説明

プッシュボタン

プッシュボタンが、キャップ(1)と、内部領域(22)を有するハウジング(2)と、キャップ(1)をハウジング(2)に接続するリセット要素(3,4)と、電気的スイッチ要素(5)とを具備する。キャップ(1)は、ハウジング(2)の内部に配置された電気的スイッチ要素(5)を作動させられるように、電気的スイッチ要素(5)に対して静止位置からスイッチング位置へ移動可能である。リセット要素(3,4)は、作動後にキャップ(1)を静止位置に戻す。リセット要素(3,4)は第1バネ手段(3)と第2バネ手段(4)を有し、第1バネ手段(3)は第2バネ手段(4)から、少なくともプッシュキャップ(1)の操作軸(A)の方向にオフセットして配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴部の前の節に記載のプッシュボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
プッシュボタンは電気的構成部品として先行技術により公知である。プッシュボタンは通常、プッシュキャップを有し、利用者はこのプッシュキャップを介して手を使って電気的スイッチ要素に力を加えることができる。この力によって電気的スイッチ要素が操作される。この場合、通常、プッシュキャップはハウジング内を移動可能に設置される。さらに、公知のプッシュボタンは、プッシュキャップが操作された後に静止位置に戻すバネ手段を有する。
【0003】
例えば、スライドガイドを介してプッシュキャップを誘導し、支持するプッシュボタンが存在する。プッシュキャップの最適な移動、特に平行移動を達成するためには、プッシュキャップをハウジング内で非常に正確に誘導しなければならない。平行移動とは、プッシュキャップをこの操作軸に実質的に直角に位置した状態で操作軸に沿って移動させることを意味する。プラスチックのプッシュボタンの場合は、個々の部品に高度な精密さが要求されるとともに、比較的長い誘導ラインが要求される。誘導ラインが長くなれば、特に、プッシュボタンの物理的高さが大きくなってしまう。
【0004】
さらにまた、プッシュキャップを傾斜システム又は連結システムを介して支持するプッシュボタンが当業者に公知である。
【0005】
特許文献1もまた連結システムを開示している。特許文献1は、板バネ形状の接触部と、該板バネで作用する操作要素を備えたプッシュボタンを開示する。この場合、板バネは電気的接触のために用いられる。
【0006】
先行技術のプッシュボタンの問題点は、スイッチング移動が、プッシュボタンに力を加える軸位置に依存していることである。これではプッシュキャップが平行ではない非制御運動を行ってしまう。この状況は、例えば、公共交通機関で使用されるような大面積プッシュボタンの場合、さらに悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許公開第3429914号
【発明の概要】
【0008】
このような先行技術の背景に対して、本発明は先行技術の問題点を克服するプッシュボタンを提供する目的に基づく。さらなる目的は、ほぼ平行な動作を実行するプッシュボタンのプッシュキャップである。さらなる目的は、物理的高さのより小さいプッシュボタンを提供することであり、プッシュボタンを少なくとも短い移動で操作可能にすることを目的とする。さらなる目的は、破壊行為を防止できるプッシュボタンである。
【0009】
この目的は、特許請求項1の特徴を有するプッシュボタンによって達成される。特許請求項1によると、プッシュボタンは、プッシュキャップと、内部領域を有するハウジングと、プッシュキャップをハウジングに接続するリセット要素と、電気的スイッチ要素とを具備する。プッシュキャップはハウジングの内部領域に配置された電気的スイッチ要素を作動させられるように、電気的スイッチ要素に対して静止位置からスイッチング位置へ移動可能である。リセット要素は操作後にプッシュキャップを静止位置に戻す。リセット要素は第1バネ手段と第2バネ手段を有し、第1バネ手段は第2バネ手段から、少なくともプッシュキャップの操作軸の方向にオフセットして配置される。
【0010】
2つのバネ手段のオフセット配置により、プッシュキャップ上のどのポイントに力を加えても常にプッシュキャップは同一の平行移動をする利点が生まれる。
【0011】
バネ手段は好ましくはプッシュキャップの一部又はプッシュキャップ支持体に接続される。プッシュキャップ支持体はプッシュキャップに一体に形成される要素又は分離要素であってもよい。
【0012】
第1バネ手段は好ましくは第2バネ手段に実質的に平行に配置される。これにより、プッシュキャップの移動の平行性がさらに向上する。
【0013】
第1バネ手段と第2バネ手段はプッシュキャップの中心軸から同一の半径方向距離で配置されることが好ましい。操作軸又は中心軸の方向に見て、第1バネ手段は第2バネ手段と一致して配置されるのが好ましい。角度でオフセットした配置の試作品も同様に良好な結果であった。
【0014】
少なくとも3対のバネ手段対が設けられることが好ましく、各バネ手段対は第1バネ手段と第2バネ手段からなる。この場合、プッシュキャップはハウジングの中心に保持される。
【0015】
第1バネ手段及び/又は第2バネ手段は板バネ形状であることが好ましい。
【0016】
第1バネ手段及び/又は第2バネ手段は皿バネ座金(Federscheiben)形状又は皿バネ座金切片の形状であることが好ましい。
【0017】
第1バネ手段が、プッシュキャップの中心軸からの半径方向距離が第2バネ手段より大きい、又は小さいことが好ましい。
【0018】
さらなる有利な実施形態は従属項で特徴付けられる。
図を参照して例として好ましい実施形態をさらに詳細に以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1a】本発明によるプッシュボタンの第一の実施形態の、線B−Bに沿った面を上から見た概略断面図である。
【図1b】本発明によるプッシュボタンの第一の実施形態の、静止状態で横から見た概略断面図である。
【図1c】本発明によるプッシュボタンの第一の実施形態の、スイッチが入っている状態で横から見た概略断面図である。
【図2a】本発明によるプッシュボタンの第二の実施形態の、線B−Bに沿った面を上から見た概略断面図である。
【図2b】本発明によるプッシュボタンの第二の実施形態の、静止状態で横から見た概略断面図である。
【図2c】本発明によるプッシュボタンの第二の実施形態の、スイッチが入っている状態で横から見た概略断面図である。
【図2d】バネ配置が異なるさらなる実施形態による、線B−Bに沿った面を上から見た概略断面図である。
【図2e】バネ配置が異なるさらなる実施形態による、静止状態で横から見た概略断面図である。
【図3a】本発明によるプッシュボタンの第三の実施形態の、線B−Bに沿った面を上から見た概略断面図である。
【図3b】本発明によるプッシュボタンの第三の実施形態の、静止状態で横から見た概略断面図である。
【図3c】本発明によるプッシュボタンの第三の実施形態のスイッチが入っている状態で横から見た概略断面図である。
【図4】第四の実施形態の断面図である。
【図5】第五の実施形態の断面図である。
【図6a】第六の実施形態の断面図である。
【図6b】第六の実施形態の断面図である。
【図7a】第七の実施形態の平面図である。
【図7b】第七の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施可能な実施形態を、図を参照して以下に詳細に説明する。図面と説明は好ましい実施形態を示し、説明するものであり、特許請求の範囲に記載の本発明を限定するために解釈されるべきではない。
【0021】
図1a〜1cは、本発明によるプッシュボタンの概略図である。ここに図示したプッシュボタンは、プッシュキャップ1と、ハウジング2と、リセット要素3,4と、電気的スイッチ要素5とを備える。利用者はプッシュキャップ1を介して電気的スイッチ要素5を操作することができる。本発明によるプッシュボタンは、例えば、公共輸送機関で使用することができる。この場合、乗客は、例えば電車、バス、又はトラムのドアを開けるためにプッシュボタンを操作する。この場合、電気的スイッチ要素5がドア制御システムに電気的に接続されて電気回路を閉じ、その結果、ドア駆動部が作動する。
【0022】
利用者は、操作方向又は操作軸Aに沿ってプッシュキャップ1を静止位置(図1b参照)からスイッチング位置(図1c参照)へ移動させる。ここでは操作方向Aはプッシュキャップ10に対して直角の方向である。静止位置では、プッシュキャップ1は電気的スイッチ要素5に対して、電気的スイッチ要素5が作動しないように位置する。図1bは静止位置のプッシュキャップ1を示す。図1cはスイッチング位置を示し、プッシュキャップ1の一部が電気的スイッチ要素5上に置かれ、電気的スイッチ要素5の一部を移動させ、それにより電気的スイッチ要素5を作動させたことを示している。
【0023】
ここでは、プッシュキャップ1は上面11と下面12を有し、プッシュキャップ1にプッシュキャップ支持体10が一体に形成される。プッシュキャップ支持体はプッシュキャップ1から実質的に直角に突出する。電気的スイッチ要素5はこのプッシュキャップ支持体10によって作動する。
【0024】
ここでは、プッシュキャップ1はリセット要素3,4を介してハウジング2に接続される。本実施形態では、ハウジング2は実質的に円柱形であり、背面壁21から直角に延びる側壁20を有する。例えば、長円形、長方形、正方形又は多角形等の他の外形形状も同様に可能である。
【0025】
利用者がプッシュキャップ1を操作しなくなるとすぐに、リセット要素3,4によって、プッシュキャップ1はスイッチング位置から静止位置へ戻る。
【0026】
第一の実施形態では、リセット要素3,4は第1バネ手段3と第2バネ手段4からなる。2つのバネ要素3,4はここでは板バネの形状である。2つのバネ要素3,4は対で配置されるので、一般的にはバネ手段対と称してもよい。
【0027】
操作方向Aから見ると、2つのバネ手段3,4は上下に配置され、この場合、特に位置する場所が互いに一致している。さらにバネ手段3,4は操作方向Aにおいてオフセットして、又は互いに一定の距離を置いて配置される。この場合、バネ手段3,4は第一の外側端部30,40でハウジング2に、ここでは側壁20に、固定的に接続されている。バネ手段3,4は他のハウジング部分に接続することも可能である。第2の端部31,41で、バネ手段3,4はプッシュキャップ1又はプッシュキャップ1の一部に、例えばここではプッシュキャップ支持体10に、固定的に接続される。従って、板バネ3,4は両端で堅固に固定される。操作方向Aに対して直角方向から見ると、バネ手段3,4はプッシュボタン1の一部及びハウジング2の一部とともに平行四辺形を形成すると言うこともできる。従って、これは堅固な接合である。2つの外側端部30,40は固定的に取り付けられているため操作方向Aに対して実質的に平行に移動するので、堅固に固定されたバネ3,4はハウジング2において、プッシュキャップ1を戻すためだけではなく駆動するためにも使用される。この点において、プッシュキャップ支持体10を操作方向Aに対して直角にそろえることは重要ではなく、バネ手段3,4が操作方向Aに互いにオフセットして配置されるように取り付けられることが重要な要因である。プッシュキャップ支持体10を配置する位置は自由に選択することも可能であり、例えば、ハウジング2の中心に位置するように配置する、又は図1aに示すようにハウジング2の中心からオフセットして配置することが可能である。
【0028】
換言すれば、プッシュキャップ1を操作方向Aに沿って操作している間、バネ手段3,4の配置により、第1バネ手段3と第2バネ手段4は同一のS字形状に変形すると言うこともできる。これにより、プッシュキャップ1は操作方向Aに沿ってほぼ直線状に移動する。
【0029】
さらに、このような堅固な固定と平行配置により、プッシュキャップ1上の任意のポイントに力が加えられたときに、プッシュキャップ1は常に同じ平行移動をするという効果が生じる。その結果、電気的スイッチ要素5をプッシュキャップの下の所望の位置に配置することができ、配置が異なっても規定のスイッチング動作を狭い許容差範囲内に維持することができる。さらにバネ要素がプッシュキャップ1を誘導するので、その結果、ハウジングとプッシュキャップの間にガイドを設ける必要がない。従って、ハウジングとプッシュキャップの間には摩擦が生じない。同様にスイッチを入れる感覚に悪影響を及ぼす遊びがない。ハウジング2に対するプッシュキャップ1の動作が均一であること及び構造的高さが小さいことにより、小さなスロット開口部をプッシュキャップ1とハウジング2の間に設けることができる。これにより、破壊者によってナイフの刃等の先端の鋭利な薄い物体が挿入されるのを防ぎ、破壊者に対する防御が強化される。
【0030】
図1bからわかるように、静止位置では、板バネ3,4は操作方向Aに対して実質的に直角に配置される。スイッチング位置では、板バネ3,4の大部分が操作方向Aに対して角度をなす。あるいは、静止位置のときに板バネ3,4が操作方向Aに角度をなすことも可能である。この場合、板バネ3,4はプッシュキャップ1に向けることも、背面壁21に向けることも可能である。
【0031】
ここでは、板バネの長さLはハウジング2の半径より大きい。従って、プッシュキャップ支持体10はハウジング2に対して偏心して位置する。大きい長さLの板バネは、プッシュキャップ1の操作移動距離に変わりはないが、操作力が小さくてすむ点が有利である。しかし、ハウジング2の半径と実質的に同一の板バネ3,4の長さLを選択することも可能であり、その結果、プッシュキャップ支持体はハウジング2に対して同軸の状態になる。様々な応用において、半径より短い長さを選択することも同様に有利である。
【0032】
直径50mmのプッシュキャップを備えたプッシュスイッチの場合、対応する板バネの長さLは、例えば、35mm、厚さは0.2mmである。このような寸法にするとスイッチング動作を1mmにすることができる。未定義の操作に対する許容差範囲はこの場合±0.1mmの範囲である。他の寸法及びスイッチング動作も同様に実施可能である。
【0033】
例として、ここに示すバネ手段3,4は金属材料、特にばね鋼から構成してもよい。あるいは、バネ手段3,4は、繊維強化プラスチックやエラストマー等のプラスチックから構成してもよい。これらの材料を混合することも可能である。例えば、金属材料をエラストマーで覆うことが実施可能である。例えば、バネ手段3,4はプッシュキャップ1及び/又はハウジング2に配置されたスロットに挿入することができ、接着剤等で固定することができる。あるいは、バネ手段3,4をプッシュキャップ1又はハウジング2に接着剤で接続させることが可能である。プッシュキャップ1及びハウジング2がプラスチックで構成される場合、射出成形の工程中に、バネ手段3,4をプッシュキャップ1とハウジング2に直接接続させることも可能である。
【0034】
図2a〜2cはプッシュボタンの第二の実施形態を示す。同一部品には同一参照符号を付す。本実施形態では複数のバネ手段対3,4が設けられる。この場合も前と同様にバネ手段対3,4は板バネ形状である。少なくとも3つのバネ手段対3,4がハウジング2の外周に均一な間隔に分布して配置されることが好ましい。円筒形のハウジングの場合、均一な間隔とは第1のバネ手段対3,4と第2のバネ手段対3,4との間が同じ角度であることを意味する。従って、3つのバネ手段対3,4が配置される場合、2つの隣り合うバネ手段対3,4の間の角度は120°である。少なくとも3つのバネ手段対を配置することにより、プッシュキャップ1が操作方向Aに平行に移動し、ハウジング2の側壁20に対して中心となるという効果がある。
【0035】
本実施形態では、4つのバネ手段対3,4が示され、これらは、間の角度をそれぞれ90°として配置されている。
【0036】
そのほかにも、2つのバネ手段対3,4を配置することもでき、この場合、バネ手段対は、操作方向Aに対して直角の直線移動に対して、より大きな剛性を有するはずであり、それにより、プッシュキャップの横方向へのずれを防ぐことが可能である。例えば、この場合、バネ手段対の幅Bをより広くすることが可能である。
【0037】
図2d及び2eで示される別の実施形態の1つでは、第1のバネ手段3は、ここでは破線で示される第2のバネ手段4に対して軸方向にオフセットして、第2のバネ手段4から角度を置いて配置されている。この場合、既に上述したように、第2のバネ手段4は操作軸方向A又は中心軸方向において第1のバネ手段3から距離を置いている。さらに、第2のバネ手段4は上からみると第1のバネ手段3に角度を持って配置される。本実施形態では、オフセット角度は45°である。この配置によってもまた、操作中におけるプッシュキャップ1の平行移動について良好な結果を達成することができた。
【0038】
図3a〜3cはプッシュボタンの第三の実施形態を示す。ここでもまた同一部品には同一参照符号を付している。この場合では、バネ手段3,4は皿バネ座金(Federscheiben)の形状である。ここでは物理的に同一の2つの皿バネ座金を互いに平行に配置している。
【0039】
皿バネ座金3,4は外周32,42と、この外周に対して同心円状の、皿バネ座金を貫通する開口部33,43を有する。中心軸方向に見ると、外周32,42と開口部33,43は互いに軸方向にオフセットされているので、その結果、皿バネ座金3,4は円錐形である。そのほかにも、平坦な皿バネ座金3,4も使用することができる。
【0040】
設置された状態では、プッシュキャップ支持体10は開口部33,43に固定的に接続され、一方、ハウジング2の側壁20は外周32,42に固定的に接続される。プッシュキャップが操作されると、2つの皿バネ座金3,4は上述の板バネと類似の作用をする。
【0041】
皿バネ座金3,4を対で配置すると、動作が操作方向Aに対して実質的に平行となる効果を有する。さらに、皿バネ座金3,4は、電気的スイッチ要素5が配置される内部領域22をプッシュキャップ1に対して封止する封止要素として作用する。この場合、内部領域22は水分、ほこり等の環境の影響から封止される。このために大面積バネ要素3,4を設けることもできる。この場合、特に、バネ要素4を電気的スイッチ要素に近接して固定的に配置し、もう一方のバネ要素3を皿バネ座金の形状にすることが可能である。
【0042】
そのほかには、例えば、対で配置した皿バネ座金切片も可能である。皿バネ座金切片とは上述の皿バネ座金の円切片である。この場合、このような円切片は、例えば20°〜90°の角度に渡る。皿バネ座金切片は、上記の第二の実施形態で説明した板バネと同様に一定の間隔で配置される。
【0043】
ここに記載したバネ手段の配置によって、設置深さがかなり小さいプッシュボタンの提供が可能であり、同時に、同じ操作力、同じ操作動作で操作面の直径を拡大させることが可能である。プッシュキャップが規定的かつ平行に動作し、その直径が大きくなることにより、電気的スイッチ要素の設置位置の自由度が増し、電気的スイッチ要素はプッシュキャップ支持体10の真下に配置されない。さらに、複数のスイッチ要素を1つのプッシュボタン内に配置することが可能である。
【0044】
図4は第四の実施形態の断面図である。ここでもまた、同一部品に同一参照符号を付す。
【0045】
ここでは、プッシュキャップ1は、固定された、好ましくは円形の中心部13を有し、中心部13はキャップ要素14で完全に取り囲まれ、キャップ要素14はここでは環状要素14である。中心部13は実質的に平坦なディスク形状である。キャップ要素14はここでは波形構造を有し、中心部13から半径方向及び軸方向に、最終的にリム15に結合するまで広がる。リム15は中心部13の上面11に実質的に直角に軸方向に延びる。キャップ要素14はフレキシブルリングと称してもよい。
【0046】
キャップ要素14はさらに、ここでは実質的に環状のプッシュキャップ支持体10に接続される。この場合、プッシュキャップ支持体10は軸方向を向く外側リング16を有し、外側リング16からフランジ17が半径方向に広がる。フランジ17は同様に軸方向を向く内側リング18に通じる。ここでは外側リング16、フランジ17、内側リング18は円周環状溝19と隣接する。例として、環状溝19は、発光ダイオードを備えたプリント基板又は環状のLCDディスプレー等の電気部品の収容に使用することができる。ここでは、例えば、キャップ要素14は透明又は光透過性物質から構成してもよい。このとき、利用者は外側から発光ダイオードを見ることができる。
【0047】
外側リング16の直径はリム15の直径より若干小さいので、外側リング16とリム15の間に中間空隙が生まれる。本実施形態では、封止要素71、この場合ではO−リングがこの中間空隙に配置される。封止要素71は環状溝19を環境の影響から密封するために用いられる。さらにここでは、内部領域22が2つのバネ手段3,4で封止される。例えば、水分又はほこりが、リム15とガイド要素26のリム26’の間の領域に入っても、バネ配置により内部領域22に入り込むことはできない。プッシュキャップ1をプッシュキャップ支持体10に接続するために、スナップ作用接続、溶接接合(超音波溶接)、ネジ接続、リベット接合、接着剤接合等の多様な接続オプションがある。
【0048】
プッシュキャップ支持体10の内側リング18は2つのバネ手段3,4に接続される。ここでは、バネ手段3,4はここでもまた皿バネ座金形状である。この場合、皿バネ座金3,4は内側リング18から半径方向に内側へ向けて、即ち、プッシュボタンの中心軸Mに向けて広がる。皿バネ座金3,4は、皿バネ座金の開口部33,34の端でハウジング2に接続される。
【0049】
ここでは、皿バネ座金3,4は2つの任意の環状屈曲点34,44及び35,45を有し、これらはビードとも呼ぶことができる。屈曲点33,44及び35,45は皿バネ座金を半径方向に3つの部分に分ける。屈曲点34,44及び35,45はこれらがパチンと折れる際にクリック音を鳴らすことができる効果を有する。これは、利用者がプッシュボタンを操作するときにカチッという音で機械的フィードバックを受け取ることを意味する。
【0050】
ここでは、前と同様、側壁20と共にハウジング2は内部領域22を形成する。本実施形態では、内部領域22は電気的スイッチ要素5が配置されるプリント基板6を収容するために使用される。この場合、プリント基板6は側壁20から内部領域22に広がるフランジ24上に置かれる。
【0051】
この場合、フランジ24とプリント基板6はハウジング2の底部21を形成する。また、ハウジング2は、半径方向に側壁20から外側に広がるさらなるフランジ25を有する。ガイド要素26はフランジ25上に一体に形成され、キャップ要素14、ひいてはプッシュキャップ10を誘導するために用いられる。さらに、フランジ25とガイド要素26は、ドア等の平面要素にプッシュボタンを取り付けるために連結要素として機能する。スイッチが入った状態では、この実施形態では、リム15の下端部15’がガイド要素26上に置かれる。ガイド要素はリム15を収容するために環状間隙29を有する。
【0052】
この場合、側壁21とフランジ25の間の接合領域では、ハウジング2はフランジ25から実質的に直角に延びるさらなる側壁27を有する。この場合、環状間隙28はハウジングの下部領域、側壁21とさらなる側壁27の間に、形成され、ここではO-リング70である封止手段7とシェル8であるリム81の収容に使用される。この実施形態では、ケーブル61はシェル8を通ってプリント基板に接続される。
【0053】
ここには示さないが、別の一実施形態では、2つのプッシュキャップ支持体が設けられる。第1のプッシュキャップ支持体は上述のように実質的に環状のプッシュキャップ支持体10の形状をしている。このプッシュキャップ支持体はここでは第1バネ要素3によりハウジング2に接続される。第2のプッシュキャップ支持体はここでは第一の実施形態のプッシュキャップ支持体と類似に設計されているので、ロッドの形状をしていると言うこともできる。従って、第2のプッシュキャップ支持体は中心部13から直角に突出し、好ましくは第1バネ要素3を貫通して突出する。ここでは、第2バネ要素4は第2プッシュキャップ支持体とハウジング2に接続される。この場合、第1バネ要素3は、第2バネ要素4よりもプッシュキャップ1に接近して配置される。
【0054】
図5はプッシュボタンの第五の実施形態を示す。この実施形態では、第1バネ要素3はプッシュキャップ1の一体構成要素である。ここでは、プッシュキャップ1は同様にプッシュキャップ支持体10を有し、プッシュキャップ支持体10はプッシュキャップ1上に一体に形成され、電気的スイッチ要素5の方向にプッシュキャップ1から直角に突出する。プッシュキャップ支持体10は側壁と呼ぶこともできる。ここでは、バネ要素3はプッシュキャップ支持体10から突出する。さらに、円周リム36がここではバネ要素3上に一体に形成されている。
【0055】
プッシュキャップ保持要素9がここではハウジング2とプッシュキャップ1の間に配置されている。プッシュキャップ保持要素9はプッシュキャップ支持体10に接続可能に設計された円周リム90を有する。第2バネ要素4はこのリム90から突出し、ハウジング2の一部の上に載る。
【0056】
組み立てられた状態では、円周リム90はプッシュキャップ支持体10に接続されている。この場合の第1バネ要素3の円周リム36は、ハウジング2とプッシュキャップ保持要素9の上に置かれる。円周リム90がハウジング2に対してバネ効果の範囲で移動可能なようにプッシュキャップ保持要素9はハウジング2上に置かれる。図からわかるように、第1バネ要素3と第2バネ要素4は互いに平行で、操作軸Aの方向に互いに一定の距離で配置される。さらに、バネ要素3,4はプッシュボタンの中心軸Mから外側へ、角度を有して広がる。
【0057】
上記と同様に、電気的スイッチ要素5はここではハウジング2の内部領域22に配置され、プッシュキャップ1の動きによって操作される。
【0058】
プッシュキャップ1、ハウジング2、プッシュキャップ保持要素9はネジ又はリベット等の取り付け手段91で互いに接続されることが好ましい。
【0059】
図6aと6bは第六の実施形態を示し、プッシュボタンは上部又は第1のプッシュキャップ1aと下部又は第2のプッシュキャップ1bとを備える。2つのプッシュキャップ1a、1bは互いに平行に配置される。この実施形態では、プッシュキャップ支持体10a又は10bはそれぞれ、同様に対応するプッシュキャップ1a、1bの底面に一体に形成され、ハウジング2の内部領域22内に突出する。各プッシュキャップ支持体10a又は10bは、ここでも第1バネ要素3と第2バネ要素4のそれぞれを介してハウジング2に接続される。この実施形態では、ハウジング2は、上部2aと下部2bとで構成され、これらは互いに接続されている。上部プッシュキャップ1aはここでは上部2aに接続され、下部プッシュキャップ1bは下部2bに接続される。
【0060】
さらに、操作板101がプッシュキャップ支持体10aの内部領域22と向かい合う面に一体に形成され、プッシュキャップ1aの操作中にスイッチ要素5の方向に移動し、スイッチ要素5を操作する。
【0061】
第2のプッシュキャップ支持体10bはここではプリント基板6に接続され、プリント基板6の上にはスイッチ要素5が配置される。この場合、プリント基板6は内部領域22に位置するように配置される。プッシュキャップ1bが操作されると、プリント基板6はスイッチ要素5とともに操作板101の方向に移動し、それにより作動する。換言すれば、プリント基板6は第1のプッシュキャップ1aに対して軸方向に移動可能にハウジング2に設置されることを意味する。直線運動はここでは第2のプッシュキャップ1bの操作によって開始される。また同時にプリント基板6の直線運動によって軸方向に電気的スイッチ要素5を移動させ、電気的スイッチ要素5が第1のプッシュキャップ1a又は操作板101に接触すると電気的スイッチ要素5を作動する。この実施形態では、プッシュキャップ1a,1bはどちらも上述のバネ要素3,4を介して設置される。この場合でもまた、環境から内部領域22を封止するために、バネ要素3,4は封止要素として使用される。
【0062】
図7a,7bはそれぞれ、プッシュボタンのさらなる実施形態の平面図と斜視図を示す。ここでは、同じ部品に同じ参照符号を付す。
【0063】
プッシュキャップ1は2つのプッシュキャップ支持体10を有し、これらはプッシュキャップ1に一体に形成され、プッシュキャップから下向きに突出する。プッシュキャップ支持体はここでは円筒形で、上述のように、プッシュキャップ1がバネ要素3,4を介してハウジング2に接続される場合、ハウジング2の内部領域22に突出する。
【0064】
内部領域22では、ハウジング2は軸受ポイント82を有し、これは背面壁21から突出し、内部領域22に対して固定位置に配置される。軸受ポイント82はここでは実質的に円筒形である。
【0065】
この場合、第1バネ要素3と第2バネ要素4は角度180°の皿バネ座金切片である。換言すれば、皿バネ座金切片3,4は2等分された円環形状であるということもできる。小角度又は大角度の切片も可能である。例えば、角度135°〜225°の皿バネ座金切片を使用することができる。
【0066】
2つのバネ手段3,4は軸受ポイント82に接続される。バネ手段3,4は、軸受ポイント82から見て両サイドに実質的に均等に広がるように軸受ポイント82に接続される。換言すれば、バネ手段3,4はその中心で取り付けられている。軸受ポイント82は第1バネ手段3と第2バネ手段4との距離間隔を確実にする要素83を有する。
【0067】
バネ手段3,4はそれらの両端でプッシュキャップ支持体10と接続される。プッシュキャップ支持体10はそれぞれさらに間隔要素84を有し、間隔要素84は第1及び第2バネ手段3,4をそれぞれ確実に等間隔にする。この場合では、2つのバネ手段3,4が互いに実質的に平行であり、プッシュキャップ1の操作方向の中心軸に実質的に直角である。プッシュキャップ1が操作軸Aに沿って上から操作されると、プッシュキャップ支持体10の移動により2つのバネ手段3,4が操作方向に曲がる。バネ特性とバネ手段3,4を対応して配置することにより、操作方向Aとは反対の方向にリセット動作が生じ、その結果、プッシュキャップ1は元の位置に戻る。
【0068】
さらに、2つのプッシュキャップ支持体10が、第1バネ手段3の領域でくびき(Joch)又はウェブ85を介して互いに接続される。ウェブ85は、操作工程中、即ち、力が加えられたときに、2つのプッシュキャップ支持体10が互いに離れる直線運動を防止する機能を有する。
【0069】
さらに、ウェブ85は、内部領域22に配置される、電気的スイッチ要素の操作要素(図示しない)の形状でもよい。あるいは、ここには示さないが、スイッチ要素を操作する媒体部品をプッシュキャップに一体に形成することもできる。
【0070】
2つのバネ要素3,4は金属でもプラスチックでも構成することができる。バネ手段3,4が金属材料から構成されていれば、バネ手段3,4を射出成形型に挿入することができ、その後プラスチックでコーティングされる。プラスチックで構成される実施形態では、全ての要素が1つの金型で製造でき、従って、プッシュボタンの機械的部品を一体に形成することが可能となる。
【0071】
ここでは図示しないが、別の実施形態では、上から見たときに、バネ手段3,4を長方形枠の形状にすることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 プッシュキャップ
2 ハウジング
3 第1バネ手段
4 第2バネ手段
5 電気的スイッチ要素
6 プリント基板
7 封止手段
8 シェル
9 プッシュキャップ保持要素
10 プッシュキャップ支持体
11 上面
12 下面
13 中心部
14 キャップ要素
15 リム
16 外側リング
17 フランジ
18 内側リング
19 環状溝
20 側壁
21 背面壁
22 内部領域
23 環状要素
24 フランジ
25 フランジ
26 ガイド要素
27 側壁
28 環状間隙
29 間隙
30 第1端部
31 第2端部
32 外周
33 開口部
34 屈曲点
35 屈曲点
36 円周リム
40 第1端部
41 第2端部
42 外周
43 開口部
44 屈曲点
45 屈曲点
61 ケーブル
70 O−リング
71 O−リング
81 リム
82 軸受ポイント
83 間隔要素
84 間隔要素
85 くびき(Joch)
90 円周リム
91 取り付け手段
101 操作板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュキャップ(1)と、内部領域(22)を有するハウジング(2)と、前記プッシュキャップ(1)を前記ハウジング(2)に接続するリセット要素(3,4)と、電気的スイッチ要素(5)とを具備するプッシュボタンであって、
前記プッシュキャップ(1)は、前記ハウジング(2)の前記内部領域に配置された前記電気的スイッチ要素(5)を作動させられるように、前記電気的スイッチ要素(5)に対して静止位置からスイッチング位置へ移動可能であり、
前記リセット要素(3,4)は、操作後に前記プッシュキャップ(1)を静止位置に戻し、
前記リセット要素(3,4)は第1バネ手段(3)と第2バネ手段(4)を有することを特徴とし、前記第1バネ手段(3)は前記第2バネ手段(4)から、少なくとも前記プッシュキャップ(1)の操作軸(A)の方向にオフセットして配置されるプッシュボタン。
【請求項2】
前記バネ手段(3,4)が前記プッシュキャップ(1)の一部又はプッシュキャップ支持体(10)に接続される請求項1に記載のプッシュボタン。
【請求項3】
前記第1バネ手段(3)が前記第2バネ手段(4)に実質的に平行に配置される請求項1又は2に記載のプッシュボタン。
【請求項4】
前記第1バネ手段(3)と前記第2バネ手段(4)が前記プッシュキャップ(1)の中心軸(M)から同一の半径方向距離で配置される請求項1〜3のいずれかに記載のプッシュボタン。
【請求項5】
少なくとも3対のバネ手段対が設けられ、各バネ手段対は第1バネ手段(3)と第2バネ手段(4)を有する請求項1〜4のいずれかに記載のプッシュボタン。
【請求項6】
前記第1バネ手段(3)及び/又は前記第2バネ手段(4)が板バネ形状である、請求項1〜5のいずれかに記載のプッシュボタン。
【請求項7】
前記第1バネ手段(3)及び/又は前記第2バネ手段(4)が皿バネ座金(Federscheiben)形状又は皿バネ座金切片の形状である、請求項1〜6のいずれかに記載のプッシュボタン。
【請求項8】
前記第1バネ手段(3)の、前記プッシュキャップ(1)の中心軸(M)からの半径方向距離が前記第2バネ手段(4)より大きい、又は小さい請求項1〜7のいずれかに記載のプッシュボタン。
【請求項9】
前記第1バネ手段(3)が前記プッシュキャップ(1)と前記ハウジング(2)上に一体に形成され、前記第2バネ手段(4)が前記プッシュキャップ(1)と前記ハウジング(2)上に一体に形成される、請求項1〜8のいずれかに記載のプッシュボタン。
【請求項10】
前記第1バネ手段(3)が前記プッシュキャップ(1)及び前記ハウジングに対して固定された位置に配置される要素上に一体に形成され、前記第2バネ手段(4)が前記プッシュキャップ(1)及び前記ハウジングに対して固定された位置に配置される要素上に一体に形成される、請求項1〜9のいずれかに記載のプッシュボタン。
【請求項11】
前記バネ手段(3,4)が金属材料からなり、電気回路として使用可能である、請求項1〜10のいずれかに記載のプッシュボタン。
【請求項12】
2つのプッシュキャップ(1)が操作方向に対向して配置され、前記電気的スイッチ要素(5)が第1のプッシュキャップに対して移動可能なプレート(6)上に配置され、第2のプッシュキャップが操作されると、前記プレート(6)が前記電気的スイッチ要素(5)とともに前記第1のプッシュキャップに向かって移動して、操作される、請求項1〜11のいずれかに記載のプッシュボタン。
【請求項13】
少なくとも2つの電気的スイッチ要素が配置され、1つの操作工程で操作可能である、請求項1〜12のいずれかに記載のプッシュボタン。
【請求項14】
前記バネ手段(3,4)がプラスチックからなり、前記ハウジング(2)と前記プッシュキャップ(1)が前記バネ手段(3,4)の上方に実質的に一体に形成される、請求項1〜13のいずれかに記載のプッシュボタン。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2011−520217(P2011−520217A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504435(P2011−504435)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054392
【国際公開番号】WO2009/127618
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(510272414)エーアーオー ホールディング アーゲー (1)
【Fターム(参考)】