説明

プッシュオンスイッチ

【課題】各種電子機器の操作部に用いられるプッシュオンスイッチに関し、薄型化に対応し、高品位の防水性を備えた小型のものを提供することを目的とする。
【解決手段】良導電性金属薄板からなる略矩形をした平板状の第一接点板11の上に、中央に円形の中央孔13Aが設けられたLCP樹脂からなる矩形平板状のスペーサ13を配し、その上に、中央に円形の中孔12Bを有した良導電性金属薄板からなる略矩形をした平板状の第二接点板12を位置させ、熱圧着によりスペーサ13がアンカー効果を生じて、第一接点板11および第二接点板12のそれぞれの表面と相互に固着されて一体化させたものとし、その第二接点板12の上にドーム状の可動接点4を配して、第二接点板12上面に粘着される保護シート5で可動接点4を覆って保持する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の操作部に用いられるプッシュオンスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器は、電子機器の小型、軽量化並びに薄型化とあわせて、多機能化が留まることなく進んでおり、その操作部に用いられるプッシュオンスイッチについても、小型薄型化されたものへの強い要望がある。
【0003】
このような従来のプッシュオンスイッチについて、図14〜図16を用いて説明する。
【0004】
図14は従来のプッシュオンスイッチの断面図、図15は同分解斜視図であり、同図において、1は上方開口の凹部内底面に中央固定接点2とその中央固定接点2を挟む点対称位置の2箇所に外側固定接点3が露出した合成樹脂製のケースで、上記中央固定接点2および外側固定接点3のそれぞれと個別に接続されてケース1の外方に導出された各端子2Aおよび3Aを備えている。
【0005】
4は下方開口で上方凸形のドーム状に形成され、下面に良導電性の表面処理がなされた弾性金属薄板からなる可動接点で、上記ケース1の凹部内に収容され、その外周下端が外側固定接点3上に載り、ドーム状頂点部下面が中央固定接点2の上面と間隔を有して対向している。
【0006】
5は下面に粘着剤6が設けられた絶縁性フィルムからなる保護シートで、上記ケース1の凹部上面を覆うように、下面の粘着剤6でケース1上に粘着固定されている。
【0007】
以上のように従来のプッシュオンスイッチは構成されており、次にその動作を説明する。
【0008】
まず、保護シート5の上方から可動接点4のドーム状頂点部に押圧力を加えていき、その押圧力が所定の力を超えると、図16に示すように、可動接点4のドーム状中央部が節度感を伴って下方凸形に弾性反転し、中央部下面が下方の中央固定接点2に接触する。これにより、可動接点4を介して外側固定接点3と中央固定接点2が導通し、対応する端子2A,3A間がスイッチオンとなる。
【0009】
そして、上記押圧力を解除すると、可動接点4のドーム状中央部が節度感を伴って元の図14の上方凸形に弾性復帰し、中央固定接点2から離れて、対応する端子2A,3A間がスイッチオフとなるものであった。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−297175号公報
【特許文献2】特開2002−63823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来のプッシュオンスイッチにおいては、それぞれの固定接点2,3および端子2A,3Aをインサート成形してケース1を形成していたため、インサート成形で今以上に厚みを薄くすると合成樹脂の薄肉部分で充填不足になりやすく、更なる小型薄型化に対応することが困難であるという課題があった。また、インサート成形後の熱収縮によって合成樹脂とインサート部材との接触部分に微細な隙間が生じるため、ケース1側で高品位の防水性を備えさせることが困難であった。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、薄型化に対応し、ケースに相当する部材を含めて高品位の防水性を備えた小型のプッシュオンスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0015】
請求項1に記載の発明は、平板状で端部に第一端子を備えた導電性金属薄板からなる第一接点板と、この第一接点板に対面し、中央に中孔を有した平板状で端部に第二端子を備えた導電性金属薄板からなる第二接点板と、上記第一接点板と上記第二接点板との間に介在し、アンカー効果で上記第一、第二接点板のそれぞれと固着して一体化され、中央孔を有した絶縁性のLCP樹脂(液晶ポリマー)からなる薄膜のスペーサと、上記第二接点板上に当接載置され、中央部下面が上記第二接点板の中孔および上記スペーサの中央孔を介して上記第一接点板の上面と間隔をあけて対面した可動接点と、この可動接点を保持して上記第二接点板上面に装着された可撓性を備えた蓋体とからなるプッシュオンスイッチとしたものであり、従来品のケースに相当する部位を、構成部材となる2枚の金属薄板を積層させて構成するため、それら構成部材の厚みに対応した薄型化が可能で、かつ熱圧着によりアンカー効果を生じさせて接点板とスペーサ間を固着させているので、従来品よりも高品位の防水性を備えた小型のプッシュオンスイッチを提供することができるという作用を有する。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、第二接点板の中孔近傍の周囲に複数個の位置決め用孔を設け、加圧と加熱により第一接点板と上記第二接点板とにアンカー効果で固着するスペーサの軟化したLCP樹脂が上記位置決め用孔から上方へ突出して、上記第二接点板上に当接載置される可動接点の位置決め部が形成されたものであり、可動接点の位置決め部を容易に形成でき、可動接点の組み合わせ時や操作時を含んで、可動接点の位置ずれを防止して安定した操作感触を維持することができるという作用を有する。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、蓋体を、下面全面にアクリル系等の耐熱性を有する粘着剤が設けられたポリイミド樹脂フィルム等の耐熱性を備えた保護シートとしたものであり、容易に第二接点板上に装着可能で防水性も確保されるという作用を有する。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の発明において、保護シートの下面全面が粘着部分ではなく、可動接点に接する部分に非粘着部が設けられ、第二接点板に接する位置は粘着部とされているものであり、保護シートの非粘着部を設けたことによって、可動接点の挙動に対し保護シートからの影響を軽減して軽快な操作感触が得られるという作用を有する。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の発明において、第二接点板に、中孔の中心部に向けて舌片部が延設されているものであり、可動接点が押圧されて弾性反転すると、舌片部が押圧されて下方の第一接点板に接触してスイッチオンするようになるため、可動接点の電気的特性(良導電性)が不要となり、可動接点下面の銀メッキ等の表面処理をなくしてコストを低減することができるという作用を有する。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1記載の発明において、蓋体と可動接点を排すると共に、第二接点板の中孔がなくされて、その第二接点板の中央部に上方凸形のドーム状をした弾性反転可能な可動部が一体に形成されたものであり、スペーサを介在させた第一・第二接点板だけでスイッチが構成でき、かつ接点部を密閉できるので、構成部材を削減した高品位の防塵・防水性を備えたプッシュオンスイッチを実現できるという作用を有する。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の発明において、第二接点板の可動部の外周部分に、上記可動部の挙動を補助する応力緩和部を設けたものであり、応力緩和部により第二接点板に設けた可動部の弾性変形が容易になり、可動部の良好な挙動が得られるものに実現できるという作用を有する。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項6記載の発明において、第二接点板のドーム状の可動部を囲む同一円周上に複数のスリットが設けられ、上記スリット間に位置した連結部が上記可動部を上方に持ち上げたように傾斜して周縁の平板部と繋がったものであり、可動部が持ち上げられているので、弾性反転する動作距離が長くなり、長い動作距離を備えたスイッチを実現することができるという作用を有する。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、第一端子および第二端子がJベント形状であるものであり、ハンダ付け時の実装位置ずれを防止することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、薄型化に対応し、高品位の防水性を備えた小型のプッシュオンスイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるプッシュオンスイッチの外観図
【図2】同分解斜視図
【図3】同断面図
【図4】同動作状態の断面図
【図5】第二接点板を別構成としたプッシュオンスイッチの外観図
【図6】同分解斜視図
【図7】本発明の第2の実施の形態によるプッシュオンスイッチの分解斜視図
【図8】同断面図
【図9】同動作状態の断面図
【図10】本発明の第3の実施の形態によるプッシュオンスイッチの分解斜視図
【図11】同断面図
【図12】本発明の第4の実施の形態によるプッシュオンスイッチの分解斜視図
【図13】同断面図
【図14】従来のプッシュオンスイッチの断面図
【図15】同分解斜視図
【図16】同動作状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図13を用いて説明する。なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態によるプッシュオンスイッチの外観図、図2は同分解斜視図、図3は同断面図である。
【0028】
同図において、11はステンレス鋼板の両面に銀メッキ処理がなされた良導電性金属薄板からなる略矩形をした平板状の第一接点板で、対向する2つの辺から1つずつ第一端子11Aが外方に向けて延設されている。各第一端子11Aは、上記2つの辺の端部に近い位置に設けられている。
【0029】
12は上記第一接点板11と同じくステンレス鋼板の両面に銀メッキ処理がなされた良導電性金属薄板からなり、中央に円形の中孔12Bを有し、略矩形をした平板状の第二接点板で、上記第一接点板11の第一端子11Aが設けられている対向する2つの辺の上記第一端子11Aとは反対側の端部に近い位置から1つずつ第二端子12Aが外方に向けて延設されている。
【0030】
13はLCP樹脂(液晶ポリマー)からなる薄膜の矩形平板状のスペーサで、上記第二接点板12の中孔12Bと同心でほぼ同じ大きさの円形の中央孔13Aが設けられており、第一接点板11と第二接点板12とを対面状態として、それらの間に介在し、第一接点板11と第二接点板12それぞれの対面する面に固着されている。つまり、図3に示すように、下側から第一接点板11、スペーサ13、第二接点板12の順に積層状態に組み合わされて一体化されている。
【0031】
この積層状態で一体化させているものが従来品のケース1に相当する部材であり、その製作方法としては、上記スペーサ13を挟持した状態で、第一接点板11の下方と第二接点板12の上方から圧力と熱が加えられる、つまり熱圧着されることにより、接着剤等を用いることなくLCP樹脂製のスペーサ13が軟化し、アンカー効果を生じて、スペーサ13の表面が第一接点板11および第二接点板12のそれぞれの表面と相互に固着されて構成されている。
【0032】
また、第一接点板11の2つの第一端子11A側に対応する第二接点板12の2つの角部は、ハンダ付け等での第一端子11Aとの短絡防止のため、切り欠かれた面取りが設けられており、同様に、第二接点板12の2つの第二端子12A側に対応する第一接点板11の2つの角部にも面取りが設けられており、その面取り部分には、スペーサ13の軟化したLCP樹脂が、対応する第二接点板12もしくは第一接点板11の反対面までの高さに突出した後、硬化してコーナー突部13Bが形成されている。
【0033】
さらに、第一接点板11と第二接点板12との外周縁部分における絶縁距離を確保するため、第一接点板11は、上面視で第二接点板12より小寸になされており、上記コーナー突部13Bと同様に、第一接点板11の外周縁部分にスペーサ13の軟化したLCP樹脂が第二接点板12と同じ外形位置まで充填され、かつその下面は第一接点板11の下面と同一平面になされている。なお、第一接点板11を上面視で第二接点板12より小寸とした構成としているが、逆に第二接点板12の方を上面視で第一接点板11より小寸として、その小寸となった外周縁部分にスペーサ13の軟化したLCP樹脂を充填する構成としても良い。
【0034】
4は上方凸形の円形ドーム状に形成され、下面に良導電性の表面処理がなされた弾性金属薄板からなる可動接点で、上記第二接点板12の上に当接載置されており、中央部下面が上記第二接点板12の中孔12Bおよび上記スペーサ13の中央孔13Aを介して上記第一接点板11の上面と間隔をあけて対面している。
【0035】
そして、蓋体として、ポリイミド樹脂等の耐熱性を有する絶縁フィルムからなる矩形の保護シート5が、その下面全面に設けられたアクリル系等の耐熱性を有する粘着剤6で可動接点4の上面を粘着保持すると共に第二接点板12の上面に粘着固定されてプッシュオンスイッチが構成されている。
【0036】
この保護シート5は下面の粘着剤6によって第二接点板12上に容易に密着状態で装着でき、その粘着状態では第二接点板12との間の防水性も確保することができる。なお、この保護シート5をスペーサ13と同じLCP樹脂製のフィルムを用いて、第二接点板12上面部分のみに熱圧着させて取り付けても良い。
【0037】
次に、以上のように構成されたプッシュオンスイッチの動作を説明する。
【0038】
まず、上方から保護シート5の中央に押圧力を加えると、下方の可動接点4のドーム状頂点部にその押圧力が加わる。そして、その押圧力が所定の力を超えると、図4の動作状態の断面図に示すように、節度感を伴ってドーム状中央部が下方凸形に弾性反転して、中央部下面が下方に対面している第一接点板11の上面に接触する。これにより、可動接点4を介して第二接点板12と第一接点板11とが電気的に導通し、第二端子12Aと第一端子11Aとの間でスイッチオンとなる。
【0039】
そして、保護シート5に加えていた押圧力を解除すると、可動接点4は自己復帰力により、節度感を伴って元の上方凸形のドーム状に弾性復帰し、ドーム状の中央部下面が第一接点板11の上面から離れて、対応する第二端子12Aと第一端子11Aの間はスイッチオフとなる。
【0040】
このように本実施の形態によれば、従来品のケース1に相当する部材として、平板状の導電性金属薄板からなる第一接点板11と第二接点板12に対し、二つの接点板11,12間にLCP樹脂製の薄膜のスペーサ13を介在させ、加圧、加熱によりスペーサ13が軟化して二つの接点板11,12表面にアンカー効果が働いて固着した簡素な積層構造としたため、第一接点板11、スペーサ13および第二接点板12のそれぞれの厚みを薄くすることで薄型化に対応できる。さらに、第一接点板11、第二接点板12のそれぞれとスペーサ13との間はアンカー効果によって固着しているので、その固着部分に隙間が生じない。このため、従来品のケース1に相当する部材を含めて高品位の防水性を備えた小型のプッシュオンスイッチを提供することができる。
【0041】
また、図5は第二接点板を別構成としたプッシュオンスイッチの外観図、図6は同分解斜視図であり、図5、図6において、上述の形態と異なっているところは、略矩形の第二接点板22の中央の円形の中孔22Bから間隔をあけた周囲位置に複数の位置決め用孔22Cが追加されて設けられていることと、第一接点板21の2つの第一端子21Aと第二接点板22の2つの第二端子22Aのそれぞれが、先端に向かって斜め上方に向くように曲げ加工された、所謂Jベント形状になされていることである。
【0042】
上記位置決め用孔22Cは略矩形の第二接点板22の角部方向となる位置の4ヶ所に設けられている。そして、角部を構成する二つの辺に略平行に対応した二辺と中孔22Bの円周に対応した一辺からなる略三角形状になされ、中孔22Bに対応した一辺は、中孔22Bと同心円の円弧形状で、その直径は可動接点4の外径とほぼ同じ大きさで構成されている。なお、図6は、上記図2と同様に、第二接点板22と第一接点板21とをスペーサ23を介して一体化した後の構成としている状態での斜視図である。
【0043】
当該構成のものも上述したものと同様に、第二接点板22と第一接点板21との間にスペーサ23を挟持した状態で、圧力と熱が加えられて、スペーサ23がアンカー効果により第一接点板21および第二接点板22のそれぞれの表面と相互に固着されており、第二接点板22の中孔22Bおよびスペーサ23の中央孔23Aを介して第一接点板21の中央部が露出している。
【0044】
そして、第二接点板22の位置決め用孔22Cによって、軟化したスペーサ23のLCP樹脂がこの位置決め用孔22Cを介してその上方に突出しており、この位置決め用孔22Cから上方に突出したLCP樹脂は、図示しない上型に設けられた位置決め部形成用の窪み部分に充填された後、硬化して、第二接点板22から僅かに突出したLCP樹脂による位置決め部24が形成されたものとなっている。
【0045】
この第二接点板22の角部の位置決め用孔22Cに対応して形成された4ヶ所の位置決め部24は、第二接点板22の角部を構成する二つの辺に略平行に対応した二辺と中孔22Bの円周に対応した一辺で構成される略三角形状で、中孔22Bに対応する一辺は、中孔22Bと同心円の円弧形状を形成し、その直径は可動接点4の外径より大きくかつ可動接点4の位置ずれが抑えられる径で設定されている。つまり、可動接点4がこの第二接点板22上に突出形成された4ヶ所の位置決め部24内に配置された状態で、位置決め部24が可動接点4の位置ずれを防止する機能を果たすように設けられている。
【0046】
第一接点板21とスペーサ23、そしてその上に位置した第二接点板22はこのように熱圧着されて一体となっており、4つの位置決め部24で形成される円周内の第二接点板22上に可動接点4が載置され、その上方から下面に粘着剤6を備えた保護シート5が可動接点4を覆って、第二接点板22上に粘着固定されている。
【0047】
なお、図1〜図4で説明した形態の場合と同様に、保護シート5をスペーサ23と同じLCP樹脂製のフィルムを用いて、第二接点板22上面部分のみに熱圧着させて取り付けても良い。
【0048】
このように本実施の形態によれば、新たな部材を用いることなく、第一接点板21と第二接点板22との間に介在したスペーサ23を熱圧着して一体化する際に、可動接点4の位置決め部24を容易に形成でき、可動接点4の組み合わせ時や操作時を含んで、可動接点4の位置ずれを防止して安定した操作感触を維持することができるものを実現できる。
【0049】
なお、この第二接点板22の位置決め用孔22Cおよび軟化したスペーサ23のLCP樹脂による位置決め部24は、4ヶ所に限らず、2ヶ所以上で可動接点4の位置決めができる内径寸法・形状であれば良い。
【0050】
また、図示はしないが、保護シート5下面の粘着剤6は、第二接点板12,22に粘着固定する部分は粘着剤6を備えた粘着部とし、可動接点4の上面の一部分もしくは可動接点4の上面全面に対応する範囲は粘着剤6を設けない構成とするか、非粘着部材が設けられて形成された非粘着部を有したもので構成してもよい。この構成であれば、可動接点4の一部分もしくは上面全面に保護シート5が粘着していないものにできるため、可動接点4の弾性反転と弾性復帰動作に保護シート5からの影響を少なくして、軽快な操作感触が得られるようにできる。
【0051】
なお、製造プロセスの都合等で、可動接点4を前もって粘着保持させた可動接点4付き仕掛かり保護シート5を第二接点板12,22上に粘着する手順で組み合わせる場合は、可動接点4上面に対応する範囲のうち、中心部のみ粘着部として周辺部を非粘着部としたり、粘着部を帯状としたり、さらに粘着部を点在状態とするなど、適宜変更して粘着保持すれば良い。
【0052】
さらに、従来品のプッシュオンスイッチの構成であると、可動接点4はケース1の凹部内底面に露出した2箇所の外側固定接点3上に載置され、押圧操作時の受け部となされているため、可動接点4の中央位置で押圧される場合の操作感触に対し、中央位置からずれた位置で押圧される場合は操作感触が鈍くなりやすく、操作感触に差が生じ易いが、本発明による構成では、可動接点4はその外周下端の全部が第二接点板12,22上に載っているので、安定した軽快な操作感触を維持することができる。
【0053】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1の構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0054】
図7は本発明の第2の実施の形態によるプッシュオンスイッチの分解斜視図、図8は同断面図であり、同図において、21は第一端子21Aを備え、ステンレス鋼板の両面に銀メッキ処理がなされた良導電性金属薄板からなる略矩形をした平板状の第一接点板で、25は第二端子25Aを備え、中孔25Bを有したステンレス鋼板からなる第二接点板であり、それら第一接点板21と第二接点板25との間に中央孔13Aを備えたLCP樹脂製のスペーサ13が介在し、熱圧着されて第一接点板21および第二接点板25のそれぞれの表面とアンカー効果により固着されて一体となっている。そして、第二接点板25の中孔25Bを覆って上方凸形の円形ドーム状に形成された可動接点14が第二接点板25上に載置され、その可動接点14を覆って保持状態にして下面の粘着剤6で第二接点板25の上面に保護シート5が粘着固定されている。これらは実施の形態1の構成と同じである。
【0055】
本実施の形態によるものは、第二接点板25は下面のみに銀メッキ処理がなされており、その中孔25Bの端部から中孔25Bの中心部に向けて可撓性を備えた舌片部25Cが延設されている。つまり、可動接点14のドーム状の中央部下面が舌片部25C上面と間隔をあけて対面し、この舌片部25C下面は、第一接点板21の上面中央部と間隔をあけて対面している。また、可動接点14の下面には良導電性の表面処理がなされていないところが異なっている。
【0056】
以上のように構成されたプッシュオンスイッチの動作を説明すると、まず、保護シート5の中央に上方から押圧力を加えると、可動接点14のドーム状頂点部にその押圧力が加わり、その押圧力が所定の力を超えると、図9の動作状態の断面図に示すように、節度感を伴って可動接点14のドーム状中央部が弾性反転し、中央部下面が下方に対面している第二接点板25の舌片部25Cを下方に撓め、舌片部25C下面が第一接点板21に接触する。これにより、第二接点板25と第一接点板21とが電気的に導通し、第二端子25Aと第一端子21Aとの間でスイッチオンとなる。
【0057】
次に、保護シート5に加えていた押圧力を解除すると、可動接点14は自己復帰力により、節度感を伴って元の上方凸形のドーム状に弾性復帰し、押圧されて撓んでいた第二接点板25の舌片部25Cも自らの弾性力で第一接点板21の上面から離れて元の位置に戻り、対応する第二端子25Aと第一端子21Aの間はスイッチオフとなる。
【0058】
このように本実施の形態によれば、第二接点板25に設けられた舌片部25Cが押圧されてその下面が下方の第一接点板21上面に接触してスイッチオンするスイッチ構成であるため、第二接点板25の良導電性を得る表面処理は下面側だけで良い。また、電気的導通に可動接点14自身は関与していないため、可動接点14の電気的特性(良導電性)が不要であり、その下面に銀メッキ等の良導電性の表面処理がいらなくなるため、構成部材のコストを低減することができる。
【0059】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。なお、実施の形態1の構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0060】
図10は本発明の第3の実施の形態によるプッシュオンスイッチの分解斜視図、図11は同断面図であり、同図において、21は第一端子21Aを備え、ステンレス鋼板の両面に銀メッキ処理がなされた良導電性金属薄板からなる略矩形をした平板状の第一接点板で、26は第二端子26Aを備え、略矩形をしたステンレス鋼板からなる第二接点板であり、それら第一接点板21と第二接点板26との間に中央孔13Aを備えたLCP樹脂製のスペーサ13が介在し、熱圧着されて第一接点板21および第二接点板26の対向するそれぞれの表面とアンカー効果により固着され、第一接点板21、スペーサ13および第二接点板26が一体となっている。
【0061】
本実施の形態によるものは、第二接点板26の上面には表面処理がなされてなく、下面のみに銀メッキ処理がなされている。そして、第二接点板26の形状としても、実施の形態1に示したような中孔がなく、平板部26Dの中央部分に上方凸形の円形ドーム状に膨出し、押圧されて弾性反転可能な可動部26Bが形成されており、さらにその可動部26Bの外周に可動部26Bを囲んで応力緩和部26Cが形成されているものとしている。この応力緩和部26Cは、可動部26Bの外周縁に接し、その外周縁から再度上方凸形に膨出した円環状に形成され、その膨出高さは可動部26Bの膨出高さのほぼ1/2に形成されている。
【0062】
このように、当該第二接点板26は、実施の形態1で示したような中孔がなく、略矩形の一枚の弾性金属薄板から、中央部に可動部26Bが形成され、その可動部26Bを囲む外周に円環状の応力緩和部26Cが一体に形成されているものとなっている。
【0063】
以上までの構成でプッシュオンスイッチは成立しているが、スイッチ操作時に指等からの静電気が第二接点板26に流れ込むことを防止するため、図10、図11に示すように、第二接点板26の上面には、上述の形態と同様に、絶縁フィルム製の保護シート5が粘着固定されている。
【0064】
次にその動作を説明すると、まず、保護シート5の上方から第二接点板26の可動部26Bのドーム状頂点部に押圧力を加えていき、その押圧力が所定の大きさを超えると、ドーム状の可動部26Bの中央部が節度感を伴って下方凸形に弾性反転して、ドーム状頂点部下面が下方に対面した第一接点板21の中央部上面に接触し、スイッチオンとなる。そして、この押圧力を解除すると、下方凸形に弾性反転していたドーム状部分が節度感を伴って元の上方凸形に弾性復帰し、可動部26Bの中央部は第一接点板21から離れて、スイッチオフとなる。
【0065】
このように本実施の形態によれば、平板状の第二接点板26に、上方に膨出した弾性反転と弾性復帰可能な円形ドーム状の可動部26Bを一体に形成したので、接点部分を密閉状態に構成でき、かつ少ない構成部材によりコストを低減した高品位の防塵・防水性を備えたプッシュオンスイッチを実現できる。
【0066】
そして、図10、図11に示すように、この第一接点板26の可動部26Bの外周を囲むように円環状の応力緩和部26Cを設けた構成にすることで、可動部26Bの弾性反転および弾性復帰動作に際して、可動部26Bからの応力を受けてこの部分も撓むことで、可動部26Bの弾性変形が容易になり、良好な挙動が得られる。
【0067】
また、この形態の保護シート5を省いた構成であれば、最小の構成部材で防塵・防水性の優れたプッシュオンスイッチを実現することができる。一方、上述説明した保護シート5を用いた構成にすると、操作時の静電気対策が必要な場合に好適である。
【0068】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。なお、実施の形態3の構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0069】
図12は本発明の第4の実施の形態によるプッシュオンスイッチの分解斜視図、図13は同断面図であり、同図において、21は第一端子21Aを備え、上下両面に銀メッキ処理がなされた平板状の第一接点板で、27は第二端子27Aを備え、中央部に上方凸形に膨出した円形ドーム状の可動部27Bが設けられ、下面に銀メッキ処理がなされた略矩形の第二接点板であり、それら第一接点板21と第二接点板27との間に中央孔13Aを備えたLCP樹脂製のスペーサ13が介在し、熱圧着されて第一接点板21および第二接点板27のそれぞれの表面とアンカー効果により固着されて一体となっている。そして、第二接点板27の上面に下面の粘着剤6で保護シート5が粘着固定されている。
【0070】
これらは実施の形態3の構成と同様であるが、本実施の形態によるものは、第二接点板27の中央部に設けられた円形ドーム状の可動部27Bの外周を囲むように、同一円周上に等間隔で4つの円弧状のスリット27Cが設けられ、これら4つのスリット27C間に位置した4つの連結部27Eが、円形ドーム状の可動部27B全体を上方に持ち上げたように傾斜して周縁の平板部27Dに繋がっている。
【0071】
つまり、第二接点板27の中央部に一体に形成された円形ドーム状の可動部27Bは、図11で示した実施の形態3の可動部26Bの位置より4つの連結部27Eによって少し上方へ持ち上げられて位置しており、可動部27Bのドーム状頂点部下面と、対面する第一接点板21の上面中央部との間隔が広く設定されたものとなっている。
【0072】
このように構成されたプッシュオンスイッチは、第二接点板27の可動部27Bのドーム状頂点部が連結部27Eで持ち上げられた状態になっているため、保護シート5上方から押圧された際に、節度感を伴って弾性反転して下方の第一接点板21上面に接触するスイッチオンまでの動作距離が長いものとなる。なお、可動部27Bが弾性反転する動作に伴って、可動部27Bに加わる押圧力を支持する連結部27Eはその傾斜が緩やかになる方向に若干撓む動作をする。
【0073】
そして、押圧操作が解除されると、連結部27Eの弾性復帰力も加わりながら可動部27Bが節度感を伴って弾性復帰し、可動部27B下面が第一接点板21の上面から離れて、元のスイッチオフの状態となる。
【0074】
このように本実施の形態によれば、新たな部材を採用することなく、弾性反転する動作距離を長くできるため、長い動作距離を有し、かつ高品位の防水性を備えたプッシュオンスイッチを実現することができる。
【0075】
なお、各実施の形態で説明した第一接点板11,21および第二接点板12,22,25,26,27は、ステンレス鋼板に銀メッキ処理がなされたものとしたが、銀クラッド材などで形成してもよく、良導電性でハンダ付け性の良い表面処理がなされていれば良い。また、表面処理は全面でなくても良く、端子11A,21A,12A,22A,25A,26A,27Aの下面部分は、ハンダ付け性の良い表面処理がなされ、各中央部分のスイッチの接点機能部分では、良導電性の表面処理がなされていれば良い。
【0076】
また、図5〜図13に示すように、第一接点板21の第一端子21Aおよび第二接点板22,25,26,27の第二端子22A,25A,26A,27Aのそれぞれは、先端が斜め上方に向くように曲げ加工された、所謂Jベント形状になされている。これら第一端子21Aおよび第二端子22A,25A,26A,27AがJベント形状であれば、搭載される電子機器の回路基板にハンダ付け実装する際に、第一端子21A、第二端子22A,25A,26A,27Aの曲げ加工部分に溶融したハンダが浸っていく際に、一組4本の端子21A,22A,25A,26A,27Aにセルフアライメント効果が作用して、各端子21A,22A,25A,26A,27Aが回路基板の対応するランド間の中央に位置するようになるため、プッシュオンスイッチの実装位置を安定させることができる。なお、この端子のJベント形状は、図1に示す形態のプッシュオンスイッチに適用しても、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によるプッシュオンスイッチは、薄型化に対応し、高品位の防水性を備えた小型のものにでき、主に各種電子機器の操作部等に有用である。
【符号の説明】
【0078】
4,14 可動接点
5 保護シート
6 粘着剤
11,21 第一接点板
11A,21A 第一端子
12,22,25,26,27 第二接点板
12A,22A,25A,26A,27A 第二端子
12B,22B,25B 中孔
13,23 スペーサ
13A,23A 中央孔
13B コーナー突部
22C 位置決め用孔
24 位置決め部
25C 舌片部
26B,27B 可動部
26C 応力緩和部
26D,27D 平板部
27C スリット
27E 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状で端部に第一端子を備えた導電性金属薄板からなる第一接点板と、この第一接点板に対面し、中央に中孔を有した平板状で端部に第二端子を備えた導電性金属薄板からなる第二接点板と、上記第一接点板と上記第二接点板との間に介在し、アンカー効果で上記第一、第二接点板のそれぞれと固着して一体化され、中央孔を有した絶縁性のLCP樹脂からなる薄膜のスペーサと、上記第二接点板上に当接載置され、中央部下面が上記第二接点板の中孔および上記スペーサの中央孔を介して上記第一接点板の上面と間隔をあけて対面した可動接点と、この可動接点を保持して上記第二接点板上面に装着された可撓性を備えた蓋体とからなるプッシュオンスイッチ。
【請求項2】
第二接点板の中孔近傍の周囲に複数個の位置決め用孔を設け、加圧と加熱により第一接点板と上記第二接点板とにアンカー効果で固着するスペーサの軟化したLCP樹脂が上記位置決め用孔から上方へ突出して、上記第二接点板上に当接載置される可動接点の位置決め部が形成された請求項1記載のプッシュオンスイッチ。
【請求項3】
蓋体を、下面全面にアクリル系等の耐熱性を有する粘着剤が設けられたポリイミド樹脂フィルム等の耐熱性を備えた保護シートとした請求項1記載のプッシュオンスイッチ。
【請求項4】
保護シートの下面全面が粘着部分ではなく、可動接点に接する部分に非粘着部が設けられ、第二接点板に接する位置は粘着部とされている請求項3記載のプッシュオンスイッチ。
【請求項5】
第二接点板に、中孔の中心部に向けて舌片部が延設されている請求項1記載のプッシュオンスイッチ。
【請求項6】
蓋体と可動接点を排すると共に、第二接点板の中孔がなくされて、その第二接点板の中央部に上方凸形のドーム状をした弾性反転可能な可動部が一体に形成された請求項1記載のプッシュオンスイッチ。
【請求項7】
第二接点板の可動部の外周部分に、上記可動部の挙動を補助する応力緩和部を設けた請求項6記載のプッシュオンスイッチ。
【請求項8】
第二接点板のドーム状の可動部を囲む同一円周上に複数のスリットが設けられ、上記スリット間に位置した連結部が上記可動部を上方に持ち上げたように傾斜して周縁の平板部と繋がった請求項6記載のプッシュオンスイッチ。
【請求項9】
第一端子および第二端子がJベント形状である請求項1〜8のいずれかに記載のプッシュオンスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−103286(P2011−103286A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29770(P2010−29770)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】