つ高速に生産する容器分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 ; コア部材
2 ; 台座
3 ; 基部
4 ; 加熱筒体
5 ; 肩部
6 ; 小孔
7 ; 貫通孔
10 ; ロングガイド部材
11 ; 台座
12 ; 筒身部
13 ; 貫通孔
14 ; 連通孔
15 ; ガイド孔
20 ; 保持部材
21 ; 固定部
22 ; 保持部
23 ; 通気路
30 ; ショートガイド部材
31 ; 台座
32 ; 筒身部
33 ; 貫通孔
34 ; 連通孔
a ; 高圧空気
A ; 組立体
B ; 組立体
H ; 赤外線ヒーター(熱源)
P ; プリフォーム
P1 ; 口筒部
P2 ; 胴部
P3 ; 底部
P4 ; ネックリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒形状に射出成形されたプリフォーム(P)を加熱して延伸ブロー成形する際に前記プリフォーム(P)で覆われたその内側に設置されるブロー成形用のコア部材であって、
プリフォーム(P)の口筒部(P1)の内側に対向配置される円筒状の基部(3)と、前記基部(3)からプリフォーム(P)の底部(P3)方向に延びる細長円筒状の加熱筒体(4)とを有することを特徴とするブロー成形用のコア部材。
【請求項2】
加熱筒体(4)の表面に、鏡面仕上げ又は金メッキ処理が施されている請求項1記載のブロー成形用のコア部材。
【請求項3】
加熱筒体(4)は、プリフォーム(P)加熱時にヒーターから出力される熱エネルギーによる温度上昇と、ヒーターから出力される光エネルギーの表面反射とを利用して前記プリフォーム(P)の内側を加熱するものである請求項1又は2記載のブロー成形用のコア部材。
【請求項4】
基部(3)と加熱筒体(4)との連結部分に環状且つ傾斜状の肩部(5)を形成し、該肩部(5)に前記基部(3)の内部に連通する小孔(6)を穿設した請求項1乃至3のいずれか一項に記載のブロー成形用のコア部材。
【請求項5】
複数の小孔(6)が肩部(5)に形成されている請求項4記載のブロー成形用のコア部材。
【請求項6】
小孔(6)を備えた肩部(5)が、プリフォーム(P)のネックリング(P4)近傍の位置に配置されている請求項4又は5記載のブロー成形用のコア部材。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のブロー成形用のコア部材を用いた組立体であって、
台座(11)と加熱筒体(4)よりも筒身寸法の長い筒身部(12)を有するロングガイド部材(10)が、基部(3)及び前記加熱筒体(4)の内部に組み付けられていることを特徴とするブロー成形用のコア部材を用いた組立体。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のブロー成形用のコア部材を用いた組立体であって、
台座(31)と加熱筒体(4)よりも細く筒身寸法の短い筒身部(32)を有するショートガイド部材(30)が、コア部材(1)の底部側に連結されていることを特徴とするブロー成形用のコア部材を用いた組立体。
【請求項9】
台座(11,31)に、基部(3)の外部と内部とを連通する貫通孔(13,33)を形成した請求項7又は8記載のブロー成形用のコア部材を用いた組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−245690(P2012−245690A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118963(P2011−118963)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】