説明

プッシュスイッチ

【課題】防水性を保つことができ作業性が向上するプッシュスイッチを提供する。
【解決手段】下面に開口を有する側周壁14を備える軟質のボタン10と、側周壁14の開口内に装着されたスイッチ基板30と、スイッチ基板30の上に配されたスイッチ40と、側周壁14の周囲に固定された筒状のケース50と、スイッチ基板30の下面に配置され、ケース50の内面に係止されたストッパ60を備え、スイッチ基板30の下面外周31と側周壁14の下端側内周面17の全周を含む領域に充填材70が充填されているプッシュスイッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水型のプッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
防水型のプッシュスイッチとして、例えば特許文献1には、図6に示すように、押しボタン103と、基板110と、ドーム(スイッチ)111と、裏面カバー113と、筒状のケース101とを備えるプッシュスイッチが記載されている。
【0003】
このケース101の開口縁には、開口内部に向かって折り曲げられた環状リブ105が設けられ、この環状リブ105とケース内周との間には溝106が設けられている。
押しボタン103の外周にはフランジ108が設けられ、フランジ108には溝106に嵌合する突起107が設けられている。
押しボタン103がケース内に配置されると、押しボタン103の突起107がケースの溝106に嵌合する。
基板110は、ケース101の下面開口から挿入される。この基板110は、押しボタン103のフランジ108の下面に接して配置され、裏面カバー113により固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−203315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6のプッシュスイッチでは、プッシュスイッチの上部に水滴が付着すると、水滴が溝106を通り、フランジ108と基板110の間から押しボタン103の内側に侵入する可能性がある。また、水滴がプッシュスイッチの下部に付着すると、水滴がケース101の内面を通り、押しボタン103のフランジ108と基板110との間から押しボタン103の内側に侵入する可能性がある。
【0006】
このため、図6のプッシュスイッチでは、押しボタン103内の防水性を保つために、ケースの環状リブ105の上面やケースの下面開口の2箇所にポッティング材(充填材)109、114を塗布する必要があり、ポッティング材の塗布工程が多く、作業性が極めて悪い。
また、ポッティング材は一般に硬化時間が1日程度と非常に長く、乾燥スペースを確保する必要もあるため、ポッティング材の塗布工程の削減が望まれている。
【0007】
そこで本発明は、押しボタン内の防水性を保つことができると共に、ポッティング材の塗布工程を削減して作業性を向上することができるプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成すべく成された本発明のプッシュスイッチは、
上壁部と、下面に開口を有する側周壁を備える軟質のボタンと、
前記側周壁の前記開口内に装着されたスイッチ基板と、
前記スイッチ基板の上に配されたスイッチと、
前記側周壁の周囲に固定された筒状のケースと、
前記スイッチ基板の下面に配置され、前記ケースの内面に係止されたストッパと、
前記スイッチ基板の下面側に充填され、少なくとも前記スイッチ基板の下面外周と前記側周壁の下端側内周面の全周を含む領域に充填された充填材と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のプッシュスイッチでは、
前記ストッパは、中央部と、前記中央部から外方に延出して前記ケースの内面と係止する延出部を備え、
前記充填材は、前記スイッチ基板の前記下面外周と前記ストッパの前記延出部との間に充填されていることが好ましい。
また本発明のプッシュスイッチでは、
前記ケースは、内面にガイド溝を有し、
前記ストッパの前記延出部は、前記ガイド溝に係合されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スイッチ基板がボタンの側周壁の開口内に装着され、スイッチ基板の下面外周と側周壁の下端側内周面の全周を含む領域に充填材が充填されていることにより、プッシュスイッチの上部に充填材を塗布することなく水滴がボタン内に侵入することを防止できる。このため、ボタン内の防水性を保つことができると共に、充填材の塗布工程を削減して作業性が向上できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るプッシュスイッチを示し、図1(a)は平面図、図1(b)は斜視図である。
【図2】図2は、図1(a)中のA−A線における断面図である。
【図3】図3は、図1のプッシュスイッチを下方から見たときの組立斜視図である。
【図4】図4は、充填材を塗布する前の図1のプッシュスイッチの底面図である。
【図5】図5は、図1のプッシュスイッチの組立工程を説明するための斜視図である。
【図6】図6は、従来のプッシュスイッチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に説明する。
図1ないし図4において、本実施形態におけるプッシュスイッチ1は、図示しない車両用のドアハンドル装置の開口孔に装着される。ドアハンドル装置の開口孔にはプッシュスイッチ1のボタン10が外部に露出して取り付けられ、ボタン10が指等により押圧されることによりドアの施錠もしくは解錠ができるようになっている。
【0013】
プッシュスイッチ1は、ボタン10と、スイッチ基板30と、スイッチ40と、ケース50と、ストッパ60と、充填材70を有する。
【0014】
ボタン10は、図2に示すように軟質樹脂により一体成形され、ドアハンドル装置の開口孔からドアの外方に突出する上壁部11と、上壁部11の下方に突出する略円柱状の押圧部12と、押圧部12の周囲で上壁部11の下方へ向けてテーパ状に広がる弾性変形可能な肉薄の座屈部13と、座屈部13の下端部から下方へ延び下面に開口を有する側周壁14を備える。
この側周壁14の外周全周には溝部15が設けられている。また、側周壁14の内側には段差部16が設けられている。
【0015】
スイッチ基板30は、絶縁性基板からなり、所定の配線パターン(不図示)とスルーホール44が設けられている。
スイッチ基板30は、ボタン10の側周壁14の開口内に装着され、スイッチ基板30の上面外周部分が段差部16に当接している。
側周壁14の下端から段差部16までの高さは、スイッチ基板30の厚みよりも大きく設定されており、側周壁14の下端はスイッチ基板30より下方に突き出た状態になっている。
【0016】
スイッチ40は、スイッチ基板30上に配置される。スイッチ40は、操作部41と本体部42を有する。スイッチ40の端子43は、スイッチ基板30に設けられているスルーホール44に挿入され、半田45により配線パターン(不図示)に接続される(図4参照)。
【0017】
リード線46は、スイッチ基板30の配線パターン(不図示)を介して端子43と電気的に接続されている。スイッチ40の信号は、このリード線46を介して外部に伝達される。
【0018】
スイッチ40の操作部41は、図2の上方に付勢され、操作部41が図2の下方に押圧されるとクリック感を得て、図示しない接点間が導通し、操作部41の押圧力を除くと元の状態に戻り、接点間が不導通となり、スイッチ40の開閉ができる。
【0019】
ケース50は、硬質樹脂により略四角筒状に形成される。ケース50は、ケース50内面から内向きに全周に亘って突出する内鍔部51を有する。内鍔部51は、ボタン10の側周壁14の溝部15と嵌合される。
ケース50の内面には、内鍔部51の下方にガイド溝52が設けられる。ガイド溝52には、後述するストッパ60の延出部63,64の先端が係合される。
このガイド溝52は、ケース50の下面開口からケース50の内側面の上方に向かって設けられる。ガイド溝52内には、ストッパ60の延出部63,64の先端を係止する係止突起53が設けられる。
また、ケース50には、リード線46をケース50の外側に導出するための孔54が設けられる。
【0020】
ストッパ60は、スイッチ基板30をケース内で支持する部材である。このストッパ60は、硬質樹脂で形成され、スイッチ基板30の下面に配置され、ケース50の係止突起53により係止される。
ストッパ60がケース内に係止されると、スイッチ基板30の上面外周部分がボタン10の段差部16を内鍔部51に押圧し、段差部16と内鍔部51は密着状態となり、水滴がボタン10の上部に付着しても、水滴はボタン10内に侵入しにくくなる。
【0021】
本実施形態のストッパ60は、図3及び図4に示すように、I字形の中央部61と、中央部61の両端から一側に延出する2つの第1の延出部63と、中央部61の中央から他側に延出する第2の延出部64を有する。
延出部63,64の先端は、ケース50のガイド溝52に係合され、ガイド溝52内の係止突起53に係止される。
【0022】
延出部63,64は、先端ほど狭いテーパ部65が形成され、延出部63,64とスイッチ基板30の下面外周31との間には空間Sが設けられる(図2参照)。これにより、後述の充填材70が充填される前は、スイッチ基板30の下面外周31と側周壁14の下端側内周面17は全周に亘って露出した状態になっている。
【0023】
充填材70は、ケース50の下面を封止するものであり、例えば2液混合のエポキシ樹脂などを用いることができる。
この充填材70は、前述の空間Sを含むスイッチ基板下面のケース内の空間に万遍なく充填され、空間Sに露出した状態になっている側周壁14の下端側内周面17とスイッチ基板30の下面外周31の全周に亘って充填される。
【0024】
次に、本例のプッシュスイッチ1の組立工程を図5を用いて簡単に説明する。
図5(a)は、ケースアッシーにスイッチ基板アッシーを組み込む前の斜視図である。図5(b)は、ケースアッシーにストッパを組み込む前の斜視図である。図5(c)は、ケースアッシーにストッパを組み込んだ後の斜視図である。図5(d)は、リード線をケースのリード線孔に挿入した後の斜視図である。図5(e)は、ディスペンサにより充填材が塗布される際の斜視図である。図5(f)は、充填材が、ケース下面開口内全体に塗布された後の斜視図である。
【0025】
まず、リード線46が、スイッチ40を取り付けたスイッチ基板30に半田付けされ、スイッチ基板アッシー80が形成される。
次に、ボタン10がケース50内に配置され、ケース50の内鍔部51とボタン10の溝部15が嵌合し、ケースアッシー81が形成される。
そして、スイッチ基板アッシー80は、ケースアッシー81に装着される。(以上、図5(a)参照)
ケースアッシー81にスイッチ基板アッシー80が装着された状態では、図2に示すように、ボタン10の側周壁14の下端は、スイッチ基板30より下方に突き出た状態になり、側周壁14の下端側内周面17は全周に亘って露出した状態になっている。
【0026】
次に、ストッパ60が、ケース50の下面開口から挿入される。このストッパ60は、ケース50のガイド溝52に係合され、係止突起53にて係止される(図5(b),(c)参照)。
次に、リード線46が、ケース50のリード線孔54に挿入される(図5(d)参照)。
【0027】
次に、充填材70が、ディスペンサ71によりスイッチ基板30の下面に塗布され(図5(e)参照)、スイッチ基板下面のケース50内の空間に充填される(図5(f)参照)。
この充填材70を充填する際、図2に示すように、ストッパ60の延出部63,64とスイッチ基板30の下面外周31との間には空間Sが設けられているため、充填材70は、空間Sを含むスイッチ基板下面のケース内の空間に万遍なく充填される。したがって、空間内に露出した状態になっているスイッチ基板30の下面外周31と側周壁14の下端側内周面17を含む領域にも全周に亘って充填材70が充填される。
そして、充填材70が硬化すると、プッシュスイッチ1が完成する。
【0028】
このように構成される本実施形態のプッシュスイッチ1は、図2の図面上方向から下方向にボタン10を押圧すると、座屈部13が弾性変形すると共に、押圧部12がスイッチ40の操作部41を下方へ押し込み、スイッチ40をオンする。
ボタン10への押圧力がなくなると、ボタン10が弾性復元して、ボタン10と操作部41が初期位置へ戻り、スイッチ40はオフになり、以後、繰り返し操作が可能となる。
【0029】
また、本実施形態のプッシュスイッチ1では、スイッチ基板30がボタン10の側周壁14の開口内に装着され、スイッチ基板30の下面外周31と側周壁14の下端側内周面17の全周を含む領域に充填材70が充填されている。このため、プッシュスイッチ1の下部からボタン10内への水の浸入を防止できるだけではなく、仮に水がプッシュスイッチ1の上部から内鍔部51と溝部15との間隙を超えて浸入したとしても、ボタン10内への水の浸入を防止することもできる。
【0030】
したがって、本実施形態のプッシュスイッチ1では、図6の従来例のようにプッシュスイッチの上下2箇所に充填材を塗布する必要はなく、ケースの下側からの充填材の塗布だけで十分な防水性が得られるため、充填材の塗布工程を削減して作業性を向上することができる。
【0031】
また、本実施形態のプッシュスイッチ1では、ストッパ60がスイッチ基板30の下面に配置され、係止突起53によりケース50に固定される。このようにするとストッパ60は、スイッチ基板30をボタン10内に固定でき、ボタン10に加わる押圧力をストッパ60で受け止めることができる。
また、ストッパ60をスイッチ基板30の下面全体に配置してしまうと、スイッチ基板30の下面外周31と側周壁14の下端側内周面17の部分に充填材70を充填できなくなるが、本実施形態ではストッパ60の延出部63,64とスイッチ基板30の下面外周31との間に空間Sが設けられている。このため、空間内に露出した状態になっているスイッチ基板30の下面外周31と側周壁14の下端側内周面17を含む領域に全周に亘って充填材70を充填することができ、ボタン10内への水の浸入を確実に防止することができる。
【0032】
また、本実施形態では、図4に示すように、ストッパ60の延出部63,64がケース50内の四隅を避けて配置しているため、側周壁14の下端側内周面17の四隅にも充填材70が回り易く、スイッチ基板30の下面外周31と側周壁14の下端側内周面17を含む領域に空隙を残さずに、より確実に充填することができる。
また、ケース50内の四隅を避けてストッパ60を配置した場合、充填材70を塗布するまでの間にストッパ60が移動する危険性があるが、本実施形態ではストッパ60の延出部63,64は、ケース50の内側面から一段掘り下げられたガイド溝52に係合される。このため、ストッパ60をケース50に組み込み後、充填材70を塗布するまでの間に、ストッパ60がケース50内を移動することがない。よって、充填材70が、スイッチ基板30の下面外周31と側周壁14の下端側内周面17を含む領域に全周に亘って容易に回ることができ、防水性が低下することがない。
【0033】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で適宜変更して実施することができる。具体的には、例えばストッパ60は図3に示したような形状に限らす、十字形でも、H字形でもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 プッシュスイッチ
10 ボタン
11 上壁部
12 押圧部
13 座屈部
14 側周壁
15 溝部
16 段差部
17 側周壁の下端側内周面
30 スイッチ基板
31 スイッチ基板の下面外周
40 スイッチ
41 操作部
42 本体部
43 端子
44 スルーホール
45 半田
46 リード線
50 ケース
51 内鍔部
52 ガイド溝
53 係止突起
54 孔
60 ストッパ
61 中央部
63 第1の延出部
64 第2の延出部
65 テーパ部
70 充填材
71 ディスペンサ
80 スイッチ基板アッシー
81 ケースアッシー
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上壁部と、下面に開口を有する側周壁を備える軟質のボタンと、
前記側周壁の前記開口内に装着されたスイッチ基板と、
前記スイッチ基板の上に配されたスイッチと、
前記側周壁の周囲に固定された筒状のケースと、
前記スイッチ基板の下面に配置され、前記ケースの内面に係止されたストッパと、
前記スイッチ基板の下面側に充填され、少なくとも前記スイッチ基板の下面外周と前記側周壁の下端側内周面の全周を含む領域に充填された充填材と、
を備えることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
前記ストッパは、中央部と、前記中央部から外方に延出して前記ケースの内面と係止する延出部を備え、
前記充填材は、前記スイッチ基板の前記下面外周と前記ストッパの前記延出部との間に充填されていることを特徴とする、請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
前記ケースは、内面にガイド溝を有し、
前記ストッパの前記延出部は、前記ガイド溝に係合されていることを特徴とする、請求項2に記載のプッシュスイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−9419(P2012−9419A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107283(P2011−107283)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000220125)東京パーツ工業株式会社 (122)
【Fターム(参考)】